シャプロン・ルージュvsプリマヴェラ
- 336 名前:歌う女の子。投稿日:2007/11/26(月) 22:08:26
- >赤頭巾VSプリマヴェラ 導入(赤頭巾サイド)1/5
枯れ木に花を咲かせましょう♪
☆踏んでも枯れない永久の花。
それは甘いかすっぱいか?♪
☆すっぱいお花はいらないわ。
けれど甘いと虫がつく!♪
☆じじじびずびず、蜂がつく。
蜂が描くはメビウス螺旋♪
☆切っても切れない輪廻の輪。
私にください輝く花粉♪
☆こっちの花はあーまいぞ。
あちらの水は甘いのか?♪
いいえ此方はネクタルの──
──頬も滴る糖蜜の園!
比べるべくもなき味に
だから寄りませ朱の蜜蜂!
森は広がるくるりくる。
くるりくくるりるくるりるら。
まわるよまわる、錘車はまわる。
数奇の運命・引き寄せて
手繰る女神は ほそおもて
あなたはどなた、どなたのあなた?
”あなたはどなた”とたずねられては
こたえてあげるが よのなさけ。
わたしはアリス、終の女王!
──────────────────────わたしはどなた?
どなたがわたし?──────────────────────
そうよそれこそ そうなのよ
答えて見せよう あなたは子供!森に彷徨う”赤頭巾”!
頭上のとっさか、赤烏帽子。
黒いアリスの槍にて候!
- 337 名前:女の子。投稿日:2007/11/26(月) 22:10:16
- >赤頭巾VSプリマヴェラ 導入(赤頭巾サイド)2/5
少し持て余し気味な休日。その日は傍から見れば、健康な有触れた週末の一日だった。
ショッピングエリアを気取って歩く私は、きっと傍目にはその風景の一員に見えただろう。
イーストサイド・リヴァからの寒風に煽られて、私は強くマフラーに
唇を押し付ける。
表通りは何処も彼処も人で溢れ帰り、寒さの中でも明日に訪れる連休という
響きの前に幸せが波の様に溢れ出して感じられた。
MAD CITY、腐った林檎。このニューヨークで生きる人々は誰もがこの自由あるよき日々を
その手で只管満喫している。旧型のセダンの後部座席をディズニーマスコットで飾り立てた
家族達も、携帯片手に待ち合わせに遅れまいと小走りに去っていくドレッドヘアーのブラック
も、ビリジアンのショールが重くさえ見える老婆でさえも。
この休みの日には幸せでしかるべき、そしてそう見えてしまう魔法が今この街には存在してい
るらしい。
けれどその中できっと…私だけが本気で、どうしようもない位にFeel so sad.
人に聞かれたとしたら「So,So」なんて誤魔化してしまう様な空元気が自慢の私だけれど、今日
ばっかりはそれはパス。気持ちで胸が張り裂けそうだった。
それってとても私らしくないと思いながらも…そう考えること自体が一層自分を不機嫌に追い込
んでいる。
フォークロアなベストに、時々のスカート(薄手のデニム!)。
彼氏は気に入ったという枝葉模様(セフィロトの文様とは少し違うらしい)の大胆なシューズ…
髪に合わせたニットハンチング。決して浮いてる事もないスタイルのまま人並みをすり抜け私は
歩く。肩を怒らせ、人ごみに塗れ、押し戻されながらも突き進む。
私は自分をフランクフルトを口に入れて歩いたりするのに余りためらいを覚えないタイプだと思
っている。
例えば可愛い衣類がちょっとご機嫌なメゾンが林立する”ノリータ”でだってチューインガムを
膨らませて歩いたって構わない。
そんな仕草でガムを吐き捨て、そんなものに齧りついて歩いたって…私っていう人種は本当は少
しも気になどしないんだ。
それを殊更に声高に言うのであれば、今年13歳の私の血にはまだ、きっとこの社会のルールが
溶け込んでいない───そういう話なのだろう。
今日の不機嫌の原因…大人気ない…大人じゃないんだけれど…溜息が出そうなものは きっと”そう”
に決まっているのだ。
- 338 名前:女の子。投稿日:2007/11/26(月) 22:12:12
- >赤頭巾VSプリマヴェラ 導入(赤頭巾サイド)3/5
…That's the way it is.…Haha…Yeap.それは少し嘘。
赤い帽子が欲しかったから。理由はただ違いなくそれだけでいい。
そうだと信じ込んでいたい。そう思う。
自己欺瞞に今日何度目だろうか…自分に『辟易』を感じてしまった。
ああそうだ。辟易といえば─────。
アフタースクール、どうでもいい午後。
スケート・ボードの騒音や指先を撓らせて得意げなキュウ。そんなもので
私に声をかけるスクールボーイにはとても辟易だ。
『とても辟易──』そう後から来たデカイ彼氏と二人で笑った。
話しかけられた時は彼と待ち合わせだった。確か、そうだった。
辟易な同級はその風貌から”サタニスト”などと彼を揶揄し、罵ったりしたけれど
別にそんなのお互い気にはしていない。私は寧ろそんな彼の風貌をAddictedに
愛していたのだから。マッチョな風貌、大きめにサングラス。ラウド・ボイス。
Sigh。それは現実逃避だ。Spare me.Spare me,please.
白状すると、こんな格好で高すぎる建造物の森の谷間を抜け私が向かう先…そこが大問題だったのだ。
気分を晴らす為に何気なく覗いたショウウインドウの向う。
とても目を惹かれた。それに見合ったシューズが欲しかった。
”赤と黒のブロックチェックのキャップが似会うよ、ボーイッシュで”奴らならそう言う。
”余計なお世話”と指で答えるのが私。きっと。
そんな私が見ていた先には耳から首筋までがすっぽり入るヒッピーニットの
可愛げな赤帽子だった。
そんなの似会うはずもない。
例えばエルメスのスーツにコルテの革シューズ。
それで笑えば様になると勘違いするのはチャイナ・タウンの間抜けで十分…
きっとこれはそういうものなんだと理性は私に警鐘を打ち鳴らす。
けれども私の重い脚はいう事を聞かず…そんな赤い帽子に釘付けのままでいた。
そう、まるで昔話…エヴリデイ・マジックに誘われた妖怪の世界に入る時の様に。
その時だった。
自動ドアが突然開き、背の高い一人の紳士が私に向かって礼をしたのだ。
背骨はまっすぐに、紳士然とした綺麗な風貌。…私も釣られて思わず礼を返して
しまう程に、それは立派な自然体の態度に見えた。
そして待ち受けたように───鐘が鳴る。
男は腕時計を見た。私も見る。午後4時。約束まで後1時間の夕暮れ。
時報。時報。時報!!!響くのはただその苧環繰り返すだけ。
どうして?ただただ時報だけなんて。Oh,Spare me.
ピストルズ再結成のコマーシャルの外套放送、二階建てバスの黒々とした煤煙の音、
何処までも続くドーナツ・トーク。あれだけ響いていた俄かな音たちが今は全て消え失せていた。
そして動いている物は私と目の前の紳士……姿を変えた兎だけ。
「3月の32日の午後4時をお知らせいたします」
それだけ言って、ウサギは撥ね飛び走り去る。燕尾服と長い耳、フサフサゆらゆらたゆらせて。
そう。そんな風に姿を変えたウサギは飛び出し走り去ったのだ。
燕尾服とステッキ。懐中時計と長い耳。
私は知っている。それを知っている。あれは、みんなが知っているのだ。
少しは幸せな家庭で育ったローティーンならば誰しもが。
走り出す私。遠い日にアニメで見かけた、森を彷徨うCarol Mue Douglasの様に一生懸命になって
追いすがる。けれど、この靴はやっぱり少し違ったらしく、その場で私は前に躓き転んでしまう。
─────思わず飛びでる4文字言葉<カス・ワーズ>。
道路標識に一度Kick。弧に舞い踊れ、インディアンシューズ。それはやっぱり飛んだ不運。
「ばいばい、まいダッド」調子を整え私は追った。邪魔なものなど脱ぎ捨てて。
裸足でおいかけ、たどり着く。そこはサブウェイの入り口…。
周囲の人達は、そこでもやはり固まっていた。
ネイティブ・アメリカンの描く砂絵の様に象徴化されてぴくりともしなかった。
「畏れは 鏡 日常の落とし穴 私は貴女 私の穴は あなたの恐怖」
エントランスに兎は呟き吸い込まれていった。くるりくるりらくるりくる。
”どういう意味?”呟き地団駄を踏む私。
この後『どうしたか』なんて、誰にだって分るでだろう。決まっている。
私はそんな女の子じゃないのだから。兎に挑発されておいかけないなんて女の子としても
失格なのだ。Did you think so?
その日の出来事から逃げる意味も相まって…エントランスへと、少しの覚悟で踏み込んだ。
お気に入りの携帯電話、それにつけてあるキーホルダー…西部劇でお馴染みのコルトSAAを
かなり強めに握り締め、飛び込むように地下鉄構内へと脚を踏み入れたんだ。
私の不思議な一日──とっても長い一日はこんな風に始まったみたい。
一年にも、十年にも思える…とても長いロールする一日が。
それは私だけれど私ではない誰かでもある、少し不思議なお話。
どんな話かは……これから先のお楽しみ、ね。
- 339 名前:三月ウサギ投稿日:2007/11/26(月) 22:13:11
- >赤頭巾VSプリマヴェラ 導入(赤頭巾サイド)4/5
ウサギはお辞儀,ウサギは踊り。
たらったらったたらったら。
ウサギは踊りウサギは歌う。
いつも瀟洒な急がしや。
消えは現れ、神出鬼没。
夕暮れ寒風カムチャツカ。
日の入りメヒコで暖を取る。
たらったらったらたらったら。
ウサギのダンスは一種きり。
ウサギのダンスはいつでもシャドウ。
月に映らせ飛び跳ねる。
きっくきっくとんとん、きっくきっくとん。
それはなぜかと問われれば───────
彼らに多い1000の敵!
小屋入りバウにカンクロウ。細めのフォクシィ、ニャロメダマ。
鈍間のバウを踏みつけて、夜目が利かずにカンクロウ。
フォクシィ足跡罠を追い ふにゃふにゃ酔いどれニャロメダマ。
ざまぁかんかん1000の敵。
3月ウサギは捕まらない。すたこらさっさのこなさのさ。
大きなニンジン見つけたら 郎党率いて盗み食い。
でっぷりオツベル起きてみりゃ 倉庫はからっぽ大騒ぎ!
けれども一羽じゃ目立てない。ウサギは一羽じゃ死んじまう。
シルクハットもステッキも、天まで届けのお飾りも 仲間がいなけりゃただの蔦。
幻想ウサギは死にたえた。仲間は他に消え絶えた。
遍く森の意思達を 転がし遊ぶにゃ 人が居る。
神の与えた100の知恵 しぼって ひねって …閃いた!
あなほれ、待ち伏せ、引き寄せた。
────後は待つだけ 守株の故事。
そこだどんぴしゃ やってきた!
ころり転げた女の子。
罠にかければ後はもう 得意の伝令 話しこむ。
おんなのみみに 伝えこむ。
舌先1寸 たらしこむ。
「ウサギの穴にご用心 落ちて辿ればそれはもう 上士同士に早代わり。
シルフレイの時間さえ 必ず守れば すくわれる」
くるりくるりらくるりくる。
女とウサギは回り落つ。なべかまかなえ、底はどこ?
そこは”とつくに”道の果て。
けれど直ぐつく お仏蘭西。
手に手をとってくるりくる。
はだしはおんな シューズはうさぎ。
くるりくるりと手を組んだ。
森の魔法に導かれ くるりくるりとシルフレイ。
まったく性格あわないが ふたりは他所見てシルフレイ。
- 340 名前:”赤頭巾”投稿日:2007/11/26(月) 22:14:15
- >赤頭巾VSプリマヴェラ 導入(赤頭巾サイド)5/5
裸足で転げた女の子。彼女は魔女の力によって、童話の世界の赤頭巾へと
その姿を変え、兎とともに森の中へと転げ落ちてゆきました。
赤頭巾は歓迎の喇叭の音色もなく、勿論背筋を伸ばした御者付きの
馬車もいないまま、女の子は残虐な世界へと送り出されてしまったのです。
数多の欲望渦巻く魔法の森の中…
可愛そうな赤頭巾はその後どうなってしまったのでしょう。
死んでしまった?いいえ。それは心配要りません。l
少し覗いて見ましょうか。
かなり長めの鉄砲を彼女は構えて遠くをみつめているではありませんか。
一帯何があったというのでしょう?
兎です。燕尾服と懐中時計の兎が立って細々彼女に何かを伝えているのです。
それはどうやら”得物”の話をしている様子です。
そう、彼女はここで銃を撃つ事を生業として暮らしていたのです。
ある時は眠りの姫を求めて彷徨う王子たちを1ダースほど。
また別のある時は後悔を植えつけられるイズーを森の中で狙撃して…
更に別の機会には、祖母の見舞いをサボタージュして遊ぶ小さな女の子を
その牙に染めることもやってのけておりました。
兎はそれを「間引き」と呼んで、金にもなる上、為になる事と大いに推奨している様子です。
そんなあわただしい一日が過ぎると彼女は植えつけられた記憶に沈み込み
小さな欠伸をかみ殺し、血に染まった朱の頭巾をかぶったままで息を潜めて
眠りにつく…そんな繰り返す一日を過ごしておりました。
赤頭巾は最初のその日から,寝るのも食べるのにも、その木の上で行いました。
見晴らしがとてもよく、依頼主の館に近づく者が良く見える素晴らしい巨木でした。
眠りにつくにも揺らぐことはなく、彼女は少しは落ち着いて眠れた様子です。
そんな彼女の傍らにはいつも変わらず一羽のうさぎが付き従っていたという事です。
けれども眠るときも、食事の時も。それでもふたりは見合って居ながらもやっぱり
ひとりぼっちどうしには違いありませんでした。
なぜなら見合って眠る二人の間には、両刃の剣が一つ、広々と隔てられて
いたのですから。
利用する3月兎。暗殺者の記憶を植えられた赤頭巾…仮名”リゼッテ”。
不思議な一人と一羽の得物は次は誰になるのでしょうか.
- 342 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/26(月) 22:20:08
>赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>336>>336>>336>>336>>340
♠
終の女王がアリスなら対の女王はタイターニア
黒の女王がアリスなら赤の女王はタイターニア
おお!麗しきはタイターニア!
ネバーランドの女王にて真紅のドレスの人形姫
彼女はわたしに命じます
「首をはねてしまいなさい!」
あらそれはトランプの女王だったかしら?
でもまあいいわね同じこと
だからわたしは処刑人。女王陛下の首斬人形
ドールはいつでも女王のしもべ、逆らうなんてありえないわ!
だからわたしは走り出す。斬首具もって走り出す
待っててください女王様
貴方に首をささげます
アリスの首をささげます
♠
- 343 名前:イグナッツ・ズワクフ投稿日:2007/11/26(月) 22:21:02
- >>342
♣
ぼくたちは幅の狭い林道を歩いていた。
そこは深い深い森の中で、見上げれば青々と茂った木々のアーチが天蓋となり
空模様をうかがうことはできなかった。
熊が出てきそうな森だね、プリマヴェラ。
街の骨董屋から持ち出したレピアの鍔をいじりながらぼくは彼女
に声をかけた。
少しでも緊張を紛らわせたかったんだ。いままでもいろんなやつらを相手に、
戦ったり、逃げたり、殺したりしてきたけど、今回の相手は特別すぎた。その
せいで、どうしても体のこわばりが抜け切らなかったんだ。
気が付けば手のひらに嫌な汗をじっとりとかいていた。
ぼくはその汗を乱雑にズボンでぬぐうと、改めて剣帯を使って腰に吊るした
剣に手を這わせた。
手にした剣は、いまぼくのもっている中では一番ましな武器だった。本当は
銃か、さもなくばクロスボウでも欲しかったのだけど、銃砲店の場所なんてわ
からなかったし、街は混乱が酷すぎて長居して探すのは危険すぎた。
「その熊が森のくまさんだったらいいわ。きっとおいしい蜂蜜をご馳走してく
れるはずよ。
……ううん、だめね。きっとこの腐海のくまくまさんじゃ、チェーンソーか人切り
バサミを持っているわ」
血のように赤い色をしたドクターマーチンの靴底で道に生えた花を踏み潰し
ながら、プリマヴェラは冗談たっぷりに返してきた。
さすがに錐刀のようなヒールでは動き辛いと思ったのだろう。いま彼女の足
を飾っているのはバンコクから履いてきたマノロ・ブラニクではなく、スーツ
ケースの中から取り出したDr.Martens × Yohji Yamamoto のコラボレーション
ブーツだった。
そんなふうに動きやすいブーツに履き替えていたけれど、服装は相変わらず
なままだった。
♣
- 344 名前:イグナッツ・ズワクフ投稿日:2007/11/26(月) 22:21:33
- >>343
◆
彼女は舞台にあわせ、不思議の国のアリス風のダーマプラスチックの真紅の
ショートドレス――ジャン・ポール・ゴルチェにも見えるが多分違う――に、
マリー・アントワネットが着ていそうな豪奢な白い毛皮のコート――自信があ
る。これは多分Dior だろう――を羽織っていた。それは珍しいことに遺伝子
組み換えのアルビノの狼の毛皮で仕立てた物だった。フードには狼風の耳まで
付けられている。
彼女の服装は派手であると同時になぜか清楚で、それでいてやはり下品なま
でにいやらしかった。
無駄なボリュームを誇るのに、所々で極端にタイトなシルエット、恐ろしく
短いスカートに、拘束具を思わせるコルセット、ダーマプラスチックのタイツ
が艶かしい。
猥雑さと清楚さが混濁した奇矯な美しさ。
まるで再生する処女膜と処女性を売り物にするセクサロイドのような清純さだ。
彼女はそんな服装で、腕にはシックなカルティエの腕時計をはめ、骨董屋で
見つけた日傘を陽光なんて差し込まない森の中だって言うのに差していた。
それはヴィクトリア女王の時代に倫敦の金融街で創業された会社の製品で、
劣化したオリジナルの傘地の変わりに、ふんだんに刺繍を施された蘇芳色のコッ
トンの布地が新しく貼られていた。
そして彼女は、仕上げにお気に入りの香水『殉教の処女』を振りかけていた。
どうみてもアウトドア向きの服装じゃない。でもいまさらだ。プリマヴェラ
は仕事にだってドレスを着ていくような女の子なんだ。
一方ぼくは、バンコクから着てきたマックィーンをあの地震で泥まみれにして
しまったから、持ってきた服とこの街のショップから盗んできたものを適当にき
ていた。
ポールスミスのシャツの上からギーブス&ホークスのフロックコートをまとい、
マーガレットハウエルのボトムを穿いて、足元は動きやすいトリッカーズのアン
クルブーツで固めていた。
そして仕上げにシェフィールド製のパールの柄の付いた西洋剃刀をコートの
ポケットに入れておいた。これが一番大切なんだ。
――――だって、備えあれば憂いなしって言うだろう?
◆
- 345 名前:イグナッツ・ズワクフ投稿日:2007/11/26(月) 22:22:05
- >>344
♠
ぼくは彼女の巨大なスーツケースを曳きながら、彼女のあとを付いていく。
ぼくが捨てようって言ったのに、彼女ったら駄目だって言うんだ。
嘘泣きまでして頼まれたら、このぼくにはとても断りきれない。
そもそもこの街まで来たのだって、彼女が行ってみたいなんて言ったからな
んだ。そのせいでぼくたちは、久しぶりのヨーロッパを楽しむ暇も無くこんな
事態に巻き込まれたんだ。
ああ、いつもそうなんだ。彼女の気まぐれに付き合ったときは、いつもトラ
ブルに巻き込まれる。まあ、さすがに今回みたいなのははじめてだけどね。
「何が出てくるかしらね、イギー」
猫の虹彩を持つ緑の瞳を好奇心で輝かせながら、いたずらっ子の表情でプリ
マヴェラが言う。
君より弱い相手であることを祈るよ、プリマヴェラ。
そう、もうじき何かが現れるはずだ。
この現象を解決しようとしているぼくたちを、森の住人たちが素通しさせて
くれるとは思えなかった。きっと何らかの妨害があるはずだった。
タイターニアの言うことには、それは童話の姿をとって現れるらしい。
そうはいっても森にまつわる話は多い。何が出てくるかはふたを開けるまで
解らなかった。
「狼のいる森かしら?意地悪な三人の小人のいる森かしら?学校のある森かしら。
それとも7人の小人のいる森かしら?もしそうなら気をつけなくちゃ駄目よ、
イギー。白雪姫はとてもとても危険な子なんですもの。
彼女は、血の様に赤い唇と、紫檀のように真っ黒な髪と、雪のように白い肌と
――――そして闇のようにに真っ黒な心を持った危ない子なのよ。
だから出会ったらすぐに逃げ出さなきゃ駄目よ、イギー」
姫は姫でも眠れる姫のいる森かもしれないよプリマヴェラ。
「あら、すてきねイギー。じゃあ、お姫様の役はだれかしら。きっとその子は
王子様のキスで目が覚めるのね。いま風ならお姫様のキスでも目が覚めるかも
しれないけれど」
ねえプリマヴェラ、中世の法律じゃレズは火あぶりにされてしなうんだよ
「ジャンヌのように?大丈夫よ、イギー。だってここは中世じゃなくておとぎの国だもの」
♠
- 346 名前:イグナッツ・ズワクフ投稿日:2007/11/26(月) 22:22:49
- >>345
♣
でも良いのかい、プリマヴェラ?こんなゆっくり進んでいて。遅れてしまうよ。
この街をめぐる事態はどんどんと悪い方向に向かっているようだった。
はやく何とかしなくては、ぼくたちだってうかうかしてはいられない。
「あら焦る必要は無いのよイギー。正直な話、わたしが頑張る必要は無いのよね」
プリマヴェラは退屈そうに肩をすくませると、かわいらしい口を開いて、か
わいらしくない牙を見せながら、欠伸をしてからそういった。
怪訝そうな表情を浮かべるぼくに、彼女は名探偵みたいに解説する。
「わたしたちの同業者で、ある意味わたしの同類の、"あの≠P2姉妹が来てる
ってさっき話したでしょう、いぎー?
しかもそれだけじゃなくって、他にももっとこんな仕事に適した人たちが来
ているみたいだし、この現象をまともな手段で解決できるなら、きっと彼女た
ちが解決するわ。
だいいちこの現象はわたしたちが思ってるほど危険じゃないのかもしれないわ。
だって、本気でどうにかしようと思ったのならば、わたしに命令なんて下さ
ずにタイターニア様自身が出てくるはずだもの」
確かに彼女の台詞には説得力があったけど、不安で仕方の無いぼくは、それ
でも彼女に反論する。
だってタイターニアは森源を殺せっていったんだろう?
そう、たまたま発生源の間近にいたぼくたちに、彼女たちカルティエ人形の
女王であるタイターニアは、お得意のテレパスで事態を解決するよう命じてき
たはずだった。
「いいえ違うわイギー。タイターニア様は飽きるまで遊んであげなさいっていったのよ」
そんな会話を続けながら、ぼくたちは森の小道を歩いていった。
♣
【現在地:C地区 ある日、森の中】
- 348 名前:三月ウサギ投稿日:2007/11/26(月) 22:30:51
- >赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>342>>343>>344>>345>>346
壮大な森、鬱蒼と茂った森の小道も進むにつれて少しずつ開け、幾分の視界が
開ける広場がそこにはありました。
広場は中央が少しこんもり盛り上がっていて、そのてっぺんの部分には
棒倒しの棒の様に、一つの立て札が頼りなさげに刺さっているのが分ります。
なにやらその立て札に、ウサギが1羽、ゆっくりと何かをペンキで書付け
はじめました。汚れやすい仕事にも関わらず、そのウサギはかしこまって
長帽子に燕尾服、革の服。そんなかしこまった服装で書き始めているのです。
3分も経過した頃でしょうか。ことりと空になったブリキのペンキ缶が倒れます。
どうやら書付け作業は無事に終ったのでしょう。まっかに染まった刷毛をぶぅんと
放り投げ、自前の看板文字にご満悦の表情で見入っているではありませんか。
なんと書かれているのでしょう。けれど、それは今説明するまでもなく、何処から
ともなく声が響き、すっかり看板の出来栄えについて荒声で突然抗議を始め出した
のです。
「ふん。ものの分らん輩ばかりだ。『卵』というのはいいかね?元来それは『動詞』と
して使うのが筋とされているだろう。落下するから注意とは、如何なことかね?
俺さまの”この頭”の中の深い記憶は女王様の
言葉を良く憶えている。つまりだね、ラテン語の非収斂形容詞の───────」
ウサギは一瞬上を見ましたが、直ぐに重たい頭を下に戻しました。
そして何事もなかった様に白い手で器用に時計を一つ取り出して、不思議な生き物が
喋り続ける時間をチクタクチクタク計っています。
生き物は生き物で、聞いていようとどうだろうと、そんなの全くお構いなしです。
そう。声の主はウサギの直ぐ上の木になっている、白色のつやつやした楕円形の生き物
が発していたものだったのです。何故かネクタイを締めたその生き物は、壮年男性の
様な表情で世間に対して苦言を数多、披露し続けているのです。
「時計という奴はまったくけしからん。長い針というがね、きっちりと採寸をあわせたとこ───
ウサギは時計を閉じました。かたん、と子気味いい音がなったと思うと、長い間使っていなかった
部屋を唐突に空けたときの様な、あの鋭い風が吹いてきたのです。
- 349 名前:三月ウサギ投稿日:2007/11/26(月) 22:32:14
- >赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>348
───────あーーーーーーーー。
なんと恐ろしい!冷蔵庫さえも一呑みしそうな大きな口に、まなこは人の血に染まり、赤。
猿の様に毛むくじゃらの脚には筍の様な野太い爪が生え、背中には王宮の門と見紛う大きさの
翼が生えた獰猛な生き物がとてつもない勢いで飛んできて、色々口を動かしていた卵を掴み…
王宮の奥へと捥ぎ去ってしまったではありませんか。
「47億年の悲劇。人の世で孵らぬ卵が熟す時・・・それは女王陛下のオムレットの嗜みの時。
うめず、ふやせず、途絶えた種族も こうしてしまえば”巣食われる”」
しかしウサギは全く冷静そのもの。そんな風に誰にともなく呟きます。
そこへ二人組みの男と女の子たちが、珍しいことに森の外から歩いてくるのが見えました。
本当に久しぶりの来客です。久しぶりの、1日の何回目ぶりのお客様でしょうか。
三月ウサギは興味を卵───白色ハンプティ種──から来客に完全に移し変え、視線を横に向けました。
(ウサギの瞳は草食動物なので広く見えるのですが、一応礼儀というものがあるのです。)
「いいえ違うわイギー。タイターニア様は飽きるまで遊んであげなさいっていったのよ」
そうこうしている内、女の子の声が大分近づいてきたみたいです。
「飽きる【tired】だと!お高い言い方をする奴だ。いいかね、俺さまの【tie】は女王陛下から下賜されて
早1日の50回になる。その間の手入れをこうして欠かさずに行っていればTiredなんていう言葉は出きる
はずがないのだ」
おや、変ですね。この卵は無類の話好きの模様です。連れ去られた卵の後を引き継いで、他の、二番目に
大きな卵が再びしかめっつらで話を義務の様に始めた様子です。
全く見ず知らずの、森の向うから現れたばかりの兄弟にまで説教をはじめる始末だなんて。
【たまごにつき とりあつかいちゅうい】の文句も納得が行く気がしませんか?
そうなのです。ここは本当に卵畑だったのです。この辺り全ての長丸い葉をつけた広葉樹には
鈴なりにあの、不思議な喋る卵がぞろぞろとなっているのが見えるでしょう。
森の向うからやってきた兄弟に、そこの番人をしているウサギは慇懃に一つぺこりと礼を致しました。
「近いは 遠い 遠いは 近い 森はあなたの心の帳…ようこそ おふたり 女王の森へ」
【現在地 C地区
ある日森の中 うさぎに出会った 女王の卵園 ウサギに出会った】
- 352 名前:イグナッツ・ズワクフ投稿日:2007/11/26(月) 22:52:48
>>348>>349
◆
見なよプリマヴェラ。ベヘリットがいっぱいなっているよ!
「きみの悪いことを言わないで、イギー!あれは卵よ。
りんご掘りをする畑があるぐらいですもの、卵が実っている樹があってもお
かしくは無いわ。だって同じ食べ物じゃ無い。パンが無ければお菓子を食べれ
ばいいのよ!
……違うわ、イギー。全然違うわ。わたし一体何を言っているのかしら?こ
れも森の影響なのかしら?まあ、いいわ。そんなことよりもいまはウサギさん
に返事を返さなきゃ駄目よ。失礼な子だと思われちゃうわ」
そんな風にぼくを小声で怒鳴りつけると、彼女は短いスカートの裾をつまん
で優雅に一礼をした。
「あらご丁寧にありがとう。まっくら森のウサギさん。
ねえ、うさぎさん。わたしたちアリスを探しているの。この森の始まりの場
所を探しているの。もし知っていたら教えてもらえないかしら?
あなたのように礼儀正しいウサギさんなら、きっと教えてくれるわよね?」
少女特有のコケティッシュの媚すら含んだ笑顔で彼女は兎に問いかける。
ウサギが何か答えるより早く、樹になった大きな卵がまた何か難しいことをわめき始めた。
横槍をさされたプリマヴェラの機嫌が、見る見るうちに悪くなった。
「もう!わたしはウサギさんと話しているのよ!
少しは黙っていられないのかしら!あなたは卵の癖にうるさいのよ!
あまりおしゃべりが過ぎると、あなたの自慢のベルトで口を縛る【tie】わよ! 」
顔を赤くし、プリマヴェラがそうわめく。そして大きく深呼吸すると、手団
扇で顔を扇ぎ始めた。
「興奮したら暑くなっちゃったわ。わたしの手袋と扇子をとって、頂戴メアリ・アン」
それはぼくに言ってるのかなプリマヴェラ?
ぼくは苦笑しながらコートの内ポケットから手袋と扇子を取り出し彼女に手
渡した。
その手袋はエリザベス2世の即位式にも使われた手のひらにぴったりとフィッ
トするデンツの皮手袋。しかも最新のモデルで、ダーマプラスチックもふんだん
に使われているやつだった。
扇子のほうは極東の島国の貴族が使っていたといわれる「ヒノキオウ」と呼
ばれるタイプのもので、それで自分を扇ぐプリマヴェラからはエキゾチックな
魅力が溢れていた。
◆
【現在地:C地区 大きな卵の木の下で】
- 357 名前:三月ウサギ投稿日:2007/11/27(火) 00:00:19
- >赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>352
「勿論ですとも、お嬢さま。丸く麗しの尾にかけて。
かの黒ウサギの面前と、変わらぬ言葉でお答えしましょう」
何処かの貴族の令嬢でしょうか。正しい言葉使いに、教育ある身のこなし。
森を彷徨うに似つかわしくないその有様に誰もが溜息をもらしそうです。
ウサギはだから、答えました。
細い目をより細く、そのまま続けてしまえば潰れてしまうほどにほそぼそと
目をしばたかせて答えました。
そんな態度に黙っていられないのが、卵の習性なのです。
これは仕方がありません。有精卵というものは、時々左右に揺する(転卵、といいます)
をしなければ只でさえコチコチの体が、中身までも凍り付いてしまうようになって
しまうのですから。だから、時々喋って世話しなくしたがるのです。
「ふん。俺さまの言葉の通りが【Belled】に繋がる(tied)なことに気がついたかね。
つまりだ、俺さまは口が回る。そうするとお前さんがたの様な小娘にさえ、”もの”
をきちりと教える分別というものが生まれてくるのだよ。森の始まりについても
【も】。その子音と母音が分たれる僅かな隙間というものを皆さんは聞いたことが
果たしてあったでしょうか。木漏れ日にさえ気を遣う貴族主義の少女が、卵の言葉
に愛想を尽かし、相手にしなくなったのとその時間は殆ど同じでした。
河の水が大きく海と交わる場所の様な激しい風が、森の波止場とも言えるこの場所に
再び吹いてきたのです。それはやはり黒い獣…燃える瞳に蛇の首。鰐の尾を持つ
ジャバウォックの飛来を告げるものでした。
こうなってはさしものお喋りハンプティでさえ、一溜りもありません。
体を掴まれ蔕を抜き、哀れ叫びを残して連れ去られてしまいます。
その時ウサギは髭を整えるのに一生懸命で、何食わぬ顔をしておりました。
そして嵐が収まるのを待ってこう告げたのです。
「近いは遠い 深いは 浅い
今宵のイドは墓場のペルソナ はじまりは いつも 夢の おわり」
うさぎはその手を翳しました。その手には金色まばゆい懐中時計。
はりはぐるぐるぐるぐる逆周り。木漏れ日をうけてまわる時計はぎゃくまわり。
けれども彫られた日付は変わらずに、常に同じの「3月32日」だけ。
優美なセンスと懐中時計。ふたつが丁度、その高さが同じ位に掲げられたとき。
紡錘丈の鉛弾が一層つぶれて尾を引く速さで、時計めがけて突き進み
時計を壊して尚も突き進み、乙女の胸へと進んでまいったのでした。
【現在地 大きな卵の木の下で なかよく喧嘩しな】
- 362 名前:イグナッツ・ズワクフ投稿日:2007/11/27(火) 00:39:50
赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>357
♠
プリマヴェラ!
とっさにスーツケースの陰に隠れながら、ぼくは彼女に向かって呼びかけた。
「大丈夫よ、イギー。」
思いのほか落ち着いた声で、プリマヴェラが答える。
――――良かった、彼女は無事だ。
スーツケースの陰に隠れたまま彼女のほうに眼を向けると、彼女は大きく開
いた扇を顔から胸の上にかけてかざし、その陰から森のほうを睨みつけていた。
みれば彼女の手にした強化チタン製の檜扇には、一筋の真新しい傷が流れて
いた。状況から判断すると、おそらく狙撃されたのだろう。それを彼女は手に
した扇を使って、角度をつけて受け流したのだ。
1km以内ならば、銃声は銃弾よりも標的に対し早く届く。
その先に届いた銃声を聞いてプリマヴェラはとっさに反応したのだろう。
――――デッドガールの能力には、これだからいつも驚かされる。
安堵と驚愕と、そしてほんのわずかな苦々しさを含んだ思い。
彼女はまずウサギを向くと、低く抑えた声で話し始めた。
「後でじっくり話をしましょう?あなたには色々と聞きたいことがあるのよ。
いまのことも含めてね。ぜんぶ答えるまでお家には帰さないわ」
そういって鋭い犬歯をむき出しにして壮絶な笑顔を見せる。
ついで彼女は銃声のした方へと、森の奥へと向き直る。
「でていらっしゃい猟師さん。わたしが狼の毛皮を着てるからって、獲物と間
違えたなんていっても信じないわ。
はやく出て来ないとわたしからいくわよ。その時は絶対に許してあげないわ。
わたし、いまとても機嫌が悪いのよ」
言いながら彼女はコートのポケットに入れた手を抜き出した。
そこには食事用の何の変哲も無い2本のナイフ。
それをプリマヴェラは振りかぶりもせずに投げた、いや射出した
自動人形の器械仕掛けの体が生み出すパワーと、
カルティエ人形の量子の魔法の生み出す歪んだ奇跡。
そのふたつの加護を受け、ナイフは銃弾にも勝る勢いで、森の中へと消えていった。
♠
【現在地:C地区 ポケットを叩くとナイフがふたつ】
- 406 名前:"投稿日:2007/11/27(火) 21:58:11
- 赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>362
「つきも ほしすら ながれおつ あなたの ことばは
あべこべに。
貴女は 呼んだ 彼を 呼んだ 【メアリ・アン】と
そう呼んだ。
貴女はウサギ ウサギもわたし。あなたは私 私の役目」
気のたった自動人形乙女の言葉にも、ウサギは変わらずきっくきっくとん。
ナイフの束を目にしても、少しも動じずきっくきっくとん。
そうなのです。ウサギは時計の変わりに地面を叩き、拍子をとっているのです。
先ほどからウサギは何を気にして時計を見ていたでしょうか?
曲芸軽業師も逃げ出すほどのナイフの飛ぶ様、それはそれは恐ろしいものでした。
けれども、そのナイフの先にぶつかるように…3度、風と共に”あれ”が現れて
暴れ始めたのです。ぐららぐららと揺れる森。前と違うことといえば…御覧なさい。
獣の背中に、赤い頭巾に赤い上下衣。背の丈半分ほどの銃をもった女の子を乗せて
いるのが分るでしょう。
勢いナイフは爪にとばされ、空しく地面にささるのです。
女の子は、綺麗な顔立ちをしていましたが、その瞳は煉獄の炎を見つめて来たように
空ろに光を湛えておりました。
兎に角、女の子はジャバウォックのタズナを出鱈目に握り締め、痛さに彼は仕事を
忘れて暴れ始めます。只でさえ不安定な【卵】は悲鳴と共に、地面に落ちて砕けてゆき
ました。
さすが「とりあつかいちゅうい」なだけはあるようです。
一つが砕けりゃ、炎があがり、揺れた木からまた一つ。地面にいる人たちにとって
これは凄い大迷惑でしょう。
女の子はけれど、そのことがとても嬉しい様子です。口元を出来損ないのクロワッサン
の様に大きく歪ませて、地面に立つふたりの来客に、ふざけて笑って尋ねていました。
「ねぇ、そこのお嬢ちゃん。どうしてそんなにお口が大きいんだい?」
【現在地:C地区 叩いて見るたび 卵はおちる】
- 407 名前:”赤頭巾”投稿日:2007/11/27(火) 21:58:44
- 赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>362
「つきも ほしすら ながれおつ あなたの ことばは
あべこべに。
貴女は 呼んだ 彼を 呼んだ 【メアリ・アン】と
そう呼んだ。
貴女はウサギ ウサギもわたし。あなたは私 私の役目」
気のたった自動人形乙女の言葉にも、ウサギは変わらずきっくきっくとん。
ナイフの束を目にしても、少しも動じずきっくきっくとん。
そうなのです。ウサギは時計の変わりに地面を叩き、拍子をとっているのです。
先ほどからウサギは何を気にして時計を見ていたでしょうか?
曲芸軽業師も逃げ出すほどのナイフの飛ぶ様、それはそれは恐ろしいものでした。
けれども、そのナイフの先にぶつかるように…3度、風と共に”あれ”が現れて
暴れ始めたのです。ぐららぐららと揺れる森。前と違うことといえば…御覧なさい。
獣の背中に、赤い頭巾に赤い上下衣。背の丈半分ほどの銃をもった女の子を乗せて
いるのが分るでしょう。
勢いナイフは爪にとばされ、空しく地面にささるのです。
女の子は、綺麗な顔立ちをしていましたが、その瞳は煉獄の炎を見つめて来たように
空ろに光を湛えておりました。
兎に角、女の子はジャバウォックのタズナを出鱈目に握り締め、痛さに彼は仕事を
忘れて暴れ始めます。只でさえ不安定な【卵】は悲鳴と共に、地面に落ちて砕けてゆき
ました。
さすが「とりあつかいちゅうい」なだけはあるようです。
一つが砕けりゃ、炎があがり、揺れた木からまた一つ。地面にいる人たちにとって
これは凄い大迷惑でしょう。
女の子はけれど、そのことがとても嬉しい様子です。口元を出来損ないのクロワッサン
の様に大きく歪ませて、地面に立つふたりの来客に、ふざけて笑って尋ねていました。
「ねぇ、そこのお嬢ちゃん。どうしてそんなにお口が大きいんだい?」
【現在地:C地区 叩いて見るたび 卵はおちる】
- 408 名前:三月ウサギ投稿日:2007/11/27(火) 22:00:22
- >>407
●
ハンプティ・ダンプティ おっこちた
● ●
誰れが おとした はんぷてぃ?
● ●
それは わたし と うさぎがが いった
● ● ●
● わたしの しずかな ちのあめで
わたしが おとした はんぷてぃ!
だれが たまご うけたのか?
● ● それは あなたと ウサギはいった
あなたの ちいさな ぼうしとかさで ●
● ● あなたに くだけた ダンプティ! ●
● えらいおうさま いちもんも
● にどとは もどせぬ だんぷてぃ!
● ●
●
────────誰がおくやみ うけるかな? ●
───それは、あなたと わたしが いった。 ●
──わたしの ちいさな みみと はな。
大きな あなたに 私は いった! ●
- 416 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/27(火) 23:32:24
赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>407>>408
♣
無茶苦茶だ!なんてナンセンス!さすがにこれは無理だった。いくらプリマ
ヴェラでもあれは倒せない。
それこそビッグシスターたちでも呼んでこない限りは、あの化物は殺せない。
だからぼくはプリマヴェラに向かってはやく逃げようと叫ぶ。
だがぼくは彼女の狂暴性をまだ甘く見ていた。
彼女の顔を覗き込んだぼくは、信じられないものを見た。
彼女は人形そのものの顔に、肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべていた。
赤い唇が弧を描き、大きな犬歯が白く輝く。
――――ああ、彼女の暴力性は彼女の美しさに比例したんだ。
狂った妖精のように彼女は楽しそうに笑い出した。
「あれを見て、イギー。あの子あんなに危なっかしげよ。
火かき棒を滑り落ちた白の騎士みたいに、鞍の上からいまにも落ちちゃいそう。
なんてかわいらしいことでしょう!」
ひとしきり笑うと、彼女は辺りを見回し、あきれたように肩をすくめた。
「王さまの馬、王さまの家来、みんな寄っても直らないわね」
そういって彼女はぼくのほうを振り返った。
「剣はたった一振りしかなかったから、わたしは傘を得物にするわ――同じくらい鋭い傘を」
言って彼女は扇をしまい、右手をぼくに差し出してきた。
ぼくは一瞬だけ躊躇ったのち、さきほど扇を渡した時に代わりに受け取った
傘を彼女に返した。
彼女は傘を受け取ると、石突の部分をねじって外す。
それはキャップ状になっており中には鋭い穂先が隠されていた。
スピアーパラソル。貞節を守る淑女のたしなみ。古い時代の骨董品だ。
「ここから先は迫真遊戯の時間。ヒューマンではなくドールの仕事よ。
イギー、スーツケースをお願いね。」
そういってぼくの頬に口付けすると、彼女は物騒な傘を手に、ジャバウォッキ
ーへと向き直った。
「赤い頭巾の殺し屋さん。そんなに理由がききたいの?だったら教えてあげるわね!
それはね、それは――――それはね、あなたを食べるためよ!」
猫の虹彩を持つ緑の眼が爛々と輝く。彼女の幻想が、森の幻想を侵蝕する。
ドールの魔法。量子の魔法。思いを力に変え現実を侵蝕する。
緑の森に無数の赤い華が咲く。火焔という名の華が咲く。発火現象。
咲いた 咲いた 火焔の華が ならんだ ならんだ 赤 朱 紅
吹きすさぶ炎の嵐の中、プリマヴェラの身体が動いた。
淫らな傷のような赤いドレスの裾をひるがえし、プリマヴェラは森へ向かって駆け出していった。
♣
【現在地:C地区 深い森の 地平線に なにかがきっとまっている】
- 449 名前:”赤頭巾”投稿日:2007/11/28(水) 20:57:28
- 赤頭巾vsプリマヴェラ
>>416
その回答に、赤頭巾は笑顔満面、大喜びです。
彼女はどんな味がするのでしょうか?
きっと色々な味がするのでしょう。お砂糖とスパイスで
ちょっと刺激的な何もかも!!
それをこんがり焼いたれば、明日の市場に並ぼうか?
いいえ、彼女はまだどうやら、食べられるには早すぎるのです。
今の赤頭巾は、燃える炎に、暖炉の暖かさを思い出していた様でした。
炎の色の薔薇の色、肉を溶かす坩堝…そんな歌を
ご存知でしょうか。
彼女は確かに今、やかれてくべられる女の姿を思い描いておりました。
フードを目深にかぶり、逆巻く炎、ちりちりこげる火の海を大胆不敵に
つっきります。さすが偉大なジャバウォックです。炎くらいは物ともしません。
陶然の結果ばかりにご満悦なのが赤頭巾です。
キャミソール・ドレス、フロントとレッグの部分が大きく開いた大胆な裾を
見せつけながら、タズナを掴みジャバウォックの背に仁王立ち。
本当であれば、【狼に会うには回り道】と洒落込むところでありましょうが、
この赤頭巾は、些かせっかちで知られておりました。そこで全速突進です。
するどくおいつけ、うちてしやまん。おいつけおいこせ、きちくべいえい!
(あ。今中の人からの不平不満が届きましたが気になどして居られません)
大きく旋回急上昇、木々の連なりがひっかかるのすら恐れずに!
無理に上から急降下。仏の幻想がベースとはいえ、彼女は魔女の毒を混ぜ込んだ
独逸育ちの幻想種。ライフル構えて撃ちまくり、急降下爆撃(射撃?)などと
意気込み、洒落込んでいるようでした。
【現在地:C地区 緑の中に風が通って追い掛ける…おいてかないで!】
- 450 名前:三月ウサギ投稿日:2007/11/28(水) 20:59:35
- 【ウサギの独語】
そうです。貴女に如何にもお話するのが、正しい私の務めなり。
ウサギは語る。私は語る。森に渾なす貴方に語る。
今の森の本当を。
クロト、ラケシス、アトロポス。
この森は、悪戯なりたつ三柱の上。
クロトつき、ラケシスこねし森の園。膨らみ・焼くはアトロポス也…。
そ森は3柱の神々すべてがはじまりであり、終の女王であるべきでしょう
────よろしいか?
しかして森は生きている。どの女神も外をむき、背中を見るのが関の山。
クロトは望む、アトロポス。ラケシスを願うアトロポス。
────よろしいか?
アトロポスが強請るはラケシスの形。クロトは願うアトロポスの姿。
されど世界は異なった。「彼女」は違う偽アトロポス。最早誰にものぞまれず
誰も望まぬいらないこ。けれど世界はあらねばならぬ。3つの柱の場は望む。
────よろしいか?
貴女はクロトの魔術師か?主賓の少女、ラケシスか?
それとも彼方の聖女、救国に望まれぬ聖女アトロポスが憎しからましか?
森は紡がれる。リドルはまわる、世界はまわる。時計は動く、そろそろ動く。
────よろしいか?
森の修正待ち侘びて世界は回る、私も踊る あなたは何処で回るのか?
きっくきっくとんとん きっくきっくとん それはまた、別のお話です…………。
- 470 名前:◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/28(水) 23:06:46
- 赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>449>>450
◆
クッキング・フォレストにようこそ!さあ、今夜も「Forest 3分クッキン
――――違う
さあ、今夜も「ちょっと聞いてよ、おもいっきり森電話」の時間がやってき
――――これも違う
そこは、彼女が初めて〈声〉を聞いた場所に似ていた。
――――違う ……早送り
ここから先はプリマヴェラを見失ってしまってヒューマンボーイの変わりに
――――これ!そうこれなの!これが正しい続きなの!!
◆
- 471 名前:◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/28(水) 23:07:22
- >>470
♠
リドルはまわる、世界はまわる。時計は動く、そろそろ動く。
森の修正待ち侘びて世界は回る、私も踊る あなたも踊る。
――――ならば、人形も踊る?
そう、人形も踊り出す。そして人形が踊り出す。人形たちが踊り出す。
ホールの中で人形が踊る。舞踏客たちが優美に踊る。
踊る踊る人形が踊る。踊る人形謎は何処?
謎は何処、何処は何処、ここは何処。ここを何処と尋ねしや?
ならば答えて差し上げよう。
ここは罪都。影よこたわる国、罪都・倫敦
人形たちのネヴァーランド。少女たちのアンダーグラウンド。
そして女王陛下のワンダーランド。
踊り続ける人形の彼方に、一人の人形が鎮座する。
七つ星の王冠をかぶった少女が、不釣合いなほどに巨大な玉座に腰掛けている
世界で最も巨大なルビーから削りだして造られた玉座。まさに珠玉。
だがそれに腰掛けるのはさらに高貴な宝石。
彼女は女王、彼女が女王。生まれ付いての時計仕掛け。
彼女はそっと口を開く。あなたに対し口を開く。
♠
- 472 名前:タイターニア ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/28(水) 23:08:30
- >>471
♣
ごきげんよう、あなたたち。
ここから先はプリマヴェラを見失ってしまったイグナッツ・ズワクフ()の代わりに、わたしが彼女の物語をあなたたちに語ろうと思います。
わたしはあなたたちに教えてあげたいのです。彼女の行く末を、そして顛末を教えてあげたいのです。
それはまるで時計仕掛けの小鳥のさえずりのような声。でも不思議とよくとおった
怪獣に追いかけれらたプリマヴェラはいったいどうなってしまったのでしょうか。
かわいそうに食べられてしまったのかしら。
いいえそうでないことだけは確かよ。いまは、まだ、ね。
人工物をかくも具現し、自然の敵対者として作られた完全な人形。その人形がうっすらと微笑む
そう、だから物語は続くわ。
物語は続く。
物語は続く。
ならばわたしは語りましょう。踊る人形の物語を。恍惚的な愛死のささやきを。
そしてそっと小さな声で、"娘≠ノ対し語りかけた
でも気を付けなさいプリマヴェラ。
この森にいるのはジャバウォッキーだけではないのですから。
♣
- 473 名前:◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/28(水) 23:09:33
- >>472
◆
ジャブジャブやバンダースナッチが徘徊するこの島こそ、疑いなくジャバ
ウォックが殺された島に違いありません
――――ルイス・キャロルがチャタウェイ夫人に宛てた書簡より
◆
- 474 名前:タイターニア ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/28(水) 23:10:04
- >>473
♠
この森では雨のかわりに鉛弾の雨が降るのでしょうか。
だとしたらきっと棺屋は大儲けでしょう。
花屋と葬儀屋と僧侶もかしら。あら、そうでなくても僧侶はたくさん儲けて
いたわね。そうよね、ピーター。……あら、これは不適切な発言だったかしら。
兎も角も、激しい銃火の土砂降りの中をプリマヴェラは元気いっぱい走って
いきます。
彼女はうまくかわしていたわ。
でもこのままではじきに捉えられてしまったでしょう。なにせ相手は空を飛
べるのですから。
それはプリマヴェラもきちんと解っていたようでした。
だから彼女は走りながらふたたび魔法を使ったのです。
わたし譲りの彼女の瞳が、緑色をした人形の瞳が、美しく輝きだしました。
そして魔法が力を顕しました。美しい魔法がこの世界に力を顕しました。
そう、今度の魔法は先ほどのものよりも、はるかに美しく、はるかに可憐な
魔法だったのです。
♠
- 475 名前:◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/28(水) 23:10:36
- >>474
♣
枯れ木に華を咲かせましょう
赤い赤い死の華を
それは甘いかすっぱいか
あまいあまい死の花を
枯れ木に華を咲かせましょう
魂消るような死の華を
それは綺麗か醜いか
綺麗な綺麗な死の華を
枯れ木に咲いた花々は
どれもこれもが蠱惑の華よ
蠱惑の華は死の華よ
魂消るような死の華よ
咲いて咲いて繚乱し
散って散って華やかに散る
散る、散る、散る。
堕ちる、朽ちる、散る散る散る散る……
♣
- 476 名前:タイターニア ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/28(水) 23:11:16
- >>475
◆
気が付けば森の木々に無数の花が、数多の花が、咲き誇っていたのです。
まさに百花繚乱。それはとても幻想的な光景だったのです。
ですがそれを見ることが出来たのはほんの一瞬の間でした。
何処こらともなく風が吹きつけ、花は次々に散ってしまったのです。
花弁の吹雪が当たり一面に吹き荒れました。
まるで日本で春に見ることのできる桜吹雪というもののように。
こうして花びらの帳がジャバウォッキーの視界を覆い隠していったのです。
そしてそれこそがプリマヴェラの狙いでした。そうよね、ピーター。
彼女はその一瞬を逃さずに力いっぱい跳躍します。
地面を蹴って、樹を蹴って、力いっぱい跳躍します。
ついでに突然現れたチェシャ猫を踏み台にして高く高く跳躍します。
そうするとほら、目の前にはジャバウォッキーの恐ろしげな顔がありました。
だからプリマヴェラはジャバウォッキーの眼を狙い、鋭い傘の先端を振り下
ろしたのでした。
◆
【現在地:C地区 ねこふんじゃった】
- 485 名前:”赤頭巾”投稿日:2007/11/29(木) 00:21:24
- >プリマヴェラVS赤頭巾
>>470>>471>>472>>473>>474>>475>>476
気がつくと、赤頭巾は絵の具のパレットの世界に浮かんでいる様でした。
空色のチューブを捻り、水付きの絵筆をふるって画用紙に落した後で
ちょっと、楓の枝葉が日差しを遮っている部分を認めてみると、居ても
たっても居られなくなって…ビリジアンのきつい筆をとって搾り出した
あの瞬間。
そして好きなあの子が日差しの強さに頬を染めた一瞬を描きたい───
情熱の限りを表す為の桃色の油絵の具のひとしずく。筆も洗わずつけて
しまったあの色。…そんな色をあなたも覚えてることと思います。
爬虫類の細く黄金の瞳には色彩を計る力はありませんでした。
しかしそんな彼にもきっと、この不思議な衝動を心に繋ぎたいという
純粋な想いがあったのでしょう。その性を甚だ抑鬱に染められて、普段使わぬ
思考は腐敗し馬鹿踊り。ときめきよろめき、とどめにいちげき。
今日の天気は晴れのち傘マーク。ジャバは正確な天気予報を受信して
明日の天気についてこれ以上思い悩むこともなく、地面に伏してゆきました。
そんな幸せも赤頭巾には全く関係ありません。
乙女の様にはなびらを、たくさん口に乗せながら、うしろへ落ちつつ
引き金を少女玩具へ引き続けるのです。ぱらぱらと飛び散る薬莢と火花たち。
この高さから落ちるのはとても危険に思えるでしょう?
けれどもいつもこの時間、そこにはトランプの衛兵【ハート小隊というらしいです】
が通りかかる事になっておりました。
かかとをあげて、みぎて・ひだりて、左右よし。きどって歩く13人。
戦闘はトランプの癖に太っちょ、大力自慢のハートAさま。
そこに落ちたのが赤頭巾。さしものAも紙にすぎません。Aこけたらみなこけた。
1、2、3、4みなこけた。パラパラドミノにみな倒れてしまったのでした。
【現在位置C地区 猫踏んじゃったらひっかいた、ネコひっかいた。きっとそうなるわ】
- 488 名前:タイターニア ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/29(木) 00:57:26
赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>485
♠
傘から手をはなし、ジャバウォッキーの身体を蹴り付けて、彼女は後方に跳
躍します。
飛ぶプリマヴェラと落ちる赤頭巾。一見して勝者と敗者のようにも見えまし
たが、いいえいいえそうではありませんでした。だって赤頭巾は銃を持ってい
たのですから。
赤頭巾の銃が火を噴きました。その銃弾をプリマヴェラは身体を捻ったり魔
法を使ったりしてかわしましたが、それでもそこは逃げ場のない空中、ぜんぶ
かわすのは不可能でした。
数発の銃弾が肩口を掠め、二の腕を擦り、彼女に手傷を負わせました。
痛みに彼女は眉をしかめます。
その時でした、彼女の後方に突然気配が現れたのです。
そしてそれは問答無用で襲い掛かってきたのでした。
踏み台にされ怒ったチェシャ猫が彼女を引っかこうとしたのでした。
でもプリマヴェラはそれを見て笑いました。丁度いいと思ったのです。
彼女は空中で身を捻ると、チェシャを赤頭巾めがけてきり飛ばし、盾と砲弾
代わりにしたのです。それは一石二鳥でとてもお得でした。
そうこうしているうちにプリマヴェラも着地しました。
着地と同時に彼女はドレスの中に手を忍び込ませました。
次の瞬間、彼女のスカート中から紐状の物体が地に落ちました。
さきが二つに割れた黒くて光沢のあるそれは、あたかも黒い尻尾のようで、
彼女の小悪魔めいた魔性が具現化したような、そんな印象を見るものに与えま
した。
ですがもちろん尻尾などではありません。わたしの子供たちにしっぽなんて
生えていません。だってそんな風には設計されていないのですから。
それは蛇の舌、と呼ばれる鞭の一種でした。
キリスト教徒には酷く嫌われている鞭でした。なぜって?理由は簡単です。
これはキリストを打ち据えた、彼らにとって忌まわしい鞭なのですから。
「跪いて足をお嘗め!」
怪物の王女さまのように高らかに笑いながら彼女はそう叫びました。
そして彼女はその鞭を赤頭巾めがけて振るいました。
♠
【現在地:C地区 真赤な頭巾の リゼッテさんは いつも皆んなの 】
- 501 名前:おんなのこ と 三月ウサギ投稿日:2007/11/29(木) 21:01:09
- 赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>488
私は思う。─────『あなたは、思う』
おとぎの国って普通に暮らしてる人、居るんだろうかって。
─────『全員が、特別なぜんまいなのです』
お姫様は大胆な事件にあって、世紀の恋を残酷なリンチの陣地に
つくりあげて、結婚してしあわせになる為の?
─────『真逆なり。幸せの、結婚を形にするのです』
あは、だよね。
お姫さまは、唐突に現れた王子様に救われて、花を散らされて
『幸せ』にされていく。
─────『全ては森の礎のため』
もし、私なら黙って皿を下げてくウェイトレスなんて、きっと一生
友達になれない。そのウェイトレスの脚、ふんづけてさ…警備員に
ロッカールームに転がされてる。
─────『それこそ真逆、貴方は赤頭巾』
No,Kidding!大人びたタイトなキャミ・ドレスも、可愛げな帽子も靴も
わたしはそんな物だけが欲しかったわけじゃない。
おとぎの世界は、与えてくれない。
主役はいない。みんなが不幸、少女も不幸、ネームドは皆、サクリファス。
────『然り、然り、すべては一つ、【観測者】の手慰みに!』
硝子の靴なんて、歩くのには邪魔なだけだって。私は今気付いたけどさ…
────『貴方は森を厭うのか』
ううん。私はアンタと歩きたい!もっと可愛い服を着て、レタスを沢山
奪うんだ。エル・アライラーたちに負けない位に!
────『そうです。それこそが貴方が此処に呼ばれた理由…』
この話は、きっとまた別のはなし。
- 502 名前:”赤頭巾”投稿日:2007/11/29(木) 21:07:01
- >>501
ハートの小隊は女王の親衛隊です。それを踏みつけることは
どういう事なのかわかっているのでしょうか。
足元であばれるカードの山たちは、1枚1枚は非力なものですが、
その形によっては驚くべき力を生むことは誰もが承知の通りなのです。
下敷きで破けた2人を除き、無事な精鋭達は赤頭巾の脚を必死になって
掴みます。5,6,7,8,9,10達のストレートフラッシュが左足。
踏ん張る利き脚には、ふとっちょAを含めて勝るロイヤルストレート!
呻く赤頭巾に襲いかかるのは、猫を上手く犠牲に変えたお人形に他なりません。
ちろちろとした蛇の舌の様な鞭をつかって『脚をお舐め』とは、その鞭に向かって
言ったわけではないのでしょう。
唸りをたてて迫る鞭に、赤頭巾はマントを奪われ、地に付してしまいます。
”それ今だ”とばかりに逸るトランプ兵士。目元めがけて唸る槍、そして
とび来る蛇の鞭。絶体絶命に、赤頭巾は銃を手入れする油があるのを思い出し
ました。懐からとり、トランプにまくのです。
トランプの半分がたちまち塗れて真っ黒になってしまいます。するともう
大変なのです。お互いがくっつき、場から自然に離れてしまいました。
<クロンダイク>のルールに黙って従うしか、トランプとしてはないのです。
そして前回り、綺麗な髪が汚れるのも厭わず転がり若木を撃ちに撃ちます。
その間も止まぬ蛇はまさしく悪魔。
肩や肘には腫れが見え、大胆な服装が乱れ、汚れて既に名前の由来など何処へやら。
けれど、何本かがついに絶えかね倒木し、お人形を襲うようになりました。
それを見て、赤頭巾だったリゼッテはさしも気を抜き立ち尽くしたのです。
【現在地:赤いよ頭巾は ピカピカの 貴女の口にあうものかしら?】
- 503 名前:タイターニア ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/29(木) 21:46:05
- 赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>501>>502
♣
もうあたりはしっちゃかめっちゃか!まるで狂った茶会のように取り留めの
ない乱痴気騒ぎ!
巻き込まれないように一歩引いてトランプの兵士たちと赤頭巾のぐっちょぐ
っちょの泥んこレスリングを鑑賞していたプリマヴェラでしたが、状況はそれ
を彼女に許してくれはしませんでした。
赤頭巾の悪さによって急に樹が倒れてきたのです。その急な展開に彼女はに
もうびっくりでした。
木々がプリマヴェラへと向けて倒れてきました。油断していた彼女にはよけ
る暇などありませんでした。
ならば彼女は潰されてしまったのでしょうか。いいえ、ちがいます。彼女は
そのほっそりとした永遠の思春期の腕で、倒れてきた樹を受け止めたのでした。
自動人形の腕力は素手でも頭蓋を容易く潰します。コンクリートの壁を貫き
ます。ですから樹を受け止めることだってできるのでした。
彼女は受け止めた樹を不愉快そうに払いのけると、右手に持った鞭を容赦な
く振るいました。
ダーマプラスチックと革と金属繊維を縒りあわせてつむがれた鞭が空を切り
裂き赤頭巾に迫りました。
赤頭巾は転がってよけようとします。ですがそのとき鞭の軌道が突然変わっ
たのです。あたかも鞭自身が意思をもったかのように、赤頭巾を追尾してぐにゃ
りと曲がったのでした。
しなる鞭の描くありえざる軌道、それは魔法にも見える光景でした。
ですがこれは人形の魔法ではありません、少女の詐術なのでした。
ダーマプラスチックは体性感覚素材、つまりは知覚増幅機なのです。だから
この素材が肌に触れると毛穴の奥にまでもぐりこみ、極小繊維が素材の末梢神
経と着用者の末梢神経を接続してしまうのです。
そうなるとさあ大変。ダーマプラスチックは体の延長そのものとなり、自在
に動かすことが可能になるのでした
鞭は赤頭巾を追いかけます。そしてまるで絞首具のように赤頭巾の首めがけ
て絡みつきました。
それをみとどけると、プリマヴェラはひらりと飛んで倒れずに残った木の枝
の上に降り立ちます。そしてドールが人間の少女にのみ見せる赤ん坊のように
無邪気な悪意の笑顔で、高らかにこう歌い上げたのでした。
「Hush-a-bye, lady, hung on the tree!」
そして彼女は地面へと飛び降りました。枝をはさんで反対側へと飛び降りた
のです。同時にダーマプラスチック製の鞭を、短くきつく収縮させたのでした。
そう、彼女は赤頭巾を樹に吊るそうとしているのです。
おやすみ 嬢ちゃん 吊るされて
風が吹いたら 死体が揺れる
枝が折れたら 死体が落ちる
嬢ちゃん 死体が 地に堕ちる
♣
【現在地:C地区 頭巾のリゼットさん 頭巾のリゼットさん 赤い頭巾 赤いケープ 赤い服】
- 506 名前:”赤頭巾”投稿日:2007/11/29(木) 22:37:45
- 赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>503
木々の倒れる森の奥、木になり釣られる女の実。
陪臣は人形、判決は──死刑!
後半はそれからはじまる大レース。
判決はきまっているものだから、手口は大荒れ、審議の赤ランプ。
大レースにはつきもの、大穴、大騒動。
赤頭巾は、狼に釣られて殺されるというシナリオはありませんでしたから
ここで殺される訳にはいかないのです。
先ほどの破れたトランプを赤頭巾はその手に持っておりました。
今頃、お屋敷では内乱波乱の騒動の為、トランプたちは点呼をとって
整列しなければならないのです。ぶるぶる震えるトランプの3。
急ぎ、左手にもった時に、首へとするどくかかる鞭。
彼女はトランプが逃げる力で腕をふりあげ、手を通します。
首のかわりに絞まる腕。そこを始点に女タァザン。
脚に結わえた50口径、自慢の業物を右腕一つで5連発。
地面に近づくすれすれで、おまけの最後で鞭を撃ち、解くのです。
そして自慢のライフルを、目ざとく見つけ。。。”Adio”とばかりに
猛射撃!
【現在地 C地区
赤色リゼッテさん 泥濡れリゼッテさん 人にShoot 物にShoot DollにShoot!
死地にZapZap埋めていく】
- 509 名前:タイターニア ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/29(木) 23:26:19
赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>506
千切れた鞭を投げ捨てて、プリマヴェラは扇子を広げます。
広げた扇子をひらひらひらと振り回し、襲い掛かる銃弾を何とか弾いていっ
たのです。それでもこの至近距離、しかも相手は .50口径、さすがのチタンの
扇子でも、さすがのドールの身体能力でも、すべて弾くことなどできるはずも
なく、彼女の身体に何発もの銃弾が叩き込まれていったのです。あふれ出した
人形の血が、白い毛皮のコートを赤く汚していきました。
そうこうしている間に、赤頭巾は愛用のライフルを手にしました。
赤頭巾、長銃を取つてかまへ、狙いてbangと撃つ。小兵といふぢやう、12.7mm 、
銃はつよし、森響くほど長鳴りして、あやまたず扇の要ぎは 1 inch ばかりおいて、
ズキュゥゥゥンとぞ射抜いたる。銃弾は森へ入りければ、扇は空へぞ上がりける。
かくして扇は弾き飛ばされてしまったのです。
さすがにたまらなくなったプリマヴェラは便利な魔法を使うことにしました。
緑の瞳がきらめいて赤頭巾の銃はあっという間に時計仕掛けのオレンジ……
ではなく時計仕掛けのフラミンゴにかわってしまったのでした。
それでクロケーをやるつもりなのかしらね、ピーター。
わたしが与えたドールの魔法がまたしてもプリマヴェラを助けたのでした。
えっ?なぜドールにそんなことが出来るのかですって?そんなイカサマがで
きるのかですって?もちろん魔法だからです、しらないのですか?いいえそん
な事はないわ知ってるはずよ。
だって、少女は誰でも魔女なのよ。魔女が魔法を使えたってなんらおかしく
はないはずでしょう?
閑話休題。
魔法で銃をフラミンゴに変えたプリマヴェラは、まっしぐらに赤頭巾へと突
撃していきました。笑いながら、叫びながら突撃していきました。
「オオカミが来るよ!オオカミが来るよ!」
……その台詞はどうかと思うわ、プリマヴェラ。詰めが甘いわ、駄目な子ね。
スペイン送りよ。
いやー!スペイン宗教裁判だけはいやー!!たすけてー!
なんて台詞がどこからか聞こえてきましたとさ。めでたしまでたし。
【現在地:C地区 あるひ 赤頭巾と二人で 殴りあったさ】
- 514 名前:”赤頭巾”投稿日:2007/11/30(金) 00:21:01
- 赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>509
赤頭巾は、いつのまにか構えていたものが鳥に
なりかわってしまい、驚く間すらありません。
シニカルな顔を、そのまま歪め、そのまま凍り付いておりました。
おおかみがやってくる、おおかみが、やってくる。
可愛いドレスを血に染めて、子供を食べにやってくる!
哀れな赤頭巾!彼女はフラミンゴを抱きしめて、こう言いました。
片手の指を前へと突き出し、人差し指を前へ突き出し
くちをぱくぱく、言いました。
「狼女、私を喰らおうって?出きるかい?
、、、、、、、、、、、、、、、、
『喰い改める』なら見逃してやるわ」
ばぁん、と一言ウィンクも一つ。
武器を失い気でも違ってしまったのでしょうか?
赤頭巾は狼をまえに、空想の銃をひとつ指にひきしめ
思いの向うの標的を全て打ち抜きながらそんな事を言ったのでした。
【現在地:C地区 Green,Green,この森には狂気が集い GreenGreen
青空が、ああ、とても────遠い──────────】
- 515 名前:タイターニア ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/30(金) 00:49:22
赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>514
♠
かくしてプリマヴェラは赤頭巾を捕まえました。彼女は彼女を捕まえました。
赤頭巾の細い腕にプリマヴェラの細い指がかけられて、白い肌が鬱血し桜色に
染まります。そしてプリマヴェラの手に力がこもり、万力のように赤頭巾の身
体を締め上げ固定したのです。
病的に精妙な指が赤頭巾の身体に食い込んで、赤頭巾の身体を強く強く束縛
します。あまりにも精巧でグロテスクに近い瞳が赤頭巾の身体を嘗め回すよう
に見つめます。小さなかわいい鼻を鳴らし、赤頭巾の匂いを、得物の匂いをく
んくんと嗅ぎました。
「あなたアメリカ人の匂いがするわ。わたしの好物はイギリス人だけど、アメ
リカ人も嫌いじゃないのよ下品なほどにコクがあるわ」
そう赤頭巾の耳元でささやいて笑う彼女はとてもきれいでした。人を殺す前
はいつだってそうなのです。
ドールは女性の邪悪さのささやかな夢、ドールは男の夢見る女、破滅的に美
しい危険な女。
プリマヴェラは彼女の襟元を掴むと力任せに引き裂いて、その白くてすらり
とした幼さの残る喉を白日の下にさらしたのです。
「安心して、わたしのテーブルマナーは完璧なのよ」
真っ赤な舌が、鋭い犬歯をチロチロと舐め上げたのです。
そして彼女は彼女の白い喉に顔をうずめ口付けをしました。
♠
- 516 名前:◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/30(金) 00:49:43
- >>515
♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥
咀嚼音が鳴り響く。
咀嚼音が鳴り響く。
皮膚を食い破り肉を食いちぎり腱を噛み切って骨にかぶりつき脂肪をなめ取っ
て赤い唇と紅い唇が重なって赤い唇が白い牙に挟まれて紅い唇が食いちぎられ
て白い肌に白い牙があてがわれて白い肌に白い牙が突き立てられて白い肌に赤
い血があふれ出して内臓を舐め上げて脊髄を甘噛みし指にしゃぶりつき指を食
いちぎり指を葉巻のようにくわえ太ももにしゃぶりつき下腹部に歯を立てて下
腹部に腕を突き入れて子宮を引きずり出して腹腔に顔を突き入れてはらわたを
咥え引きずり出して真っ赤に染まった赤頭巾の身体にデッドガールは飽きるこ
と無くむしゃぶりついて。咀嚼して咀嚼して咀嚼して飲み込んで飲み込んで飲
み込んで血を啜り血を啜り血を啜り飲み干して飲み干して飲み干して咀嚼して
咀嚼して咀嚼して飲み込んで飲み込んで飲み込んで血を啜り血を啜り血を啜り
飲み干して飲み干して飲み干して咀嚼して咀嚼して咀嚼して飲み込んで飲み込
んで飲み込んで血を啜り血を啜り血を啜り飲み干して飲み干して飲み干して咀
嚼して咀嚼して咀嚼して飲み込んで飲み込んで飲み込んで血を啜り血を啜り血
を啜り飲み干して飲み干して飲み干して飲み干して飲み干して飲み干して……
ごちそうさま
♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥
【現在地:C地区 赤い頭巾 かぶってた おんなの子 いじんさんに たべられて イっちゃった】
- 559 名前:”赤頭巾”投稿日:2007/11/30(金) 20:51:09
- 赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>509
赤頭巾赤頭巾たべられた、食べられた。
言いつけ破って、食べられた。
遠回りして、食べられた。
《会いにいかずに》食べられた。
赤頭巾は死んだ。彼女の中のフランス幻影は死に絶えた。
───So.What?????
だから始める、今から始める、だから世界は
眩しいんだ!俯くアリス、怯えるジャンヌ。
背中煤けるグルマルキン。──So what?
森は生きる、森は森のために。オレは赤頭巾。
狼に食べられ、処女と命を奪われた赤頭巾。
───So,What??????
だから始める、本当のアリス。本当の夢物語を!
イーニ、ミーニ、マーニ、モ!
狼指で捕まえろ。
うぉーと吼えたら 放しておやり。
イーニ、ミーニ、マーニ、モ!
ママがくれたガレット・ワイン。
いいもの、あげたから…
これで、こんどはアンタが鬼だ!
あわせかがみのかがみのせかい。
───────────────────
鏡よ、かがみ。オレの心を写してよ。
幸せな世界、見せてあげてよ。
他の皆に幸せの夢、見せてあげてよ。
──────────────────GUN!!!!!!
。いかせのみがかのみがかせわあ
!だ鬼がタンアはどんこ、でれこ
…らかたげあ、のもい
。ンイワ・トッレガたれくがママ
!モ、ニーマ、ニーミ、ニーイ
りやてし放 らたえ吼とーぉう
。ろえま捕で指狼
- 562 名前:『Guncherry』asバニースタイル ◆PxpeacevxU 投稿日:2007/11/30(金) 22:06:25
- >>559
♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥
咀嚼音が鳴|響く。 | / ♥
咀嚼音が鳴|く。 U | / ♥
\ U / ♥
い破り肉を\食いUぎり腱を噛み\って骨にかぶりつき脂肪をなめ取っ ♥
て赤い唇と紅い唇が重な\U赤い|が白い牙に/挟まれて紅い唇が食いちぎられ ♥
て白い肌に白い牙が:::あて::U::が|れて い肌に\い牙が突き立てられて白い赤 ♥
い血があふれ出し::::::::: ::: /::*.. ::::: ::: げて脊髄を甘噛みし指にしゃぶりつき指を食♥
いちぎり指を葉巻の::::::* ::え太ももにしゃぶりつき下腹部に歯を立てて下 ♥
:::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::: :::::::───\ ___________________________________________/
腹部に腕を突き入れ:::: :: ::: :::::::::を\ ____________________________________________________
咥え引きずり し/真::::::::: ::: ::::::::::::::::::赤頭\巾の身体にデッドガールは飽きるこ /
::::::::::::::と無くむしゃぶり/いて。\咀::::して咀嚼して咀嚼し \
飲み込んで飲み込んで飲 血を啜り飲み干して飲U干して飲み干して咀嚼して |
み込んで血をり/を啜り\血を啜り飲み干して飲U干して飲み干して咀嚼して ♥
咀嚼して咀嚼/飲み込ん U飲み込んで飲み込んで\血を啜り血を啜り血を啜り ♥
んで飲み込 Uで血を啜り血 Uり血を啜り飲み干して飲U干して飲み干して咀 ♥
嚼して咀 /嚼して飲みUんで飲み込んで飲み込 Uで血を啜り血を啜り血 ♥
啜り飲みし/て飲み干して/\み干して飲み干して飲み/\干して飲み干して ♥
/ / \ \ /
/ / ───/──────────────────
ごちそう / さま /
──────────
───────────
| \干して飲み干して咀嚼して\
───────────
そしてオレは新しくこの世界に生まれた。
夕焼けの世界が見える、この世界の黄昏時が。
とっても綺麗だから、オレは泣いていた。世界の美しさを知って、だから、生まれながら
泣いたんだ。Hello.My Glourius world!Are you Happy?
幸せだよ。だって歌えるんだ、話せるんだ、I kick you!ぶっこめるんだ。
流れろ、涙…オレの矜持のために。
腹を撃ち抜き、オレは生まれる。幻影のカラを破ってオレは生まれた。
コルトSAA、硝煙棚引くシルバーバレルを引っさげて。
ウサギと一緒に森を歩こう!おそろいの付け耳つけて、蝶ネクタイを
オシャレに決めて、スーツで森をきっくきっくとん。
腹を破られ呻く女にくるくる回ってご挨拶。
「いーっだ」…ご挨拶ったら、ご挨拶。
- 565 名前:タイターニア ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/30(金) 23:02:07
- 赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>559>>562
♠
かわいそうに。お腹を破られたプリマヴェラは痛みのあまり地面をのたうち
まわりました。その身体は地獄の業火のような激痛にさいなまれ、弱々しく痙
攣してい■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
- 566 名前:◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/30(金) 23:02:30
- ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■黙示的破滅が近付いている。
祭りの終わりはもう近い。この森ももうすぐ消えてなくなる。
だからここからは、おれがお前らに語ってやろう。
簡潔に、事実だけを。
- 567 名前:◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/30(金) 23:03:10
- >>566
プリマヴェラの腹に開いた大きな穴をダーマプラスチックのドレスが縫合
した。自動人形の腹を自動的に。
彼女の纏っている服の素材はダーマプラスチックだ。
環式分子が量子の編み物のようにつながったプラスチック。皮膚プラスチッ
ク。膠原と弾力素材の生きた培養組織。
くそったれな人形の女王から説明があったように、ダーマプラスチックは素
材の末梢神経と着用者の末梢神経を接続してしまう。
衣服と肉体が溶け合う。
縫合した傷口を人工筋肉と人工皮膚がぴったりと覆う。止血し保護する。
ドレスから放たれるインパルスが神経束を上向きに伝わって、破滅的に官能
的な快楽を脳に送り続ける。鎮痛。
傷口を皮膚プラスチックが塞ぎ、痛みを皮膚プラスチックが癒す。
人と服の融合=蠱惑。
衣服と共生者となったプリマヴェラが立ち上がる。
だがその顔色はいつもよりもさらに酷い。まさに死人そのもの。
「とんだ出産ね。凄く大変だったわ。あなたちょっと太りすぎじゃない?」
血反吐の混じった唾を吐き棄て彼女はそれでも悪態をつく。
それはつまり悪態をつくだけの余裕があるということだ。
衰弱はしている。だが死にはしない。彼女は自動人形。大事なものは全て子宮
に入っている。腹をぶち破られた程度では死にはしない。
- 568 名前:◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/11/30(金) 23:03:52
- >>567
プリマヴェラがもういちど血反吐の混じった唾を吐く。同時に彼女の身体が
跳んだ。
地を蹴りつけ、残された森の木々を蹴り付け、夜の森を縦横無尽に駆け巡る。
下は上へ右は左へ縦は横に横は縦にさかしまに理不尽に縦横無尽に駆け巡る。
プリマヴェラが森の木々を足場に圧倒的な速度で跳びまわる。闇夜の森の中
を高速で動き続ける。
悪くは無い手だ。自動人形の機動力を十全に発揮すれば、人間に捕らえきれ
るものではない。
それは一流の兵士とて同じことだ。――――相手がただの人間ならば、だが。
そうしてプリマヴェラは高軌道で敵の視界からから消え去り、一気に間合い
をつめようとした。
闇の中で彼女のかわいらしい小さな白い手がひらめく。
そこには赤い爪。丹念にネイルアートのほどこされた彼女の爪。長く鋭く硬
い。まさに鈎爪。彼女の身体能力の生み出すパワーとスピードがあれば刃物に
も兇器にも狂気にもなりえた。
彼女は走る。森の中を走る。闇の中を走る。鈎爪をひらめかせ得物めがけて
走る。そして、死を纏った天纏のように彼女はガンスリンガーへと
――――舞い降りた。
【現在地:C地区 森】
- 571 名前:『Guncherry』azバニーガール ◆WPOkEMonrM 投稿日:2007/11/30(金) 23:47:18
- >>565>>566>>567>>568
赤頭巾 vs プリマヴェラ
右手を上に元気良く──左手は指差す赤茶けた土に。
これってきまったポージング、Saturday Night Feverの伝統溢れるポージング!
そしてオレは言う。脚をちょっと曲げて屈伸…こうして立つと、まっすぐ立つ
よりも体のライン、綺麗に見えるんだ。バニースタイルだもの。いっそうCute♪
「ゴメンねママ、愛らしいオレのママ!悪い子でゴメンねオレはヤンキー。
とても口じゃいえないくらいの、そうさオレはBad-Girl。アンタのおなかに
きっと大事なもの、忘れてきたんだよ」
ダイジナモノヲ、キットオナカニ。
赤頭巾は、狼のお腹から救い出された後…狼に何をした?
おなかのなかに、沢山の重り。動けないほどの沢山の重り。
人形は間違いなく「赤頭巾」を食べた。そして幻想を吸収した。
フランスの赤頭巾はそこで死ぬけれど、あの莫迦魔術師の力と
ウサギの魔力で改変された赤頭巾は、みんなも知ってるドイツ番!
ここは森。森のリドルはまだ続く。死にかけの森だけれども、まだ
森は生きている。
人形なのにそんな指先、とてもうらやましいって思うほど白い手。
ちっぽけなオレの男の子みたいな伸びきらない指なんか比べたく
ないくらいの手足。けれどそんなの────So,What?
鋭く迫る爪、けれど重くなる体、あがくほどにどんどんと体にたまる
『赤頭巾と狼のギフト』の前にはすっげぇこれってKoiking!
振り上げた右手、ゆっくり相手に向かって下ろして…無表情な顔でまたまた
オレは言ってやったのさ。
「ゴメンねママ、オレはヤンキー。これ以上ないってくらいにアンタの腹に
大事なものをケツラクさせて生まれてきたのさ」──ばぁん。
【現在地:C地区 森】
- 575 名前:◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/12/01(土) 00:43:18
赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>571
戦闘は終局へ向けて加速していく。
だからそれは1秒よりもはるかに短い間に起こった。
プリマヴェラの身体が加速度的に重くなっていく。
プリマヴェラの身体が加速度的に遅くなっていく。
森の呪いが彼女の身体を絡めとっていく。
あたかも、もうすぐ童話はおしまいだから用済みになったオオカミはもう退
場しろといわんばかりに。
失速し、失速し、失速し、地に落ちる。
――――鈎爪はとどかない。
見上げれば、ぽっかりと開いた奈落の穴のような銃口。
降り注ぐ銃弾。飛来する銃弾。死の象徴。
プリマヴェラの増幅された知覚が、銃弾に刻まれたライフリングの痕跡一条
一条をも捉える。
量子の魔法。何も無い空中に存在しない物質を想造。それを蹴り付け、反動
で大きく横に跳ぶ。
だが全てはかわしきれない。銃弾が容赦なく彼女の身体を抉る。
次の瞬間、プリマヴェラの全身から血のシャワーが噴き出した。
赤い血が彼女の全身に降り注ぐ。己の血にまみれて倒れ伏す。
紅いドレスに赤い血が、白い肌に赤い血が。
朱に彩られた彼女の肌はあまりに白く、その反射率は
- 576 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/12/01(土) 00:43:40
- >>575
ちょっと待って!これはわたしの物語よ!
だからわたしが語るわ!わたしを語るわ!
.
- 577 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/12/01(土) 00:44:05
- >>576
♠♣◆♥
痛みに耐えてわたしは立ち上がったの。
傷は深かったわ。もうダーマプラスチックから送られてくる快楽でも消しき
れないほどに。身体は重かったわ。もう永遠に眠ってしまいたいほどに。
衣装によって増幅強化された感覚が、森の風景を鮮明にとらえていたわ。
煮沸する世界。生まれては消える泡のよう。なんてきれいなのかしら。
「プリマヴェラ!」
あらイギー。来てくれたのね。少し遅かったけどうれしいわ。
そう、これで役者も道具もそろったわ。
だからイギーとアイコンタクト。イギーとは4年の付き合いになるから、も
うお互い以心伝心なの。……たかが4年ですって?馬鹿にしないで。4年といっ
たら、わたしの人生の4分の1以上なのよ。長い長い時間だわ。
さーて、細工は流々、あとは仕上げを御ろうじろ!
最後にもう一度、かわいらしく忌々しいガンスリンガーに華麗に一礼。可愛
く一礼。健気に一礼。もちろんスカートの裾をつまんで、ね。
そしてわたしはこう言ったの。
「死んでくれる?」
♠♣◆♥
- 578 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/12/01(土) 00:44:34
- >>577
♠♣◆♥♠♣◆♥
スーツケースが内側からはじけ飛んだわ。そして衣服が、たくさんの衣服た
ちが飛び出してきたの。ドレス、ガウン、スーツ、スカート、ジャケット、ア
クセサリー、ストッキング、ジャンパースカート、ギャザースカート、フレア
スカート、プリーツスカート、ティアードスカート、ドレープスカート、レー
スアップスカート、イレギュラースカート、オーバースカート、ドレス、エプ
ロン、パニエ、帽子、ブラウス、コルセット、ビスチェ、カットソー、ソック
ス、タイツ、ケープコート、プリンセスコート、トレンチコート、鴇色、躑躅
色、桜色、薔薇色、韓紅、珊瑚色、紅梅色、桃色、紅色、紅赤、臙脂、蘇芳、
茜色、赤、朱色、紅樺色、紅緋、……etc,etc
わたしのもつ衣装の全てが!
そして飛び出した衣服たちが踊りだしたの、人間のように――人形のように?
――踊りだしたの。夜会服がひらひらと舞い歩き、優雅にわたしに会釈をしたわ。
生きたドレスやガウンたち。空虚の仮面舞踏会
まるでトリマルキオの饗宴に集ったけばけばしい屍衣たちのよう。
そして衣装たちはわたしを守るようにガンスリンガーも前に立ちふさがったの。
それはもうトランプの兵隊ならぬドレスの兵隊。
プレタポルテの兵士たち、オートクチュールの騎士たちよ!
かれらはこの森を衣裳部屋へと変ていったの。
どの服も素材はダーマプラスチック。
皮膚プラスチック。
ダーマプラスチックを構成するのは、人間の生体システムと相互作用する神経終末、
それにつながれた電動筋肉、そして人工皮膚。
だけど何よりも大事なのはドレスの皮質に脳葉を移植してあること。
だから経験と記憶の蓄積さえあれば、自立行動も可能なの。
衣装に大脳皮質を移植するなんて人間の考えることって本当に素敵よね。
そう、皮膚プラスチックこそファッションの黙示録よ!まさに呪物!
陶酔感が脳に火をくべるわ。いたみなんて吹き飛んじゃう!
わたしは蠱惑と量子の魔法で彼らを支配したわ。
衣服王とでも呼んでちょうだい。
そしてわたしは衣服の国の女王になって、衣装の兵隊たちに命令を下したの。
「首をはねてしまいなさい!」
そして衣装たちはさあっと舞い上がって、ウサギさんの上に降り注いでいきましたとさ。
♠♣◆♥♠♣◆♥
【現在地:C地区 だれが彼女を殺したの】
- 587 名前:『Guncherry』azバニースタイル ◆PxpeacevxU 投稿日:2007/12/01(土) 01:55:59
- >赤頭巾VSプリマヴェラ
【現在地:C地区 誰が?それはまた、別のお話】
>>575>>576>>577>>578
「死んでくれる?」/「勝手に殺したくせに」
ママ人形と恋人たちは幸せそうに迫り来る。
けれどそれはオレのファイティング。恋人達の間の信頼関係とか切なさとか
儚さとか情愛とか出会いの想い出とか悔しさとか慙愧とか信仰とか強さすら!
そんなものを分るとか分らないとか、どうだとか言う奴にはオレは只本当に
自殺を勧めるよ。自分の首を自分の歯で噛み切ってさ、敗北主義者の味を
充分かみ締めて死んじまえばいい。それから神さまのところで謝れば良いんだ。
そうしてオレは一つだけを見る。私の、アリッサ・メイベルの必要なものだけを。
それは正義。オレの正義。アメリカらしい、オレの銃口の前の、正義と敵意。
オレは握る、大事な相棒、オレの半身コルトシングル・アクション・アーミーの
銃把を握る。それで、くるくる回してレッツ・ビギン、トライ!
体にささる衣装たち、オレはそれを最小限の動き、袖口をしばりあげ、靴下はちぐはぐ
に結び合わせてばらばらに、お次のシルク生地のブラウスはキック一発木の上へ
→日陰干指定の悲哀…ストッキングはお約束の爪弾き!JerryFishなスカート達は
下から覗けば逃げていく(///)。気難しいコルセットとカットソーはモードの
変遷についてけしかければ、仲たがいを直ぐに始めるとか…衣装ダンスは整理が肝心。
全部放り込むなんてさ、繊維とか混ざってよくないんだよ、ママ?
いなし、踊り、きっくきっくとん。バニースーツこそ、最強可愛い衣装だもん。
オレに従えきっくとん!
…けれど、その奥の奥。心の底、ワードローブの奥底に眠る衣装。それをオレは
見逃したりなんか、出来なかった。体中に感じてる、傷むも感じるくらいのその赤さ。
そう思ったオレを、オレの中のウサギは怒る。けれどそんなことはSuck,Shit!!
オレは衣装に刺され、まと割られ、無理に着せられそうになり…そんな風に衣装たちに
まみれながら、脚も体も折角の衣装も殆ど解けて、只の小さな女の子になりながら…大事なもの、
I miss it!!みつけたんだ。
オレを見つけると直ぐに跳んできてさ、首周りを締めようとしているその帽子。
それはあの「赤頭巾の帽子」だった。エンブレムがとてもイカすシェイプしてるんだ。
オレは、それをみて、周りの衣装たちが体をさいなむのにも関わらず…
自分をこの世界に誘い込んだ私の帽子、ヒッピーニットの丸い帽子を、
それだけを、単純に打ち抜いた。
ママにキス、パパにジョーク。オレの無意味さにThree Cheersじゃん?
打ち抜くのはオレの敵だけ。この妖銃シルバーバレルの銃口の先には、いつも
必ず「悪」が存在しているんだ。なーんて、ね。
ばらばらと散るあかいいと。木漏れ日にちらちらと反射して、とても綺麗な花に見えた。
それをオレは、本気で綺麗だねって言って・・・倒れていた。
私は本当幸せな気持ちになって、そのまま薄らの視界に瞳が翳った。
私、まだやることあったと思ったんだけれど…今はそんなのを考えられなかった。
しらないはずの、ウサギの鳴き声が、おわりのその時に、聞こえた気がしたけれど
具体的にどんな声だったかは、全然、本当に覚えていないんだ。きっと、大事なものを
ママ(!)の体の中においてきた所為に違いない。そうでしょう?
- 652 名前:手垢にまみれたアリスの一人 ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/12/01(土) 23:24:27
- >>587
Epilog
……そうしてあなたはうっすらと瞼を開きました。
そこは、あなたにとって、とても懐かしい場所でした。
柔らかな芝生に覆われた大地の上に横になり、昔からある大樹の木陰であな
たは眠っていたのでした。
その大樹から、あなたの上にひらひらと舞い落ちてくる枯葉を、彼女が優し
く払いのけていました。
「おはよう。快適な目覚めを得られたかしら」
あなたの頭を膝の上に乗せた彼女が、優しくそういいました。
「わたしとっても不思議な夢を見てたわ」
あなたは彼女の問いにそうこたえると、あなたが夢見て(読んで)いたこの不思議な冒
険譚をはじめから終わりまで、思い出せるだけ彼女に話してあげました。話し
終えると彼女はあなたの頬に接吻して、こういいました。
「とっても不思議な夢のおはなしだけれど、もうそろそろお茶の時間よ。さあ、
早くお茶に行きましょう」
ですからあなたは起き上がって、ぱたぱたと駆け出しました。駆けているあ
いだも、なんて不思議な夢だったのだろうとおもいながら走っていきました。
- 653 名前:手垢にまみれたアリスの一人 ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/12/01(土) 23:25:48
- >>652
こうして赤頭巾のリドルは終わりを迎えました。
―――だから、もう、このお話はお終い。
えっ?赤頭巾とプリマヴェラはどうなったのかですって?
それは誰にも分かりません。
わたしにも分かりません。
きっと、彼女たち自身にも……。
だから、そう。
―――これはこれで。
また別のお話。
……でも、あなたがもし、もし続きを望むのならば。
- 654 名前:手垢にまみれたアリスの一人 ◆DOLLmR5Q5A 投稿日:2007/12/01(土) 23:26:05
- >>653
「わたしは望むわ!もちろん望むわ!
だってまだまだ足りないんですもの!
これで終わり?もう終わりなの!?
まさか違うわ認めない!わたしは絶対認めない!!
だって物語は果てしないのよ。区切りはあるが終わりはないの。
まるでコーカスレースのようにぐるぐるぐるぐる回り続けるの。
語り手を離れ、聞き手が語り手になって、その聞き手が語り手になって、変
遷し、変質し、別のものへと生まれ変わるの。だから物語は終わらないのよ! 」
そう、物語は終わらない。
そこに語り手と聞き手がある限り。
この世は夢。一睡の夢。
春の午睡のうたかたの夢。
物語は夢。終わらない夢。
語り継がれる人類の夢。
だからみんなで楽しみましょう。
楽しい物語を語り継ぎましょう。悲しい物語を共に涙しましょう。
まるで踊るようにして、共に語り合いましょう。
間違えぬようステップを踏んで。いいえ、間違えるのもご愛嬌?
宵のさめる夜明けまで、黄金の夜明けまで踊りぬきましょう。
まどろみの正午を通り過ぎ、黄金の午後を踊りぬきましょう。
この世は舞台。人は踊り子。操り人形。
さてさて誰が最後まで踊り続けられるのか。
この世は物語。あなたは語り部。そして主人公。
さてさて何処まで語り継がれるのか。
「つぎはあなたが語り手よ。さあ、お話を聞かせて!」
【The story without end.】