■ そろそろ誰が本物の幼女吸血鬼なのか、決めましょう

1 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/04/29(火) 23:54:30



マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット


―ノーブル・スカーレット―




2 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/04/29(火) 23:57:28







 ―――今夜はこんなにも月が紅いから。

 今宵のお茶は館のベランダで飲むことに決めた。
「かしこまりました」と咲夜が答えると、次の瞬間にはベランダにティー
セットが広がっている。まるでわたしがそうしたがる運命≠予め読み
取っていたみたいだが、彼女の場合はタネも仕掛けも用意されている。

 ……そう、咲夜はいつだってインチキな子なのだ。

「あなたってほんとにインチキね」

 インチキ。その語感が面白くて、わたしはくすくすと笑う。
 椅子にわたしが腰掛けるのを見守りながら、メイドも「そうですね」と
優しく同意した。自分でもインチキだと分かっているらしい。

「お嬢様、インチキなお茶を淹れました」

「今夜はどんなインチキなものを入れたのかしら」

「インチキなぐらいに紅いものです」

 確かに、カップに満ちた紅色は夜に浮かぶ月よりなお紅い。

 これはインチキね。わたしが微笑むと、メイドも「インチキですね」と
相槌を打った。……どうやら今宵は、インチキな夜になりそうね。




3 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/04/29(火) 23:59:01


 紅魔館の大図書館には〈無線局〉がある。

 わたしがそのことに気付いたのは、パチュリー様に召喚されてしばらく経
ってから。この迷路のような大図書館の唯一の司書として、どうにか迷わず
に仕事をできるようになった頃のことです。
 蔵書の樹海の最奥に、東洋風のパーテーションで四方を仕切って独特の空
間を作り出していました。

 ぱたぱたと羽根を動かして上から覗くと、がっしりとした机の上に、得体
の知れない怪しげな機械装置が積み木のように重ねられています。
 機械の箱にはつまみやらスイッチやら、時計のような目盛りやら温度計の
ようのような計測器やらでびっしりとデコレーションされていて、しかもそ
れがいくつもいくつも複雑に合体しているんです。
 果てには細かい螺旋をまく針金の角や、試験管を逆さまにしたようなガラ
ス製の角が、装置のてっぺんからにょきにょきと生えています。……その様
子は、例えるならまるで無機物の田んぼのようです。大豊作です。

「これはなんでしょうか」

 そうご主人様に尋ねて、帰ってきた返事が「無線局よ」でした。
 それで納得しろと言いたげな素っ気のない口調。だからわたしは、〈無線
局〉というのがいったいなにを目的とした施設なのか、そのときはまったく
分かりませんでした。ご主人様が生成した魔術装置……その程度の認識です。

 コールサインはサイレントセレナ=B

 ご主人様は一週間に一度ぐらいの頻度で、この〈無線局〉に足を運びます。
 そのときは決まって、パーテーションの向こうからご主人様特有の抑揚に
欠ける声がぶつぶつとこぼれてきます。魔術の詠唱……かと思っていたら、
これはご主人様いわく「ラグチュー」という行為らしいです。
 そういう魔法があるのでしょう。よく分かりません。

 しばらくして、この「ラグチュー」には相手がいることが分かりました。
 ご主人様は〈無線通信機〉を媒介にして、交霊を試みていたんです。

 コールサインはネガティヴレインボウ=B

 その頃には、どうも詠唱というより会話と考えたほうが良さそうだな……
と、わたしなりに〈無線局〉の用途を解釈し始めました。
 交霊じゃなくて、交信なのかもしれません。テレパシーのように、遠く離
れた相手とお話をするんです。……そんなことのために、どうしてこんな仰
々しい装置が必要なのかわたしには理解できませんでしたが。

「この機械があれば、幻想郷の外の世界の声も拾えるのよ。〈無線通信機〉
を使って、世界と世界を仕切る境界≠またいで交信する―――外の世界
では、これをあまちゅあ無線≠ニ呼ぶらしいわ」

4 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/04/29(火) 23:59:57



 月を見上げて、咲夜の淹れたインチキなお茶を愉しむ。
 悪くない。そう、悪くない夜だ。
 ―――でも、なにかが足りない。
 そもそもどうして、わたしはひとりでお茶をしているのか。

「……そういえば、パチェは」

 この時間なら、いつもは一緒にいるはずの友人が見えない。

「どうして彼女がいないのかしら」

 最近ずっと同席していませんよ。呆れ混じりに咲夜が答えた。
 ……そう言われてみると、ここ一年だか十年ぐらいパチェの姿を見てい
ない気がする。また何かの実験に夢中になっているのかしら。

「一ヶ月ですよ、お嬢様。まだ一ヶ月です」

 どっちでも同じだわ。パチェがいないという事実は揺るがない。

「お客様と一緒に、図書館でずっと研究をしているんだとか」

「客?」

 そんなの聞いていない。紅魔館の主はわたしなのに。

「言ってますよ」

 そうだったかしら?

「―――で、その客人って誰なのよ」




5 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/04/30(水) 00:00:19



 ご主人様が〈無線局〉の用途を教えてくれたのは、ごく最近……十年か二
十年ぐらい前のことです。もしかしたら一年前かもしれません。
 あまりに突拍子のない事実に、そのときわたしは羽根を動かすことさえ止
めて驚きました。まさかご主人様が、あんなに狭くてごみごみとした仕切り
の中で外界と接触しているなんて。まず考えられません。あり得ません。

「すごいです。パチュリー様すごいです。この魔術装置さえあれば、結界も
境界も関係なしってことじゃないですか。誰とでも話し放題じゃないですか」

「そんな便利なものじゃないわ」

 便利じゃないのが愉しいのよ。
 ―――そう言うご主人様の表情はいつものように眠たげでしたが、〈無線
通信機〉を見つめる目はちょっとだけ愛おしげでした。

あまちゅあ無線≠ヘ誰とでもお話しできる便利な魔法なのですが、不思議
なことにご主人様が交信する相手はたったひとりでした。
 それがコールサインネガティヴレインボウ≠ウん。
 顔も見えない、増幅器(スピーカーっていうらしいです)からこぼれる声
も雑音だらけなのに、ご主人様は一度「ラグチュー」してしまうと、夜が明
けるのも構わずネガティヴレインボウ≠ウんと話し込みます。

 活字中毒でひとと会話するより本とお話する時間のほうがはるかに長くて
時々文法の発音を忘れてしまうほどお喋り嫌いの(……ごめんなさい。言い
過ぎましたっ)ご主人様が、そこまで夢中になるなんて。
 とても驚きでした。ちょっと信じられないくらいです。

 ご主人様とネガティヴレインボウ≠ウんは、大図書館に〈無線局〉を作
った頃から仲良しらしいので、わたしとご主人様の関係よりずっと長いです。
 でも、一度も会ったことはないんだとか。声だけの繋がり。外の世界のひ
とですから、当たり前と言えば当たり前なんですが、不思議な関係です。

 ―――そんな関係に終止符が打たれたのは、数年前。
 一年か五年か十年ぐらい前です。細かくは数えていないんですが、とにか
くごく最近≠ネんです。

 声だけの繋がりから、お二人は新たな一歩を踏み出します。

 信じられますか? ネガティヴレインボウ≠ウんが、ご主人様に会いに
紅魔館に遊びに来たんです。外の世界から! 結界の向こうから!

「……パチュリー様。なんか着ぐるみ姿のあやしげな妖怪が正門にいるって、
門番が困っているみたいですよ」

「通してあげて。それはわたしの友達よ」

 ―――こうしてサイレントセレナ≠アとパチュリー・ノーレッジ様と、
ネガティヴレインボウ≠アとマリアベル・アーミティッジさんの関係は、
おふ会≠したことで無線友達から正式なお友達へと昇格したんです。

6 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/04/30(水) 00:01:11



「マリアベル・アーミティッジ……」

 聞かない名だった。幻想郷の住人ではないことは確かだ。
 咲夜のインチキ臭い説明を信じるなら、〈ファルガイア〉という外の世
界の住人らしい。わたしと同じ、高貴な吸血鬼の一員なんだとか。

 ……ノーブルレッド族。

 その血族の名は、聞き覚えがある。
 悠久不滅の種族。肉体ではなく、魂が不老不死だという本当の意味での
無限者。同じ吸血種でこそあるものの、共通点といえばその程度で、わた
しとノーブルレッド族の間には種族的差異のほうが多かった。
 不老不死を完成させた類い希なる血族のはずなのに、どういう理由でか
完膚無きまでに絶滅したはずだが―――そう、生き残りがいたのね。

 最後のノーブルレッド。それがマリアベル・アーミティッジだというの
なら、幻想郷に導かれたことに不思議はない。
 実に幻想に相応しい血族だ。

「でも、どこでパチェと知り合ったのかしら」

「さあ……」とメイドも首を傾げる。




7 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/04/30(水) 00:01:41


ネガティヴレインボウ≠アとマリアベル・アーミティッジさんは、〈ファ
ルガイア〉という熱砂に枯れ果てた世界に棲んでいるらしいのですが、実は
幻想郷の住人なんじゃないか……って疑ってしまうぐらい、すぐにこっちの
世界に馴染んでしまいました。

 そんなに頻繁に幻想郷に遊びに来るわけではないんですが、紅魔館の外で
頓狂な着ぐるみ姿を見かけても、あまり違和感は覚えません。
 幻想郷に導かれるぐらいですから、きっと相性が良いんだと思います。
〈博麗大結界〉の境界線を自由に行き来できる理由も、そんなマリアベルさ
んの好奇心の強さと人当たりの良さのお陰かも知れません。
 ……なんだか、服装のセンスもわたしたちと似ているような。

 透き通る蒼穹のような色鮮やかなエプロンドレスはスカートをパニエでた
っぷりと膨らませて、その上から厚手のマントを羽織っています。
 腰まで伸ばした豊かな黄金色の髪の毛にエプロンドレスと同色の大きなベ
レー帽(みたいな何か)を乗せて、さらにアクセントとして河童が使うよう
なゴーグルを身につけています。
 口元から覗く尖った牙と吸い込まれそうなほど深い赤眼が、レミリアお嬢
様と同族であることを暗に物語ってくれます。―――ついでに身長も、お嬢
様よりちょっと高いくらいです。吸血鬼ってみんなこうなのでしょうか?

 マリアベルさんとご主人様は、「ラグチュー」ではあんなに熱心に話し合
っていたのに、顔を合わせてみると滅多に口をききません。
 マリアベルさんがご主人様に話しかけて、ご主人様が適当に相槌を打つと
いう……つまり、いつも通りのパチュリー様です。

 でも、お嬢様や他のお客さんと接するように、ただ静謐の一時を共有する
ということもありません。マリアベルさんとご主人様は、何かひとつの目的
に向けて、つねに集中して夢中になって熱中していました。
 どうも、お二人で一緒になって研究だか開発だかをしているみたいです。
 大図書館の一角に工房まで作って、お二人でそこに引きこもってしまうと、
もうわたしには中の様子はまったく知れません。二人とも夢中になったら時
の流れを忘れてしまう性格なことだけは、確かなようです。

 いったい、二人して何を作っているのでしょうか。

 ご主人様は「革命的な研究よ」としか教えてくれません。マリアベルさん
は、「革命的な開発じゃな」としか言ってくれません。

 マリアベルさんがわざわざ遠く紅魔館まで尋ねてきた理由も、その「研究
/開発」のためらしいです。〈無線通信機〉で「ラグチュー」していた頃か
ら、お二人は「革命的な何か」に心を奪われてしまっていたんですね。
 ご主人様の魔術的な知識と、マリアベルさんの工学的な経験を併せること
で、初めて生み出すことができる何か。……ほんと、なんなのでしょう。

 初めは午前や午後だけの来訪だったマリアベルさんも、足を運ぶ度に大図
書館(というか工房に)に引きこもる時間が増えて、いまでは寝ずに食わず
に一週間や二週間なんて当たり前です。
 紅魔館に遊びに来る頻度自体も増えています。……お二人が夢見る「革命」
が、完成へと近づいているということでしょうか。

8 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/04/30(水) 00:02:58




「……面白くないわね」

 わたしが爪を噛むのを、メイドが横目で見咎める。行儀が悪いと言いた
いのだろう。……親指を噛み千切ったりはしないから、安心しなさい。

「とにかく面白くないのよ」

 ノーブルレッドの生き残りが、パチェと一緒に大図書館に閉じこもって、
何やら愉しそうなことをしている。そのせいでパチェはお茶の席に出てこ
られず、わたしが退屈な想いをしている。
 これはとても気に入らない。

「紅魔館の主たるこのレミリア・スカーレットに挨拶もしないで、他の城
の城主がわたしの領地を歩き回るなんて……」

「いえ、何度かお嬢様には挨拶をなさっていますが」

「覚えてないわ」

 それに、最後のノーブルレッド≠セというのに、メイドのインチキな
話によれば、幻想郷に移住してきたわけではなく、〈ファルガイア〉とこ
っちの世界を気まぐれに行き来しているだけらしいではないか。
 そんなのはやっぱりインチキだ。

「インチキは正すべきだわ……」

 そうですねぇ、とメイドは適当に頷いた。ほんとに適当に。




9 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/04/30(水) 00:03:21


 ―――そしてついにこの日、新記録は打ち立てられました。

「……い、一ヶ月経っちゃいましたよー」

 そうなんです。マリアベルさんとご主人様が工房に引きこもってから、今
日でついに一ヶ月を数えました。その間、分厚い壁で仕切られた工房の奥か
ら二人は一歩だって外に出てきていません。
 いくらなんでもこれは酷いです。
 ご主人様のからだも心配ですし、図書館でも問題ばかり積もっていきます。
 だってこの一ヶ月間、大図書館には泥棒が入り放題なんですから。わたし
だけではとても追い返せません。この図書館の主はご主人様なのかあの人間
なのか、だんだんと分からなくなってきました。

 さすがに気を揉んだメイド長の咲夜さんが、工房にご飯や着替えを差し入
れているんですが、あまり手を付けてはいないようです。
 ……まさか、ほんとに少女密室になるなんて。

「パチュリー様が本から離れるなんて、信じられないです!」

「……工房も大図書館の一部なんだから、本から離れたうちには入らないわ。
それに、工房には工房で書棚があるもの」

「パチュリー様?!」

 振り返ると、そこにはいつもの三倍増しでやつれた表情を見せるご主人様
が、ふらふらと立っていました。慌てて椅子を持ってきて、そこに座っても
らいます。ああ、もういまにも倒れそう。

「ようやく出てきてくれたんですね。研究は終わったんですか。いまお茶を
二人分ですか持ってきてもらいますから、そこで―――」

 ご主人様は、ごほごほと咳き込みながら「けっこうよ」と答えました。

「研究は一段落。色々と資材を使い果たしてしまったから、マリーには一度
ノーブルレッド城に戻ってもらうことにしたわ。休息も必要でしょうしね」

 だから門までマリアベルさんを送ってあげなさい、とご主人様はわたしに
言いつけました。……工房からやっと出てきたと思えば、その足で自分のお
城に帰ってしまうなんて。
 せめてお茶ぐらい出しましょうよと言っても、ご主人様は「それには及ば
ないわ。どうせすぐに戻ってくるのだから」とすげなく返します。

「とにかく送ってあげて」

 言いつつ、ご主人様は工房の入り口へに顔を向けました。

「……マリー、今日もこの子が門まで送るわ。
 いつものことだけど、この子から離れないようにしてね。はぐれて迷子に
なったりすると、厄介なことになるから……」

10 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/04/30(水) 00:04:07



「咲夜、行きましょう―――」

 メイドを従えて、わたしは席を立つ。

「―――今宵のインチキ狩り≠始めるわ」



11 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/04/30(水) 00:20:13


……こ、こんばんはー。
紅魔館でパチュリーさんの使い魔をやっている小悪魔です。
よろしくお願いします(ぺこり

本当なら、この会議室にはレミリアお嬢様が来るのが筋なんですが、
あのひとはちょっとというか、かなりというか……。
そういう話し合いとか会議とかには向いていない性格なので、
代理としてわたしが派遣されました。
拙いところだらけだとは思いますが、よろしくお願いします。

とりあえず、導入が>>2>>3>>4>>5>>6>>7>>8>>9>>10ですね。
超特急で書いたので、レイアウトとか飾りとか本文そのものとか、
本スレに貼るときはぜんぜん変わっているかもしれませんが、
基本はこの通りです。わたしとお嬢様の視点があります。

闘争が始まっても、この交互の視点は変わりません。
お嬢様のわがままな視点と、
それを補うかたちでわたしの第三者の説明的な視点の二つを使って、
マリアベルさんの相手をさせてもらいます。
お嬢様の視点は、ほんと数行だけ。せいぜい十行程度になります。

12 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆lVTBRaKcE. :2008/04/30(水) 21:00:33
>>

「ん〜〜〜〜〜………… ふぅ」

 歩きながら手を組んで頭上に上げ、背筋を伸ばすと自然と声が。
 おまけにこきり・こきりと体中の節々まで鳴りよる。
 ……こうまで重たい疲労を覚えたのは、はて何十年ぶりじゃろうか?
 日の光を浴びるなど真っ平後免じゃが、月光すら浴びずにひと月も没頭すれば、まあ致し方あるまいが。
 
 ともあれ、研究開発も一段落。というか、部品が足りなくなっただけとも言うが。
 「幻想郷」、一種の楽園、桃源郷などと聞き及んではおったが……流石に機械・電子部品のアテはないらしい。
 かなーり大量に持ってきたつもりだったのじゃが……基板の材料も、抵抗も、ダイオードにトランジスタにコンデンサに集積回路、
ついでにはんだにはんだ吸い取り線まで、ぜーんぶ使い切ってしまったのじゃからどーしよーもない。
 それら材料のなれの果ては……つわものどもがなんとやら。
 いやいや、失敗は成功の元であり必要は発明の母じゃ。あれらは墓標として、次なる開発の礎となる。
 ……片付けるのは大変そうじゃがな。
 
 無論、部品その他についてはこれまた話に聞いた「河童」とやらに頼んで工面しても良いのじゃろうが……
 まあ研究の整理がてら一度帰って集め直したほうが手っ取り早かろう。
 
 
 というわけで、リフレッシュも兼ねて一度帰ろうということになり、わらわはパチェにしばしの別れを告げ(無線でのそれ以上に
反応は素っ気なかったが、もう慣れた)、小悪魔に案内され出口へ向かう。
 何しろ初めて来た場所、かてて加えて一ヶ月のブランクを開けた上では、間取りなど覚えていようはずがないゆえ。
 
 
 などと我ながら呆れた事実を鑑みつつとぼとぼ歩いておったらば。
 やはり疲労が見て取れるのか、小悪魔が多少気遣い気味に声をかけてきた。

13 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/04/30(水) 21:10:41
トリップが化けたゆえテストを兼ねつつ。

短い。
おぬし(ら)のそれより明らかに短い!
じゃがわらわはファルガイアの真の支配者ゆえ一向に気にせんッ!
というか、これ以上書きようが無いとも言うがな。

とりあえず、わらわのモノローグで終わるのもなんじゃしこんな風に繋ぎを置いてみた。
掛け合うかどうかはおぬしに任せよう。


それはそうと……あやつはわらわを「マリー」と呼んだな?
ならばわらわも「パチェ」と呼ぶことにしよう。
……さて、レミリアめはどう思うやら?
ふふふ。

14 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/04/30(水) 22:44:50




「聞こえた、咲夜?」

「ええ、もちろん聞こえませんが」

「あいつったら、パチェのことをパチェ≠ネんて呼んだりして」

「お嬢様も呼んでいるじゃないですか」

「あら、わたしはいいのよ」

 ―――そう、わたしだけはいいのだ。




15 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/04/30(水) 22:45:29


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>

 わたしが先導するかたちで、マリアベルさんと一緒に廊下を進む。
 紅魔館は外見からは想像もつかないほど広くて深い。だから、ほんとうはわ
たしや咲夜さんがこうやって案内をするべきなのに、最近は断りもなくずかず
かと踏みこんでくるひとや妖怪が多くて、ちょっと悲しくなります。
 お客さんを玄関まで見送る仕事が、新鮮に思えてしまうなんて……。
 
 それにしても、暗いです。
 ただでさえ紅魔館は窓が少ない上に、パチュリー様の大図書館は館の最深部
に模様替え≠したばかりだから、玄関までの道筋は薄暗くてしかたがない。
〈弾幕ごっこ〉ができてしまうほど高い天井には、繊細なクリスタル細工のシ
ャンデリアが天の川のように流れていて、廊下に豪奢な光をふらしてくれては
いるのですが、やっぱり人工の照明では本質的な闇を払うことはできません。

 ……ああ、なんて陰気な空気なんでしょう。
 時々、この館を裏返しにして日干ししたくなります。

 夜の眷属なのに、闇を嫌がるなんて―――と思われるかもしれませんが、魔
界の風通しのいい澄みきった漆黒と、紅魔館に沈澱する息苦しい暗黒はまった
くの別物です。わたしですらそんな感想を抱くんですから、吸血種とはいえ夜
族ではなく精霊に近いといわれるノーブルレッド族のマリアベルさんなんて、
窒息寸前なんじゃないでしょうか―――と憂えていたら、案の定お疲れの様子
で、背を伸ばしたり肩を揉んだり関節を鳴らしたりし始めました。

 ……まあ、一ヶ月も寝ずに食わずに没頭していたらそうなりますよね。

「ほんと、お疲れさまです」

 マリアベルさんの疲労困憊したお姿があまりにかわいらしくて、つい話しか
けてしまいました。

「パチュリー様のこと、素っ気ないとか愛想がないとか思われるかもしれませ
んが、あれでもかなりはしゃいでいるんですよ。パチュリー様があんなに興奮
しているのを見るのは、初めてなぐらいです」

 よっぽどマリアベルさんから知識の刺激を受けているんでしょうね。

「幻想郷はもう慣れましたか?」

 マリアベルさんの棲む〈ファルガイア〉は、熱砂と黄土で荒れ果てたひじょ
うに侘びしいところなんだとか。なら、四季豊かな幻想郷の風景は心に響くも
のがあるんじゃないでしょうか。気に入ってくれたら、嬉しいですね。

16 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/04/30(水) 22:48:54

ナイスアシストありがとうございます。
早速、わたしとお嬢様も書かせてもらいました。
案の定、お嬢様は気に入らないようですね……(汗

レスについてですが、幻想郷についての感想を一緒に歩きながら
ざっと述べてくれたら助かります。

それに応えるカタチでわたしがレスを書いて―――
そのとき、物語を進めようと思いますから。
お願いしますね。

17 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/04/30(水) 23:35:23
>>

「………………そ、そうか、あれで興奮しておるのか、うむ」
 ……あ、ちと正直に言い過ぎた、かも。
 
 Patchouli Knowledge……ある種の薬草と「知識」の名を持つその魔女とは、初めてここに来たときまでは
無線でしか語り合ったことがない。
 その頃でさえ、実に簡素な語り口で――もっともその知識の豊富さからわらわとは相性が良く、語る内容は
尽きることを知らなかったが――随分と変わった奴じゃと思っておったものじゃが。ううむ。
 魔女とはかくあるべし、なのやら。……魔女っ子ではないしな。
 
 
『幻想郷にはもう慣れましたか?』ふと話題が次へ飛ぶ。

「幻想郷、か……うむ、正に読んで字の如くの土地じゃな、ここは」

 これが、正直な感想。
 何せこれほどまでに緑豊かな光景、目にするのは一体何百年ぶりのことであったか……
 幻想、ファンタジー、あるいはメルヘン……ファルガイアが失って久しいその光景は、悲しいかな、その言葉に
どうしようもないほどに当てはまるのだから。
 それ故に……慣れたか、と聞かれれば。
 
「いや……まだまだ、わらわには眩しい所じゃな。無論、気に入らぬはずもないがのう。
 ここは楽園、されどそれゆえにわらわの親しき場所ではない、と思い知らされる。
 いやはや、難儀なものじゃ」
 
 
 んー……疲れておるせいか、どーも湿っぽいぞ。
 つい最近まで知らぬ世界であったとはいえ、パチェはもちろん小悪魔も、知らぬ仲でもあるまいに。

 取り繕うわけではないが、気分転換。
 もう一度大きく伸びをして、努めて明るく(努めないと疲れで暗くなる)、こう言い直した。
 
「まっ、今は何より心地よき自分のねどこが恋しい!
 そんな気分じゃ、許してくれ。
 何しろ、いつの間にやらもう随分と歩いたような気がしてしまうほどに……」
 
 ……いや、本当にメチャクチャ歩いたよーな気が?
 はて?

18 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/04/30(水) 23:36:25
うーむ、何やらいやにダウナーな返答に……
何故じゃろーか。

まーともあれ、そちらに交代じゃ。

19 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/01(木) 00:12:50




「……咲夜」

「はい、お嬢様」

 メイドは銀細工をあしらった懐中時計を取り出すと、
 かちりと蓋を開けて―――




20 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/01(木) 00:13:39

Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


「はじめのうちは誰でもそうですよ」

 思案顔のマリアベルさんに、にこやかな返事をプレゼントします。

「特にマリアベルさんは、東洋とは縁のない幻想ですからね。馴染むまで
時間もかかると思います。でも慣れてしまえば、ここはわたしたちみたい
なのが生きるにはとっても居心地がいい場所なんだって気付きますよ」

 それよりも、棺桶というのが気になりました。もしかしてマリアベルさ
んって棺桶で寝るんでしょうか。お嬢様ですらベッドでお眠りになってい
るのに? ……うーん、冗談なのか、大真面目なのか。
 吸血鬼ってほんと複雑ですよね。

 そんな風にして、わたしとマリアベルさんは雑談混じりに廊下を進み、
薄闇を縫って玄関へと案内しました。紅い絨毯を踏み締め、永劫に続くか
のような紅魔館の内臓を逆流し、ようやく豪奢な正面口に―――

「……あ、あれ?」

 つ、着かない。
 マリアベルさんの言う通りです。もうだいぶ歩いているはずなのに、大
廊下は一向に途切れる気配を見せてくれません。
 進んでも進んでも、闇ばかりが続いています。

 雑談に夢中になりすぎて、歩調が遅くなっているんでしょうか。首を傾
げて早歩きで進んでみても、玄関はどこにも見えません。

「あれれー?」

 わたしは慌ててあたりを見回しました。毎日見慣れているはずの大廊下
が、今日に限ってやけによそよそしいです。なんだかすごく冷たい感じ。
 ……ごくり、とわたしは唾を飲み下しました。こ、これはもしかして、
わたしが知っている大廊下とは違うんじゃないでしょうか。

 紅魔館が模様替え≠した?
 ……でも、そんな話は聞いていません。
模様替え≠するときは、いつも咲夜さんから必ず一言あるはずなのに。
 いや、それ以前に、どんなに派手に模様替え≠したって、こんな馬
鹿げた長さの廊下なんて造るはずがありません。これじゃまるで、わたし
たちを外に出したくないみたいじゃないですか。

 さらに十分ほど。
 今度は二人とも口を閉ざして、黙々と歩いてみたのですが……

「ま、マリアベルさぁん……―――」

 わなわなと唇が震えてきました。

「ごめんなさいぃ。道に迷っちゃったみたいですぅ」

21 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/01(木) 00:14:40

返しましたー!
次でついにお嬢様が登場ですよー!

22 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/01(木) 00:28:23
>>

 ところで、さんざ小悪魔小悪魔と言っておるが(何故か誰も名で呼ばん)、小悪魔、というからには
もちろんこやつも「悪魔」と呼ばれるような種族の一種なのじゃろう。
 きっとそうじゃろう。
 じゃからして。
 ……そーやって世にも情けなーい顔して「道に迷いましたー」とか言われるとこちらとしても調子狂うわ
「ってちょっと待てーーーーーーいッ!!」

 今こやつはなんと言った?
 道に迷った?
 どーやって!
 我らはずーっと……ああ、間違いない、かれこれ二十分ほどはこの大廊下を ま っ す ぐ 歩き続けて
おったじゃろうが!
 何をどーすれば道に迷う!
 と、いうか……そもそもまっすぐな廊下のみで二十分も歩けるような館とかどれほどに面妖な施設じゃ!
 
 ……うむ?
 であるというのにこやつは言った、「道に迷った」と、何の疑いもなく。
 異変は異変であっても、わらわの認識しておるそれとは何やら違うような……
 
 
「のう、小悪魔?」

 ちょびっと引きつった笑顔で、思いつきを尋ねる。

「おぬし、なにか心当たりがあるのではないか?」

23 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/01(木) 00:28:51
いやいや、やることが決まっておると早いのう
うむうむ。

24 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/01(木) 01:34:43


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


 ……心当たりがある、なんてものじゃないです。

 だって、こういう冗談では済まされない悪ふざけを仕掛けてくるのは、
紅魔館にひとりしかいないんですから。
 咲夜さんは確かに冗談好きですが、ご主人様の客人に迷惑をかけるよう
なことは、絶対にするはずがないですからね。それを曲げてまで、こんな
とんでもない大廊下を造ったということは、これはどう考えても―――

 はっと息を呑んで、廊下の奥へと視線を向けます。
 ……わたしは眼を見開き、愕然としました。
 というのも、地平線を超えて世界の果てまで繋がっていそうな闇の彼方
から、深紅の影が浮かび上がってきたからです。

「あ、ああ―――」

 その瞳は鮮血より紅く。その肌は死蝋よりなお白い。
 口元に獰猛な笑みを浮かべれば、突き出た牙がいやでも目に付く。
 少女と呼ぶのも足りない、幼すぎる容姿。
 スモッグと見紛うワンピースのドレスが、風邪もないのにスカートの裾
を揺らします。その矮躯とは不釣り合いに巨大な蝙蝠の翼が、悪魔の爪の
ように左右へと広がりました。
 闇がざわめき、むせ返るほどに澱みます。

「そ、そんな……どうして」

 この瞬間、わたしはご主人様がマリアベルさんを追い出すように返した
理由を悟りました。ご主人様はこうなる前に、マリアベルさんを紅魔館か
ら離れさせたかったんです。
 不干渉を主義とするご主人様の、なけなしの友情。……でも残念なこと
に、それは「無駄な抵抗」で終わってしまったみたいです。
 そう、この館にいる限り……いや、幻想郷に身を置く限り、あの方の瞳
から逃れられるはずがないんですから。

 ―――闇の衣装を振り捨ててわたしたちの視界の先に顕れたのは、紅魔
館の当主レミリア・スカーレットお嬢様でした。

25 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/01(木) 01:35:06





「……はじめまして、と言わせてちょうだい。
 マリアベル・アーミティッジ。
 悠久なるノーブルレッドの最後のひとしずく。
〈ファルガイア〉の幻想……」

 まだ距離はだいぶ離れているけど、気高き吸血鬼の瞳と、誇り高き吸血
鬼の耳を持ってさえいれば、たやすくわたしの姿を認め、わたしの声を聞
き取れるはず。だからわたしは囁くように言葉を続けた。

「―――わたしは串刺し公ツェペシュの末裔。高貴なるドラキュラの正当
なる血族、レミリア・スカーレット。……ひとはわたしを指してスカー
レット・デビル≠ニ畏れるわ」

 咲夜がうしろで、わざとらしく鎖の音をたてながら懐中時計をしまう。
 パチェの司書も「はぁ?」と目を丸めた。
 ……二人とも、当主への忠誠がまだ未成熟のようね。

「今夜はとっても月が紅いわ―――」

 腕を組むと、唇に三日月のような笑みを作った。

「こんなに血が騒ぐ夜に、そんなに急いで帰るなんて駄目よ。
 今晩はここに泊まっていったらどうかしら。空いている客室なら、あな
たの年齢より多くあるのだから」

 そして明日も明後日も。
 一週間後も一ヶ月後も。
 一年後も十年後も。
 一世紀が経とうとも、あなたはここに泊まっていけばいい。

 ……自分が幻想郷の民だと認める、その日まで。
 わたしはあなたを帰さない。

 パチェの友人である前に、あなたはわたしの―――




26 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/01(木) 02:10:06

ついにお嬢様が登場ですー!
……分かっているかと思いますが、
「ツェペシュの末裔」なんて大嘘です(汗

27 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/01(木) 02:10:47
>>

 驚愕に目を見開く、小悪魔。
 ああ……わかる、わかるとも。「あれ」こそが、おぬしらのあるじか。この暴虐なまでの魔力の主こそが。
 
 視線の先には、メイド、そして、少女。
 長大なる羽をはためかせ、牙を覗かせ笑みを浮かべる。
 そう紅き瞳と白き牙、我らと似て非なる存在――――ヴァンパイアの、主。
 レミリア・スカーレッt
 
 
 やめ。
 
 
 せっかくじゃから乗っておこうかと思ったものの、疲れておるのでやめ。めんどくさい。
 シリアスやめ。
 代わりにツッコミ。
 
「あー、とりあえず初めてではないし。いちおー会ってはおるはずじゃが。そのまー着ぐるみ姿で、じゃが。
 それに、わらわがわらわの城に帰って何が悪い?
 生憎と疲れておるのじゃ、パチェとの研究が長引いてしまってな。
 おぬしとて、眠るならば自室がよかろう?」
 
 シリアスの仮面を脱ぎ捨て、冷ややかーな目であしらう。
 ……はて、しかしそういえば、こやつはわらわとパチェとの研究について知っておるのじゃろうか?
 こやつにとって決して無関係ではない、あの研究。
 そして……小悪魔めには(パチェにつられて)革命的な、などと誤魔化したものの、わらわにとってはそれ以上の、
とてもとても大事な、遅きに失しておったとしてもなお大事な、その研究を。
 その為にここまで来たと言っても過言ではなく、その為に一度帰るのだと言っても過言ではない。
 故にそう、まったく……こやつのわがままに付き合ってなどおられんのじゃ!
 
「わかったら、わらわを帰してくれ。以前パチェから聞いた、大方そこのメイドの仕業なのであろう?
 なれば畢竟、おぬしの仕業ということになる。まったくわがままじゃと聞いてはおったが本当のようじゃな。
 なに、茶でも菓子でもいずれ付き合ってやろう。じゃが今はダメじゃ。
 それともそんなに、わらわをそのおぬしの芝居がかった向上に付き合えと言うのか?」
 
 あ。
 ……あーいかんいかんぞーしゃべり出したら口が止まらん。早く帰りたいのに目的と手段が入れ替わりだした。
 疲れておると怒りっぽくなる、自制せよ、と頭のどこかで思ってもやっぱり止まらん。
 止まらずに……
 
「たかだか500年ぽっちのちびすけに、このわらわが!?」




 口が滑った。

28 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/01(木) 02:11:15
わーらーわーはーアーホーかー

(なげやり

29 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/01(木) 21:16:09

Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>

 
 時間が凍りつきました。

 ……お嬢様が丁寧に演出した夜の気配≠、まさかこうまで真っ正面
から叩き壊してしまうなんて。
 わたしはこのとき知りました。学びました。―――咲夜さんの力を借り
なくても、時間を止めることはできるんだって。

 わたしは呼吸すら殺して、案山子のように廊下に立ち竦みます。
 微動だにしないのは、お嬢様や言った当人のマリアベルさんも同じです。
 咲夜さんだけが、いつも通りの涼しげな表情を浮かべながらお嬢様の背
後に控えていました。まるで世界そのものが金縛りにかけられてしまった
かのように、誰ひとりとして動こうとしません。
 
 が、そんな絶対零度の空間にもやがて「ぴしり」と罅が入ります。

 名乗ると同時に胸を反らしていたお嬢様が、組んでいた腕をゆっくりと
おろしました。獰猛な笑みはいつの間にか消えています。
 紅の瞳は離れた距離からマリアベルさんを見つめていますが、そこに宿
るのは怒りではなく、理解できないものを目にしたときに覚える困惑と不
審が入り交じった色です。
 胡乱な表情で、ぼうっと同じ吸血種を眺めていました。

 何度かまばたきをすると、振り返って咲夜さんの表情を覗き、次にわた
しの顔を遠目に見つめてから―――ようやく、自分が侮辱されたことに気
付いたのでしょう。……お嬢様の口元に、再び笑みが浮かび上がりました。

 それは先ほどまでの悪戯じみた微笑とは違います。
 こういう笑い方をするときのお嬢様は、もう間違いなく、それこそ推理
する必要がないぐらいに、絶対的確実に―――

「お、怒ってますぅー!」


30 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/01(木) 21:16:32



 ……こいつ、むかつくわ。




31 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/01(木) 21:17:51


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


「ああ!」

 お嬢様が取り出したのは、一枚のカードでした。
 人さし指と中指で挟んで、高々と掲げます。
 複雑な紋様が刻まれたスペルカード≠ニ呼ばれるそのカードは、幻想
郷の妖怪なら誰もが知る馴染みの深い遊び道具です。
 
 ……こ、これはかなりまずいんじゃないでしょうか。

 お嬢様が〈スペルカード宣言〉をすると同時に、カードから紅蓮の炎が
あふれ出しました。大蛇がとぐろを巻くように、炎は蠢きながらも瞬く間
に肥大化していきます。
 その壮絶な様子は、傍からは火焔がお嬢様に食らいついていまにも焼き
尽くしているかのように見えました。……もちろん、実際はその逆で、お
嬢様が火焔を隷属させ、思うがままに支配しているのですが。
 その証拠に、無指向に暴れ狂うばかりだった灼熱がお嬢様の小さな手の
ひらに収束していきます。不定形で不確実だった火焔は、お嬢様の命令に
従ってより鋭くより明確に攻撃の意思を形作っていきました。
 
 ―――そうしてできあがったのが、一本の槍です。

 桁違いな高熱を発するため、もはや炎のカタチは失われ、直視を躊躇さ
せるほど強い光を放つ閃光のかたまりとなってしまったお嬢様の槍≠ヘ、
その灼熱の矛先をゆっくりとマリアベルさんに向けました。

 ……なんて熱量なのでしょうか。
 わたしは自然と後じさってしまいます。槍から放射される熱だけでも、
生身の人間が浴びれば消し炭になってしまいそうな、凶暴な威力。
 この槍は、お嬢様の傲慢さを表現するには最上の暴力装置です。

 まさか、いきなり全力だなんて―――

 お嬢様は本気です!

 そこでふと、わたしは気が付きました。
 槍の矛先は一応マリアベルさんを睨んでいます。……ですが、マリアベ
ルさんの隣にはわたしが立っているわけでして。お嬢様の神槍≠ヘ標的
だけを丁寧に射貫くような器用なスペルではないわけでして。
 このままだと、当然のようにわたしも巻き込まれてしまうわけでして。

 ……えーと、逃げようがないですよね、これって。

「わああああああああああああ?!」

 お嬢様はわたしの絶叫に嗜虐的な笑みを返すと、全長が自身の三倍はあ
りそうな神槍≠大きく振りかぶって―――

32 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/01(木) 21:18:24



 神槍「スピア・ザ・グングニル」
 
  ―――これが、五百年の歴史を誇るスカーレットの牙よ。




33 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/01(木) 21:21:19

あー! 助けてください助けてくださーい!

……え、と。
もしわたしまで助ける余裕がないのでしたら、
咲夜さんに助けてもらいます。はい。

34 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/01(木) 22:18:38
>>

 ……ふ、ふふふふ。
 口が滑った、それは事実じゃ認めよう。そして自ら、俄に窮地を招いたことも。
 じゃがそうかといって、今更頭を垂れて許しを請うと思うてか? このわらわが?
 
 ――否、断じて否ッ!
 わらわは誇り高きノーブルレッド、夜の支配者! ヴァンパイア如きに舐められる謂われなどないッ!
 むしろ舐められたら百倍にして舐め返すッ!
 生意気な小娘に教育してやろうではないか、このわらわがな!
 
 とまあそんな気分にて、あやつめを睨め付ける。
 当然の如く怒り出した……いやいや、むしろ気づくのが遅いわたわけめが。
 
 そしてカードを一枚取り出し――赤熱の閃槍へと変じさせるレミリア。
 ふん、これが例のスペルカード……神槍「スピア・ザ・グングニル」とやらか。大仰な名を付けよるわ。
 どちらかと言えば、三ツ目族の遺産の如きシルエットであろうに。よもや「必ず当たる」とでも言うのではあるまいな?
 ――当たってみせてやる気など、毛頭ありはせんがのう! 誇りと無謀は別物じゃ!
 
 レミリアの槍が振りかぶれ――――投擲、その一瞬! わらわはマントを翻す、、、、、、
 無論ただのマントではない!
 これぞロストテクノロジーの結集、反発エネルギーを発生させ飛来物を逸らす、、、、、、、ッ!
 同時に、僅か生まれたその隙へと、小悪魔の手を引きダッシュ一直線!
 あのような大げさな攻撃、そうそう連射など出来まい!?
 
 
「……ったく、おぬし、が、傍におったというに、いきなりあのような攻撃に、出るとは!
 …………ちと、挑発しすぎたか、のう?」
 
 …………背後に轟音が響く中、わらわと小悪魔はひたすら走る。
 まずは戦術的撤退、あやつめにデタラメな火力があるのは歴然であるゆえ。
 それにあやつをケチョンケチョンにしてやろうというわけでもないのじゃし。第一疲れて……
 
 
 あ……そうじゃ、疲れておったのじゃ。忘れておった。
 む、いかん、あしがもつれそ…………

35 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/01(木) 22:21:28
閃槍→閃槍クリムゾン・エッジ@某VP、より
三ツ目族の遺産→赤いコンドル@三つ目が通る
マント→ひらりマント@某猫型

わーらーわーはーあーほーかー(にかいめ


さておき、助けたぞ小悪魔。
なので今度がおぬしが助けてくれ。
具体的には転びそうなので、こう支えてくれというか。

36 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/01(木) 23:28:40

Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


 わたしの想像の三十倍も絶する光景。……灼熱する彗星の如き神槍は、
マリアベルさんのマントに接触すると同時に、まるで鏡面を滑るかのよう
に標的を見失って、あらぬ方向へと飛んでいってしまいました。
 
 ……も、もしかしていま、マントで捌いたのでしょうか。
 わたしの見間違えでなければ、マリアベルさんは確かに、自分が羽織っ
ているマントで「ひらり」とお嬢様の神槍を受け流してしまいました。
 信じられません。あの暴虐の炎枝を―――幻想郷でも屈指の破壊力を誇
る〈神槍〉のスペルを、マントひとつでかわしてしまうなんて。

 わたしが呆然としている間にも、マリアベルさんの行動は的確でかつ素
早かったです。わたしの手を取ると、進路を逸らされた神槍が天井に激突
するのを尻目に、一目散に駆け出しました。
 お嬢様の神槍の威力は凄まじく、地を揺るがす爆砕とともに瓦礫が大廊
下に降り注ぎましたが、そのときにはわたしもマリアベルさんもとっくに
逃げおおせていたというわけです。

「た、助かりましたー」

 マリアベルさんに引きずられるように走りながら、わたしは必死でお礼
を述べます。……ほんとにほんとに危ないところでした。もし、マリアベ
ルさんがわたしを見捨てて逃げていたら、今頃どうなっていたことか。

「お嬢様は加減とかまったく知らない方なので―――」

 言い終えるより早く、マリアベルさんのからだがぐらりと傾ぎます。

「わあ!」

 絨毯に足をとられたのか、バランスを崩して転倒しそうになるノーブル
レッドのお客様をわたしは慌てて抱き止めました。

「だ、大丈夫ですか?!」

 ああ、どうしましょう。やっぱり、あの神槍を完全に捌ききるなんて不
可能だったんです―――とわたしは早とちりをしかけましたが、どうも原
因は別のところにありそうです。
 というのも、わたしの腕の中でぐったりするマリアベルさんの表情は、
わたしが普段から見慣れているものでして、それは疲労で毎日のように死
にかけているご主人様とまったく同種の顔色だったんです。

 ……一ヶ月も寝ずに食わずにだったんですから、当たり前ですよね。

「でも、このままへろへろになっていたら、すぐにお嬢様に追いつかれて
しまいますよ! とにかく逃げ続けないと―――」

 ぴたりと口を閉ざします。……いま、なにかの鳴き声が聞こえました。

 背筋に冷たい汗を流しながら、わたしは耳を澄まします。
 ―――やっぱり、気のせいじゃありませんでした。
 廊下の奥、闇のカーテンに閉ざされた彼方から、狂騒的な甲高い鳴き声
がきーきーと響いてくるじゃありませんか。

37 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/01(木) 23:29:13



「失礼します」

 メイドがナイフを振り落とす。
 銀の刃がわたしの皮膚を滑り、右腕を肩から切り落とした。
 断面から血が噴き出すが、切断されたわたしの右腕は、床に落下するよ
り早く黒い霧となって霧散する。……その霧の一滴一滴が、闇の胞子だ。
 芽吹くように霧から蝙蝠が湧き出て、愛らしい鳴き声をこぼした。

「四百匹といったところかしら。思ったよりも少ないわね」

「お嬢様は華奢ですから、容量が……」

「闇の濃度と体重は関係ないわよ」

 まあ、追撃をかけるだけならこれで十分でしょう。
 わたしは、わたしの周りを飛び回る四百匹の黒蝙蝠に「行きなさい」と
短く命令した。すると、忠実なる闇の群体は、泥が蠢くようにざざっと奇
音をたてながら廊下の奥へと消えていった。
 わたしはとっくに再生している右手を振って、彼等を見送った。

「―――それにしても咲夜」

「なんでしょうかお嬢様」

「あのマントには驚かされたわね」

「はい」

「わたしもあれ、欲しいわ」

「……今度、古道具屋を当たってみます」




38 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/01(木) 23:30:27

ということで、蝙蝠たくさん攻撃ですー!
わらわらと群がってきますー。
グングニルに比べたらだいぶ大人しい攻撃ですけど、
精神的にはくるものがありますねぇ……うぅ。

39 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/01(木) 23:41:36
>>

「うう……このわらわが抱きかかえられるなどとは、情けないのう」

 たはは、というかとほほ、というか苦笑しつつも、事実として身体は思うように動いてくれぬ。
 やれやれ、つい先ほどまで気張っておった反動か。
 されど自体は一刻を争う、どうやら追撃も来ておるようじゃし。
 ……仕方がないか、ここは。
 
 
「のう小悪魔、巻き込んでしまって済まないとは思っておるのじゃが……もう一つ、頼み事を聞いてはくれんか。
 おぬしの言うようにこうもへろへろでは、にっちもさっちもいかぬゆえ……おぬしの」
 
 どうしても首筋に目がいってしまうのは……サガか、これは。
 
「血を、分けてくれ」

40 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/01(木) 23:42:25
内容自体はごくあっさりと。
何しろエンカウント前に済ませねばならんわけじゃからして。

41 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 00:00:17


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>

「ええー?!」

 いま、マリアベルさんは血と言いましたか? 血ってつまり、それは血
ということですよね。お嬢様が毎日飲んでいる、真っ赤なあれですよね。
 ……ど、どうしてそんなものを欲しがるんでしょうか。
 理由は明白です。―――マリアベルさんも吸血鬼だから。

 マリアベルさんのからだの仕組みがお嬢様と同じなら、へろへろになっ
た体力を回復させるには休息よりも吸血のほうが有効でしょう。
 それは分かるんですけど。……よりによって、わたしの血ですか。
 なんという皮肉でしょうか。召喚主の血を代償にして契約を結ぶ悪魔の
わたしが、逆に血を求められることになるなんて。

 ああ、ご主人様にすら吸われたこと無かったのに―――

 けど、躊躇や逡巡をするような余裕はありません。
 廊下の彼方からは、蝙蝠の鳴き声が大合唱となってわたしの鼓膜を震え
させています。いまにも漆黒の向こうから、黒蝙蝠の鮮血色の瞳が輝いて
きそうでした。心なしか、闇が一段と濃くなったような……。

「わ、分かりました。わたしはパチュリー様と契約をしています。そして
マリアベルさんはパチュリー様の大切な友人です。マリアベルさんを助け
るということは、パチュリー様のお力になるということですからね」

 ネクタイを緩めて、ブラウスの襟から首筋を覗かせます。
 ……こんな感じで良いんでしょうか。

「あ、あの……あんまりたくさんは吸わないでくださいね」

 いくらご主人様のお友達でも、干からびるまで飲まれるのはイヤです!


42 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 00:00:54

書きましたー。
今回はお嬢様はお休みさせてもらいます。

43 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 00:27:20
>>

「うむ、済まんな。それでよい。
 なに、そう悠長に吸っておる暇も無し。それにわらわとて、正体の無くなるほど血を頂く趣味もないゆえにな」
 
 それ以前に、人間相手ではこの牙を使うわけにもいかないのじゃが。色々と面倒なことになる。
 それゆえ実のところ「気兼ねなく吸血できる」というのが一番の理由であったりするが、それは口にしないでおく。
 
「では……ちと痛いが、我慢してくれ」
 
 
 かぷ。
 
 
 
 
 
 
「………………ん……ふう、よし。もう良いぞ」
 
 なるほど悪魔の血に相応しい、強めの酒を思わせるそれをいくらか喉に流し込み、牙を抜く。
 これで当座の体力は確保できた。
 おまけで、何かしらの能力も得ているかもしれんが……まあそれは後で考えることとしよう。
 何しろ時間がない、あの耳障りな鳴き声が――もうそこまで聞こえておるッ!
 
「重ね重ね済まんな、助かった。さあ逃亡の続きじゃ!
 目指すは……そう、大図書館! おぬしの主人の元じゃ!」
 
 小悪魔が身なりを整え直したのを確認するが早いか、再び我らは走り出す。
 なるべくならばレッドパワーなどで粗相をしたくはない……逃げ切れるか!?

44 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 00:27:53
あからさまに描写を避けた。うむ。

というわけで逃亡再開じゃな。

45 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 01:08:06



 逃げたければ、好きなだけ逃げればいい。わたしは弾幕ごっこ≠
するために、あのノーブルレッドを引き留めたわけではないのだから。
 メイドが作る迷宮は絶対だ。逃げる限り、絶対に紅魔館から脱出する
ことは叶わない。―――それこそが、わたしの目的だった。

 あのノーブルレッドは帰さない。
 紅魔館からも、幻想郷からも。

「……愉しくなってきたわねぇ」




46 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 01:08:26



Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


 ……なんだか不思議な感じ。
 痛くはなかったんですが、からだがすごく熱くなってしまいました。
 牙が抜かれて、並んで走っているいまでも火照りが消えません。
 心臓がどきどきして、いまにも破裂しそうです。吸われた分の血を、
大急ぎで作っているんでしょうか。

 今度はわたしの足がふらふらとしてきたんですが、それでは本末転倒
なので、気を引き締めて必死に走りました。もう振り返らなくても分か
る距離にまで、蝙蝠は飛びかかってきています。
 ちょっとスピードを緩めただけでも、背中をがぶりとやられそう。
 わたしは「わー!」と叫びながら、マリアベルさんに置き去りにされ
ないように走って走って走りまくりました。

 マリアベルさんはあんなにからだが小さくて、しかも走りにくそうな
服装をしているのに、とっても足が速いです。
 いったいどこにそんな馬力が隠されているんでしょうか。気を緩めれ
ば、あっという間に取り残されてしまいそうです。

 ……そういえばわたし、なんでこんなに全速力で走っているんでしょ
うか。マリアベルさんを抱えて飛んだほうが、よっぽど早く逃げられる
のでは―――

 いまさら気付いても後の祭りです。弾丸のように空気を穿つ蝙蝠の大
群が、わたしやマリアベルさんの背中を悠々と追い抜いていきました。
 わたしたちは、たちどころに真っ黒な霧に包まれてしまいます。

 しかし、襲いかかってくる気配はありません。どうやら、わたしたち
の視界を隠すのがこの蝙蝠部隊の目的のようです。

 そして、わたしたちを追い抜いた別の蝙蝠部隊が弧を描きながら反転
し、同時に背後から迫る残りの部隊も一斉に殺到してきました。
 ……なんて容赦のない蝙蝠弾幕。
 前後からの挟撃が、この子たちの狙いだったんです!

「マリアベルさーん! どどど、どどどうしましょー!」

47 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 01:09:57

あ……お嬢様のレスまで、わたしの名前にしてしまいました(汗
これはミスですね。本スレでは気をつけます。

そういうことで、蝙蝠弾幕での前後攻撃です!
イメージとしては、庭師さんの弾幕みたいな感じでしょうか。
まあもっと直線的でスピードがあるんですけど。
うまく避けてくださいね。

あとわたしも助けてくださいー!

48 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 01:45:50
>>

 「ええい! 鬱陶しい!」
 
 厄介にも視界を遮られ(「闇」そのものでは夜視も利かぬ!)、もはや蝙蝠どものほとんどが「気配」としてでしか感じられぬ。
 これでは、全てマントで払おうなどとはいかん、とてもではないが身が持たぬ!
 かくなる上は撃ち払うのみか――ええい! 許せよ!
 
 小悪魔の手を引いて位置を入れ替え、背後を振り向きざま指を鳴らし――――岩石よ!
 レッドパワー・テラブレイク!
 半ば壁代わりじゃ、せめて足止めを……おお!?
 
 
 テラブレイク――本来ならば一抱えもの岩が数個、地面より現れ殺到するはず。
 じゃがその代わりに――背後の蝙蝠どもへ、無数の岩飛礫が雨あられと降り注ぐのを、わらわはそのとき確かに見た。
 
 これは……そうか、「弾幕」!
 仮にも幻想郷の民の血を吸ったがゆえか!
 ならば……いけるッ!
 
 
 背後の命中状況は確認もせず、再び身を翻し小悪魔を庇い――こやつのおかげでこの状況を打破できるのじゃ、
無碍には出来ん――今度は手刀を振るい空を切り裂く!
 エアスラッシュ! ……思い通りッ!
 現れし風の刃は、何十何百と重なり連ねて、蝙蝠どもの中空を――進路を穿つ!
 
「突っ切るぞ、小悪魔! 手を離すでないぞッ!」
 
 そうじゃ、この間隙へ! 一瞬でも早くッ!

49 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 01:46:41
うむ、弾幕のお返し。
後ろは置いといて、前のは……そうじゃな、あの巫女めの針連射のようなものか。

結果はそちらに任せた。

50 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 01:51:33
あとな……


 お ぬ し も 弾 幕 く ら い す れ 小 悪 魔 。

51 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 04:01:26

だ、弾幕ですかー?!

52 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 18:42:58

Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>

 マリアベルさんが繰り出したのは、岩雨と風刃の二重攻撃でした。
 わたしの腕を取り、まるでダンスでもするように互いの位置を変えなが
ら数秒と間を置かずに弾幕を張り巡らします。

 す、すごい!

 マリアベルさんの攻撃は、わたしたちの視界を暗黒で隠していた目隠し
蝙蝠たちをあっという間に蹴散らしてしまいました。
 挟撃を仕掛けてきた前後の部隊も、後方は岩飛礫の五月雨に、前方は烈
風の暴刃に晒されて、為す術もなく撃ち落とされていきます。
 迎撃された蝙蝠は黒い泥となって四散し、壁や絨毯を濡らしました。

 ―――そして、その闇色の染みから、今度は二匹の黒蝙蝠が湧き出して
くるのでした。

 なんてことでしょうか。これこそお嬢様の夜の力です。一匹の死骸から
二匹が、百匹からは二百匹が生まれてしまうんです。
 いちいち撃ち落としてもきりがありません。せっかくマリアベルさんの
峻烈な攻撃で三分の一ほど数を減らしたのに、瞬く間に蝙蝠の軍勢は兵力
を回復してしまい、より巨大な黒い霧となってしまいました。

 風刃が切り開いた血路を走り抜けながらも、わたしは落ち着きなく周囲
を見回します。……このままじゃ駄目だ。すぐにやられてしまいます。
 だって、どんなにマリアベルさんの弾幕が強力でも、相手は撃ち落とせ
ば撃ち落とすだけ数を増やす理不尽な闇の洪水なのですから。
 対処法はひとつだけ。スピードで振り切るしかないんです。

 でも、地上をひーひー言いながら走ることしかできないマリアベルさん
では、空を飛べる蝙蝠から逃げ切れるはずがありません。弾幕ごっこ
は飛翔能力があって初めて敵と対等に渡り合えるゲームなんです。
 このままでは、いずれ蝙蝠の闇に呑み込まれてしまいます。

 ―――ここに来て、わたしはまだ迷っていました。

 わたしはパチュリー様に仕える契約の悪魔なのですから、レミリアお嬢
様と直接の主従関係にはありません。ですが、契約だとか雇用だとかそう
いったこととは関係なく、この紅魔館で生きるすべてのものにとってお嬢
様は絶対的に君臨する主君でもあるのです。
 逆らうのは気が向きません。あとが怖いです。

 ……けど、このまま泣きながら走っていたら、わたしもマリアベルさん
も間違いなく蝙蝠の餌になってしまいます。それはイヤです。
 マリアベルさんはご主人様のお友達なのですから、わたしには可能な限
り力を貸してあげる義務がありますし―――それになにより、マリアベル
さんはもう幾度となくわたしを助けてくれました。こんな足手まといな見
習い悪魔なんて、見捨てても誰にも咎められないのに……。

 マリアベルさんがわたしを助けてくれたように、わたしだってマリアベ
ルさんを一度ぐらいは助けてあげるべきなのではないでしょうか。
 うん、そうです。そのはずです。それこそが悪魔の高潔な生き方です。

 ……ですから、これは決してお嬢様に刃向かうという意味ではなくて、
ただ恩を返したいだけで、いまから始める攻撃には悪意がまったくないと
いうことを事前にお嬢様に説明したいのですが、もちろんそんなことは不
可能なので、わたしは溜息混じり半泣きの表情で―――

「ごめんなさい、お嬢様!」

 この弾幕ごっこに、乱入することに決めました。


53 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 18:43:31


>>


 いまわたしが携帯している本は、脇に抱えた分厚い蔵書目録と、ベスト
の内ポケットに忍ばせた文庫本の二冊だけです。ですが、あわせれば軽く
千ページは数えるでしょう。……それだけあれば十分です。

 わたしは蔵書目録を放り投げると、懐の文庫本も同じように投げ捨てま
した。放られた大小二冊の本は、重力を無視して宙に浮かび上がります。
 そして、まるで透明人間に読まれているかのように、勝手にページを広
げ始めました。ばらばらばら―――と、ものすごい勢いでページがめくれ
ていきます。やがてページの一枚が一枚が紙とは思えないほどの鋭さを身
につけたとき、わたしは弾幕式読書≠フ始まりを宣言しました。
 
 本のページが表紙から飛び出して、蝙蝠の軍勢に襲いかかります。
 その様子はさながら紙の銃弾を吐き散らす機関銃のようでした。
 事実、千ページ分の弾幕が数秒とかからずに撃ち出され、蝙蝠の闇色の
躯に白い紙片の傷跡を刻みます。

 さらに重ね撃ちとして、わたしはスカートのポケットからリボンがつい
た栞を何十枚も取り出しました。巫女が使う護符のように栞に魔力をこめ
ると、全方位にまき散らします。栞は蝙蝠に接触すると爆発して、その余
波でさらに数匹の蝙蝠を撃墜するのでした。
 
 ―――紙を自在に操る程度の能力≠ヘ、大図書館の司書としては、特
筆するまでもなく当然のように身につけているべきスキルですよね。

 蝙蝠たちが作っていた闇色の霧が晴れていきますが……もちろん、数秒
後にはさっきまでの数倍の濃度の闇が立ちこめることになります。
 この一瞬の晴天を、わたしたちは駆け抜けなければいけないのです。
 そのためには―――

「失礼します!」

 マリアベルさんの細い腰を背後からつかまえると、わたしは背中に生え
た悪魔の翼を羽ばたかせました。レミリアお嬢様ならともかく、蝙蝠程度
のスピードならわたしの飛行能力でも十分に振り切れます。
 マリアベルさんを抱えたまま弾丸のように飛び立つと、蝙蝠の軍勢はあ
っという間に廊下の奥へと消えていってしまいました。

「このままご主人様のところまで翔びますよ!」

 目指すは大図書館。そう言ったのはマリアベルさんですが、その考えに
はわたしも賛成です。ご主人様の大図書館なら、あのしつこい黒蝙蝠たち
も追ってくることはないからです。
 お嬢様は、ご主人様の静謐を乱すようなことは決してしません。

「止まったら追いつかれますから、このまま突っ込みますね!」

 すでに目の前には、大図書館の門が立ち塞がっています。わたしはスピ
ードを緩めるどころかさらに加速して、頭から門扉に突撃しました。
 小爆発のような衝撃と爆音が、図書館に響き渡ります。
 ……しまった。これは勢いをつけすぎたかもしれません。振り返ると、
大図書館の門は木っ端微塵に砕け散っていました。
 しかも、突っ込んだ拍子にうっかりとマリアベルさんを抱いている手を
離してしまったではないですか。あーん、ほんとにごめんなさい!

「マリアベルさん、生きてますかー」

 埃にむせながら、わたしはマリアベルさんの小さな影を探しました。

54 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/02(金) 18:44:34



 あらあら、困ったお年寄りね。
 パチェを巻き込んでしまうなんて、悪いおばあさんだわ。
 振り出しに戻っても、ゲームは終わらないというのに。
 ……でも、彼女はとても賢いから。あなたが戻って来ることぐらい、
送り出したそのときから悟っていたに違いないわ。
 わたしがあなたの辿る軌跡を見透かしているように……ね。

「咲夜、いまのうちにパーティの支度を始めるわよ」

 ノーブルレッドを歓迎するための、夜会の準備を。




55 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 18:47:10

お待たせしましたー!
紙符「ザ・ペーパー」を発動ですよ。
紙を自在に操る程度の能力!
……なんでも、外の世界なら図書館で働くひとは、
みんなこのスキルを身につけているんだとか。
すごいですねー。

……ご、ごめんなさい。調子に乗りました。
さらに調子に乗ったことに、色々と書きすぎて長くなっちゃいましたぁ。
それでも、どうにか図書館についたので許してくださーい。

56 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 19:24:16
>>

 ぴよぴよ「きゅー……」ぴよぴよ


しばらくお待ちください。数秒ほど。



「……小悪魔ー、打開できたことには感謝するがちと加減というものを知れ、加減というものを
 またぞろパチェに怒られるぞ、おぬし」

 ……うう、なにやらまだびみょーにふらふらするぞ。もちろん生きてはおるのじゃが。
 とゆーかこのようなことで死にたくなど無いわ。いくら時の果てに蘇るのが我らノーブルレッドであるといってもじゃな
 まったく……
 
 立ち上がって、咳払いをして、埃を払って……そのパチェを捜す。
 案の定、いつも通りの無愛想な、いやまあ確かにちと怒っておるような気もするが……そして些かも驚いた様子のない
 我が友人が、出迎えてくれておった。

「……やれやれ、その様子じゃとやはり此度の乱痴気騒ぎ、予見しておったか。のうパチェ?
 『すぐ戻ってくる』とは、この事を言っておったのじゃろう?」
 
 色々あって縮こまっておる小悪魔を尻目に(何であればあとでフォローはするとして)、友人へと語りかける。
 問いかける。
 恐らくは、鍵を握っておるのであろうから。
 
「で、レミリアめは何をしたいというのじゃ一体。友人が無くて寂しい、というわけでもあるまい?
 ましてや悠久の時を生きるのもお互い様、あえてわらわが足止めされる理由など、正直言って思いつかんのじゃがのう……
 真相についてまで知っておるのであれば教えてくれんか、パチェ。
 このままでは我らの研究すら足止めを食ってしまうでな」
 
 
 言いながら、手頃なテーブルセットの椅子へ腰かける。
 あやつもここまでは手を出そうとすまい。じっくりと、話を聞かねば。

57 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 19:25:21
というか実際入り口粉砕埃もうもうとか100%パチェ怒ると思った。

さて、好きなだけ話してくれ。

58 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 20:11:21

Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>

 ……うぅ、ご主人様の視線が痛いです。

 冷たい一瞥をくれたっきりわたしから瞳を逸らしたご主人様は、今度は
友人のマリアベルさんをじっと見つましたが、言葉を返すことはありませ
んでした。いつもの眠たげな表情で、思案に暮れています。

 ご主人様……。
 マリアベルさんを見送ったあと、床に着くわけでもなく、研究を続ける
わけでもなく、この大図書館に留まっていたということは―――わたしの
ご主人様はマリアベルさんを待っていたと考えていいでしょう。
 こうなることが分かっていたんです。

 ご主人様は、マリアベルさんが座っているテーブルセットには近づかず、
書架の高い場所に手を伸ばすための踏み台に腰かけました。
 脇に抱えていた仰々しい装丁の書物を開き、黙々と読み始めます。
 ……って、友人の言葉を無視しますかこのひとは。
 わたしが肩を落としかけたとき、ご主人様は魔導書に目を通したままゆ
っくりと口を開きました。

「……わたしはレミィじゃないんだから、レミィの考えていることなんて
分かるわけがないわ」

 お嬢様本人に聞けばいいじゃない、と言いたげな口ぶりに、お二人の会
話に関係のないわたしが立ち眩みを覚えそうになりました。
 悪意はないんでしょうけど、もうちょっと柔らかな人当たりというのを
学べないんでしょうか。知識の少女なはずなのに。

 ご主人様は、本文に鼻先がくっついてしまいそうなほど近くまで本を引
き寄せています。お陰で顔が表紙に隠れてしまい、表情が知れません。
 ……いったい、なにを考えているのでしょうか。

「―――でも、紅魔館から出る方法なら分かるわ」

「え!」

 思いもよらぬご主人様の発言に、わたしは口に手を当てて声を上げてし
まいました。……はい、ごめんなさい。うるさかったです。わたしは関係
ないからずっと黙っているべきですよね。

 気を取り直して、ご主人様が言葉を続けます。

「……ノーブルレッド城に帰らなければいいのよ。幻想郷に留まり続ける
と約束すれば、レミィはあなたを解放するわ」

59 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/02(金) 20:11:50



 どうして、あのノーブルレッドは幻想郷と〈ファルガイア〉を自由に行
き来できるのか。博麗大結界を無視することができるのか。
 それは彼女が、世界から見放され、人間社会から忘れ去られしものとし
て、〈幻想種〉になりかけているからだ。
 この郷は、あらゆる幻想を受け容れる。ノーブルレッドの唯一の生き残
りとなれば、諸手をあげて歓迎するだろう。

 ……それでもまだ、あのノーブルレッドが〈ファルガイア〉に留まり続
けている理由は、人間との縁が完全に途切れてはいないからだ。
 無駄なあがき。惨めな抵抗。……あのノーブルレッドは、自分の世界で
まだ人間と積極的に関係を持とうとしている。世捨て人を気取りながら。
 お陰で中途半端なままで幻想化が止まってしまい、どっちつかずの蝙蝠
のような老婆が完成してしまったというわけだ。

 だから、わたしが背中を押してあげるわ。

〈フォルガイア〉から忘却されて、弾き出されて、幻想化が完成するまで
紅魔館に滞在させてやるのだ。……そうすれば、半端な立ち位置に迷わず
とも済むでしょう。あいつの寝床は、ここしか無くなるのだから。

「マリアベル・アーミティッジ」

 歌うように、彼女の名を呟いた。

「幻想郷が、あなたを待っているわ」




60 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 20:13:05

お嬢様の独白は、ご主人様も同じような内容を
マリアベルさんに伝えていると解釈してくださーい。

61 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 21:27:32
>>

「………………」

 こつ、こつ、と図書館にテーブルを叩く音が響く。
 わらわは頬杖を突き、指でテーブルを叩く。ややこしい状況に顔をしかめながら。
 
 ――パチェが言うには、わらわは「幻想」になりかけているのだという。
 「幻想郷」とは、そうしたモノが辿り着く……ありうべからざるモノ達の地であるがゆえに、と。
 そうでなければ、わらわもここにいるはずがないのだと。
 
 などと言われても当のわらわは困る。ファルガイアの真の支配者たるわらわが幻想になどなってたまるか。
 ……とパチェに言ったところで梨の礫。
 まあそれは今に始まったことで無し、それにここまでのやりとりで大方の結論も得られた。
 
 つまり。
 魔女も幻想。
 悪魔も幻想。
 吸血鬼も幻想。
 例外などあってはならぬゆえ……というのがレミリアの真意であろうと。
 
 ふん、わがままここに極まれり。されど容易ならざる状況ではある。
 よしんば強行突破して我が居城に帰り着いたとて、大局的には好転せん。
 なれば今この場でどうにかすべきじゃが……どうすればよい?
 さすがの友人も、これ以上は知恵を貸してはくれんじゃろうしな。はてさて。
 
 
 沈思黙考、時には席を立ち本を取り出し、ひとしきり調べてまた思案。
 わらわも、この場も、時の流れとは無縁であるがゆえに考える時間だけはあるのは救い。
 そうじゃ、考えよマリアベル・アーミティッジ。
 どこから?
 ――――そう、まずは根本から。
 
 
<わらわはどうやってこの地に辿り着いた?>

62 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 21:27:51
>>続き

 パチェ……パチュリーと知り合ったのは無線をデタラメにチューニングしておったときのこと。
 ほとんど偶然にも等しいが、そうでなくては巡り会えはしなかったであろう。
 何しろ、「異世界と交信した」のであるから。
 
 そうして色々と雑談をしておるうちに、わらわはこの地に招かれることと相成ったが……その際パチュリーは
このような謎めいた言葉にて道筋を示した。
 即ち、「あなたならば辿り着けるだろう」と。具体的な所在は示さずに。
 
 異世界であることはいずれ察しが付いておった。何しろ幻想郷などという地は全く聞いたこともなかったゆえに。
 そしてファルガイアにとって異世界など、星の海の向こうよりもよほど近い、薄紙一枚隔てた地にも等しい。
 何しろかつては「異世界に侵食」されかかった程ゆえに、世界の境などいたって曖昧。
 ならばそこに辿り着く方法は?
 
 執った手段は「ライブリフレクター」、生体をエネルギーの塊と見立て射出し、反射衛星を用いて別の地へと飛ばす
一種の転送装置。ロストテクノロジーの産物が一つ。
 ならば、エネルギーの塊、すなわち光……電磁波にも等しい存在へと一時的にシフトされるとすれば、その振る舞い如何では
……先進波へとシフトされ得れば、世界を越えることも可能なのではないか?
 わらわは、そう考えた。
 
 そして結果は成功。デタラメな座標を入力されたライブリフレクターは、わらわの幻想郷への、友人への思いと共に
見事わらわをこの地へと降り立たせてくれた。
 
 ――のじゃが、しかし事ここに及んではそれだけでは足りなくなる。
 
 世界を越えた、これはまあ別によい。
 じゃが先ほど告げられた幻想郷のあり方を考えればそれだけではわらわは辿り着けなかったはず。
 いや無論、そこの答えもまた出ておる。すなわち「わらわが幻想と化しつつあるがゆえ」じゃと。
 ……されどそれは受け入れられぬ。幻想と化す気など毛頭無い。
 
 やれやれ、結局振り出しに戻ってしまったではないか。
 まったく、なにゆえにこのような目に遭わねばならぬのじゃ! たかだか世界を越えた程度で――――
 
 世界を、越えた。
 幻想と、なる。
 ……もしも本当に幻想となったら?
 もしも幻想になりうる理由がなかったら?
 もしも。
 「もしも」――――――!?

63 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 21:28:04
>>続き

 一つの結論。いやこれは正に天恵と称すべきか!
 客観的には無茶苦茶と感じつつも、ぴたりピースが組み合わさったその感覚がわらわをかき立てた。
 跳ねるように椅子を蹴立て、駆けるように我らの工房へと向かう。
 
「……ええと、失敗作のうちの、せめても成功に近かったものは…………と、あった!
 うむ、壊れてはおらぬ。これで何とか……するしかあるまい!」
 
 独りごちながらその「装置」を鞄にしまい、またも駆けて図書館へと戻り……
 あ、しまった、パチェめ今度はわらわに眉根を寄せておる。
 そーいえば、ちと騒がしかったか。うむむ。
 
「いや、すまんすまん許してくれ。わらわとて……今生の別れとはしたくないゆえなのじゃ。
 と、そうそう、装置を一つ持って行くぞ。構わんじゃろう?」
 
 苦笑しつつそう言って、わらわは出口へと向かった。
 結果がどうなるかはわからんが、少なくともやるべきことは決まった。
 ならばあとは実行に移すのみ。
 トライ&エラーとはいかぬが、仕方があるまい!
 
 
 あと必要なのは――レミリアの血。
 ならば一転、懐に飛び込むまでじゃ!

64 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 21:29:49
ながっ!
……と思ったがおぬし相手ではこれでようやく釣り合い、という気もする。
うーむ。

というわけで、かなーり強引な解釈をこれより展開する。
それと小悪魔は置いていくつもりであったが、よく考えればおぬし語り部であったな。
描写は避けたゆえ、そちらは任せたぞ。

65 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 22:50:34


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


 わたしはご主人様の説明を聞いたときの、わたしとマリアベルさんの反
応はまったく異なるものでした。わたしが安堵を抱いたのとは対照的に、
マリアベルさんは困惑の表情を浮かべたのです。

 ……あれ。どうしてマリアベルさんはそんなに渋い顔をしているのでし
ょうか。ここは「なんだ、そんな理由か」って胸をなで下ろすところだと
思うんですけど……。わたしの感覚がおかしいのでしょうか。

 マリアベルさんを幻想郷の一員として歓迎する。
 やり方こそ荒っぽいですが、お嬢様の目的はこの郷にノーブルレッドの
居場所を作るという、とても親切なものでした。
 確かに、幻想郷は変なところで閉鎖的で封建的で、要領を得ないしきた
りも多いです。そういう決まり事を飛び越えて「ここはノーブルレッドの
なわばり」と主張するのは、強引ですが賢くもあります。
 お嬢様は、その手助けをしているんではないでしょうか。なら、このま
ま紅魔館に滞在していただいたほうが、マリアベルさんのためにもなると
考えたんですが……どうも、当人はそうは考えられないみたいでした。

 なにを閃いたのか、マリアベルさんは唐突に座っていた椅子を蹴倒すと
工房のほうへと駆け出していきます。数分とかからずにわたしたちのとこ
ろへ戻ってきたときには、ルビーの瞳に挑戦的な感情が燃えていました。
 
 ……あれ。
 もしかして、懲りずにまた館の外を目指すつもりでしょうか。

 わたしには理解できないです。どうしてそうまでお嬢様に反発するので
しょうか。自分の居城が恋しいなら、お城のほうをこっちに呼んでしまえ
ばいいだけなのに。―――〈ファルガイア〉に帰っても、マリアベルさん
はひとりぼっちなんですよ?

 ご主人様は興味がないのか、読書に集中しています。
 これはお嬢様とマリアベルさんの問題で、自分には関わりようがないこ
とだ―――と、無言で主張しているかのようです。
 徹底した不干渉。それがご主人様のスタンスなのでしょう。

 ……でも、わたしは? わたしはこのまま、マリアベルさんの背中を見
送ってもいいのでしょうか。ご主人様同様に、わたしもこの件にはまった
く関係のないただの小悪魔です。自分の仕事に戻るべきなのでしょう。
 
 でも。

「……咲夜は忙しそうだから、あなたが治しておきなさい」

 本に目を向けたまま、ご主人様は言いました。わたしが壊した図書館の
門のことを指しているのでしょう。その仕事も確かに大事です。

「戻ったら取りかかりますね。先ほどパチュリー様に言いつけられた、マ
リアベルさんを玄関までお見送りする仕事が残っていますので」

 わたしはそれなりに覚悟を決めて言ったのですが、ご主人様は「好きに
しなさい」と淡々と答えるだけでした。ちょっとだけ拍子抜けです。

「ありがとうございます」と頭を下げて、わたしはマリアベルさんの小さ
な背中を追いかけました。
 マリアベルさんに続くかたちで、わたしもまた破壊された大図書館の門
をくぐったんですけど―――


66 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/02(金) 22:50:57



「……あら、図書館での用事はもう済んだのかしら」

 こっちも夜会の準備が整ったところだから、ちょうどいいわ。




67 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 22:51:20

Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


 ……こ、これはどういうことでしょうか。

 わたしたちは図書館から大廊下へと飛び出したはずなのに、視界に広が
ったのは、まったく見覚えのない、祭壇のような大部屋でした。
 石を積み上げて建てたのでしょう。かなり時代がかった造りです。
 紅魔館をヴィクトリア調と呼ぶならば、この部屋の内装はもっと前時代
的な、中世ヨーロッパの城塞風と呼ぶべきしょう。
 荘厳さより無骨さが伝わってきそうな設計です。

 黄金の燭台が至る所に立てられていました。クリスタルや鏡面の反射を
利用しない蝋燭の裸の灯火は、なんだかとても薄気味悪いです。

 ……こんな部屋、紅魔館にあったでしょうか。
 わたしは知りません。少なくとも、大図書館の周辺には絶対に無かった
です。まして、入り口から繋がっているなんてことは絶対にあり得ません。
 振り返ってみると、案の定わたしが破壊した門は無くなっていて、これ
また見覚えのない別の門扉が立ち塞がっていました。あそこから出ても、
図書館には繋がっていないのでしょう。

 ……どうやら、お嬢様のゲームを再開したみたいです。

 大部屋の中央には、石材を積み上げた祭壇のような丘がありました。
 祀っているのは、二つの篝火に挟まれた漆黒の棺桶です。
 ……どうして、棺桶なんて演技でもないものが祀ってあるのでしょうか。

 黒檀の蓋には、繊細な金細工で縁取りがされていました。
 その優美かつ薄気味悪い蓋に、レミリアお嬢様がいつの間にか¢ォを
組んでちょこんと腰をかけていました。
 ……さっきまでは、そんなところにいなかったはずなのに、です。

 この陰気な部屋は、お嬢様の演出なんでしょうか。
 だとしても、なんの目的があって。
 わたしたちが黙っていると、お嬢様は新しい幻想郷の仲間を見くだすよ
うに「ふふ」と笑みをこぼし、もったいぶりながら唇を開きました。

68 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/02(金) 22:51:36



「自分の寝床でなければ、安眠できないのよね。
 なら、これで満足でしょう―――。
 ゆっくりお休みなさい」




69 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/02(金) 22:52:24

わたしも長くなっちゃいましたー。
そういうことでステージチェンジでーす。
マリアベルさんの部屋ですー。
もちろん、偽物ですー。

70 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 23:30:55
>>

 ……正直に言おう。一瞬じゃが面食らった。
 何しろ出口の向こうには、見慣れた自室――無論、ノーブルレッド城の――が広がっておったのじゃから。
 いや、そこにあのレミリアめが腰かけておらねば、本当に我が居城じゃと思いこんでしまったやもしれん。
 何しろ、わらわは今…………
 
 いやいや、そんなことはどうでも良いな。
 なんであれそこにレミリアがおる。なれば、この部屋は偽物以外にありえん。
 そして気づいてしまえば、あとは早い。
 
 
「はて、傷がないのう……あそこの壁に、ふと思いついた数式を刻んでおいたはずじゃが?
 あちらの落書きも、それに……おおこれは困った、隠し棚のスイッチも見あたらんぞ?
 レミリア、おぬし心当たりはないか?
 ……あ、すまんすまん、おぬしに心当たりなどあるはずもないな。おぬしを我が居城へ招待した憶えなどなかったわ。
 ま、おぬしの如き小娘を招待してやる義理もないでな!」
 
 腕を組んで、胸を反らして、壇上のレミリアを見上げ下ろす、、、、、、
 うむ、このスタイルこそがわらわじゃな、やはり。
 
「で、安眠とな? これは異な事を言うもんじゃ。
 壁の傷も落書きも仕掛けもない……数千年の歴史おもいでなど一つもない!
 このような空虚な部屋で安眠せよと? 馬鹿も休み休み言うがよいわ、小娘ッ!」
 
 言い終わり、ちらと小悪魔を見やる。
 ……さて、これで理解できてもらえるかな、わらわが帰りたい本当の理由を。
 先ほどおぬしが浮かべた、きょとんとした表情。
 あれはな……いや、むしろあれこそが、わらわにとっては寂しい表情であったのだぞ?
 
「わらわが幻想と化しつつある? は、それがどうしたというのじゃ!
 わらわこそがファルガイアの真の支配者! わが友が残せし世界おもいでを見守ることこそがわらわの役目ッ!
 なればこそ、わらわはファルガイアと共にあらねばならんッ! たとえ幻想と化しつつあろうとも!
 ……ふん、おぬしの如き視野の小さき小娘には、わからんかもしれんがな」
 
 
 
 ――さて。
 挑発は、上手くいったか?

71 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/02(金) 23:31:38
いやはや。
わらわも大概、あの熱血な世界の住人じゃのう……

まー、好きにせよ。

72 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/03(土) 00:44:23



 ……咲夜め。細かいところで仕事をさぼったわね。
 お陰でわたしが恥をかいてしまったわ。

「そこのノーブルレッド。あんたは幻想の意味を理解していない」

 こいつの感情は、片思いに夢中になる生娘に似ている。
 ……まったく、年甲斐もないことね。
 純情なんて、咲夜の歳でも口にしたら笑われるのに。

「いくらあんたが生まれ故郷に対して強烈な執着を抱こうとも、故郷のほ
うがあなたを忘れ去ろうとしているのが分からないのか。
 幻想化するということは、その世界から不必要と認められたこと。
 わざわざ『いらない』と拒絶されたんだから、そんな薄情な世界は見限
って、さっさとこっちに引っ越してくればいい」

 こいつは〈ファルガイア〉を「おもいで」に例えたが、世界から言わせ
ればこいつのほうこそ「おもいで」なんだ。
 それも、いまでは夢にすら見なくなった枯れ果てた思い出。後の歴史に
塗り潰されて、形骸すら残らなくなった滅び行く過去。
 ……別に〈ファルガイア〉が悪いのではない。ひとが生きる場所では、
百億もの「おもいで」が過去に埋もれるのは当然だ。
 だのに、とっくに忘れ去られているにも関わらず、しつこく世界に留ま
ろうとするこいつがおかしい。

「いい加減に引退しろって言ってるのよ」

 翼を羽ばたかせて、棺桶から音もなく飛び立つ。
 ドーム状の天井すれすれまで飛び上がると、地上にせせこましく這いず
るノーブルレッドを、今度こそ完膚無きまでに圧倒的に見下ろした。
 ……ふん、小さいわ。まるで豆粒のよう。

「―――どちらにせよ、あんたはここに泊まっていく。
 せっかくわたしの咲夜が、あんたのためにわざわざベッドを用意したん
だから、寝心地ぐらい試していきなさい」

 寝付けないというのなら、わたしが子守唄を歌ってあげるわ。




73 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/03(土) 00:44:44


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


 見上げる首が痛くなってくるほど高い場所まで飛び上がったお嬢様は、
深紅のまなじりをマリアベルさんに向けると、早速一枚のスペルカード
を取り出して宣言を始めました。

 ―――あれは確か、ハートブレイク≠フスペル。

 灼熱の槍という点ではスピア・ザ・グングニル≠ニ同じですが、神
槍より消費魔力が抑えられている分、威力も劣るはずです。

 おかしいですね。
 ここでお嬢様が燃費が気にする理由などないはずなのですが。
 手加減をしてくれるということでしょうか。
 あのお嬢様が? 

 ……もちろんそんなはずはありませんでした。
 お嬢様はかわいらしい牙を「にい」と見せつけて嘲笑すると、まったく
同じハートブレイク≠フカードを左手にも掲げました。
 同種のスペルカードが二枚?
 いや、違う。違います。
 左右に掲げたスペルカードは、それぞれ一枚ずつじゃありませんでした。
 カードは重なっていたんです。
 それも十枚ずつ。
 全部同じハートブレイク≠フスペルカードです。
 こんなことがあり得るのでしょうか。
 お嬢様は手の中で扇のように複数のスペルカードを広げると、合計二
十枚のスペルを同時に宣言しました。

 そんなの、いくらなんでも反則すぎますよ!

 焔槍二十本分の灼熱が、お嬢様の両腕から噴き荒れます。
 グングニルが大蛇のとぐろなら、これは龍の胎動です。
 いくら一本一本の威力が神槍に劣るとはいえ、こんな馬鹿げた数を集め
れば破壊力は二倍や三倍じゃききません。浴びせられれば、灰すら残りは
しないでしょう。……お嬢様自身も、炎を飼い慣らしているというよりオ
ーバーサイズの炎衣を身にまとっているように見えてしまいます。

「逃げましょう、マリアベルさん!」

 最悪なことに、わたしのこの絶叫が引き金になってしまいました。

 お嬢様は狂相を浮かべつつ、炎衣から槍を形成して手当たり次第に投擲
してきます。目にもとまらぬ勢いで、槍を振り上げては投げつけてきます。
 これだけでも無茶苦茶なのに、ハートブレイク≠フ槍はただ獰猛に直
進するだけではなく、途中で閃光を膨張させて、爆発四散しました。
 爆砕した槍からは大小無数の光弾が生まれ、紅の豪雨となってわたした
ちの頭上に降り注ぎます。そう、これは弾幕だったんです。

 ひとつの槍から百の光弾が生まれるとしたら、合計で……二千。

 こんなのはもう弾幕じゃないです。ただの一方的ななぶり殺しです。
 あまりに圧倒的な魔力を前に、恐怖に身が竦み、畏れが理性を麻痺させ、
わたしはただ呆然と立ち尽くすことしかできませんでした。 

74 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/03(土) 00:45:09

わー、お嬢様ってば、かなり本気ですよー!

75 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/03(土) 01:18:54
>>

「ふん、やはり小娘は小娘じゃのう……世界に拒絶されるとな、それがどうした?
 思い出を刻むは正しく「ひとのわざ」じゃ。世界とはその器、言い換えるならば思い出を映す鏡に過ぎん。
 おぬしは鏡と語らう趣味を持つのか? どこぞの継母みたいに?」
 
 なんと言われようと、わらわに、、、、ファルガイアに生きる確固たる理由があれば、それで十分。
 「みんながいるから」ここに生きていきたい……そうじゃろう、アナスタシア?
 
 さて、などとそれこそ思い出に浸っておる暇はない。
 挑発は十分に効いた。案の定、猛烈に熱く厚い弾幕が放たれる!
 本来ならば逃げ場はない! そう、逃げられんのじゃ小悪魔!
 
 そしてそう正に……小悪魔よ、我らも先ほどは逃げずに「突破」したであろう?
 見事なまでに無傷で!
 最初は運が良かったのかと思ったぞ。多少の傷は覚悟しておったのじゃからな。
 ところが実際には無傷。その理由は……いいや、これより証明すれば早いことか!
 
 さて――最後の布石を打つとしよう!
 
 
「で、とーとつに話は変わるが……おぬし、パラレル・ワールド論というものを知っておるか?」
 
 聞こえたか?
 聞こえたはずじゃな?
 眉根を寄せた。不審な顔をした。――隙が出来たッ!
 
 身につけておったマントを外し、床に叩きつけ、反動を発生させるッ、、、、、、、、、
 為に我が身は猛烈な勢いで飛び上がり、自らその弾幕に突っ込み――――――
 
 
 
 ――――すり抜け『グレイズ』したッ!
 そうじゃ、小悪魔より頂いたもう一つの能力!
 おぬしらはこうして、弾幕ごっことやらに興じておったのであろうがッ!
 じゃがもう遅い、これで仕舞いじゃッ! レミリアッ!
 
 
 
 がぶり。
 噛みついた。

76 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/03(土) 01:20:26
ご都合ここに極まれり。

ああ、別に振り払って貰って構わん。
吸血できた時点で目的は九分九厘達成できておるゆえ。

77 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/03(土) 03:15:58


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


 お嬢様の深紅のまなこが見開かれます。
 それも当然。まさか〈弾幕ごっこ〉も知らないよそ者が〈グレイズ〉を
体得しているなんて、いくらお嬢様でも予想できるわけがありません。
 ここに来て初めて動揺のそぶりを見せる不死者の王に、紅雨をすり抜け
たマリアベルさんが突撃します。迎撃の余裕は与えられません。
 スカートの裾を翻し、肉薄したお嬢様に掴みかかりました。

 あ、いや、これは―――

「……か、噛み付いた」

 わたしが確認できたのは、そこまででした。
ハートブレイク≠フ炎雨は棺桶が祀られた祭壇すべて均等に降り注いで
います。当然、わたしの頭上にも弾幕は張り巡らされていました。
 呆気にとられるまま立ち竦んでいるだけのわたしには回避の術などなく、
視界が深紅に染まるのを諾々と受け容れるしかありませんでした。

 ああ、でもマリアベルさん―――
 
 あのひとはどうして、噛み付いたりなんてしたのでしょうか。

 確かに、お嬢様の血を吸うなんて考えられないことです。
 前代未聞と言い切っていいでしょう。
 お嬢様の地獄のような弾幕をやり過ごしたことも、特筆に値します。
 でも、お嬢様のお力の真髄は接近戦。規格外の身体能力を存分に活かし
た近接での戦闘は、間違いなく幻想郷最強です。
 つまり、マリアベルさんはわざわざお嬢様の得意なフィールドに飛び込
んでしまったのです。あんなのは自殺行為に等しいんです。
 それくらいのことは、マリアベルさんだって分かっているはずなのに。

「どうして……」

 ―――わたしのからだが紅雨に引き裂かれる寸前、背後から「ぱちり」
と懐中時計の蓋を開く音が聞こえてきました。

78 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/03(土) 03:16:19



「……なにかしら、これは」

 首筋に食らいついたノーブルレッドに、醒めきった一瞥を投げる。
 よもやこのわたしの弾幕を攻略されるとは思ってもみなかったが、その
結果としてノーブルレッドがわたしに与えたダメージが、お猪口一杯分程
度の血液だなんて。馬鹿馬鹿しすぎて笑みすら浮かんでこない。
 
 わたしはいつまでも噛み付いて離れないノーブルレッドの首根っこを掴
むと、首から引き剥がし、宙を飛んだまま軽々と持ち上げてみせた。
 これで完全にチェックメイト。正真正銘のゲームオーバーだ。
 あとは狭苦しい棺桶にこいつを叩き込んで、熟成するまで蓋に鍵をかけ
てしまえばいい。百年も寝かせておけば、いい感じに発酵するだろう。
 クリムゾン・チーズの完成だ。

 呆気ない幕切れはわたしを失望へと誘う。自然と嘆息がこぼれた。

「……そんなにもひとりが好き?」

 拒まれることは分かっていた。無我夢中で抵抗されることを予見してい
たからこそ、こうして悪戯半分からかい混じりに閉じ込めてやったんだ。
 しかし頭では理解していても、実際に目の前で拒み通されると納得のい
かないものが目立つ。
 なぜ、そうまで〈ファルガイア〉に残りたがるのか。
 そんなに愉快な場所なのか。
 そんなに居心地がいい世界なのか。
 この、幻想郷よりも? ……馬鹿な。ぜったいにあり得ない。

「春になれば桜を眺めて、夏になれば緑に囲まれ、秋には紅葉を満喫して、
冬には雪華を愉しむ。毎晩必ず訪れる夜には咲夜が淹れたお茶で渇きを癒
して、騒ぎたくなれば神社でみんなと気化するまで飲み明かす」

 そう、たまには妖怪退治だってすることもあるわ。

 こんなにも愉快な日常に勝るものが、ノーブルレッドの棲まう世界にあ
るものか。幻想郷こそがすべてのはぐれ者が行き着く楽園だ。

 ひとり居城に閉じこもって、悠久のときを無為に過ごすことにいったい
どれだけの刺激がある。「おもいで」のためにその他の一切を犠牲にして、
それでどんな楽しみが得られる。……こいつは退屈だ。
 軽蔑すべき退屈≠ェ、このノーブルレッドを支配していた。

 ……そう。
 そんなにも孤独に執着するならば、退屈をそんなにも愛するのならば、
あなたはあなたが望むがままに、忘却の〈運命〉を選び取ればいい。

 勝手にしなさい。そう呟いて、わたしは手を離した。

「―――咲夜、夜会はおしまいよ」




79 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/03(土) 03:16:40


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE SCARLET―

>>


「かしこまりました、お嬢様」

 冷静な声とともに、ぱちりと懐中時計の蓋が閉じられる。

「……あ、あれ、咲夜さん」

 いつの間にかわたしは、メイド長の小脇に抱えられていました。
 あ、そうか。咲夜さんはお嬢様の〈ブレイクハート×20〉からわたしを
助けてくれたんだ。咲夜さんの能力ならば、弾幕の雨を縫ってわたしを拾
い上げるぐらい、なんてことはないはずですからね。

 ……どうせなら、もっと早く助けて欲しかったですけど。

 それにしても、お嬢様はどういうつもりでしょうか。
 せっかくマリアベルさんを必殺の間合いに捉えたのに、引き剥がすだけ
なんの攻撃も加えないなんて。
 マリアベルさんの矮躯が重力に引きずられて落下してきますが、あの程
度の高度で負傷するようなひとではないことは確かです。

 祭壇も棺桶も蒸発してしまい、無惨な瓦礫の山となったマリアベルさん
の寝室に、ゆっくりと部屋の主が舞い落ちていきます。
 お嬢様はその様子を静かに睥睨していたかと思ったら―――ぷいっと顔
を反らしてしまいました。そこでわたしは直感します。

 ……お嬢様、もしかしなくても拗ねてしまったんじゃないでしょうか。

 マリアベルさんを幻想郷に迎え入れるべきだというお嬢様の言い分が、
わたしには胸に染みるほど強く理解できます。
 お嬢様は勝手でわがままで相手の返事も聞かずに強引に話を進めてしま
いましたが、その根源にあるのは確固たる同族への思いやりです。
 かつて世界から弾き出されたお嬢様たちが幻想郷に流れ着いたように、
どこにも居場所のないマリアベルさんを迎えたいと考えているのです。

 わたしはそれがとても自然なことで、マリアベルさんもその願いがある
からこそ、こうして頻繁に幻想郷に足を伸ばしているのだとばかり思って
いましたが―――どうやら、違ったようです。
 マリアベルさんは〈ファルガイア〉に残りたがりました。自分の居場所
はここではないと、お嬢様に面と向かって言い切ってしまいました。
 それも幻想郷では滅多に聞けない、真摯で熱い口舌をもってして。

 ……なるほど。お嬢様の気分を萎えさせるには、搦め手でいくよりも、
ああいう風に直球で勝負したほうがいいのかもしれません。
 お嬢様って、暑苦しいの苦手そうですもんね。

 でも、なんだか釈然としないものが残ります。マリアベルさんが自ら
幻想化することを拒むのならば、遠からず〈幻想郷〉に立ち入る資格も
消滅してしまうでしょう。せっかくこっちに遊びに来られるようになっ
たのに、また離れ離れになってしまうんです。とても寂しいです。

 ……うーん。
 やっぱり、無理にでも閉じ込めておくべきなのかもしれませんね。

80 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/03(土) 03:19:04

わー!
長くなってごめんなさいー。
しかも心理描写ばっかりです。
実際にやったことといえば、
マリアベルさんを引き剥がしてぽいっと捨てただけ。
文量に行動が見合ってませんね(汗

81 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/03(土) 03:24:37
あとお嬢様は戦意消失って感じです。
ほんとに気まぐれですね、このひとは(汗
まともそうなことを言ってるように思えますけど、
結局は「わたしがいる場所が全世界でいちばん凄い」ですからね。
うーん、なんとかならないんでしょうか。

82 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/03(土) 20:30:11
>>

「痛、た、たたた……というか、誰もひとりが好きだなどとは言っとりゃせんがな」

 しりもち。かっこわるい。
 いやいや生き方さえ格好良ければそれでよいのじゃ。誇りとはアクセサリーではないのじゃからして。
 第一いまは、鞄を庇わねばならん買ったのじゃから致し方あるまい。大事の前の小事じゃ。
 
 さておき、追撃がないとはのう……まあ、本気でわらわを殺そうというのではないわけじゃから
当たり前と言えば当たり前じゃが。……ふむ、いや、あの様子ではそれとは別か。
 ま、よいのじゃが。
 
「ああそうじゃな、勝手にさせて貰うとしよう。……よ、っと」
 
 ぺろりと口元に残ったあやつの血を舐め(熟成が足りんな、これは)、鞄より例の装置を取り出す。
 ダイヤルやスイッチがごちゃごちゃとくっついた、お世辞にも機能美とはほど遠いその代物を。
 
「勝手に話を進めさせて貰うとしよう。じゃからもう少しだけ付き合え。面白いものを見せてやる。
 ……ええと、そう、パラレル・ワールド論であったな」
 
 ドライバーセットも取り出し、ダイヤルをいじくり、スイッチを切り替えつつ。
 このパラメータはこっち、ここはOFFで、これはゼロのほうがよいか……
 
「簡単に言えば、世界は一つではなく『もしもこうだったら、という世界が無数に存在する』、そういう論じゃ。
 もしも今日、わらわが小悪魔の血を吸っておらんかったならば?
 もしも先ほど、おぬしが弾幕ではなくその爪を振りかざしてきておったら?
 ――その結果の世界もまた、今この瞬間にどこかで存在しておるのだ、とな」
 
 まあこんなものは本来、良くて机上の空論。我ながら馬鹿馬鹿しいことを語っておるものじゃ。
 しかしここから先は違う。……あー、と、こっちのはいっそ振り切れさせるか、でこちらは……
 
「そう、もしも、もしも……しかし現実には「もしも」など存在せん。後になって『全てはそういう運命であった』と
自らに言い聞かせるのが関の山じゃ……『運命だった』と」
 
 全て設定し終わり……組み込んだ術式回路部分の蓋を、ネジ止めをはずし、開ける。
 
「じゃがそれこそ『もしも』、その運命を変えられるものなら?
 ――おぬしのことじゃな、レミリア・スカーレット。運命を操る程度の能力、、、、、、、、、、
 
 にぃと笑って、開けた部分を見せる。
 
「そしてこの装置もまた同じく、運命を操る――――『運命改変装置』じゃ。
 ファルガイアの幸運の守護獣ガーディアンチャパパンガが領域、『絶対幸運圏』に搭載されておった技術とパチェの魔法知識、
 そしてわらわの機械技術を組み合わせた集大成! ……の、失敗作。研究の成果とはあまりにもお粗末。これだけではまず無理じゃ。
 されどここに、おぬしのその能力を掛け合わせたら?
 ……そうじゃ、ゆえにおぬしを吸血した。その能力を奪うために、、、、、、、、、、
 ふ、なに心配するでない。こんなデタラメなものを我が力にできるとは思えん。一回きりがせいぜいじゃろうが……」
 
 最後の仕上げ。
 指先を自分の牙にあて……ぷすり。ちと痛い。
 構わず、溢れだした血玉を術式回路部分に落とし――完了。
 
 
「レミリア、おぬしは勘違いをしておる。誰も幻想郷から出て行きたいなどとは言っておらん!
 ファルガイアからも出ていく気はない、そう言っておるだけじゃ!
 どちらの世界にもあり続けたい、それがわらわの願い! じゃが運命はそれを許さんという!
 ならば、わらわはその運命をねじ曲げるッ! 幻想郷・ファルガイア、この『別々の世界』を結びつけようッ!
 ……ふふ、のうレミリアよ。先ほどはおぬしをわがままと言って済まなかったな。
 どうやらわらわも、大概にわがままのようじゃからな!」
 
 
 ――――起動スイッチに指をかける。
 
 3、
 
「おぬしの望みもッ!」
 
 2、
 
「わらわの願いもッ!」
 
 1、
 
「全て叶えよッ! 運命、改変ッ!!」
 
 
 ――――0。

83 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/03(土) 20:32:29
再びながっ!
いや分量よりも説明台詞が多すぎるのが一番の問題じゃ、これは。予想以上に酷い。
途中でおぬしに割って入って貰わんと厳しいぞ、冗談抜きに……


それはそうと、じゃ。
タイトル、本当にそれで行くのか?


…………いや、その、「Noble Destiny」とかどーじゃろーなーとか……

84 名前:まりべー:2008/05/03(土) 22:10:59

>>

「痛、た、たたた……というか、誰もひとりが好きだなどとは言っとりゃせんがな」

 しりもち。かっこわるい。
 いやいや生き方さえ格好良ければそれでよいのじゃ。誇りとはアクセサリーではないのじゃからして。
 第一いまは、鞄を庇わねばならん買ったのじゃから致し方あるまい。大事の前の小事じゃ。
 
 さておき、追撃がないとはのう……まあ、本気でわらわを殺そうというのではないわけじゃから
当たり前と言えば当たり前じゃが。……ふむ、いや、あの様子ではそれとは別か。
 ま、よいのじゃが。
 
「ああそうじゃな、勝手にさせて貰うとしよう。……よ、っと」
 
 ぺろりと口元に残ったあやつの血を舐め(熟成が足りんな、これは)、鞄より例の装置を取り出す。
 ダイヤルやスイッチがごちゃごちゃとくっついた、お世辞にも機能美とはほど遠いその代物を。
 
「勝手に話を進めさせて貰うとしよう。じゃからもう少しだけ付き合え。面白いものを見せてやる。
 ……ええと、そう、パラレル・ワールド論であったな」
 
 ドライバーセットも取り出し、ダイヤルをいじくり、スイッチを切り替えつつ。
 このパラメータはこっち、ここはOFFで、これはゼロのほうがよいか……
 
「簡単に言えば、世界は一つではなく『もしもこうだったら、という世界が無数に存在する』、そういう論じゃ。
 もしも今日、わらわが小悪魔の血を吸っておらんかったならば?
 もしも先ほど、おぬしが弾幕ではなくその爪を振りかざしてきておったら?
 ――その結果の世界もまた、今この瞬間にどこかで存在しておるのだ、とな」

85 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/03(土) 22:12:07


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE DESTINY―


 わたしは咲夜さんに抱えられたまま、きょとんと首を傾げました。
 マリアベルさんは、お嬢様を引き留めるようなかたちでなんだかよく分
からないことをしゃべり始めました。本気でさっぱりです。

 お嬢様は「もうおしまい」と宣言したのだから、咲夜さんが用意した迷
宮は解除されたと考えるのが妥当でしょう。マリアベルさんは、望み通り
〈ファルガイア〉に帰れるようになったんです。
 なのにどうして、お嬢様の背中に語りかけたりするのでしょうか。
 いつまた気まぐれを起こして「やっぱり帰さない」と言い出すか分から
ないのに。……お嬢様がいかに気分屋なのか、マリアベルさんだって今回の
件で痛いほどに理解したはずです。

 でもマリアベルさんは口を閉ざそうとしません。

86 名前:まりべー:2008/05/03(土) 22:12:22


 まあこんなものは本来、良くて机上の空論。我ながら馬鹿馬鹿しいことを語っておるものじゃ。
しかしここから先は違う。……あー、と、こっちのはいっそ振り切れさせるか、でこちらは……

「そう、もしも、もしも……しかし現実には「もしも」など存在せん。後になって『全てはそういう運命であった』と
自らに言い聞かせるのが関の山じゃ……『運命だった』と」
 
 全て設定し終わり……組み込んだ術式回路部分の蓋を、ネジ止めをはずし、開ける。
 
「じゃがそれこそ『もしも』、その運命を変えられるものなら?
 ――おぬしのことじゃな、レミリア・スカーレット。運命を操る程度の能力《、、、、、、、、、、》」
 
 にぃと笑って、開けた部分を見せる。
 
「そしてこの装置もまた同じく、運命を操る――――『運命改変装置』じゃ。
 ファルガイアの幸運の守護獣《ガーディアン》チャパパンガが領域、『絶対幸運圏』に搭載されておった技術とパチェの魔法知識、
 そしてわらわの機械技術を組み合わせた集大成! ……の、失敗作。研究の成果とはあまりにもお粗末。これだけではまず無理じゃ。
 されどここに、おぬしのその能力を掛け合わせたら?
 ……そうじゃ、ゆえにおぬしを吸血した。その能力を奪うために《、、、、、、、、、、》!
 ふ、なに心配するでない。こんなデタラメなものを我が力にできるとは思えん。一回きりがせいぜいじゃろうが……」

87 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/03(土) 22:14:01



 ……こいつ、なにを言ってるのかしら。
 まさか、このわたしに〈運命〉についての講釈をたれてくるなんて。
 運命改編―――そんなもの、本気でパチェは作ろうとしたの。

「無駄ね」

 わたしは冷たく言い放つ。

「あなた、失敗するわよ。……いいえ、失敗しなさい。
 わたしの血を受けて、〈運命〉を可視できるようになったのであれば、
それがいったいどういうものか片鱗だけでも学んだはず。
〈運命〉と〈境界〉は表裏一体の関係なのよ。そんな不安定で面白そうな
装置をうまく作動させてしまったら……あなた、巫女に怒られるわよ」

 だいたい、運命を改編しようとしたのはこのわたしじゃない。
〈ファルガイア〉から忘れ去られようとしているこいつに、新しい棺を与
えてあげたのに、それを拒んであえて運命の奴隷となることを選んだ。
 なのにいまさら、どんな奇蹟を願うというのか。




88 名前:まりべー:2008/05/03(土) 22:14:49

 最後の仕上げ。
 指先を自分の牙にあて……ぷすり。ちと痛い。
 構わず、溢れだした血玉を術式回路部分に落とし――完了。
 
 
「レミリア、おぬしは勘違いをしておる。誰も幻想郷から出て行きたいなどとは言っておらん!
 ファルガイアからも出ていく気はない、そう言っておるだけじゃ!
 どちらの世界にもあり続けたい、それがわらわの願い! じゃが運命はそれを許さんという!
 ならば、わらわはその運命をねじ曲げるッ! 幻想郷・ファルガイア、この『別々の世界』を結びつけようッ!
 ……ふふ、のうレミリアよ。先ほどはおぬしをわがままと言って済まなかったな。
 どうやらわらわも、大概にわがままのようじゃからな!」
 
 
 ――――起動スイッチに指をかける。
 
 3、
 
「おぬしの望みもッ!」
 
 2、
 
「わらわの願いもッ!」
 
 1、
 
「全て叶えよッ! 運命、改変ッ!!」
 
 
 ――――0。

89 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/03(土) 22:16:47

こんな風に割り込んでみたんですけど、どうでしょう?

90 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/03(土) 23:05:16
>>86部分は以下に差し替え。
あまり変わってはおらんが。



>>

 まったく、我ながら今更なにを馬鹿馬鹿しいことを語っておるものじゃと、ひとり心中で自嘲。
 されどわらわに止める気は無し。例え一笑に付されようとも。
 
「そう、もしも、もしも……しかし現実には「もしも」など存在せん。後になって『全てはそういう運命であった』と
自らに言い聞かせるのが関の山じゃ……『運命だった』と」
 
 全て設定し終わり……組み込んだ術式回路部分の蓋を、ネジ止めをはずし、開ける。
 
「じゃがそれこそ『もしも』、その運命を変えられるものなら?
 ――おぬしのことじゃな、レミリア・スカーレット。運命を操る程度の能力、、、、、、、、、、
 
 にぃと笑って、開けた部分を見せる。
 
「そしてこの装置もまた同じく、運命を操る――――『運命改変装置』じゃ。
 ファルガイアの幸運の守護獣ガーディアンチャパパンガが領域・『絶対幸運圏』に搭載されておった技術とパチェの魔法知識、
 そしてわらわの機械技術を組み合わせた集大成! ……の、失敗作。研究の成果とはあまりにもお粗末。これだけではまず無理じゃ。
 されどここに、おぬしのその能力を掛け合わせたら?
 
 ……そうじゃ、ゆえにおぬしを吸血した。その能力を奪うために、、、、、、、、、、!」

91 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/03(土) 23:06:55
そして>>88部分は以下に。
こちらは完全に書き換えた。


>>

「ふふん。失敗がどうした? あいにくと、失敗を恐れておっては研究開発などできんゆえにな」

 自らの指に噛みつき、溢れる血玉を術式回路部分に滴らせながら、わらわはごくあっさりと否定する。
 ……ああ、確かに運命とやらの片鱗には触れたとも。
 実に大それた能力じゃ。まともに扱い切れるものではない……認めよう、わらわのキャパシティを超越しておると。
 
 じゃが、それがどうした?
 
「誰に怒られる? 知ったことではないな! 我が願いの叶わぬ世界などこちらから後免被るというものじゃ!」
 
 起動スイッチに指をかけ――万感の思いを込める。
 
「世界が友のみならずわらわをも奪うとな? それが嫌なら幻想を奪うと?
 誰が承服できようか! これ以上、思い出一つたりとも奪わせはせんわ!
 我が願いは友と語らい、皆を見守ること! 幻想郷もファルガイアも関係あるものか!
 それらが違う世界・違う運命であるというなら――重ね合わせてやろう、それら全てを!
 失敗など恐れるものか! もしも敵わぬというのなら――――最早、如何なる世界にも用はないッ!」
 
 言い切って、スイッチを入れようとし……ふと、イタズラ心がよぎった。
 にっこりと微笑んで、レミリアを見やる。
 
「なに心配するな、本当に消え失せてやる気は毛頭無い。
 なにしろおぬしに言ったからのう……『茶でも菓子でもいずれ付き合う』とな。
 ならばそれも、わらわの願いじゃ。叶えてみせようとも。
 例えおぬしが嫌がったとしても、な! 覚悟しておくのだぞレミリア?」
 
 
 
 
 
 
 ――――――かちっ

92 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/03(土) 23:08:24
やれやれ、先ほどよりは様になっておるかのう……
割り込み感謝するぞ、心から。

……後はどう締めるか、か。ヴィジョンはなくもないのじゃが。


そしてタイトル案がなにやら本当に採用されておるようなのでこそばゆい。

93 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:29:06

Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE DESTINY―



「時計の針が……」

 珍しく咲夜さんが狼狽した声をあげました。

「調律が狂ってゆく―――」

「ええ?!」

 そ、それってどういうことなんでしょうか。
 マリアベルさんが掲げた箱≠ヘ、咲夜さんが統べる〈時間〉と〈空間〉
にまで影響を与えているってことですか。
 ……そんな無茶苦茶な。

 咲夜さんですら動揺する事態だというのに、意外なことにレミリアお嬢
様は冷静です。瞳孔を猫のように細めて、箱≠ェ開かれていく様子を黙
って見守っています。その横顔は真剣そのもので、箱≠フ中味を一瞬た
りとも見逃すまいとしているかのようでした。

 わたしも自然と視線が引き付けられてしまい、いまでは食い入るように
マリアベルさんと箱≠見つめてしまっています。

 ……あれが、ご主人様とマリアベルさんが一緒になって作っていたもの。
 ご主人様曰く「革命的な研究」であり、マリアベルさん曰く「革命的な
開発」であるともいう、不眠不休飲まず食わずの成果。
 この一ヶ月だけではありません。
 ご主人様とマリアベルさんが〈無線通信機〉で「ラグチュー」を始めた
ときから、ともに夢見た「奇蹟の科学」なんです。

 マリアベルさんのお言葉が真実ならば、無限に等しい失敗を繰り返し続
けた実験内容とは、「運命を科学的に解明する」ことになります。
 その応用として、〈運命改編装置〉なんてとんでもないものを作り上げ
てしまったのでしょう。
 
 ……信じられません。
 どうしてそんなことを思いつけるのでしょうか。どうしてそんなものを
実際に作ってしまおうと思えるのでしょうか。
 それも一世紀近い時をかけて、です。いまマリアベルさんが掲げている
箱≠ヘ、ご主人様との「おもいで」そのものじゃありませんか。

 もしかして、もしかしなくても天才って馬鹿なんですか?

 ご主人様は〈運命〉の仕組みを知ってどうするおつもりだったのでしょ
うか。マリアベルさんは〈運命〉を改編して、なにを望むのでしょうか。

 箱がゆっくりと開かれていきます。
 あの中に、わたしの疑問の答えもあるのでしょうか。

 ……いいえ、実際に蓋が開いているわけではありません。
 第一、あれがほんとうに箱なのか、それとも「箱のようなもの」なのか
も、わたしには分からないです。
 ただ、そう見えただけ。
 だって、わたしにはマリアベルさんの姿が、人類最初の女性と重なって
見えてしまうんです。同じように箱≠開いた、あのひとと同じに。

 マリアベルさん、その箱の中味は―――

94 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆5pn2MWWUKI :2008/05/04(日) 00:29:30



 わたしはノーブルレッドの部屋に飛んでいながら、同時に大図書館を遠
目から眺めてもいた。わたしの蝙蝠たちが、破壊された門扉から本棚の樹
海の様子を窺っているのだ。

 大図書館には当然のように彼女がいる。
 いや、彼女がいる場所が図書館となるのだ。
 そしてわたしたちがこんな馬鹿騒ぎをしている間も、魔女は黙々と書物
から新たな知識を貪る。貪欲に取り込んでいく。
 まったく……あなたはほんとうに相変わらずね。
 だけど、わたしの影なる瞳は見抜いている。マイペースに読書に集中し
ているつもりなんでしょうけど……あなたの口元、綻んでいるわよ。

 そうやって、しっかりとおいしいとこだけもらっていくのね……。

 ―――でも、そう。

「……確かに、こういう〈運命〉も悪くはないわね」




95 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:30:02


 ―――こうして〈運命〉は書き換えられ、
 マリアベルさんはノーブルレッド城に戻ってしまいました。

 彼女は幻想化することを、最後まで拒んだんです。



96 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:31:10

書いてみましたー。
こんな感じでどうでしょうか。
お嬢様はいまさら「全部見通していたのよ」って顔してますけど、
どう考えても、無理に澄まし顔を取り繕っているだけです(汗

97 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/04(日) 00:46:41
新しいトリップのテストよ。

98 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:53:20







マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット

Noble Red」sScarlet Devil
―NOBLE DESTINY―

ノーブル・デスティニー







.

99 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:53:54






マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット

Noble Red」sScarlet Devil
―NOBLE DESTINY―

ノーブル・デスティニー







.

100 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:55:25






マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット

Noble Red」sScarlet Devil
―NOBLE DESTINY―

ノーブル・デスティニー







.

101 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:56:31








マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット

Noble Red」sScarlet Devil
―NOBLE DESTINY―

ノーブル・デスティニー







.

102 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:57:35


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット

Noble Red」sScarlet Devil
―NOBLE DESTINY―

ノーブル・デスティニー


103 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:58:55



マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット

Noble Red」sScarlet Devil
―NOBLE DESTINY―


ノーブル・デスティニー




104 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 00:59:56

しつこくテストしてしまってごめんなさいー。
以上で終了ですぅ。

105 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/04(日) 01:12:21

それと、本スレに導入を貼っておきましたー。
続きをお願いしますね。
あとはお互い気付いたら、その都度貼っていきましょう。

106 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/04(日) 01:13:57
>>



               *               *               *



 ……くかー、くかー、すぴー、す<ごんごん、ごんごんごん>
 …………ん、あ、むぁ……ああ、アカとアオか、起こしてくれたのじゃな。もうそんな時間か。
 起きるとするか。
 
 目を開ける。しかしまっくら。愛用の棺の中なのじゃから当然。
 もっとも内側から蓋をずらしてみてもまだ薄暗かったりするのじゃが。
 夜と闇に生きるわらわは眩しいのは好きではない……が、さすがに暗すぎるか。身だしなみを整えねばならんしの。
 
 起き上がり、指を鳴らして光量調整。映し出されたるはノーブルレッド城の我が自室。
 さてと、とあくびを一つかみ殺し、ネグリジェからお着替え、お着替え……じゃ。
 ま、いつものワンピースにマントなのじゃがな。別にかしこまった場に向かうわけではないのじゃし。
 
 
 ドレッサー兼着替え室に向かい……ちらと、あの「扉」に目をやった。
 先日までは存在しなかった、その扉を。
 
 
 ……結局、世界・運命を重ねるなどという試みはやはり成功するはずもなかった。
 ファルガイアはファルガイアのままであり、幻想郷は幻想郷のまま。……ふむ、侵食も融合も拒んだこの世界は
案外に強靱かも知れんな。ならば、ファルガイアは今後も安寧が続くと見て良いか。
 
 話がそれた。
 ……世界は、重なりはしなかった。
 しかし、それではわらわの願いは叶わなかったのかと言えば、そうではない。
 わらわは友を失わずに済んだ。そして今日もまた、あやつらとの約束がある。
 ――――もっともこの無理矢理な「半成功」の反動か、件の研究はその後頓挫しきりであったりするが。
 以前は上手くいった髪の毛一本、爪数ミリ、ページ一枚分程度の「改変」すらまるで成功せん。
 世界を相手取った報いか。
 じゃが、まあ……今はこの日常が続くだけでも、僥倖なのであろうな。
 
 
 着替え終わり、身だしなみもばっちり。では行くとしよう友の元へ。
 城の外、ここではないどこか……などではなく、自室へ。そこにあるあの扉へ。
 ノックし、扉を開け、声をかけた。
 
 
「おーいおるかー? パチェ、レミィ、咲夜に小悪魔よ」
 
 
 
 ――――――そう、扉の向こうは幻想郷、紅魔館の大図書館。

107 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/04(日) 01:15:33
とまあわらわのエピはこれにて。
何の約束かと言えば、もちろん茶会……というのはどうか?
ついでにごーいんにも、レミリアまであだ名で呼んだぞふっふっふ。


よし、では本スレの方も貼っていくとしようか。

108 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/04(日) 02:35:31
<書き置き>
今日はこれでもう寝る
</書き置き>

109 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/04(日) 19:18:24


Prologue


 ―――こんなに月も紅いから。

 今夜は湖のほとりを散歩しようと思ったのだけれど、珍しくパチェに図書館
でお茶でも飲まないかと誘われたので、散歩は明日に回すことにした。

 ……咲夜は残念がっているかしら。
 連れていくって約束したものね。
 でも、しかたないわ。
 図書館の魔女とさし向かいでお茶を楽しむのは久しぶりなんだもの。

 わたしの友人は、〈運命を科学的に解明〉する一件が落ち着いてようやく躯
が空くかと思ったのに、また別の研究課題を見つけて図書館に引きこもってし
まった。……ほんと、知識人を自認する手合いは理解に苦しむわ。
 せっかく悠久の時間を得られたというのに、どうしてそんなに大急ぎで知識
を詰め込もうとするのかしら。落ち着いてお茶すらできないなんて。

 けど、わたしを誘ったということは魔女の知識の中にしっかりとスカーレッ
トの名が刻み込まれているということだから、お呼ばれには上機嫌で応じる。
 今夜も愉しい夜になりそうだ。

 パチュリーの大図書館はいつにも増して乱雑さが目立った。
 書物が至るところに放置され、積み重なっている。本棚から本を出した端か
ら床に捨てていったのだろうか。彼女の使い魔が忙しく飛び回って片付けをし
ていたが、あの様子では司書が一個旅団はいなければ追いつかないだろう。

 足の踏み場にも困る本の洪水を縫って、わたしはパチェが待っているテーブ
ルセットに落ち着いた。さっそく咲夜がお茶の支度を始める。
 パチェは読んでいた本を閉じると、湯気が昇るティーカップを億劫そうに持
ち上げた。わたしもわたしのペースでお茶を飲む。
 わたしもパチェも、そして咲夜も、なにも語ろうとはしない。ただ無言でこ
の空間に溶け込んでいる。パチェとのお茶会はいつもこうだ。会話ではなく、
空気を味わう。魔女と共有する時間こそが最上のお茶うけになる。

 けど、今夜は珍しく、沈黙は五分足らずで破れた。
 しかもさらに意外なことに、パチェのほうから話しかけてきた。

「レミィが好きそうな面白い遊びを見つけたの」

「ふうん」

「きっと気に入るわ」

 魔女の言葉は難解だ。これを人間にも分かるように訳すと、「新しい実験を
あなたで試させて」になる。紅魔館の主を何食わぬ顔で実験動物にしようとす
るなんて……パチェったら、ほんとにお茶が愉しく飲める子ね。


110 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/04(日) 19:18:37


「またなにか外≠ゥら入ってきたのかしら」

 ええ、と友人は頷く。相変わらず彼女は新しいもの好きだ。

「……古道具屋でたまたま見つけたのよ」

 そういって、さっきまで読んでいた本をずいと差し出す。

「掘り出しものね。店主から安く買い叩けたわ。彼は内容を理解できても価値
までは分からなかったみたいだけど、これは〈弾幕ごっこ〉や〈サッカー〉に
続く新しい遊戯になるわ」

 本の装丁は毒々しいほどに真っ赤だった。人間を撲殺できる程度には分厚い
が、表紙からはあまり高尚な印象を覚えない。けばけばしいデザインが俗っぽ
さを煽り立てている。……中味は意味不明な文字の羅列。まるで暗号ね。

「読めない」

 本を咲夜に手渡す。

「読んで聞かせて」

 メイドはぱらぱらとページをめくりながら、「文字がたくさんありますね」
と的外れな返事をした。……そんなことぐらい、わたしだって分かるわ。
 パチェは「これは読んで楽しむ本じゃないわ」と嘆息した。

「外の世界で流行っている遊びを記録を本なの。だから全文を訳さなくても遊
び方さえ分かれば問題ないわ」

「それでわたしを呼んだの」

「ええ。この遊びはレミィがいないと成り立たないから」

 ……へえ。
 つまり、わたしが主役ということね。
 それは悪くない。
 そういう遊びは好きよ。

「もちろん協力するわ。だってわたしがいないと始まらないんでしょう」

「とっても危険な遊びよ」

「あら、わたしより危険なものなんてないわ」

 それで、なんていう遊びなのかしら。
 わたしが尋ねると、パチェはお茶を飲んで喉の調子を改めてから、やや緊張
した声音で言った。


「―――吸血大殲よ」


111 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/04(日) 19:18:55






マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット

ROUND 2

Noble Red」sScarlet Devil
―TOUHOU TAISEN―


吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade





.

112 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/04(日) 19:19:50


 きゅうけつたいせん?

 当然だけれど、聞き覚えはない。
 咲夜に目を向けたが、彼女も肩を竦めるだけで心当たりはないようだ。
 ……それ、ほんとに面白いのかしら。〈弾幕〉や〈サッカー〉のように、
胸に響くものがないのだけれど。だいたい、なにが危険なのよ。

「まだ決断を下すのは早いわ」

 わたしたちの反応に感動がないことを見て取ったパチェは、さらなる情
報を開示した。

「―――副題は物凄い勢いで吸血鬼たちが闘争するスレ ≠諱v

 ものすごい勢いで……。
 なるほど。〈吸血大殲〉なんて熟語みたいなタイトルに比べれば、そっ
ちのほうがよっぽど分かりやすい。
 つまりものすごい勢いでわたしが闘争とやらをスレなのね。

「……でも、スレ≠チてなんなのかしら」

「それはノイズね。誤植かもしれないわ」

「じゃあ、ものすごい勢いでわたしが闘争する≠ナいいわけね」

 パチェは無言で首肯する。

「ふうん、〈闘争〉ねえ……」

 戦うという意味だろうけど、それなら〈弾幕ごっこ〉や〈サッカー〉だ
って忙しいぐらいに戦っている。戦闘でもバトルでもなく〈闘争〉と呼ぶ
ぐらいなのだから、そこになんらかの意味を見つけているのだろう。
 響きから覚える印象は……原始的で、野蛮で、凄惨だ。

「ルールはかなり単純よ。〈導入〉と〈状況〉を指定して、そこで相手が
負けるまで殴り合い、殺し合うの。基本は接近戦の直接攻撃」

「へえ……」

 思わず口元が綻んでしまう。それは確かにわたし好みだ。
 なにせ〈弾幕ごっこ〉では、わたしがもっとも得意とする格闘戦を愉し
めないからだ。せっかくこんなに圧倒的な身体能力を持ち合わせているの
だから、存分に暴れ回れるルールが欲しいと前から常々思っていた。
 渡りに船とはこのこと。パチェはやっぱり天才ね。

「でも、専門用語が目立つわね。〈プロローグ〉とか〈シチュエーション〉
とか、さっぱり意味が分からないわ」


113 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/04(日) 19:19:59


「〈導入〉は闘争するプレイヤーが参加すること。〈状況〉はバトルフィ
ールドを選ぶこと。それを同時に行うっていうのは、〈サッカー〉でいう
選手入場≠ンたいなニュアンスになるんじゃないかしら」

「ああ、分かった。ボールを使わない〈サッカー〉みたいな感じなのね」

 パチェの言う通り、だいぶシンプルな遊びのようだ。
 因みに彼女の説明によると、この〈吸血大殲〉のプレイヤーを専門用語
で〈闘争狂〉と書いてうぉーもんがー≠ニ読むらしい。

 ただ、単純なら単純なりに厳粛なルールがある。
 殴り合い殺し合うのが目的の遊びなのだから、その危険性は推して知る
べし。人間なんかが〈闘争狂〉として参加してしまえば、ほんとに死んで
しまうことになる。それでは白けるだけだ。幻想郷の決まり事にも反する。

 だから煮ても焼いても死なない吸血鬼に白羽の矢が立ったのね……。

「―――でもそうなると、わたしの他にもうひとり〈闘争狂〉として吸血
鬼が必要になってくるじゃない」

 わたしひとりでは殴り合いも殺し合いもできない。

「まさか妹様を誘うわけにもいきませんしねぇ」

 メイドが頬に手を当てて呟いた。

「……冗談じゃないわ。あの子と殴り合いなんてしたら、遊びじゃ済まな
くなる。あの子に〈吸血大殲〉のことは絶対に教えちゃ駄目よ、咲夜」

「加減とかできませんものね」

 パチェがカップにソーサーを置いた。

「でも、このままだと頭数が揃わないわ」

「どうしても吸血鬼じゃないといけないの?」

うっかり死んだりしない≠ニいう条件だけなら、吸血鬼に限定しなくて
も幻想郷には腐るほどいる。迷いの竹林に行けば不死人の二人や三人は簡
単に誘えるだろう。白玉楼の幽霊だってこれ以上死ぬことはない。

「駄目よ」

 驚くほど厳しい声でパチェは答えた。

「〈闘争狂〉の条件は絶対的に吸血鬼なの。それ以外のプレイヤーはいっ
さい認められない。吸血鬼が吸血鬼としてものすごい勢いで〈闘争〉をす
るから、この遊びは〈吸血大殲〉として成り立つのよ」

 この規律のことを専門用語で〈レギュレーション〉と言うらしい。
 ……まったく専門用語が多い遊びね。


114 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/04(日) 19:20:11


「例外として〈教会の代行者〉も参加できるらしいけど……」

「教会?」

 それは懐かしい響きだ。
 あいつ等とは、こっちに来てからすっかり疎遠になっている。

「これは多分〈境界〉の誤字ね」

「そ、そうなの」

〈境界の代行者〉って―――

「それ、巫女のことじゃない」

「ええ、巫女のことでしょうね」

「あいつ人間よ。殴ったら死ぬわ」

「死ぬわね」

「もし殴っても死ななかったら、あとが怖いわ。なにされるか分かったも
のじゃない。それって遊びにしてはリスクを負いすぎじゃないかしら」

「そうね。巫女を参加させるのは危険ね。やめておくべきだわ」 

 ……やはり、吸血鬼の中から〈闘争狂〉を見つけるしかないようだ。
 しかし、わたしとフランの他に吸血鬼の知り合いなんていたかしら。
 吸血鬼のように高貴で高潔で誇り高き種族は、幻想郷でも外の世界でも
なかなか見かけるものじゃない。
 そういう意味で、この〈吸血大殲〉は貴族の遊びと言えるだろう。

「―――あ」

 そこでわたしは思いついた。

「いるじゃない、取って置きの吸血鬼が」

 パチェと咲夜が同時に首を傾げる。……なんてこと。わたしより先に気
付かないなんて。それでも同じ〈城〉に棲まう家族なのかしら。
「あれよあれ」と言って、図書館の奥の小さな扉を顎先で示した。
「ああ」とメイドが頷き、「なるほどね」とパチェが答える。
 ……そう、あいつも干涸らびるぐらいに一人前の吸血鬼なのだ。

 これで面子は揃った。
 パチェが準備を整えるため、席を立つ。
 わたしも咲夜に命令した。

「―――咲夜、夜会の支度を始めなさい」

 今夜は存分に殺し合うわよ。


115 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/04(日) 23:42:48
待っておる間にレス番まとめの暫定版を。
……しっかし、我ながら妙な凝りかたをするものじゃ。


Noble Red」sScarlet Devil
 ―NOBLE DESTINY―


タイトル画面 >>905


オープニング >>906>>907>>908>>909>>910>>911>>912>>913>>914
         >>915>>916>>917>>918

NobleRed VS ScarletDevil 第一部 >>919>>920>>921>>922>>923>>924>>925>>926>>927>>928>>929
                      >>930>>931>>932>>933>>934>>935>>936>>937>>938>>939

116 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/04(日) 23:43:29
……「アンカー大杉」だそーじゃ。
残りは以下に。


Intermission 図書館にて >>941>>942>>943>>944>>945>>946>>947

NobleRed VS ScarletDevil 第二部 >>948>>949>>950>>951>>952>>953>>954>>955>>956>>957

"Manipulation of Destiny" >>958>>959>>960>>961>>962>>963>>964>>965


エンディング >>966(いかつづく)



ちなみにレミリアの能力は英語版wikipedia、並びに「Touhouwiki」に曰く「manipulation of fate」だそうでな。
思いっきり拝借した。

117 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 17:21:27


 ……あー、てすてすてす。


118 名前: ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 17:22:51



 星の浮かばぬ闇空に、孔を穿つかのように咲いた紅の月。
 紅魔館が時計塔のいただきに立ち、
 満月を見上げながら待つ者の名は、レミリア・スカーレット。
 彼女こそは闘争狂。この幻想郷の影が残した血濡れの疵痕。
 夜籠もる湖のほとりで、悪魔は今宵も血に飢える。
 さあ、そろそろ始めるか。
 月光の返り血をこの身に浴びるため―――





119 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 17:23:35



 東方大殲の開幕だぁぁぁぁぁっっ!!




120 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 17:24:11


 さあ! ついに始まりのときを迎えました。
 幻想郷に突如とした現れた怪奇な遊戯『吸血大殲―ものすごい勢いでレミリ
アお嬢様が闘争する[雑音消去]―』。不死者の祭典!
 ナレーションは紅魔館の専属記者℃ヒ命丸文が、この〈闘争〉の独占取材
権と引き替えに行わせていただきます。

 え、私を呼んだ覚えはないって?
 ……確かに、主催者のノーレッジさんは私を招待してくれませんでした。
 しかし、〈風の調べ〉が私をここまで呼び寄せてくれました。これに勝る招
待状はありません。ノーレッジさんの往くところに必ず知識があるように、天
狗の進む先にはつねに未知なる情報が待ち受けているんです。
 はい、実に合理的かつ道徳的な理屈ですね。

 まあ、それはそれとして―――

 見てください!
 決闘場所に選ばれた湖のほとりの空き地には、誰に招かれたわけでもないの
に早くも多くのギャラリーが詰めかけています。
 あそこには紅魔館の妖精メイドたちが応援団を作っています。おおっと、あ
っちでは八雲一家と白玉楼の皆さんが早速酒盛りを始めていますよ。
 陽も暮れに暮れて晩刻の極みに達する時刻ですが、集った妖怪たちはみな一
様に太陽の如き明るい表情で〈闘争〉が始まるのを待っています。
 そうです。結局みんな暇人だっていうことです。こんな面白そうな遊びを見
逃すわけにはいかないんです。別に私が号外をまいたわけじゃありません。

 ……さて。
 この〈吸血大殲〉は、私たちが知る〈弾幕ごっこ〉や〈サッカー〉と違い、
複雑なルールもなく純粋に力と力をぶつけ合うという原始的かつ野蛮で、とて
もレミリアさんにお似合いの遊戯になっています。
 幻想郷ではいままでこういうダイナミックな遊びはなかったため、観戦者の
みなさんも理解に困ることが多いでしょう。そこでこの射命丸文が、特別ゲス
トとして専門家のコメンテーターを呼ばせていただきました。

「吸血鬼でいちばん強いのは彼女かもしれないが、幻想郷最強はこの私だ」

 そう! 四季のフラワーマスター風見幽香さんです!
 おはようございます、幽香さん。

  ……いまは夜よ。

 私たち天狗仲間は夜だろうと丑三つ時だろうと、あいさつは「おはようござ
います」なんですよ。
 
  歪んでるわね。夜に咲くアサガオ。それはもうアサガオじゃないのに。

 私はアサガオじゃなくて新聞記者ですから。
 あ、いまはナレーターでしたっけ。
 でもそんなことはどうだっていいんです。それより幽香さん、幻想郷最強を
自称する暴力妖怪として、この暴力的な暴力ごっこについてどう思われますか。

 大殲ごっこ≠ナしょ。吸血鬼しか参加できないのなら、興味ないわ。

 なんだかダウナー気味ですね。とても眠そうです。お日様が昇ってないせい
でしょうか。せっかくあなたが好きそうな遊びを見つけてきたのに。

  勝手に私を運んだのはあなた。……しかもこんな、花の少ないところに。
  あなたはただ、私をここに呼べば面白いことになるんじゃないかって
  期待しているだけ。……でもそうね。確かに楽しそう。私も混ざりたいわ。


 おっと。ここで幽香さんから挑発的な台詞が飛び出した!
 向日葵妖怪の全身から、乱入する意気込みがみなぎっています。どうやら紅
魔館の吸血鬼は、背中にも気をつけないといけないようです。

  ……。

 さて。
 では〈闘争〉が始まる前に、〈吸血大殲〉のルールを説明させてもらいます。
 ノーレッジさんからお借りしたルールブックを参照にすると―――

121 名前: ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 17:25:04


〈吸血大殲ごっこ〉ルール
 闘争編(パチュリー・ノーレッジ責任編集)


・プレイヤーを〈闘争狂〉と呼ぶ。
・〈闘争狂〉は吸血鬼か博麗の巫女でなければならない。
・〈闘争〉の始めには〈導入〉と〈シチュエーション〉が必要である。

・〈闘争〉には〈リアルタイム〉と〈会議室進行〉の二種類がある。
・〈リアルタイム〉は衆目に晒されながら華々しく殴り合う。
・〈会議室進行〉は人目を避けて二人だけで決闘を行う。勝敗の結果だけを明かす。

・〈闘争〉は殴り合いを基本とする。直接的な攻撃が基本である。
・ただし、これは遠距離からの攻撃を否定するものではない。

〈闘争〉はつねに攻撃を交互に行わなければならない。
・連続した攻撃は厳禁である。これを大殲用語で〈確定攻撃〉と呼ぶ。
・一度殴れば、次は相手に殴らせる。この一巡を〈1ターン〉と呼ぶ。

〈闘争〉は相手の攻撃を決して避けてはならない。
・正面から攻撃を受け止めることこそ〈闘争狂〉の誉れとなる。
・避けた場合、ペナルティとして攻撃を一回休みとする。

・〈闘争〉の勝敗は、死亡したほうを負けと見なす。
・吸血鬼は不死のため、十分以上再生できなければ死亡と見なす。
・この「再生するまでの十分間」を〈テン・カウント〉と呼ぶ。
・当然だが、カウント中に攻撃を加えてはならない。

・〈闘争〉を勝ち抜いた〈闘争狂〉を〈不死者の王(ノーライフキング)〉と呼ぶ。

・タイムリミットは夜明けまで。
・もしくは、騒ぎを聞きつけた巫女が駆けつけてくるまで。
・闘争後は必ず握手を交わすこと。


 以上

122 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 17:25:43


 ……。

  ……。

 ……こ、これはまた〈弾幕ごっこ〉とは対照的なルールですね。
「攻撃を避けてはならない」なんて信じられません。仏像でも相手にする気
なんでしょうか。せっかくの高機動がまったくの無意味になってしまいます。
 天狗の私としては、ハードルの高い遊技です。

  わざわざ追いかけなくていいから、楽そうね。

 幽香さんはそうですよね。なにせ幻想郷でも屈指の鈍足ですから。優雅と言
えば聞こえはいいですが―――あ、笑顔で睨まれてしまいました。
 しかし、幽香さんの足では私をいじめたくても追いつきません。

  ……。

 ……このままでは解説席で場外戦が始まってしまいそうなので、さらっと話
を風に流して、次は〈闘争狂〉の説明を始めちゃいましょう。
 
 時計塔のてっぺんに立っている紅の影。あれが〈吸血大殲〉の主人公となる
レミリア・スカーレットさんです。お馴染みの顔なので、説明は省いてもいい
ですよね。要するに紅魔館の当主さんです。やる気まんまんです。

  自分の勝利を疑っていない顔ね。
  ああいうやつを見るといじめたくなるわ。


 幽香さん、聞こえたようですよ。めちゃくちゃ睨まれてますよ。
 ……って、幽香さんも睨み返してる!
〈闘争〉が始まる前に〈弾幕ごっこ〉が始まりそうな勢いですが、幽香さんい
まはまだ自重してください。ここで始めても面白くないです。
 
 それで、肝心のレミリアさんの闘争相手なんですが―――このマリアベル・
アーミティッジさんって方、幽香さんは知ってます? 最近、紅魔館に住むよ
うになった吸血鬼らしいですけど、他の情報はいっさい謎に包まれてます。
 どうも外の世界から移籍してきたようですね。

  ……あなた、新聞屋なのに知らないの。

 いまは知ってますよ。なんだかネタのにおいがしますね。わくわくします。

  あれじゃない? あの青いエプロンドレス。

 おお!
 主審のノーレッジさんに連れられて、紅魔館の正門から姿を見せるちんま
りとした影。あれが噂のマリアベル・アーミティッジさんなのでしょうか!

  いい趣味をしているわ。夜の一族なのに太陽がとても似合いそう。

 いま、ついに二人の〈闘争狂〉が揃いました。
 心なしか月の輝きも妖しさを増しています。夜族の時間も盛りを迎え、こ
の幻想郷でも〈吸血大殲〉の火蓋が切って落とされるのか。
 見てください。
 レミリアさんも時計塔から降り立ち、両〈闘争狂〉が相対しました!

  ……楽しそうね、あなたが。

123 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 17:28:21

こんにちはー。
お約束の導入をお届けにきましたよー。

ほんとは大図書館の司書が今回も説明役になるはずだったんですが、
なんかお掃除で忙しいらしいので、今回は私がやることになりました。
よろしくお願いしますね。

124 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/06(火) 22:11:06
>>


  知 ら ん が な 。
 
 
 ――――以上は、この件の概要を知った際の、わらわの正直な気持ちである。
 はっきりと言おう、こればかりは誰にも否定はさせん。
 
 
 つい先ほど。
 「城のほう」でトラップの調整をしておったわらわを、何やらパチェとレミィが用があるということで
館のメイド妖精が呼びに来た。
 まあ、それ自体はさほど珍しいことではない。パチェはともかく、レミィなどは唐突に「茶に付き合え」と
呼びつけることもままある。じゃが、パチェと共に用があるとは一体……

 ……思えば、せっかくここで怪訝に感じたのじゃから、そのまま警戒して断っておけば良かったのかも知れぬ。
 少なくとも、パチェから呼びつけられた理由を聞かされた直後は、そう本気で思った。
 
 そう、我が友人は曰く
 
 
「吸血鬼同士で『闘争』する遊びに付き合ってくれ」
 
 
 じゃと。
 
 かるーく、めまいを覚えた気がする。ついでにまわれ右したくなった覚えもある。
 何しろ、どう聞いても穏やかではない。"吸血鬼同士" で "闘争"!?
 何をしろとゆーんじゃ。わらわはか弱い乙女じゃと常日頃から主張しておるというに。ましてやレミィのよーな
はちゃめちゃな奴とやり合えと? 命がいくつあっても……
 
 ……ああ、いやいや。そういえば遊びであったな、いちおー。ならば弾幕ごっこと似たようなものか。
 それならばまあ、安心とは行かずとも納得は出来るぞ、うむ。
 
 と、どうにか納得しておるところに渡されるルールレジュメ。
 
 
>>121

 
 
 ――――開いた口がふさがらない、というものを何やら初めて実体験したような、気がした。
 
 
 
               *               *               *
 
 
 
 そして今、わらわはパチェと共に紅魔館の正門――「会場」の端におる。
 おらされておる。
 
 何やら異様な熱気。皆どこから聞きつけた。
 天狗とやらが実況席で囃し立てておる。というかおぬしジャーナリストではないのか一応。
 そしてレミィは当然の如く不敵な表情を見せつけておって。
 パチェは…………いや、うん、まあ、もうよい………………が。
 
 
 …………知らんがな知らんがな知らんがな知らんがな知らんがな知らんがな知らんがな知らんがな
 
 
   ど    ー    せ    ー    っ
   ち    ゅ    ー    ん    じ     ゃ     ー     ー    ー    っ    !    !

125 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/06(火) 22:16:44
※現在のわらわ→まな板の上の鯉

ええい、
滝登って龍にでもなってみせようか――――――

126 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 23:22:55

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―


  ……。

 ……。

  ……ちっちゃいわ。

 ……ちっちゃいですね。

  吸血鬼ってみんなああなのかしら。

 なんか姉妹なんじゃないかってぐらい似ていますね。
 身長もそうですけど、無意味に偉そうなところとか、ちっちゃいところとか、
尊大そうなところとか、ちっちゃいところとか、威張ってるところとか。
 もしかしなくても三姉妹なのかしら?

  三人並べて鳴き声を確かめたいわ。

 いくら幽香さんでも、スカーレット姉妹が両方を相手取るのは―――

  待って。始まるみたいよ。

127 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/06(火) 23:23:40

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>


 パチェが<状況(シチュエーション)>として選んだのは、紅魔館と霧の
湖を繋ぐ湿地帯の空き地だった。見晴らしがよく、夜空を隠すものはなに
ものない。ここでなら思う存分に暴れられそうだ。

 時計塔の屋根を蹴り、空き地へと舞い降りる。騒々しいだけのギャラリ
ーには一瞥すらしない。戸惑い気味の悠久の友に挨拶を手向けた。

「―――こんばんは、マリィ。今夜もいい夜ね」

 こんな夜は、どうしても血が騒いでしまう。

 マリィを連れてきたパチェが、わたしたちの間に立った。
 彼女を図書館の外で見るのは久しぶりだ。
 その眠たげな表情から感情は読み取れないけど、外に出てきたというだ
けでどれだけはしゃいでいるかは分かる。

「……ルールは理解したわね」

 パチェがくぐもった声で念押しをする。

「基本は殴り合いだけど、アウトレンジからの攻撃もあり。交互に攻撃し
あって十分間死んでいたほうの負け。一度に許された攻撃は一回までで、
もし回避したらペナルティ。二回続けて攻撃を受けてもらうわ」

 どこまでの攻撃を「一回」と数えるのかいまいち良くわからないが、一
発しか殴ってはいけないとか、そういうことではないらしい。
 相手を無視してひたすら攻撃をしなければ、大概の連携も「一回」とし
て認められるようだ。……なんか大雑把すぎるような気もするけれど。

「それで、どっちが先攻をする? あみだくじで決めてもいいけど……」

 パチェの質問にわたしは「ああ」と頷く。その問題を忘れていたわ。
 順番に殴り合うのがルールなんだから、必ず先攻と後攻が生まれる。
 そしてこの遊びでは、先攻のほうが絶対的に有利だ。

「マリィが先攻でいいわ」

 わたしを腕を組むと、口の角を歪めてみせた。
 
 彼女はわたしと同じ吸血鬼だが、動くよりも考えるほうに特化したパチ
ェタイプだ。こういう純粋な力比べは苦手なはず。ならばここはゲームに
誘ったものの思いやりとして、気前よく先攻を譲ってやるべきだ。

 踵を返し、マリィに背を向けててくてくと歩く。二十メートルほど相対
の距離を開いたところで、わたしは改めて闘争相手と向かい合った。

「さあマリィ、どこからでも好きにかかってきて。わたしはここから一歩
も動かずにあなたの攻撃を受け止めるわ」

 だからあなたは、あなたの全力を見せなさい。

128 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 23:24:06


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―


 主審のノーレッジさんが離れていきます。
 どうやら先攻はアーミティッジさんのようですね。レミリアさんが譲って
あげたみたいです。これが王者の余裕というやつでしょうか。

  様子見かもしれないわよ。

 確かに、マリアベル・アーミティッジさんがいったいどんな攻撃をしてく
るのか、手元の資料からはさっぱり分かりません。
 レミリアさんのように肉体派なのか、それとも私のようにスピードで翻弄
するタイプなのか、それとも幽香さんのようにただ力押しで攻め落とすだけ
の移動砲台なのか。この一手ですべての疑問は明らかにされます。

  ……どうやら、いつかあの目障りな妖怪の山を
  咲き誇るヤイトバナで埋め尽くさなくちゃいけないようね。


 別名「天狗花」ですね。でも困ります。あの山は私たち天狗だけが住んで
いるわけじゃありませんから。―――それより見てください!
 主審が高々と手を掲げました。ノーレッジさんの手に呼応して、紅魔館か
ら色鮮やかな花火が打ち上げられます。季節外れもいいところですが、これ
は派手ですね。この花火を始まりの合図と見ていいでしょう。

 さあ、アーミティッジさんはどんな一手で攻めていくのか。
 第一巡先攻の攻撃が始まりますよー!

129 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/06(火) 23:25:45
さあマリアベルさん。
どうぞ好きにしちゃってください!

130 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/07(水) 00:56:57
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>

「ああ、まったく良い夜じゃな。どちらかというと茶会をしたい程度には」

 ああもう、先攻も後攻もあるものか。ほんとに頭が痛くなってきそうじゃ。
 わらわは実は一回刺されただけで死ぬと言うに……おぬし相手では、割とおーまじめに。
 
 されど今更退けるわけも無し。プライドを捨てるくらいならばそれこそ死んでしまう。
 ええい、せめて全力で向かわねばならぬか。全力で……
 
 全力?
 
 
 ……ほ、ほ、う。全力、全力か。
 そーいえばここは幻想郷であったな。失われたものもここにならあるかも知れぬ、そういう場所か。
 そうじゃの、ならば本当に、全力を見せてくれようか!
 
 
「よし、ではレミィ、好きなようにやらせて貰うぞ。
 ――――見せてくれよう! 我らが遺産、忘れ形見、されどまさしく絶対たる力を!」
 
 宣言し、しかし向かわずにごそごそと鞄を引っかき回す。
 そして取り出したるは、パーツの残骸が二つとヘッドセット、、、、、、、、、、、、、、、、
 ヘッドセットを装着し……その二つをパーツを放り投げ
 
「幻想より来たれ! 我が下僕! 『真銀の騎士』! 『灼光の剣帝』よ!」
 
 次の瞬間
 
 
 
 
 巨大な二体のゴーレムが
 どっかーん。

 
 
「ベリアル・タイプアビス! ルシファア・タイプマルドゥーク! おぬしの相手はこの二体じゃ!
 も う や け っ ぱ ち じ ゃ 覚 悟 せ よ こ の 大 た わ け め !」
 
 
 ベリアルの肩口の上あたり、指令用マウンタの上で、わらわは本音を吐いた。

131 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/07(水) 01:00:26
「いつの間にそこに乗っかったんだ」とか「そもそもそんなマウンタなんてあんのか」とか
「それ以前にマウンタという表現で良いのか」とか諸々は夜空の彼方へ放り投げた。

それと、タイトルはそちらのそれなどお構いなしにこれで行く。
別にそちらはそのままで構わんぞ。対照的、という奴じゃ。

132 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/07(水) 01:08:33
ttp://fu-kn.hp.infoseek.co.jp/wa/g_lucifer.html ルシファア
とりあえず遠距離担当……の予定

http://www.youtube.com/watch?v=SzNYE5b5abk ベリアル
高機動の近距離担当じゃな。

133 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/07(水) 19:27:45

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>


 ……。

  ……。

 あややややややややややや?!

  な、な、な―――

 なんだアレはー!?

  なんなのあれは?!

 みなさん、見てください! いや、この〈闘争〉に立ち会っているかたなら
ばいやでも視界に入ってしまうことでしょう。目を逸らしようがありません!
 信じられない。あり得えない。認められない。
 一瞬前までレミリアさんは自分よりちょっと身長が高いだけのアーミティッ
ジさんと相対していたはずなのに、いまレミリアさんと向き合っているのは彼
女を縦に1ダース並べてもまだ足りない巨大な甲冑人形だ! それも二体!
 これはでかいですよ。半端なでかさじゃありません。
 冗談ではなく山の如しです!

  奥の羽根はえてるほう……あれ、二十メートル超えてんじゃないの。

 あやややや。
 私も新聞記者の端くれ、この幻想郷でいままで色々なものを見てきたつもり
ですが、ここまで馬鹿げた巨大な質量を見るのは初めてです。
 鬼以外では!

  確かにあの鬼も、これくらい大きくなれるけど……。

 そういうものとは次元が違いますね。
 なんでしょう、この異質さは。この無機的な不気味さは。
 巨人といえば幻想郷ではダイダラボッチが有名ですが、とてもではないです
がこのお二人は妖怪に見えません。人間の意匠で作られたものです。

  なら、やはり人形……。

134 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/07(水) 19:28:14


 アーミティッジさんが肩に乗っているほうは巨大な戦車でしょうか。西洋甲
冑の足を車輪にして、両手にこれまた大きなランスを握らせています。
 もう一方は完全に人型で二本の足もあるため、直立状態だととにかくでかい
です。レミリアさんが豆粒にしか見えません。背中から光の翼らしきものが生
えていますけど……あれ、飛べるのかしら。あんな質量で?

  というか、これって反則……。

 た、確かに。
 二体の巨人を召喚したことで我を忘れてしまいましたが、よく考えなくても
これはアーミティッジさん本人が戦っていることにはなりません。
〈闘争〉の原則である「一対一」からも外れています。
 これは失格負けでしょうか……。

  ……どうやらセーフみたいね。

 おおっと! いま、ノーレッジさんがセーフのサインを出しました。巨人召
喚は反則ではないと主審が判断しました。試合続行です。
 これはとんでもないことになってきましたよ。

  魔女はあれを人形と判断したのね。
  つまり、あいつは人形遣い……。


 アリスさんの立場がありませんね。

  あの毒人形は、こういうのも解放したいのかしら。

 お友達にすれば、心強そうですけど……。

  敵として戦う吸血鬼は哀れね。

 まったくです。いまやレミリアさんの優勢は完全に砕け散りました。
 こうなると、後攻の事実は仇にしかなりません。あのでかいやつから一発も
らっただけでも、小さい躯はばらばらに砕けてしまうでしょう。
 早くも試合終了か。スカーレット・デビルの恐怖もここまでか。
 さあ、ついに先攻の攻撃が始まりますよ―――!

135 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/07(水) 19:28:43


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>


 わたしだけではない。メイドも天狗も向日葵妖怪も、この場にいるすべて
のものたちが唖然とし、馬鹿みたいに口を開いてそれ≠見上げた。
 ……なんて非常識。まさかマリィにこんな真似ができるとは思ってもみな
かった。巨人の人形だなんて、聞いたことすらない。
 
 パチェは知っていたのかしら。二人の付き合いは長いのだから、知ってい
てもおかしくない。知っていて当然だ。
 ―――そう、わたしだけ仲間はずれだったのね。こういう無茶で愉快なこ
とができるって、わたしにだけ教えてくれなかったのね。

「あれが欲しいって咲夜に言えば、用意してくれるかしら……」

 さすがに無理だろう。
 なら、マリィに頼んで次の機会に乗せてもらうしかない。あれを足代わり
にして神社に行ったら、巫女はどんな反応をすることか。
 考えれば考えるほどに、胸が高鳴る。―――だから、この先攻が終わり、
わたしの後攻で壊してしまうのが残念でしかたがない。
 わたしはあまり器用ではなく、力の調整も苦手だから、マリィが修理でき
る範疇で破壊できる自信なんてなかった。壊すときは徹底的だ。

 わたしは腕組みを崩さず、胸を反らしたまま呟いた。

「愉しくなってきたわねぇ……」

 ここから一歩も動かないという約束を、撤回するつもりはなかった。

136 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/07(水) 19:31:23
お待たせ様です。さあ、好きに攻撃しちゃってください!

137 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/07(水) 23:12:12
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>

 ――――つかみはOK、とこの場合は称すべきじゃろうか。
 とりあえず、そして当然の如く皆の目を釘付けにすることが出来た。
 そうじゃこれでよい。あくまで遊びなのじゃから。どーんと派手に行かねばわらわのフラストレーションが
この場に出てきた意味もないと言うものじゃ。

 ……うーむ、とはいえやはりちと強すぎるかのう。
 なにせ本来は凶悪な怪獣(そして「災厄」)を制圧するためのものじゃ、ゴーレムは。
 そんなものを、いくらあの常識外れなレミィ相手とはいえ振るって良いものか……
 
 
 あ、パチェがOK出しておる。
 ならばよいな、うむ。
 
 
 っ て そ ん な わ け あ る か ー っ !
 いや本当にOKなのかもしれんが、それでもやはり友人にこれを使うのは気が引け、ってああいかん
今頃冷静になってきてしまいよった。ええいどうするどうする――――――
 
 
 
 ああ、うー、もう! 本当にやけっぱちじゃ!
 元はおぬしがまいた種じゃ許せよレミィ! 何であればあとで血ぐらい分けてやるでな!
 
 
「……せ、先攻! 薙ぎ払えベリアル!」
 
 
 ――わらわの命令を忠実に聞いた機械人形ゴーレムは、無慈悲にも車輪を猛スピードで蹴立て、
そして我が友人の眼前を横切るように旋回しながら、その手に握られたランサーを振りかぶり――――

138 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/07(水) 23:13:18
うう、うう、うううう(苦悩中

139 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/08(木) 00:27:17


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>



 遅い。下手に巨大なせいで、余計にそう感じてしまう。
 木偶人形め。この程度の速度領域で吸血鬼と勝負しようというのか。

 失望を溜息に変えて吐き捨てつつ、腕組みをといた。
 マリィが乗る戦車は車輪のエッジを立てて急旋回したところだ。
 簡単に目で追えてしまう。
 あんなのはスピードなんかじゃない。マリィは幻想郷に来てまだ短いせい
か、スピードとはなにかを分かっていない。〈回避禁止〉のルールが無けれ
ば、本物の疾走≠ニいうものを教育してあげるところなのだけれど……。

 いま取りあえず、先攻の攻撃を捌くとしましょう。

 白銀の甲冑に刻まれた紫の紋様が、見る間に視界を埋めていく。相対距離
はまだ十メートル以上離れているが、十分に戦車の槍が届く間合いだ。
 巨力に任せて尖塔のような矛先が突き出される。夜を穿ち、夜そのもので
あるわたしの躯へと馳せる。……悪くない勢いだ。槍の重さだけではなく、
巨人の全体重をこの一撃に預けている。
 けどやはり、スピードが足りない。スピードに満足できない。

 ゆっくりと躯を前傾にする。
 獲物が大きすぎるせいで、刺し殺すというより圧殺しかねない槍の一撃を、
わたしはまず右手で受け止めた。そして抱きかかえるように左手を回す。
 微妙な力の調整で矛先を逸らした。刃が脇腹を掠り、肉と骨を何百グラム
か持っていく。問題ない。この程度なら、一秒後には再生している。

 槍の一撃は完全に抱き止めたが、それでお終いというわけにはいかない。
 質量が絶対的に違うから勢いまでは殺せないのだ。受け止めるというより
矛先に引っかかるようにして、わたしの躯は後方へと押し出されていった。
 槍を抱く手を離せば、たちまち轢き殺されるだろう。その程度の死に様な
ら数秒で再生できる自信があったが、あえて殺されてやるのも癪だ。

 まずはこいつの突撃を押さえ込もう。
 本当の力≠ニはなにか見せつけてやるのだ。
 
 わたしは両脚を墓標のように地面に突き立て、力の限り踏ん張った。
 逃げ場を失った突進の衝撃がわたしの両脚にかかる。
 ―――けど、折れない。
 勢いに負けて土が抉れ、なおも躯は背後へと押されるが、戦車のスピード
は確実に緩まっていく。……百メートルは踊ったかしら。やがて戦車は完全
に停止し、地面には疵痕のようにわたしの足跡≠ェ長々と残された。
 ダンスの最中にギャラリーの蟲の一団を吹っ飛ばしてしまったような気が
するけど、それはどうでもいいことだろう。

 これで先攻は終わった。

「さあ、マリィ。今度はあなたが覚悟を決める番よ」

 わたしは全身に充満させた霊気を解き放ち―――

140 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/08(木) 00:30:26

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」

>>


 なんて非常識な光景でしょうか。な、なんとレミリアさん! あの巨大な
戦車の突撃を、正面から受け止めてしまいました。質量差が千対一はありそ
うだというのに、完膚無きまでに戦車の勢いを殺してしまいました。
 吸血鬼の馬鹿力は限度を知らないのでしょうか。

  あんな細い足で、どうして……。

 レミリアさんはノーダメージ。まさかのノーダメージです。
 そしてここで攻撃は後攻に委ねられます。レミリアさんのターンは……お
おっと、これは〈霊撃〉だ。〈霊撃〉で戦車の巨躯を吹っ飛ばしました!
 同時にスペルカード宣言。あのカードは―――

  スピア・ザ・グングニル……!

 レミリアさん、初手から殺る気まんまんです!
 必殺とも言える神槍の暴炎がスペルカードから噴き荒れました。戦車の巨
槍もこの焔槍の前では打つ手無しでしょうか。
 相手が〈霊撃〉の衝撃から立ち直らないうちに、その灼熱の矛先を胸部へ
と狙い定めて―――投擲しました! ぶっ放しました!

  きれいな連携。あれなら審判も「一回の攻撃」と数えるわ。

 炎熱の一閃が戦車の胸甲へと一直線に伸びていきます。
 神槍の威力は山を砕き、海を割り、空を穿つほどです。いくら巨人の甲冑
とはいえ、この無慈悲な灼熱に晒されれば鉄屑に還るしか無いのでは!
 さあ、どうするマリアベル・アーミティッジ。その巨体は張りぼてなのか。
ただでかいだけなのか。―――答えはこの一閃が示します!

  ま、わたしのマスタースパークのほうが強いけど。
 

141 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/08(木) 00:30:54
霊撃>グングニルのコンボですー。

142 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/08(木) 00:34:56
あ、最後の幽香さんの発言はマスパじゃなくてデュアルスパークに脳内訂正しておいてください。

143 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/08(木) 01:22:37
http://charaneta.just-size.net/bbs/ikkokuRH/img/1209480870/143.jpg (65KB)
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>

 ……甘かった、と言わざるを得ない
 さながら井の中の蛙か。いやしかしよもや、よもやあの一撃を「完全に」防ぎきろうとは!
 本当に……甘かったわ!
 
 ――ベリアルはわらわを乗せたまま、高々と吹っ飛ばされた。
 わらわは問題ない、マウンタには重力場発生装置が搭載されておるゆえに振り落とされる心配もない。
 じゃがベリアル自身はそうもいかん。レミィがただ吹っ飛ばしただけで済ましてくれようか。
 いや済ますはずがない!
 
「姿勢制御! 攻撃に備え――――っ!!」
 
 視界の端に映るは灼熱の閃光! スピア・ザ・グングニルッ!!
 ああもうほんっとーに容赦がないのうおぬしは!
 じゃがしかし、それはあくまで炎の力! ならばきっと防ぎきってみせよう!
 この「焔の災厄」よりの忘れ形見が!
 
「防げ、ベリアルッ! ランサーを構えよッ!」
 
 やはり忠実に反応。
 姿勢制御をしつつ、ベリアルは槍を交差させ――――
 
 命中。
 防ぎきれず、
 槍は弾かれ、宙を舞い、
 ベリアルは落下、車輪が地を踏みしめ、
 わらわは空を見上げ、槍を捕捉し、
 
「――――ルシファアァァッ!!」
 
 もう一体のゴーレムが、光のバーニアを噴射!
 わらわの意志を汲み取り、空中へと出でて二槍を掴むッ!
 ようし行け、そのまま! その勢いでッ!
 
 
汝が尊厳と共にあれKEEP YOUR DIGNITY! ルシファアッ!!」

 本来の兵装、されど雨霰と「弾幕」と化したビームフェンサーと共に、レミィにその槍を突き入れよッ!!

144 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/08(木) 01:25:31
シリアスな振りしてちゃっかりネタが入っておるという。
というか何人が分かってくれるじゃろうかと。

……というか、自機が攻撃してるのではあまり宜しくないのう、この画像。
本番用のを用意しなおすか。

ともあれ、やってることは「弾幕+直接攻撃」ということで。


>>142
……むしろ向日葵妖怪めならばしれっと言いそうじゃと思ったわ。

145 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/08(木) 19:42:29
>>143、ちと改訂。


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>
 
 ――――ベリアルはわらわを乗せたまま、高々と吹っ飛ばされた。
 このゴーレムの、巨体が。


 「まさか」「やはり」……二つの異なる思いがない交ぜになる。
 そして……甘かった、と言わざるを得ない
 さながら井の中の蛙か。いやしかしよもや、よもやあの一撃を「完全に」防ぎきろうとは!
 そして攻守入れ替わってのこの一撃!
 かくもレミィはデタラメな存在であったというのか。あるいはこの程度、この幻想郷とやらでは当たり前なのか!
 いずれにせよ――――
 
「――――姿勢制御!」
 
 わらわは問題ない、マウンタには重力場発生装置が搭載されておるゆえに振り落とされる心配もない。
 じゃがベリアル自身はそうもいかん。レミィがただ吹っ飛ばしただけで済ましてくれようか。
 いや済ますはずがない!
 
 案の定、視界の端に映るは灼熱の閃光!
 スピア・ザ・グングニルかッ!! ああもうほんっとーに容赦がないのうおぬしは!
 じゃがしかし……そのおぬしのおかげで目が覚めたわ! 今までの無礼を詫びねばな、レミィよ!
 そうじゃいずれにせよ、これよりは本当に「全力で」相対せねば非礼になると言うものじゃ!
 
 放たれる神槍、されどそれはあくまで炎の力! ならばきっと防ぎきってみせよう!
 この「焔の災厄」よりの忘れ形見が!
 
「防げ、ベリアルッ! ランサーを構えよッ!」
 
 やはり忠実に反応。
 姿勢制御をしつつ、ベリアルは槍を交差させ――――
 
 命中。
 防ぎきれず、
 槍は弾かれ、宙を舞い、
 ベリアルは落下、車輪が地を踏みしめ、
 わらわは空を見上げ、槍を捕捉し、
 
「――――ルシファアァァッ!!」
 
 もう一体のゴーレムが、光のバーニアを噴射!
 わらわの意志を汲み取り、空中へと出でて二槍を掴むッ!
 ようし行け、そのまま! その勢いでッ!
 
 
汝が尊厳と共にあれKEEP YOUR DIGNITY! ルシファアッ!!」

 
 本来の兵装、されど雨霰と「弾幕」と化したビームフェンサーと共に、レミィにその槍を突き入れよッ!!
 それがこの場での礼儀であるがゆえにッ!

146 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/08(木) 22:16:00


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>


 涙の粒のような非実体弾が頭上に降り注ぐ。
 これがマリィの弾幕……。
 口元が自然と緩む。彼女の弾幕を浴びられるなんて。その事実だけでグ
ングニルを防がれた不愉快さは消えてなくなった。

 甲冑巨人が展開した弾幕は直線的で隙間が大きかった。弾速も速いとは
言えず、目くらまし程度の役割しか果たしていないが、一発一発がわたし
の身の丈ほどもあるのが厄介だった。
 当ててくるのではなく、逃げ道を遮るための弾幕だ。

 地上を滑るかのように、地面すれすれまで上半身を沈めて疾走する。
 かわした光弾をいちいち目で追うような真似はしない。そんな余裕があ
るのなら、十手も二十手も先の弾幕を読む。
 地上での弾幕回避は空とまったく違う。立体的な動きがとれず、回避の
方向も限定されている。なにより優雅じゃなかった。翼が風を切るあの感
覚が素敵なのに。地面を這いずるように逃げてばかりじゃつまらない。

 不自由さへの苛立ちが、気付かないうちに判断力を鈍らせていた。
 飛翔すればもっと美しくマリィの弾幕を制圧できるのに。もっと華麗な
わたしを見せてあげられるのに。―――その焦りが、わたしを夜空へと吸
い込ませる。立ち回りの基本を強引に忘却させる。

 光弾と地面の僅かな隙間をくぐり抜けた。同時に背中の翼を広げる。
 さあ飛ぼう。踵が浮き上がる。重力から解放される。背筋から歓喜が染
み渡る。――― 一瞬後にはすべて蹴散らされた。

 槍だ。戦車が構えていた二本のスピアー。わたしのグングニルが弾き飛
ばしたはずのそれを、いつの間にか甲冑巨人が構えていた。
 自身が放った弾幕をも巻き込んで、上空から左右同時に突き入れてくる。
 まるで獲物に食いつく狼のあぎとのようだ。先の戦車の一撃よりもさら
にスピードは劣っていたが、このタイミングでそれは関係ない。
 わたしの躯は半ば宙に浮いている。まったく無防備な姿勢。さっきのよ
うに受け止めても中空では踏ん張りがきかない。なにより、こんな大きな
槍二本をそれぞれ片手で押さえ込むなんて不可能だ。

 わたしは牙を見せて笑った。

 これは避けられない。
 ……いや、そもそも避けてはいけないルールじゃない。
 弾幕に魅せられて、つい失念してしまったわ。

147 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/08(木) 22:19:26


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」


>>


 ああ!? レミリアさん、今度は受け止めることもできず正面からルシフ
ァアのスピアーを食らってしまいました! 二振りの槍の矛先ががっちりと
交差し、レミリアさんの矮躯を容赦なく食い千切ります。
 あやや、これは痛そうです。

  ルシファア?

 ええ、あの人型の巨人の名前です。車輪つきのほうはベリアル≠チて名
前らしいですよ。ついさっきノーレッジさんから渡された資料に乗っていま
した。どちらも〈ゴーレム〉という対魔族兵器らしいです。物騒ですねー。

  ちゃんと弾幕も作れるなんて精巧ね。

 当たりが大きいから〈弾幕ごっこ〉で沈めるのは楽そうですけどね。

 ―――って、そんなことよりもレミリアさんですよ。
 見てください! 無慈悲な攻撃に躯を引き裂かれた紅魔館の当主が、墜落
するように地面へと叩きつけられました。そこへ容赦なく浴びせられる弾幕
の追撃! あやー、これは強烈ですよ。人間なら骨すら残りません。
 絶体絶命なんて言葉じゃまだ生ぬるい。1ターン目の余裕が嘘のようです。
やはり質量の差は覆せないのでしょうか。

  態度の大きさに反比例した呆気のない結末ね。

 レミリアさん、このままテンカウントを迎えてしまうでんしょうか……。

  あ……。

 ああー?!

  お、起き上がった……。

 平然と立ち上がりましたよ! 何気なく服の汚れをはたいています!
 そ、そんな無茶苦茶な。私の眼は、ボロ雑巾のようにめっためたにされる
レミリアさんの姿を確かに認めていたのに。いま大地に立つ吸血鬼には傷ひ
とつ見られません。まったくのノーダメージです!

  一瞬で再生したんだわ。傷を負ったことすら分からない速度で。

 さ、さすが吸血鬼ですね。タフさは蓬莱人並です。いや、実戦的という意
味ではレミリアさんのほうがより強力でしょう。この再生速度では、もはや
攻撃が攻撃として意味を為しません。どう攻めればいいんでしょうか。

  塵すら残さず消し飛ばすのがいちばんね。

 幽香さん、自分がやりたいと言いたげです。
 さあ、そして次はレミリアさんのターンです!
 どんな攻撃が飛び出すのか……って、またしても正面攻撃です。助走をつ
けて飛び上がりました。これは体当たりでしょうか。ルシファアに向かって
彗星の如き突撃を敢行します。単純です。単純ですが、ものすごい勢いだ!
 これは砲弾です。人間砲弾ならぬ吸血鬼砲弾です。あまりの勢いに、彼女
の周囲で紅の旋風が渦巻いています。

  夜王「ドラキュラクレイドル」だわ……。

 幽香さんから説明台詞が飛び出しましたー!
 なんだか強そうなネーミングです。
 さあ、どうするルシファア。避ければ反則。これも正面から受け止めるし
かありませんよ。先の神槍のように、これも防ぎきれるのでしょうか!

148 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/08(木) 22:19:51
ということで、シンプルに体当たりです。
ルシファアさん狙いでお願いしますー。

149 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/08(木) 23:08:35
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>

 ……呆れた、と言うほかない。
 我らノーブルレッドと違い、ヴァンパイアというものが短時間的な「再生」に長けるということは知っておった。
 しかし――ほとんど一瞬で「再生」するものか普通!?
 先ほどまでのわらわの躊躇が馬鹿みたいではないか!
 
 ええい、それはもはやどうでもよい!
 此度の攻撃は、言わば質量爆撃! 属性もへったくれもありはせん!
 そしていかなルシファアとて、あやつのデタラメさではあるいは――
 
 
「って、まっすぐに突撃? ということは……」
 
 
 ルシファアはわらわの意図を瞬時に、そして正しく読み取った。
 左手の槍を放り投げ、右の槍を構え……
 
 
 
 
 
 
 
 
  か  っ  き  ー  ん  。
 
 
 
 
 ところで迎撃は反則のうちに入るんじゃろうか。

150 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/08(木) 23:10:06
ところで人の世には「機動打者サンカンオー」なるタイトルもあってのう。
……古すぎて上手くキャプチャできんかった。是非とも画像貼り付けしたかったのじゃが。
うむ、実に残念じゃ。


とゆーわけでホームランされてくれ。

151 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/08(木) 23:17:21
いやいや、何もキャプチャせんでも探せば見つかるのであったな。
というわけで本番では「かっきーん」のすぐ下に

http://www.forest.impress.co.jp/article/2000/12/21/nenmatsu_sankanho.jpg 画像は本当にイメージじゃ)

を追記予定じゃ。

152 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/09(金) 19:10:14

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」


>>


  ……う、打ち返した?

 打ち返しました! 両手に構えたスピアーのスイングで、砲弾と化した
レミリアさんを見事に打ち返しました。なんという鮮やかなフォーム。文
句のつけどころがない見事な安打です。ルシファアさん、出塁しようとす
らしません。この安打が本塁打になると確信しているのでしょう。
 当然です。この手応えなら歩いて本塁まで帰れます。

  意味が分からない。なにを言っているの。

 そういう遊びがあるんですよ。
 足の遅い幽香さんでは愉しめないでしょうけど。

  吸血鬼を遠くまで飛ばすゲーム?
  だったら、走る必要がないまで吹っ飛ばせばいいじゃない。
  それこそ幻想郷の外まで。


 そうです。それを「本塁打」って呼ぶんです。まさしく、いまルシファ
アさんが打ちだした記録です。
 レミリアさんの人外の加速力が、逆に仇となってしまいましたね。スピ
ードを完全に利用されてしまいました。見てください。月まで飛んでいっ
てしまいそうな勢いです。気持ちいいくらいにかっ飛んでいます。

  誇張が酷すぎる。ほら、もう放物線を描き始めてるわ。
  1キロも飛んでないじゃない。……でも、あそこは。


 あやややや! あのまま墜ちると、レミリアさんは〈霧の湖〉のど真ん
中に真っ逆さまですよ。ウオーターハザードですよ、池ポチャですよ。
 なんとか姿勢を立て直してもらいたいところですが……レミリアさん、
動きません。気を失っているのでしょうか。無抵抗に墜ちていきます。

  流水の上だから動けないのね。

 吸血鬼にとって流れる水は大敵。もし水中に没してしまったら、たちど
ころに気化してしまいます。灰になってしまいます。
 脅威の再生能力を誇るレミリアさんでも、一度気化してしまったら、十
分で躯を作り直すのは不可能でしょう。

  だけど、もうこの軌道じゃ……。

 錐もみしながら落下していき―――墜ちたぁ! 墜ちました!
 いまレミリアさんの短躯が水面に衝突し、小さな水柱をあげました。
 これは勝負ありでしょうか!

153 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/09(金) 19:10:29

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>



 ―――ぱちり、と懐中時計の蓋が閉じられて。


 わたしは甲冑巨人の頭のてっぺんに立っていた。総身で風を浴びながら、
足下の〈闘争狂〉を睨む。……いまのは、危なかった。
 打ち返されたことが、ではない。流水に叩き落とされそうになったこと
がだ。もし気化してしまっていたら、数日はもとに戻れなかった。
 咲夜が気を利かせてくれなかったら、いったいどうなっていたか。

 これは反則? いいえ、そんなことないわ。だってわたしはちゃんと甲
冑巨人のスウィングを受け止めたもの。〈霧の湖〉はマリィの武器じゃな
いのだから、どう捌こうとそれはわたしの自由だ。
 だいたい、咲夜はわたしの所有物なんだから、彼女をどう使おうがそれ
はわたしの行動に含まれる。マリィが巨人を従えるように、わたしはメイ
ドをこき使うのだ。分かり切っている事実だから、わざわざパチェに判断
を委ねたりもしない。それ以前に、誰も咲夜が動いたなんて気付かない。

 だからこうして、湖に墜ちたと思った次の瞬間には甲冑巨人の頭頂に立
っているのも、宵闇を征服する吸血鬼の力なの。
 みんなはきっと、なにが起こったのかも分からない。

 さて、今度はわたしのターン。いい加減にそろそろ、決着をつけてもい
い頃合いだろう。わたしは懐から一枚のカードを抜き出し、宣言した。

「不夜城レッド―――」

 両腕を水平に広げれば、躯の芯から灼熱が爆縮する。わたしを中心に、
紅の閃光が天地左右に広がった。十字型の太陽が闇を払う。
 放射熱だけでも、汗をかく程度ではすまされない、溶けてバターになっ
てしまう熱量なのだ。十字燃焼の中心でわたしと踊る甲冑巨人は、暖炉に
くべた薪のように炭に還る。いや、装甲に火膨れを起こして蒸発する。
 ダイエットするには好都合のサウナだ。

154 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/09(金) 19:11:12
は、反則だー! 反則ですよレミリアさん。
しかし、レフリーが反則だと気付かなければ、問題はありません。
よって試合続行です。不夜城レッドです!

155 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/09(金) 21:09:34
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>

 ルシファアの上に物体反応。
 見てみれば、上にちょこん、のレミィ。
 
 ――――工エエェェ(´д`)ェェエエ工ってどーみても咲夜の仕業ではないか気づけおぬしら
とゆーかパチェわかれパチェむしろホームタウンディシジョンとゆーやつなのかそうなのか!?
 ……まあ、別に構わんが。どのみち攻撃を受けることに変わりは無し。
 
 そして次なる攻撃、「不夜城レッド」とやらに晒されるルシファア――ってちと待て!
 前言撤回じゃ! そもそもこれでは防御も何もないではないか!
 いきなり懐に飛び込まれる術があってはどうにもならん!
 
 ……一次装甲ほぼ全壊、二次装甲にもダメージが!? あのルシファアにか!?
 いかに防御面に於いてアースガルズに劣るとはいえ、仮にもゴーレムの最高傑作と謳われる
このルシファアを、こうまでもか!?
 レミィ、侮りがたし……さしものルシファアも、膝から崩れ落ちて
 
 
 というのは   ウソじゃ。
 いや無論被害は甚大、されどレミィよ、その場に陣取った己の不明を今こそ悔いよ!
 
 
 「膝から崩れ落ちた」のではない、ただ体勢を落としただけ。不夜城レッドの終了を見計らってな!
 よしよしルシファア良い仕事じゃ!
 そしてこちらの手には――先ほど放り投げられ、、、、、、、そして掴み取った、、、、、一本の槍が!
 そう、槍はこちらにもある! そして槍とは本来――――
 
「ベリアル! パイルバンカー!」
 
 突いて使うもの、、、、、、、
 ベリアル腕部の爆発機構により打ち出される、高速の突きを! 足場を失ったレミィに向けて!

156 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/09(金) 21:13:59
早々に画像ネタは尽きたゆえ、もうやらん。
……もう少し色々出来るのではと思っておったのじゃがのう。

そして、パイルバンカーじゃ。
まあ文字通りの攻撃と受けとってくれ。腕が爆発機構で打ち出されてその手には槍、というところか。

157 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/09(金) 23:00:19


ルシファア・タイプマルドゥークvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」


>>


 これはすごい! まさか、紅符「不夜城レッド」の直撃を受けて五体満
足でいられるなんて。対魔族仕様は伊達じゃないってことでしょうか。
 反撃も鮮やかです。レミリアさんの瞬間移動だかテレポーテーションだ
かを逆に利用して、足場を崩してしまいました。
 レミリアさん、無意味に高い場所に立ちたがったりするから、手痛い反
撃を食らってしまいましたねー。

  射出されたスピアーの直撃……いや、ぎりぎりで防いでいるわ。
  でも、足場のない空中だから勢いは殺せない。
  さっきと同じパターンね。スピアーを抱いたまま吹っ飛んでいくわ。


 そして向かう先は―――おおっと! またしても〈霧の湖〉です!
 一難去ってまた一難。どういう理屈でかぎりぎりで水死を免れたと思っ
たら、またしても流水直行コース。しかも今度はスピアーという錘つき。
 今度ばかりはさすがにご愁傷様ってところでしょうか。

  さっきからずっと吸血鬼の劣勢じゃない。
  終始押され気味。日光に当たらない連中なんて所詮この程度なのね。


 あー、いま着水しました。再び池ポチャです。馬鹿でかいスピアーのせ
いで、さっきよりも多めに水柱があがっています。
 ここで主審はカウントを開始―――い、いや、しません。主審はレミリ
アさんの〈死亡〉を認めていません。なぜならば―――

  またワープした?!

 あやや! 奇蹟再びです。ルシファアさんの頭のてっぺんに、またして
もちびっちゃい影が。レミリアさんが得意げに腕を組んで立っています。
 彼女には学習能力というものがないんでしょうか。というか、どうして
瞬間移動なんてできるんでしょうか。謎です。まったくの謎です。

  あの吸血鬼……いつの間にあんな能力を。

 凄い、としか言いようがありませんね。

  まったくね。これが夜族の力……。

 そしてここからはレミリアさんのターンです。ルシファアさんの頭頂か
ら二度目の攻撃。彼女は果たして劣勢を覆すことはできるのでしょうか。

  ルシファアvsレミリア。この決着、読めない……!

158 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/09(金) 23:00:55


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>

「……少し遊びが過ぎたようね」

 グングニル、ドラキュラクレイドルに続いて、不夜城レッドまでも防ぐ
なんて。マリィはほんとに面白いおもちゃを持ってきてくれた。
 ここまで愉しませてくれたのだから、そろそろ遊びはやめて、本物の吸
血鬼の力というのを見せつけてやるべきだろう。
 ……そう、これからが本番だ。

 甲冑巨人の兜から張り出た角を軽く蹴り、空へと浮き上がる。高度をゆ
るゆると落とし、巨人の胸甲の位置で停滞した。
 打点はここでいいだろう。あとは位置だ。マリィが登場する甲冑戦車は、
甲冑巨人に守られるように後方で待機している。
 実に好都合。

「さあ、見なさい―――」

 わたしの中の蝙蝠がざわめき始めた。見開いた瞳に深紅の輝きを灯す。
 どこからともなくあふれ出した紅霧が、わたしの躯を抱いていく。
 鼓膜を震わせるのは騒々しい闇の羽音。外からではなく、裡から響いて
くる。わたしの中で、何千何匹という蝙蝠が翼を羽ばたかせている。

 ……世界よ、血色に染まれ。
 そして枯れ果てろ。

 これこそ、わたしが五百年の時を賭けて編み出した―――

「必殺シュートよ!」

 マスター・オブ・レッドサン。

 総身にみなぎる魔力も膂力もすべて右足にこめて、わたしは甲冑巨人の
胸甲を蹴り抜いた。空気抵抗の摩擦で炎上した右足が、シュートを決めた
と同時に炭化する。
 
 どうかしら。これが〈不死者の王〉の足技よ。

 ……マリィ、これはただのキックではないわ。
 あなたは知らないでしょうけど、この幻想郷には〈サッカー〉という遊
びがあるの。〈ゴール〉に〈サッカーボール〉をぶち込めば、勝利が得ら
れるという気品に富んだ遊技が。
 そしてこの場合、甲冑巨人が〈ボール〉で〈ゴール〉はあなた。
 そう、マリィ。あなたが〈ゴール〉なのよ。だから当然、蹴り飛ばした
〈ボール〉はあなたへと一直線に飛んでいく。

 避けてはダメよ。しっかりと受け止めなさい。

159 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/09(金) 23:01:40
おおっと!
まさかレミリアさん、ルシファアさんを武器にしてシュートを決めちゃいました!
ちょっと確定攻撃入っちゃっていますが、見逃していただきたいものです。

160 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/10(土) 00:01:16
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>

 ちょ、まっ「べ、べべべベリアル受け止めよベリアル!」ま、間に合った……か!?
 
 ――ギリギリ、受け止めの体勢を取り同時に車輪をいっぱいにブレーキング。
 それでも勢いは殺しきれずにざざざざと押し戻され……紅魔館にぶつかって止まった。
 ……って「紅魔館にぶつかって」ということは。
 
 ちらり、背後を振り返る。
 …………あー、僅かながらめり込んでおるな、やはり。
 まあレミィのやったことじゃし、気にせずにおこう、うむ。
 
 それよりもレミィじゃ! ゴーレムを蹴り飛ばすとは非常識にも程があるぞ!
 なんなんじゃあやつはほんとに!
 まったく、先ほどからわらわは驚いたり呆れたりと忙しいではないか……だーれも気づいておらぬが。
 ……なにやらほんとーにヤケになってきたぞ。
 大体おぬしのデタラメっぷりもいい加減見過ぎた、ならば、ちょっとやそっと派手にやったとて文句あるまい?
 
 
「――――ベリアル、アクセル全開じゃフルスロットルじゃそのまま走れ」
 
 命ぜられるまま、走り出すベリアル。ルシファアを抱えたまま。
 続いて、
 
「ルシファア――――踏み台にして飛ぶがよい、、、、、、、、、、、
 
 その勢いに乗じて、ルシファアを飛びだたせる。
 これとバーニアを組み合わせればしばらくは速度を稼げるじゃろう。
 そして、
 
「ルシファア、熱変換。先ほどのダメージを返してやれ。全てエネルギーに変換し……

 ――――全弾発射じゃルシファア! ビームフェンサーツインレーザーリップルレーザーサイクロンレーザー
 ホーミングレーザーホーミングミサイルスプレッドボムグラビティキャノンええとあと何があったか
 何でもよいから超高速飛び回って急旋回あっちこっち多角攻撃撃ちまくるがよいわらわが認めるッ!」
 
 
 相手の攻撃は避けるな? 知ったことではないわ! どーせわが友レミィはちょっとやそっとでは死なんのじゃろう
ならば撃って撃って撃ちまくれていうかいい加減無駄撃ちもし飽きたのじゃ何よりもうそろそろ本気で怒ってもよかろう
わらわは! 違うか!

161 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/10(土) 00:03:22
そちらがサッカーというならこちらもスカイラブなんちゃらっぽくルシファアを発射
→ 発 狂 。
めっちゃくちゃ飛び回りながらありったけ撃ちまくっておると思えばよい。

とゆーか周囲に被害が出るやもしれんな
でも知らん。

162 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/10(土) 01:31:09

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」


>>


 ……あー、またしてもレミリアさんの攻撃は通用しなかったみたいです。

  戦車のほうの巨人を加速装置にして、反撃に出る。見事な返しね。

 レミリアさん、劣勢のままです。
 どっちもダメージらしいダメージを負っていない……という点については
互角と言えるのかもしれませんが、アーミティッジさんがまともな手段で防
御しているのに対して、レミリアさんはなにかといんちき臭いですからね。
 レミリアさんの攻撃のことごとくを捌かれている上、サイズから相対比が
桁違いなのですから、劣勢という印象をどうしても拭えません。
 そこにきてこのフルバースト攻撃。もう駄目なんじゃないでしょうか?

  駄目ね。駄目駄目ね。だって攻撃が通用してないもの。

 レミリアさんにも反則級の再生能力がありますから、テンカウントを迎え
るのは難しいかもしれませんが、もしこのままタイムリミットの明け方にな
ってしまったら、判定はどう考えてもアーミティッジさん有利です。
 
  ……ん? ちょっと見て。魔女がなにか―――

 あやややー?! どういうことでしょうか。ノーレッジさんがペナルティ
サインを出していますよ。レミリアさんに対して反則判定をくだしました。
 反則って、レミリアさんはちゃんとルシファアさんの攻撃をぼろぼろにな
りながら受け止めているように見えますが。なにがいけないのでしょうか。

  受け止めきっていないのが不服みたいね。

 つまり弾幕を全弾浴びろと?! これはかなり無茶な判定です!
 
  さっき弾幕避けてたのにセーフだったような……。

 ノーレッジさんの判定基準がいまいちよく分かりません! 理不尽にすら
感じられますが、主審の声は神の声。ペナルティによりレミリアさんは一回
休みとなり、もう一度ノーレッジさんのターンとなります。
 これは一気に不利になっちゃいますね。劣勢に劣勢が重なります。
 もはやレミリアさんに勝機はないのでしょうか!

163 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/10(土) 01:31:24



マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>


 爆風に煽られ、光線に射貫かれ、躯を再生させる端から破壊されてゆく。
 ほら、今度は右腕を吹き飛ばされた。一秒前に構築しなおしたばかりなのに。
 再生と破壊の速度が均衡し、わたしは生きながらに死ぬという不思議な体験
をしていた。治しても治しても終わりが見えない。……だけど、先に息切れを
起こすのはマリィのほうだろう。あの甲冑巨人の攻撃が出涸らしになるまで、
わたしはただじっと耐えていればいいだけなのだから。

 弾雨の中心にいながら、わたしの踊る相手は弾幕ではなく楽観だった。負け
る気も屈辱も覚えてはいなかった。―――そう、パチェの判定を聞くまでは。

「……反則、ですって」

 なんて、こと。

「パチェ、あなた……わたしを裏切るの」
 
 弾幕に晒されながら呆然と立ち尽くす。

 ……パチェがわたしじゃなくて、マリィに有利な判定をくだすなんて。わた
しよりもマリィを大事にするなんて。わたしを見捨てるなんて。
 そんなの駄目。パチェもマリィも咲夜もわたしのものなのに。わたしを蔑ろ
にして、マリィを勝手に勝者に仕立てて、二人だけで愉しむなんて許さない。
 ……面白くないわ。こんなの全然面白くない。だって、このままだとマリィ
に負けてしまう。わたしが勝てない遊びになんの価値があるというの。
 わたしが勝つから、遊びって愉しいんじゃない。

 いつの間にか崩れ落ちていた膝を、ゆっくりと立て直す。
 気付けば弾幕はやんでいた。わたしの躯も再生を終えようとしている。
 虚ろなまなざしで、甲冑巨人とその奥に立つ甲冑戦車を仰ぎ見た。

「マリィ……」

 パチェもマリィもそうやってわたしをいじめるのなら、こっちにも考えがあ
った。……わたしはすでにひとつの答えを得ている。億劫だけれど、こうなっ
てはしかたがない。―――勝たせてくれないのなら、自分の力で勝つまでだ。

 帰還を果たそう。夜へと帰るんだ。

164 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/10(土) 01:31:42
さあ、ついにクライマックスですよ。
なんか適当に攻撃しちゃってください!

165 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/10(土) 02:12:54
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>

 ……反則、とな。それでもう一度わらわのターンじゃと、ふむ、そうか。
 ルシファアは全弾撃ち尽くし、残り兵装はベリアルの火炎放射のみか。
 なればこれを、浴びせてやれば……
 
 ふと、レミィを見てみた。
 
 はっきり言ってダメージは無し。全て食らった上で再生済みか。
 なれど(よくわからんが)反則と見なされて、攻撃の手を与えられずただこちらを見つめるのみのレミィ。
 一方のこちらには、もう一度攻撃の権利が……
 
 権利。
 権利?
 権利じゃと!?
 
 な……何が権利じゃ!
 わけもわからずこの場に立たされて仮にも友人と思う相手と闘えとされて、それでも一応礼儀と思い、シリアス
気取ってみたりアホみたいなやりとりをしてみたり怒り心頭に来てみたり、なんであれそれなりに真面目に攻撃を
してみたと言うに、向こうは無傷でただの無駄撃ち! いや結局はあやつが「全力で遊びたい」だけじゃというの
じゃからして、やり合うだけならば別によい! しかしこれは模擬戦でもないただの歪なルール(と呼ぶにもおこが
ましい!)に基づいた、妙ちくりんなレクリエーションもどき! まして今など、向こうは攻撃したくともできない・こちらは
したくもない攻撃をせよと言われて! まったく、まったくこんなもの……

 茶番ではないか!
 道化ではないか!
 間抜けにも程がある!
 なんなのじゃ、なんなのじゃ本当に!
 この理不尽さを、わらわは一体どうすればよいと!?
 
 
 ……ああ、もう。攻撃、攻撃せよと?
 はいはいわかった、今してやるから少し待っておれ。
 
 
 ベリアルをレミィに近づけさせつつ、鞄からノートを取り出し殴り書き、そのページを破り取って
くしゃくしゃと丸める。
 はい準備おーけー。いま攻撃するでな。
 こーやって……
 
 
 丸めたそのページを、レミィに投げつけ終了。
 ――そのページには、こう書いた。
 
 
『わがままレミィへ→このバカチン。まぬけ。やるならもっと徹底的にやれ』

166 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/10(土) 02:13:35
今度こそ本当に、怒った。
……という。

どーとでもせよ。

167 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/10(土) 17:12:42
[伝言]
 間に合いませんでした……。また日曜日に。

168 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/12(月) 22:46:40
>>163の修正


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>


 爆風に煽られ、光線に射貫かれ、躯を再生させる端から破壊されてゆく。
 衝撃で地面に叩きつけられては跳ね返り、宙を泳いだところを撃ち落とさ
れた。過剰な弾幕が怒濤の破壊を延々と繰り返す。……ほら、今度は右腕を
吹き飛ばされた。一秒前に構築しなおしたばかりなのに。
 再生と破壊の速度が均衡し、わたしは生きながらに死ぬという奇妙な体験
をする。治しても治しても終わりが見えない。なんだか退屈だ。
 このまま再生を続けていれば、いつかマリィが息切れを起こす。甲冑巨人
の攻撃が出涸らしになるまで、わたしはじっと耐えていればいいだけだ。

 弾雨の中心にいながら、わたしの踊る相手は弾幕ではなく楽観だった。
 負けるつもりは微塵もなく、屈辱も覚えてはいなかった。……その自信は、
パチェから反則を通告されても揺るぎはしない。解説の天狗がどんなに私の
劣勢を煽り立てようと、それは同じだ。
 だって、この遊びはわたしという吸血鬼のためにあるのだから。〈吸血大
殲〉とは、わたしを愉しませるためのゲームなのだから。逆説的に、わたし
が不愉快を感じる展開になどなるはずがないのだ。

「反則、ね……。それはそれで、面白いわ」

 ふふ、と笑みをこぼした。崩れ落ちていた膝をゆっくりと立て直す。
 いつの間にか弾幕はやんでいた。わたしの躯も再生を終えようとしている。
 虚ろなまなざしで、甲冑巨人とその奥に立つ甲冑戦車を仰ぎ見た。

 さあ、マリィ。次はいったいどんな攻撃でわたしを愉しませてくれるのか
しら。まさかマスター・オブ・レッドサンまで防がれてしまうとは思わなか
ったけれど、そういう意外さがわたしは嫌いではない。
 マリィはわたしを驚かせてくれる。それはとても貴重なこと。こんなすば
らしい友人を持てて、わたしは幸せだ。

 ……だけど、そうね。
 攻撃されるよりも、攻撃するほうがわたしは好き。「面白い」ということ
にしてしまおうと思ったけれど、二回も立て続けにマリィにいじめられるの
は、実はあまり面白くないのかもしれない。 

「でもマリィが愉しんでいるのなら、それはそれで許せるわ……」

169 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/12(月) 22:46:58

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>

「咲夜」

 名を呼べば、メイドは一秒どころか一瞬すら待たせず背後に控える。
 マリィに投げつけられた紙くずを手渡すと、咲夜はうやうやしく受け取り、
丁寧に紙を開いていった。いつもながらの冷静な声音で、文面を読み取る。
 バカ、まぬけはこの際、聞かなかったことにしておこう。パチェの口癖を
借りるなら〈ノイズ〉というやつだ。それより気になるのが……

 ―――やるならもっと徹底的に。

 眼前に佇立する甲冑戦車を見上げる。遠く頭上で、マリィが挑発的な、怒
りすらこもっていそうな視線でわたしを見下ろしていた。

 ……あの子はなにが気に入らないのかしら。あれは、この〈闘争〉を愉し
んでいる表情ではない。彼女はなにかに不満を覚えている。
 愉しんでいたのはわたしだけ? いや、それすらもあやしい。わたしはマ
リィの不機嫌そうな顔を見たせいで、急速に不安を覚え始めた。
 マリィも愉しんでいるから、わたしも愉しかったはずなのに。その前提を
覆すともう、なにが愉快でなにが不愉快なのか分からなくなってくる。

 わたしは再びメイドの名を呼んだ。

「咲夜、ペンと紙を持ってきなさい。そしてわたしが言った通りのことを書
くのよ。……そうね、書き出しは季語を入れたいところね」

「この状況で文通をするつもりですか」

「だって投げ返してやらないと……」

 咲夜は珍しく気が進まないようだった。長々とした挨拶は却下され、簡潔
に言いたいことだけを書くべきだとまで諭されてしまった。
 一文のみが記されたメモ用紙を受け取ると、わたしはマリィがやったよう
にくしゃくしゃに丸めた。空気の摩擦で紙くずを炎上させないように気をつ
けながら、操縦席らしき場所に座る友人に放り投げる。

 咲夜に書いてもらった文面は―――


『ぶたのようなひめいをあげろ』

170 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/12(月) 22:47:13

>>

 この遊びを終わらせよう。それが、わたしの出した結論だった。
 彼女の不機嫌の理由がわたしには分からない。でも、マリィにあんな顔を
させてしまった以上、もうこの〈闘争〉は切り上げるべきだった。
 結果的に、それが彼女の望んだ「徹底的にやれ」というメッセージにも繋
がる。この遊びを終わらせるには、それがいちばん確実だ。

 ……いいわ、マリィ。こんなに愉しいのは久しぶり。だからあなたを特別
に、分類A以上の友人≠ニ認識することにしましょう。
 あなたのために、スカーレットの拘束衣(ドレス)を脱ぎ捨ててあげる。

「こんなに月も紅いから―――」
 
 拘束制御術式第三号(咲夜以外のぜんぶ)。
 拘束制御術式第二号(B型以外のぜんぶ)。
 拘束制御術式第一号(わたしをこわがらないやつぜんぶ)。
 ―――すべて開放。
 難易度ルナティック。スペルカード宣言による承認認識。〈闘争〉の完全
終了までの間、〈れみぃの好き嫌い〉限定の全解除を開始。
 続いて拘束制御術式第零号。パチェに施された最後の安全装置の強制解除
を確認。弾幕パターンを更新。「サーチ・アンド・ジェノサイド」に変更。
 見敵必殺! 見敵必殺!

「……あなたを本気で負かすわね」

 ―――魔符「全世界ナイトメア」発動。


 宣言と同時に、わたしの躯は輪郭を失いどろりと溶ける。レミリア・スカ
ーレットというかたちは夜から消え失せて、わたしが立っていた場所に、漆
黒に染め抜かれた汚泥の水たまりだけが残された。
 ……これが、わたしのスープだ。
 闇の泥水はぶくぶくと煮立ちながら、無尽蔵に湧き出し始める。水たまり
はたちまち池に変わり、池は湖へと変貌する。
 この闇は底なし沼。わたしのスープは浸されれば、溺れる暇もなく呑み込
まれる。「好き嫌い」という名の拘束制御をすべて開放してしまったから、
いまのわたしは吸血対象の選り好みなんてしないし、できない。
 わたしの泥に触れるものなら、貪欲に、はしたなく、草木も地面も夜空も
ことごとく呑み込んでしまう。

 ……ああ、憂鬱だわ。
 わたしは少食なのに。
 食べ過ぎたら、胃もたれを起こしてしまう。

171 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/12(月) 22:49:11


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」


>>

 じ、地獄です……。それ以外に形容のしようがありません。レミリアさんか
ら地獄が発生しました! 和気藹々としていた観戦ムードが一転して地獄に。
 地獄の釜からこぼれた煮え湯が、会場を恐怖で埋め尽くさんとしています!

 ああ……逃げ遅れたギャラリーが、泥に足をとられて呑み込まれていくわ。
 先ほどまで嬉しげにお弁当を広げていた猫の式神が、闇の津波であっという
間にさらわれてしまいました。キツネの涙まじりの絶叫が会場に虚しく響きま
す。誰も救いの手を差し伸べようとはしません。みな、我先にと逃げ争います。

 あやや。向こうでは決死の反撃も虚しく、氷精が泥に引きずり込まれてしま
いました。観戦者のパニックをなだめようと自分たちの身の安全を無視して演
奏を続けていた騒霊三姉妹の演奏も、ついに途絶えてしまいました。
 門に昇って逃げようとした紅魔館の門番も、門ごと呑み込まれました!

 ……阿鼻叫喚の地獄絵図とはまさにこのこと。レミリアさんはなんてことを
してくれたんでしょうか。このままではアーミティッジさんだけではなく、私
たち全員が彼女に取り込まれてしまいます。
 わ、わたしもこのままでは危ないです。早く空に逃げませんと―――

  ああ!

 ゆ、幽香さん!

  ……私としたことが、不覚をとったわ。

 ゆ、幽香さんの足に……ど、ど、泥が―――

  すごい勢いね。もう膝まで沈んでしまった。

 い、いま助けます。だから手を―――

  やめておきなさい。あなたも一緒に呑み込まれるだけよ。

 私に幽香さんを見捨てて逃げろって言うんですか! 

  大丈夫、あなたの足なら逃げ切れるわ。

 幽香さん……。

  ほら、もう胸まで。私のことは諦めなさい

 幽香さん!

  ねえ、お願いがあるの。
  私の代わりに、明日からあの向日葵畑に水をあげてくれないかしら……。


 幽香さんがあげればいいじゃないですか。あの花たちだって、私よりも幽香
さんに水撒きしてもらったほうが絶対に喜びますよ!
 だから諦めないでください。一緒に帰りましょう!

  頼んだからね……。

 駄目です! 幽香さん! 幽香さぁぁぁあああん!

  ……。

 そんな……。幽香さんが沈んでしまった。レミリアさんの泥に呑み込まれて
しまいました。う、嘘でしょう。だってあの人は幻想郷最強なのに!
 ど、どうしてこんなことになってしまったんでしょうか。私たちはただ〈闘
争〉を観賞しようと思っただけなのに、なぜこんなにも痛哭な悲劇を体験しな
ければいけないのか。私たちがいったいなにをしたと言うんですか!
 それとも、これが真の〈吸血大殲〉なんですか―――

  私たちはもしかして、とんでもない遊びを始めてしまったのでは……。

172 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/12(月) 22:49:41
あー、ごめんなさい。名前欄間違えちゃいました。
まあこんな感じです。お待たせしてごめんなさいー。

173 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/12(月) 23:52:35
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>

 阿鼻叫喚の地獄絵図――実況の天狗めの言葉通りの光景が、目の前に広がってゆく。
 レミィ、なるほど正に徹底的じゃが……しかしこれほどまでの隠し球を用意しておったとは。
 良くも悪くも、今日はおぬしに驚かされてばかりじゃ。
 
 ……ああ、我ながら冷静じゃのう。その「地獄絵図」のただ中にあって、特に恐怖も絶望もない。
 あるとすれば多少の清々しさ……じゃがまあ、これはあまり褒められん動機に由来するゆえ、努めて
押し殺す。いくら茶番に怒りを覚えておったとはいえ、な。
 されど恐怖もないのもまた事実。
 そして同時に、自信の理不尽さの正体のようなものにも、今更ながら気がついた。
 
 
 ――――何が地獄絵図か。
 「世界そのものへの破壊、災厄」に比べれば、この程度はどうということもない。
 問題ない。
 先ほどまでの茶番のほうが、よほど冒涜的とすら言えるのじゃから。
 
 そうじゃ、この茶番は正に「冒涜」じゃった。
 
 例えばスポーツならば、身体能力をただ手段にしたのみの、純粋なる「判定=ルール」の世界。
 わらわが見聞きした「弾幕ごっこ」とやらとて、それと大差はあるまい。
 他方、模擬戦であれば逆に勝ち負けではなく、シミュレートとしての「死んだか」「生き残ったか」を
やりとりするもの。決して「ルール」ではない。
 そこには明確な「違い」がある。
 しかし今回のこれは、その「違い」を、境界線を踏み越えた。生死の扱いを冒涜した。
 ……別に、命のやりとりとやらにロマンを感じる趣味もないがな。
 ただわらわとて……大事な者たちを失くしてきておるゆえに。
 
 
 さて、思いにふけるのはこれくらいにしよう。
 わらわもそろそろ、答えを出さねば。
 
 ――ベリアルを最高速で退避させつつ、レミィからの「手紙」を広げる。ぶたのようなひめい、のう。
 ふふん、生憎とそんなものを上げるつもりはないなレミィ。残念じゃったのう。
 しかし……茶番を終わらせる程度に相応しい真似ならば、してやれる。
 これぞ正に、最後の手段。

174 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/12(月) 23:52:57
>>続き

 おもむろに、命令用ヘッドセットをはずす。今度ばかりは「命令」出来るものではない。
 操作せねばならない。
 ゆえに鞄をまさぐり、入っておったはずのない、、、、、、、、、、、スイッチを取り出す。
 
 ほとんど同時に、がくり、とベリアルの動きが止まった。
 ……レミィの「闇」に、追いつかれたか!
 迷っておる暇は――と言いたいところじゃが、この場に於いてはいささかも迷っておらんな、わらわは!
 
 すぐさまベリアルから飛び降りる。
 飛ぶ、どころか滑空もままならぬこの身じゃが、ふんわりと着地する程度は出来る!
 そしてそのまま、紅魔館へ、図書館へと、いつぞやのように駆け出す!
 ふん、今度もまた追いつかれはせんぞレミィ!
 
 
 ……走りながら、スイッチを目の前に構える。いや、見つめる。
 
「…………すまんかったな、ベリアルにルシファア、こんな茶番に付き合わせた挙げ句、この結末とは。
 わらわも大概不出来な主であったが、許してくれ。
 そしてゆっくり……また幻想に戻って、休むが良いぞ」
 
 躊躇うことなく、スイッチを――「自爆スイッチ」を、ON。
 轟音が響くと同時に、手の中のスイッチもまた幻想に戻り……元のパーツの残骸へと、変じた。
 
 
 
 
 
 
 
 で、終わっては困るのじゃ。
 本当にこの茶番を終わらせるには、まず問い詰めねばならぬ奴がおるのでな。
 
 どこにと言えば、無論、図書館に。
  わ ざ と その門を盛大に音立てて開け、わらわは大声張り上げた。
 
 
「パチェ〜〜っ! どーせここにおるんじゃろう! おぬしの姿がいつの間にかおらんかったしな!
 さすがに今回ばかりはおいたが過ぎるぞ! どーするんじゃこの始末は!」

175 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/12(月) 23:53:47
小悪魔の出番の予感!
とか言ってみたりする。

というかこれも大概投げっぱじゃな……

176 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/13(火) 00:16:13
>>165を改訂。


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごいやけっぱちな勢いでマリアベルが闘争する[ノイズキャンセラ]―

>>

 ……反則、とな。それでもう一度わらわのターンじゃと、ふむ、そうか。
 ルシファアは全弾撃ち尽くし、残り兵装はベリアルの火炎放射のみか。
 なればこれを、浴びせてやれば良いのか……?
 
 ふと、レミィを見てみた。
 
 はっきり言ってダメージは無し。全て食らった上で再生済みか。
 なれど(よくわからんが)反則と見なされて、攻撃の手を与えられずただこちらを見つめるのみのレミィ。
 一方のこちらには、もう一度攻撃の権利が……
 
 ――すうっ、と、急速に頭の芯が冷える。
 されどこれは、冷静になったのではない、むしろ逆……本当の怒り、、、、、が、押し寄せてきた。
 
 
 ……権利。
 権利?
 権利じゃと!?
 
 な……何が権利じゃ!
 わけもわからずこの場に立たされて仮にも友人と思う相手と闘えとされて、それでも一応礼儀と思い、色々
と手を変え品を変え、されど死なぬ程度に探り探りで……なんであれそれなりに真面目に攻撃をしてみたと
言うに、向こうは無傷で実質ただの無駄撃ち! いや、それでも結局はあやつが「全力で遊びたい」だけじゃ
というのじゃからして、無駄でもやり合うこと自体はまだ別によい! しかしこれでは模擬戦でもないただの歪な
ルール(と呼ぶにもおこがましい!)に基づいた、妙ちくりんなレクリエーションもどき! まして今など、向こうは
攻撃したくともできない・こちらはしたくもない攻撃をせよと言われて! まったく、まったくこんなもの……

 茶番ではないか!
 道化ではないか!
 わらわは一体何のためにここにおる!
 ……なんなのじゃ、なんなのじゃ本当に!
 この理不尽さを、わらわは一体どうすればよいと!?
 
 
 ……ああ、もう。攻撃、攻撃せよと?
 はいはいわかった、そこまで言うならばしてやろうほどに。
 少し待っておれ。
 
 
 ベリアルをレミィに近づけさせつつ、鞄からノートを取り出し殴り書き、そのページを破り取って
くしゃくしゃと丸める。
 はい準備おーけー。いま攻撃するでな。
 こーやって……
 
 
 丸めたそのページを、レミィに投げつけ終了。
 ――そのページには、こう書いた。
 
 
『わがままレミィへ→このバカチン。まぬけ。やるならもっと徹底的にやれ』
 
 このような茶番、もううんざりじゃ。一緒に終わらせようではないかレミィ。

177 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/13(火) 02:17:34


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」

>>


 ―――そうやってマリアベルさんが図書館の門を開いたとき、わたしは
ようやく最後の一冊を本棚に戻し終えたばかりで、まさかご主人様がここ
に戻ってきていることにすら気付いていませんでした。
 鼻息も荒く踏み入ってきた彼女を見て、わたしは首を傾げます。
 みなさん、外で仲良く遊んでいたんじゃなかったのでしょうか。ご主人
様なんて主審をやっていたはず。どちらも途中で抜け出してくるのはまず
いんじゃないでしょうか。……あと、マリアベルさんはわたしが手ずから
修復したばかりの門を、そんなに乱暴に扱わないで欲しいですぅ。

 あ、みなさんお久しぶりです。
 わたしはこの大図書館で司書をやっているパチュリー様の使い魔です。
 今晩はご主人様の研究の後片付けに忙しくて、〈吸血大殲〉という遊び
にはまったく関われずにいたんですけど、どうもマリアベルさんの様子を
見る限り、留守番組で正解だったみたいですね……。

「ご、ご主人様ですか」
 
 マリアベルさんの勢いに押されて、わたしは慌ただしく答えます。

「ご主人様なら先ほど戻られて、本を読んでいますけど……」

 つまりいつも通りの場所でいつも通りに過ごしていて、わたしがわざわ
ざ説明することなんてなにひとつないということです。……マリアベルさ
んの口ぶりから察するに、ぎりぎりのところで逃げてきたみたいですけど。
 ご主人様は、そこらへんの要領はひとの三十倍ぐらい良いですから。

「―――マリィ、あなたがそこまで怒ってしまうなんて。どうやら今度ば
かりは、わたしの軽率さを詫びなくてはならないようね」

 背後から咳まじりの声が響いてきます。誰か、なんてことはわざわざ確
認するまでもなく、わたしの契約者のパチュリー・ノーレッジ様です。
 振り返ると、やはりというか、ご主人様が本に目を落としたまま何事か
を呟いていました。傍目からはひとりごとにしか見えませんが、あれでも
マリィさんに話しかけているつもりなのでしょう。

「あなたが感じたとおり、あの〈大殲ごっこ〉は完璧ではなかった……。
わたしは不完全なまま、あの恐るべき遊びを檻から解き放ってしまった」

 な、なにやら重々しい口調ですね。
 わたしは思わずごくりとつばを飲み下してしまいます。

「そ、それでどうするんですか……」

「どうって? 別にどうもしないけど」

 ……え、引いておいてそこで終わりですか。それはちょっとあんまりじ
ゃないでしょうか、ご主人様。

「あの〈闘争〉はマリィの勝ちよ。不完全な遊びだったとはいえ、ああい
うかたちで決着をつけることができた以上、勝者はマリィで決まりだわ」

「はぁ……」

 じゃあ、「マリアベルさんおめでとうございます!」で一件落着なんで
しょうか。……え、でも、外の被害とかそういうのは。

「それについては大丈夫。もうすぐ第二回戦≠ェ始まるから。より完璧
に近づいた〈吸血大殲〉が」

178 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/13(火) 02:17:53
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ものすごい勢いでレミリアお嬢様が闘争する[雑音消去]―

>>
 ―――さすがのわたしでも、これは食いきれるか分からないわ。

 二匹の巨人の大爆発のショックで、わたしは半ば強制的にひとのかたち
に戻らされていた。心なしか重いからだを引きずって、館に帰ろうとする。
 会場となっていた湖のほとりはわたしになぶられ、焦土の跡かはたまた
焼け野原と化していた。あれだけ騒がしかったギャラリーも、いまはひと
りも見えない。みんなどこへいってしまったのかしら。
 ……それはわたしのお腹の中。

 でも、こんなにたくさん消化するつもりはない。できない。いくら食事
量の制御を切ったからって、大食官に進んでなるつもりはなかった。

「とりあえず、これをどこかに処理しないと―――」

 と、そのとき。ぶすり、とわたしのお腹の内側か尖った穂先のようなも
のが突き出した。……これはなにかしら。まるで傘の石突のようだけど。
 いや、そうじゃない。わたしだって日傘を毎日のように使っているんだ
から、いまさら見間違えるはずがない。これは傘そのものだ。
 でも、どうして傘がわたしのお腹から生えてくるのかしら。……呑気に
考え込んでいるうちにも、ずぶずぶと傘は伸びてゆく。

 穿たれたお腹の孔から、傘と一緒に声までこぼれてきた。
〈吸血大殲〉新ルール(パチュリー・ノーレッジ責任編集)

 ―――〈なりきり〉という新概念について。

〈なりきり〉とは、与えられた役を忠実に演じきることである。
〈吸血大殲〉と〈なりきり〉には密接な関係がある。
〈吸血大殲〉には〈原典〉というテキストブック的なものが多数存在し、
そこに載っている役を選びなりきる≠アとで〈闘争狂〉となる資格を得
ることも可能だ。この場合、役者は非吸血鬼でも構わない。

 つまり、吸血鬼でなくても〈なりきり〉さえすれば、〈闘争〉に参加で
きるということである。これが意味することが即ち―――

 わたしのお腹から、花が―――


179 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/13(火) 02:18:40

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」


>>


 花が、咲いた―――。

 そう見えたのは私の気のせいでした。ただレミリアさんのお腹がぱんぱんに
膨らんだ挙げ句に破裂した様子が、開花に似ていただけです。
 あんな小さな躯のどこにあれだけのスペースがあったのかは分かりませんが、
レミリアさんの裂けたお腹からひとりふたりと幻想郷の住民が帰還を果たして
いきます。いやー、消化されないでほんとに良かったです。

 で、肝心のお腹をこじ開けた当人はというと、胃袋から帰ってきたことを喜
ぶわけでもなく、真っ赤に塗れた血傘を開いてレミリアさんと相対しました。
 ……あー、幽香さん。やっぱり生きていたんですか。しかしまた、なんとい
う派手な復活を。ノリノリ過ぎじゃないでしょうか。
 だいたい、吸血鬼でもないのにレミリアさんに手を出したらまずいですよ。
しかもなんだか殺る気まんまんですし。いけません。それじゃあただの喧嘩か
殺し合いになっちゃうじゃないですか。
 決められた制約の中で愉しく遊ぶのが妖怪たちの取り決めで、今回の場合は
「吸血鬼のみが参加許可を得る」という厳しいルールがある以上、私たちは泣
きながら逃げまどうしかないんです。

  それは旧ルール。

 あ、聞こえていたんですか。

  ついさっき魔女がルールを更新したわ。
  吸血鬼になりきれば=A吸血鬼でなくとも参加可能って。


 ……意味が分からないんですけど。

  つまり、いまの私は吸血鬼ってこと。

 えーと、どこがでしょうか。

  見て分からないのなら、それはあなたの勉強不足。

 いつも通りの幽香さんにしか見えないんですけど。
 ……あ、いや、箒? 幽香さん、傘を持ってないほうの手に箒を握っていま
す。あの黒白魔法使いのものらしいですね。いつの間に盗んだんでしょうか。
 ……で、それが吸血鬼とどう関係あるのでしょうか。

  箒。向日葵。魔法が使える。最強。ついでに毒に詳しい。

180 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/13(火) 02:19:50

>>

  箒。向日葵。魔法が使える。最強。ついでに毒に詳しい。

 そういえば幽香さんは魔法も使えるんですよね。でも、毒に詳しいって……
確かに、どこぞの毒人形と仲はよろしいみたいですけど。
 それでどうして吸血鬼になれるんですか。

  そういう役があるって教えてもらったのよ。

 それ、ほんとに吸血鬼なんですか……。

  あなたにぴったりの役もあるわよ。

 え、ほんとですか?

  超スピード。

 おお、まさに私って感じですね。

  頭のいかれた弟がいるらしい。狗の餌。

 ……謹んで遠慮させてもらいます。

 そう―――つまり、アーミティッジさんに代わって今度は幽香さんがレミリ
アさんの〈闘争〉相手を務めようってわけですね。
 気のせいか、幽香さんの笑みがいつになく眩しいです。参加できるのがそう
とう嬉しいみたいですね。レミリアさんも受けて立つご様子。お腹はとっくに
再生しています。どうしようもなく不死身ですね、もう。

 つまり、ここからは第二回戦の始まりということでしょうか!

 おおっと、蜘蛛の子を散らすように逃げまどっていたギャラリーも、ぽつり
ぽつりと戻ってきます。どうやら、新しい〈闘争〉に興味津々のご様子。
 ここまで期待されるとこの射命丸文も引き下がるわけにはまいりません。
 コメンテーターを放棄してしまわれた幽香さんに代わり、新たなゲストとし
てはだしの氷精<`ルノさんを迎えて再スタートしたいと思います。

 いやー、チルノさん。それにしても大変でしたねぇ。大蝦蟇に続き、今度は
吸血鬼にまで食べられてしまうなんて。もしかしなくても、このまま食われキ
ャラが定着してしまいそうでとってもわくわくします。
 え? 「次はあたいにやらせろ」ですって?
 あははは、そう言うと思いましたよ。

 すいません。幽香さーん、お忙しいところすいません。ちょっとお尋ねした
いんですが、チルノさんに似合いそうな〈なりきり〉ってなんかありますか?

  勝利至上。氷炎魔団の軍団長。
  氷精だけだと半分だから、竹林の不死人も一緒に。
  二人一緒で一役。


 ……だからそれ、ほんとに吸血鬼なんですか。

181 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/13(火) 02:20:03
わ、我ながらかなり強引だー!

182 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/13(火) 02:35:47
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ていうかもうどうでもいい―

>>

「…………………………」

 ああ、あたまがいたくなってきた。
 おもわずひらがなでかんがえたくなるほどに、ずつうがいたい。
 けっきょくそともなにやらさわがしくなってきたし。
 まあどーせこのよーなことになるとわかって……
 
 いやいや気をしっかり持てわらわ。
 ここで意識を手放してしまってはいかん、最後の詰めなのじゃから。
 
「……パチェ、ちとそれ見せれ」
 
 なんか自分でも驚くほど口がぞんざいになっておるが、構わずその大殲ごっことやらのルールブックを
……ルールブックか、これ? まあよい、とにかく紐解いた。

1 『不死者王』ブラムス ◆vOzBAMUTHU  sage Date:2006/11/30(木) 22:33:320
 ここは血を啜る夜の眷属―――すなわち我々と、不浄なる魂の浄化を望む狩人のための戦場だ。
 この地で行われる事は一つ、互いの命を奪い合う戦い、すなわち「闘争」と呼ばれる行為。

 不死者王の名において命ずる、平穏を願うものは去れ。
 ここに参加するものは全て、私や我らが存在によって殺される覚
以下省略




「……………………ええと、あのな、パチェ?」

 わらわは、めっきり疲れ切った口調で
 
「これ……読み物、フィクションと言わんか?」

 真実(たぶん)を、告げた。

183 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/13(火) 02:41:42
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―ていうかもうどうでもいい―

>>

「…………………………」

 ああ、あたまがいたくなってきた。
 おもわずひらがなでかんがえたくなるほどに、ずつうがいたい。
 けっきょくそともなにやらさわがしくなってきたし。
 まあどーせこのよーなことになるとわかって……
 
 いやいや気をしっかり持てわらわ。
 ここで意識を手放してしまってはいかん、最後の詰めなのじゃから。
 
「……パチェ、ちとそれ見せれ」
 
 なんか自分でも驚くほど口がぞんざいになっておるが、構わずその大殲ごっことやらのルールブックを
……ルールブックか、これ? まあよい、とにかく紐解いた。



2 名前:DIO投稿日:01/11/20 20:05
ヴァンパイア! ダンピール! 埋葬機関!
真祖の姫! 吸血殲鬼! WHO!
夜刀の神! 吸血姫! 最後の大隊!

最ッ高にハイってやつだッ!
今だ貴様等のような恐るべき馬鹿どもが存在していただなんてなァ!

ルールは以下だ。
・「カテゴリー」は「質問雑談スレ」になるだろう。もちろんもの凄い勢いで闘争するのも素敵だろうなァ。
・名無しの質問も歓迎する……友達になろうじゃぁないか……。
・「吸血鬼」に関わったもの「全て」に登場する「権利」があるッ!



以下省略




「……………………ええと、あのな、パチェ?」

 わらわは、めっきり疲れ切った口調で
 
「これ……読み物、フィクションと言わんか?」

 真実(たぶん)を、告げた。

184 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/13(火) 19:18:33



マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」

>>


 静寂がわたしたちの大図書館を支配しました。
 あ、いえ。図書館が静かなのは当たり前ですし、静かであるべきなのです
が、そういった静けさとはまったく異質の、空気が凍りつくかのような沈黙
がこの場を満たしたんです。―――マリアベルさんのたった一言で。

 まずわたしは、精神的にも肉体的にも疲労の限界を迎えていそうなノーブ
ルレッドの彼女を見て、それからご主人様に視線を移しました。
 偉大なる図書館の魔女は、友人の言葉に反応を示しません。無視ともとれ
る態度で黙りこくっています。ご主人様のコミュニケーション能力なんて普
段からこの程度ですが、彼女の無言の中に、気まずさや気恥ずかしさといっ
た類の感情がちらちらと見え隠れします。
 
「えーと……」

 沈黙に耐えきれず、わたしは声を漏らしてしまいました。ですが言葉が続
きません。どうしてお二人とも押し黙ってしまうのでしょうか。
 マリアベルさんだって確信をこめて言ったわけじゃないんですから、ご主
人様が「そんなことないわ」と一蹴すればそれで済むじゃないですか。
 世の中には「無言の肯定」っていう言葉があるんですから、否定せずに黙
っているなんていくらご主人様でもこの状況でだけは勘弁して欲しいです。

 ―――ああ、なにか言ってくださいよぅ、ご主人様。こういう緊張に縛ら
れた沈黙が、わたしはいちばん苦手なんですから。「それはないわね」の一
言でさっさと片づけちゃいましょうよぅ。

 けど、ご主人様は最後までマリアベルさんに返事はしませんでした。
 ルールブック(なんですよね?!)を返してもらうと、それをいつものよ
うに手元には置かず、わたしへとずいと差し出してきます。

「え、わたしに? 今度はわたしに読めっていうんですか? そ、そんなの
無理ですー。難しくてとても読めませんよぅ」

「そうじゃないわ」

 ご主人様の口調は醒めきっています。

「それ、本棚に戻しておいて」

「……え?」

 戻すって。
 これはご主人様が研究中の文献じゃないですか。
 戻しちゃったら研究を続けられませんよ。

 わたしの戸惑いなんてどこ吹く風。ご主人様は呆気にとられるわたしを尻
目に、音もなく席を立ちました。そして、冷たい視線でわたしに告げます。
 もう休むからあとはよろしく―――と。

「え?」

 休むって、休むということでしょうか。

「……しばらく寝だめするから目覚ましはいらないわ。その間に片付けを終
わらせておきなさい。わたしが起きたらロケット開発の続きをするわ」

「え?」

 わたしやマリアベルさんの返事も待たず、ご主人様は寝室へと引っこんで
しまいました。わたしはその背中を呆然と見送ります。

 外でいったいなにが起こっているのか。マリアベルさんの指摘の真相は正
しかったのか。お嬢様たちはどうなっているのか。なにもかもが分からない
まま幕を閉じようとしていますが、今回は最後の最後まで部外者だったわた
しにも、ひとつだけ分かることがあります。

 それは、

 ―――いまこの瞬間、パチュリー・ノーレッジ様の中での〈吸血大殲〉は
終わりを迎えたということです。

185 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/13(火) 19:19:02
こんな感じですねー。
今回の闘争でも、やっぱり小悪魔さんは便利な子のようです。

186 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/13(火) 19:27:33
しまった本スレレス一個飛ばすとこじゃった――――
ま、まあよいか。結果おーらいじゃし。

187 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/13(火) 20:24:26
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
 ―だったような気がしたが気のせいじゃった―

>>

 ………………呆然と立ち尽くすは小悪魔のみにあらず。
 いやまー、パチェの素っ気なさはよく知っておるし、今更あやつに怒りも何もないが。
 (というより暖簾に腕押しじゃろう……)
 
 わらわが立ち尽くす理由はそれではなく、ただただ疲労感のみによるもの。
 もっとも「当然じゃろう」と声を大にして主張したくもあるが、無論そのような気力すらもなく。。
 
「……何のために真面目に戦っておったのじゃろう、わらわは…………」
 
 パチェの妙な発見から発展して、
 気がつけば大盛り上がり大会で、
 わらわもどうにか応戦して
 されどどうにも乗り切れずに←ここ重要、今から思えば
 久方ぶりに心から怒って
 レミィ焚きつけて
 ゴーレム自爆させて
 パチェ問い詰めて
 
 その答えが、ただフィクションのものに踊らされておっただけ……?
 実在するものでなければ、ああ、歪さもさもありなん、か。
 しかし……
 
「疲れた。ほんっとーに疲れた……」
 
 外は相も変わらず騒がしい。
 とゆーより、なんじゃ、楽しそうな気さえしてきたぞおぬしら。
 なんだかんだで楽しい遊びを見つけてしまったか?
 よかったのうレミィ、うんうんよかったよかった。
 
 
「小悪魔、わらわも帰って寝る……レミィによろしく言っておいてくれ」


 とぼとぼ。足取り重い。
 扉もせいぜい身体が通る程度にしか開ける気せん。
 そして棺に辿り着いたが最後、ほとんど倒れ込んだ。
 
 
「アカ〜アオ〜、蓋、してくr………………Zzz……………………」

188 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/13(火) 22:22:25


マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」

>>

 ……どうしましょう。ご主人様に続いて、今度はマリアベルさんまで図
書館を後にしてしまいました。肩を落とし、小さなからだを引きずるよう
にして自分の部屋へと帰っていきます。つまり、ノーブルレッド城へと。
 なにか声をかけるべきだったんでしょうが、その後ろ姿があまりにも痛
々しかったため、わたしは黙って見送ることしかできませんでした。
 
 マリアベルさん、お気持ちは分かりますよ……。
 マリアベルさんはわがままなように見えてとても気配りがじょうずな方
ですが、幻想郷というのは真面目なひとほど疲れる世界なんです。
 わたしもご主人様に召喚されたときから今日まで、何度荒波に揉まされ
たことか……。ああ、思い返すだけで疲れてきます。

 そして気付けば、わたしは図書館で再びひとりぼっちになっていました。

 いつの間にかご主人様が戻ってきていて、それから嵐のようにマリアベ
ルさんが飛び込んできて、深刻そうで気の抜ける会話を交わした後、お二
人とも自室へと去っていってしまいました。

「えーと……」

 反応に困る。とても反応に困ります。
 まったくもってわけが分かりません。
 大図書館を揺るがすほどの騒ぎが外では始まっているみたいですが、ご
主人様は主審でマリアベルさんは参加者のはずです。
 放っておいていいんですか。ていうか、いったいなにが行われているん
ですか。この震動はちょっと冗談で済みそうにありませんよ。爆音とか轟
音も凄まじいですし、やけにハイテンションな哄笑まで響いてきますし。
 なんか怖いです! とにかく怖いです!

「ひとりぼっちにしないでくださいぃ」

 わたしはご主人様から渡されたルールブック(のようななにか)を本棚
に戻すと、逃げるように図書館の奥へと羽ばたいていきました。

 寝るってずるいなぁ……。
 わたしは今日も図書館から離れられません。

189 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/13(火) 22:22:52
あとは私たちのエピローグだけですね。

190 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/15(木) 01:32:19
マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
レス番纏め

Prologue >>32>>33>>34>>35>>36>>37

Opening Event .>>38>>39>>40>>41>>42>>43
          >>44>>45>>46>>47

      Mariabell              Remilia
1st turn >>48>>49>>50>>51>>52     >>53>>54
2nd turn .>>55                 .>>56>>57
3rd turn >>58>>59              .>>60
4th turn >>61>>62              .>>63
5th turn >>64>>65              .>>66(反則ペナルティ)

Breakthrough >>67>>68>>69>>70>>71>>72
         .>>73>>74>>75>>76


 オ チ 。  >>77>>78>>79>>80


Epilog (以下続く)



うむ、また無闇に凝ってしまったんじゃ、すまん。

191 名前:[-{}@{}@{}-] マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. :2008/05/15(木) 02:19:46
ああそういえば、

「この闘争はメタフィクションです。
 実在の吸血鬼、化物、妖怪とはあんまり関係ありません」

とかまとめに入れたくなったが別にどっちでも良い。

192 名前:―伝統の幻想ブン屋― 射命丸文 ◆iGKARASUUM :2008/05/15(木) 03:28:39

マリアベル・アーミティッジvsレミリア・スカーレット
「吸血大殲ごっこ 〜Blood Parade」
レス番纏め

Prologue >>32>>33>>34>>35>>36>>37

Opening Event .>>38>>39>>40>>41>>42>>43
          >>44>>45>>46>>47

      Mariabell              Remilia
1st turn >>48>>49>>50>>51>>52     >>53>>54
2nd turn .>>55                 .>>56>>57
3rd turn >>58>>59              .>>60
4th turn >>61>>62              .>>63
5th turn >>64>>65              .>>66(反則ペナルティ)

Breakthrough >>67>>68>>69>>70>>71>>72
         .>>73>>74>>75>>76


 オ チ 。  >>77>>78>>79>>80


レミリア・スカーレットvsひまわり少女マジカルアンバー
>>81>>82>>83>>84>>85>>86>>87>>88>>89>>90

Epilog >>91


注意!
「この闘争はメタフィクションです。
 実在の吸血鬼、化物、妖怪とはあんまり関係ありません」

193 名前:―永遠に紅い幼き月― レミリア・スカーレット ◆DEVILn5XUg :2008/05/15(木) 03:35:07

……終わった、わね。
今度こそ完全に終わったわ。
二回連戦で、二十日間ほどノンストップで走ったかしら。
あっという間だったわ。

マリィ、あなたにはとても感謝しているの。
こうして縁が作れたことは、とても嬉しい。
またどこかで―――
が、闘争の終わりの決まり文句らしいけれど、
あなたは紅魔館の住人で、わたしはノーブルレッド城の住人なのだから、
いつでも会いたいときに会えるわ。
だから、この会議室でだけの「さようなら」を言わせてもらうわね。

それじゃあ、今度はあなたと〈闘争〉ができる日を祈って……

194 名前:小悪魔 ◆iQSaIAKUMA :2008/05/15(木) 03:36:38
マリアベルさん、お疲れさまでした!
なんだかお嬢様のエピローグがすごいことになっちゃってすいません。
まあいつものことだと思って諦めてください!

ああ、あとこのスレは明日(というか今日)の夜に、
わたしが削除依頼を出しておきます。
ほんとお疲れさまでした!


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