■ Big Sister vs Big Blue 『倫敦崩壊』

1 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/01(土) 23:09:36
■ルール

第1のルール この闘争のことは誰にも言ってはいけない
第2のルール この闘争のことは誰にも言ってはいけない
第3のルール 力尽きたらファイト終了
第4のルール 闘争は1対1
第5のルール 闘争は1回に1闘争
第6のルール シャツと靴は脱ぐ。ただし靴下は履く
第7のルール 闘争時間は無制限。ただし、レスを付けるのには制限時間あり
第8のルール このスレに入ったものは必ず一回ファックファイトしろ


2 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/01(土) 23:10:50

■追加として

「吸血大殲本スレッド」において、相手の最後の書き込みがあってから168時間が経過してもレスを付けなかった場合、その闘争は棄権したとみなし強制的に終了とする。ただし正当な理由があった場合はこのルールの適用外とする。その場合○○日までレスを返せないと前もって書き込んでおくことが望ましい。
 
今闘争は本スレに直接貼るものとする。この会議室に張る必要は無い。ただし相手の意見を聞きたい場合は貼ってもかまわない。

解からないことがあったら恥ずかしがらずに相手に聞こう。


3 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/01(土) 23:13:05
関連リンク

■吸血大殲本スレッド
吸血大殲第60章 降りしきる緋色の霧雨
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1209915267/
(闘争はここで行います)


■吸血大殲/Blood Lust 闘争募集スレ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1197733012
(依頼の書き込みを順次行いますので、闘争希望者は定期的に目を通してください)


■人形たちの楽屋裏
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1249135634/
(地下スレ。息抜きがてらにどうぞ。なお何かあった場合、予備の会議スレとします)

4 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/02(日) 00:11:18
 
 Ya――ha。
 
 ご機嫌は如何だクソッタレども?
 要するに今回の俺の仕事は塵処理だって事だろ?
 OK?
 
 導入は明日中には貼り付ける。とは言えPC前に齧り付くのは良くても21時って所だ。
 そこからの始動になれば――俺の興さえ乗らなければ――22時には上げておくさ。
 
 どう転ぶかなんざしらねえが、そもそもこの「依頼に乗り気ではない」スタンスで生かせて貰うのは明言して
おく。
 要望その他があれば何か引き受けておくぜ。手間賃代わりだ。
 

5 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/02(日) 20:48:51
>4
 やあ、よく来てくれたね。本スレがあの閑散とした状態だから、募集しても
反応があるか心配だったんだけどね。

 君が「依頼に乗り気ではない」スタンスということには了解したよ。まあ、
君ならそうだろうね。

 それで依頼の詳細なんだけど、君の仕事は自動人形「Lady L」を回収して、
L.B.社(ビッグブルーの子会社)へと引き渡すこと。手段は問わない。ただし
君が捕まってもL.B.社はなにも関知しないということになっている。

 カオルコとアンジェラはただのモブなのですぐに退場予定。君の強さを引き
立てるかませ犬になってもらう。1〜2ターンで消える予定だよ。アリョーシャ
は、君がここについた時点で行動不能になっている。君がやったことにしても、
ビッグブルーがサービスでやったことにしてもいい。後者の場合、まあ、
「そういう状態」になっているだろうね。

 それでメインデッシュのプリマヴェラとぼく(イギー)なんだけど、この闘争
でぼくはとくに活躍する予定は無い。この時点でのぼくはただの人間だからね。
プリマヴェラは結構強い。まあ、君の方が上だろうけどね。

 質問があったらどうぞ。11時ごろまでは30分に一度は確認するから。

6 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/02(日) 20:49:38

それとこの世界の基礎知識。

1・吸血鬼によって支配された帝国。吸血鬼には人形と貴族の2種類がいる。

2・スチームパンクとサイバーパンクの混ざり合ったような世界。

3・クロックワークス社とビッグブルー(IBM)の2大企業が存在する。

4・クロックワークス社が吸血鬼(人形)側、ビッグブルーが人間側

5・人間も暮らしている。市長や官僚などは人間も多い。

6・人形は頭をつぶされても死なない。子宮を破壊されたり、『魔法の粉』と
呼ばれるマイクロマシンを注入されると死ぬ。

その他聞きたいことがあれば何なりと。

7 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/02(日) 22:04:39
 
 一つは貼ったが、現在進行形でもう一つ貼る。
 流石に女をいきなりぶん殴るって趣味もないんでね。
 
 邂逅の次に黙ってもらえると助かるんだが――女子供は殺さない主義……ま、核だけ残ってりゃ
死なないなら、バラバラにしとけばいいか。
 

8 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/02(日) 22:23:40

 上がったぜ?
 適当に頼む。
 
 後はまあ、何時も通りの俺が居るだけさ。
 その場の直感だけですり抜けて行く綱渡り。そのスリルが愉しいのさ。
 

9 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/02(日) 23:47:41

 はじめのレスぐらいはすぐ返そうと思ったのだけれど、気がつけば確認して
から1時間。ちょっと遅いわね。やはりブランクがこたえているのかしら?
まあいいわ。じきに慣れるでしょう。

 わたしは今日はもう寝るからそちらのレスはゆっくりどうぞ。

 そうそう、そちらのレスで2人を無力化してしまって結構よ。次のこちらの
ターンでわたしとイギーが到着するわ。本番はそこからね。

 ちなみにダッチワイフは打ち所が悪かったらしく昏倒中。そのままかついで
いくなり、たたき起こしてついてこさせるなりお好きにどうぞ。

10 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/02(日) 23:49:28
 
 オーケイ、それなら此方で好き勝手にやらせてもらう。
 好き勝手にやる以上筆がノッて大変な事に――とは行かないだろうが、眠るまでには返しておくさ。
 

11 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/04(火) 21:14:28
 
 っと、連絡が遅れたが上がったぜ?
 二人は壊して、肩に担いで拉致ったとでも思ってくれ。
 
 ま、暫くは適当に寛いでるさ。
 

12 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/04(火) 22:12:08

 遅れてごめんなさい。夕べのうちに気がついていたのだけれど、体力的に返
せる余裕が無かったの。

 とりあえず舞台に上がったわ。まずはご挨拶から。地味なポンチョは脱ぎ捨
てて、真っ赤なカクテルドレス姿になっているわ。まだ攻撃は仕掛けてないわよ。


13 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/04(火) 22:20:58
 
 なに、問題なんてどこにもないさ。
 それじゃあ今から取り掛かる三十分以内を目標に。
 

14 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/04(火) 22:49:34
 
 上げたぜ。
 軽口には軽口を。
 
 臨戦体勢だから、好き勝手動かしたって良い。
 それこそいきなり弾幕張りやがったとか、油断しすぎだから腕の一本でも持って行こうが、好きに料理してくれよ。
 ま――いきなり死んでましたじゃなけりゃどうとでもなれってこった。
 

15 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/04(火) 22:57:47
確認したわ。流石に早いわね。
わたしも30分を目安に返すわ。

16 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/04(火) 23:39:54
やったこと:電子干渉で廊下の明かりを消す>延びる鞭(先端は刃物状)で攻撃

 8分オーバーだけど何とか返したわ。
 明日も早いから12時ごろに落ちるわ。それまでに質問があるようならハキ
ハキ返すから思う存分シテちょうだい。

17 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/04(火) 23:44:41
 
 じゃあ、24時までに返しとくぜ(何
 

18 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/04(火) 23:52:35
 鬼!いえ、うれしいのよ、うれしいのだけれど、なにかローンで首が回らな
くなるのに近い感覚がわたしに襲い掛かっているわ。返しても返してもきり
が無い感覚ね。精神衛生上よくないわね。

19 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/05(水) 10:15:23
 
 済まない――シンデレラの魔法にでも掛っちまったようだ。
 
【要するに書き終えた瞬間に寝落ち】
 
 まあ――それは今後気をつけるとして。
 発砲したと思ってもらえりゃそれで良いさ。後は特に何もしちゃいない。
 
 今日なら早い時間から待機も出来る。
 確認出来次第動ける準備は整えておくさ。

20 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/05(水) 21:08:24
書き込んだわ。
今回の行動:発火能力発動>廊下中に炸裂>炎の中に走って突っ込む>生きてるのを確認したらパンチ

食事を取って、お風呂とか雑用を済ませてくるわ。少しはずすわね。

21 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/06(木) 01:50:26
 
――クソッタレ。
 一日オフだった筈なのに、どうしてこんなに上手く行かないんだ。
 
 明日――正確には今日――の晩には上げる。
 スピードスターは死んじまったようだ――やってられねぇ。

22 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/06(木) 21:44:33
 
 上げたぜ?
 まあ、読んだまんま、かね。
 
 仕事は――誘拐じゃなくて悪魔狩りって解釈で頼む。
 だから、依頼のブツがどうなろうが知ったこっちゃあない(何

23 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/08(土) 00:06:43

 掟破りの確定攻撃気味だけどゆるしてね。
 次のターンでまた派手に魔法を使う予定よ。
 殴り足りなかったら今回のレスで思う存分やっちゃってかまわないわ。

 それと、明日はレスができそうにないの。あさっての夜には返すから許してね。

24 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/09(日) 22:05:28
 寝てないせいで死ぬほど眠いわ。本スレに書き込んだあと、数分意識が飛んでたわ。

 そろそろ結末へ向けて考えないといけないのだけれど、何かやりたいネタはあるかしら。
もしあるなら、最大限協力するわよ。

 もし特に無いようなら、次のターンにでもイギーをバイクで登場させようと思うのよね。
窓をぶち破って登場させるのよ。そこから先はカーチェイスになってもいいし、場所を買
えて決着でも言いし、そのまま見送ってくれてもかまわないのだけどね。

 そうそう、スーツケースはあきらめる予定よ。ダッチワイフ(シリンダ)のほうはなるべく
回収を試みるつもりだけど、できなくてもかまわないわ。

25 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/09(日) 22:10:01
 
 流動的にしかモノを見れない俺にはやりたいネタなんてないさ(何
 その場の思いつきで流れに沿った事をやるだけ――という訳で、電撃は無効化させてもらうだろうが、さっさと
上げる事を念頭には入れておく。
 
 
――しかし、今日空けたばっかりのバカルディが何で半分ほどなんだ?
 俺にはそのほうが疑問で、救いの手を差し伸べて欲しいぜ。

26 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/09(日) 22:43:44
 
 むてきちょうじん ちんぴら が あらわてた
 
>どうする ?
 
 
 
 
 宣言どおり終末に向かって。
 俺自身、12以降は16まで連絡は取れないだろうしな。

27 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/09(日) 22:54:12

たたかう
>なかまをよぶ
どうぐ
まほう
にげる

 確認したわ。無効に関してはオッケーよ。もともと戦力差がありすぎる相手だからこう
なって当然よね。

 それで悪いのだけれど、レスは明日まで待ってもらえないかしら。
 なんかもう眠すぎるのよ。レスの内容も完全に頭に入ってるか自信がもてないぐらいに
眠いのよ。というか自分で打っている文章の内容もあやふやなぐらいね。
 ごめんなさい。明日には必ず返すから。

 わたしも12〜16までは無理ね。最終的な決着は次の週になってしまいそうね。

28 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/10(月) 23:04:15
 とりあえず書きあがったのだけど、今後の展開上そちらの都合もあると思うから一度こ
のスレに張るわ。これでよければ言ってちょうだい。本スレに張ってくるから。だめなら
言ってくれれば書き直すわ。

 以下のレスは追ってくることを前提でかいたレスよ。

29 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/10(月) 23:04:48
>>
 ―――――今夜はどうにもいつもどおりにはいかないわね。

 近付いてくる男。どうみてもまったくの無傷ね。冗談じゃないわ、非常識にもほどがあ
る。本当に、こちら側の生き物みたいね。いいえ、わたしよりさらに向こう側の生き物な
のかしら?そうじゃなければ何かタネがあるのね。修羅場の経験は豊富そうだし、それな
りに準備はしてあるとおもうわ。

 まあ、そんなことはどうでもいいわね。それよりどうしようかしら。このままやっても
勝ち目は無いわ。あれで無傷じゃあどうにもならない。もっと強力な魔法を使うっていう
手はあるけど、そんな時間はくれないでしょ?仕方ないわ。こうなったらやることは一つね。

「そうね、じゃあそうさせてもらうわ・・・・・・・・・

 わたしはにっこり微笑んでそういったわ。そのわたしの言葉と同時に、先ほどの発火と
放電で割れた窓から音も無く、でも凄いスピードで浮遊フロートバイクが一台つっこんできたの。
ほぼ直角に近角度で曲がるとバイクはそのまま廊下を疾走。こちらに向かって近付いてく
るわ。

 操縦しているのはもちろんイギーよ。心配そうな表情がその顔に浮かんでいたわ。心配
してくれているのね、イギー。ありがとう。でも大丈夫よ。さあ二人で帰りましょう。しっ
かり獲物はいただいてね。

「さようなら。わたし以上のバケモノさん」

30 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/10(月) 23:05:14
>>
 飛び込んだ瞬間目に入ったのは真っ赤なコートの男だった。そして傷だらけの人形デッドガール
例の便利屋とプリマヴェラだ。

 想像以上に状況は悪い。あのプリマヴェラが手も足も出ていないなんて!

 こうなったらやることは一つだ。ぼくはアクセルを踏み込みさらに加速。室内、それも
狭い廊下では自殺行為の芸当だ。そんなことはわかっている。迫る壁。でも大丈夫。さら
にアクセル。同時に半ば立ち上がるように腰を浮かして中腰になると、そのまま身体を倒
し重心操作でバイクの軌道を変える。プリマヴェラのわきを通り抜ける瞬間、彼女は華麗
に宙を舞い、ぼくの後ろにちょこんと座り込んだ。飛び乗られたというのに車体はさほど
も揺れない。プリマヴェラの「魔法」。そのまま直進。すれ違いざまにプリマヴェラがこ
んがり焼けたドールを回収。トランクのほうは距離があるから諦めるしかない。ぼくはさ
らにアクセルを踏み込む。さらにさらにさらにさらに!そのまま突き当たりの窓をぶち破っ
て建物から飛び出す。

雨はもう止んでいた。吹き付ける心地よい夜風が緊張感を解きほぐし、戦闘による興奮と、
火照った身体をさましていく。

「いい車を見つけたじゃない」

 かわいらしい脚で車体を挟み込み、残った左手で焦げたドールを抱え込んだプリマヴェラ
が顔を寄せるようにしてぼくに言った。

「ある場所はわかっていたからね。悪いけど無断で借りてきた」

 ミツビシの最新鋭のホヴァーバイク。最新型の「数秘機関クラック・エンジン」を搭載したこの機種は、
バイク=うるさい物という概念を過去のものへと変えた。駆動音は極めて小さく蚊の羽ば
たきほどにも感じない。静か過ぎて危険だという苦情まで出る始末なのだ。

 逃走用に用意してあったカオルコの愛車だ。彼女には悪いが借りることにした。どうせ
彼女はあの様子じゃ使えないだろう。

 乗り心地は極めてスマート。ぼくの愛車のブガッティ(1931年製、ブガッティ・ロイヤル、
ベルリン・ドゥ・ヴォヤージュ)と比べれば玩具のようにすら感じる。

だがこの子を馬鹿にしちゃいけない。こんなにソフトな乗り心地なのに加速性能と最高速
度はぼくの愛車よりも数段上なんだ。そして、それと比例するように、リスクも恐ろしく
高かった。
 ブガッティを運転する時に必要なのは彼女をねじり伏せる腕力とセンスだけど、この子
を操縦するのに必要なのは外科医のごとき精密さだ。十分の一ミリ単位で調節された操縦
系は、ほんの僅かなミスが死につながる。超繊細な操縦系はまともな人間じゃ操縦できや
しない。反射神経に自信があるぼくでも、薬を使って擬似的なオーバークロック状態になっ
ていなければとてもじゃないが無理だった。もともとコイツはmore than human 用の乗
り物なんだ。

31 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/10(月) 23:06:08
>>
「やだ!顔の皮膚がはがれているわ。さっき床に擦りつけたせいね。もういやんなっちゃ
う!右手と一緒に腕利きのエンジニアに直してもらわなくちゃ」

 自分の傷の様子を点検しながら、プリマヴェラが大げさに騒いでいた。

「あいつはそんなに強かったのかい? 」

 顔を僅かに傾け、ぼろぼろになったプリマヴェラを視界の端で見ながらぼくはそういっ
た。ぼくも、こんなにやられたプリマヴェラを見るのははじめてだった。

「強いなんてものじゃないわよ、イギー。こんな装備じゃ話になんないわ。次にやるとき
は最低でも重火器を用意した上で双子ピカドンでも連れてこなくちゃ。それでやっと
勝ち目が見えるくらいよ。」

 うんざりしたような表情でプリマヴェラがいう。さすがの彼女も応えているようだ。

「今日はわたしの完敗よ。でも次にやるときは確実に殺すわ」

「出来ればぼくは、あの男とは二度と係わり合いになりたくないけどね」

 そういってぼくはハンドルを握ったまま肩をすくめた。

 ぼくはバイクを操縦しながらひとごこちついた。
 これでなんとか依頼は達成できた。義体の回収までは出来なかったけど、子宮シリンダを回収し
たんだから、最低限の仕事は果たしたといっていい。成功報酬は満額はもらえないだろう
が、7割ほど請求しても罰は当たらないだろう。

 ああ、今日もよく働いた。今日はもう早く帰って休みたい気分だ。

 ―――――まだ安心するな

 !?脳内に響く声。

「プリマヴェラ、何か言ったかい?」

 一応たずねてみたものの彼女が言ったのではないことは解かっていた。それは男の声だっ
たからだ。

「何もいってないわよ、イギー」

 怪訝そうにプリマヴェラが言う。

 ―――――まだ安心するな、わが影よ。

 お前は誰だ!?

 ―――――おれはお前だ。そんなことよりも、まだ安心するのは早い。後ろだ。来るぞ。

 その声に、思わずぼくは後ろを振り返った。傷だらけのプリマヴェラ越しに見える風景。
そこには―――――。

32 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/10(月) 23:07:47
以上よ。そちらに都合が悪い部分があれば全面的に改定するわ。

33 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/11(火) 01:17:53
 
 悪ぃ、反応が遅れた。
 そいつでなんら問題ねえし、続きは書いとくよ。
 
――さて、俺の足は何にするかな。
 

34 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/11(火) 02:59:59
 
――人生には刺激って奴が必要だ。
 
 ソレが厄介事であれ殺し合いであれ何であれ、驚き興奮も出来なけりゃ退屈に噛み殺されちまう。
 その点で言えば今回のヒーローの登場は悪くはない(まさかバイクで来るなんて思いもしなかったが)、悪
くはないが――俺としては不完全燃焼だ。もう少しばかりダンスパートナーになってくれなくちゃ困る。闖入者
が引っ掻き回してくれれば今よりはもう少し愉しい夜に――って、ガキとダッチワイフ手に入れた途端あっさり
と逃走開始かよ。ヒーローって奴はもう少しばかり熱血であって欲しいもんだね。
 
「――Hum……さてまあ、どうする」
 
 冷たいシャワーに打たれながら行動は既に開始済みだ。
 そう、何時だって結局やる事は一つきりしかない。
 
 飯を喰って、寝て、起きて――週休六日の便利屋稼業で刺激に浸る。
 
 そう――どんなクソッタレタビジネスだろうと請けた以上……有無を言わさず請けさせられた以上(実際問題
金もなくて元居た場所に戻る事も出来なければホテルの支払いも出来なかったんだが)、きっちりとこなすのが
ポリシーだ。
 
 大雑把に詰め込んだここの地図を頭の中に広げ、目的までの最短ルートを確認。ついでにトランクを拾い上
げて置く。追いつけなきゃそれはそれ。これはこれ。保険は掛けておくに越した事もない。こんな有様じゃあ依
頼人も強くは出れないだろうさ。
 相手の逃走がバイクである以上、なるべく早く駆ける。窓を蹴破り目的である車庫までは一直線に。どうせど
いつもこいつもB級ホラーのモブになっちまったんだ。一台くらい拝借したって構いやしねえだろう?
 
 で、愕然とした。
 
「なんで――赤いのがねーんだよ……」 

 御丁寧に鍵をつけといてくれるのはありがたい。そこには文句もない。盗んだバイクで走り出すには上等だ。
最新モデルからアンティークまで……道楽の極みってヤツだな、ピザが何枚買えるやら。
 しかし、青は駄目だ。緑でも紫でもピンクでも良いんだが――青は駄目だ。よくない。
 
「しかも車ばっかって……まあ、そりゃ、金持ちだもんな」
 
 こうなったら走って追うか? そろそろ時間的に拙い。
 
「――BINGO!」
 
 カスタムにでも出していたのか、それとも主人以外の誰かの趣味か。赤いソレに飛び乗る。
 座り心地は悪くない、エンジンの始動も問題なし、心地良い響きと振動に少しばかり酔う。
 やっぱりバイクはアメリカンでガソリンじゃなきゃならねぇ。
 
「The party doesn't end!」
 
 スキール音を響かせ走り出す。
 逃げ切れると思うなよ?
 
 
 右へ、左へ。
 思いついたままにハンドルを切り、フルスロットルで駆ける。信号なんて無視だ無視。
 
 出会う確率は極めて低い。そりゃそうだ、俺は奴等のベッドールームがどこにあるかなんてのは知らない訳だ
し、この街の道を知り尽くしている訳でもない。
 そもそも素性も知らない、目的は同じだったとしても何処かの誰かからの依頼なのか、自発的な行動なのか。
 
 それも判らない。

 精々がブン殴ったくらい。それだけの接点でどこに行ったかが判るんなら、こんな商売はしてねえだろう。
 
 だが――確信はある。
 予感じゃない、確信だ。自分に都合の良い未来を普段は掴む事は出来やしないが、この感覚は必ず掴める。
 理想通りの未来を。希望通りの時間を。第二ラウンドの幕開けを。
 
 パーティーはまだ終わっちゃいない。
 俺の本業もまだ終わっちゃいない。
 
 だから追いつき、ド派手な幕開けにすべきなんだ。
 主役は派手な登場じゃなけりゃ締まりやしない。
 
 右へ左へ。
 焦りはない。
 
 東へ西へ。
 ほら、な?
 
 角を曲がれば見覚えのあるガキを乗せて疾走する一台のバイク。
 状況は良くない。ジリジリと離されて行くのは性能の違いか?
 
「――Take it easy」
 
 取り出すのは二つで一つの我が頼もしき相棒。
 減速覚悟でアクセルを戻し、転倒を恐れず両の手は胸の前でクロス。お気に入りのポーズ。
 
「Let's rock!」
 
 お決まりの台詞。

35 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/11(火) 03:04:47
 
 と、まあ投下が確認できたら貼り付ける為に残しとく。
 

36 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/11(火) 13:32:58
 確認したわ。いまは昼休みにちょっと戻ってきただけだからレス出来ないのだけれど、
今夜は8時には帰ってこれそうだから、9時までにあげられるよう頑張ってみるわ。

 そうそう、こちらのレスで被弾してスピードを低下させるつもりよ。チェイスしながら
最後のひと暴れといきましょう!

37 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/11(火) 21:39:07
 書き込んだわ。予定より30分以上遅れてしまったわ。ごめんなさいね。
今回は好き勝手やらせてもらったわ。そっちも好き勝手やってちょうだい。

38 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/11(火) 21:42:45
 
 オーケイ。
 今から取り掛かるが――ま、そっちほど描写は必要じゃあない。
 
 22時を目処には上げるさ。
 

39 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/11(火) 22:14:26
 
 Shit――台詞を探すのに手間取ったせいでこの様だ。
 
 芸もなく射撃さ。
 追いつけなきゃ剣の役目がなくってね。

40 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/11(火) 22:18:39
確認したわ。30分程度で返すわ。次の行動で追いつけるようにするわね。

41 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/11(火) 22:47:26
 何とか時間を守れたわ。そろそろ決着のときかしらね。殴ったり蹴ったりきっ
たり好きにしてくれてかまわないわよ。こちらも次で最後の悪あがきをする予
定だけれど。

42 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/11(火) 22:52:10
 
 オーケイ。
 それなら遠慮なく殴るか蹴るかブチ抜くか。
 好きな方法を選ばせて貰うさ。
 
 次こそは――二十分だ。
 

43 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/11(火) 23:10:38
 
 宣言通りってヤツだな、漸く。
 銃はフェイクと見せかけて本当にぶっ放しても良いかなと思っている(何
 
 本命は剣の方だ。
 戻ってくる特性を利用して油断でも突きましょうって具合だな。
 

44 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/11(火) 23:17:44
 確認したわ。出来ればまた30分以内に返すわ。

 そうね、じゃあそのまま発砲したことにして、顔を半分持っていかれましょうか。
原典でもクライマックスでレーザーガンで顔を半分焦がされてるしちょうどいいわ。

 それでいったんは回避したけど戻ってきた剣のほうでばっさりにしましょう。そのあと
例の「保険」の複線を回収してから適当に言葉を交わしてENDってところかしらね。

 上手くすればあと1ターンで終わりそうね。

45 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/11(火) 23:19:35
 
 オーケイ。合わせるよ。
 好き勝手絶頂にやるのが俺達だ。
 与えられた役割の中できっちりやるさ。
 

46 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/12(水) 00:19:44
 ごめんなさいね1時間かかったわ。しかも好き勝手やったわ。
 このあとの展開はお好きにどうぞ。ここまできたら、

 そちらのレス>(かきたければお互いのエピローグ)>レス版まとめ

でいいと思うのだけれど。イグナッツ・ズワクフ=ダゴン卿@デッドボーイズをいまさら
出すのも蛇足だとおもうのよね。

 そうそう、レス版まとめはイギーがやるから安心してちょうだい。

47 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/12(水) 00:24:39
 
 その流れで良いんじゃねえか?
 人間を殺す気もないし、蛇足だってのは同感だ。
 
 で、エピローグは……「楽屋裏」にでも投げ捨てるつもりで居る。
 つまり、本スレに上げる気はないって事だ。
 
 じゃあ、ラスト。
 チンピラらしく終わりとするか。

48 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2009/08/12(水) 00:43:08
 
 さて、終わりか。
 もうワンアクション欲しいなら付き合うが――あんなもんで十分だろう?
 
 前哨戦のお供になれた事に感謝を述べておくぜ。
 

49 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/12(水) 00:50:11

 確認したよ。じゃあこっちは気が抜けて、格好悪く気絶してオチにでもしようかな。
 付き合ってくれてありがとう。久々の闘争だったのでまごつくことも多かったけど何と
か形に出来たとは思っているよ。きっと相手がよかったからだろうね。

 じゃあぼくはオチを書いてレス版まとめをしてくるよ。

 もう一度だけ感謝の言葉を。ぼくたちに付き合ってくれてありがとう。機会があったら
また頼むよ。

50 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/12(水) 22:54:00


13〜16日までは留守になるため、レスは17日以降に行います。



51 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/17(月) 21:15:15
>ヴィルマ・ファキーリ

 ようこそ罪都倫敦へ!心のそこから歓迎するわ。
 わたしは進行役のプリマヴェラよ。本番が始まるまではわたしが代役で打ち合わせをお
こなうわね。

 まずはお礼からいうわ。応募してくれてありがとう。
 帰ってきて応募が一個も無かったらどうしようとひやひやしていたのよ。

 森祭での12姉妹との物語は読ませてもらったわ。本当に素晴らしい物語だったわ。
 あなたと踊れるなんてヴァイオレットも光栄に思っているはずよ。

 あなたの原典については把握しているわ。最も読んだのがけっこう前だから今週中には
もう一度はじめから読み返しておくわ。

 そうそう、闘争の開始時期なのだけれど今週末を目安に、ではどうかしら。今週中は先
週の反動で雑多なことが多くて上手く時間のやりくりが出来ないのよ。悪いのだけれど週
末までは打ち合わせと導入を詰めるだけにさせてちょうだい。

 じゃあまず、この依頼の表と裏をざっと説明するわね。

52 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/17(月) 21:17:54
◎表
 こっちは依頼に書かれた通りよ。
 再殺部隊の収容所から逃げ出した廃棄人形ステーシーを始末する。ただそれだけね。
 逃げ込んだ場所がちょっと特殊だから、後腐れの無いフリーランスに頼もうとしたの。

 廃棄人形ステーシーはなりそこないのドールよ。
 廃棄人形ステーシー=グールみたいなものだと思ってもらえればいいわ。

 ちなみに廃棄人形ステーシーはわたしの原典には登場しない「私」の捏造よ。まあ、この程度の捏
造は許してちょうだい。出来損ないのドールは原典にも登場するんだから、ちょっと脚色
してもかまわないでしょ?ちなみに廃棄人形ステーシーの元ネタは大槻ケンヂの「ステーシー」よ。


 さて、応募してきたのがただのハンターやニューボーンだったらこの説明だけで済まそ
うと思ったのだけれど、あなたのような数百年を生きたエルダーにはこれじゃものたりな
いわよね。裏の事情も話すわ。

53 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/17(月) 21:18:34
◎裏

 じつはこの廃棄人形ステーシーはただの出来損ないでは無く、ある『実験』の被献体のひとつなの。
その実験っていうのはね、共存派の吸血鬼と人間による2種の共存のための人体実験よ。

 収容所は研究所も兼ねていて共存派たちが日々実験を行っているのよ。
 その研究の大まかな内容は「人工精霊による衝動の抑制」と「ナノマシンを利用した感
染防止」よ。これの副次的な作用として、完全に吸血鬼化していない「成りかけに」対す
る進行の抑制の研究もおこなっているわ。

 処分を依頼された廃棄人形ステーシーは実験段階の上記の処置をされたことによって、完全に狂う
前の段階で進行が停止しているの。もっともいずれは完全に廃棄人形ステーシー化しちゃうんだけどね。

 人としての尊厳を取り戻すために『彼女』は逃げ出したんだけど、研究所の人達にして
みればそんな研究をしていることがばれたら、ほかの同胞たちや過激派たちの眼が痛いわよ
ね。研究が完成するまでは知られたくないの。だからただの廃棄人形ステーシーということにして内密
に処分しようとしているのよ。

 これが裏の事情よ。あなたが戦うのなら、裏の事情を知った上での方がよさそうね。
まあ、そのあたりのことはあなた自身に任せるわ。

54 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/17(月) 21:19:16
 造語やこの物語特有の語句の使い方が色々あるから、近日中に簡単な用語説明を行うわ。
それ以外でも解からないことがあったら聞いてちょうだい。

 それとやりたいネタがあったら、それも遠慮なく言ってちょうだい。最大限付き合うわ。

55 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/17(月) 22:46:37
>>51 プリマヴェラ
済まないな、待たせてしまった。
 
まずはこちらこそ、受けてくれて感謝を。
森祭に関しては面映ゆい限りね。あれは私のダンス相手が一流だったから。
それにそちらこそ、あの赤頭巾とのおとぎ話はビザールだった。とてもビザールだった。
 
 
で、開始時期については了解。週末の方が動き易いので、こちらとしても助かる。
 
因みに「デッドガール」は何とか入手して読んだから、そちらのネタにはついていけると思う。
(「アルーア」と「デッドボーイズ」はまだ読んでいる途中)
しかしこれ……非常に面白いわね。そちらの闘争が改めて楽しめた。
 

56 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/17(月) 22:49:13
失礼、「デッドガールズ」だな。
 
>>52-54
>表
ステーシー、いいじゃない。
あのね あたしたち好きな人に もう一度会うため歩いただけよ♪ ……というやつだな。
いかにも、あのナノテク・ドール地獄に相応しい。
 
>裏
それを踏まえて、私の仕事は正しく「再殺部隊」となる訳だ。
ふふ、面白い。
 
私が原典で属している吸血鬼の秘密結社「ラ・ソシエテ」は(といっても巻末の解説にしか
出てこないが)、「取引によって表の人間社会と共存」し「ヨーロッパを中心に人間の国家
権力に介入」したりもしているので、例えば今回の『実験』に絡んでいてもおかしくはない
かもしれないな。
その関係で私が一人再殺部隊として派遣される、などとすれば無理も少ないか。
 
 
それと大した事ではないが、今回の私はヴィジュアル的には原典の五、六巻辺りに出てくる
方の格好で行こうかと思っている。
武装もその時と同じく中華剣二刀流。後は飛刀を使うかもといった所。
何、特に意味はないのだけれどね。
 
ただあくまで外見上の話で、最強のハメ技である「八門死断陣」には当然開眼していない。
あれは出すと勝ち前提になるので、こちらとしても使い難いから。
 

57 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/20(木) 21:04:48
 返事が遅れてごめんなさいね。今週は予想どおりに忙しくって。嫌になっちゃうわ。
 土曜になればなんとか手が空きそうだから、夜までには導入をざっと仕上げてみるわ。

>デッドガールズ
 自分の原典にこんなことを言うのはなんなのだけど、よくもまあ、あんなどマイナー作
品を読んでくれたわね。本当にうれしいわ。ありがとう。こうして何かあるたびに宣伝に
励んでいるかいがあるってものだわ。わたしもデッドガールズは傑作だと思うのよ。サイ
バーパンクものとしては珠玉の出来なのに何で絶版になってるのか理解できないわ。きっ
とトレヴィルに根性が無かったせいね。

「蠱惑(アルーア)」は傑作なのでぜひ読んでみて。訳者の巧妙さもあってある意味デッ
ドガールズ以上の出来よ。中でも「トクシーヌ」という題の短編は、おぞましいほどに素
晴らしいのよ!
「デッドボーイズ」は……輝く部分はあるのだけれど、突き抜けすぎていて好みが分かれ
るところだと思うのよ。暇だったら読んでみるのも悪くは無いと思うのだけれど。プレミ
アがついているだけの価値があるかというと疑問なところね。

 ちなみに、「蠱惑」デッドガールズ「デッドボーイズ」の後に、「デッドシングス」が
発売される予定だったのだけど、発売目前にして出版元のトレヴィルが潰れたのよね。
 トレヴィルにもう少し根性があれば最終作の「デッドシングス」を読めたのに。それを
思うと悔しくてならないわ。

>設定など
 そちらの背景および装備・外見等の設定は了解したわ。『実験』の内容に関しては、そ
ちらであるていど変更してしまってかまわないわ。あなたが参加しやすいようにいじって
しまってちょうだいある程度つじつまは合わせられるの。Big Sister vs Big Blue 『倫敦
崩壊』の大きな背景の一部としては、ね。

 そうそう、そちらの原典で右手を再生させたような超再生力にも目覚めていないってこと
でいいのよね?それによって無茶の出来る程度が違うから。

 ヴァイオレットの方は小説版の設定だと、深手の回復に数時間かかるらしいわ。傷の治
癒は早いけど再生というほどではないわね。身体能力のほうも反応速度と力は人間以上だ
けれど無敵の化け物ってわけじゃないわ。陽光に対する耐性は即座に致命傷にはならない
けど、浴び続けると重度の貧血になってしまう程度ね。だから長時間の行動は危険ね。吸
血嗜好は無いけれど短期間で大量の輸血を行わないと死んでしまうらしいわよ。重度の貧
血体質でヘモグロビンの精製に難があるらしいわ。

 まあ、彼女は危険なウイルスに感染してしまった感染者(ファージ)であって伝承で言
う「吸血鬼」とは少し違うから。吸血鬼っていうのは感染していない人間のつけた蔑称な
のよ。わたしのようなナノマシンで変質した元人間の「人形」をヴァンパイア呼ばわりす
るのと同じよね。……あら、あなたの場合もそうだったかしら?

58 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/20(木) 21:07:10
>こちらの装備
 切っ先がノミのように平になった剣と重火器は基本よね。後は色の変わる服と髪は譲れ
ないわ。小説版を読んだ限りあれには一応設定があるのだけれど、今回はダーマプラスティック
ということにさせてもらうわ。せっかくのクロスオーバーなのだから。
 そのほかでは原作中で何度か使われている局所重力制御システムね。あれも使うわね。
正式名称は四次元ジャイロっていうらしいわよ。死ぬほど格好悪い名前ね。


>やりたいネタ
 「ガン=カタ vs 極限まで研ぎ澄まされた武術功夫」は基本ね。必殺のはずのガン=カタ
を華麗にかわして反撃して欲しいわ。
 あとは互いの前髪が触れ、吐息のかかりそうなほどの至近距離での戦闘かしら。超至近
距離から繰り出される互いの攻撃を最小限の動きでかわしながら必殺の一撃を狙う、とか
燃えると思わない?

 それとヴァイオレットには次元圧縮システムがあるから大量の銃器を次から次へと取り
替えながらの銃撃はやりたいわね。やるとしたら出会いがしらかしら。接近されてしまっ
たらその余裕はなさそうだし。

シュチュエーションとしては
・密閉空間での戦闘(エレベータ内など)
・足場の悪い場所での戦闘(高所にある仮設通路など)
とかもおいしそうよね。


>八門死断陣
 そうね。ヴァイオレットじゃ正直あれはちょっと避けようが無いのよね。ただ、流れに
よっては「天の理」を掴むまではありだと思うわ。

戦いの中で功夫の極北に到達>「天の理」に開眼>攻撃を避けまくり

みたいな感じで。そこから>八門死断陣(β版、名前はまだない)につなげてもいいし。
 ……もし開眼するのなら大量の銃撃はそれからでもいいかもしれないわね。何百発も銃
弾を浴びせているのに、「なぜ当たらないの!?」みたいなネタも出来るわ。

59 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/20(木) 23:16:51
>>57-58 プリマヴェラ
平日が忙しいのは世の常だ。全く気にする必要はない。
 
>「蠱惑(アルーア)」
「デッドボーイズ」はまだだが、こちらは読了。
ああ、やはりお勧めは「トクシーヌ」か。私もこれが一番気に入っている。
サイバーパンクの分類からはちょっと外れるが、それだけに性倒錯の高みへ高みへと昇って
いく(いや、転がり落ちるのか?)様とその破綻が、すんなり入ってくるというか。
こちらこそ礼を言わなければね。お陰でいい本に出会えた。
 
それだけに、版元が倒産して三部作の最後が読めないというデストラップが許せん。
て、天道是か非かッ。
 
 
>設定など
諸々、了解した。
『実験』については、当たり触りのないように処理しておこう。
 
超再生力に関しては正にその通り。今の私にはそこまで強力な再生能力はない。
まずヴァイオレットと似たり寄ったりという所ね。
しかし彼女は確かに吸血鬼ではないけど、新時代の新生者(ニューボーン)の一つと言える
のかもしれないな。デッドガールも、ステーシーもまた。
 
そう、我々自身は血族(コグニート)と称している。
吸血鬼という言葉は我々にとっても蔑称だ。ふふ、言葉というのは面白い。
 

60 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/20(木) 23:18:48
>やりたいネタ
>互いの前髪が触れ、吐息のかかりそうなほどの至近距離での戦闘
>足場の悪い場所での戦闘(高所にある仮設通路など)
これは私もやりたいな。
そちらは四次元ジャイロ、こちらは軽功でワイヤーアクションだ。
銃器をとっかえひっかえも、むしろウェルカムという所。
 
一通りしてのけた後、場所移動して「エレベーターなどの密閉空間」へ雪崩れこんだりする
線も考えられるかも。超接近戦に持ち込めるし。
 
>八断死門陣(何食わぬ顔で訂正)
そうだな。不完全な形で「天の理」に開眼しかける(チョットダケヨ)というのは、それはそれで
ありか。
状況に応じてだけれど、出せれば出してみたいもの。
 
 
まあしかしその、なんというか。
どの方向でいっても楽しめそうだ。
 

61 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/22(土) 08:14:55
 ……18時までに書き込みが無かったら、今日はこれらないものと思ってちょうだい。
今日は休みのはずだったのに、マダム・キトーがあほみたいに仕事を入れたのよ。
下手すると終電でも帰ってこられないかもしれないの。うんざりよ。本当にうんざり。

 明日には必ず導入を上げるから。本当にごめんなさいね。

62 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/22(土) 13:22:12
>>61 プリマヴェラ
おや、それはまた難儀だな。心中察するわ。
 
了解した。無理はしないで欲しい。
やはり心気横溢してこそ、互いに楽しめるというもの。
日程が延びても、私は構わないから。
 

63 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:34:55
 以下導入(試作品)。推敲をまったくしていないβ版だけど、おおむねはこんな感じで。
 移動中にポメラで書き殴ったから、変換の変なところがあるかもしれないけど後で修正
するから気にしないでちょうだい。

64 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:37:15




第2話『INNOCENCE』(仮





65 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:37:47




―――血と混ざった輝微粉はハーブティーの香りがした。




66 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:41:07

 暗黒の都、倫敦。時刻は真夜中を過ぎたころ。この街にとっては最も活気に満ちた時間帯だ。だというのに、辺りには人影が存在しない。ここはテムズの南に位置するスラムだ。もとよりまともな住人など近寄らないが、街娼やスクワッター、ストリートギャングにクリーチャーといった、こちら側を根城とするものたちまでが一人として存在しない。

 無論それには理由があった。ここはゼロ番地区から100mも離れていない場所だったからだ。無駄なトラブルに巻き込まれることを恐れ、なともな人間はおろかまともではない住人までが誰一人として近寄ろうとは思ったいなかった。

 ゼロ番地区。先に崩御されたドラキュラ陛下がこの国に君臨する以前から存在した隔離地区(ゲットー)。闇の都・倫敦の中で七つ星やウェストミンスターと並ぶ最深部。長く生きながらえたい者ならば絶対に近寄ってはならぬ場所だ。

 足音が静寂を壊した。
 硬質なブーツの靴底が石畳を打つ固く渇いた音。

 一人の女が人気のない路地を歩いていた。
 闇に満ちたスラムの路地だというのに、悠然と何の不安も感じさせぬ足取りで。

 闇色の髪を長く伸ばした女だった。女が身に纏うのは漆黒のライダースーツだ。セパレートタイプのライダースーツで材質はいっけん革に見えた。

 ローライズでタイツのようにぴったりと張り付いたボトム。
 ジャケットは丈が短く臍のすぐ下ほどまでしかない。そのジャケットをジッパー全開にして羽織っており、中には同系素材のさらに丈の短く胸のすぐ下ほどまでしかないハイネックのインナーを身につけていた。それもまたジッパー式で、彼女はそのジッパーを胸の谷間が見えるぐらいにまで引き下げている。

 丈の短いアッパーとローライズのボトム。必然的にむき出しになった腹部はよく鍛えこまれているが、女性特有のふくよかさも失っておらずとても魅力的だった。

 先ほどから石畳を打ち小気味いいリズムを刻んでいるのは、膝まであるボトムと一体化したかのように見えるタイトなブーツだ。ヒールは高い。動きやすそうには見えなかったが、女の足取りに不安は見て取れなかった。

 女は夜だというのにサングラスをかけていた。ゴーグルタイプで顔が半分隠れるような大きなレンズが特徴的だ。いまはその漆黒のレンズに覆われ見て取ることは出来ないが、その下にある彼女の瞳の色は青だ。もっとも彼女の種族特有のヴァイオレットの超自然的な輝きによって瞳の青さは消し去られているのだが。

 その輝きの色こそが彼女の名前でもあった。

 ヴァイオレット。ヴァイオレット・ソング=ジャット・シャリフ。

 人間たちがヴァンパイアと呼ぶ、夜を生きる呪われた種族のひとりだ。

67 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:42:09

 ヴァイオレットはいまゼロ番地区から出てきたところだった。取引の帰りだ。彼女はゼロ番地区の住人と取引をした帰りだった。

 彼女はゼロ番地区の住人とでも忌避すること無く取引を行った。まともでない者たちの中でも最もまともでない部類に入る彼女にとって、ゼロ番地区は警戒の対照では合っても恐怖の対象ではなかった。利益を与えてくれるのならばそこの住人とでも喜んで取引するのが彼女の、いや彼女たちのやりかただった。

 今回の取引は武器の購入だった。彼女の所属する組織が金を払いゼロ番地区を拠点とする相手の組織が銃を売る、これまでに何度と無く繰り返されてきたいつもの取引だ。

 今回の商品は古めかしい型の銃ばかりだったが、全て正規品だった。粗悪な模造品ではない。種類は拳銃と短機関銃。市街戦、それも室内戦闘を主戦術とする彼女の組織にとっては消耗の多い銃であり、多少古くても使えるならば多く揃えておきたい代物であった。

 取引はいつも通り無事に終わり、次元圧縮システムに放り込んだその銃をもって彼女は帰路についていた。

 この辺りには人影が無いが、度胸試しや考え無しに近付いて来た者たちの痕跡ならばいくつかはあった。その一つが廃屋の壁や塀にスプレーで書かれた文字の数々だ。そのうちの一つ、『ビッグシスターが監視し(み)てる』と書き殴られたビルの角を曲がった時だった。

 けたたましい爆音が静けさを完璧なまでに破壊した。

 それは、さほど離れていない場所から聞こえてくるチェーンソーの駆動音。
 高速で回転する、刃を取り付けられたチェーンの奏でる死の音楽。
 解体用の小型チェーンソー、通称『ライダーマンの右手』の奏でる爆音だ。

 この街ではありふれた音だった。再殺部隊が廃棄人形の再殺を行っているのだろう。
 見つかればその場で極刑に処せられる「人形打壊し(ラッダイト)」とはちがい廃棄人形の再殺は人形たちも黙認していた。廃棄人形を最も嫌うのが人形たちだったからそれは不思議なことではない。

「……廃棄人形(ステーシー)」

 ヴァイオレットは小さくつぶやいた。
 言葉と共に不快感がこみ上げてくる。だがしかたない。彼女にはどうすることも出来ない。そして彼女のやるべきことでもなかった。

 肉を喰らい毒をばら撒く廃棄人形の被害は年々増加していた。廃棄人形の毒は人間だけではなく「それ以外の種族」にまで作用した。人間なら100パーセント。吸血鬼でも種族による差や個体差はあるが6割がたがまず間違いなく滅びる。正常なドールの機能を狂わせることすらあった。だからこそ人形たちもステーシーを廃棄するのを黙認しているのだ。
 いや人形たちがステーシーの廃棄を認めている本当の理由は違うのかもしれなかった。本当の理由はそうではないのかもしれなかった。本当の理由は人形たちの廃棄人形に対する軽蔑と憎悪、そして恐怖によるものかもしれなかった。人形たちは自らの悪趣味なおぞましいデフォルメを見せ付けられるのが嫌でステーシーを廃棄するのを認めているのかもしれなかった。

 もっとも本当の理由がどうであれ、ヴァイオレットにとってはどうでもいいことだ。
 ライダーマンの右手の音が聞こえてきてもヴァイオレットは立ち止まること無く夜のスラムを歩いていく。余計なトラブルはごめんだ。特に今は取引を終えたばかりなのだ。政府の狗に出くわして、あれこれ言われるのは好ましいことではない。だから彼女は爆音を無視し、そのまま脚を進めていった。

 だから廃棄人形と出くわしてしまったのは彼女の責任ではなく、きっと運が無かったからなのだろう。間が悪かったとも、はたまた運命だったからとも言えるのかもしれなかったが。

68 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:43:03
 角を曲がるとそこには一体の廃棄人形がいた。地面に倒れ付し、それでも上体を起こして這いずるように移動する廃棄人形がいた。

 ゴシックロリータ風のドレスを着た廃棄人形だった。靴はヴィヴィアンのロッキンホース。よくこんな厚底靴で、再殺部隊から走って逃げ回れるものだ。

 いたるところで洋服が裂け、そこから血が流れ出していた。ライダーマンの右手が掠めた傷跡だ。傷は浅いが数は無数にあった。狩猟者が狩りを遊び半分で楽しんでいるのか、それとも何か別の要因があるのかはわからない。多分前者なのだろう。

 一瞬、違和感を覚えてもう一度見直した。間違いなく廃棄人形だ。
 廃棄人形の特徴である再生屍体蝶羽状輝微粉のついた肌が夜闇の中でうすぼんやりと光っていた。

 傷口から流れた血が輝微粉と混じりハーブティーのような香りをあたりに漂わせていた。
 そう、なぜか血と混ざった再生屍体蝶羽状輝微粉はハーブティーのような香りがするのだ。

 ヴァイオレットが何かするよりも早く、廃棄人形が口を開いた。

「たすけて」

 そう廃棄人形が喋った。
 廃棄人形は喋らない。ただグールのようなうめき声を上げるだけだ。意味のない声をのどの奥から漏らすだけだ。

 必死の形相で廃棄人形がそういった
 廃棄人形に感情はない。何の欲望も感情も無く、ただ歩き回り条件反射的に肉を喰らうだけの壊れた人形だ。

 涙を浮かべたその瞳に宿る理性の光。
 廃棄人形に理性はない。絶えず動き回りながらも何も見ていないような虚ろな瞳と痙攣を繰り返す身体、そしてそこだけが別個の生物のように激しく動く舌を持つ狂い果てた存在だ。

 同時に違和感の正体に気付いた。この人形はあまりにも人間的過ぎた。

69 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:43:17
「いたぞ!」

その声と共に二人の男が近付いてくる。全身を戦闘服と装具で固めた再殺部隊の一般隊員だ。エキスパートは正規の戦闘服を身につけることは少ないので多分一般隊員で間違いないだろう。その身のこなしを見ても間違いないといえた。訓練は受けてはいるが一流とは呼べぬ程度の動作のキレだった。

 廃棄人形を間に挟んでヴァイオレットと再殺部隊の二人の隊員は向かい合う。

 もういちど廃棄人形がヴァイオレットに向かってたすけてと叫んだ。廃棄人形は地面に倒れたままだ。よく見れば右足の太ももに深々と刻まれた醜い傷跡があった。出来たての傷跡だ。この深さでは歩くことは出来ないだろう。

「何だお前は。ああ、いい。なにも言うな。どうせこの辺りにいるろくでもない連中の一人だろ。見逃してやる。すぐここから消えろ」

 隊員の一人が怒鳴るようにしてそう言った。ブルパップ式のアサルトライフルを提げている。

「あなたたちこそ何をするつもりなの」

 腕組みし、僅かに怒気を滲ませた声でヴァイオレットは言う。

「お前の目は節穴か!?廃棄人形の再殺に決まってんだろうが!!」

 男はそういいながら、もう一人の男が手にしたライダーマンの右手を顎でしゃくった。

「廃棄人形は話せないはずよ」

 目の前の廃棄人形?を見下ろしながらヴァイオレットは言う。血まみれの人形はすがるような目でヴァイオレットを見上げていた。

「最近の廃棄人形の中には話せるやつもいるんだよ!もっともオウムみたいにわめいてるだけで意味なんざ理解してないがな」

 隊員は吐き棄てるようにいうと、「これ以上何か言うようなら」と銃の安全装置を外した。もう一人の男も「やれやれ」とため息をつきながら面倒くさそうにライダーマンの右手を作動させる。

 それをみたヴァイオレットは腕組みを解くと、男たちに向かって一歩を踏み出した。

 やらなければならないことは、やらなければならない。それがたとえ、やりたくないことではあっても。
 それが人生というものだ。

 だからヴァイオレットは、その場においてやるべきことをやった。

70 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:44:22
††3日後††


「なんてことをしてくれたんだ、ヴァイオレット!」

 ナーヴァのヒステリックな怒鳴り声が受話口から鳴り響いた。

 ナーヴァはヴァイオレットたちの組織のボスで、実質上のファージ達のリーダーだった。破綻している性格に反比例した非常に高いカリスマ性があり、また自分の能力以上に有能に見せることが出来ることもあって支持率は高い。何より彼は人の上に立つのに慣れていた。きっと生まれた時から。それもまた才能の一つだ。

「ですがあの場合止むを得ませんでした。再殺部隊の男た」

 状況を説明しようとしたヴァイオレットを ナーヴァの怒声が阻む。

「おまえは正気なのかヴァイオレット!?廃棄人形だぞ」

 廃棄人形に強いアクセントを置いたナーヴァの台詞。その後もナーヴァはしばらくの間わめいていたが、ようやく沈静化し芝居がかった口調で本題に入る。

「お前の今回の行動は救いがたい失態だが特別に許してやろう。」

 寛大さを装った恩着せがましいナーヴァの口調。

「わたしにはピンチをチャンスに変える強運がある。幸いにもお前の失態をきっかけにエルダーと取引することが出来た」

 自画自賛するように、声色に笑みすら含ませてナーヴァがいう。

「いいか、その廃棄人形をすぐに再殺部隊に返すんだ。これからお前のいまいる場所にエルダーが訪れる。そいつに素直に引き渡すんだ」

「……そのことによって、あなたは何を得るのですか?」

「『あなたは』ではない。『我々は』だ。―――素直に返せば今度の議会で我々を正式にヴァンパイアとして認めてくれるそうだ」

 ヴァイオレットはその言葉に大きな驚きと不快感を感じた。

 この街には二種類の吸血鬼がいる。人形と貴族だ。厳密に言えば、評議会で公式に認められた血統のみが吸血鬼として扱われる権利をえることが出来た。逆に言えばそれ以外は吸血鬼として認められていなかった。新生者は人間扱いだし、彼女のようなファージは「まがい物」呼ばわりされ人間以上に嫌われていた。

 確かに正式な吸血鬼として認められることはファージの地位の向上につながる。だがそもそもファージたちは人としての尊厳を取り戻すことこそを目的としていたのではなかったか。それがヴァンパイアとして認められることを喜ぶなんて!

 かつては蔑称であったものを現在は自ら誇るようにして名乗ろうとしている。嬉々として名乗ろうとしている。この意識の変化はよいものではない。劣等感が裏返しになって優越感になっただけだ。根拠のない優越感は危険だった。虐げられた民族はそれゆえに優秀、というわけではないのだ。

「解かったなヴァイオレット」

「ですが」

「Yesだ!わたしの命令に対する返事は常にYesだ!解かったな!!」

「……わかりました」

 ヴァイオレットの返事を最後まで聞くこと無く、ナーヴァは電話を叩ききっていた。

71 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:44:45

 壁に叩きつけたくなる衝動を押さえ込み、ヴァイオレットは一方的に切断された携帯電話を上着のポケットにしまう。そしてそのまますぐそばにあるソファーに倒れこむようにして座り込んだ。

 ヴァイオレットたちはいま0番地区にある建設途中で放置されたビルの最上階にいた。建築途中で放置されたといってもそれは内装面に限った話で、外側は完全に出来上がっていたから雨風をしのぐのには充分だった。スケルトンになった殺風景な内側さえ我慢すれば3、4日くらすのに困ることはない。持ち込んだソファーや簡易ベッドがあればなおさらのことだ。

 ゼロ番地区にはこんな建設途中で放置されたビルが無数にあった。それは中断された再開発の痕跡だった。Big Sister、Big Blue双方とも自社主導による再開発を何度か試みていたが、そのたびに『住民』たちによって阻止されており、本格的な再開発は出来ずにいた。なまなかな覚悟では不可能だろう。本気でそれをやるためには0番地区全体を『殺菌』するほかないだろう。

 ゼロ番地区。人と異形どもの潜む隔離地区。隔離地区の名に相応しくゼロ番地区の外は高い塀によって囲まれていた。旧世紀にあったベルリンの壁のように聳え立つ塀によって囲まれていた。神祖ドラキュラによる暫定的な処置を引き継いだビッグシスターが徹底したものだ。臭いものにはふたをのことわざどおりに。

72 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:45:01
 しばらく考え込んでいたヴァイオレットだったが、ふと歌声が聞こえてきたのをきっかけに立ち上がり、歌声の主の様子を見に行った。

 その歌声の主、先日であったばかりの廃棄人形=マチコは虚ろな瞳で聞いたことも無い歌をさえずっていた。虚空を見上げ忘我の域に達し、ただひたすらにいまだ知ることない歌をさえずる。その様子は以前何度か一緒に仕事をしたことのある記憶屋がイデオ=サヴァン状態になっているときにそっくりだった。

 心地よい歌声だが、いまは悠長に聞いている余裕はなかった。

「マチコ!」

 そういって肩を強く揺さぶると、弾かれたようにマチコはヴァイオレットのほうを向く。その顔に浮かぶのはニアデスハピネスの笑み。廃棄人形になる直前の少女たちが浮かべる幸福感に包まれた笑顔だ。

「あらヴァイオレット。お元気かしら」

 自分のおかれた状況を理解しているのか心配になるような底抜けに陽気な声でマチコが言う。

「元気よ。体のほうはね」

「それはよかったわ!ねえ、ヴァイオレット。それで何かいい方法はみつかったのかしら」

「知人に助けを求めているけどいまのところこれといった成果はないわ。あなたこそ何かいい案はないの?」

「全然!そんなものがあったらヴァイオレットには頼らなかったわ」

そういってマチコはクスクスクスクス笑う。クスクスクスクス笑い続ける。

 その声にヴァイオレットはため息をつくときびすを返し、もといた部屋へと帰っていった。

73 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:45:26
 電話によって中断していた武器の準備を再開する。先日、取引によって手に入れた銃だ。旧式ばかりだが全て正規品。動作は全て保障済みだ。種類は短機関銃(UZI)と拳銃(グロック)がそれぞれ100丁ずつ。弾倉は短機関銃が1丁につき5つ、拳銃が3つだった。

 弾倉に弾薬を押し込んでいく。リローダーがあれば便利だったのだが、そんなものはなかったので仕方なく一発一発手で押し込んでいく。限界量の9割ほどまでつめこむと次の弾倉に移動する。ジャミング防止のための用心だった。フルオートで撃つ銃の場合、きっちりぜんぶ弾をつめると動作不良を起こす可能性が多くなるのだ。だから2〜3発は少なめに弾をつめる。

 そうして弾をつめた弾倉をグリップにしっかりと押し込み、スライドを引いて初弾を薬室に送り込む。そうやって1丁1丁全ての銃に装填していく。装填し終えた銃は安全装置がかかっているのを確認してから次元圧縮システムへと放り込む。同様に予備の弾倉も放り込む。

 問題はこれらの銃のうちどれ一つとして零点規正はおろか試射すらしていないことだった。こればかりは取引相手を信頼するしかなかった。今までトラブルは無かった。あちらも得意先を失っては在庫処分が困るだろう。

74 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:45:44
 全ての銃の用意が終わるのを待っていたかのように警報装置が鳴り響く。
装置と接続されたノートパソコンの画面には、監視カメラに写った人物の姿が映し出されていた。

 女だ。見た目麗しい白人の女。女は中華風の衣類を身につけていた。顔色がやたらと青白いことが自らが嫌光者であることを強く主張していた。年のころは二十代といったところか。あまりに漠然としているが、もっと若くももっと老成しているようにも見えるため正確なところはわからなかった。もっとも、あくまでそれはが意見の話だ。実際には100年以上を生きる怪物なのだろう。

 うらやましい話だ。ヴァイオレットたちファージは、感染してから20年と生きられないというのに。

「どうしたのヴァイオレット」

 マチコが心配そうな顔で隣室への扉から顔をのぞかせた。

「お客さんよ。あなたは隠し部屋に隠れていて。少し騒がしくなるわ」

 ヴァイオレットはそうとだけマチコに告げると、部屋を出て下へと降りていった。

75 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/24(月) 21:50:21
>>64
>>65
>>66>>67>>68>>69
>>70>>71>>72>>73>>74

 このあとビルの一階のホールであなたと出くわすわけね。


 結局、昨日も遅くまで働いていたプリマヴェラよ。もちろん今日も仕事よ。このところ
ろくに寝てないわね。でも明日からは通常通りに戻るはずだから、なんとかなりそうよ。

 暫定的なものだけど導入が出来たわ。遅くなってごめんなさいね。いくつか訂正する場
所があると思うけどとりあえずはこんな感じでいくわ。とはいってもこれじゃかなり荒い
から2〜3日かけて修正させてもらうわね。

 それにしても、わたしから誘っておいてこんな有様で申し訳ないわね。重ねて誤るわ。
ごめんなさいね。

76 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/24(月) 22:36:52
>>75 プリマヴェラ
まず、お疲れ様。
そしてうんこみたいなのはマダム・キトーやモーゲンスターンなのであって、お前が気にする
事は何一つない。プレストンにガン=カタを説くようなものだが、無理しないように。
 
そして、内容については了解だ。流石という雰囲気ね。
私もちょっと続きを書いてみるとしよう。
 
 
しかし「ブルースキャンベルの右手」じゃなく、敢えて「ライダーマン」の方というくすぐり
がおかしい。

77 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/24(月) 23:42:58
>>
 
 
 かつてこの都を包んでいた白い霧は、奇怪な儀式にいそしむ魔道士や錬金術師達が、儀式
の副産物である煙や臭いを晦ませる為に召喚した障壁だったと言う。
 そんな古き良き時代も今は遠い。
 今、この街の空に広がるのは化学汚染され、妖気すら孕む黒い闇だった。
 
 
 今にもタールが垂れてきそうな夜空の下で、私は目当ての建物を見上げた。
 建設途中の高層ビルだ。傍には合成ガソリン車が何台か打ち捨てられている。ナノ・ハザード
が続いた影響で、欧州では全面禁止となった代物だ。
 ここまでの街路と同じく、周囲に人気はない。
 正面入口の大きなガラス――のまだ叩き割られていない部分――では、けばけばしいスプレ
ーの落書きが下卑た毒を吐いている。
 
 
 曰く「リリムのあそこは縦割れ? 横割れ?」、
 曰く「タイターニアなんてこわくない」、
 曰く「しみつ情報:我らがヴラドはドールジャンキーだ!」、
 そしてお定まりの、『人間戦線』のシンボルマークである翼の生えた二重螺旋。
 
 
 初めて訪れた者ならゴーストタウンだと勘違いしかねない。
 それでも住人はいる。最下等の犯罪者と最低の変質者と最悪の魔物。ろくでなしと人でなし
を市民の勘定にいれるならばだ。
 
 中国風の長い裾と、ゆったりとした袖口が夜風に揺らぐ。
 私が身につけているのは深い青色のコートだ。ほとんど黒に近い。この界隈には相応しくな
い上物だった。
 半顔を覆う金髪と、もう半分の相貌こそそうだと、我が夫ヴィクター・バイロンなら評してくれる
だろうか。二百年近く変わっていない私の若々しさは、ごく客観的な見地に依ればまず美人の
部類に入る。――自惚れは抜きでだ。
 
 綺麗すぎて冷たいのさと吐き捨てた男も過去にはいた。別れ際の台詞だったが。
 現在の夫であるヴィクターはそこが良いと言ってくれる。私にはそれで十分だった。
 
 
 私はビルの入口――という名のガラスに開いた大穴――へと歩を進めた。
 この建物の何処かにいる人形を殺す。それが今夜の私の仕事だった。
 再殺(リマーダー)だ。
 
 
 壊すのではなく殺す。
 間違ってはいない。言葉の使い方は時代によって変わる。
 十代半ばで転化≠オ、原子レベルで人から自動人形(オートマータ)へと変貌する少女達
――デッドガールなどという存在が大手を振ってまかり通る現代では、そんな言い回しでも通
用してしまうものだった。
 

78 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/24(月) 23:45:24
>> 続き
 
 私に上からの指令を伝えたのは、どこぞの研究機関から出向してきた女性科学者だった。
 
 数日前、ソーホーにある彼女専用のラボでの事だ。見かけは温血者(ウォーム)だが、冷た
い美貌通りの年齢でもなさそうなそのユダヤ人の女博士(アーヴィングと名乗った)は、実験
体を逃した自分の不始末は棚に上げて「さっさと始末して来て頂戴」と尊大な口調でのたまっ
たものである。
 
 
 私は『ラ・ソシエテ』と呼ばれる組織の一員だ。所謂吸血鬼が主催する秘密結社である。
 人間社会の陰に潜み、それなりの代価または暴力を支払って闇の領土を保有する。幾つ
もある似たような組織の一つに過ぎない。
 
 当然、構成員たる私もまたヴァンパイアだ。
 もっとも吸血鬼≠ニいうのは口さがない人間の謂いで、我々自身は血族(コグニート)と
称しているが。
 これでも芳紀二百と一歳、長生者(エルダー)と呼ばれる存在である。まあ、真に年経た
(エルダー)連中達からすれば、駆け出し(ニューボーン)もいい所だろうけれど。
 
 
 『ラ・ソシエテ』も含め、こうした闇の中で跋扈する組織同士が張り巡らしている蜘蛛の巣
は、昨今その複雑さを極端に増している。そこかしこで利害と面子が抵触し、調整と談合が
行われ、人間非人間を問わず様々な血が流される。
 最終的には何処かしらの落としどころに収まるのが常だ。
 それは当然だろう。誰を相方としようが共倒れを望む莫迦はいない。
 
 結局上の方では、揉め事を起こしかけた連中との取引を成立させたらしい。
 そこに至る政治的力学については、私のよく知る所ではない。
 ――と、無関心を決め込んでいた私だったが、そうも言っていられなくなった。
 
 此処――倫敦はゼロ番地区では表だって動けない者達に代わり、速やかに処理を行える。
無駄に事を荒立てず、余計な殺しも食餌もしない。
 求められていたのはそういう人材で、動ける者の中ではこの私が適任だったのだ。面倒こ
の上ない事に。
 

79 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/24(月) 23:46:36
>> 続き
 
 『実験』の概要と、そこから逃亡した被献体については、プロジェクトの主要メンバーである
高慢ちきな女史が嬉々として説明してくれた。
 半分は聞き流した。
 うちの組織も出資者の一人とは言え、別段そんな事情に興味はなかった。脳味噌も臓器も
弄くり回され、薬物とナノマシン漬けにされたくるみ割り人形の仕様を知った所で、特に楽しい
事はない。その人形が作られた経緯も同様だ。
 
 吸血鬼渦にドール渦、ファージ・パンデミック。戦争と平和の狭間にある、また別の顔をした
戦争と平和。
 確かに世はかまびすしい。しかし、少しばかり節回しを異にしただけの滅びの歌など、何時
の時代でも奏でられているものだった。日々耳にして二世紀も経てば慣れてしまう。
 
 
 静かに石を刻むような靴音が、だだっ広い空間の隅々まで反響する。
 私はビルの一階ホールに足を踏み入れた。ろくな明かりもないが、血族の視力には何ら問
題はない。
 足音も気配も消そうと思えば消せるが、今する必要はなかった。寧ろ必要だった。
 
 被献体を掻っ攫った相手――新時代のお仲間(コグニート)に、私という引き取り手が来た
事を教えねばならなかったから。
 

80 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/24(月) 23:52:00
小ネタだが、アーヴィング博士@木島日記はナチ絡みの秘密機関の異端学者だ。
同原作者の多重人格探偵サイコにも「御恵てう」の名で同一人物が登場している。
(この時はバイオ技術で外見は若いままだ)。
 
と、いう感じで上げてみた。
一階に入ってきた所までだが如何だろう。何か問題があったら訂正するわ。
ああ、そちらの修正はゆっくりやって欲しい。
 
しかし、久々にこういう事をすると中々手間取ってしまうな。まだまだ功夫が至らない。
 

81 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/26(水) 22:42:06
あ。
見直すと>>79の最後で、一階ホールはかなり暗いような描写をしてしまったが、これは不味い?
確かヴァイオレットは暗視能力がない筈だから、何か差し障りがあるかもしれない。
 
そこまで真っ暗闇というつもりはなかったけど、一応修正しようか?
 

82 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/27(木) 18:00:32

 二日休日に働いたはずなのに代休が半日以下のプリマヴェラよ。もらえただけラッキー
かしらね。まあ、とりあえず完全復調よ。

 それはともかく、何とか導入が完成したわ。おかしいわね半分の長さにするつもりが倍
の長さになっているわ。

 そちらの>77>78へのレスは今日の夜に返すわ。少し出かけなくちゃいけないから席をは
ずすけど、9時ぐらいまでには返そうと思うわ。

>ブルースキャンベル
 サイバーパンクといえばやっぱりダサカッコよさよね。というわけでライダーマンのほ
うにしたの。


>1階の明かり
 そのままでいいわ。こっちのレスで明かりをつけるから。


 どうでもいい話だけれどウルトラヴァイオレットの小説版だとラスボスの枢機卿は人間
なのよ。強さはあのままで。
 悪趣味な刀を持った実戦経験のほとんど無いただの人間(理由無く吸血鬼よりも強い)
に手負いにさせられるヴァイオレット。……微妙よね。

 さらにどうでもいいはなしだけれど、CobrayM-11/9じゃなくてMAC11なのはわざとよ。


83 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/08/27(木) 21:04:18
>>

 階段を下りながら1階フロアの電灯をつける。顔を合わせるだけならばこの光量でもな
んとかなったが、今後の展開を考えると・・・・・・・・・・このままではいささか暗すぎた。

 一般的なファージとは違いヴァイオレットには暗視能力が無かった。彼女は軽度の光過
敏症だ。陽光に耐性がある反面、暗視能力などのファージとしての基本的な体質の一部を
失っていた。もっとも陽光に耐性があるという利点はこの街ではさして役に立たないのだが。

 階段を降りきるとそのまま足をすすめ、先に来ていた女の元へと向かう。10歩ほど離
れた距離で足を止め、女と相対する。ここが死線だと彼女の経験が理性に訴えていた。

 改めて女の姿をよく見た。美しい女だ。艶やかで長い金髪がそのかんばせを半ば隠して
はいるが、そこから覗くもう半分だけでもとても美しいことを充分に見て取れた。それこ
そ人形のように整った顔立ちをしていた。美しいのは顔立ちだけではない。その肌も透き
通るように白く決め細やかで生命力に溢れている。
 身につけた中国風の外套は見るからに上物で、この最悪のスラムからはあまりにも乖離
しすぎていた。

 その超然とした雰囲気に半ば気おされながらも、ヴァイオレットは口を開き、簡単な符
丁のやり取りで相手を確認した。間違い。彼女こそがマチコを引き取りに来たエルダーだ。

 この時点でヴァイオレットは一つ大きな誤りを犯していた。迂闊なことに―――いや、
不幸なことに、か―――この時点でもヴァイオレットは女の目的がマチコの回収だと思っ
ていたのだ。

「ファージのヴァイオレットです。本日はご足労いただきありがとうございます」

 この国における当世の共通語である英語で女に挨拶をする。本来ならば彼女の生まれ育っ
たコミュニティの共通言語であるタイ―ヒンディ語のほうが得意なのだが仕方ない。まあ、
英語でも支障は無いのだ。広東語と同じようにネイティブといってもいいレベルで話すこ
とができたのだから。

「用件は心得ています。ですか彼女を引き渡す前にひとつお聞きしたいことがあります。
恐れ入りますが教えて頂けますか」

 ヴァイオレットは相手の眼を見ながらゆっくりとした口調で話しかける。同時に相手が
行動に移るわずかな兆しも見逃さぬよう全神経を張り詰める。

 「ご存知でしょうが彼女には理性があります。彼女は廃棄人形ではありません。それを
ふまえたうえでの質問です」

 そこでヴァイオレットはつばを飲み込む。緊張のあまりのどがいがらっぽかった。

「彼女をどうなさるおつもりですか?」

 返答は予想してあった。もし不幸にして彼女の返答がヴァイオレットの予想通りならば。

84 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/27(木) 23:16:33
失礼、少し遅れた。
こちらの導入は貼ってきた。そちらの>>83をお願いする。
続きはすぐに取り掛かるから。
 
 
>枢機卿は人間
……きっと崩壊したリブリアからの亡命クラリックに、お座敷ガン=カタをせっせこ習ったに違いない。
そう補完でもしないとヴァイオレットが哀れだな。
 
>MAC11
ふむ、調べないと判らなかった(苦笑
流石にマニアックだな。
 

85 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/27(木) 23:56:58
 ごめんなさい。少し確認が遅れたわ。とりあえずこちらのレス張ってきたわ。
わたしの方は今日はもう寝るから、そちらのレスはゆっくり書いてちょうだい。

86 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/28(金) 00:16:33
>>85 プリマヴェラ
こちらも貼って来た。一触即発、という所か。
 
明日はもう少し早く来られると思うので、よろしく頼むわ。
 

87 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/28(金) 20:42:16
 書いてきたわ。火蓋はそっちから切ってくれると助かるわ。
 今夜は定期的に覗いているから、何か質問があったら遠慮なく言ってね。

>亡命クラリックに、お座敷ガン=カタ
 あー!そのネタもらったわ。ファージのヴァイオレットがガン=カタを使う理由をそれ
を脚色して使うことにするわ。

>MAC11
 コーラルマウンテンとエメラルドマウンテンの違いは許せても、Cz75の前期方と高貴方
の違いを間違えると許せないって人は結構いるのよ。そんなひとが文句をつけてきたとき
のための逃げをここで打っておいたの。まあ、わざわざ言ってくるとは思えないけどね。

 ……『専門家』は自分の専門分野について寛大になれないことが多いのよね。

>木島日記
 ロンギヌスの槍&南朝系の天皇とか人魚とか辺りは覚えているのだけど……。

88 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/28(金) 21:34:43
>>87 プリマヴェラ
今来た。
そちらのは確認したので、早急に続きを上げる。ご要望通り、こちらから襲いかかるとしよう。
 
 
>ヴァイオレットがガン=カタを使う理由
おや、使って貰えるとは光栄ね。
やはり「ガン=カタっぽい動き」ではなく「ガン=カタそのもの」の方が燃えるだろうし。
 
>ロンギヌスの槍&南朝系の天皇とか人魚とか
大体そんな感じ。後はムー大陸とか神隠しとかUFOがベントラベントラこんにちわとか。
列挙するだけで何という胡散臭さか。
まあ、今回の闘争には完璧に無関係だから問題ない。
 

89 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/28(金) 22:10:41
という訳で、書いてきた。匕首二本投げ。
小手調べだ、如何様にも捌いてくれ。
 

90 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/28(金) 22:35:03
 確認したわ。じゃあ私もレス書きに入るわね。

 そうそう、ヴァイオレットが使うのが「ガン=カタもどき」ではなく本物のガン=カタ
に変更になったから、どうやってあの動作を文章で表現しようかと苦心しているのだけど
なかなか納得のいくものが出来そうに無いのよね。悪いのだけど、気長に待ってちょうだ
い。何とか今日中に返したいと思っているのだけど。もし12時になっても返せなかった
ら、悪いけど明日にさせてもらうわ。どんなに遅くなっても明日には必ず返すから。

91 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/28(金) 22:44:31
>>90 プリマヴェラ
了解した。焦らず、ゆっくりやってくれ。
 
いやしかし「ガン=カタを文章で表現するとしたら」というのは私もちょっと考えてみた事は
あるけど、相当な難事であることは確かだ。
これはハードルを上げさせてしまったか……?
が、頑張れ。
 

92 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/29(土) 21:00:50
 とりあえずいまはこれが精一杯よ。全力で思案したから一応形にはなっていると思うわ。

 それと次のレスで以下の文を入れようと思うの。あなたが銃弾を回避しやすい理由をこ
ちらからも理由付けておこうと思って。今回のレスにはどうしても組み込む余裕がなかっ
たのよね。

†††

 華麗な死の舞を舞うヴァイオレットだったが、胸中は穏やかではなかった。顔には出さ
ぬようにしていたものの、苛立ちはじめていた。

 原因は2つある。一つはこれだけ撃っても今もってなお敵対者が健在なこと。こんなこ
とは今までなかった。そして、もう一つは短機関銃だ。

 購入したばかりの短機関銃は、どこかぎこちない動きで鉛弾をばら撒く。撃った瞬間わ
かった。この銃はデッドストックだ。つまり製造されてから一発も撃たれたことがないの
だ。ただの一発すら。新品同様といえば聞こえはよかったが、即応性を考えた場合、使い
込まれていない銃というのは具合が悪かった。充分な試射のされていない銃は当てになら
ない。動作はぎこちないものとなり集弾性が低くなる。現状では有効射は3発に1発程度か。

 だが止むを得ない。いまさら中断することなど出来ないのだ。

†††

93 名前:名無し子猫:2009/08/29(土) 22:34:41
>>92 プリマヴェラ
ガン=カタだな。
紛う事なき正調ガン=カタだった。
 
で、待たせた。書いてきた。
袖からしゅるしゅるじゃなくて普通に抜け、という声が聞こえるが。
まだ少しばかり斬り払いしているだけだ。次で接近させて貰おうか。
 
ああ、かわしやすい理由については了解。こちらも次レスに活かさせて貰うとする。
 

94 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/29(土) 22:35:49
失礼、>>93は私だ。

95 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/29(土) 23:55:51
 返したわ。どうぞ接近してちょうだい。そうしたら次は至近距離でのガン=カタに切り
替えるわ。

>袖からしゅるしゅる
 いいえ、これはロマンだから必須よ!袖口から飛び出し銃とか、袖口から刃物とか、ど
うやって取り出してるのかはからないけど、かっこいいからいいのよ。

96 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/30(日) 00:34:00
>>95 プリマヴェラ
返して来た。
五つ身分身もどきで斬りかかっている。技名は武侠小説っぽい嘘っこなので気にしないで。
次から接近戦か。

97 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/08/31(月) 21:16:34

 寝オチの挙句、盛大に遅くなってごめんなさい。
 われながら一日一レスすらも出来ないふがいなさが情けないわ。

 とりあえずイナバウアー・マトリックス避けからの超至近距離からの銃撃よ。軽くかわ
してちょうだい。今回はちょっと長くなったけど、次回からは短めに小気味よく返したいわね。

98 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/08/31(月) 22:41:39
>>97 プリマヴェラ
うむ、何も問題はない。
 
で、返して来たぞ。
ルパンダイブというと下品すぎるが、ワイヤーアクションっぽく真上から覆いかぶさり気味に
左右の連続斬りという……。
どうも返し難そうな手になってしまって済まないが、何とか捌いてくれ。
 
短く、小気味よく。確かに目指す所はそうだな。
中々至らないのが不甲斐ない。
 

99 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/01(火) 23:18:05
 短くとか小気味よくとか言った舌の根も乾かぬうちに、またこの長さだけれど反省しないわ。

 ワイヤーアクションにはワイヤーアクションよね。
 重力制御装置を使って、吹き抜けを通ってどんどん落下して行ってるわ。軽勁を使って
追いすがって距離を詰めるなり、はたまたいったん距離をとるなり好きにしていいわ。

100 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/02(水) 00:46:30
>>99 プリマヴェラ
ちょっと短くなったか。こ、心持ち。
しかし小気味よく返せなかったので、要反省なのは変わらず。
 
で、返したわ。
やはりロマンは必須ということで、ワイヤーアクションで壁走りしつつ距離を詰めんとしている。
 
それと済まないが、所用で明晩は恐らく来られない。
それ以降は問題ないが。申し訳ない。

101 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/03(木) 22:26:27

 長い、くどい、遅いの三重苦ね。もはや自分でもどうにも出来ないわ。
 それでも反省だけはしてるのよ。次につながらない反省だから無意味かもしれないけれど。

 というわけで、遅くなったけど返したわ。……目標の1日1レスが出来なかったわ。要反省ね。

 剣は最後の武器にとっておきたいから、捏造悪趣味クラリックガン2丁拳銃よ。元ネタ
は気にしないでちょうだい。

 そうそう。こっちもこんな調子だから、あなたも1日ぐらい来られないぐらいでそんな
に恐縮しないでちょうだい。そんなことしたら、わたしなんかなんど自刎しなくちゃいけ
ないか……考えるだけでも恐ろしいわ。

102 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/04(金) 00:32:47
>>101 プリマヴェラ
いや、ダーマプラスティックとクラリックガンについては、やはり筆を割くのが妥当と言うべき
だろう。そこもまた大事なロマンだ、ロマン。
 
で、返して来た。
駆け抜けざまに首狙いなので、上手く避けて欲しい。
 
 
レスの頻度については、そう言って貰えるとかえって恐縮だが。
 
しかし、ヴァドゴニア+リベリオン+ウルトラヴァイオレットを三身合体させた悪魔銃とは、
いい意味でひどすぎる。きみはじつにばかだな(褒め言葉で
 

103 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/04(金) 20:42:56
 単発の射撃だから、さくっとかわしてちょうだい。

 よくわかったわね。その通り、ヴェドゴニアよ。あの作品のいい意味で頭の悪い武器の
センスには惚れ惚れとするわ。

 これ以降は連続攻撃希望よ。一太刀一太刀に重みを置くのもいいけどスピード感を重視
したいから。……レスの速度は兎も角として。

 貴女の連続攻撃を避けたり、いなしたり、受けたり、弾いたり、斬られたり斬られたり
斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり
斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり
斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり
斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり
斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり
斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり斬られたり
しながら戦うわ。

 そうやってこれから先はどんどん負傷しながら戦うわ。基本スペックは同じ程度でも、
武についやした年月の差を見せ付けてちょうだい。

 決着までには凄いことになってそうだけど安心して。欠損が大きくなればなるほど強く
なるはずよ!シグルイ的には。

104 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/04(金) 23:25:26
>>103 プリマヴェラ
ようやく来られた。
では、お望み通りに連続斬りだ。妙な角書きがついているけど、華麗に捌いて貰いたいな。
 
うん、やはり血まみれはいいものだ。
私もいつモツをモロリするかという機会をうかがって、
ああいや何でもない。
 
 
実にどうでもいいが『無双八卦剣』は一応元ネタがある。
山田正紀の機神兵団に出てくる、青幇の殺し屋武術家が使う技だ。ほとんど名前だけだが。
 

105 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/05(土) 00:34:34

 見事な連撃ね。華麗にさばいてほしいという希望のところ悪いけど、泥臭くしかさばけな
かったわ。でも頑張ったから許してね。

 このまま後方へと下がりながら、次のターンにでもエレベーターに入り込みたいのだけれ
どいいかしら。ヴァイオレット的には狭い場所に入れば間合いの短い武器を持つ自分のほう
が有利になるという計算ね。

>無双八卦剣
 遺憾にして読んだことはないけど、機神兵団の名は聞いたことはあるわ。

>モツチラ
 じゃあわたしは「うどんだま」ぽろりで(以下略

 わるいけど今日はもう寝るわ。……例によって例のごとく明日もあさっても仕(以下略

106 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/05(土) 01:24:28
>>105 プリマヴェラ
いやいやいや。
これ以上ない捌きだった。流石、だ。
ああ、エレベーターに向かうのは了解。
芸のない回転斬りを仕掛けたから、後方へと追いやる一助になるかな?
 
……浮き世は辛いな。
無理はせぬように。
(哀しみを湛えた眼で送りながら)
 

107 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/06(日) 18:43:34

 ようやく帰宅&レスできたわ。少し仮眠を取るから2時間ほど外すわね。

 そうそう、出来れば追撃してきてちょうだい。満面の笑みで待ち構えているから。

108 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/06(日) 22:56:34
>>107 プリマヴェラ
ようやく参上。レスは了解した。
ちょっと確認だが、もうエレベーターの中に突入してしまって構わないかな?
それとも追撃するにとどめるか?
 

109 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/06(日) 23:13:30
>>108

 突入上等よ。なんなら、ガンガン攻撃を仕掛けてきてもかまわないわ。

 それと出来るだけ粘るけど、なかなか返事が無かったら寝堕ちたと思って好
きに書いてしまってかまわないわ。こちらであわせるから。

110 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/06(日) 23:32:24
>>109 プリマヴェラ
諸々、了解だ。
という事で、入室しつつサクサク突いてみた。適当に捌いてくれ。
 

111 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/07(月) 22:17:17

 派手に攻撃したわ。でも、「この程度でわたしの技を封じたつもりか!」ぐらいの勢い
でもっと激しく返して欲しいわ。

 そろそろヴァイオレットも片手と片目が余分に感じていると思うのよ。
(人形は邪悪な笑みでそうのたまった!)

112 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/08(火) 00:08:30
>>111 プリマヴェラ
返したが、しかし。
天井と壁に刺した剣をみょんみょんしならせての斬撃、プラスいんちきカンフー連打という……。
普通に斬れよ! という声が聞こえ。
 
あ、今のところ無手だが、最終的にそちらの剣と撃ち合う用意はあるので。
 
ああ、では私もポロリの時間か。臓物のほう。
え? 違う?
 

113 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/08(火) 21:46:32

 もはや満身創痍ね。でもまだ頑張るわ。

 左手はまだつながっているわ。神経が切れているだけね。切断してもよかったけど、
このあとの剣戟のときに切れた神経をダーマプラスティックでバイパスして2刀流がや
りたかったからまだつながったままにしたわ。

 このあとはエレベータの外にでて最後の剣戟へと移りましょうか。

 モツポロはもうちょっと待ってちょうだい。ヴァイオレットも一緒にモツチラするから(え〜

114 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/08(火) 23:39:38
>>113 プリマヴェラ
こちらもそれなりのダメージでグロッキー中だ。
襲って来るのもよし、ちょっと距離を取るのもよし。
ん――手榴弾は爆発させてしまったが、大丈夫だったか?
 
 
そうか、二人はグロコア! だな。
こう、はみ出た腸と腸を繋げてハートマークを(やりません
 

115 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/09(水) 21:14:37

>二人はグロコア
 マックスハート(心臓)といいつつ心臓をえぐり出すのね!


 ……冗談はさておき、手榴弾は爆発させてしまって大丈夫よ。

 今回は小説版設定の薬物投与をつかったわ。といっても外見に変化は無いのだけれど、
気迫はましてるわ。

 ヴァイオレットは剣をさげて仁王立ちになっている状態ね。好きに攻撃してきてちょうだい。

116 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/09(水) 23:36:28
>>115 プリマヴェラ
>マックスハート(心臓)
成る程、フレッシュグロコア! とはモツが新鮮っていう含みで、
……どの筋からかは判らないが、そろそろ怒られそうなので止す。
 
 
で、了解だ。
やはりカウンターは綺麗に貰ってこそ互いの華だな。
さっくり迎撃してくれ。その後、こちらも最後に向けての気力を振り絞ろうか。

117 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/10(木) 00:14:58

 今日は筆が走っているから30分で返そうと思ったけど、40分かかったわ。

 一足先にポロリの準備は済ませたわ。臓物的な意味で。

 導入の時点から死亡フラグたちまくりのヴァイオレットだけど、ついに大きいのをもらっ
てしまったわ。うふふふふ。

 そろそろ決着ね。遣り残したネタはある?あったら付き合うわよ。

118 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/10(木) 23:12:57
>>117 プリマヴェラ
むむむ、昨夜の内に電撃戦で返されていたとは不覚だ。
 
さてと、純然たるおっぱいポロリだ、と言い張っておこう。
以前の悪魔城御前試合のアンケートで、武蔵がマリアの乳を切り落としたのかと勘違いして
むーざんむーざん……などとのたまった誰かがいたな。
このネタを拝借した事、感謝しなければな。
 
で、こちらも土壇場の気迫アップだ。因みに「死域」ネタは北方水滸伝から。
 
 
さて決着に向けてだが、有り難い事に私の方はやり残した事はないよ。
状況次第で如何様にも動けるとは思うが、どう締めるかな。
 

119 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/11(金) 22:27:38

 回転斬りを放ったわ。ヴァイオレットの攻撃はこれでおしまいの予定よ。

 こちらは命の最後のひとかけらまで燃焼しつくして死ぬ気満々なのだけれど、まああと
はそちらの要望しだいね。とりあえず好き勝手絶頂に返してちょうだい。わたしも全力で
合わせるから。

>武蔵×マリア
 あれも名闘争だったわね。目標にしている闘争のひとつよ。

120 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/11(金) 23:58:59
>>119 プリマヴェラ
来るのが遅れて済まないが、確認した。
一応こちらも最後の攻撃の予定だが、好き勝手絶頂も大概かつ、とどめ前提のネタなので、
念の為に先に札を見せておく。
 
実は五点掌爆心拳@KILL BILL Vol.2なんだが……。
(恐らく知っているのではないかと思うが、左胸の秘孔五つを衝いて五歩あるかせると、心臓が
 破裂して死亡に至るという必殺技)
相撃ち気味に放とうと思っているが、構わないか?
 

121 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/12(土) 07:42:49

 返事が遅くなってごめんなさいね。

>五点掌爆心拳@KILL BILL Vol.2
 それでおっけーよ。思う存分やってちょうだい。
 相打ち気味がよくて、かつ回転切りでは合わせづらいようだったら、回転斬りを適当に
回避してくれればこちらも最後の一撃を改めて放つけどね。
 【重力制御装置を抜き手で腹に突きこんで最大出力で作動>空に落ちていく】とか。

 いまから出かけるけど、今日は12時間後には戻ってきていると思うから重ねて質問が
あればその時にでも返すわ。

122 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/12(土) 21:12:22
>>121 プリマヴェラ
こちらこそ、手間を取らせてしまって済まないな。
いや、回転斬り自体はかえって非常に助かる感じなので、これで行かせて貰いたい。
 
で、書いてきた。
――い、色々と済まん!
 

123 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/12(土) 22:19:13

 確認したわ。

―――やるわね。さすがよ。

 こちらも、いい感じの死に際を考えるので少し待っていて。
 ダサカッコいい路線でいくにしろ、シリアス路線でいくにしろ、1時間以内には返すわ。



 ……「あべし」とか「ひでぶ」とかはさすがにあれかしら。

124 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/12(土) 23:20:06

 さあ、返したわよ。何とか約束の1時間以内は守れたかしら。

 あえて描写はしていないけど、ヴァイオレットは腹から飛び出した血と臓物の海に沈み
こむような感じで前のめりに倒れているわ。

125 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/12(土) 23:25:00
>>124 プリマヴェラ
くっ、格好いいな。
すぐ上のネタまみれのレスが恥ずかしくなるぞ。
 
了解した、私も死ぬので、ちょっと待ってくれ。最後くらい三十分以内に反したい所だが。

126 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/12(土) 23:51:52
そして果たせず。不覚だ。
 
さて、私からつけ加える事はないので、後はそちらのエピローグかな。
 

127 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/13(日) 00:00:54

 お美事!お美事にござりまする!!

 というわけで確認したわ。素晴しい〆だったわ。


 それでエピローグなのだけれど、

マチコ(ステーシー)の歌声→それに近づいていく何者かの足音→END

みたいな形で締めてしまっていいかしら。

128 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/13(日) 00:06:07
>>127 プリマヴェラ
ありがとう。
一見百合エンドのようでいて、しかし実は男絡みエンドという、その筋の人を怒らせるような締めに
なってしまった……と余韻を台無しにしてみよう。
 
うむ、何の問題もないと思う。足音の主は、無情なロメロどもかな?
何かこちらで必要なレスがあったら言ってくれ。

129 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/13(日) 00:15:03

 ヴァイオレットも元亭主ネタを持って来るべきだったかしら?でも元亭主は再婚してて
子供までいるのよね。小説版の設定だと。

 それはさておき、それじゃあ、その方向でおしまいにしましょうか。

 結構あいまいな形で終わらせるから、そちらのレスは特に不要よ。ゆっくりとしていて
ちょうだい。

 足跡の主は本文中ではあえて語らぬ方向でいくわ。でも中間報告のポイント加算は無情
に記されるから、そのあたりから読み取ることも可能よね。

 明日は朝の5時ごろからちょっと出かけるので今日はいったん落ちるわ。それでも9時
までには帰る予定だから、午前中には〆に出来ると思うわ。

 レス版まとめは最後のレス後にわたしがやっておくわね。


 さて、ひとあし早いけど御礼を言わせてもらうわね。

 あなたには本当に世話になったわね。いろいろとわたしの至らない部分を助けてもらっ
たわ。特にわたしのレスの遅さでは何度迷惑をかけたことかしら。ごめんなさいね。あな
たのおかげで素晴しい闘争が出来たと思うの。ありがとう。

 また機会があったらそのときはよろしく頼むわね!

130 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/13(日) 00:24:52
>>129 プリマヴェラ
ああ、ポイント加算ネタがあったか。フフ、中々にえぐい。
諸々了解だ。レス番まとめについても、手数だがお願いする。
明日の締めを楽しみにしておこう。急がず、納得のいくものにしてくれ。
 
こちらこそ、長丁場のお付き合いに感謝だ。
ありがとう。
こういうダンスは久しぶりだったから、どうも対手の足をふんずけたり、一人で舞い上がったり
してしまったのでは……と反省しているんだが。
 
では、一先ず失礼。
 

131 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/13(日) 15:29:54

 最後の最後でこの有様。言い訳はしないわ。ごめんなさいね。

 ようやく書けたわ。レス番まとめもしておいたわ。これで本当におしまいね。

 付き合ってくれてありがとう。楽しかったわ。銃撃剣戟のガッチガッチのガチ闘争だっ
たけど、あなたのおかげで単調にならずに済んだわ。すごく感謝してるわ。

 あなたのレスは絶妙だったわ。反省することなんて無いわよ!むしろわたしの方が精進
が必要ね。

 最後にもう一度だけお礼を言わせてもらうわ。あなたのおかげで最高の出来になったと
思うわ。一緒に踊ってくれてありがとう!また違う相手で合間見えることもあると思うか
らそのときはよろしくね。

132 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2009/09/13(日) 18:45:40
>>131 プリマヴェラ
遅ればせながら確認。
うつくしゅうて、やがてかなしき――という風韻が、実にそちら好みだな。
いい。とても。
 
改めて、お疲れ様。
そちらの雰囲気たっぷりなレスに飲み込まれまいと、何とか踏ん張ってみたのだけど。そちら
も愉しんで貰えたのなら、それに過ぎたるはない。
私も愉しかったよ。重ねて感謝する。
 
またいずれ別の顔、別の場所でまみえる時まで、では再見。
 

133 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/13(日) 19:44:53

>ヴィルマ・ファキーリ
 ではまたいつか会うときまで。再見!

>ミスタ・ブロムヘッド
 「闇が呼ぶ」は確認したわ。あなたの能力は典型的な悪魔召喚師デビルサモナーと判断すれば良いわけね。
戦闘シーンが無かったから戦闘方法がいまひとつ思い浮かばないのだけれど、召喚した悪
魔の力を利用するといった方向でいいのよね。

 こちらのキャラはリガルドで行くわ。導入は一週間ぐらいでざっと書いてみるから、修
正した方がいいところがあったらそれから教えてちょうだい。

 あと、要望があったらいつでもいってね。最大限考慮するわ。

134 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/14(月) 02:05:41
>>133
まずはお疲れ様ですな、さて

どちらかというと悪魔召喚も一つの手段にすぎませんな。
その他には怪しげな呪物を使ったり、闇が呼ぶでもやったように名前で相手を支配したりするのがこちらの芸です。

具体的な戦法としては「滅びの右手」の方で使役した悪魔をぶつけたり、呪物で呪ったり、
逃げたり命乞いしたり、最後の悪あがきで蛇の怪物になったりを考えております。
また作中でナチが旧支配者の力を利用した謎ビーム銃を開発したりしておりますので
0番街で出回ってるとか何とかこじつけて使うやも知れませんな。
しかし、ヘルボーイだけでもサイボーグ・グール軍団とか、ヘルボーイ計画とか、吸血鬼軍団とか、旧支配者復活とか
本当にナチは逞しい連中ですな。気にしたら負けだと思いますが。

要望等は今のところ一つだけ、最初に獅子王が名乗るの遠慮願いしたい。
最初から獅子王の真の名をこちらが知っているのは少し問題あるかと思いますので。ああ偽名なら問題ありませんが。


では、こんなところで。

135 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/18(金) 22:06:08

導入がなかなか書き上げられなくてごめんなさい。
明日中には必ず導入をあげるのでもう少し待っていてちょうだい。

136 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/19(土) 19:48:01
了解いたしましたぞ。
どのみちこちらの方も今週は動けなかっただろうと思われるので気にせずに。

137 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:14:23

 荒いけど何とか流れだけは出来たわ。以下が超暫定版の導入よ。
 明日中にはブラッシュアップを図るわ。

138 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:14:56






第3話『HELP! / 』





.

139 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:19:39
>>

―――どこで間違えてしまったのだろうか。

 憔悴しきった彼女は、椅子に縛り付けられ器具で頭を固定され、開眼器でまぶたを開い
たままにされ、ぼろ雑巾寸前にまで追い詰められた彼女は、もう何度目かになるその疑問
を思い浮かべる。

 一言で言えば相手を過小評価しすぎてしまったのがまずかったのだろう。その傲慢さが
ここまで彼女を追い込むことになってしまったのだ。

 取材が困難であればあるほどにやる気が出るのが彼女の性分だった。だからいままで危
険な眼には幾度と無くあってきた。だが、ここまで最悪なものにはいまだかつてあったこ
とがなかった。

 椅子に縛り付けられ食事などもう何日も与えられていない。2日に一度の水だけが彼女
の口にしているすべてだった。身につけた服はもう何日も変えておらず油染みていた。排
泄もそのままの垂れ流しだ。最も大便のほうは我慢できているため、におうのはアンモニ
ア臭さだけだ。

 だがそんなことも気にならぬほどの匂いと汚れが彼女の身体には染み付いていた。すっ
ぱい匂い。あまりにも酷い刺激臭。胸元にしみた酷い汚れから臭ってきていた。それは何
度も繰り返し嘔吐した跡だ。嘔吐したものがさらに腐り酷い悪臭を放っているのだ。

 広い部屋の中にはインスマンス面の男たちで満ちていた。男たちはドミノをとりか組む
ように輪になっていた。そして食い入るように汚れてはいるものの起伏に富んだドミノの
身体を見つめていた。

 下種な視線を惜しみなく注ぐ男ども。そのなかでドミノの正面に当たる位置には、一人
だけ毛色の違う眼鏡をかけた色男が高そうな椅子に腰掛けていた。男の瞳に浮かぶのは劣
情ではなく、ぞっとするような加虐性だ。他者を玩具として認識しているヒトデナシの視
線だ。インスマンス面の男たちと比べると男はいわばより上等な下種野郎だった。

140 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:19:59
>>

 扉が開き一人の少女が連れ込まれた。

 少女が部屋の中に引きずってこられる。かわいらしいドレスを着ているが、それが脚引
きのためのものだと知っているドミノには無邪気にほめることはできない。少女はドミノ
をかくまっていた子供たちのうちの一人だ。少女には拷問は加えられていなかったのだろ
う、顔色は悪くやつれてこそいたが眼に見えるような傷も憔悴もみられなかった。

手かせ足かせをつけられているうえに口枷までつけられているために少女は動きづらそう
だった。首輪から伸びた鎖を引くずられ少女は部屋の中央にある『台』のそばまでつれて
こられた。ドミノから3mと離れていない距離。

「大」の字型になった台の上に少女は改めて拘束される。連れてきた男の手によってドレ
スと下着が破り捨てられるが、いやらしい目で見つめるものはいない。やつらは女に興味
があっても少女には興味が無い。それだけがやつらの美徳だった。

 もっとも興味が無いのは少女だけではない。どんなに美しくても石女には興味が無い。
やつらを駆り立てるのは性欲ではない。生殖本能だ。子を成すことにかける強迫観念的だ。

 一糸まとわぬ姿で拘束された少女は油性マジックで身体中にグリッドを引かれる。黒い
格子が白い肌の上に書き記されていく。

 いまではそれが何なのかをドミノは嫌というほど理解していた。

「ではミズ・ドミノ、もう一度聞きます。あなたがこの取材で知った内容のすべてとその
情報源、そしてそれを伝えた相手をすべて教えてください」

 眼鏡をかけた色男が言う。この組織のナンバー2。この場にいる中でただ一人まともな
人間の顔をしていた。むしろかなりの美形といっていいほどだ。

「知ってることはもう全部いったわ」

 ガラガラになった声でドミノは言う。嘘ではなかった。情報源の秘匿というジャーナリ
ストとして最低限の仁義まで守れぬほどに彼女は追い詰められていた。だが彼女のその悲
痛な言葉に対する男の返答はあまりにも無常だった。

「信じられません」

 男は笑顔でそういい棄てると、気障ったらしく指を鳴らし、インスマンス面太刀がひし
めく人ごみの向こう側へと声をかけた。

141 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:20:14
>>

 ドミノには、これから何が起こるかはすぐにわかった。彼女でもう五人目だからだ。思
わず瞳を閉ざそうとするがそれは叶わない。目を背けることはできない。そのための開眼
器だ。

 ひときわ体格の良い男がインスマンス面たちの中から姿を現す。その手には電動式の回
転鋸が握られていた。

 少女はそれを見ると拘束された身体を揺さぶり激しく暴れだす。彼女もまたこれからど
うされるのかを知っているのだ。

 男はゆったりとした動作で少女の脇へと歩み寄ると、ナンバー2へと会釈をしてから手
にした回転の気切りのスイッチを入れた。

 回転鋸の刃が甲高い音をたてる。

 その音に煽られるようにして、人ごみの熱気が加速度を増していく。ナンバー2の男の
顔に浮かぶサディスティクな笑み。

 刃が少女の身体へと近づけられていく。回転する刃が少女の身体に記された線へと近づ
けられていく。

 油性マジックで引かれた線。それは切り取り線だった。この線に沿って今から少女は解
体されるのだ。

 眼を極限まで見開き、食い入るように刃を見つめる少女。その瞳からは涙がとめどなく
溢れ出す。自分でも何を言っているのかわからない絶叫を上げるドミノ。悲痛な叫び。だ
が刃は止まらない。

 そして回転鋸が少女の身体へと押し付けられ、口枷ごしの絶叫が響き渡った。

142 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:21:44

>>

「くだらんトラブルが発生した」

 ローズウッドの机の向こうで、疲れたように女がいう。

 黒い女だった。

 レースのふんだんに使われたハイネックのドレスも、肘までをぴたりと覆う長手袋も、
ガータベルトで吊られた薄手のタイツも、足首までのアンクルブーツも、つばの広い帽子
も、そこからたらしたベールも、すべてが闇のような漆黒だった。ただその肌の色だけが
幽鬼のように白い。

 女はほとんど肌を露出していなかった。見えているのは、ほっそりとした首筋から形の
いい顎にかけての一部分のみだ。薄手のベール一枚にもかかわらず、女の顔は見えなかっ
た。輪郭だけは見て取れるのだが、その目鼻だちはぼんやりとして見ることができない。
おそらく怪しげな魔法によるものなのだろう。なにせ彼女は少なく見積もってもアデプト
級の魔術師だった。

 女は彼の上司だ。そして『こちら側』へ彼を引きずり込んだ張本人でも合った。

 その女と向かい合う彼も黒づくめの格好をしていた。ビッグブルーのドレスコードに即
したダークスーツ。ブルネットの髪に白い肌、そこだけは目の前の女と同じだった。

 かれは特徴の無い男だった。中肉中背の男で、顔立ちは整っているといえば整っている
が、あっさりとしていて印象は薄く、特徴といえる特長は無い。そう、この姿のうちは。

 女の言葉にリガルドは無言で先を促す。

143 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:22:14

>>

「0番地区にある人形の工場は覚えているな。あれをかぎまわっているマスコミがいたが、
我々が雇っている現地の組織の連中が拘束した」

 そこまではよかったのだが、と女は頬杖を付きながら言う。

「連中のボスがそのリポータを気に入ってしまってな、自分のものにしたらしい」

「またですか」

 呆れたようにリガルド。

「そう。また、だ。これだから半魚人どもは」

 空いている左手を伸ばし、机に立てかけた細身の剣(レピア)をもてあそびながら女は
言う。鍔元に刻まれた八方へ伸びる矢印の紋章が不思議と目を引いた。

「役に立っているから酔狂も見逃してやっていたが、こう何度もと来てはさすがに目に余
る。処分してきてくれ。一人も残す必要は無い」

 苛立たしげに女はいうと、高そうな椅子に身を預けのけぞるように天井を仰ぐ。

「我々が直接手を下してしまっていいのですか?」

 リガルドはやや疑念を含んだ声でそうたずねた。ゼロ番地区は不可侵領域だ。ビッグブ
ルーの社員であるリガルドが直接手を下すのはまずいはずだ。

「構わない。やつらの本家に当たる組織とは話が付いている。……それに『我々』はここ
では外様だ。上の連中は何かあった場合は我々を切り捨てて終わりにするつもりだろう」

 肩をすくめ、さほど興味なさげな様子で女は言うと書類を何枚かリガルドへと放ってよこす。

「必要ないかも試練が資料だ。一応眼を通しておいてくれ。それとお前の剣が研ぎあがっ
ている。出る前に備品課にいって受け取ってくれ。受取書もその中に入っている」

 中身をその場でざっと確認し、一礼をして出て行こうとしたリガルドを女は呼び止める。

「お前がこの世界に来てからもう1年になるが不満という不満を聞いた覚えが無い。今回
だってそうだ。帰ったばかりで仕事を言いつけても、文句一つ言わずすぐに従い取り掛か
ろうとする。何か文句とか要望とかは無いのか?」

「もう一度チャンスを与える代わりに言う事を聞く。そういう約束でしたから」

「律儀だな。甦らせたとたんにこちらの喉笛を掻き切ろうとしたり、機を見て逃げ出そう
とするものも多いのだがな」

 顔を覆うベールの端からちらりと覗いた形のいい唇を歪め、自嘲するかのような声色で
女は言う。その唇にひかれたべにの色までもが黒かった。

 女は首にかけていた八方へ伸びる矢印をかたどったネックレスを外すとリガルドへ放っ
てよこす。

「護符(ボーナス)だ。気休め程度の効果しかないがな。……相手は腐っても深海の眷属
だ。くれぐれも気をつけるようにな、獅子王」

「有難うございます。ですがその名前で呼ぶのはやめていただけませんか。気恥ずかしい
もので」

 リガルドはそう言うときびすを返し部屋を出て行った。

 部屋を一歩出ればそこにあるのは無機質な廊下だ。等間隔で並んだ蛍光灯。同じデザイ
ンのとびらが並び、その広大さもあってまるで無限ループに紛れ込んだような印象さえ抱
かせる。

 ここはビッグブルーの倫敦支社、その本部ビルだった。
 そして、総務部9課のトラブル処理係。それが今の彼に与えられた仕事だった。

144 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:23:03

>>

「物品の受領に来た」

 装備課の女にそう伝えると、奥から体格の良い大男がリガルドの提示した書類に書かれ
た物品を運んできた。大剣が一振りと投げナイフが10本ほど。

 それはクレイモアと呼ばれる類の剣だった。両手剣にしては珍しく打撃を与えることを
目的としたものではなく、切れ味を第一の目的としたものだ。考え方としては日本の刀に
近いものが合った。

 差し出された剣を受け取り鞘を払う。刀身には波打つような、年輪のような複雑な模様
が浮き出ていた。抗不死(アンチアンデット)処理されたダマスカスブレードだ。

 素晴らしい剣だった。強度、軽さやバランス、切れ味、使い勝手のよさは申し分ない。
以前使っていた剣よりも使いやすいぐらいだった。あの剣は頑強さは並ぶものが無いが、
必要以上に重過ぎた。それにしてもこれほどの差異があることからも解かるように、名前
こそ同一のものだが、こちらとあちらのクレイモアは似て非なる剣のようだ。

 蛍光灯の明かりに刀身を映し刃の具合を眼で確認した。見事に研ぎあがっていた。うま
く寝刃あわせしてある。これならばよく斬れそうだ。人もそれ以外のモノも。

 しばらく手の内で具合を確かめると大剣を鞘に収め、ついで投げナイフの具合を調べる。
こちらは抗不死処理したチタンブレード。とはいっても打ち抜き式の大量生産品のためダ
マスカスブレードとは比べるまでもないが、使い捨てとしては上等な部類だ。

「いつも刃物ばかりですが、銃は使わないんですか?」

 眼鏡をかけた備品課の女が言う。

「まだ不死者相手には使いこなせるレベルに達していない」

 にこりともせずリガルドは言う。そのリガルドに、女とは別の方向から声がかけられた。

「過度な能力を持つと最適化が遅れるというやつですな」

 声のしたほうに目を向ければ、眼鏡をかけた男が張り付いたような笑みを浮かべながら
近付いてくる。
「お久しぶりですね。半年ほどになりますか?」

 その問いにリガルドは曖昧に頷く。部署が違うためあまりよく知らない相手だ。腕利き
だということは耳に入っていたが、さほど興味のある相手でもなかった。

「リガルドさんはお近くで仕事のようですね。うらやましい話です。わたしのほうは国外
ですよ。やれやれ、またどんな汚れ仕事をさせられるのか」

 男はそういって黒いトランクケースを受け取るとエレベータに乗って下へと降りていった。

 男が去っていくとリガルドはサスペンダーを使って投げナイフを身につけ改めて上着を
羽織る。姿見に身体を映しおかしなところが無いことを確認する。仕上げに狩猟用のライ
フルケースのようにも見える専用のケースを使って剣を肩に担ぐと、彼は仕事へと向かっ
ていった。

145 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:24:18

>>

 乱雑につみあがったメディアと編集機器。その中に埋もれるようにして添えつけられた
小ぶりな応接セット。そこに二人の男が向かい合って座っていた。一人は小柄な痩せ型の
男。もう一人も小柄だがこちらは小太りだった。コーヒーの湯気を挟んで向き合った二人
のうち、やせたほうの男が口を開いた。

「こんな場所で申し訳ありません。会議室ででもお会いするのが筋だとは思ったのですが、
今回の件はわたしの裁量の範囲内で行なっていますので、あまりおおっぴらにはできない
のです」

 言い訳するようにそういうと、男は簡単に自己紹介を済ませた。通称、Λ(ラムダ)。
彼はまだ20代前半ながらディレクターを務めるやり手だった。

「一刻を争う事態ですので、前置き話で本題に入らせていただきます。うちのレポーター
がゼロ番地区で消息を立ちました。彼女を探し出してください。そしてもし彼女が危険な
状況にあるようでしたら救い出してください。お願いします」

 Λはそういうと深々と頭を下げる。

「手がかりになりそうなものは始めに貴方にお渡しした資料の中に入っていますが、その
中で最も可能性の高そうなものを軽く説明させていただきます。最近倫敦で頻発している
子供の誘拐事件はご存知ですね?彼女が追っていたのはその件なのですが、その過程であ
る組織がその誘拐に係わっているかもしれないということをかぎ当てたのです。その組織
というのがどうやらビッグブルーの系列の企業のようで、具体的にどう使うのかは解かり
ませんか新型の電気式自動人形の開発の為にその子供たちを利用しているようなのです。
その工場が法の眼の及ばぬゼロ番地区内にあることを突き止めたリポータは、極秘に潜入
取材を試みたようなのですが……それ以来連絡が取れません。おそらくその工場と契約を
結んでいる現地の組織に身柄を拘束されたのではないかと思うのですが、詳細は不明です。
お願いします。どうか彼女を救い出してください。」


146 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/19(土) 23:28:08

以上。先にも言ったけどかなり荒いので本番までには修正するわ。

このあとは3パターンが考えられるわね。
1・リガルドが先に到着
2・あなたが先に到着
3・同時に到着


1の場合は深きものどもは全滅しているわ。
2の場合は深きものどもの相手はそちらにお任せするわ。
3の場合は……どうしようかしらね。

147 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/20(日) 00:48:43
>>146
そうですな、こちらとしてはA案を希望します。
折角モブがいるなら利用したいと思いますので。

決定かどうかはおいて置くとして
一旦20日の夜までにこちらの導入の草案を書いてみます。

148 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/20(日) 17:51:16

じゃあその方向で進めましょ。

 深きものどものギャングは、ボスと大多数を占める構成員がインスマス系の半魚人で、
ナンバー2(宵闇眩燈草紙が元ねた)が大王イカで、その他少数がその他の水棲動物
(セイウチとか、カピパラとか、イセエビとか、ホタテとか、ナマコとか、ヒラメとか、
インバーティブリット系の改造人間とか@俺の足には鰓がある)のつもりだったのだけれ
ど、やりやすいように好きに設定しなおしてしまっていいわ。

149 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/21(月) 00:35:27
ブロムヘッド導入案


72時間前 英国某所

薄闇の中、大きな椅子に腰掛て男は客が来るのを待っていた。
仄かに燃える蝋燭の灯が男の姿を少しだけ映し出す。
その僅かな明かりの中でさえはっきりと分かる邪悪な顔は、男がこれまで重ねてきた悪事の証。
禿げ上がった頭に奇妙な口ひげ。そして醜悪に歪み肥った身体は男が重ねてきた堕落の証。

「イゴール・ブロムヘッド。」
地獄のそこから聞こえてきたようなしわがれた声が辺りに響く。
何者かが、背後から初めにいた男の名を呼んだ。
ブロムヘッドが振り返ると、いつの間に現われたのか、暗がりと静寂の中で一人の老人が佇んでいた。
杖をついてはいるが、その姿に弱弱しさなど微塵もなく、峻厳な顔に刻まれた
無数の深いシワの数だけ死線を潜り抜けてきたような尋常ならざる気配をもつ老人であった。
常であればブロムヘッドは跪いて老人を迎えただろうが、今は椅子から立とうともしない。

「ご機嫌麗しゅう、公爵殿。お待ちしておりました。」
「挨拶などよい。何が望みだ、ブロムヘッド。何故ワシを呼んだ?」
「お呼びした理由は他でもない、私の部下を返してもらいたくてね。」

ブロムヘッドの言葉に、老公爵は首をかしげる。
その所作の一つ一つにさえ、まるで刃のような鋭さがあった。
そしてその鋭さに空気までもが影響をうけたのか、二人の男がいる場そのものが
きりりと音を立てて軋んでいく。一触即発とはこの事である。

「お前の部下だと?何のことだ。」
「忘れたのかね、貴殿が琥珀の中に閉じ込めた悪魔だよ、公爵」
「何故、私がこれをお前にやらねばらんのだ?」

老公爵は懐から拳大の琥珀を取り出していた。
蝋燭の火をうけて黄金色に輝くそれの中心には、一匹の蝿の姿がある。

「何故なら私はその悪魔と契約を交わし、その主となったからだ。
 さらに今や私は貴殿と同輩、兄弟も同然の身。貴殿は彼の地の公爵であり、私は吸血鬼の王となった。」
「……いいだろう、イゴール・ブロムヘッド。受け取るがいい。しかし憶えておけ。
 その力は他者より奪いし物であると。そして我から悪魔を受け取った事を。努々忘れるな。」
「忘れぬとも、アスタロト公」

150 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/21(月) 00:36:32
>>


3時間前 ネットテレビ局DT1オフィス

Λと名乗る男からブロムヘッドは0番地区での捜索依頼を受けていた。
理由は単純。ブロムヘッドという男は金と権力が好きなのだ。そして出来る事ならば名声も得たい。
金と一緒にマスコミに良い印象を与えられるのならこのような依頼を受けるのも悪くない。
ついでに同業者や他の化け物共にも自身の力をアピールできるだろう。
ブロムヘッドにとって見返りは十分といえた。

説明が終わり、Λが深々と頭を下げるとブロムヘッドはわざとらしく溜息を吐いた。

「0番地区。厄介ですな。ジャーナリストは秘密を暴くのが仕事とは言え
 つついてはいけない闇もあるものですよ。無論ベストは尽くして、その女性をリポーターを探してみますが
 生死の保証は出来かねますな。女性の死体を持ち帰っても私を責める事なきよう、お願いしますぞ。

 もっとも――――必要であれば蘇らさせる事もできますが。」

そこでブロムヘッドは机に置かれたコーヒーを飲み干した。
胃に流し込んでみたものの、その黒い液体は微塵も美味くない。
今のブロムヘッドにとって、体を巡る赤い液体に比べたらこんなものは泥水も同然だった。



現在 0番地区

薄汚れた建物の前にたどり着くと、ブロムヘッドは懐から"栄光の手"と呼ばれる燭台を取り出した。

いくら吸血鬼へと生まれ変わったといっても、正面から乗り込んでは多勢に無勢である。
そこでこの呪物の出番だ。

これは元々は本当に人の腕であり、絞首刑になった罪人の腕を切り取り、血を抜いて秘薬と共に
蝋に漬け込んで屍蝋へと変じたものであり。正しく使えば火の灯っている間建物中の全ての鍵を開け
住人を金縛りにするという盗人の呪物であり、ブロムヘッドという男を象徴するような呪物であった。

「さて、行こうか」

ブロムヘッドは"栄光の手"に火を灯すと、使い魔である二匹の猛禽を従え
深き者共の巣に乗り込んでいった。

151 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/21(月) 00:48:27
と、ここから突入ですな。後半が荒いのが気になりますな。要修正。

栄光の手は
雑魚→行動不能
それなりに強い→行動に制限
強い→無効

といったところでしょうか。


深き者共は…基本インスマスでいくつもりですが、甲殻類は飛び出すかも知れませんな。

152 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/23(水) 08:32:25
時間がかかって申し訳ない、本日の夜までにはあげるようにいたします。

153 名前:プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A :2009/09/23(水) 09:19:04

 こちらこそごめんなさい。ようやく確認できたわ。

 この連休はずっと仕事で軟禁状態だったの。そして今日もこれからまた仕事よ。

  それでも21時ぐらいには帰ってこれるよう努力するから。
 導入レスの修正は今日かせめて明日中には済ませるわ。本当は今日中にでも済ませたいの
だけれど、明日は4時から仕事だから……。

 だからあなたもゆっくりやってちょうだい。

154 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/24(木) 00:09:59
むう、ここはお言葉に甘えよう、こちらも続きは明日上げるようにします。
連休も仕事が増えるだけで嫌になりますな。ミス・ボビンスキもあまり無理はせずに。

155 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/24(木) 23:52:38
>>150修正

3時間前 ネットテレビ局DT1オフィス

Λと名乗る男からブロムヘッドは0番地区での捜索依頼を受けていた。
理由は単純。ブロムヘッドという男は金と権力が好きなのだ。そして出来る事ならば名声も得たい。
金と一緒にマスコミに良い印象を与えられるのならこのような依頼を受けるのも悪くない。
ついでに同業者や他の化け物共にも自身の力をアピールできるだろう。
ブロムヘッドにとって見返りは十分といえた。

説明が終わり、Λが深々と頭を下げるとブロムヘッドはわざとらしく溜息を吐いた。

「0番地区。厄介ですな。ジャーナリストは秘密を暴くのが仕事とは言え
 つついてはいけない闇もあるものですよ。無論ベストは尽くして、その女性をリポーターを探してみますが
 生死の保証は出来かねますな。女性の死体を持ち帰っても私を責める事なきよう、お願いしますぞ。

 もっとも――――必要であれば蘇らさせる事もできますが。」

そこでブロムヘッドは机に置かれたコーヒーを飲み干した。
胃に流し込んでみたものの、その黒い液体は微塵も美味くない。
今のブロムヘッドにとって、体を巡る赤い液体に比べたらこんなものは泥水も同然だった。



現在 0番地区

薄汚れた建物の前にたどり着くと、ブロムヘッドは懐から"栄光の手"と呼ばれる燭台を取り出した。
絞首刑になった罪人の腕を切り取り、血を抜いて秘薬と共に蝋に漬け込んで屍蝋へと変じたこの呪物は
火の灯っている間、建物中の全ての鍵を開け、住人を金縛りにするという呪物である。

このような盗人の呪法はブロムヘッドという男を象徴するような業であった。

「さて、行こうか」

"栄光の手"に火を灯し、使い魔である人面の猛禽を二匹従え、深き者どもの巣の扉を開けた。
中から濃密な潮の香りとともに、ねっとりと湿った空気がブロムヘッドを出迎えてくれた。
ブツブツと不満をこぼしながら一行は中へと侵入していった。

156 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/24(木) 23:58:39
>>155

囚われのドミノが初めに感じた異変は自身の体の硬直だった。
辛うじて呼吸が出来るだけで、瞬きするのも難しい。
極度の緊張とストレスにさらされ続けた身体が、致命的な精神的ダメージによって麻痺を引き起こしてしまったのか?
あるいはこれも自分をとり囲む下卑た化け物どもの、地獄めいた魔術による悪戯だろうか?

答えはそのどちらでもなかった。
いつの間にか深き者どもの不快な囁き声は部屋の中から消えていた。
ドミノが苦労して眼球を動かして部屋を見渡すと、深き者どもでさえも彫刻のように硬直している事に気がついた。
例外はこの組織のまとめ役らしき眼鏡の色男だけのようだ。
苦々しげにあごに手を当てて空を睨めていたが、やがて何か思い立ったのか素早く椅子から立ち上がると
その優男風の顔には不釣合いなしかめ面で部屋をでていった。

しばらくの間、建物全体がしんと静まり返っていた。
金縛りという新たな恐怖の中、ドミノの五感は異常に研ぎ澄まされ、敏感になっていく。
とりわけ聴覚が過敏になっていた。
同じく硬直していた深き者どもの僅かな呼吸音や自分の心臓が脈打つ音を聞こえるまでになった時
どこか遠くの部屋でカシャンと何かが砕ける音をドミノは聴いた。

続いてバンと何かが床に叩きつけられた音が響いた。
ガラガラと何かが音を立てて崩れていった。
パキン、カラカラと今度はガラスの割れる音が聞こえてきた。
音はどんどん近づいてくる。
隣の部屋でギャァと何かが叫んだ。
そしてその刹那、衝撃と共に血まみれとなった眼鏡の色男が、扉を破って倒れこんできた。
フラフラと立ち上がると眼鏡の男は獰猛に叫んだ。
「貴様、我々に何をしたッ」

「簡単な事だよ、お前達はルルイエの館に横たわる神の手の者だろう?
 だから私は、我が魔力によってお前達を縛り、かの神と覇を競った黄衣の王の名と、それらよりも旧き神の印によって
 身を守っているのだよ。もはや貴様らに対抗する手立てはない。大人しくしていろ。」

狂い叫ぶ深き者どもの視線の先から、奇妙な燭台を手にした小太りが現われた。
深き者の猛獣のような咆哮にも一歩も引かず、嫌味ったらしい顔で淡々と言葉を綴っていく。

「ギギ…貴様ッ…」
「遅いわ。」

眼鏡の男が飛びかかろうと跳躍の構えを見せたが、その手が禿げ上がった頭の魔術師に触れる事はなかった。
深き者が突っ込むよりも速く、猛禽の爪が深き者の首から胴を切り離していた。

「地獄の支配者たちによろしく言っておいてくれ。ブロムヘッドによって殺されたとな。」

首と泣き別れた胴体から勢いよく吹き出る血の匂いを嗅いで闖入者―――イゴール・ブロムヘッドは顔をしかめ
「中身までこうにおうとはね。酷い匂いだ。とてもではないが啜る気にもなれん。」と一人ごちた。

「さて人質は無事か。よろしい。では彼女を運んで引き上げですな。容易い依頼よ。」

157 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/25(金) 00:01:10
ここまでで深き者共を突破(但し動けないだけで生きているのも多数)ミス・ドミノを奪取と。

こちらのターンはこのような形でで如何だろうか?

158 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/28(月) 13:39:00

 遺憾ながら体調を崩し入院することになりました。
 早ければ2週間、遅くても一月かからず退院できる予定ですので、大変申し訳ありませ
んが戻ってくるまでレスを待っていただけませんでしょうか。
 
 こちらから募集をかけておきながらこのようなことになってしまい申し訳ありませんで
した。復帰しだいレスは必ず返しますのでどうか待っていてください。お願いします。

159 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/09/28(月) 13:39:33

 追記。リガルドは深きものども&ドミノを殺すことが目的となるため、ドミノのことは
発見しだい最優先でころそうとします。戦闘の際はどこかに隠しておいてもらえると幸い
です。あえておとりにするのもありですが。

160 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/09/28(月) 20:01:33
了解致しました。
体調を崩しては元も子もない、こちらは待っておりますので
どうか無理をなさらずお大事に。

161 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/11/04(水) 13:45:37
なんとか生還しましたが、体力の大幅な低下によりしばらくレスできそうにありません。
もう少しだけお待ちください。

162 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/11/06(金) 20:39:56
承知。ゆっくりと養生してくだされ。

163 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:09:05

>>

 そこは老朽化したアパートだった。
 テムズを見下ろす位置に立てられた湿っぽいアパート。隙間風が絶えず吹き込む、シロ
アリに食い尽くされたボロボロのアパート。手入れなど長らくされていないのだろう。黒
いカビがべったりと壁を覆い、天井は長年の汚れで酷い有様だ。窓ガラスもひび割れ、長
い年月をかけて積もった土埃が層をつくっていた。その排煙と土埃に汚れた窓のすぐ外に
は、テムズを挟んで『南倫敦(ノーマンズランド)』を見下ろすことができた。

 このアパートが建っているのは貧困層の暮らす地区だ。北側では最も治安の悪い場所に
位置していた。とうぜん入居しているものもそれに見合った層の住人となる。

 そしてこの部屋の住人も、例に漏れずそのなかの一人だった。

 足を踏み入れた薄暗い部屋の中には一人の男がいた。
 このアパートと同様に疲れ果てボロボロの有様の男だった。
 身につけているダークスーツはかつては上等な代物であったのだろうが、いまではくた
びれ皺だらけだ。幾日も着替えていないことが伺えるシャツも襟元が黄色く汚れ果ててい
た。髪もふけと皮脂によって汚らしくもつれている。

 男は逃亡者だった。罪を犯し、追われ、幾日も幾日も逃げ続けてきたが、ついにはこう
して追い詰められることになった。ここが彼の終着駅だ。

164 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:09:18
>>

 男はじめじめとしたかび臭い、油染みたベッドに腰掛けうつむいていた。両手は太腿の
間に挟まれ、そこにはコルトの .45口径が握られていた。安全装置は外されハンマーは起
きていたが、引き金に指はかかっていない。

 男は酷くアルコール臭かった。いや、この部屋自体がアルコール臭いのだ。理由は明快
だった。男の足元には飲み棄てられた蒸留酒のボトルが幾本も転がっていた。それを見れ
ばこの部屋に充満した濃密なアルコールの匂いも納得がいくというものだ。

 男は緩慢な動作で顔を上げ、部屋に踏み込んだ【獅子】をみる。その顔は白髪まじりの
無精ひげに覆われ、眼は血走り澱んでいた。

「おまえか」

 男はそういうと、かぶりをふりしみだらけの天井を見上げた。

「【ピュグマリオン(ミスタ・ウォレス)】あたりが来ると思ってたんだがな。
……一体どういうつもりなんだ?」

 その質問に【獅子】はただ鋭い眼差しで答える。

 男の質問はもっともだったが答えてやる義務はなかった。なにせ彼はもはや部外者、
それどころか敵なのだから。

 男はビッグブルーのエージェンとのひとりだった。【獅子】の元同僚で同じ部署だっ
た。班は別だが何度か一緒に共同戦線を張ったこともあった。電情戦の専門家である男
のサポートは的確で、現代戦に不慣れな【獅子】にとっては有難かったものだ。

 男の言う【ピュグマリオン】も同僚のひとりで、男と同じく電情戦の専門家だ。

 男の疑問は「電情戦の専門家を相手にする時には、電情戦の専門家を当てる」という
定石(マニュアル)から生じていた。なにせ【獅子】はケータイを使うのですらやっと
の有様なのだから、定石に従えばまともな人選とはいえなかったのだ。

165 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:09:33
>>

「……まあいいさ。きっちり終わらせてくれるんなら誰だっていい」

 疲れ果てた声でそういうと、男は室内をぐるりと見回した。そして【獅子】にしっかり
と顔を向け、とうとうと語りだした。

「ようこそ俺のセーフハウスへ。他人を入れるのは初めてだが……初めてがお前みたいな
野郎なんて色気の無い話だな。どうせなら【刀使い(ブレードランナー)】みたいなかわ
いい嬢ちゃんを招待したかったよ」

 自嘲するようなかすかな笑み。

「実はな、ここはオレの生まれた場所なんだよ。お袋はそこのカビだらけのシャワールー
ムで一人でオレを産み落としたんだ」

 顎をしゃくり、暗くじめじめとしたひび割れたユニットバスを指し示す。悪臭の漂う酷
いシャワールーム。いや、むしろこんなボロアパートの部屋にトイレとシャワーがついて
いること事態を驚くべきか。

「ひでぇだろ。そう、こんなくそったれな場所でオレは生まれたんだよ。ガキの頃はいつ
かこんな肥溜めから這い出してやるってそんなことばかり考えていたっけな」

 声に含まれる苛立たしそうなさびしそうなそれでいてどこか懐かしむような響き。
 それらを振り切るように大きくかぶりを振ると男は盛大なため息をつく。

「だが、結局はここに戻ってきちまった。そう、もどってきちまったんだ。結局、オレは
こんな場所で生まれ、こんな場所で死ぬのか……!」

166 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:09:53
>>

 拳銃を持つ男の手が、男の全身が震える。手にもった銃も激しく震えた。もし引き金に
指をかけてあったならば暴発してしまったことだろう。

――――――だがそんなことよりも。

 鋭い眼差しで【獅子】はうつむいたままの男を見つめ、口を開く。

「長々とした身の上話をするのは自由だが、もし時間稼ぎをしてナナイト(ナノマシン)
が効くのを待っているのなら無駄だ。私の身体は外部からの異物を選択して取り込むこと
ができる」

 男の震えが止まった。男はゆっくりと顔を上げる。その顔に浮かぶのは激怒の表情。男
は憎しみのこもった眼差しで【獅子】を睨む。

「くそったれ。そうならそうと早く言いやがれ」

 男は電情戦の専門家だったが対象に「侵入」するための手段としてナナイトを用いるこ
とが多かった。男はもともとナナイトのほうが本来の専門なのだ。ナナイトを用いたハッ
キングは機械や人形相手だけではなく人間にも効果を及ぼすことができたのだ。


167 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:10:20
>>

 金属を添加した超伝導球状炭素分子(ナナイト)が生物の体内に侵入すると血中を通っ
て標的とした場所に到着する。そこは人造や肝臓などの臓器のこともあるが、男のような
ハッカーが標的とするのは大抵の場合ニューロンやシナプス結合部だ。血管に入り込み脳
血液関門を通り抜けそこに定着し寄生したナナイトは化学物質を合成しニューロンを制御、
結果として脳と言うシステムに侵入するのだ。脳を完全に掌握するのには手間も時間もか
かるが、相手に特定の条件反射を植え付けたり、短期記憶を消したり、精神状態に作用す
る程度のことならば5分もかからなかった。

 きっとこの部屋の入り口にでも通り抜けたものにナナイトを吹き付けるようなエアロゾ
ルスプレーでも仕掛けてあるのだろう。万が一にでも自分は感染しないように、自分はハ
ンターナナイト(アンチウイルス)の予防接種をしておいて。

 まあなんにせよわざわざ長ったらしいひとり語りをやったのに狙いが外れてご苦労なこ
とだった。男がナナイトの専門家であることは、いままでの付き合いや会社のデータベー
スで判明していた。ならば対策をしないでやってくるのは愚かなことだ。手の内さえわかっ
ていれば対策を立てられないわけがないのだから。

 【獅子】が男を処分するための執行人として選ばれた最大の理由は、かくのごとくナナ
イトが効かないということだった。電情戦の専門家にその分野の素人を当てるなどという
定石外しをするのも、こうした考えがあってのことだ。理由なくそんなことはするわけが
ない。

「流石に考えもなしに送り込まれたわけじゃないか。まあ、そうだろうよ。だが……」

 男は見上げたセルフコントロールで激昂を抑えると、安全装置をかけてから手にした銃
をベッドの上に放り投げた。この距離で【獅子】相手に銃で挑むのは自殺行為だというこ
とをよく理解していたのだ。

 そして男は改めて【獅子】に顔を向け笑みを形作った。自嘲ではなく自信に満ちた余裕
の笑み。同時に男は自分の体内に埋め込まれた不活性状態にあったあるナナイトを起動(トリガー)。

 活性化したナナイトは爆発的に増殖し――――――男の肉体は迅速にして劇的な変化を遂げる。


168 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:10:35

>>

 全身の骨格筋肉が成長し体躯はゆうに2まわりは大きく膨張している。それは鍛え上げ
られたボディビルダーと、北国の覇者たるグリズリーを掛け合わせたかのような筋肉質で
力強い肉体。熊手のように巨大な両手の指からは刃のように鋭い鈎爪が伸び、見る者を震
え上がらせる。だが何よりも恐ろしいのはその顔だ。牛に似たその顔には蚯蚓腫れのよう
な筋が幾本ものたうち、皮膚はケロイドのような異様な質感にかがやいていた。こめかみ
からは羊のようにねじくれた角が生え、瞳は瞳孔の細長い猫のようだ。変わり果てた容姿
の中で、歯だけは人のそれであるのがあまりにも気味悪くおぞましい。

 その変身にはライカンスロープたちのような自然さは微塵も無かった。人狼や人虎のよ
うな優美さは欠片もなかった。あまりにも不自然で禍々しかった。変身と呼べる代物では
なかった。ならば<異形化>とでも呼ぶべきだろうか。もしこの光景を目の前で見た【獅子】
に男の変身をなんと呼ぶべきかと聞いたならばこう答えたかもしれない。「覚醒」と。

「ナナイトは他人に使うばかりが能じゃないんだぜ」

 発声器官が大幅に変形しているため聞き取りづらい声で男が言う。どうやら理性までは
飛んでいないようだ。

 これが男の切り札だった。【獅子】はみた事がなかったし、ほかの同僚も見たことはな
かった。目撃者の生じる状況では使用せず、みたものは確実に殺し、当然報告もしていな
かったため会社のデータベースにも存在しない。当人以外は誰一人として知ることはない
正真正銘男の切り札だ。

 男は変わり果てた顔に余裕の笑みを浮かべると、威嚇するように長くのびた鋭い爪を顔
の前に掲げた。全長30センチほどもある長く鋭い超硬度の刃だ。

 【獅子】はその威嚇にも表情を変えること無く腰に佩いていた剣を抜いた。愛用の大剣
ではない。切っ先の備わった大振りな鉈のような短く肉厚のある刃だ。刀身がやや内反り
になっており、引っ掛けて切断するのに適した造型となっていた。室内での戦闘を想定し、
取り回しのしやすい得物を用意してきたのだ。それは【獅子】のために特別にあつらえら
れた代物で、9mmもの肉厚の刃をもつ対化物用の斬首刀(ギロチン)だった。

 抜刀した【獅子】を眼にし男も戦闘体制に移行する。男は膝を曲げ両足の筋肉に力が込
められる。極限まで圧縮されたバネ。爆発的な威力を誇るブースター。

 それに対し【獅子】は右手に斬首刀をさげたまま無造作に足を踏み出した。
 
 一歩、二歩、そして運命の三歩目。同時に男が跳躍。両手の鈎爪を振りかざし、【獅子】
めがけて襲いかって来た。

169 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:10:45
>>




 結局のところ、その戦いはほんの数秒で片がついた。


170 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:11:25
††


>>

「早かったじゃないか」

 アパートから少し離れた場所に停めておいたセダンに乗り込んだ【獅子】を陽気な声が
出迎える。

 後部座席には先客がいた。【獅子】と同じくダークスーツを着込んだ男だ。ただし、そ
の男はスーツの上に漆黒の毛皮のコートを纏い、顔にはエナメルでコーティングされたガ
スマスクをかぶっていた。マスクの眼窩には真っ黒な遮光レンズがはめ込まれ、表情は一
切うかがえない。

 男の言葉に一瞥で答えると、【獅子】は手にしたアルミケースを無言で渡した。マスク
の男は受け取ったアルミケースの腹に手を当て、小声で何事かつぶやく。そして、「確かに」
とうなずいた。

「ご苦労さん。流石に手際がいいな。出してくれ」

 言葉の後半は運転席にいるもう一人の男へと向けられたものだ。もうひとりの男は、け
だるそうな雰囲気をのぞけば特徴といえる特徴の無い人物だった。中肉中背で顔立ちもあっ
さりしていた。しいて特徴を挙げるとすれば、東洋人だということぐらいか。彼もまたダー
クスーツに身を包んでいた。

 声をかけられた運転席の男は小さく頷くと車を静かに発進させた。後部座席にいるマス
クの男が【案山子】で、運転席の東洋人の男が【木こり】。今回【獅子】のバックアップ
をつとめた二人の同僚だ。

 走り出した車の中【案山子】はアルミケースを足元に置くと、脇に置いてあった紙袋を
持ち上げ中から紙に包まれた塊をとりだした。それを【獅子】へと差し出してくる。

「ほらよ。待ってる間に買ってきたんだ」

 それはまだ温かいミートパイだった。勝手に持ち場を離れたのかと厳しい眼差しで【獅子】
が睨む。

171 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:11:36
>>

「そんな顔するなって。大丈夫だよ。オレも【木こり】も持ち場は離れてねえって。使い
魔をやらせたんだ」

 そういうと【案山子】はポケットからスマートフォンを取り出し親指と人差し指でつま
んで軽く振って見せた。それは倫敦の研究所(ラボ)が開発した最新式の情報端末を【獅子】
たちのボスが改造し、さらに【案山子】が独自に手を加えたものだった。現在市場に出回っ
ているあらゆる製品よりも数段高性能だが、この端末の真価はそんなところではない。

 真に価値があるのはインストールされたプログラムだ。悪魔召喚プログラム。かつて極
東の島国で若き天才が開発したとも南極で未知なる存在より人類に伝えられたともいわれ
る御業。この端末にはそのプログラムが搭載されていた。

 情報化された「仲魔」が本体のメモリに数体、本社のサーバに数百も保存されており必
要に応じて呼びさすことができた。まだまだ問題が多く不安定だが、完成され量産されれ
ば歴史の流れすら変えうる代物だった。

 【案山子】は先週この端末とプログラムを手に入れたばかりだった。とてもうずうずし
ている。さながら新しい玩具を手に入れた子供のようにはしゃいでいた。使いたくて仕方
ないのだ。

「いきのいいフレッシュゴーレムが手に入ったからためしに使いに行かせてみたんだよ。
珈琲もあるぜ。今日は朝からメシ抜きだっただろ。」

 そういって紙袋の中からさらに蓋付きの紙コップに入った珈琲を取り出し【獅子】へと
押し付けてきた。そして【案山子】は自分の分もとりだすとガスマスクを少しだけ上にず
らして口元を露出させるとミートパイにかじりつく。

 【獅子】は両手に珈琲とパイを持ったまま運転席の男に視線を向けた。【木こり】はルー
ムミラーごしに【獅子】をみると自分はもう食べたとけだるそうに言う。

 【獅子】はあきらめたかのように、もしくはあきれ果てたかのようにため息をつくと、
まだ温かいミートパイにかぶりついた。巷で評判のフリート街にあるミセス・ラヴェット
のパイ屋のミートパイに。

172 名前:◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:12:11

>>

 テムズ河畔。廃棄された倉庫の立ち並ぶ一角。人気は無い。
 見下ろせば黒く濁ったテムズの水が、轟々と音をたて流れている。
 
 廃墟と化した倉庫外に黒塗りのセダンが乗り入れてきた。徐々に速度を落しそのまま停
車する。

 後部座席から二人の男がすばやく降り立った。【獅子】と【案山子】。IBMのMIB。
いつでも車を出せるように【木こり】は運転席に座ったままだ。

「うおっ寒!なんだよこの寒さは!!あんたは、そんな薄着で寒くないのか?……ああ、
そうだったな。そういや寒くないんだったな。うらやましいぜホント。オレなんかこう寒
くっちゃ中から一歩も出たくないね」

 車から出るや否や【案山子】はそういって大げさに身体を震わせて見せた。わざとらし
すぎだが確かに気温は低かった。一昨日からロンドンを襲っている大寒波のせいで罪都は
凍えるように寒かったのだ。

 当初はあのまま本社に帰る予定だったのだが、急な予定変更があり【獅子】たちはこん
なところに来る羽目になっていた。ボスの【黒後家蜘蛛(オランダ人)】から【刀使い
(ブレードランナー)】を途中で拾ってくるようにとの命令があったのだ。

 「ったくあのアマ、仕事はもう終わったんだろ?だったら早く来いよ何してんだ!」

 5分ほどそうして待っていたが一向に現れない【刀使い(ブレードランナー)】に
【案山子】が苛立ちを募らせる。

 しばらくそうしてぶつぶつ文句を言っていた【案山子】だったが、突然空を仰ぎ大声
を上げた。

「ぼーんとぅーきる!」

 ついに狂ったか?いや元からだ。獅子と木こりがサイドウインドゥ越しに顔を見合わせた。

 【案山子】はボンネットの上へ飛び乗ると腰をかがめ、【獅子】と【木こり】へ交互に
顔を向けながらべらべらと話し始めた。

「知ってるか?キューブリックがあのベトナム映画を撮ったのはこの辺りなんだぜ」


173 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2009/12/13(日) 23:20:50

 ものすごい待たせてすまないね。本当にすまない。
 ようやくだけど、何とか復帰したよ。

導入β版

>>163>>164>>165>>166>>167>>168>>169
>>170>>171>>172

 ここまででだいたい3分の1。残りの3分の2は週末までにはなんとか頑張りたいと
思っているんだけどね。最悪でももう3分の1ぐらいは。何せここまでの文じゃ、
VS ブロムヘッド の導入に届いていないからね。せめてもう3分の1進めば肝心の本文に
入れる予定だから、せめてそこまでは今週中に……。

174 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2009/12/20(日) 22:54:54
本気ですみません。あと何日か待ってください。
休みが本気でないんだ。なにせ今年はもう休みがないという有様なんだ。
いや、そもそも今月は初めから休みなんて無かったんだけどね……。

それでもちまちま書いているから。さすがに23日は夕方には帰れると思うしね。
だからもう少しだけ待ってください。すみません。

175 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2009/12/21(月) 00:05:32
レスしようとした矢先、先制レス…貴様見ているなッ!(モニターに向かって)

問題ありません、こっちも休みがないので今年中はいろいろと厳しいと言おうと思っていたところです。

176 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/08(金) 22:14:17
>>

「あの映画は前半は最高だが後半はクソ退屈だ。ナム行ってからよりもイカレタくそデブ
と戯れてた頃のほうがよっぽど面白れえ。シャイニングはおおむね成功したが最後の最後
がよくわからん。2001年宇宙の旅も同じだな。いやあれははじめからよくわからなかっ
たか?凄さだけは伝わってきたけどな。時計仕掛けのオレンジは前半と最後はいいがそれ
に至るまでの後半がいまひとつだ。バリー・リンドンは所々は輝いているがトータルでみる
とちょい残念だ」

「何が言いたい?」

「イヤー、映画ッテ本当ニイイモノデスネ……じゃなくってな。何事もはじめが肝心てこ
とさ。はじめさえきちんとやれば途中や最後がまずくてもなんとかなっちまうものなんだ
よ。逆に言やぁ、初めが駄目なら後がよくてもいまひとつなモンさ。そうだろう? 」

 そんなことを言うためにわざわざ映画の話を持ち出したのか?素運思い出顔を見合わせ
る【木こり】と【獅子】をよそに、案山子は首を振りつつ先を続けた。

「だってのにあのクソ尼はいっつも初めがだめなんだ。今日だってこんなに遅れていやが
るし、初めにあったときなんか問答無用で斬りつけてきやがったんだぜ?初対面で気に入
らなかったヤツは、いつまで経ってもいけすかねぇ」

 その現場は【木こり】もみていたが、あれは確かに酷かった。案山子にも3割程度は非
があるが、状況を確認せずにさしたる脅威と判断できる状況にはなかった案山子を斬殺し
ようとしたのはあきらかにやりすぎだった。くそったれな交戦規定のある軍ならば査問に
かけられてもてもおかしくは無かった。

177 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/08(金) 22:14:42
>>

「まあ、本人のいねぇところでこんなこと言っていても意味はないよな」

 【案山子】はそう吐き棄てボンネットからとびおりる。気分屋の【案山子】は行動もこ
ろころ変わった。以前から解かっていたことだが、彼は肝心な何かが完璧に破綻していた。

「映画といえばあの有名な監督が捕まったんだがしってるか?餓鬼をヤッちまって何十年
も海外逃亡してたヤツなんだが。あの事件じゃフランス人は監督をかばう発言をしてるや
つが多いんだぜ。フランス人は才能がある芸術家は優遇されて然るべきって考えがあるか
らな。昔から。あの有名作家が盗みを働いた時みたいにな。その点アメリカ人はシンプル
だ。たとえ天才あろうと裁くときは裁く。いくら文化的な功績を挙げているからって例外
じゃない。単純で素朴で野蛮で気取ってないぶん好感が持てるね」

「どうでもいいが後できちんと掃除をしろよ。しかし、本当にお前は映画の話ばかりだな。
そんなに好きなら映画関係の仕事につけばよかっただろうに」

「趣味と仕事は別の話さ。やりたい事とできる事もな。お前だって殺しが好きだからこの
仕事をしてるわけじゃないんだろ。俺たちの同僚には人を殺すのが好きで好きでしかたねぇ
破綻者は確かにいるがお前らは違う。そんな雰囲気じゃない。だったら何のために戦って
るんだ?」

「15で軍に入った。それから12年間ずっと軍にいた。いまとなっては他に出来ることが
無い。何をやればいいかもわからない。何がやりたいのかすらわからない」

 つまらなそうに【木こり】が答える。

「成り行きだ」

 心の中で【木こり】に共感しながら【獅子】は答える。

「人生を選べ。仕事を選べ。キャリアを選べ。家族を選べ。大型テレビを選べ。洗濯機を
選べ。車を選べ、CDプレーヤーを選べ・・・ジャンクフードを頬張りながら、くだんねえ
クイズ番組をカウチに座りながら見ることを選べ。腐った体をさらすだけの、出来損ない
のガキどもにも疎まれる惨めな老後を選べ。未来を選べ。人生を選べ。―――だが選べる
人生なんてどこにあるんだ?つまりはまあそういうことだよな」

 そういって【案山子】は大きく肩をすくめた。

178 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/08(金) 22:15:08
>>

「あのアマ、ようやくきたぜ」

 嫌そうな声で【案山子】がそういう。
 倉庫と倉庫の間の通路から一人の女がこちらに向かって歩いてくるところだった。会社
の備品である漆黒のトレンチコートを着込み足元は学生のようにローファーを履いている。

【刀使い(ブレードランナー)】。彼女もまた同僚の一人だ。

 膝ほどまである長い黒髪が特徴的な東洋人の女だ。おそらく日本人。彼女はまだ10代
半ばほどの少女だった。その顔立ちは整ってはいるが目つきが鋭く全体的にきつい。

「おせぇよ。それにおまえ、【招かれざる客(アリス)】と一緒じゃなかったのか?」

 【異邦人(アリス)】、ビッグブルーの3枚ある鬼札の一人。
 童話「アリス」の登場人物は一人を除いてデッドガールズの通り名になっていた。ただ
一人、主人公である【マレビト(アリス)】だけがその例外で、ビッグブルーのエージェ
ントが名乗っている。

「わざと遅れたわけじゃないわ。【オランダ人】から途中でもう一件仕事を済ませるよう
にいわれたのよ。【アリス】なら【オベロン(ピーター)】と一緒にターミナルに行った
わ。例の構造破壊の専門化が次の欧州横断急行で到着するんですって」

 能面のように表情を変えず冷たい声で彼女は言う。
 彼女は一見ドライでクールな印象を与えるが実際のところはかなり沸点が低い。そのた
め仲間内では案山子と同じ程度にのエキセントリックな人物としてみられていた。

「あー、あれ噂じゃなくて本当の話なのか?また例によって例のごとくただのホラだと思っ
てたぜ。にしてもわざわざ外部から専門家を呼ぶのか?こういうときこそ下請けども(PMSCs)
を使えばいいだろうに」

「うちの会社にしろその取引先にしろ直接手を下すのはまずいってことなんでしょ。その
点フリーランスならしらをきり通せばうやむやにできるから。……いまさらだけど」

「本当にいまさらだな。……それもよりによって【オベロン(ピーター)】と【アリス】?
あの既知外二人で行ったのか?まさに悪夢だな(イン・ナイトメア)」

 案山子が心底うんざりしたかのようにかぶりをふる。

「あのディスコミ二人にまともな出迎えができるわけねぇだろ!良くてすれ違って相手と
出会えないか、最悪相手と問答無用で戦争を始めるぞ!何でお前もついてかなかったんだ
よ。あの餓鬼の保護者はお前だろ!」

「勝手に保護者にしないでくれるかしら。それに心配しなくても途中で【ピュグマリオン
(ミスタ・ラッセル)】が合流する予定になってるわ」

 嫌そうな顔で【刀使い】が言う。

「【ピュグマリオン(ミスタ・ラッセル)】なら、しばらく旅に出ると3分ほど前にメール
があったばかりだが」

 木こりがぼんやりとした口調でそういった。獅子が傍によりウインドゥ越しにケータイ
の画面を覗き込むと確かにふざけた顔文字つきでそう書かれていた。

 場に沈黙が訪れた。みな押し黙りし気まずい雰囲気が訪れる。

「……まあなんとかなるでしょ」

 引き攣った顔で【刀使い】が言うが、なんとかなるわけがなかった。誰も動こうとしな
いのを見ると、仕方なく獅子は【オランダ人】に報告するため携帯電話をポケットから取
り出した。

179 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/08(金) 22:15:36
>>

 無機質な廊下がどこまでも続いていた。等間隔で並んだ蛍光灯。同じデザインのとびら
が並び、その広大さもあいまって、まるで無限ループに紛れ込んだような印象さえ抱かせる。

 その廊下を一人の男が歩いていた。ビッグブルーのドレスコードに即したダークスーツ
姿の男だ。特徴の無い男だった。中肉中背で、ありふれたブルネットの髪をしている。肌
は白いが病的なほどではない。顔立ちは整っているといえば整ってはいるが、あっさりと
していて印象は薄い。総じて特徴といえる特長が無かった。

 彼は獅子と呼ばれるビッグブルーのエージェントだ。あのあとほかのメンバーはオラン
ダ人の指示でアリスのフォローへと回ったが、獅子だけは会社へと呼び戻されたのだ。そ
うここはビッグブルーの倫敦支社、その本部ビルだった。

 目的地の扉の前まで来たところで、中から男が出てきた。頬にある刀傷がことさら眼を
引く男だった。彼は獅子のものと同じダークスーツの上からフェイクファーのたんまりつ
いた黒いコートを羽織っていた。厳密には服装規定違反だが、獅子たちの部署ではそんな
ものを咎める者はいない。シャツの第一ボタンを外し、ネクタイを緩めた姿もほかの部署
ならば懲戒ものだがここでは気にする者などいない。

 彼もまた同僚の一人だ。通り名は『裏切者(ベトレイヤー)』。この部署にしては珍し
く、童話でも神話でも映画でも無い通り名だ。

 『裏切者』は獅子の姿を眼にとめると何か言いたそうに曖昧に口を開いたが、結局何も
言わずに肩をかすめるようにして脇を通り抜け何処かへ去っていった。

 獅子は一瞬だけ彼を眼で追ったが、すぐに興味を無くしたかのように振り返る。扉はま
だ開いたままで、部屋の中に射る女と眼があった。女は肩をすくめるとくだけた調子で獅
子に告げる。

「挨拶はいらん。入ってきてくれ」

180 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/08(金) 22:16:16
>>

「くだらんトラブルが発生した」

 ローズウッドの机の向こうで、疲れたように女がいう。

 それは黒い女だった。レースのふんだんに使われたハイネックのドレスも、肘までをぴ
たりと覆う長手袋も、ガータベルトで吊られた薄手のタイツも、足首までのアンクルブー
ツも、つばの広い帽子も、そこからたらしたベールも、すべてが闇のような漆黒だった。
ただその肌の色だけが幽鬼のように白かった。

 女は肌をほとんど露出していなかった。見えているのは、ほっそりとした首筋から形の
いい顎にかけての一部分のみだ。薄手のベール一枚にもかかわらず、女の顔は見えなかっ
た。輪郭だけは見て取れるのだが、その目鼻だちはぼんやりとして見ることができない。
おそらく怪しげな魔法によるものなのだろう。なにせ彼女は少なく見積もってもアデプト
級の魔術師だった。女は彼の上司だ。そしてこの国へ彼をつれてきた張本人でもあった。

 女の言葉に【獅子】は無言で先を促す。

「0番地区にある人形の工場は覚えているな。あれをかぎまわっているマスコミがいたが、
我々が雇っている現地の組織の連中が拘束した」

 そこまではよかったのだが、と女は頬杖を付きながら言う。

「連中のボスがそのリポータを気に入ってしまってな、自分のものにしたらしい」

「またですか」

 呆れたように【獅子】。

「そう。また、だ。奴らはきっと脳ではなく股座でものを考えてるに違いないな。まった
くこれだから半魚人どもは」

 空いている左手を伸ばし、机に立てかけた細身の剣(レピア)をもてあそびながら女は
言う。鍔元に刻まれた八方へ伸びる矢印の紋章が不思議と目を引いた。

「役に立っているから酔狂も見逃してやっていたが、こう何度もではさすがに目に余る。
処分してきてくれ。とりあえずボスとその取り巻きだけでいい。ナンバー2とその一派に
は話がついている」

 苛立たしげに女はいうと、高そうな椅子に身を預けのけぞるように天井を仰ぐ。

「我々が直接手を下してしまっていいのですか?」

 【獅子】はやや疑念を含んだ声でそうたずねた。ゼロ番地区は表向きは不可侵領域だ。
ビッグブルーの社員である【獅子】が直接手を下すのはまずいはずだ。

「構わない。やつらの本家に当たる組織とも話が付いている。……それに『我々』はここ
では外様だ。上の連中はいざとなったら我々を切り捨てて終わりにするつもりだろう」

 肩をすくめ、さほど興味なさげな様子で女は言うと書類を何枚か【獅子】へと放ってよこす。

「必要ないかも試練が資料だ。一応眼を通しておいてくれ。それとお前の剣が研ぎあがっ
ている。出る前に備品課にいって受け取ってくれ。受取書はその資料の中に入っている」

「わかりました」

 一礼をして出て行こうとした【獅子】を女は呼び止める。

「お前がこの世界に来てからもう1年になるが不満という不満を聞いた覚えが無い。今回
だってそうだ。帰ったばかりで仕事を言いつけても、文句一つ言わずすぐに従い取り掛か
ろうとする。何か文句とか要望とかは無いのか?」

「別にありません。もう一度チャンスを与える代わりに言う事を聞く。そういう約束でし
たから」

「律儀だな。甦らせたとたんにこちらの喉笛を掻き切ろうとしたり、機を見て逃げ出そう
とするものも多いのだがな」

 顔を覆うベールの端からちらりと覗いた形のいい唇を歪め、自嘲するかのような声色で
女は言う。その唇にひかれたべにの色までもが黒い。

「……相手は腐っても深海の眷属だ。くれぐれも気をつけるようにな、獅子王」

「わかりました。ですが、できればその名前で呼ぶのは……」

「悪い名ではないと思うがね。方がついたら連絡をくれ。ケータイでかまわない」

 その言葉に【獅子】は頷くときびすを返し部屋を出て行った。

181 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/08(金) 22:18:15

 今日はここまで。明日は20時ごろには帰ってこれるので、それからちまちま進めるよ。
あさってにはようやくだけどこちらの導入は終わると思う。……本当にようやくだけどね。

182 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/10(日) 23:34:36
>>

 鋼鉄製の大きな扉が目の前にあった。扉には深海の眷属をモチーフにした不気味なレリー
フが所狭しと掘り込まれている。
 この扉は組織の事務所になっている館の入り口だった。呪化されているため見た目以上
に堅牢で、RPGの直撃を受けようともびくともしない。そして、堅牢なのは扉の強度だ
けではなかった。目に付かぬ場所や逆によく見える場所に監視カメラやセンサーがいくつ
も設置され、部外者からこの館を守っていた。

 このあたりは零番地区の中でもひときわ治安の悪い一角だ。近今では勢力均衡が成り立っ
ているため抗争も少なくなったが、かつては毎日のようにこの建物の塀に銃弾が打ち込ま
れ通りは血と臓物で溢れかえっていた。いまでも塀に穿たれた弾痕や厳重な警戒装置から
その名残を見ることができる。

 【獅子】は足止めを食っていた。インターフォンを押ししばらくまっていたが返答はない。
もう一度押してみが同じだった。鮫を模したノッカーを叩いても何も起こらない。眉をひ
そめドアノブに手をかけるが鍵がかかっており扉は開かない。ナンバー2の携帯に電話を
かけても呼び出し音が鳴るばかりで電話に出ない。

 これは何かあったと思ったほうがいいだろう。きっとろくでもない何かが。

 【獅子】は背負った大剣(クレイモア)の柄に手をかける。

 一閃。

 大剣を天から地へと一直線に振り下ろした【獅子】は、抜き身の大剣を右手にさげたまま左
手でそっと扉を押した。すると一太刀のもとに鍵と閂を断ち切られた扉がゆっくりと内側
へと開いていく。

 開ききった扉の内側はホールになっており、中には広々とした空間が広がっていた。だ
が誰もいない。生き物の気配もなかった。ひどく静かだ。さらには最小限の明かりしかつ
いていないこともあって、開いた扉はまるで奈落へと通じる穴のようだった。

 薄暗い室内へと足を踏み入れる。出迎えるのは腐ったような潮の香りと圧倒的な重圧感
(プレッシャー)。そして遠くからかすかに匂う血の匂い。
 潮の香りはここの連中に付き物のものだ、別段不思議なものではない。だが、この重圧
感は。この街に来てからこれと同質のものを何度か味わったことがあった。これは魔術的
な圧力だ。

「面倒なことになりそうだな」

 そうつぶやくと、【獅子】は建物の奥深くへと向けて歩き出した。

183 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/10(日) 23:36:25
>>

 腐った潮の香りのする通路を、血の香りのする場所目指して足を進める。

 薄暗い通路を行く。途中で何匹かこの組織の構成員を見かけたが、重圧感に当てられて
昏倒しているものばかりだった。辛うじて意識のあるものも受け答えできるような状態で
はない。仕方ないので情報を聞き出すことはあきらめ、その連中を放置して奥へ奥へと足
を進める。

 ふと話し声が聞こえてきた。足を速める。角を曲がったところで二人の男が目に入った。
筋骨隆々の大男達だ。アドンとサムソン。ふたりとも血統としては外様だが、その戦闘能
力からボスの側近をつとめていた。

 二人はあわただしく話し合っていた。動作に鈍さを見て取れるが、なんとか動くことが
できるようだ。少しでも情報を得られればいいのだが。いったん剣を鞘にもどすと、【獅子】
は足を進め二人に声をかける。

「なにがあった」

 その声に二人は弾かれたように振り向くが、声をかけてきたのが【獅子】であることを
確認し安堵の表情を作る。

「【獅子】の旦那!来てたんですかい。何が起こったのかは俺達にもわからねぇです。5
分ほど前に急に重圧感がしたと思ったらこの有様で。ほとんどの連中は動けなくなっちまっ
たし、俺達もどうにもうまく身体が動かんのです。とりあえず急いでボスのところにいこ
うと思ってるんですが」

「ボスはいつもの部屋か?」

 【獅子】の問いに頷く二人。それを見た【獅子】は、そうかと頷くと剣を抜き放ち一閃。
アドンを袈裟に斬って捨てる。アドンはセイウチ型の深きものどもだった。変身させると
多少は面倒な相手だ。

 「旦那!何を!!」

 悲鳴のような叫び声を上げながらサムソンが飛び退る。普段よりはキレが悪が、それで
もすばやい動きだ。そして飛び退ると同時にその身体は変化を始めていた。ただでさえ大
きな身体がふたまわりも膨れ上がり、皮膚は硬質化し厚みを増す。眼球は眼窩から飛び出
し、諸手は形状を大きく変えた。

 直立歩行する巨大なザリガニ。それが変容した男の姿だ。金剛石すら断ち切り圧し潰す
双振りの鋏と鋼鉄よりも硬い装甲を持つ水棲の魔物がそこにはいた。

 男の変容はすばやかったが、それに対応した【獅子】の行動はさらに迅速だった。
【獅子】は手にした剣を疾風迅雷の速度で振るい、ザリガニ男を強固な装甲ごと微塵切り
に斬って捨てた。決着は一瞬でついた。二者の速度に差がありすぎた。初動があまりにも
違いすぎるのだ。

 床に落ちた肉片を見下ろすが復元再送の起こる予兆は無かった。どうやら殺しきれたよ
うだ。
 微塵切りにしたのはビッグブルーのマニュアルどおりの対応だった。変身した深きもの
どもは急所の位置が人とは大きく異なった。刃物を使って殺し切るにはこれ以上無いぐら
いに解体するのが一番だ。

「結局は何も解からんか。まあいい。すぐにはっきりするだろう」

 そう言って【獅子】はボスの寝所目指して足を進めた。

184 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/10(日) 23:46:40
導入β版

>>138
>>139>>140>>141(ここに1レス追加予定)

>>163>>164>>165>>166>>167>>168>>169
>>170>>171>>172>>176>>177>>178>>179>>180(>>144)

>>149
>>145 >>155 (ここに2〜3レスほど挿入させてください) >>156
>>182>>183

イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド vs リガルド 開始

追加分のレスは明日にでも頑張りますのでもう少しお待ちください。

185 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/11(月) 21:55:37
お待たせしました。導入がようやく完成しました。
こちらはいつでも始められますので、そちらの都合がつき次第、
声をかけてください。

大変長らくお待たせしてすみませんでした。

186 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/11(月) 23:32:30
失礼、こちらもちょっと修正。大きな変更はありませぬ。

187 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド 導入1:2010/01/11(月) 23:34:59
72時間前 英国某所

薄闇の中、大きな椅子に腰掛て男は客が来るのを待っていた。
仄かに燃える蝋燭の灯が男の姿を少しだけ映し出す。
その僅かな明かりの中でさえはっきりと分かる邪悪な顔は、男がこれまで重ねてきた悪事の証。
禿げ上がった頭に奇妙な口ひげ。そして醜悪に歪み肥った身体は男が重ねてきた堕落の証。

「イゴール・ブロムヘッド。」
何者かが、醜男の名を呼んだ。
地獄の底から聞こえてきたようなしわがれた声が辺りに響くと闇が一層深まった。
ブロムヘッドと呼ばれた男が首だけを回して振り返ると、暗がりと静寂の中で一人の老人が佇んでいた。
一体いつからそこに佇んでいたのだろうか。
声をかける刹那に突如として出現したように思える。
永劫の昔、この古屋敷が建てられる前とも思える。
或は―全く不可思議だが―今もそこにはいないようにも思える。
杖をついてはいるが、その姿に弱弱しさなど微塵もなく、峻厳な顔に刻まれた
無数の深いシワの数だけ死線を潜り抜けてきたような尋常ならざる気配をもつ老人であった。
尤も人の姿をしてはいたが常世の常識など通用しない深淵からやってきた異形と言ったほうが、老人の本質に近い事は明白である。
常であれば醜男は跪いて圧倒的な闇を携えた老人を迎えただろうが、今は椅子から立とうともしない。

「ご機嫌麗しゅう、公爵殿。お待ちしておりました。」
「挨拶などよい。何が望みだ。」
「おお、公爵殿をお呼びした理由は他でもない、私の部下を返してもらいたくてね。」

188 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド 導入2:2010/01/11(月) 23:35:47
ブロムヘッドの言葉に、老公爵は首をかしげる。
その所作の一つ一つにさえ、まるで刃のような鋭さがあった。
そしてその鋭さに空気までもが影響をうけたのか、二人の男がいる場そのものが
きりりと音を立てて軋んでいく。それはまるで千のギロチンの刃が風を切る音。
その下にいるのは、老人か、醜男か。

「お前の部下だと?何のことだ。」
「忘れたのかね、貴殿が琥珀の中に閉じ込めた悪魔だよ。」
「ウアラクを?何故?」

老公爵は懐から拳大の琥珀を取り出していた。
蝋燭の火をうけて黄金色に輝くそれの中心には、一匹の哀れな蝿の姿がある。

「何故なら私はその悪魔と契約を交わし、その主となったからだ。
 さらに今や私は貴殿と同輩、兄弟も同然の身。貴殿は彼の地の公爵であり、私は三界にその権利を認められた吸血鬼の王である。」
「……ッは!お前が王だと!?月の女神の後継者だと!?我と肩を並べる者だと!?」
怒気を孕んだその問いにブロムヘッドはあくまで傲慢に答えた。
「違うかね?」
「あきれ果てた馬鹿者だな貴様は。いいだろう、イゴール・ブロムヘッド。受け取るがいい。しかし憶えておけ。
 その力は奪いし物であると。そしてワシから悪魔を受け取った事を。努々忘れるな。」
「忘れぬとも、アスタロト公」
その言葉がいい終わる前に老人は闇に消えていた。
悪魔を封じた琥珀を残して。

189 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド 導入3:2010/01/11(月) 23:37:54
3時間前 ネットテレビ局DT1オフィス

Λと名乗る男からブロムヘッドは0番地区での捜索依頼を受けていた。
理由は単純。莫大な魔力を手に入れた今でもブロムヘッドという男は金と権力が好きなのだ。さらに言うなら名声も欲しい。
根本的にブロムヘッドという男はそういう男なので、これはもうどうしようもない。

金と一緒にマスコミに良い印象を与えられるのなら、このような依頼を受けるのも悪くない。
ついでに同業者や他の化け物共にも自身の力をアピールできるだろう、と軽い気持ちで受けたのだった。

依頼内容の説明が終わり、Λが深々と頭を下げるとブロムヘッドはわざとらしく溜息を吐いた。
「0番地区。厄介ですな。ジャーナリストは秘密を暴くのが仕事とは言え
 つついてはいけない闇もあるものですよ。無論ベストは尽くして、その女性をリポーターを探してみますが
 生死の保証は出来かねますな。女性の死体を持ち帰っても私を責める事なきよう。

 もっとも――――必要であれば蘇らさせる事もできますが。」

そこでブロムヘッドは机に置かれたコーヒーを飲み干した。
胃に流し込んでみたものの、その黒い液体は微塵も美味くない。
今のブロムヘッドにとって、体を巡る赤い液体に比べたらこんなものは泥水も同然だった。

190 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド 導入4:2010/01/11(月) 23:39:16
現在 0番地区

薄汚れた建物の前にたどり着くと、ブロムヘッドは懐から"栄光の手"と呼ばれる燭台を取り出した。
絞首刑になった罪人の腕を切り取り、血を抜いて秘薬と共に蝋に漬け込んで屍蝋へと変じたこの呪物は
火の灯っている間建物中の全ての鍵を開け、住人を金縛りにするという呪物である。

このような盗人の呪法はブロムヘッドという男を象徴するような業であった。

「さて、行こうか」

"栄光の手"に火を灯し、使い魔である人面の猛禽を二匹従え、深き者どもの巣の扉を開けた。
中から濃密な潮の香りとともに、ねっとりと湿った空気がブロムヘッドを出迎えてくれた。
ブツブツと不満をこぼしながら一行は中へと侵入していった。

囚われのドミノが初めに感じた異変は自身の体の硬直だった。
辛うじて呼吸が出来るだけで、瞬きするのも難しい。
極度の緊張とストレスにさらされ続けた身体が、致命的な精神的ダメージによって麻痺を引き起こしてしまったのか?
あるいはこれも自分をとり囲む下卑た化け物どもの地獄めいた魔術による悪戯だろうか?

答えはそのどちらでもなかった。
いつの間にか深き者どもの不快な囁き声は部屋の中から消えていた。
ドミノが苦労して眼球を動かして部屋を見渡すと、深き者どもでさえも彫刻のように硬直している事に気がついた。
例外はこの組織のまとめ役らしき眼鏡の色男だけのようだ。
苦々しげにあごに手を当てて空を睨めていたが、やがて何か思い立ったのか素早く椅子から立ち上がると
その優男風の顔には不釣合いなしかめ面で部屋をでていった。

191 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド 導入4:2010/01/11(月) 23:42:42
答えはそのどちらでもなかった。
いつの間にか深き者どもの不快な囁き声は部屋の中から消えていた。
ドミノが苦労して眼球を動かして部屋を見渡すと、深き者どもでさえも彫刻のように硬直している事に気がついた。
例外はこの組織のまとめ役らしき眼鏡の色男だけのようだ。
苦々しげにあごに手を当てて空を睨めていたが、やがて何か思い立ったのか素早く椅子から立ち上がると
その優男風の顔には不釣合いなしかめ面で部屋をでていった。

しばらくの間、建物全体がしんと静まり返っていた。
金縛りという新たな恐怖の中、ドミノの五感は異常に研ぎ澄まされ、敏感になっていく。
とりわけ聴覚が過敏になっていた。
同じく硬直していた深き者どもの僅かな呼吸音や自分の心臓が脈打つ音を聞こえるまでになった時
どこか遠くの部屋でカシャンと何かが砕ける音をドミノは聴いた。

続いてバンと何かが床に叩きつけられた音が響いた。
ガラガラと何かが音を立てて崩れていった。
パキン、カラカラと今度はガラスの割れる音が聞こえてきた。
音はどんどん近づいてくる。
隣の部屋でギャァと何かが叫んだ。
そしてその刹那、衝撃と共に血まみれとなった眼鏡の色男が、扉を破って倒れこんできた。
フラフラと立ち上がると眼鏡の男は獰猛に叫んだ。
「貴様、我々に何をしたッ」

「簡単な事だよ、お前達はルルイエの館に横たわる神の手の者だろう?
 だから私は我が魔力によってお前達を縛り、かの神と覇を競った黄衣の王の名と、それらよりも旧き神の印によって
 身を守っているのだよ。もはや貴様らに対抗する手立てはない。大人しくしていろ。」

狂い叫ぶ深き者どもの視線の先から、奇妙な燭台を手にした小太りが現われた。
深き者の猛獣のような咆哮にも一歩も引かず、嫌味ったらしい顔で淡々と言葉を綴っていく。
お世辞にも救世主とはいいがたい。

「ギギ…貴様ッ…このままで済むと思うなよッ」
「やってみろ」

眼鏡の男が飛びかかろうと跳躍の構えを見せたが、その手が禿げ上がった頭の魔術師に触れる事はなかった。
深き者が突っ込むよりも速く、猛禽の爪が深き者の首から胴を切り離していた。

「地獄の支配者たちによろしく言っておいてくれ。このブロムヘッドの名を伝えよ」

首と泣き別れた胴体から勢いよく吹き出る血の匂いを嗅いで闖入者―――イゴール・ブロムヘッドは顔をしかめ
「中身までこうにおうとはね。酷い匂いだ。とてもではないが啜る気にもなれん。」と一人ごちた。

「さて人質は無事か。よろしい。では彼女を運んで引き上げですな。容易い容易い。」

192 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド 導入5:2010/01/11(月) 23:43:23
しばらくの間、建物全体がしんと静まり返っていた。
金縛りという新たな恐怖の中、ドミノの五感は異常に研ぎ澄まされ、敏感になっていく。
とりわけ聴覚が過敏になっていた。
同じく硬直していた深き者どもの僅かな呼吸音や自分の心臓が脈打つ音を聞こえるまでになった時
どこか遠くの部屋でカシャンと何かが砕ける音をドミノは聴いた。

続いてバンと何かが床に叩きつけられた音が響いた。
ガラガラと何かが音を立てて崩れていった。
パキン、カラカラと今度はガラスの割れる音が聞こえてきた。
音はどんどん近づいてくる。
隣の部屋でギャァと何かが叫んだ。
そしてその刹那、衝撃と共に血まみれとなった眼鏡の色男が、扉を破って倒れこんできた。
フラフラと立ち上がると眼鏡の男は獰猛に叫んだ。
「貴様、我々に何をしたッ」

「簡単な事だよ、お前達はルルイエの館に横たわる神の手の者だろう?
 だから私は我が魔力によってお前達を縛り、かの神と覇を競った黄衣の王の名と、それらよりも旧き神の印によって
 身を守っているのだよ。もはや貴様らに対抗する手立てはない。大人しくしていろ。」

狂い叫ぶ深き者どもの視線の先から、奇妙な燭台を手にした小太りが現われた。
深き者の猛獣のような咆哮にも一歩も引かず、嫌味ったらしい顔で淡々と言葉を綴っていく。
お世辞にも救世主とはいいがたい。

「ギギ…貴様ッ…このままで済むと思うなよッ」
「やってみろ」

眼鏡の男が飛びかかろうと跳躍の構えを見せたが、その手が禿げ上がった頭の魔術師に触れる事はなかった。
深き者が突っ込むよりも速く、猛禽の爪が深き者の首から胴を切り離していた。

「地獄の支配者たちによろしく言っておいてくれ。このブロムヘッドの名を伝えよ」

首と泣き別れた胴体から勢いよく吹き出る血の匂いを嗅いで闖入者―――イゴール・ブロムヘッドは顔をしかめ
「中身までこうにおうとはね。酷い匂いだ。とてもではないが啜る気にもなれん。」と一人ごちた。

「さて人質は無事か。よろしい。では彼女を運んで引き上げですな。容易い容易い。」

193 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/11(月) 23:54:34
>>191はミスです…

さて、いよいよですが、明日の8時頃からという事でいかがかな?
平日は大体その時間から落ちるまではおれますので。

194 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/12(火) 00:03:22
 確認したよ。じゃあ、あすからはじめようか。

 ぼくの方は21時ごろには来れると思うのでそれでよければはじめようか。だいたい日
付が変わるぐらいまではいられると思う。
 そうそう、明日は来たら貼れる範囲で導入レスを本スレに張ってしまっていいかな?

195 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/12(火) 01:00:53
もちろん構いませんよ。
こちらもそうしますので。ではまた明日に。

196 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/12(火) 20:28:45
さて、到着。
基本的には>>184の流れでしょうな。しばらく待機してませうか。

197 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/12(火) 20:40:12

おまたせしたね。
本スレのほうに>>187 >>188 を貼ってもらえるかな?

そしたらぼくも1レス貼るから。

198 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/12(火) 21:07:41
ほいっと、貼ってきましたぞ

199 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/12(火) 21:13:30

おまたせ。ラムダ氏のパートをはって来たよ。
次は本スレのほうに>>189 >>190 をお願いします。

そしたらぼくも1レス貼るから。

200 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/12(火) 21:17:26
200!

ターン終了です。どうぞ。

201 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/12(火) 21:21:10

201!キリ番とられたー!

次は本スレのほうに>>192をお願いします。

そしたら後は導入終了まで突っ走るから。


202 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/12(火) 21:39:32
っと少し遅れてしまいましたな。では、どうぞ。

203 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/12(火) 21:47:21

 これでくそ長い導入はひとまず終わりだよ。
 この直後にリガルドがそちらに向かう形になると思うんだけれど、会合の場所に希望は
あるかい?その部屋でいいかな?それとも廊下とかそのほかの場所がいい?

204 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/12(火) 21:49:42
できればこの部屋がいいですな。
初手はどちらが指しますか?

205 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/12(火) 21:56:26

 そちらさえよければぼくからいくけど。おおよその形は考えてあるから。
とはいってもブロムヘッド氏の前に姿を現すだけなんだけれどね。

206 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/12(火) 22:02:26
OKでは私は後攻といきましょうか。

207 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/12(火) 22:35:10

 返したよ。姿を現しただけで特に声もかけてない。
次からは問答無用で襲い掛かるから、話しかけたいことがあればどうぞ。

 あとミス・ドミノはどうにかして保護しておいてほしいかな。
リガルドは真っ先に命を狙うはずだしね。



208 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/12(火) 23:33:16
やられる前にやれ!ってことで攻撃しました。
ドミノ嬢は隙があったら鳥が運んでいきます。というか私も逃げるかもしれませんな。
ええ。

209 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/12(火) 23:47:37

 確認したよ。じゃあ、まずはじめは魚野郎の相手に専念するよ。

 とりあえずこの場にいる両生類野郎はすべて敵と認識したので、どんどん殺していくか
ら。そっちもいっせいに襲い掛からせてリガルドの足止めに使ってもかまわないよ。

なるべく早く返せるよう努力するけど、1時間以内に返せなかったら明日返すから。


210 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/13(水) 23:49:19

おそくなったけど何とか返したよ。

……眠い。食事を取って風呂にはいってくる。戻って来れたらまた来るよ。


211 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/14(木) 00:36:45
すみませぬ、レスは明日になりそうです。
すばしお待ちくだされ……

212 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/14(木) 22:09:44
返しました。
結局ミノ嬢を連れて逃げることに。

なお部屋には蛸の魚人(悪魔憑依)と最初に襲い掛かったほうの鳥も残っております。
鳥は斬ってもよろしいですが、蛸はもうしばしお待ちくだされ。

213 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/14(木) 23:17:55

返したよ。
とりあえず雑魚を始末したよ。
鳥と蛸には手はつけてません。好きに暴れさせてください。

214 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/15(金) 00:26:09
返しました。
イアイア!

215 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/15(金) 22:08:38

 ふんぐるい むぐるうなふ
 というわけで妖力解放10パーセント。覚醒者も目の色が変わるのかは知れないけど、
そこはのりで。まあ、ダフとか見るに覚醒者もどの程度解放するかによって体つきが変
わってくるみたいだし、リガルドも覚醒体になるのに思いっきり妖力解放してたりだ
し、いいよね。あとで30パーセント、50パーセントもやりたいところだね。

216 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/15(金) 23:50:51
返しました。
哀れな手下二名はなんとか獅子王の50パーセントくらいは引き出してもらいたいですな。
もう二匹とも限界突破してる気がしますが、不死者だしバンバン斬られても大丈夫でしょう。
どんどん斬っちゃってください。

ついでに二人が死んだ直後くらいにでかい魔法を仕掛ける予定です。

217 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/16(土) 20:20:10

 前哨戦を長引かせるのもあれなので、いっきに50パーセントいきました。
 バンバン斬ってます。激しく激しく。

218 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/16(土) 22:38:35
遅くなりました。

勝った!第三部・完!

219 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/16(土) 22:47:52
……この展開はまさに予想外。プライスレス。お金で買えない価値があるね。
いや、このまま本当に終わりでもこれはこれでおいしいかもしれない。
というかぼく的にはおおいにアリなんだけど、やっぱり生還を期待してたりする?

220 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/16(土) 23:00:57
え?
本当ですか、どうしましょう。

実は怒られるだろコレは、とか思っておりましたが……纏めに入りますか?
まだ獅子になられてませんよ?

221 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/16(土) 23:04:58

 いや、実は見た瞬間爆笑したんだけど。笑いのつぼに入ったんだ。
 そして、久々に驚きを味わえて感動したよ。

 しかし、ぼく的にはありでも……流石にあれかなぁ、このオチは投げっぱなしにとられ
るかなぁ。もちろんこのまま続けてもいいよ。やる気は120パーセントくらいあるし。

 ……やっぱり続けようか。半年近く待たせてこれで終わらせちゃ悪いような気もするし。

222 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/16(土) 23:18:39
ではうまく逃げ出してくだされ。

確かに今一度冷静に見るとケン・イシカワ的なアレに見えますな。
彼の投げっぱなしエンドは不思議と気持ちよい。

クソっドワオッとか入れればよかった。

223 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/16(土) 23:23:44
そうそう、アレにみえるよねー。
「やったか!?」とかでも台詞を入れておいてくれたら問題なく生還したんだけどね。
 
じゃあ続きを書くよ。といってもあすは出かけるので今日はもう寝ます。おやすみー。


224 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/17(日) 19:49:51

次で覚醒いっきま〜す。

225 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/17(日) 22:49:02
>>224
遅れてすみませぬ、何とか返しました。

具体的な大きさは、50mくらいでしょうか。
原作で見せたヘカテの最大サイズを想定しております。

無駄に大きいですが多分すぐヘタレます。

226 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/20(水) 22:25:00
>>225

風引いてました。
熱が下がったのでレスしますが、いまひとつなので今日はこれで寝ます。

……レスしたあとで気がついたんだけど、もしかして原典に登場した腰からしたが蛇の姿
じゃなくて、顔だけ人間でそのほか蛇の姿だったりする?そのあたり明確にしてなかった
みたいだからいちおう質問。もしそうなら訂正するから。

227 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/22(金) 19:41:06
>>226
返しました。

あー言葉足らずで申し訳ない、ここは原典同様の半身半蛇という事で。

レスしてから気がつきましたがドミノ嬢の事忘れてましたな……
こちらはどさくさに紛れて鳥女が回収してその辺を飛んでるはず…く、苦しい。

それとくれぐれもご自愛くだされよ。

228 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/22(金) 21:58:05

 体調は元に戻ったよ。心配してくれてありがとう。

 そちらの姿については了解。

 もうドミノ嬢は追っている余裕が無いね。
 とりあえずニュータイプばりのオールレンジ攻撃で。

229 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/22(金) 23:48:39
>>228
遅れましたが何とか返しました、そろそろ終わりそうですかな。

230 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/23(土) 16:16:45
 返しました。心臓めがけての特攻です。こちらの攻撃はこれでおしまいの予定です。
当たっても外れてもこれでおしまい。獅子王は真っ白に燃えてきて死にます。

 命中の可否、威力の程度はそちらに任せるよ。好きに処理しちゃってくれるかな。

231 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/23(土) 22:46:53
>>230

獅子王なら音速くらい余裕。

ドミノ嬢は逃がせた様ですな。身を挺して女性を守る私、かっこいい。と

232 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/23(土) 23:31:17

 なんという限界突破。というわけで相打ちになりました。いや、依頼を果たせたから結果だけ
見ればそちらの勝ちと言ってもいいかな。

 いま張ったものに加えてエピローグのレスがあるのだけれど、本スレに張る前ににいったん
ここに張ってみるよ。

 こちらのレスはこれですべて終わりになる。ブロムヘッド氏のほうでエピローグの予定があ
れば教えてほしいな。こちらのエピローグの前にはった方がいいようならそちらが書き終わる
まで待つし、後にはった方が言いようなら先に張るから。もちろんエピローグは書かないって
言うのならそれもありだよ

233 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/23(土) 23:32:02
>>

 月影が照らす世界の下、二人の少女がそこにはいた。

 いや、片方は少女と呼ぶほどには幼くなく、女と呼ぶほどには成熟していないそんな年
頃の女性だった。

 一人は携帯電話を手に何事かを話しており、もう一人は死体の傍らに膝をつき何かをし
ていた。その死体は、かつて蛇神であった男の亡骸だった。

「ダメよダメ。獅子は失敗したわ。彼と例の男の死体はここにあるけど、女の死体はどこ
にも無いもの」

 携帯電話を手にした女性が言う。茶褐色の長い髪に碧色の瞳をした、真っ青なエプロン
ドレスに身をつつんだ女性だ。よき見れば、やせ細った猫が足元にまとわりついている。

「……ええわかったわ。研究所にまわすのじゃなくて、丁重に弔うのね。じゃあ、回収用
に誰か人を派遣してちょうだい。こんな重い遺体と大剣なんて私には運べないもの。ええ。
ええ。そうよ。じゃあお願いね」

 女性はそう言って通話を終えると、もう一人へと向き直った。

「本当に呼んでしまってよかったの?すぐに来るわよ」

「ええ、大丈夫。問題ないわ。もう終わったから」

 そういって少女は立ち上がる。彼女の手には赤い液体の詰められた小瓶が握られていた。

「そんなもので本当に世界が救えるの?こんな悪夢みたいに歪んだセカイが」

 女性は胡散臭そうにそういうと、足元の猫を見下ろし、「ねぇ?」という具合に首をか
しげた。水を向けられた猫はただニヤニヤ笑う。

「血は魂の通貨よ。これには彼の知識が詰まっているわ。神を降ろした彼の知識と力が。
神の抜け殻に残された奇跡の残滓が。だから、そう、救えるのよ」

 少女はそういって女性を見上げる。その顔には悪戯めいた笑みが浮かんでいた。

「わたしはもう行くわ。彼らと出くわすと面倒なことになるから。さよならアリス、また
会いましょう」

 少女はそういって、その場を去っていく。アリスと呼ばれた女性がその背に声をなげかけた。

「さよなら。また会いましょう―――――イカレ帽子屋ミスタ・ウォレス

234 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/23(土) 23:35:32

 はいラスボス登場。というわけでこれが最後のレスになる予定です。そちらの返答を待っ
て貼ってきます。

235 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/24(日) 00:06:47

と、失礼。今日はこれで落ちます。

236 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/24(日) 01:43:26
エピローグは2レス程度貼るつもりですが、先に張っても結構ですよ。
本当にエピローグですので。

237 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/24(日) 16:50:19

というわけで、はってきたよ。

238 名前:イゴール・ウェルドン・ブロムヘッド:2010/01/24(日) 23:23:14
これでこちらも終了でございます。
長らくお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。

239 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/25(月) 07:11:54

 さてこれで完了だね。

 ブロムヘッド氏にはいろいろとご迷惑をかけ申し訳ありませんでした。
 特に闘争の約束をしてから開始までに多大な時間がかかったことをお詫びいたします。

 つきあってくれてありがとう。機会があったらまたお願いします。

240 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:14:19






「君は世界を救えない」
――リンダキューブ






.

241 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:14:46







――――――この世界は狂ったように鳴り響く鐘の音に包まれ終わる






.

242 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:15:10

 ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン 
 ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン

 ビッグベンの鐘の音が狂ったように鳴り響く

 ここは倫敦、暗黒の都

 空には絶望ひろがって 地には希望が朽ち果てる 救いなど無い暗黒の都

 Killing Killing Killing Killing 

 殺戮吹き荒れる帝都倫敦

 Killing Killing Killing Killing 

 血飛沫吹き上げる廃都倫敦!

243 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:16:09

 終焉の都 倫敦

 今宵殺戮吹き荒れる 悪夢の国の『滅び行く』帝都

 テムズは赤黒くにごり そこより這い上がる怪物は 貪欲なあぎとで生けるものを喰らい尽くす

 生けるものを その内に宿す命ごと食い尽くす

 そして霧にまぎれ 捕食者たちは街を跋扈する

 人も 吸血鬼も 自動人形も それ以外も区別無く

 殺して 解体(バラ)して 喰らって 吸い尽くす

 いずれの種族も彼らの餌だ

 彼らこそがこの街における唯一にして最高の捕食者。

 この街における絶対の捕食者 ヒエラルキーの頂点

 吸血鬼すら彼らの餌だ

 深きものどもすら彼らの餌だ

 冷酷無慈悲の惨殺者ども

 総てを喰らいすべてを壊す 悪夢のごとき破壊者どもだ

 そう この街では 生ける死者すら破壊され 生者はたやすく死者となる

 人形も 人間も 吸血鬼も それ以外も

【怪物(フェアリィ)】によって

 今宵 世界の終わりの物語が いまここに幕を開けようとしていた

244 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:16:26

 ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン 
 ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン

 ビッグベンの鐘の音が狂ったように鳴り響く

 その音に同期、同調し共鳴する街中の鐘の音

 鳴り響くのは鐘の音だけではない

 人々の悲鳴

 生きたまま喰らい殺される人々の悲鳴

 血飛沫が街をぬらしていた

 黒い空に 消えていく断末魔の声とともに

 暗い街に 降り注ぐ血の雨が

 命の証が街を真紅にぬらしていた

245 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:17:24

 響き渡る鐘の中、巨人が街を破壊していく。

 ビルをなぎ倒し、道路を踏み割り、家屋を倒壊させ、テムズを決壊させる。オーニソプ
ターを叩き落とし、多脚戦車を踏み潰し、人間を喰らい、人形を壊し、吸血鬼を呑み干す。

 響き渡る鐘の中、巨人が街を破壊していく。

 巨人は止まらない。誰も止められない。

 神代を生きたティターンのごとく、古に作られし巨神兵のごとく、忘れ去られた神々のごとく。

 巨人はいく、巨人は行く、巨人は征く。

 その巨人の名をばGといった。
 クロックワークス(オレンジ)社製アルケマトン型人造人間 ガリバー(ギガス)と。

246 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:18:10

 響き渡る鐘の音は、それを耳にするあらゆる存在(モノ)の意識を挫く。干渉を弾き返
せるほどの魔力か、強靭な体力、もしくは恐るべき精神力が無ければ動くことすら叶わない。
 ろくに動くこともできぬ人々を、怪物たちは喰らっていく。いまもまた道路に跪いた少
年を怪物が頭から丸かじりにしようとしていた。震える少年。怪物が近付いているのは解
かるのだ。悲鳴を上げることも、救いを求めることも、命乞いをすることすらできない。
ただ地面に倒れ伏し、がたがた震えながら意味不明なうめき声をもらすだけだ。怪物の手
が少年の肩にかかる。その耳まで裂けた顎が大きく開かれ、少年の頭に齧り付かんと。

 そのとき銃声が鳴り響き怪物は頭欠になる。道路に崩れ落ちる頭欠の怪物。だがその手
足は激しく動き回り、傷口からは失われた頭部が生え出さんとしていた。さらに銃声が連
続して鳴り響く。狙い過たず胸部と下腹部に命中。その内にあった心臓と子宮を破壊され、
怪物はようやく滅ぼされる。

 安堵のあまり失禁しかけた少年だったが、残った意識を振り絞って辺りを見回した。己
の守護天使をさがして。それはすぐに見つかった。50mほど離れた場所で、銃を構えた
兵士が一人塀の脇から顔を覗かせていた。Big Blueに雇われたPMSCsの作戦要員だ。

「早くこっちへ来い!銃声を聞きつけてまた化物がくるぞ!」

 その声に鼓舞された少年は、なんとか這うようにして作戦要員の元へと進み、無事保護
される。少年は運がよかった。PMSCsの作戦担当地区に入り込んでいたのだから。それも良
心的なPMSCsの作戦担当地区にだ。たちの悪い連中ならば少年を見捨てたことだろう。いや
それどころか脅威とみなし銃撃を加えたかもしれなかった。

 PMSCsの作戦要員たちは、人形や吸血鬼と手を組みこの街を守っていた。いまのような光
景が倫敦各地で繰り広げられている。拠点を防衛し、街中に繰り出しては怪物たちを狩っ
ていった。そうやって比較的安全な区画を増やし、街を化物から守っていった。

 押し寄せる人でも人形でも吸血鬼でも無い【怪物】――――――廃棄人形(ステーシー)から。

 正確には変貌した廃棄人形(ステーシー)、【怪物(フェァリィ)】だ。ナナイトによっ
て人工的に進化させられた最悪の怪物だ。

247 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:18:53

―――どこで間違えてしまったのだろうか。何が一体悪かったのだろうか。この街に居合
わせた、すべてのものたちがそう考えた。

 終わりの始まりが訪れたのは、いまからほんの数時間前のことだった。突如、鐘の音が
鳴り響き、巨大な人造人間が街を破壊しながら軌道エレベータへと向かっていったのだ。
それを押しとどめようとしたものたちは、ただ一人の例外も無く食い殺された。その血を
吸われ、その身体を噛み砕かれ、魂を呑み干された。いかなる種族でも例外なく。いかな
る階級とて例外でなく。

 軌道エレベータへと到達した人造人間は、エレベーターにしがみつき登り始めた。ゆっ
くりとゆっくりと。呼吸と共に近付くものの魂を飲み干しながら。もはやこうなってはう
かつに手が出せなかった。巨人を倒すための攻撃が軌道エレベータに命中し、エレベータ
が倒壊すれば、この星は多大なダメージを受けることになる。大地には深い傷跡が残され、
空は舞い上がった粉塵で覆われ、この星は死の星となることだろう。

 うかつに動けなくなったモノたちは、あの巨人はいかなる存在なのか、どこから来たの
か、どう対処すればいいのかを調べることに専念した。軌道エレベータをよじ登る巨人を
阿呆のように眺めながら。

 だが事態は偽りの平穏すら許さなかった。次なる悲劇が襲い掛かった。廃棄人形が、変
貌した廃棄人形が、どこからとも無く街に溢れた。。棄人形は人を喰らい、人形を喰らい、
吸血鬼を喰らい、そのすべてを自らと同質のものへと変貌させ、街中に増殖していった。

248 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:19:12

 さいわい巨人についてはすぐに判明した。クロックワークス(オレンジ)社製の人造人
間。いかなる目的かは不明だが、研究所のおく深くでひそかに開発されていた怪物だった。

 喜ぶべきことに対処法も判明した。この人造人間は傀儡に過ぎなかった。それを操る人
形遣いは軌道エレベータの昇降機の中にいた。成層圏の上部で停止している昇降機の中に。

 ならばやるべきことは一つだった。部隊が結成され勇ましく出陣した。だが。第一陣の
調査隊は全滅。第2陣の討伐隊も敗北。そして三度目の正直。いま最精鋭部隊が昇降機へ
と突入していった。この街にいるすべてのものが、廃棄人形と絶え間ない陣取りゲームに
励みながら、固唾を呑んで結果を見守るった。いつまでもやむことのない鐘の中、皆の視
線が機動エレベータへと注がれる。その中に居るBig SisterとBig Blueの最精鋭部隊に希
望をはせて。

249 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:21:33

 無機質な空間だった。飾り気のない通路。効率的だがまったくもって殺風景な空間だ。
そこは機動エレベータの昇降機の中だった。カーゴブロックへと向かう通路の中だ。

 敵陣の中だというのにみな身を隠そうともしなかった。隠れるつもりはないし、そもそ
もそんなことをしても無駄だった。ミスタ・ウォレスは総てを把握している。なにせ相手
は最高の電情戦の専門家。彼女に比類する能力の持ち主はこの世界におけるあらゆる種族
を探しても5人といるまい。いや、それ以外の場所や時間を探してもか。兎も角も電子回
路のある場所において彼女相手に隠れるというのは無駄なことだった。自動人形の力をもっ
てしてもなおだ。……もっとも隠れる必要も無なかったのだが。

 ミスタ・ウォレスの恐るべきところは優れた電情戦の専門家だということだけではない。
彼女は不死だった。限りなく永遠不滅に近い不死者だ。かつては人であり、今では情報の
海にたゆたう生命体。その存在は情報の海に溶け込み、情報の海そのものとなっていた。
殺し切るにはネットそのものをダウンさせるしかなかった。この世界に存在する電子回路
の総てを。論理的には可能だが現実的には不可能だ。人類とその文明が滅びるまでは彼女
は事実上の不老不死だった。ゆえに今回の目的は彼女の殺害ではなかった。彼女の企みを
止めることだ。それ以上のことは今回の件が終わってから考えればいい。

250 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:21:45

「まさか私自身が出向く羽目になるとは思ってもいませんでした」

 そういって人形の女王は冷徹な顔を【さまよえるオランダ人】へと向ける。タイターニ
ア。自動人形(デッドガールズ)の女王。万能の力を持ち、無から有を生み出すことすら
可能な永遠の少女。

「それに関してはわたしも同意見だよ。お互いともに出し抜かれるとはね」

 彼女の口元が苦々しく歪められる。【さまよえるオランダ人】。Big Blueのゴミ処理係
のトップ。強大な力を持つ魔術師。

「……せめてあと3時間もあればクロロック伯爵が帰還できたのだが」

 バーナバス・コリンズがそう呟いた。彼は議会で委員を務める吸血鬼。ロード級の力を
持つエルダーで、異種族との戦闘のプロフェッショナルだ。彼の言うクロロック伯爵は、
この暗黒帝国(グランブラタン)でも最大の勢力を誇る血族の長だ。古参のロードにして
かの神祖に迫る力を持ち、数十を超えるエルダーを束ねる夜の魔人。いまは本来の領地で
あるトランシルバニアで、いささか深刻な問題を抱えているため即座の帰還は難しかった。

「居ないものは仕方ありません。現時点でそろえうる最高の人員を集めたのです」

 そういって女王はこの場にいる作戦要員を見回す。人形の女王とその近衛兵たち。殺人
人形のプリマドンナとそのおまけ。神々に迫る魔術師とその部下のエージェントたち。ロー
ドヴァンパイアとそれに順ずるエルダーたち。20名ほどの少数精鋭ながら、国すら滅ぼ
せるであろう最悪の部隊。最初で最期の同盟軍だ。

「……それに、このメンバーで駄目ならば、もうどうにもならないことでしょう」

 感情を交えぬ口調で人形の女王が言う。

 先に送り込んだ先発隊は誰一人として生還しなかった。Big Blueの精鋭部隊も高い金を
払って雇ったPMSCsの連中も最強のエージェントたるスミスまでもが。そしてそれはBig Sister
の側も同じだった。アンティークを含む陶器の女王の兵隊たちは、そのことごとくが破壊
しつくされた。議会の派遣したロードを含む貴族たちも一匹残らず滅ぼされた。

 絶対の自信をもって送り出した部隊が敗北した以上、人、人形、吸血鬼、各種族の最強
の戦力をもって部隊を編成するほかになかった。その結果が今回の討伐隊だ。

251 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:22:01

「それにしても」

 バーナバス・コリンズが鬱陶しそうに顔をしかめた。原因は鐘の音だ。響き渡る鐘の音。
それはもう半日以上続いていた。音源は不明。この昇降機のどこかにあるということだけ
しかわかっていなかった。その正体不明の音源から発せられた鐘の音は、ビッグベンを筆
頭にして街中の鐘と共振同調。倫敦中が響き渡る音に侵蝕されていた。

 この鐘の音は尋常ならざるものだった。止むこと無く鳴り響く鐘の音は魂を蝕み体力を
喰らう。強大な力を持つ個体しかいまの倫敦では無力化され動くことはできない。ロード
級の力を持つバーナバス・コリンズですら不快感を覚えるほどだ。すでに倫敦市街におい
ては死人も出始めていた。人間はおろか吸血鬼や人形までもが。もはや一刻の猶予も無い。

 先頭を行く自動人形の足が止まった視線を向ければその先には大きな扉があった。目的
の区画に到着だ。この先は貨物用の大伽藍。コンテナを積み込むための荷物運搬用のスペー
スだった。

 女王の合図で再び後進が始まる。程なくして扉の前へと到着。この先にミスタ・ウォレ
スはいるはずだった。先に訪れたコントロールルームはもぬけの殻。機器は操縦を受け付
けなかった。別の場所に機材を持ち込んで制御している。そうあたりをつけ探した結果、
反応があったのがここだったのだ。

 扉は硬く施錠されている。シェルター並み、とは言わないが、それ相応の強度を持つ扉
だ。破壊するのは手間がかかるが、開錠するのはもっと難しい。なにせミスタ・ウォレス
の施錠した扉だ。だからエージェントの一人が叩き壊すべく剣を手に一歩前へと踏み出し
た。だが、女王はそれを押しとどめると、扉に対しひと睨み。瞬く間に錠は開かれる。舌
を巻くような手際のよさ。

「こんなまねができるなら、この昇降機全体を掌握することだってできたんじゃないのか?」

 あきれたようにオランダ人が言う。

「それとこれとは別の話です。難易度が違いすぎます。では、いきましょう」

 女王の声と共に閉ざされていた扉が自動的に開きだす。

252 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:22:17

 扉が開く。扉が開く。開いた扉の先、そこには。

 100体を超える数の自動人形(デッドガール)がいた。そのすべてが同じ顔、同じ服、
同じ動作。総てが同一の存在。そのように製造されたわけではなく、そう改造されたわけ
でも無い。そう「成った」のだ。

「……スミスの力を取り込んだのか」

 平静を装ってはいたものの、さすがに驚愕を隠し切ることはできなかった。Big Blue 最
強のエージェントであるスミスの自己複製能力。軍団(レギオン)。そんなものまで取り
込めるとは。

「そのとおりです」

 心に澄み渡るような美しい声。部屋の中心に玉座に腰掛けた自動人形が一体いた。ほか
のものと寸分変わらぬが、彼女が本体なのだろう。ダーマプラスティクのドレスを纏い、
黄金の髪に猫の虹彩の緑の眼を持つ自動人形(オートマタ)。いや、操り人形(パペット)か。

「久しぶりですね帽子屋」

 尊大な口調で女王が言う。一見冷徹ながら、その裏にはかすかに感じられる怒気。

「これは女王陛下ご機嫌麗しゅう」

 そういって帽子屋は微笑む。余裕の笑み。口調とは裏腹にその態度だけを見れば彼女の
ほうが女王のようだ。

「それはLadyLの身体ですね」

 冷徹な表情で女王が言う。

「ええ、BigBlueのラボから持ち出しました。ただし、ただ修繕しただけではありません。
LadyLと呼ばれたアンティークの躯体を元にビッグシスター(トクシーヌ)の遺体を使って
わたしが新たに作りあげた義体です」

 盗人め。オランダ人の忌々しげな悪態。

「オリジナルのカルティエドールを部品に使うなど……。元人間が大それたことをしますね」

 不快感を隠そうともしない女王の声。

「それではこの鐘の音はLadyLの歌ですね」

「ええ。Big Sisterの【子宮】を取り込んだおかげで、量子の魔法と組み合わせて使うこ
とが出来るようになり、発声なしでも歌えるようになりました。さらにはスミスの能力を
取り込んだことによって、同一存在による重唱が可能になり、共振、同調、増幅まで可能
になりました」

 ミスタ・ウォレスは頷き微笑む。己の作品を誇るように自信満々に。他者の感情など気
にしないように、満足そうに。スミスの能力で複製されたLadyL。その事実を突きつけられ
流石に重々しい沈黙が降りた。

「つまりはこれだけの数のBig Sisterを相手にせねばならないのと同じだということか」

 バーナバス・コリンズの声にも緊迫したものが漂っている。それはつまり絶望を意味し
た。緊張のあまりエージェントの一人が、腰に佩いた剣の柄に手をかけた。

 それに呼応するように無数の自動人形の後ろから4つの人物が現れる。

253 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:22:52

 一人は女性。名前はアリス。元ビッグブルーのエージェント。幻想に生きる幻想殺しの
専門家(スペシャリスト)。彼女はいつでも夢中なのだ。

 一人は少年。名前はピーター(オベロン)。元ビッグブルーのエージェント。暗い夢(ダークドレアム)
を生きる永遠の少年。ビッグシスター(タイターニア)用に用意された人形殺しの専門家。

 一人は吸血鬼。名前はアーノルド。齢1万を超える最古参のエルダー。最強の生存本能
と最悪の強運をもつ自殺志願者。死を願い死神を求めるが、その死神の鎌が刈り取るのは
いつだって他者の命だ。

一人は吸血戦鬼。名前は匿名希望(インコグニード)。暗黒大陸より来た吸血殲鬼。黒歴
史の闇より這い出した邪神を奉ずる暗黒の司祭。

 彼らは玉座に深く腰掛けたレディLの周りを取り囲むように、展開する。

254 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:23:14

「裏切りものどもめ」

 はき棄てるようにエルダーの一人が言う。

「……こんな騒ぎを起こし何が目的だ」

 【オランダ人】がミスタ・ウォレスへたずねた。それに答えたのはアリス。

「世界を救うのよ!」

アリスがそう雄雄しく叫ぶ。

「世界を救うだと?滅ぼすの間違いではないのか」

 はき棄てるようにオランダ人。彼女はそのまま先を続ける。

「状況や構造からみてお前はこの軌道エレベータ、いや倫敦自体を【交信機/降神器】に
作り変えたな。そしてこの軌道エレベータがその中心である呼び水の塔。神に呼びかけ降
ろす為の器だ。かのバベルのごとくな」

 そこまで言ったオランダ人は、だが、と首を振りながら先を続ける。

「呼び出した神が素直に願いをかなえてくれると思っているのか?やつらは代価を求める
ぞ。願いが大きければ大きいほど、神格が高ければ高いほど、神威が強ければ強いほど、
それに見合うだけの代価を求めてくるぞ」

「意思のある神を降ろそうとは思っていません。降ろすのは力だけです」

 微笑を浮かべ、ミスタ・ウォレスがいう。

「愚か者め。制御する意識なしに力だけを現世に呼んだらどうなると思っている。たちま
ちのうちに暴走を始めるぞ。そうなれば世界そのものが蒸発する」

「意識ならばここにあります」

 彼女はそういって自分の頭を指差した。

「……己が身に神を降ろすつもりなのか?融合できると?その躯体ならば耐え切れるやも
知れないが、人の思惟で神の力を制御できると?」

「もはやわたしは人ではないわ。人の生み出した情報の海そのものが【わたし】なのよ。
それはあなたも知っているでしょう」

 彼女は微笑を絶やさぬまま。

「わたしは人間としての身体と命(カタチ)を棄て情報の海と一つになったことで永遠を
手に入れました。次は神なる力をもって世界そのものと一つになります」

255 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:23:35

「その力で何をするつもりです?」

 人形の女王が静かに問う。

「わたし自身はべつに何も望んでいないわ。世界と合一すること、それ自体がわたしの望みよ。」

 人形の女王へと視線を移しそう答えた。

「ただ、わたしに協力してくれた彼らの望みをかなえるつもりです。彼らの望みは世界を
救うこと。この世界を再生します。……最創世といったほうがいいのかしら。前任者が途
中で放り出したこの世界をよりよい姿に作り直します」

「……グノーシスにでもかぶれたか」

 苦々しいオランダ人の口調。

「そう思ってくれても結構よ。」

 艶然たる笑み。

「やり直すのよすべてを。この世界のすべてを。この悪夢のすべてを!」

 悲痛なアリスの声。

「滅び(ワニ)がやってくる前に」

 大仰に肩をすくめピーター。西洋剃刀を手にしたティンカーベルがその周りをくるくる回る。

「わしは死ねれば何でもいいのじゃがね」

 ケダルそうな様子でアーノルド。

「わかってはいたが、話し合っても無駄なようだな」

 彷徨えるオランダ人はため息をつくと人形の女王を横目で見た。永遠の少女は小さくだ
がしっかりと頷く。

 その瞬間、女王が、彷徨えるオランダ人が、ロードヴァンパイアが、近衛兵が、エージェ
ントが、エルダーが各々の得物に手を伸ばし、戦闘体勢に入る。

 同時に呼応するようにアリスたちも得物を抜き放ち、100を超える自動人形が量子干
渉の動作に入る。

「はじめましょうか。始まりの終わり、終わりの始まりを。」

 うっすらと少女(ミスタ・ウォレス)は微笑み、こう囁いた。

「……然様なら」

256 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:23:46










――――――そして絶望が訪れた。














.

257 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/27(水) 23:28:15

Big Sister vs Big Blue 『倫敦崩壊』
最終話 「It's a new world / Love the world 」

 導入(超☆暫定β版)

>>240
>>241
>>242>>243>>244
>>245>>246>>247>>248
>>249>>250>>251>>252>>253>>254>>255
>>256

258 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/29(金) 23:44:40

 じゃあ、アリスとミスタ・ウォレスの2連戦を予定ということだね。
 募集スレでも言ったけど実質的な本戦はアリスのほうだ。ミスタ・ウォレスのほうはさ
くっと済ませる予定でいこう。

 ディケイドについては一応の知識はあるよ。とはいっても完全ではないので、場合によっ
ては質問するかもしれない。
 そちらも世界観、キャラ等に関して質問があったらどんどんどうぞ。

 そうそう、こちらの導入は出来れば明日の夜まで、遅くてもあさっての夜までには仕上
げるよ。基本は>>257の通りだけれど。

259 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/29(金) 23:59:33
以下要点。

 ミスタ・ウォレスとイカレ帽子屋は同一人物。
 両方の陣営に属しながら自分の利益を目的をかなえる機会を狙っていた。

 彼女は起動エレベータを降神器へと改造。神=大いなるものと融合しようとしている。

 倫敦はいま大混乱状態。その原因は3つ。
1)廃棄人形(ステーシー)=怪物(フェアリィ)=食屍鬼のようなもの、が大量にあふれ出た
2)巨大人造人間=アルケマトン=エヴァっぽいなにか、が暴れている
3)精神ダメージをうける鐘が鳴り響きつづけている

 それに対処するためにBig Sister と Big Blue の両陣営が手を組んで実行中。
 何とかするためにはミスタ・ウォレスのよりしろとしているレディLの義体を破壊しな
くてはならない。起動エレベータを破壊すると世界は滅びる。死の灰で。

 Big Sister と Big Blueは失敗。その際にミスタ・ウォレスの部下もほぼ全滅。

 放っておくとミスタ・ウォレスが「神」になり、あまり好ましくない世界が誕生する。
そうなると誕生の余波で倫敦は蒸発する。

 残る希望はディケイドただ独り。

260 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/30(土) 00:24:30
 
ここが倫敦の世界か…。(以下、お約束なので省略)
 
>>258
大体分かった。

>2連戦
ああ、そういう事になる。
了解したぜ。ならウォレスの方は2撃くらいで済ませるとしよう。
…丁度思いついてるネタもあるしな。
 
>大体分かってた
……意外だったな。
いや、あんたが一応の知識があるってのは。
 
(Alcard:他意はない、原典に理解があるならば助かる。
     分からない事があれば答えよう)


>質問

とりあえず、そっちの原典(デッドガールズ)は手に入れてる。
が、そうだな…少しばかり聞きたいことがある。
 
 
・導入でウォレスと激突したBigblueとBigsister達だが、彼女らは全滅したのか?
 
少しばかりこっちの導入に関わるんでな。
差し支えなければ生死不明か、敗走したのか、それとも全滅が確認されてるのか
教えてくれれば助かる。
 
・Bigsisterサイドに少々キャラを出してもいいか。
ちょっとしたカメオ出演だ。
といっても、今までの“物語”に出てきた奴らじゃない。
俺に直接依頼をする奴らに、ちょっと使いたい連中がいるってだけだ。
世界観を考えた上でアレンジしているから、空気を壊すことにはならない筈だ。
……多分な。 
 
・今までの闘争にはならなかった依頼に関して
こいつで最後だ。
といっても、こいつもカメオ出演って奴だ。
俺が倫敦で見てきた“物語”の中には、本スレに出なかった依頼に関わる
ものもあるだろう…ってな。
もちろん、世界観を壊すような奴らを出す気はない。
或いは互いの基準が違っちまうかもしれないが……そいつは頑張るか、ああ。
  
そこで、この依頼の面子だけは俺の中で確定だってキャラがあるなら、ちょっとばかり教えてほしい。
と言っても大した出番はないと思うけどな。
 
 (例:回想の描写で名前など軽く出たり)
 

261 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/30(土) 00:46:18
>>260
 ようこそ狂った暗黒の都へ。

>>原典
 RXが出ると聞いては(以下略

>>導入でウォレスと激突したBigblueとBigsister達
【彷徨えるオランダ人=お約束どおりのゲイナー君】と【人形の女王】は死んだふりして
横合いから殴りつけるチャンスを狙ってます。あと、ぼくことイグナッツ・ズワクフ も
一応生存。平行世界の自分にして世界間移動者の【ダゴン卿】と融合して息を潜めてます。
この三人がウォレス弱体化のイベントの人柱になる予定。ちなみにイベントで全員死亡します。

 もっともそちらで全能状態のウォレス=オリジナルカルティエドールをねじ伏せること
が出来るなら、弱体化のイベントを起こす必要も無いので、全員死亡ということでもかま
わないよ。

 ちなみにブロムヘッド氏との戦いの導入に登場したブレードランナーやチーム【オズの
魔法使い】は先発隊として参加、全員死亡してます。二代目【獅子】はライオンハートな
女子高生でしたけど彼女も死亡です。

>>Bigsisterサイドに少々キャラを出してもいいか
 好き勝手絶頂にやってくれてかまわないよ。クロスオーバーあってこその大殲だからね。

>>今までの闘争にはならなかった依頼に関して
 これもお任せするよ。語れなかった物語に自分以外のものがふれるのも面白いものだからね。

262 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/01/30(土) 00:50:40

 そうそう、明日は午前中に少々出かけるのでこれで落ちます。
 さらに質問があれば明日の午後にでも返します。
 明後日までは連休なので日中もちまちまレスを考えるよ。

263 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/30(土) 01:09:06
>>261
 
>RXが
 
……すごい漢d(略
 
>要点〜返答
大体分かった。
俺の無茶振りからして一人で出来そうな気はするが…折角だしな。
ここはあんた達の意地ってのを見せてもらおうか。
こういうのは、色々盛り込んだ方が面白い。
 
それと、あんたの許可に礼を言っとくぜ。
ぶち壊しにならないよう気をつけた上で、こっちは好き勝手にやらせてもらう。
 
あと、そっちの導入に間に合うようにこっちでも書き始めてる。
大体形は描けてるんでな。そっちのを確認してから両日中くらいには挙げられるはずだ。
 
……早めに形だけ作っておけば、時間は取れるからな。
ああ、また多分長いだろうが。
  
(Alcard:……どうして こうなった)

264 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:47:37









最終話 「It's the beautiful world / Love the world 」 (Decade vs Wallace & Alice)





.

265 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:47:52









「君は世界を救えない」
――リンダキューブ






.

266 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:48:40







――――――この世界は狂ったように鳴り響く鐘の音に包まれ終わる






.

267 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:48:59


 ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン 
 ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン

 ビッグベンの鐘の音が狂ったように鳴り響く

 ここは倫敦、暗黒の都

 空には絶望ひろがって 地には希望が朽ち果てる 救いなど無い 暗黒の都

 Killing Killing Killing Killing 

 殺戮吹き荒れる帝都倫敦

 Killing Killing Killing Killing 

 血飛沫吹き上げる廃都倫敦!

268 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:49:15

 終焉の都 倫敦

 今宵殺戮吹き荒れる 悪夢の国の『滅び行く』帝都

 テムズは赤黒くにごり そこより這い上がる怪物は 貪欲なあぎとを用い生けるものを喰らい尽くす 

 生けるものを その内に宿す命ごと食い尽くす

 そして霧にまぎれ 捕食者たちは街を跋扈する

 人も 吸血鬼も 自動人形も それ以外も区別無く

 殺して 解体(バラ)して 喰らって 吸い尽くす

 いずれの種族も彼らの餌だ

 彼らこそがこの街における唯一にして無二の捕食者

 この街における絶対の捕食者 ヒエラルキーの頂点

 吸血鬼すら彼らの餌だ

 深きものどもすら彼らの餌だ

 冷酷無慈悲の惨殺者ども

 総てを喰らいすべてを壊す 悪夢のごとき破壊者どもだ

 そう この街では 生ける死者すら破壊され 生者はたやすく死者となる

 人形も 人間も 吸血鬼も それ以外も

【怪物(フェアリィ)】によって

 今宵 世界の終わりの物語が いまここに幕を開けようとしていた

269 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:49:25

 ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン 
 ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン

 ビッグベンの鐘の音が狂ったように鳴り響く

 その音に同期、同調し共鳴する街中の鐘の音

 鳴り響くのは鐘の音だけではない

 人々の悲鳴

 生きたまま喰らい殺される人々の悲鳴

 血飛沫が街をぬらしていた

 黒い空に 消えていく断末魔の声とともに

 暗い街に 降り注ぐ血の雨が

 命の証が街を真紅にぬらしていた

270 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:51:31




<巨人(エンジェル)>





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271 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:51:58

 響き渡る鐘の中、巨人が街を破壊していく。

 ビルをなぎ倒し、道路を踏み割り、家屋を倒壊させ、テムズを決壊させる。オーニソプ
ターを叩き落とし、多脚戦車を踏み潰し、人間を喰らい、人形を壊し、吸血鬼を呑み干す。

 握りつぶされた人間の首が、テムズに落下し水音をたてる。踏み潰された自動車から、
下半身を失った人が超を引きずりながら這い出してくる。食いつぶされた人形の歯車が、
地面を頼りなく転がり倒れる。

 巨人の繰り出す拳はビルをドミノのように倒壊させる。巨人の踏み出す足は橋をあっさ
りと崩壊させる。その身体は80cm列車砲の一撃ですら傷つけることはできず、そのあ
ぎとはあらゆるものを噛み砕き咀嚼する。その目は爛々と輝き視るものを発狂させ、その
息吹は大気と共に群集の魂を飲み干す。

 響き渡る鐘の中、巨人が街を破壊していく。響き渡る鐘の中、巨人が総てを破壊していく。

 巨人は止まらない。誰も止められない。

 神代を生きたティターンのごとく、古に作られし巨神兵のごとく、忘れ去られた神々のごとく。

 巨人はいく、巨人は行く、巨人は征く。

 その巨人の名をばGといった。
 クロックワークス(オレンジ)社製アルケマトン型人造人間「ガリバー(ギガス)」と。

272 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:52:12





そして、巨人の足元でも、殺戮の嵐は吹き荒れていた。






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273 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:53:17

 響き渡る鐘の音は、それを耳にするあらゆる存在(モノ)の意識を挫く。干渉を弾き返
せるほどの魔力か、強靭な体力、精神力が無ければ動くことすら叶わない。地面に這いつ
くばり、ただ無様に痙攣することしか許されない。

 ろくに動くこともできぬ人々を、怪物たちは喰らっていく。いまもまた道路に跪いた少
年を怪物が頭から丸かじりにしようとしていた。震える少年。怪物が近付いてくるのは解
かるのだ。恐怖と鐘の音、そして少年地震の抵抗力の欠乏により、悲鳴を上げることも、
救いを求めることも、命乞いをすることすらできない。ただ地面に倒れ伏し、がたがた震
えながら意味不明なうめき声をもらすだけだ。べちゃべちゃと涎を垂らしながら、怪物が
少年に近寄っていく。もうすぐそこだ。ほら脳漿で粘つく怪物の手が少年の肩にかかった。
そして、涎の滴るその耳まで裂けた顎が大きく開かれ、少年の頭に齧り付かんと。

 そのとき銃声が鳴り響き、怪物の頭部が吹き飛ばされる。道路に崩れ落ちる頭欠の怪物。
だが怪物は死んでいない。その手足を激しくばたつかせ、這いずるように地面を動き回り、
傷口からは失われた頭部が生え出さんとしていた。さらに銃声が連続して鳴り響く。飛来
した銃弾は胸部と下腹部に命中。その内にあった心臓と子宮を破壊され、怪物はのけぞる
ようにして動きを止める。

 安堵のあまり失禁しかけた少年だったが、残った意識を振り絞って辺りを見回した。す
ぐに見つかった。50mほど離れた場所で、銃を構えた兵士が一人塀の脇から顔を覗かせ
ていた。Big Blueに雇われたPMSCsの作戦要員だ。

「早くこっちへ来い!銃声を聞きつけて、また化物がくるぞ!」

 その声に急かされ、そして鼓舞された少年は、なんとか這うようにして作戦要員の元へ
と進み、無事保護される。少年は運がよかった。PMSCsの作戦担当地区に入り込んでいたの
だから。それも良心的なPMSCsの作戦担当地区にだ。たちの悪い連中ならば少年を見捨てた
ことだろう。いやそれどころか脅威とみなし銃撃を加えたかもしれなかった。

 いまこの街では、彼らのようなPMSCsの作戦要員たちが、人形や吸血鬼と手を組みこの街
を守っていた。そう、いまのような光景が倫敦各地で繰り広げられていた。拠点を防衛し、
街中に繰り出しては怪物たちを狩っていった。そうやって比較的安全な区画を増やし、街
を化物から守っていった。

 押し寄せる人でも人形でも吸血鬼でも無い【怪物】――――――廃棄人形(ステーシー)から。

 正確には変貌した廃棄人形(ステーシー)、【怪物(フェァリィ)】だ。ナナイトによっ
て人工的に進化させられた最悪の怪物だ。

274 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:53:47

―――どこで間違えてしまったのだろうか。何が一体悪かったのだろうか。この街に居合
わせた、すべてのものたちがそう考えた。人も吸血鬼も人形も、意思あるものすべてが考
えた。

 終わりの始まりが訪れたのは、いまからほんの数時間前のことだった。突如、街中に鐘
の音が鳴り響き、それと同時に巨大な人造人間が現れた。そして巨人は街を破壊しながら
軌道エレベータへと向かっていったのだ。それを押しとどめようとしたものたちは、ただ
一人の例外も無く食い殺された。その血を吸われ、その身体を噛み砕かれ、魂を呑み干さ
れた。いかなる種族でも例外なく。いかなる階級とて例外でなく。

 軌道エレベータへと到達した人造人間は、エレベーターにしがみつき登り始めた。ゆっ
くりとゆっくりと。呼吸と共に近付くものの魂を飲み干しながら。
 もはやこうなってはうかつに手が出せなかった。もし巨人への攻撃が軌道エレベータに
命中し、倒壊するようなことがあれば、この星は多大なダメージを受けることになる。大
地には深い傷跡が残され、空は舞い上がった粉塵で覆われ、日の光はさすこと無く、吸血
鬼ですら凍える冬が何百年も続き、文明は滅び、この星は死の星となることだろう。

 ゆえに手は出せない。確実な方法が見つからぬうちは。幸いなことに軌道エレベータの
本体は、人造人間がしがみついた程度で壊れるほどに脆くは無かった。人造人間もエレベー
タを破壊するような意図は見せてはいなかった。とりあえずは大丈夫だ。あくまでとりあ
えずは、だが。

 手を出せなくなった人々は、あの巨人はいかなる存在なのか、どこから来たのか、どう
対処すればいいのかを調べることに専念した。軌道エレベータをよじ登る巨人を阿呆のよ
うに眺めながら。

275 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:54:45

 だが事態はそんな偽りの平穏すら許さなかった。塔を見上げる人々に、次なる悲劇が襲
い掛かった。廃棄人形が、変貌した廃棄人形が、どこからとも無く街に溢れた。廃棄人形
は人を喰らい、人形を喰らい、吸血鬼を喰らい、そのすべてを自らと同質のものへと変貌
させ、街中に増殖していった。

 生き延びるため、Big BlueとBig Sisterは手を結び、すべての種族が手を結んだ。Big Blue
の雇ったPMSCsが、Big Blueのエージェントが、Big Sisterの自動人形が、吸血鬼たちが、
軍が、警察が、フリーランスが、深きものどもですら、手を結び反撃を開始した。

 忌まわしい鐘の鳴り響く中、地獄のような泥沼の戦いが繰り広げられた。多くの命が散っ
ていった。そのおかげで手に入れることのできた小康状態。だが見通しは暗い。敵は無尽
蔵ともいえる勢いであふれ出てきた。犠牲者を同類に変え、恐るべき勢いで増殖し、増え
続けた。

 いつしか集団で思考するようになり、ある種の統率の取れた行動をするようになった。
学習し、どんどん手ごわくなっていった。一体が学習したことを全体で共有していった。
その様子は群体という言葉ですら生ぬるい。もはや全体で一個の生命体だ。まるで神祖が
この街に進軍した時に作り出したという「死の河」そのものだ。

 泥沼の戦いの中、ようやく巨人のことが判明した。あれはクロックワークス(オレンジ)
社製の人造人間だった。いかなる目的かは不明だが、研究所の奥深くで秘かに開発されて
いた怪物だ。とうに廃棄されたはずだったが、だれかが開発を続けていた忌み子だった。

 わかったのはそれだけではなかった。喜ぶべきことに対処法も判明した。この人造人間
には思考を司る部分が無かった。つまりは傀儡に過ぎなかった。それを操る人形遣いは軌
道エレベータの昇降機の中にいた。成層圏の上部で停止している昇降機の中に。

 ならばやるべきことは一つだった。部隊が結成され勇ましく出陣した。だが。第一陣の
調査隊は全滅。第2陣の討伐隊も敗北。そして三度目の正直。いま最精鋭部隊が昇降機へ
と突入していった。
 この街にいるすべてのものが、廃棄人形と絶え間ない陣取りゲームに励みながら、固唾
を呑んで結果を見守っていた。
 いつまでもやむことのない鐘の中、皆の視線が機動エレベータへと注がれる。その中に
居るBig SisterとBig Blueの最精鋭部隊に希望を託して。

276 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:55:18




<異邦人(エトランゼ)>





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277 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:59:14

 無機質な空間だった。飾り気のない通路。効率的だがまったくもって殺風景な空間だ。
そこは機動エレベータの巨大な昇降機の中だった。最下部にあるカーゴブロックへと向か
う通路の中だ。

 敵陣の中だというのに討伐部隊の隊員たちは、身を隠そうともしなかった。それは、そ
んなことをしても無駄だったからだ。なにせ、ミスタ・ウォレスはこの昇降機の中で行わ
れる総てのことを把握していた。

 ヤツはこの世界でも最高級の電情戦の専門家だ。ヤツに比類する能力の持ち主は、世界
中を探しても5人といるまい。電子回路のある場所で、ヤツ相手に隠れるというのは無駄
なことだった。それは自動人形の力をもってしてものことだ。

 そして、ミスタ・ウォレスの厄介なところは、ヤツが優れた電情戦の専門家だという点
だけではなかった。

 ヤツは不死だった。それも限りなく永遠不滅に近い不死者だ。この街を歩けばどこにで
もいるような、二束三文ほどの価値しかないような不死者とはわけが違った。

 ヤツはかつては人であったが、今では情報の海にたゆたう生命体だった。肉の身体を捨
て去り、存在を純然たる情報へと転写した超越者だ。その存在は情報の海に溶け込み、情
報の海そのものとなっていた。

 だから、ヤツを殺すには依り代をいくら破壊しても無駄だった。そんなものは傀儡にす
ぎない。ヤツを殺し切るにはネットそのものをダウンさせるしかなかった。この世界に存
在する電子回路の総てを。

 そんなことは論理的には可能だが現実的には不可能だ。つまり、人類とその文明が滅び
るまではヤツは事実上の不老不死だった。

 だから今回の目的はヤツの殺害ではない。ヤツの企みを止めることだ。それ以上のこと
は今回の件が終わってから考えればいい。

278 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:59:26

 何のつもりかわからないが、この昇降機の中に転移してきてから一度も襲撃を受けてい
なかった。余裕の表れか、それとも逆に余力がないのか。出来ればあとのほうの事情なら
ばいいのだが。そんな甘い考えもすぐに霧散した。いくつかの扉を潜り抜けたところで風
景は一変する。

 壁面に穿たれた銃痕。焼け焦げた通路。割れた灯。破壊された天井。大きくひび割れた
床。切り裂かれた壁面。そして通路に散乱する血に塗れた肉片や残骸。

 戦闘服を着た作戦要員たちの死体。ダークスーツを着たエージェントたちの死体。床に
積もる青白い灰はエルダーたちのものか。そして破壊された自動人形の残骸。

 まぎれも無い戦闘の痕がそこにはあった。まともな戦闘の痕跡も、尋常ならざる戦闘の
痕跡もそこにはあった。流石にBig Blue エージェントや高位の貴族、アンティークに強い
力を持ったデッドガールが参加しているだけのことはある。

 無数の日本刀が天井、床、壁面に突き立っている。その数は10や20ではきかない。
100は軽く超えるだろう。半身が蒸発したとおぼしき自動人形の身体。これは電気式だ
からウォレス側の兵隊か。常識外れのサイズを誇る無骨な鉈(粉砕の大鉈)。その柄を握っ
たままになっている左手は、内側から腐り落ちたような断面を見せている。エナメルコー
ティングされたガスマスクは血だまりの中に沈んでいた。近くにはへし折れたスマートフォ
ンが転がっており、その周囲は得体の知れぬ爪あとが無数に刻まれていた。

 死体の様子も人それぞれだ。銃殺された死体もあり、刃物による傷もあれば、巨大な何
かで殴り殺されたとしか思えぬような死体があり、内側から焼き尽くされたとおぼしき死
体もある。

 圧倒的なまでの戦場の風景。転がる遺体残骸は討伐部隊とそれを迎え撃ったウォレスの
配下のものだ

 帰還したものがおらず、連絡も無い以上全滅したことはわかっていたが、実際に己の眼
で見るとその事実の重さを思い知らされた。

 そう、先発隊は誰一人として生還しなかった。Big Blueの精鋭部隊も高い金を払って雇っ
たPMSCsの連中も最強のエージェントたるスミスまでもが。そしてそれはBig Sisterの側も
同じだった。アンティークを含む陶器の女王の兵隊たちは、そのことごとくが破壊しつく
された。議会の派遣したロードを含む貴族たちも一匹残らず滅ぼされた。だからこそ、そ
れ以上の力を持つ、今回の討伐隊が結成されたのだ。

279 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:59:40

「……緋々色金をここまで見事に破壊するとはな」

 現場を調べていた【彷徨えるオランダ人】が、そう呟いた。黒いドレスに身を包み、黒
いレースの垂れた帽子で顔を隠した女。Big Blueのゴミ処理係のトップで、強大な力を持
つ魔術師だ。

 彼女は床に転がる刀身が中ほどで砕け散った剣を見つめていた。そのすぐそばには、長
い黒髪を持つ10代中ほどの少女の死体が転がっている。

「ざっとみただけでも、【獅子(セカンド)】に【木こり】、【案山子】、【刀使い(ブレードランナー)】
……先発隊に間違いないな」

 顔を上げ【彷徨えるオランダ人】が苦い口調で言う。

「ピーターとアリスの死体がありません。彼らが所有していたはずの【玩具】も」

 辺りを調べていたエージェントの一人が報告する。【炭鉱夫(アトム)】とよばれてい
た人物だ。エージェントは大抵ダークスーツを身につけているが、彼ともう一人だけは異
なる服装をしていた。彼の場合、身体にフィットする高機動型のパワードスーツを身につ
けている。そのため性別年齢共に不明。ただし声からすれば男だろう。パワードスーツの
どぎつい赤と黄色のカラーリングが眼精疲労を誘ってくる。

「原子レベルで分解されたか、それとも……」

 【彷徨えるオランダ人】は少しの間考え込むようにしていたが、かぶりを振ると人形の
女王と吸血鬼の貴族のほうを向いた。二人とも現場を調べ終えたようで、【彷徨えるオランダ人】
に軽く頷いてきた。彼女もまた頷き返し、再び前進を再開するよう部下に命じた。

 さきほどよりも重くなった足取りと暗くなった表情で、討伐隊は向く敵地へと足を進め
る。人形の女王と吸血鬼の貴族が、【彷徨えるオランダ人】へと近付いてきた。

「どうおもいます?」

 歩きながら人形の女王が尋ねてきた。タイターニア。自動人形(デッドガールズ)の女
王。万能の力を持ち、無から有を生み出すことすら可能な永遠の少女。

「……あれをやったのはウォレス本人ではないな。おそらく厄介な協力者が複数いる」

 現場の状況を思い返しながら【彷徨えるオランダ人】がそう答えた。それを聞いた人形
の女王は静かに頷く。

「わたしとミスタ・コリンズも同意見です」

 そういって永遠の少女は隣にいる男に顔を向けた。バーナバス・コリンズ。彼は議会で
委員を務める吸血鬼。ロード級の力を持つ貴族(エルダー)で、異種族との戦闘のプロフェッ
ショナルだ。実戦経験の豊富さならば、倫敦にいる吸血鬼の中でもずば抜けていた。

「厄介ですね。帽子屋(ウォレス)だけでも面倒だというのに」

「ああ。だがそれでもなんとかせんとな。そうしなければ世界が終わる」

280 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 21:59:57

「ひとつききたかったのですが、なぜ【灰かぶり】をつれてこなかったのです?彼女ほど
の力があれば、すくなくとも邪魔になることはなかったと思いますが」

 少しして、人形の女王が【彷徨えるオランダ人】に訊ねた。内容とは裏腹に、暇つぶし
のような気のない口調だ。

「戦略的な判断だ。あいつの力は拠点防衛向きだからな。いまごろ下でこの街を守ってい
るさ。そちらこそジャバウォックをつれてこなかったのはどうしてだ?―――それに、ミ
スタ・コリンズ。なぜアモン卿を連れてこなかった?あれほどの高位の魔術師だ、人格は
兎も角、腕は立つだろう?」

「あれは帽子屋のつくった魔物ですから。いつ裏切るかわからない部下などつれてくるわ
けには行きません」

 冷たい顔で女王が言い捨てる。

「彼は君が思っている以上に危険な人物だ。とてもではないがつれてくるのは無理だよ。
もっとも、このエレベータを倒壊させたいならば話は別だが」

 そういってバーナバス・コリンズが肩をすくめた。と、彼は急に真面目な顔になり先を
続ける。

「……クロロック伯爵が来られればよかったのだが」

 クロロック伯爵。かの吸血鬼は、この暗黒帝国(グランブラタン)でも最大の勢力を誇
る血族の長だ。古参のロードにしてかの神祖に迫る力を持ち、数十を超える貴族(エルダー)
を束ねる夜の魔人。いまはタイターニアに代わり、下での指揮を取っているので討伐隊に
参加することはできなかった。

「下で指揮を取る人物が、どうしても一人は必要でしたから。それに、いまさら言っても
仕方ありません。現時点でそろえうる最高の人員を集めたのです」

 そういって女王はこの場にいる作戦要員を見回す。人形の女王とその近衛兵たち。殺人
人形のプリマドンナとそのおまけ。神々に迫る魔術師とその部下のエージェントたち。ロー
ドヴァンパイアとそれに順ずるエルダーたち。20名ほどの少数精鋭ながら、国すら滅ぼ
せるであろう最悪の部隊。最初で最期の同盟軍だ。

「……このメンバーで駄目ならば、もうどうにもならないでしょう」

 感情を交えぬ口調で人形の女王はそう言った。

281 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 22:00:09

「それにしても」

 バーナバス・コリンズが鬱陶しそうに顔をしかめた。原因は鐘の音だ。響き渡る鐘の音。
街中だけではなく、この昇降機の中ですら激しく鳴り響いていた。いや、この中のほうが
よりひどい有様だといっていい。この音はもう半日以上続いていた。音源は不明。この昇
降機のどこかにあるということだけしかわかっていなかった。その正体不明の音源から発
せられた鐘の音は、ビッグベンを筆頭にして街中の鐘と共振同調。倫敦中が響き渡る音に
侵蝕されていた。

 この鐘の音は尋常ならざるものだった。止むこと無く鳴り響く鐘の音は魂を蝕み体力を
喰らう。強大な力を持つ個体しかいまの倫敦では無力化され動くことはできない。ロード
級の力を持つバーナバス・コリンズですら不快感を覚えるほどだ。すでに倫敦市街におい
ては死人も出始めていた。人間はおろか吸血鬼や人形までもが。もはや一刻の猶予も無い。

 その時、先頭を行く自動人形の足が止まった。目を向ければその先には大きな扉があっ
た。目的の区画に到着だ。この先は貨物用の大伽藍。コンテナを積み込むための荷物運搬
用のスペースだった。

 あたりを窺うが、罠の類は相変わらず一切ない。女王の合図で再び後進が始まる。程な
くして扉の前へと到着。この先にミスタ・ウォレスがいるはずだった。先に訪れたコント
ロールルームはもぬけの殻。機器は操縦を受け付けなかった。別の場所に機材を持ち込ん
で制御している。そうあたりをつけ探した結果、反応があったのがここだったのだ。

 扉は硬く施錠されている。シェルター並み、とは言わないが、それ相応の強度を持つ扉
だ。破壊するのは手間がかかるが、開錠するのはもっと難しい。なにせミスタ・ウォレス
の施錠した扉だ。

 エージェントの一人が叩き壊すべく剣を手に一歩前へと踏み出した。だが、女王はそれ
を押しとどめると、扉に対しひと睨み。瞬く間に錠は開かれる。舌を巻くような手際のよさ。

「こんなまねができるなら、この昇降機全体を掌握することだってできたんじゃないのか?」

 あきれたように【彷徨えるオランダ人】が言う。

「それとこれとは別の話です。難易度が違いすぎます。……では、いきましょう」

 女王の声と共に閉ざされていた扉が自動的に開きだす。ゆっくりと開いていく。

 地獄への扉が、ゆっくりと開いていく。

282 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 22:00:31




<女神(マザー)>





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283 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 22:00:56

 扉が開く。扉が開く。開いた扉の先、そこには。

 100体を超える数の自動人形(デッドガール)がいた。そのすべてが同じ顔、同じ服、
同じ動作。総てが同一の存在。そのように製造されたわけではなく、そう改造されたわけ
でも無い。そう「成った」のだ。

「……スミスの力を取り込んだのか」

 平静を装ってはいたものの、さすがに驚愕を隠し切ることはできなかった。Big Blue
最強のエージェントであるスミスの自己複製能力。軍団(レギオン)。そんなものまで取
り込めるとは。

「そのとおりです」

 心に澄み渡るような美しい声。部屋の中心に玉座に腰掛けた自動人形が一体いた。部屋
にいるほかのものと寸分変わらぬが、彼女が本体なのだろう。ダーマプラスティクのドレ
スを纏い、黄金の髪に猫の虹彩の緑の眼を持つ自動人形(オートマタ)。いや、操り人形(パペット)か。

「本来ならばわたしのほうが、あんな風に偉そうに座っている側のはずなのだがね」

 【彷徨えるオランダ人】が人形の女王へと顔を向けながら、苦笑交じりに呟く。

「奇遇ですね。私もそうです。……久しぶりですね帽子屋」

 尊大な口調で女王が言う。一見冷徹ながら、その裏にはかすかに感じられる怒気。

「これは女王陛下ご機嫌麗しゅう」

 そういって帽子屋(ウォレス)は微笑む。余裕の笑み。口調とは裏腹にその態度だけを
見れば彼女のほうが女王のようだ。

「それはLadyLの身体ですね」

 冷徹な表情で女王が言う。

 Lady L 。かつてBig Sister とBig Blue が奪い合い、子宮(シリンダ)はBig Sister
に、身体はBig Blue に回収されたアンティークの自動人形。

「ええ、BigBlue のラボから持ち出しました。ですが、ただ修繕しただけではありません。
Lady L と呼ばれたアンティークの躯体を元に、ビッグシスター(トクシーヌ)の遺体を
使ってわたしが新たに作りあげた義体です」

 盗人め。【彷徨えるオランダ人】の忌々しげな悪態。

「オリジナルのカルティエドールを部品に使うなど……。元人間が大それたことをしますね」

 不快感を隠そうともしない女王の声。だがそれを聞いた帽子屋(ウォレス)は薄い微笑
を浮かべるのみ。

「それではこの鐘の音はLady L の歌ですね」

 Lady L は、レミング(Lemming)のLであり、ローレライ(Loreley)のLだった。聞く
者の正気を奪い、精神を削り、魂を啜り、心を誘い、果てには操り人形へとかえる魔性の
歌声を持つ自動人形。まるで、昔話に出てくる笛吹き男の笛のように。

「ええ、そのとおりです。ですが、シリンダがなかったため本来のものとかけ離れてしま
いました。機構から帰納しただけではどうしても核心にたどり着けなかったのです」

 いささか残念そうに帽子屋(ウォレス)が首を振った。

「そのままでは役に立たなかったので、ほかの手段で補うことにしました。Big Sisterの
【子宮】を取り込み、量子の魔法と組み合わせて使うことによって、威力を増しつつ発声
なしでも歌えるようにしました。さらにはスミスの能力を取り込んだことによって、同一
存在による重唱が可能になり、共振、同調、増幅まで可能になりました。これで問題はす
べて解決しました」

 帽子屋(ウォレス)は頷き微笑む。己の作品を誇るように自信満々に。他者の感情など
気にしないように、満足そうに。

「問題は、わざわざこんな大掛かりなことをして何がやりたいのかということです。こん
な風にこの街を破壊し、鐘の音を鳴り響かせ、あなたは何がしたいのです?」

「それに関しては、すでに【彷徨えるオランダ人】(そちら)はわかっていると思いますが」

 穏やかな口調で帽子屋(ウォレス)は答え、【彷徨えるオランダ人】に顔を向けた。人形
の女王も吊られるように顔を向ける。【彷徨えるオランダ人】はその視線を意識しながらも、
即答はせずにまわりの様子をうかがった。

 大量に複製されたLady L は微笑んでいる。美しい笑顔だがこうも多いと不気味だった。
討伐隊の隊員たちは、その大半が緊迫した表情をしていた。スミスの能力で複製されたLadyL。
つまりはこれだけの数のBig Sisterを相手にせねばならぬのと同じことだ。その事実を突き
つけられ、過度のストレスに晒されているのだ。

無理も無いことだ。100体以上のBig Sister との戦闘。それはつまり絶望を意味した。

 緊張のあまりエージェントの一人が、腰に佩いた剣の柄に手をかけた。それに呼応するよ
うに無数の自動人形の後ろから4つの人物が現れる。

284 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 22:01:33

 一人は女性。名前はアリス。血まみれのエプロンドレスに編み上げ靴を身につけた女性だ。
彼女は元ビッグブルーのエージェント。幻想に生きる幻想殺しの専門家(スペシャリスト)。
彼女はいつでも夢中なのだ。

 一人は少年。名前はピーター(オベロン)。カーゴパンツにコンバットブーツ、上半身は
裸でサスペンダーと弾帯だけを身につけていた。奇妙な仮面をかぶった少年だ。元ビッグブ
ルーのエージェント。暗い夢(ダークドレアム)を生きる永遠の少年。ビッグシスター(タイターニア)
用に用意された人形殺しの専門家。

 一人は吸血鬼。名前はアーノルド。ダークスーツとインバネスに身を包んだ、大君主(オーバーロード)。
齢1万を超える最古参のエルダー。最強の生存本能と最悪の強運をもつ、はた迷惑な自殺
志願者。死を願い死神を求めるが、その死神の鎌が刈り取るのはいつだって他者の命だ。

 一人は吸血戦鬼。名前は匿名希望(インコグニード)。フードをすっぽりとかぶったや
せぎすの男。暗黒大陸より来た吸血殲鬼。黒歴史の闇より這い出した邪神を奉ずる暗黒の司祭。

 彼らは玉座に深く腰掛けた帽子屋(ウォレス)の周りを取り囲むように、展開する。

「裏切りものどもめ」

 はき棄てるように討伐隊の吸血鬼の一人が言う。

「……お前の言うように予想はついている。だがあえて聞こう。こんな騒ぎを起こし何が
目的だ」

 【彷徨えるオランダ人】が帽子屋(ウォレス)へたずねた。だが、それに答えたのはアリス。

「世界を救うのよ!」

 アリスがそう雄雄しく叫ぶ。

「世界を救うだと?滅ぼすの間違いではないのか」

 はき棄てるように【彷徨えるオランダ人】。彼女はそのまま先を続ける。

「この状況や構造からみて、お前はこの軌道エレベータ、いや倫敦自体を【交信機/降神器】
に作り変えたな。そしてこの軌道エレベータがその中心である呼び水の塔。神に呼びかけ、
神を降ろす為の器だ。かのバベルのごとくな」

 そこまで言ったオランダ人は、だが、と首を振りながら先を続ける。

「呼び出した神が素直に願いをかなえてくれると思っているのか?やつらは代価を求めるぞ。
願いが大きければ大きいほど、神格が高ければ高いほど、神威が強ければ強いほど、それに
見合うだけの代価を求めてくるぞ」

「意思のある神を降ろそうとは思っていません。降ろすのは力だけです」

 微笑を浮かべ、帽子屋(ウォレス)がいう。

「愚か者め。制御する意識なしに力だけを現世に呼んだらどうなると思っている。たちまち
のうちに暴走を始めるぞ。そうなれば世界そのものが蒸発する」

「意識ならばここにあります」

 彼女はそういって自分の頭を指差した。

「……己が身に神を降ろすつもりなのか?融合できると?その躯体ならば耐え切れるやも知
れぬが、人の思惟で神の力を制御できると?」

「もはやわたしは人ではないわ。人の生み出した情報の海そのものが【わたし】なのよ。そ
れはあなたも知っているでしょう」

 彼女は微笑を絶やさぬまま。

「わたしは人間としての身体と命(カタチ)を棄て情報の海と一つになったことで永遠を手
に入れました。次は神なる力をもって世界そのものと一つになります」

285 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 22:01:56

「その力で何をするつもりです?」

 人形の女王が静かに問う。

「わたし自身はべつに何も望んでいないわ。世界と合一すること、それ自体がわたしの望みよ。世界と融合し、永遠を手に入れること、それ自体がわたしの望みよ」

 帽子屋(ウォレス)は、人形の女王へと視線を移しそう答えた。

「ただ、わたしに協力してくれたお礼に、彼らの望みをかなえるつもりです。彼らの望みは
世界を救うこと。この世界を再生します。……最創世といったほうがいいのかしら。前任者
が途中で放り出したこの世界をよりよい姿に作り直します」

「……グノーシスにでもかぶれたか」

 苦々しい【彷徨えるオランダ人】の口調。

「そう思ってくれても結構よ」

 艶然たる笑み。

「やり直すのよすべてを。この世界のすべてを。この悪夢のすべてを!」

 悲痛なアリスの声。

「滅び(ワニ)がやってくる前に」

 大仰に肩をすくめピーター。西洋剃刀を手にしたティンカーベルがその周りをくるくる回る。

「わしは死ねれば何でもいいのじゃがね」

 ケダルそうな様子でアーノルド。

「……」

 不気味に微笑むインコグニード。

「……わかってはいたが、話し合っても無駄なようだな」

 【彷徨えるオランダ人】はため息をつくと人形の女王を横目で見た。永遠の少女は小さく
だがしっかりと頷く。

 その瞬間、【彷徨えるオランダ人】が動いた。

「刈取る者(チャードロス)よ!【暗黒の大鎌】を!!」

 詠唱破棄での高位魔術の展開。闇色をした巨大な死神の鎌(デスサイズ)が虚空より現れ、
真一文字になぎ払われる。その刃はあまりにも鋭く、その刀身は物質というよりもエネルギー
の塊に近かった。

 だがその一撃は何の成果ももたらさなかった。一番端の自動人形に接触する直前で砕け散る。黒い刃金が闇色の光となって宙で煌く。

 絶対領域。見えざる障壁によって、地獄の大公の力を借りた魔術は完全に防がれた。

「……量子の魔法か」

 舌打ちする【彷徨えるオランダ人】。防がれるのは予想していたが、完全に効果がないと
は思っていなかった。相手の力は予想よりも数段上だ。この威力は、通常ではありえない。
個体の力としてはありえない。先ほど自分で言った言葉が脳裏をよぎる。【交信機/降神器】。そして呼び水の塔。つまりは。

「……直結しているな。高次の存在と」

【彷徨えるオランダ人】の言葉にうっすらと少女(ウォレス)が微笑む。

 その笑顔が開始の合図になった。女王が、ロードヴァンパイアが、近衛兵が、エージェン
トが、エルダーが各々の得物に手を伸ばし、戦闘体勢に入る。呼応するようにアリスたちも
得物を抜き放ち、100を超える自動人形が量子干渉の動作に入った。

「はじめましょうか。始まりの終わり、終わりの始まりを。」

 少女(ウォレス)は微笑、こう囁いた。

「……然様なら」

286 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 22:02:10










――――――そして絶望が訪れた。














.

287 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/01/31(日) 22:05:59

まあこんなところかな。
まだ少し手を入れたいんだけれど、それは本編にはるときにでも。
そちらの導入を見てねたを取り込みたいという思いもあるしね。

……導入が長いのは、仕様というか病気なので気にしたら負けだよ。

あー、
「君は世界を救えない」
――リンダキューブ
がまた失敗している。何でかな?まあ、いいか。

288 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 22:22:36
 
大体分かった。(挨拶)
 
  
……まあ、こっちが書いてる導入も長いんでな。
とりあえず、気持ちで負けるのは御免だから気にしないことにするぜ。
 
そいつは兎も角、こっちの導入は今書いてて全体の8割ってとこだ。
今日中には上がると思うから、まぁ体を休めながら待っててくれ。
 
 
…ちょっとばかり好き勝手すぎるとこもあるかもしれないが、
そいつは貼ってからの話ってとこでな。

289 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:37:38
 
 
 
          ―――――誰かが選択を間違えた世界。
                   
                  /
                   
             選択を間違えた最悪の世界。  
 
 
 
 

290 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:38:45
>>


「これで、僕が知ってる情報は全部だよ」
 
 
ここは、破壊と静寂が支配する街並の一角。
ビッグベンの鐘に住人を“沈黙”され、怪物の蹂躙を受けて朽ち果てた元オフィスの一室。
ライフラインが生きていること自体が奇跡に等しい一室で、男が二人。
年の頃は20前半か、乱暴にソファーに腰掛けた青年。
そしてもう一人。ノートPCを開け薄闇の中モニターの光を浴びる、スーツ姿の青年がいた。
 
 
「かくして世界最後の希望、BigblueとBigsisterのドリームチームは敗北してしまいました。
 後はただ、世界は最創世という名の全消去を待つだけです。
 めでたしめでたし、ってね。……残念だけど、これは嘘じゃないよ。門矢君」
   
沈痛な面持ちで――彼が他者に対し、常に絶やすことの無かった営業スマイルすら
浮かべず――メガネを正し、スーツの青年は言葉を紡いだ。
軽薄さと洒脱さを感じさせる物腰の、異性を悩ませる端正な顔立ちの眼鏡を掛けた
青年である。そのセミロングの黒髪は、一房だけ青いメッシュで染められていた。
 
彼の名は【僧正(ビショップ)】。
Big sisterの請負屋にして吸血種族『Fung-gaia』の参謀にして、情報工作・各種交渉
の任に就くブレインの一人。
電情戦とはまた異なる、人心掌握に長けた情報と交渉のプロフェッショナル。
倫敦が誇る『千を偽り、万の嘘を吐く』、“亀”の異名を持つ仲介屋の一人でもある。
    
「あれ以来、少しだけ弱まったのは確かだけど」
  
その嘘を付くのを常とする彼が。嘘を付くのを生業として信条とする彼が。 
今、嘘偽りのない事実だけを告げている。
  
「鐘の音は今も倫敦全域に鳴り続けてるし、狂った元廃棄人形(フェアリィ)も増殖中。
 加えてクロックワークス社のアルケマトンも健在ときてる。
 あのクロロック伯爵は勿論、僕ら【四つの駒(チェックメイトフォー)】と“闇の牙”―――
 僕らの【王(キング)】も陣頭に立ってるけど、状況は極めて劣勢。
 Big Sister と Big Blueの連合も今までの争いと今回ので大物を欠いてるからね。
 そして、先の見えない消耗戦にPMCsも疲労が色濃い」
  
【王】とは、彼らの頂点に立つ王の一人だ。
運命の悪戯で並び立つ異父兄弟。彼らはその運命のまま戦い、だが宿命を乗り越え、
種族の宿命を変えるため二人の王として即位した。
一人は、東洋の向こうで人間との共存のため表に立つ“黄金の牙”。
もう一人は、この魔都で闇の権力を得るために裏に潜った“闇の牙”。
いずれも元は吸血種の王、その強大な力を高めるために作られた二つの鎧の名に因み。
その神祖にすらも匹敵する武威と畏怖に因み、魔鎧の名で呼ばれる二人の【王】。
 
だが、今はその“闇の牙”も劣勢を強いられていた。
単純な戦闘能力ならばBig sisterの中でも五指に入る、最大級のエルダーを除けば
武闘派屈指とまで言われたガイアの王。
しかし彼は倫敦を蹂躙するギガスに立ち向かおうとした際、帽子屋の放った刺客の襲撃に
見舞われ、砕かれた鎧と共に戦う力を失っていた。
   
【僧正】はそこまで告げて、インスタントのコーヒーが入ったカップを―――彼と彼の
仲間は話をするとき、常に紅茶ではなくコーヒーを愛飲する―――を口に運び、 
一息ついた上で続けた。絶望という名の、今倫敦を支配する事実を。
   
「【彷徨えるオランダ人】と女王、両トップの死亡は確認されてないけど……
 正直、戦力としては絶望的と言わざるを得ない。
 軌道エレベーターの不可解なまでのエネルギー集積量。
 そこから推測される被害、状況、そして結論」
 
もはや彼の言葉には、“事実”しかない。
人も、人形も、吸血鬼も。悪徳も狂気も暴力も虚偽も。
全てが平等に駆逐され始め、すべて等しくその活動を停止しようとしている。
魔都倫敦と、その魔都が存在する世界。
その誰かが間違い、争い、狂い、それでも生きてきた世界の合切は。
 
 
「―――このままだと、世界が終るのは時間の問題だね」
 
 
そう、【僧正】は極めて冷たい声色で目の前の“彼”に告げた。

291 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:39:18
>>
 
 
世界は、無数の“物語”で成り立っている。
その物語を、物語の世界を彼は破壊してきた。
彼自身の意思とは関係なく、彼自身の意志とは裏腹に。
  
「それで? 
 まさかこの世界が滅ぶのは、俺が来たからだっていうのか?」
 
冗談じゃないぜ。
そう苦々しい―――正に苦虫を噛み潰したような―――顔をあからさまに浮かべ、
“彼”―――門矢士は常と変わらぬ尊大な態度で言い放った。
  
「まぁ、一概に否定は出来ないけどね。
 君はほら、僕らなら皆知ってる前科持ちだから。一応。
 “世界の破壊者”クン?」
  
現に僕がこの世界にいるのは、君が原因のようなものだし。
そう言葉の最後にわざわざ付け加えて、【僧正】は意地悪そうに事実を述べた。
 
そう。対峙する男と同じく、彼もまた異なる世界からこの倫敦へやって来たのだ。
正確には“彼ら”―――”破壊者”の影響で自らの世界が破壊され、魔都の虚空へと
流れ着いた三人の“放浪者”。
フリーエネルギーの塊である彼らは故あって一人の王と契約し、それぞれが空位であった
幹部の座に付き王を補佐することとなる。共存のため、闇の道を歩む吸血種の王を。
実体を維持できない自らを自動人形という仮初の器に押し込めて。
帰るべき世界が修復された今もなお、新たな友との契約を果たすために。
 
「五月蠅い、そもそも何が【僧正】だ。かっこつけやがって。
 お前なんか亀野郎で十分だろ。この出刃亀が取り付いた人形野郎が」
「それ、どっちさ?」
「両方だ」
 
うんざりだという悪態。
売り言葉に買い言葉。
暫しの沈黙。
1秒、2秒、3秒……。
 
時間にして約10秒に及ぶ奇妙なにらめっこ。
その永遠に続くかと思われた膠着は、不意に吹き出した“僧正”の苦笑いで幕を閉じた。
 
「はいはい。
 やっぱり君は“破壊者”だよ、門矢君。
 君の所為で、僕の沈んだ心まで破壊されちゃったじゃないか」
 
冗談交じりで…ここに来て、始めて何時もと同じ“嘘”を付きながら“僧正”は苦笑する。
彼は破壊するもの、全てを壊すものだ。
だが、やはり今の彼は悪ではない。少なくとも、忌むべき悪党では。
旅が彼を変えたのか。彼が旅という運命を変えたのか。
かつて【僧正】の仲間を救い、“破壊者”としての役割を終え、自分の旅を始めた彼を。
  
そう、今ならば彼に。
滅びつつあるこの世界の未来を。
この"依頼”を安心して託すことが出来る。
“僧正”はそう確信した。

292 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:40:38
>>
 
「まぁ―――それはともかく、僕の言った事は本当だ。
 そしてこれから僕が言うこともね。
 
 そこで君に依頼したい。特別な依頼をね。
 今まで君たちに仕事を仲介してきたネストの【亀】として。
 Big sister請負部隊の交渉屋【僧正】として。
 
 いや……辛うじて残ったBig sisterとBig blueの生存者、双方の代理人として」
 
  
―――報告書にて。
この世界での“彼”は、あの悪魔退治屋にも劣らない気分屋の便利屋。
人当たりの良い老人のオーナーと、事務所を切り盛りする年若き女所長。
お調子者な助手に、自称怪盗の居候、そして自称写真屋の5人所帯。
 
 
―――住人の証言。  
彼らは誰も知らないうちに何処かからやって来て、何時の間にか馴染んで、
この魔都で生きて丁度1年。
この街の多様な住人どもと共に過ごして1年が経つ。
 
 
―――目撃者たちは口を揃える。
人も、吸血鬼も、人形も、深き者であろうとも。
その便利屋達を止めることは至難であると。彼らとは争うなと皆が言う。
そして彼らを語らぬもの語れぬものは皆、等しく彼らに打ち倒されたのだと。
  
 
――――信じようと、信じまいと。
狂った街、救いなき闇が支配する倫敦で語られ始めた新たな都市伝説。
かつて囁かれた“右手の男”のように、再び語られ始めた仮面(マスカレイド)の
都市伝説は、この魔都の狂気を変えることはなく。しかし数々の闇に脅かされる者
たちの間で、闇に潜む者たちの間でまた密やかに囁かれる事となる。
 
 
――――信じようと、信じまいと。
彼らは、彼は。
旅を続けてきた彼は、今確実に、此処にいる。
  
 
 
「この終ろうとする“世界”を。
 この世界を終らせる“物語”を―――ミスタ・ウォレスの計画を、破壊してほしい」
 

293 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:43:20
(※このレス許可を得た範疇以外のキャラを出したため、事によれば使いません)
 
>>
 
 
「ねえねえ」
「なんやリュ…【騎士(ナイト)】 、んな忙しい時に」
「あいつ、殺していい?」
 
 
そう言って、髪の一房を紫に染めた少年は遠くのファージを指差した。
つい先刻“転進”を宣言し、拠点に押しかける形で合流したその指導者をである。
 
「あかんあかん、あんな奴でも味方は味方や!
 俺らで仲間割れなんぞしとってどうする!」
「だってさー、アイツ本当ムカツクんだもん。
 皆で頑張ってるとこに威張り顔で押し掛けてさ。皆も迷惑してるし。
 そもそもアイツってアレでしょ、自分から『これからは貴方達の子分ですエヘヘ』って
 僕らの方に尻尾振ってきたんでしょ?」
「…まぁ、それは当たらずとも遠からずやけどなぁ」
「だったらいいじゃん!足手まといになる前にさっさと殺っちゃおうよ!
 というか今決めたー!答えは聞いてない!
 それにあの中華のお姉さん死んじゃったのも元はあいつの責任じゃないか!!
 あのお姉さん好きだったのにぃ!」
 
そう捲くし立てて【騎士】は地団太を踏む。
この駄々を捏ねる少年がお姉さんと呼ぶのは、『血族』が長の妻であり最優の凶手と
謳われたエルダーである。
請負部隊である彼らは、かの血族とは幾許かの交流があった。
同じ始末屋同士としての会合を主としたビジネスライクな交流だが。
 
その時、決まって退屈している【騎士】の相手をするのが彼女だった。
【騎士】が悪戯をしては彼女が鉄拳制裁で躾けるというややバイオレンスな光景だったが
成る程。確かに【騎士】は彼女に良く懐いていたし、彼女も案外【騎士】のような子供を
あやすのは満更ではなかったように見えた。
そんな記憶を――――彼女がファージ最強の女戦士と戦い、そして相打ちとなってから
1週間ほど前の情景を、【城兵】は思い出す。
 
 
「あーもう殺す!やっぱり殺す!絶対殺す!
 蜂の巣にしてバラバラにして殺っつけて晒す!答えは聞かない絶対聞かない!!」
「だからあかん言うとるやろ話きかんかい!」
  
そう言って、容姿以上に幼い【騎士(ナイト)】の癇癪――子供ゆえの無垢な
残虐性を孕んだそれ――を、巨漢の【城兵(ルーク)】が見事なてっぽうで殴って抑える。
Big sister所属の獲物を選ばぬ請負部隊、牙持つガイアの騒々しい始末屋。
トリガーハッピーの【騎士】と、怪力無双の【城兵】。
二人のどこか喜劇じみた奇態は、彼らを知るものならば日常だと皆理解していた。
此方に気付いた、その到着早々怒鳴り散らす当の指導者以外は。
   
「…確かに、俺もあいつは好かん。だがな、味方を歓迎するんは【王(キング)】の指示や。
 俺らが契約したあいつとの約束や、その約束を破るわけにはいかん」
「…。それは分かるけど…」
 
あの指導者は虫が好かない。それは紛れもなく【城兵】の真意だ。
無論、豪放磊落な彼の性向からして気に食わないというのもある。だが最大の理由は
もう一つあった。
議会の機嫌取りで独走した指導者の命令で引き起こされたも同然の、ファージと血族
によるエージェント同士の殺し合い。
その暗闘で妻を失い、怒りに狂い暴走した血族のファミリーを粛清したのは他でもない。
同じく貴族の請負集団であった彼らが一族、それも【騎士】と【城兵】に【僧正】、そして
トップである【王】ら精鋭の4人であったのだから。
 
故意か無意識か、その会話は余さず周囲に聞こえるような音量で響いていた。
まぁ、これも常の風景なので恐らくは後者なのであろうが。
 
「まぁ、そりゃあ確かに、戦場は不幸な事故が起こることもあるけどやなぁ?」
「不幸な事故?」
「おう、例えばな、前線指揮むなしく怪物に襲われ奴らの仲間になるとか」
「なるとか?」
「奴らに捕まってやむを得ず、奴らごと倒して尊い犠牲として語り継がれるとか」
「れるとか?」
「戦線の混乱で後ろから斧で叩き割られたり、誤射で蜂の巣になったりとかな」
「うんうん、それで?」
 
 
ところで。
今この、こめかみに血管が浮き出て今にも爆発しそうだが、二人の悪名を知っている
故に手も口も出せず今にも憤死しそうになっている指導者は誰であろうか。
ついでに最大の戦力であった紫髪の始末屋を命令違反で失い、彼女と刺し違えた美凶手
の夫に死に物狂いで報復され、あわや滅殺される所を目の前の二人を含めた請負部隊
に助けられた指導者は。
そして、それら失態の所為で取り入った貴族からも厄介者同然に扱われ、今や不足した戦力
で元廃棄人形相手に敗走を繰り返す羽目に陥っている指導者は。
そう、この百戦百敗の更迭の冷笑で万古に永く輝く不滅の偉勲を想像された革命の冷笑は。
その名は?
その名は?
その名は?
その名は?
 
 
 
「あ」
「あ」
 
そこでようやく二人は気付く。
赤熱を超え蒼白を凌駕し、土気色の顔でプルプルと震える指導者。
互いに顔を見合わせる、【騎士】と【城兵】。
一触即発の空気。
ただし多勢に無勢。ホストが7でゲストが3。
加えてホストの全員が屈強な請負部隊。
ほぼ全員が獰猛な吸血種。幻想種すら殺してのける生粋の戦闘種族たち。
尋常ならぬ気配を察して、その全員が一同に集合したとき――――
 
  
 
 
結論として、その指導者にはゲストルームの奥で身の安全を確保してもらう事となった。
もちろん胃薬は持参である。 
 
 
 
まぁ――――それはそれで、また別のお話(閑話休題)。

294 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:45:47
>>


 
 かつて、この狂った世界に怒る男がいた。
 過ちと絶望と狂気が闊歩する世界に、理不尽な世界に憤怒する男が。
 
 
 男は科学者だった。
 それも天才と称されるほどの科学者だった。
 その優れた頭脳は、だが何よりも世界の過ちを見出し、故に世界を許せなかった。
 人が異形に蹂躙される世界を、選択を間違い続けている世界を。
   
  
 男は“組織”に身を寄せた。
 歪んだ世界を破壊し、破壊を終えたその世界をより良き形で統治する。
 世界征服。それも、数多の次元世界への侵略/救済を掲げる偉大なる大組織に。
 
 
 だが、それも歪んだ理想であると男は知ることとなる。
 男が最も憎む、彼が生まれたあの世界と同じ。いやそれ以上の悪意であると。
 程なくして男は組織を裏切った。
 だが、男は組織に捕らえられ粛清が行われた。
  
  
 それより後。
 霧の晴れぬ倫敦に、一つの都市伝説が囁かれる。
 他の怪人譚と違うのは、彼は人々を襲わない。
 襲うのは人形であり、吸血鬼であり、深き者であり、そして悪人だけである。
 失った右手を機械と変えて、悪を憎み戦い続ける“右手の男”。
 生まれた世界を愛するが故に憎み、それでもこの世界に生き続ける人々の為に戦う仮面(マスカレイド)。
 
 
 悪党殺しの男。人形殺しの男。吸血鬼殺しの男。
 人形殺しの代名詞にまでなったあの男。
 
 
 鐘が鳴り響き、スモッグの晴れぬ世界。
 ここは倫敦の世界。男が生まれた悲しき世界。
 
 
                          ―――それもまた、この世界の“物語”。


295 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:47:27
>>
 
 
 「それで、奴に依頼したのか?」
 
Big sisterの生存者が集う反抗拠点。
元は某国の大使館であった建物、その執務室らしき一室に二人の男がいた。
片方は白にして黒。上等な椅子に腰掛け、目の前で両手を組んでいる。
左手に黒のグローブをはめ、白いスーツに身を包んだ黒髪の青年だ。
それも、倫敦の住人としては珍しい純粋な日本人―――もっとも、それはある意味
で誤りなのだが。
彼は吸血種だった。とある太古の真祖が架空元素を用いて創り上げた
異形の眷属。その獰猛な一族を統べる若き王の一人であった。
 
「…正直、彼には済まないと思っている。
 だが、今は両陣営共に倫敦の壊滅を食い止めるのが精一杯だ」
 
そう言って“闇の牙”―――奇しくも倫敦に来た目的/緊急措置ながらも、
伯爵の下で生き残ったBig sisterサイドを纏める立場―――若き吸血種の【王】は、
心より悔いるように、今頃別の所で依頼を受けているであろう、倫敦で得た親友に陳謝した。

「だが、いや…だからこそやらねばならない」
 
最初に問うたのと同じく、事の句を継いだのはもう一人。
向かい合うようにして立つ長身。
此方は黒にして白。ダークスーツに白皙の美貌を称えた長髪の男。
 
「伯爵の呼んだ増援が駆けつけるにはまだ時間が掛かる。
 スレイヤー卿たちも同様だ。…いや、恐らく間に合わないだろう」
 
日本の退魔機関を指揮する半吸血鬼、そして吸血鬼と人間との共存を模索する“黄金の牙”
の協力者として暗躍する“護る者”。
自らを幻也と称する男は、涼やかな声で残酷な事実のみを告げた。
 
「…このタイミングで、『機甲解放戦線(イレギュラー)』が宣戦布告。
 一斉に暗黒帝国へ侵攻を開始したとの情報が入った。私がこの街へ来る途中にな。
 裏で結託していると推測される騎士団もそうだが、全てはネットワークを介してあの
 ウォレスが仕組んだことだろう。
 このままでは彼らが到着するころには…倫敦は、既に消滅を迎えているのは難くない」
     
世界秩序を焼き尽くす“刷新”を唱える薔薇十字騎士団。
自らを新たな“種”と断言し、世界規模で種の闘争を引き起こそうとする“Σ”に率いられた
機械仕掛けのイレギュラー。そしてそれらの忌まわしき結託。
あの月面基地で起きた惨劇も。加えてマイエル=リンク公が犠牲になった衛星落下事件も。
それらも全ては裏で彼らのエージェントと、あの狂える帽子屋が関わっていたという説が、
今や公然の事実だと認識されていた。
 
彼らは共に主張する。表で闇で。人類の、従来の生命の不要論と限りない憎悪を。
そして、自らこそが真の超越者であると声高に。
或いは、その驕りがあるからこそ彼女の狂気に賛同したのであろう。
再創世による崩壊も、進化した自分達ならば逃れられると信じて。
無論、それが誤りであると彼ら自身も知らぬまま。
  
「…外からの増援は期待できない、という事か。
 そしてそれは君達も同じ――――そうなんだろう、有角?」
 
【王】は己の無力さを噛み締め、悲痛な表情を崩さない。
既に両勢力―――フリーのエージェント・傭兵・便利屋/士の仲間である仮面
(マスカレイド)達も含めて―――の戦力は、現状を維持するだけで精一杯だった。
そして、倫敦以外の戦力も同じく。
退魔機関の指揮官である幻也だが、彼が来たのは増援が目的ではなかった。
彼は【王】にある物を渡すため、急遽日本から倫敦まで飛んできたのだ。
 
世界同時に起こりつつある混乱は、日本もまた例外ではない。
帝都に封じられていた筈の魔人が神話の存在となった夜刀の神と手を組み、
日本全土を奈落へ堕とすべく活動を開始したのである。
『百夜計画』―――同じく帽子屋の計画に賛同する形で蜂起した、新世界を望む
外法集団の恐るべき計略によって。
そしてそれ故に彼は任務を終え次第、陣頭指揮のため日本へと戻らなければ
ならなかった。
 
「…済まない。だが、私も急ぎ戻らなければならん。
 奴らがあの“城”を召喚するのを防ぐには、私の力が必要になる」
  
刻一刻と世界の終焉が迫り来ようと。
刻一刻と絶望が世界を侵食し続けようと。
例え、いかなる抗いも意味をなさず、徒労と終り、この世界が潰えようと。
  
「たとえ世界が終わるとしても、俺は俺の戦いをせねばならない」
 
そう、男は新たな道を歩んで手に入れた、戦友の一人に告げる。
  
戦い続ける者がいる。
自分の“物語”を紡ぐため、終わりを前にしても生きようとする者達がいる。
最後まで、自分の“物語”を続ける者達がいる。
それは、例えば更なる殉教の十字架を背負って進む彼のように。 
 
 
 
                           ―――それもまた、この世界の“物語”。

296 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:48:53
>>
 
 
 「大体分かった。…あんたに一つだけ頼みがある」
 
 
 そう言うと士は向き直り、【僧正】の方を見た。
 この世界に来てからの悪友の一人。
 何度も騙されては騙し返し、それでも奇妙な友情を育んできた仲介屋を。
  
 
 「ユウスケと夏…いや、所長のやつによろしく言っといてくれ。
  『この街も長居しすぎた。また旅に出ようぜ』、ってな」


 彼の唯一の心残り。
 彼と一緒に旅をしてきた仲間達。この倫敦で共に生きてきた仲間たち。
 そして今は生き残った人々を守るため、他の地区で怪物と戦う彼の仲間達。
 
 
 「――――分かったよ、そう伝えておく。“必ず帰ってくる”ってね」
 「相変わらず嘘吐きだな、お前」
 「よく言われるよ。……じゃあ、“また”」
 
 
 そうして、男は歩き出す。

297 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:50:59
>>


「嘘つきは泥棒の始まりだよ、士」
 
 
“破壊者”が廃墟と化した街並を行く中、再び彼を呼び止める者がいた。
倫敦を騒がせていた神出鬼没の仮面(マスカレイド)の一人。
仮面の軍団を召喚し、狙った獲物は必ず盗むという豪語する“怪盗”。
そして、士と共に数々の世界を駆け巡った戦友の一人でもあった。
 
その彼が、気障なまでに爽やかな青年が士を呼び止める。
便利屋と依頼主達しか知らないはずの“真実”を言葉に載せて。
  
「…どこまで聞いてた、お前」
「全部。というよりは、最初からかな。あの仲介屋から話は聞かされてた。
 君が依頼を受ける直前に、前もってね」
 
その“怪盗”の言葉を聞いて、だが彼は黙って歩調を早める。
何も言わずただ過ぎ行くように。しかしそれを見過ごされる道理はなかった。
彼の悪友は割って入るように立ちふさがり、当然の疑問を容赦なくぶつける。
   
「何故、皆に黙って行こうとする?
 仲間じゃなかったのかい。僕たちは」
 
だが彼から帰る言葉はない。弁解も、謝罪も、突き放す言葉も何一つ。
そんな戦友の態度に怒りを覚えてか、“怪盗”は彼のコートの襟首を掴み上げ
問いただす。まるで…いや、正に今まで溜めてきたものが堰を切ったかのように。
  
「士、分かっているのか!?
 破壊者としての役割を終えた君は、確かに自由だ。
 それこそ旅をするのも、生きるのも死ぬのもね。けどだからって君が犠牲に―――!」

「……違うな。だからこそだ、“怪盗”」

「何だって?」 
 
静かに、しかし力強く襟を掴んだ腕を外して彼は答える。
一切の揺るぎ無い眼差しで、そして常と同じく尊大な物言いで。
 
「俺は旅をしながら、自分に何が出来るのか。俺自身の“物語”をずっと探していた。
 それこそ“世界の破壊者”として世界を回ってた頃からな。
 そしてこの倫敦で腰を落ち着けてみて…ようやく答えらしいものが見つかった」
 
「答え?」
 
「そうだ。他の“英雄(Rider)”たちが戦い続けてまで守ろうとしたもの。
 それは多分、平和とか自由とかそんな奇麗事だけじゃない。
 その世界の住人が生きてきた証……そいつ等だけの“物語”だ」

そう、彼は何時もと変わらない。  
何時もと変わらない尊大な態度で。
何時もと変わらない自惚れた物言いで。
 
「だから俺は―――その“物語”を護る。
 たとえ絶望の世界でも、最悪の世界でも生き抜いて紡がれてきた“物語”をな。
 それが、今の俺の“物語”だ」
   
そう。
世界の破滅を目前にした時にも関らず、何時もと同じ『門矢士』で。
彼は、“破壊者”は自分の決意を言い放った。 

298 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:52:17
>>
 
 
「俺は破壊者だ。世界を破壊することしか出来ない。
 もちろん、俺に世界は救えない。
 だから、この世界の未来を作る気なんてものは毛頭ない」
 
そう、彼は破壊者であり旅人だ。
世界を救うのは破壊の産物、彼は物語を持たない異邦人。
そんな彼に、未来を作る資格はない。
だが――――。
 
「この世界の未来を作ってゆくのは、この世界で“物語”を紡ぐ住人たちだ。
 だから俺は只、世界を破壊する。
 ――――無理やり幕を引いて終わらせようとする身勝手な“世界”をな」
  
だが、彼は見てきた。
旅を続け倫敦に辿りついた彼は見てきた。
この街を。この絶望と最悪の街に生きる住人達を。
この街を彩る幾つもの“物語”を。
 
そう、彼は見てきた。
時に救いがなく、時に狂気に溢れ、それでも生きた証として紡がれる“物語”を。
必ず歪んで現像されるカメラのファインダー越しに、様々な“物語”を。
彼が撮ってきた、この倫敦の“物語”を。
 
だから、彼は決意する。
この世界の“物語”を否定する、この世界最後の物語を破壊することを。
そうして訪れる沈黙。
一時のそれは、しかし互いにとって永遠に感じられた。
 
「……全く、君って奴は」
 
そして。
彼の戦友である“怪盗”は、その揺るがない決意を理解した。
苦笑したような呆れたような、そんな複雑な表情を浮かべながら。
  
「分かった、分かったよ。
 一度決めたらてこでも動かないのが君だ。
 ならもう止めはしない。精々、君の力であの人形を破壊してくれたまえ。
 ただし、絶対に。絶対に必ずだ。
 あのお宝が手に入らないのなら、いっそ君が壊してくれた方が清々する」
 
そう言って“怪盗”は何時もの気障な調子で指鉄砲を作り。
いつもどおりに、虚空へと狙いを定め討ち抜いた。

299 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:53:18
>>
 
「…お前、あれまだ狙ってたのか」 
 
「当然さ。LadyLの体に、Big sisterのシリンダー。
 どっちも、元々は僕が追いかけてたお宝なんでね」
 
「元々じゃないだろ。むしろお前が横合いから盗もうとしてただけだろうが。
 そういうのを火事場泥棒っていうんだ、このバ怪盗」
 
そう半ば呆れながら、名探偵の末裔を名乗る少女との一件を思い出す。
幻の格闘技と幻の『俺の必殺技』が激突したあの事件。
目の前の悪友がとある企業の研究成果を横合いから掠め取ったおかげで、更に混乱を
引き起こした事件。おかげでBig blueとBig sisiterの双方に目を付けられ、随分と生きた
心地のしなかったあの一件を思い出す。
この街に来てから初めて、この自称怪盗を心底呪ったあの事件を。
 
「いやぁ、この街も色々いいお宝があったよね」
 
「おかげで俺達が迷惑を蒙ったことも引っ切り無しだ全く。
 ストレスで俺やあいつらの寿命をマッハにするつもりかお前、いい加減にしろ」
 
そうして続く売り言葉に買い言葉。
間も変わらず気障な嫌味を、間も変わらない尊大な態度で返す。
旅をしていた時から今まで繰り返してきた軽口の応酬。
そんな、二人にとって日常となったやり取りを楽しみながら。 
 
 
「もって行けよ、士。僕からの餞別だ」
 
そう切り出して士の悪友――この1年に渡って罪都を騒がせた怪盗は、士に紙片の
束を投げ渡す。それは彼が並行世界を巡り手に入れた“お宝”。
各々の世界の英雄と、ある時は味方として、またある時は敵として英雄の“物語”を
紡いだ戦士達の情報(コード)を閉じ込めたカードの数々であった。
 
「折角なら手札は多い方がいい。
 ――――“あれ”を使わないに越したことはないからね」
  
そう告げる友の表情は固い。
便利屋として士が関わった、悪名高い“ゼロ番街の惨劇”。
その禁忌の一区画が崩壊するほどの激戦場で起こった事を、彼は忘れていなかった。
 
「あの男も最期に言ってたろう? 君は本来、破壊者としての役割を終えている。
 役割を終えた以上、あの力は過ぎたものなんだ」
 
“あの男”。
彼がそう呼ぶのは、この世界では一人だけだ。
ゼロ番街で士を、危機に瀕した“破壊者”を助け、その命を散らした男。
その男が死に際に遺したのは警告。
破壊者にとって唯一過ぎたる力となった、最大の武器に対しての警告だった。

300 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:54:09
>>

「そいつだけは約束できないが…まぁ、これは貰っておくぜ。
 ―――じゃあな、“怪盗”」
  
そう後ろ手を振って士は立ち去る。いや、立ち向かう。
最後の旅を前にして、何時もと変わらない態度で立ち向かう。


 『この終ろうとする“世界”を。
  この世界を終らせる“物語”を―――ミスタ・ウォレスの計画を、破壊してほしい』


 『ただし、君を回収することは出来ない。
  3度に渡る進攻で、システムのプロテクトが強化されている。
  システム掌握の出来るドールがいない今、可能なのは電情戦に優れた
  エージェントによるハッキングだけ』
  
 
 『それでようやく僕達が確保できた軌道エレベーターへのルートが一つ。
  だけど、それは上昇専用の片道切符だ』
  
 
 『そして君がミスタ・ウォレスを首尾よく撃破しても、次はシステムの再掌握が
  残ってる。彼女によって侵略されたシステムの復旧がね。
  自壊プログラムの危険性を考慮して、作業は撃破の確認後ただちに実行される』
  
  
 『それにより、軌道エレベーターは擬似的なシャットダウンに移行する。
  一切の運搬システム、ならびに生命維持機能を停止。
  そして補助機構の時空連結システムによる空間の固定・安定処置を含めてね。
  だからたとえ、時空を越えることが出来ても君を回収することは不可能になる』
  
 
 『君に渡すのは地獄への片道切符。改めて聞こう』
 
 
 『死神と地獄へ相乗りする勇気――――君にはあるかい?』
 

 
 
そう、この旅は片道切符。
それも終着駅への片道切符。
それを彼は、掛替えのない戦友は、何時もと同じように歩いてゆく。
  
 
だから彼の友は。
もう一度、“怪盗”は何時も癖でやるように指鉄砲で狙いを定め。
去り行く背中へ『BANG』と一人、引き金を引く仕草で彼を見送った。

301 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:55:13
>>


――――――この世界は狂ったように鳴り響く鐘の音に包まれ終わる。

 
 

「まぁ、けど悪くなかったかな。この倫敦での生活っていうのもね」
 
物言わぬ廃墟と化した街並を見て、【僧正】は一人ごちる。
千の偽り、万の嘘。
正にそれこそが罷り通る悪徳の罪都は、それゆえ彼にとって住み易いといえた。
デートに誘った自動人形がディナーの後噛み付いてくる、なんてスリリングな
ハプニングを除いては。
 
「奇跡的にミス・ドミノも生還できたし。
 彼女をテレビでもう見られなくのは、僕も嫌だったからねぇ」
 
あのプロデューサーに色々紹介してあげた甲斐があったよ。
そんな軽口を叩き、柄にもなく奔走したことを思い出す。
まさか、あのヘカテの蜥蜴が話に乗ってくるとは思わなかったが。 
 
「そういえばさ、【僧正】が話を聞くのって女の子限定じゃなかったっけ?」
 
そんな【僧正】にしみじみとした独り言に、素朴な疑問をぶつけるのは幼き【騎士】。
 
「まぁ、そこはちょっとした大人の嘘ってコトでね。お仕事はまた別のハナシ。
 【王】との“契約”でもあるしさ」
 
そう言って眼鏡を直しながら、【僧正】は自分の言葉を噛み締める。
  
そう、契約だ。
【王】がその目的を果たすための権力を得るまで、彼を補佐する。
それが時空の放浪者だった自分達と彼との契約。
自身をエネルギー体に変換できる彼らの種族は契約者の願いを叶え、契約者の時間に寄生する。
本来は過去に飛び、他の時間軸を破壊して自分達の未来を確保するため獲得した特性である。
 
そして曲がりなりにも契約者の願いが叶った以上、彼らの役目もまた終わる。
再生された元の世界に、帰るべき世界に帰れるのだ。
だがその前に、どうしてもやっておく事があった。
  
「おう、最初にあいつに出会えたんが何よりの幸運や。
 このひん曲がった街の中で、あいつは一番信じられる男やからな!
 全く、あいつは泣けるくらいイイ男やで! ……泣く?」 
 
蓬髪の一房を黄色に染めた、正に熊のような風貌の巨漢―――【城兵】も
また回想する。
彼らがこの絶望の街を悪くないと感じられたのは、他でもない。
この世界における“契約者”、【王】という最良のパートナーが居たからだ。
希望として信じられる男が、この絶望の都に居たからだ。
 
だから、彼らは最後の奉公(アフターサービス)をする事にした。
今まで恩を受け世話になった礼として、正に命を賭けた大サービスを。

302 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:55:59
>>
 
そう。
この街並の地平線まで埋め尽くす、増殖に増殖を重ねた元廃棄人形。
一個大隊すら押し包み蹂躙する怪物(フェアリィ)どもを、一匹も通さずに
此処を死守するという出血流血大流血の大サービス。
  
「後ろは空気くんと所長さんが守ってるけど、女の子に無茶をさせる
 わけにはいかないしね。空気くんはともかくさ」
 
そう遥か後方、避難所の入り口で備える“破壊者”の仲間を思う。
仲間を頼む。それが彼の最後の願い。
叶える義理は本来ないが、これも迷惑をかけてきたお詫び代わりだ。
―――それよりは、彼女をお勧めのレストランにご招待したかったんだけどね。
そんな益体もないちょっとした後悔をしつつ、【僧正】は連れている仲間に忠告する。
   
「ああ、分かってると思うけど。
 今の僕達の体は、僕らの本体とほぼ同化してる。
 ちょっとでも分離のタイミングを間違えて、いいのを貰っちゃうと……。
 ―――まぁ、“それでも、大丈夫”だろうケドさ」
 
千の偽り、万の嘘。
仮初の【僧正】は何時だって嘘を付く。
優しい嘘も、残酷な嘘も。全て等しく嘘を付く。誰かを騙し、欺き、そして元気付けるために。
 
「下手な嘘やなあ自分、そんなん俺だって騙せへんぞ」
「え、そうかい? 君達なら騙せると思ったんだけどなあ」 
「そんなことより全部倒すけどいいよね、答えは聞かないけど!」
「ま、そうだね。そんな事よりお仕事お仕事」
「おう、正に最後の大仕事や……泣けるでぇ!」
「じゃあ、行くよ。二人とも」 

303 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:56:59
>>
 
 
そして罪都倫敦の朽ち果てた廃墟に、突如として旋律が鳴り響く。
例えるならそう、プラットホームで列車がその出発を告げる音階。
耳朶を打つ電子音の旋律。
ただしこれは駅ならぬ倫敦の闇で聴こえ続けた、【王】に仕える奇妙な三騎の。
その到来を意味する旋律だ。
Big sisterの請負部隊『Fang-gaia』、その最精鋭の到来を告げる悪夢の音色。
実体化されたフリーエネルギーの装甲を纏い、粛清を行う仮面(マスカレイド)達の
喇叭の音が虚空に響く。
 
 
――――仮初の【僧正】が。
 
                            「君達、僕に釣られてみる?」
 
――――仮初の【城兵】が。
 
                            「俺の強さに、お前らが泣いた!」
 
――――【女王】を代行する仮初の【騎士】が。
 
                            「倒すけどいいよね? 答えは聞いてない!」
 
 
場所は路地にして死地。
二重三重に怪物どもが犇く住宅街の一角。
先は生存者たちの避難所へと続く最終防衛ライン。
奇矯な死出の旋律が今、“変身”した三騎と共に鳴り響く。
  
  
 
                            ――――それはまた、もう一つの“物語”。

304 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:58:06
>>
 
――――――この世界は狂ったように鳴り響く鐘の音に包まれ終わる。
 
 
 
「待たせたな」
 
 
そう眼前の相手に言い放つと、【王】は幻也から受け取った円盤状の物体を握り締める。
其れは彼の種族が開発した蛇形の人工魔獣。
そして、それはかつて彼が愛用していたもう一つの鎧を召喚する為の礼装。
並び立つ王の誓いと共に封印した、最も古きSAGAの魔鎧を。
 
対峙するのは金色の体毛を光らせる人造魔獣。
祖国を失い、組織を失い、本来の体と魂さえ失った人狼(ワーウルフ)。
イカれ帽子屋の手配で、『機械仕掛の魔道士』の手によって改造された元『大佐』は、
虚無を湛えた瞳で【王】を睨む。
彼こそは走狗。邪魔となる指導者たちの暗殺という命令のみを刻みこまれた、
黄金色のフェンリル。
プラズマ流を帯びた合金製の爪牙を剥き、帽子屋の哀れな狗は戦いの構えを取る。
彼が仕留め損ねた、若き吸血種の王を今度こそ屠るため。
 
 
【王】は皮手袋を脱ぎ捨て、左手に刻まれた紋章を掲げる。
薔薇を模した、牙持つガイアの王の証たる紋章を。
 
 
「貴様に王の判決を言い渡す―――死だ」
 
 
場所は砦。
廃墟と課した倫敦の、意志と命あるものが集う最後の拠点。
 
 
                            ――――それはまた、もう一つの“物語”。

305 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/01/31(日) 23:59:08
>>
 
――――――この世界は狂ったように鳴り響く鐘の音に包まれ終わる。
 
 
 
動かなくなったバイクを乗り捨て、その男はアスファルトに降り立った。
金髪をソフトワックスでゆるやかに逆立てた、中性的な顔立ちの男。
『ストライフ・デリバリーサービス』。
そんな名前の運び屋を一人営む、蒼く光る瞳の男。
 
男の内ポケットには1枚の写真。
尊大な態度の自称写真屋が撮った、酷くブレた1枚の写真。
だがその歪んだ写真には、男の掛替えのないものが写し出されている。
 
それは男の過去であり記憶の奥底に仕舞いこんだ傷。
上官にして親友であった男と、憧れであり恐怖であった英雄の姿。
そして自分の過ちで失った友であり、己にとって絶対に勝てない存在だった
銀髪のソルジャー。
 
だが、男はその過去を断ち切る事となる。
あるIBMからの依頼、その脅威として立ちふさがった死んだはずの英雄。
過去の傷跡を抉られ、心を壊され人形にされようとした中。
そんな絶対に勝てない悪夢に横合いから殴りかかった“破壊者”と共に。
 
―――結果として。
男は幻想の断片から再来したと嘯く英雄を、自らの“絶対”を破壊した。
英雄を利用し、『新製品』を得ようとした神を名乗る愚かな吸血鬼ともどもに。
  
 
そんな過去に思いも馳せず、男は前を睥睨する。
軌道エレベーターまで続く一本道は、相変わらず怪物で埋め尽くされていた。
ヒトも人外も等しく喰らう怪物(フェアリィ)の大群。
その大集団を切り伏せ、エレベータへと続く道をデリバリーするのが今回の仕事だった。
 
既に後ろから此処へ続くルートは、男と同様の依頼を受けた悪魔狩人が受け持っている。
赤いコートの大胆不敵な気分屋。その尊大さは自称写真屋にも劣らない。
 
男は知らないことだが、その悪魔狩人もまた1枚の写真を今懐に忍ばせていた。
今はこの世にいない敬愛する父と母が写った、歪んだ写真。
父より受け継いだ誇りを思い出し、この都を魔界にしようとした実兄を討った後。
出世払いだと記念で撮った、とっておきの1枚。
 
 
そんな奇妙な因果は露知らず、男は背中の大剣に手をかける。
そう、知らないことだ。
男はただ、己の請け負った仕事を果たす。
あの尊大な写真屋を、自分を“破壊者”と嘯く彼を通すため、その為の道を拓く。
 
そう。
幻想の彼方に消えゆく英雄が遺した呪詛も。
この絶望が支配した世界も。
悪魔狩人が依頼を果たせず道が途絶えるという杞憂も。
“破壊者”が敗れ、この倫敦が消滅するという可能性も。
 
 
「――――――興味ないね」
 
 
そして、男は大剣を手に取り一歩を踏み出す。
此処は死線。
軌道エレベーターへの道に繋がる、もっとも危険なデッドライン。
 
 
 
                            ――――それはまた、もう一つの“物語”。

306 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 00:00:31
>>
 
 
――――――この世界は狂ったように鳴り響く鐘の音に包まれ終わる。
 
 
 
 
―――嗚呼、いいキモチだ。
 
そう道化は呟いて、死と破壊のニオイが充満した都を見下ろす。
彼は罪都に現れた銀髪の英雄と同じく、幻想の断片から黄泉返った破壊の化身。
 
巴里に向かった他の“同士”たちとは別に、彼だけはこの終焉の地に残っていた。
自分以外の存在が、全能の神を名乗るのに腹を立て。
それ故に誰よりも早く、この倫敦を破壊しつくすためだけに。
 
 
そう、破壊、破壊、ハカイ。
全部ぜんぶゼ〜ンブハカイ、何も何もかも赴くままにぶっ壊す。
全ては平等に愚かしい。
総ては平等に汚らわしい。
すべては平等に価値がない。

だが、こんなに絶望に溢れてるのに、何故心が壊れない?
なぜ、私のように皆、心が壊れない?
  
なぜ、何故、なぜ、なぜ、何故、なぜ、なぜ、何故、なぜ、なぜ、何故、なぜ、なぜ、何故、なぜ?
どいつもこいつも、どいつもこいつも、どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも
  
何故、まだ諦めない。何故諦めない奴等がいる?
お前達はカスだ!カス以下のカスだ!カス以下のカス以下のカスだ!
 
そう。
みんな壊れてしまえ。全てはいずれ壊れていく。

そう、お前も。  ――――最強のエルダー。
お前も。     ――――倫敦のエルダー。
お前も。     ――――この世界最大の吸血鬼。 
お前も。     ――――伯爵という名の吸血鬼。
 
 
命?
夢?
希望?
どこから来て、どこへ行く?

教えてやろう。そんなものは、
  
「そんなモノは… この私が、破壊する!!」
 
 
此処は戦場。
神の力を持つ道化が、最強の伯爵が激突する時計塔。
鐘の音に混じり道化の狂った高笑いが鳴り響く、もう一つの頂上決戦。
 
 
                            ――――それはまた、もう一つの“物語”。

307 名前:倫敦にて ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 00:01:29
>>

 
――――――この世界は狂ったように鳴り響く鐘の音に包まれ終わる。
 
  
 
 ――――帝都には東の白夜。
 魔人と夜刀の神、悪夢の双璧が百鬼夜行の右を成す。
 
 
 ――――魔都には九龍の乱。
 過去最悪の感染能力を持つ血統が、結界の都を地獄と変える。
 
 
 ――――幻都には幻葬の森。
 場所も時代も掻き混ぜ溶かす、黒きジャンヌの森が顕現する。
 
 
 ――――妖都には西の白夜。
 転生した白面の大妖が、日本全土を破壊すべき術式の左を担う。
  
  
 イカレた帽子屋の予防策。
 彼女によって仕組まれた新世界を謳うものどもの宣戦布告。
 時間稼ぎというには余りにも凶悪な災いが、ほぼ同時期に世界を侵す。
 
 
 ――――そして罪都倫敦には、史上最悪にして最大の神降ろし。
 
 かの積層都市を昇華崩壊させた以上の神威が、今度は世界全土に降り注ぐ。
 鳴り響く鐘の祝福を受けながら。
 

308 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 00:02:58
>>
 
 
 
――――――この世界は狂ったように鳴り響く鐘の音に包まれ終わる。
それが、この世界の“定められた物語”。
 
 
 
 
         「――――ここが、神様とやらのいる“世界”か」
 
 
   
 
そう。
彼が破壊するべき“定められた物語”。

309 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 00:06:11
 
……最初に今更ながら言わせてもらう。
 
 
 
 
 
 
 
――――――なんだ、この長さは。

310 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 00:16:17
 
(自分で貼り付けた導入に今更ながら半ば呆れているようです)
 
 

……まあ、とりあえずそいつはいい。必要なのは連絡と相談だ。
という訳で、好き勝手絶頂過ぎたが一先ずの導入になる。
今までの『倫敦』の闘争と、その募集を見てきて思いついたネタ
(一部、死蔵することになった闘争のネタ含む)を全部入れた導入ってのをな。
 
…それにしても色々と長すぎるから、そこはあれだ。
>>301-308のは一旦、そっちのレスを挟んだ方がいいかもな。
 
ついでに倫敦どころか全世界が崩壊の危機になってるのは、アレだ。
多分あの世界ならいつものことだ。
 
【Alcard:つい思いついたので投入した、今は反省している】

311 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 00:21:58
 
それと、当然だが修正してほしい部分があれば遠慮なく言ってくれ。
伯爵関連とか、>>293とか>>293とかな。
 
【Alcard:あの闘争後に思いついたネタを形にしてしまった。
     特にヴィルマ女史に対しては深く反省している】

312 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/01(月) 00:27:38

 ――――――なんという長さ。

 双方合わせて導入だけで40レスオーバーなんて。もはや、正気で、はない。





 だがそれがいい。
 アツイゼアツイゼアツクテ死ヌゼ!!!!!!!!!なレスをありがとう。感動した!

 というわけで確認したよ。いまはざっと流し読みしたので、今度はもう一回、しっかり
と読み込むよ。

 以下、相談および連絡。

>>301-308
 いや、せっかくだからこちらのレスははさまずに一気にいこう。そのほうがテンポがい
いと思う。

>>全世界が崩壊の危機
 せっかくのクライマックスなので、盛り上がれば結果オーライということで。

>>293
 これに関しては、ぼくとしては無問題。あとはヴィルマ女史が不快を示さねばGoとい
うことで。というわけで、凶手のおねぇさん、見ていたら変事をお願いいたします。


 ああ、そうだ。Alice 戦は先にAlice が待ち構えている描写を書いたほうがいいかい?
それともそちらの突入描写後にAlice を出したほうがいいかい?

313 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 00:55:45
 
やっぱり、俺は世界の破壊者ってことだ。
 
【Alcard:上手い事を言ったつもりか】
 
>>312
 
オーケーだ、じゃあこのままで行こう。
 
【Alcard:快い承諾に感謝する】
 
>>293に関しては…そうだな。
悪いが向こうの返事待ちってことになるか。
 
【Alcard:無論原作を吟味した上で書いたものだが…領分を越えたのは事実だからな。
     済まないが、返事を願いたい】
  
>Alice戦
そうだな、突入自体は>>308で(エラくぼかしているが)やったという風に考えちゃいるが…。
それに闘争開始までの手間は、少しは省略した方がいいって気がするのも確かだ。
 
だから、結論としては後者の『突入描写後にAlice登場』て流れで頼みたい。
それなら、こっちが導入を少し弄る程度で済むからな。
 
【Alcard:済まないが、よろしく頼む】

314 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/01(月) 01:01:39

 再読完了!とりあえず今日は寝て、明日もう一度、再読します。
 そうそう、2月に入ったので忙しくなるけど、今週までは何とか大丈夫そうです。

>>Alice戦
 じゃあその方向で。突入後に血まみれハイティーンがお出迎えします。



以下チラシの裏

刀使い(ブレードランナー)=椎名@Crossing25:
獅子(セカンド)     =櫻井 螢@Dies irae
炭坑夫          =チェルノブ@チェルノブ(アーケード版)
ピーター(オベロン)   =自称ピーターパン@ウエンディ

バーナバス・コリンズ   =バーナバス・コリンズ@DarkShadows
クロロック伯爵      =クロロック@ダンス・オブ・ヴァンパイア
アモン卿         =ダイ・アモン@BASTARD!!

案山子=ガスマスク=オリキャラ。
木こり=Fairyland の【狼男】をベースにしたオリキャラ

315 名前:ヴィルマ・ファキーリ:2010/02/01(月) 01:27:16
>>312 イグナッツ・ズワクフ
>>313 門矢士
呼ばれたので、来た。
 
フッ――ネタの俎上に乗せられる事を不快とする程、狭量ではない。存分にやるがいい。
むしろ、小ネタとして拾って貰った礼を言うべきか。
 
しかしお前たち二人、揃いも揃って風呂敷を広げてビッグバンを引き起こしかねない、恐るべき
奴ばらだ。
見ていると割り込みたくなる、とは誰かの言葉だが……正に大体そんな感じの大殲日和だな。
怪物どもめ!
 
 
この愛すべき戦莫迦たちが紡ぐグランドフィナーレ、愉しみにさせて貰う。
では。
 

316 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/01(月) 20:46:22

 予想外に早く帰宅できたので、いまから微修正やタグ等の調整をして、こちらの導入を
本スレに貼り付けるよ。コーヒーでも飲みながらのんびりやるので30分はかかると思う
けどね。

>>315
 広げた風呂敷のたたみ方は――――――機械仕掛けの神のごとくぶち破るのが正解だよ。

 というわけで(?)、お返事ありがとうございます。
 ぼくの予定が空いていれば、「乱入望むところ!むしろ嫌がっても巻き込む」なのですが、
余裕が無いので指をくわえてみています。ぼくが。

 さて、ついにこの闘争で最後になりました。完結までもう少しお付き合いください。

317 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 21:15:30

大体分かった。
俺も微修正と書き足しの作業をしながら、そっちの貼り付けを待つとするか。

>>315
 
俺は世界(風呂敷)の破壊者だ。
だから、今回は俺みたいなのが名乗りを上げたってことだ。
…今回ばかりはやけに広げすぎた気もするがな。
 
そして柄じゃないが、あんたには礼を言わせてもらうぜ。
あんたと彼女の“物語”は嫌いじゃなかった。
   
【Alcard:快諾に心から感謝する】
 
 
――この倫敦の物語も、最後の最後で大番狂わせだ。
駄目な意味でぶち壊しにならないよう、頑張らせてもらうとするぜ。

318 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/01(月) 22:16:20

 少々トラブったせいで、だいぶ遅れました。すみません。

 こちらの導入はこれでおしまいだよ。今度はそちらをどうぞ。


319 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 22:27:39
 
今しがた確認した。
…じゃあ今度は俺の番だ、ちょっと待ってろ。
 
【Alcard:貼り終え次第連絡する、悪いが少し待ってもらおう】

320 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/01(月) 23:33:23
 
…悪いな、こっちもちょっとばかりトラブッてた。
 
こっちもこれで導入は終わりだ。書き足した突入も含めてな。
因みに、エレベーターを昇るときに変身してるから(抽象的で分かりづらいかもしれないが)
出迎えの時も変身はしたまま…って方が自然だろう。
 
【Alcard:例の“台詞”に関しては、一つネタがある。 
     最初の遭遇時にではないが、使う予定はあると言っておこう】
 
 
問題がないなら、神様とやらの歓迎を待たせてもらうぜ。
 
【Alcard:一先ずは其方のレスを待つ。あと、其方の今日の限界時間も聞いておきたい】

321 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/02(火) 00:04:02

 確認したよ。

 まず最初に謝っておくよ。トラブルの方が少々面倒なことになったので今日はもうすぐ
落ちます。レスは明日の早朝か昼休みにでも何とか返すから。

 それじゃあ状況確認。
 「電磁加速器で飛翔→外壁をぶち破って直接カーゴブロックに登場」ってことでいいね?

 それでよければアリスが独りでお出迎えするので。そちらの台詞とかあるだろうから、
初手は実際の攻撃には移らず武器準備で終わりにする予定。

 ちなみにAlfred Russel Wallaceは別室に待機させときます。

322 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/02(火) 00:26:44
 
そっちの事情は分かった。
じゃあ仕込みの準備だけして俺の方もお開きにさせてもらう。
此処はちょくちょく覗ておくから、連絡事項なりあれば書いといてくれ。
 
 
>状況 
ああ、それで問題ない。遠慮なくお出迎えを頼む。
お互いにファーストインプレッションって奴を済ませようぜ。
 
 
俺は攻撃するけどな。(正に破壊者!)
 
【Alcard:この馬鹿の発言は兎も角、先ずは其方のレスを見て手札を決めよう。宜しく頼む】

323 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/02(火) 13:48:46

 返したよ。今夜は10時には帰ってきます。

324 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/02(火) 22:00:22
 
お先に到着、ってな。
確認と(勝手ながら)レスの下書きは出来てるから、待たせてもらうか。
返す前にちょっとばかり相談したいからな。

325 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/02(火) 22:24:01
いま帰宅。じゃあ、食事と風呂を済ませる前に軽く相談しようか。

326 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/02(火) 22:53:56

>>325
お疲れさんだ。 
じゃあ、早速だがちょっとだけ時間を借りるぜ。
 
>相談
俺が聞きたいのは二つばかりだ。どいつも此処からの展開に関係してる。
ていうのも、ミスタ・ウォレスの量子干渉に関してだ。
まだ弱体化のイベントに入ってないって事は、
 
 
シェルター<s/>『あいつの防御(バリアー)』は完璧なんだな?
 
 
…いや、ちょっとばかり用意してたネタを使う気でいたんでな。
下手すれば軌道エレベーターがいきなり吹き飛びかねない荒業だ。
 
【Alcard:なん…だと?】
 
…もちろん、そんな即人類滅亡ENDにする気はないぜ?
導入を見るに、軌道エレベーターを吹っ飛ばされればウォレスの計画も水の泡になる。
流石にイカレ帽子屋も、目の前で計画がおじゃんになるのを見過ごせないだろう。(多分)
どう考えてもそんな馬鹿げたものは無力化しようとする。(と、思う)
  
で、俺はその防御に回ったとこを攻めようって訳だ。 
009な超加速の荒業(アクセルフォームorクロックアップ)でな。
勿論、アリスも見過ごす訳がないだろうがな。
 
 
まぁ、要はそういうネタはどうか…っていう提案だ。
こっちのネタに対して魔法バリアで頑張れるかってのと、
アリスが時間停止スレスレの超加速戦に付き合えるかってのを聞きたかった。
 
…アリスの原典に時間停止の手鏡があったって記憶しちゃいるが、
それをあんたが想定してるかどうか、ってのはまた別だしな。
 
 
まぁ、という訳でこいつに対してあんたの返事を聞きたい。
 
【Alcard:流石に無茶振りだと思ったので、相談もなしに貼るのは躊躇われた。
     済まないが其方の返答を貰いたい】</s/>


327 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/02(火) 22:57:37
…悪い、タグミスをやらかした。もう一回だ。
  
 

>相談
俺が聞きたいのは二つばかりだ。どいつも此処からの展開に関係してる。
ていうのも、ミスタ・ウォレスの量子干渉に関してだ。
まだ弱体化のイベントに入ってないって事は、
 
 
シェルター『あいつの防御(バリアー)』は完璧なんだな?
 
 
…いや、ちょっとばかり用意してたネタを使う気でいたんでな。
下手すれば軌道エレベーターがいきなり吹き飛びかねない荒業だ。
 
【Alcard:なん…だと?】
 
…もちろん、そんな即人類滅亡ENDにする気はないぜ?
導入を見るに、軌道エレベーターを吹っ飛ばされればウォレスの計画も水の泡になる。
流石にイカレ帽子屋も、目の前で計画がおじゃんになるのを見過ごせないだろう。(多分)
どう考えてもそんな馬鹿げたものは無力化しようとする。(と、思う)
  
で、俺はその防御に回ったとこを攻めようって訳だ。 
009な超加速の荒業(アクセルフォームorクロックアップ)でな。
勿論、アリスも見過ごす訳がないだろうがな。
 
 
まぁ、要はそういうネタはどうか…っていう提案だ。
こっちのネタに対して魔法バリアで頑張れるかってのと、
アリスが時間停止スレスレの超加速戦に付き合えるかってのを聞きたかった。
 
…アリスの原典に時間を操るか止める手鏡があったって記憶しちゃいるが、
そいつの使用をあんたが想定してるかどうか、ってのはまた別だしな。
 
 
まぁ、という訳でこいつに対してあんたの返事を聞きたい。
 
【Alcard:流石に無茶振りだと思ったので、相談もなしに貼るのは躊躇われた。
     済まないが其方の返答を貰いたい】

328 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/02(火) 23:01:51
好きにやってくれていいよ。もともとこの闘争は整合性よりもノリ重視だからね。
そのあたりのさじ加減はどうにでもなる。
時間停止も対処可能。ついでに言えばミラーワールドだってOKだよ。

ああ、あと次回から質問は書置きにしよう。そうすれば時間が空いたとき返せるから。

329 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/02(火) 23:10:46
>>328
 
と、悪いな。手間ばかりかけちまって。
そして了解だ。
流石に原典からして出鱈目なのが俺だからな、ちょっと細心になりすぎてた。
質問に関しても了解だ。今度から書置きにしとこう。
  
じゃあ少し待っててくれ、返してくる。

330 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/02(火) 23:34:05
 
待たせたな。
分身→全員変身→一斉射撃の最初からクライマックスってやつだ。
 
次のこっちのターンでアクセルフォームに入る。
むしろ先に仕掛けてきても構わないぜ。
あいつら、実は全員分身だからな。
  
【正に外道!】

331 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/03(水) 01:35:21

 すまない。遅くなった。

 次のターンに時計を使って超加速するよ。武器も変える。ついでに衣装もかえる。

 原作ゲームのスキンを張り替えられるという機能をメタ的に取り入れ、毎レスごとに武
器と一緒に服も変える予定。このあたりは木下さくら版アリスの影響かな。

 今日はこれで落ちます。続きはまた明日。

332 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/03(水) 01:46:57
 
大体分かった。
こっちは待ってる間に書いてたんでな、レスに応じた修正だけして本スレに貼っておくぜ。 
 
【Alcard:委細了解した。ゆっくり休んでくれ】

333 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/03(水) 03:08:28
 
で、返しておいた。
やけにロックオンしてるが、同じように超加速すれば対処できるような代物だ。
好きに捌いてくれ。
 
【Alcard:では、また会おう】

334 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/03(水) 22:59:10

 弾幕にまぎれて殴り飛ばしにいきました。

 次のターンからは大技連発しようと思っているよ。同時にダメージも喰らいまくろうと
思ってる。

335 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/03(水) 23:24:00

確認したぜ。
じゃあ、書いてくるんで待っててくれ。
 
>次のターン以降
大体分かった。
次の俺のターン(要はそっちがまた返した後)でやりたいネタがあるが、その件はそっちの返し以降だ。
ちょっとネタがあるとだけ覚えといてくれ。
 
同じくこっちもそろそろダメージも喰らうつもりだぜ。
特に、次の俺のターンでデカいのをな。

336 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/04(木) 01:09:56
 
と、悪いがもう少しだけかかりそうだ。
急いでも1:30になりそうだから、先に落ちてくれても構わないぜ。
 
【Alcard:というより、体調の為にも先落ちを推奨する。
     時間をかけて済まない】 

337 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/04(木) 01:11:19
ごめん。ねむけがひどいから落ちる。

>やりたいネタ
これについては了解。

明日はそちらのレスが出来ていれば、昼休みにでも返します。

338 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/04(木) 02:48:16
 
お疲れさん。
て訳でようやく出来たんで返してきた。
ノリ優先、って事でちょっとばかり動かしちまったがな。 
 
【Alcard:……それでも謝罪しよう。済まん。】
 
……まぁ、最後のは当てたとは一言も書いちゃいないからどんな反撃もオーケーだ。
俺のは必殺の一撃すぎるから、頑張って読み勝って避けてくれ。
こっちは次で攻撃の種類如何に関わらず、大ダメージを食らうんでな。
 
じゃあ、こっちもこれでお休みだ。またな。

339 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/04(木) 15:13:45

卍解!黒縄天譴明王!!!!!

いけーロボ!敵を倒せ!!

「ま゛っ」


……むしゃくしゃしてやった。今も反省していない。
白の騎士は瞬殺していいよ。一発ネタだしね。

340 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/04(木) 21:26:19

 帰宅。今日は12時ぐらいまでは大丈夫の予定なんだけど、疲れているため途中でダウ
ンしてしまうかもしれない。返事が無かったら寝落ちたと思って、生暖かい視線で見守っ
てください。

341 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/04(木) 21:58:02
 
大体分かった。(足立区の方言で「お帰りなさい」の意)
 
こっちは書いてる真っ最中だ。
また時間が掛かるかもしれないから、ちょっとでも駄目だと思ったら
遠慮なく休んでくれ。俺みたいにやけに命を削っても困る。
例によって連絡事項は書置きしておくんでな。

342 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/05(金) 01:45:36
 
また世界を破壊したってことだ…(時間が掛かったことに黄昏つつ)
 
ま、そいつはともかく返したぜ。
折角の大殲だからな。
 
 
 
 
 
致命傷を受けて腕を吹っ飛ばされた。

343 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/05(金) 01:59:53
 
…………ああ。
念のため言っておくが、流石にこのまま一巻の終りって気はないぜ。
止めを刺されてもそれはそれで美味しいが、どいつもまだぶっ壊しちゃいないんでな。
  
変身解除された状態から『人形殺しの右手』に例の台詞、そして切札発動。
それが、俺の次のターンでやりたいっていうネタだ。
そこからこっちも大技とダメージ連発のクライマックスって流れにしたい。巻きながらな。
 
 
という訳で、アリスには悠々と止めを刺しに来てくれれば助かる。
ちょっと我侭に付き合わせちまうが、頼む。
 
【Alcard:此方の連絡と相談事項は以上だ。
     レスが遅くなってしまい済まなかった。では、また会おう】

344 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/05(金) 22:22:45
 
【Alcard:現在待機中。連絡事項があれば遠慮なく】

345 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/05(金) 22:48:18
……10分ほど前に帰宅したばかり。
今回は短く仕上げるつもりなので30分もあればかけると思う。
もう少しお待ちください。

346 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/05(金) 23:31:38

 あの大火力をそのままお返しするという多次元屈折現象のネタは、帽子屋戦
の初手でやろうかと思ってたけど先を越されたよ!流石にやるね。

 巨大化して踏み潰しにいったよ。
 さて、的は大きくしといたから思いっきりぶっ壊してくれてかまわないよ。
 ちびマ○オになるだけでまだ死なないから。

 次はそろそろ怒りの箱で悪魔化かなぁ。

347 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/05(金) 23:39:53
 
大体分かっ(省略されました)
 
確認したぜ。
じゃあ、本家じゃないが本物の『右手』の出番といくか。
…例によって掛かっちまうかもしれないから、体と応相談で先落ち推奨だ。
 
【Alcard:お疲れ様だ】
 
>多次元屈折現象
実は変身解除のネタとして真っ先に思い浮かんだ(何
あとロボも気にする必要はないぜ。おかげでこっちも助かったってもんだ。
(ミラーワールド的な意味で)
 
【Alcard:やりすぎというなら、そもそもこいつで名乗りを上げた時点で】
 
俺を呼んだのはお前だろ、半吸血鬼。

348 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/06(土) 00:08:23

>体と応相談で先落ち推奨
 了解。明日あさっても出なくちゃいけないので、様子を見つつ休ませてもらうよ。

>ミラーワールド
 「鏡面仕上げ〜」を有効活用してくれたのにはこちらこそ感謝するよ。

>そもそもこいつで名乗りを上げた時点で
 いや、一向に構わないよ。むしろ名乗りを上げてくれてうれしかった。
 そもそも人形たちの楽屋裏スレで、『クッパだろうがロックマンだろうがガノンドルフだろうがディケイドだろうが誰の挑戦でも受ける』と明言しちゃってるからね。


 そうそう、こちらは「最強の悪魔形態」と「最恐の女王形態」の2枚のカードをのこし
てる。使い切るかは流れ次第だけどね。蛇足になるようだったらカットするよ。

349 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/06(土) 06:13:15
 
……な、先落ち推奨だろ?
 
【Alcard:……全くだな】
 

て訳でライダーマンの右手だ、というかガクトアームだが。
実を言うと廃棄人形(ステーシー)が出てきたときに思いついたネタでもある。
まぁ、本物であって本家じゃないがな。
 
>カード
そうだな。
折角だから「最速の飛蝗形態」(ライダーだから)も入れて欲しいが…ま、その辺は流れ次第か。
とはいえ1ターン中に2枚撃ち、なんて贅沢もあっていいと思ってる。
 
こっちも1ターン中に複数変身、ウォレス戦が終るまでには9つ全部使い切る積りなんでな。
最初のでダグバ…いや、クウガは使ったから残り8つ。
必ず1枚はウォレスに取っておきたいから、7つか。とりあえずそいつを全部遠慮なしに使う気だ。
巻きながらな。

350 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/06(土) 20:53:54

 ……なんという朝レス。恐ろしい男だ。
 そして素晴しいレスをありがとう。脳汁がどくどく出てきたよ。
 コンプリートフォームも格好よくて最高だ!
 こちらも負けないようにガンガンいくよ!

 それはさておき雪山(もどき)での殴りあいだよ。
 さて、ここからは毎ターン致死攻撃をどんどん叩き込んでいいよ。
 「妖精を信じるなら手を叩いて!」のノリで消耗しつつも復活するから。

>最速の飛蝗形態
 じゃあバッタも追加で。

以下残りの手札。

・バッタ(ライダー)化/ライダーキック
・Alice & Ecila (アリス型自動人形・未来少女アリスネタ)/ラッパ銃&ジャバウォックの杖
・女王化/触手&念動力&びっくり箱ボム(爆弾&火炎放射)&大鎌(歪みの国のアリスネタ)
・血まみれAlice /ナイフ装備

 ウォレス戦開始段階で2枚手札を残しておいてもらえると助かるよ。
 最初の一撃で鉄壁のバリアーにわずかでも綻びを入れてもらえるとあとが楽なので。

351 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/06(土) 21:45:47
 
俺は破壊者だ。
だからまぁ…自分のコンプリートフォームも破壊することしか出来ない(何
 
……その言葉、ありがたく貰っておくぜ。
 
【Alcard:感謝の極み。では此方も全力で行こう…何時もと同じだが】
 
>手札
大体分かった。あんたに感謝だ。

【Alcard:此方の手札もさらしておこう】
 
・アギトシャイニングフォーム/二刀流・超達人
・龍騎サバイブ/ミラーワールドアタック・ファイナルベントで轢き逃げ
・ファイズブラスター/空中機動・極太ビームによる砲撃
・ブレイドキングフォーム/超装甲&パワー・エクスカリバー(約束された略)
・装甲響鬼/超身体能力・退魔(清め)の刀
・カブトハイパー/ハイパークロップアップ ←ウォレス戦で使う予定
・電王ライナー/エネルギーの線路生成で三次元移動・メガビームサーベル
・キバエンペラー/飛竜変形・ライダーキック・ドラゴン召喚のどれか
 
…って感じだ、
じゃあカブト以外にもう1枚取っておくぜ。
 
 
と、ちょっと飯だから外してくる。
今回は早めに挙げたいから朝レスとかじゃない筈だ…善処しとく。
じゃあまた後でな。

352 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/07(日) 00:47:28
 
悪いな、待たせちまった。
 
先ずはアギトと響鬼の2枚撃ちだ。
力には技、悪魔には退魔の力ってな…夢が叶ったぜ。(何
 
じゃあ次のを待ってる。
…とはいえ、この分だとまた明日になっちまうかもしれないがな。
 
【Alcard:無理はしない方がいい、此方とは違ってな】
 
そっちの返しを確認次第、また次のを返すからそう覚えておいてくれ。
……なるべく早く書くよう頑張るんでな。

353 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/07(日) 00:50:38
確認したよ。相変わらず切れのいいレスで惚れ惚れする。
いまから取り掛かる。1時間たってもレスが無かったらまた明日返すよ。
……調子がいいから多分返せると思うけどね。

354 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/07(日) 01:44:42

どうみてもライダーキックです。本当に(以下略

あーなんかすごく荒いけどこんなところで。
しかし自分で言うのもなんだけど、高起動ネタが好きだなぁ。

流石にもうねるよ。おやすみ。

355 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/07(日) 04:46:40
 
お疲れさんだ。
ちょっとばかり寝落ちててこんな時間になったが何、大体大丈夫だ。
……って訳でライダーキックにはライダーキックでお返ししたぜ、ただし吸血鬼のな!
 
【Alcard:正に大殲とでも言いたいのか、お前は】
 
で、対ウォレスには龍騎とカブトを取っておく予定だ。
後は未来アリスにブラスター(火力勝負)、女王にキングフォーム(トランプ繋がり)ってところか。
ライナーは血まみれアリス次第だが、大物な女王相手に併用するってのも考えてる。
 
まぁどっちにしろ、とりあえずはそっちのレス次第ってとこだ。
じゃあ、またな。

356 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/07(日) 23:25:01

……帰宅。ごめん。流石に今日はレスは無理そう。メシ風呂は後回しにして12時までは
頑張ってみるけど、この状態だと完成は厳しそうだよ。

 とりあえず次のアリスの行動だけ先に説明しておくよ。

 蹴りで破壊された肉体の再構築→Ecila 召喚→ラッパ銃×2による連続射撃

 ラッパ銃はビームライフルというかプラズマキャノンというかそんな感じで。


>ライナーは血まみれアリス次第
 血まみれアリスはほぼ死に体なので女王相手に併用がいいかもしれない。

357 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/07(日) 23:39:18
 
大体(ry
 
了解だ。
…止むを得ない事情ってのはあるからな、無理しないってのもそうだが気にしないでくれ。
こっちはとりあえず1時まで(雛形でも書きながら)待機しとく。
それでも返せる(貼れる)のは明日の夕方〜夜くらいになりそうだがな。
まぁ、何かなければ9時までには返せる筈だ。  
 
>行動
了解だ、じゃあブラスターで行かせてもらう。
食らいながらメガランチャーというかハイマット略って感じでな。
そいつを想定して雛形を書いとくぜ。 
 
>ライナー
そいつも了解した。
じゃあそっちの流れで使わせてもらうか。

358 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/08(月) 00:27:00
・修正
 
× まぁ、何かなければ9時までには返せる筈だ。     
              ↓
○ まぁ、そっちのレスが返ってきてから9時までには返せる筈だ。
 
 
…俺も頭が回ってないって訳じゃないと思うが、念の為な。

359 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/08(月) 19:33:09

 何とか完成。ではいよいよ次のターンで女王アリスの登場だよ。
 女王アリスは出来れば遠距離戦から接近戦につなげる流れにしたいな。

360 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/08(月) 20:06:45
備えて仮眠取ってた所で見たら気付いて大体分かった。
 
【Alcard:もう少し日本語を吟味して喋れ】
 
と、それはともかく確認したんで頑張って返してくるぜ。
9時までにを合言葉にな。
 
>遠距離戦〜接近戦
了解だ。
女王にはロングソード!
…じゃない、遠距離からライナーで接近する流れで考えとく。

361 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/08(月) 21:41:30
 
9時半過ぎ…まぁまぁってところか。
 
【Alcard:ロスタイムはロスタイムだ馬鹿者】
 
それは兎も角、弾幕を受けながらバスターランチャーってやつだ。
そろそろダメージが欲しかった所だしな。
走って戦うのにも支障のある状態→ライナーのレール生成を移動手段代わりに
って感じで考えてる。
 
じゃあ、悪いが晩飯なんでちょっと外す。
すぐ戻るとは思うけどな。

362 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/08(月) 21:59:36

 確認したよ。
 少々難産になりそうだから気長に待って。
 遅くても日付が変わる前には上げたいんだけどね。

 ああ、そうだ。先に行動を宣言しておくよ。
 念動力&触手ビーム(オールレンジ攻撃)&びっくり箱ボムで攻めます。
 今回はまだ火炎放射と大鎌&触手による打撃は無しで。

363 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/08(月) 23:14:13

了解だ。
こっちもちょっと難産になりそうなんでな。
雛形と格闘しながら気長に待っておく。
 
(一つだけ作風の違う電王に頭を悩ませながら)
 
>行動
そっちも了解だ。
じゃあ次回にそいつを食らう準備をしながらライナーで行かせてもらう。
女王(クイーン)相手の本命はその後って事でな。

364 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 00:13:16

びっくり箱ボム使い忘れた!……まあいいや。接近戦でも使う予定だったし。

というわけで書いてきました。完全なオーバーキルですが、気合で首を刎ねに来てください。

365 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/09(火) 00:31:19
 
確認した。
正にクライマックスって奴だ、嫌いじゃないぜこういうのは。

【Alcard:上手い事を言ったつもりか】
 
>気合で
了解だ、クライマックスに恥じないように気合入れて掛かるとするか。
…気合入れて明日になっちまうかもしれないがな。
 
【Alcard:今日はこの辺りで先落ちを推奨する】

366 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 00:35:58

了解。今日はここまでにさせてもらうよ。
わるいけど先に休ませてもらう。続きはまた明日にでも。

367 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/09(火) 20:25:13
ちょっと掛かっちまったが、返してきた。
気合どころかノリノリで首を刎ねに来ちまったが…『あいつら』じゃ仕方ないな。
 
【真の破壊者すぎた】
 
ともあれ、どうにか接近したんで頼む。
こっちは一枚カードを場に伏せて待ってるんでな。

368 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 20:46:26
確認したよ。
レスの断片はいくつか出来てるし、頭の中に完成形もあるから30分程度で返せると思う。

369 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 21:26:53

女王Queenなのに燃えてしまえBurnとはこれいかに。

というわけで書いてきました。気兼ねなく破壊しちゃってください。

370 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/09(火) 21:43:45
 
了解だ。
じゃあ、ちょっと手間を食うかもしれないんで気長に待っててくれ。
気兼ねなくやってくるんでな。
 

371 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 22:55:32
待ち時間で帽子屋戦の導入を書いて見たよ。下みたいな感じでどうかな?

372 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 22:56:53





 「SOLID STATE SURVIVOR / one of these night 」 (Decade vs Alfred Russel Wallace )




.

373 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 22:57:20




――――――ただ永遠に生きたいと思っているだけです。





.

374 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 22:57:38
>>

 いつまでもやむことのない鐘の中、倫敦中のヒトの視線が機動エレベータへと注がれている。

 その視線の先で、軌道エレベータが仄かな光を放ちだす。輝きに包まれる。徐々に徐々にその輝き
は明るさを増し、まばゆい光の柱へと姿を変えていく。それを見た者はみな理解した。ああ、間に合
わなかったのだと。

 光の塔にしがみついた巨人がひときわ高く吼える。産声のように、もしくは生まれ来る神を祝福するかのように大きく吼える。

 漆黒の雪が深々と降る。光の塔に、罪深き街に、暗黒の帝都に深々と降る。

 鐘が鳴る。鐘の音が鳴り響く。止むことの無い鐘の音が鳴り響く。

 みな理解した。

 もうすぐだ。もうすぐこの世界は終わる。
 そう、今宵、世界は終わる。

375 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 22:58:38





<世界(ウォレス)>




.

376 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 22:59:03
>>

 黄色いカナリヤが歌を歌っている。機械仕掛けのカナリヤが華やかなトリルを奏でている。

そこは軌道エレベータの昇降機の中。カーゴブロックの倉庫の中。Big SisterとBig Blue
の最精鋭部隊が敗北したあの部屋。あたり一面に残骸の散乱する大伽藍。

 その中央、間に合わせのような機械仕掛けの玉座に一人の少女が座っている。人、人形、
吸血鬼。かつてはそのいずれかであった残骸の中に座す怪物(フェアリィ)の女王。

 その人形自体は彼女ではない。それはただの操り人形でしかなかった。ウォレスと呼ば
れる女の操る義体だ。アンティークの輝くような黄金の髪と、ビッグシスターの猫のよう
な虹彩の瞳を持つ最古にして最新の操り人形。滅びの歌を奏で、神降ろしの祝詞を謳う機
構の中枢。

 彼女を破壊すれば世界は救われる。

 手のひらの上に乗っていたカナリヤが、羽ばたき飛び立ち宙を舞う。その鳥を少しだけ
目で追った後、踏み入れた破壊者にまなざしを向けた。

「予想以上に早かったわね。でも遅すぎたわ。いいところまで行ったけど、やっぱり遅すぎた」

 子供のような声でそう言う彼女。

「あなただけじゃないわ。いつだってそうなのよ。重要人物は未来のことを真剣に考えな
いから。だってまだ生まれていない人たちに投票の依頼はできないし、ましてや搾取する
なんてできるはずが無いもの。だから人間はますます過去に生きるようになって、未来の
風を避けるようになる」

 ゆっくりと首を振りながら彼女は言う。

「だからこうやって、わたしがその風よけを吹き飛ばしてみせるの」

 それまでと一転、落ち着いた女性の声で先を続ける。

「ただ、この世界が終わるまでにはまだ少し時間があります。……少し話しましょうか」

 人形遣いは人形の瞳で破壊者を見る。

「あなたとあの可哀想な娘の戦いは見ていました。あなたは、危険ですね。生かしておく
のは危険すぎる……ほんの数分前ならそういったのだけれど」

 ゆったりと怠惰な笑みが口元に大きく広がっている。それは雌ライオンの笑みだ。

「いまとなってはもうどうでもいいことね。もう過ぎてしまったことですもの。手遅れに
なってしまったんだから、もう戦う意味なんて無いわ」

 そこで彼女は首をかしげる。

「それとも、無意味な戦いがしたいのかしら。それも否定しないわ。人間は無意味な事が
好きなんですもの」

 肉体のくびきを脱した女は言う。

「わたしはどうしても人間というものがよく理解できません。理解したいとも思いません
……もともと細かい点には興味が無いの」

 生まれながらにして人間以上の存在になるように遺伝子操作(デザイン)された女は言う。

 彼女の語る言葉の裏で、一つの物事が進んでいた。

 破壊者がこの部屋に足を踏み入れた直後から、フェムボットが大気中に散布されていた。
【愛の爆撃(ラブ・ボミング)】。圧倒的な平和の感覚と恍惚感を与える機械仕掛けの麻薬。感染すれば数分
から数十分は無力化される微小機械。それが破壊者の体内に侵入せんと宙を漂っていた。

377 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 23:00:27

以上だよ。この直後にでも強烈な一撃を叩き込んでもらえれば助かる。
ああ、手遅れって言うのは時間稼ぎの嘘だから。

378 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/09(火) 23:16:33

ごめんちょっと用事が入った。1時間ほど外すよ。
それまでに戻ってこなかったら今日は落ちたと思ってほしい。

379 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/10(水) 00:02:58
 
了解だ。
ようやく出来たんで貼ってくる、反応がなかったら今日はお疲れさんだ。

380 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/10(水) 00:18:02
 
という訳で気兼ねなくぶった切って来た、リアルで。
 
…俺は世界(文体)の破壊者だってことだ。
 
【Alcard:どう見ても二度ネタだ、本当に(ry】
 
    <FORM-RIDE“TAG MISS”>
 
 【ミス?】
 
 
>帽子屋
問題ないぜ。
じゃあ、その時が来たら直後にファイナルベントの一撃でも叩き込ませてもらうか。

381 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/10(水) 18:52:10

最後の悪あがきだよ。傷口から這い出してくるのは永遠の国のアリスのイメージで。

光剣の残り火で切り捨てるなり、突入してきた大穴に蹴り落とすなり、好きに止めを刺していいよ。

382 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/10(水) 19:59:48
 
上げてきたぜ。
アリス戦の題名にもなってた唄に因んで、好きに止めを刺してきた。
 
…少女のただ一つの望みだろうと破壊する。
それが今の俺(破壊者)だからな。
 
 
次で帽子屋の導入…って流れでいいのか?
ワンクッション欲しいなら、追加のを考えておく。

383 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/10(水) 20:42:39

そちらさえよければ、中間まとめをはって帽子屋戦にこのまま突入しようと思うんだけれど。

それでいいかい?

384 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/10(水) 20:45:43
 
了解だ。
手間を掛けさせてちまうが、宜しく頼む。

385 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/10(水) 20:58:38

はってきたよ。
じゃあ最後の戦いを始めようか!

386 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/10(水) 21:06:01
 
確認した。
ああ、始めようぜ。本当の最後の戦いってやつをな!
  
【Alcard:では少々待ってもらおう】

387 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/10(水) 23:18:58
悪いな、2時間掛かっちまった。
 
 
銃撃で割った鏡でミラーワールド経由→至近距離に瞬間移動しての轢き逃げアタック。
バリアに皹を入れるには十分…な筈だ。
 
じゃあ、イベント発動と反撃は任せたぜ。

388 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/10(水) 23:37:19

 確認したよ。こちらのレスはあと1時間から2時間近くかかるかもしれないから、なん
だったら先に休んでくれてもいいよ。

389 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 01:11:15

 クソ長いけど何とか終了。最後の攻撃はフォトンバーストだよ。
 帽子屋は好きな手段で破壊しちゃっていいよ。


390 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 01:34:22
さて、今日は寝るよ。また明日。

391 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 01:44:28
お疲れさんだ。
 
>帽子屋
確認したぜ。
じゃあ9枚のうちの最後の1枚、使わせてもらうとするか。
 
…とはいえ、こっちもちょっと限界なんでな。
悪いがレスは明日になる。じゃあ、またな。

392 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 21:17:16
悪いな、ちょっとばかりトラブってた。
 
今から貼ってくる。ちょっとだけ待っててくれ。

393 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 21:35:43
 
待たせたな。
リクエスト通り、“好きな手段で”破壊してきた。
 
 
……反則技なうえ、苦労して練った割には微妙だがな。

394 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 21:42:50
 
…念のため説明すれば、時空移動→過去に飛んで必殺キック(ディケイドの)。
パラドックスで過去にいた俺は吹き飛んだ未来ごと消滅した、ってやつだな。
元ネタの「カブト」で使われた時間改変ネタの応用だ。
 
……まぁ、反則すぎて最後の手段でしか使えなかった技でもある。

 
ところで、エピローグはどうする?
そっちの想定してるオチに合わせて、少し刷り合せたいネタが実はあるんでな。
とりあえずはあんたの返事を待つ。

395 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 21:49:36

 確認したよ。じゃあ、『帽子屋の破壊描写』を書こうと思う。少し待ってて。なるべく
早く済ませる。

>エピローグ
 こっちは起動エレベータの消滅(滅びの回避)を以ってエンディングに代えようと思っ
てるんだけど。個人の以後のことはとくに描写するつもりは今のところないよ。

396 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 21:57:24
 
了解だ。
 
>エピローグ
成る程な。
 
……いや、実はな。
残されたギガントが本物の“機械仕掛けの神(終末・倫敦崩壊という『世界の救い』)”になって落下、
俺がそいつに特攻して破壊しようっていうネタを考えてた。
最後の締めくくりって奴にな。
ギガントで何かネタを考えてるなら、こっちのネタは止めておく。
 
因みに同じく、個人の以後とかを描写する気はない。
青い地球をバックに消滅か、特攻して消えるか、そのどっちかで俺の方は〆る気だ。

397 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 22:07:56
>>残されたギガント
 ……実は降神の途中で帽子屋が破壊され、儀式が失敗したことによりギガントは
蛭子神=Blood Knight になって世界に終末をもたらそうとする。それを防ぐため
に最後の戦いが……というネタはあったんだけど時間の都合で没に。

 本当はぜひやりたいんだけどね。明日から下手すると軟禁状態で働くはめにな
りそうなんで、とてもじゃないけどできそうに無いんだ。

398 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 22:08:52
というわけでギガントは勝手に死にます。ソードマスターヤマトばりに。

399 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 22:14:01
 
ああ……やっぱり想定してたんだな、半分ほど俺の予想通りに。
 
【Alcard:恐るべき奴だ…そう褒め言葉を送っておこう】
 
じゃあ、俺のほうは地球をバックに消滅で〆にしたほうがいいか。
特攻ENDの方は帽子屋の破壊描写後、即貼れるようには一応出来上がっちゃいるが。

400 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 22:19:57

 あー。そちらのENDを無駄にするのも惜しいから、よければまずこのスレにはってみ
てもらえるかな。

 こちらのENDも粗いけど一応出来たので、いまからここに張ってみるから。

 多少手を加えれば整合性が保てるようなら修正して両方はろう。

401 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 22:20:21
>>






 そして、中枢である【Lady L 】の義体が消滅したことにより、機構は破綻し降神器の崩
壊が始まる。







.

402 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 22:21:33
>>

 罪都倫敦。暗黒の空を見上げる人々の視線の先で。

 軌道エレベータが光に包まれる。眩い光に包まれる。

 バベルの塔は天を貫く光の柱へと変わる。

 それは御柱であり、天に届く大樹であり、天空へと枝を伸ばす宇宙樹(ユグドラシル)であり、システム
ツリーであり、■■■そのものだ。

 歌が倫敦に満ちていた。天から降り注ぐ歌が。地より湧き上がる歌が。

 光り輝き消えていく御柱を見上げながら、人々は歌う。

 歌を。人形(ステーシー)の歌を。

 何かに導かれるように、宇宙樹を見上げ、みなが歌う。
 人形の歌にあわせるように、みなが歌っている。

 歌う、歌う、歌う。

 神の息吹。上方世界より漏れ出した囀り。
 共鳴し同調し増幅されていく歌。歌が鐘の音をかき消していく。


――――――人形の歌によって鐘の音がかき消された世界で。


 虚空へと渡された光の柱は、頂上から光り輝く粒子に分解されていく。粒子は輝きなが
らまとまりを失い大気にとける。からくり仕掛けの巨人も光となって消えていく。

 まるで初めからそんなもの存在しなかったとでも言うかのように。

 消えてゆく。光となって融けていく。

 物質から情報へ、高位次元へと転送(シフト)されていく。

 降神ではなく、上方(情報)転移。

 光が倫敦を満たしていく。歌が倫敦を満たしていく。

 人形の歌が。少女の歌が。神々の歌が。そう、みんなの歌が。

403 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 22:21:55
>>









――――――この物語は祝福されたように奏でられる歌声とともに終わる。











.

404 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 22:22:26

こちらのネタはこんなところだよ。

405 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 22:27:24
了解だ。
じゃあ、試しにちょっとだけ貼ってみる。
使うか使わないかは別にしてな。

406 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 22:28:23

>>
  
機械仕掛けの女神が消え去ってゆく。
因果情報(コード)を破壊する一撃に存在を破壊され、最小にして最大の致命的な破壊を与えられて崩れ落ちてゆく。
もっとも完全な滅びではない、完膚なく破壊されたのは神の器だけ。だがそれで十分だった。
たとえ情報の海に沈む彼女が再構築され、次に何かを目論んだとしても。
それは既に彼女と、この世界の次の“物語”だ。
もし次に彼女を止めるものが存在しなければ、その時点で彼女が勝利する。
気に食わなくはあったが、それも或いはこの世界が紡ぎだした物語の結末だ。
そもそも、これ以上の干渉は不可能であったから。
  
残された10秒。崩壊と死までの残り10秒。
生命活動の停止という死滅と、最後に残っている情報(コード)の自壊という破滅。
既に不完全な“完全者(コンプリート)”ではなく、常と同じマゼンダと黒の仮面(マスカレイド)の
姿に戻り。そして彼は最後の力を振り絞って立ち尽くしていた。
 
そう、前のめりに死ぬまでの残り10秒。
彼が戦うべき相手は破壊された。哀しき磔刑者のアリス、機械仕掛けの女神の帽子屋(ウォレス)。
そう、彼が戦うべき相手は。
哀しき磔刑者のアリス、機械仕掛けの女神の帽子屋(ウォレス)。
そう、彼が闘争を行う相手は。
哀しき磔刑者のアリス、機械仕掛けの女神の帽子屋(ウォレス)。
 

 

  『君に渡すのは地獄への片道切符。改めて聞こう』
 
 
 『死神と地獄へ相乗りする勇気――――君にはあるかい?』

 
  『まぁ、君にとってはそれでも生還できる依頼だろうけどね』
 
 
  『あれだけの総戦力だったからね。予測できる防衛戦力は残ってたとしても1名が精々。
   後は君の何でもありな手札で、命がけで帽子屋の義体を破壊して終わりさ』
  

  『そう、たったそれだけで』

 
     
            そして、世界に残された――――本物の“機械仕掛けの神(ギガント)”。
 
 
 
    
  『――――“この世界は救われる”』


 
 
 
 
 
               
 
                     「『嘘ばかりだな、お前』」

                       『よく言われるよ』

               “自分という名の最後の一枚。切札は、自分だけ”
                   <<FINAL-ATTACK-RIDE...>>


 
そうして彼は、最後に大きく前のめる。

407 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 22:29:45
>>

そうして彼は
 
De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.De.
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408 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 22:30:24
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                       De.
                        De.

      其処に“破壊者”は存在した。  De.
                           De.
                          De.
                         De.

       加速をするための加速で    De.
                          De.  移動をするための加速で、
                         De.
                        De. 破壊をするための加速で。
                       De.
                       De.De.De.De.
                           De. 
                          De.

                            De.
軌道を描いて生成され続ける紋章が     De.
                          De.
                         De.  彼を加速させ、昇華させ、光速化させる。
                        De. 
                       De.  上とも下ともつかない道筋。
                      De. 
                     De.  だが確実に届くべき前へと進む道。 
                    De. 
                   De.  其処に破壊者は存在した。
                  De. 
                 De.  元来た道を、風穴を抜け、青き星を臨む世界へ。
“物語”を壊す破壊者が、 De. 
                 De.    崩壊するエネルギーと同化した破壊者が。
                   De. 
                    De. 
                      De. 
        終わりを壊す破壊者が  De. 
                       De. 
                      De.    全てを台無しにする破壊者が。
                       De.  
              ガリバーの    De. 
                          De. 
                 ギガントの    De. 
                            De. 
            機械仕掛けの神の御許へ De. 
                             De. 
   今にも降り注がんとする炎の矢へ向かい、 De. 
                              De. 
        レティクルの神様に向かい、    De. 
                            De. 
                           De.   全てを救おうとする“結末”に向かい、
                          De. 
                         De.  本当の“機械仕掛けの神”の元へ
                        De. 
                       De.   メギドの矢より速く一直線に突き進む破壊者が。
                      De.  
                     De.   命尽きる瞬間まで光り輝く
                     De.
                     De.    流星のように
                     De.
 望み叶え給え  望み叶え給え De.ノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエタDe.エノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエDe.マエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
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ノゾミカナエタマエノゾミカナエタDe.エノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
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ノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエDe.ゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノDe.ミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
                        De.
                   『駄目だ』De.『そんな望みは叶わない』
                         De.
    ―――俺は破壊者だ。         De.  
                           De.      機械仕掛けの旋律が聴こえる。
  ―――悲劇で終わるヒーローにも、    De.
                            De.
                            De.  ―――悲運の末路に溺れるヒロインにも成れはしない。
                           De.
終末という名の救いを唱える旋律が聴こえる De. 
                             De.    ―――覚悟ならとっくに出来てる。
                            De.
                           De.    ―――壊す覚悟ならとっくに出来てる。
                          De.
 燃え尽きる結末に翻弄されるヒーロー De.   にもヒロインにも、最初からなる気はない。 
                        De.
                       De.     ―――だから、後は神様とやらの覚悟だけだ。
                      De.
                     De.     ―――機械仕掛けの終幕を繰る“物語”の覚悟だけだ。
                      De.
                       De.
“摂理”を壊し、“世界”を壊し、      De. 旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                         De. 旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                          De.  旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
    “必然”を、“帰納”を、“結末”を、   De.  旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                           De.            
                            De.   “物語”を破壊してしまう一撃が。
                             De.
  終焉を引き起こそうとする“破壊”を壊し    De.  終焉(メロディ)、終焉(メロディ)、終焉(メロディ)!
                              De.   崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)!
     生み出され生み出した“救い”を壊し    De.    結末(メロディ)、結末(メロディ)、結末(メロディ)!
                                De.    終幕(メロディ)、終幕(メロディ)、終幕(メロディ)!
       機械仕掛けの神という“絶対”を壊す    De.
                                De.               
終焉(メロディ)、終焉(メロディ)、終焉(メロディ)! De.
旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!  De.      崩壊を迎えながら、どこまでも  
終焉(メロディ)、終焉(メロディ)、終焉(メロディ)!  De.     前のめりに突き進む“破壊者”の一撃が。  
旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)! De.  
                              De.
                               De. 
 ―――破壊者に結末(物語)を          De. ―――打ち壊される莫迦げた覚悟、あんたにあるか?
                             De.
■■ユメノヨウニ                  De.  崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)!
     ナニモカモガ               De.   旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
  ■■キエテユク                De.  終幕(メロディ)、終幕(メロディ)、終幕(メロディ)!
    ■■コワクナイ              De.  旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
        キイテクレヨ            De.   救済(メロディ)、救済(メロディ)、救済(メロディ)!
         タダキエルダケナノサ     De.   旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                           De.   
                  『嫌だね、そんな救いはお断りだ』
                           De.   
                           De.   
   彼に“物語”はない。            De.   
   彼は破壊と再生のために生まれた者。 De.   
   全てを破壊し、全てを繋ぐためだけに  De.    生み出され、存在するもの。
                           De.
   そしてこの倫敦の“物語(結末)”    De.    を破壊するもの。 
                          De.
        彼は“]”。           De.     旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
        彼は“悪魔”          De.     旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!  
        彼は“旅人”。         De.     旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                         De.     旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
        彼の名は――――――    De.
                            De.
                              De.     ―――俺か?
                               De.
                                De.     ―――俺は、
崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)!  De.
救済(メロディ)、救済(メロディ)、救済(メロディ)!  De.
物語(メロディ)、物語(メロディ)、物語(メロディ)!  De. 
世界(メロディ)、世界(メロディ)、世界(メロディ)!   De.
                                  De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.                                  
 

409 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 22:30:48
>>
  
  
 


             「――――俺は、 “この物語” 世 界の破壊者だ」
  
            << ――――――――――“Decade”>>
 

     “いや、違う。我々が思うほど、この世界は哀しくプログラムされちゃいない”
 
      “何より もう これ以上 ■■■■■ ■■の存在を 俺は認めない”


410 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 22:32:05
 
……とまあ、予想してたBAD対策に用意してたのがこれだ。
 
改めて貼ると暴力的な長さだな。

411 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 22:37:43
>407>>408>>409
 よし。それはそのまま使おう。素晴しいレスだからね。ぼくの方のレスを大幅に変えるから。
 少し待ってて30分はかけない。

神様(破壊神誕生)→>>407>>408>>409→歌が聞こえる→この物語は〜歌声とともに終わる

 の流れになるかな。

412 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 22:39:55

ああ、多分>>408がどこかでタグミスしているよ。
このスレはもうすぐ廃棄するからいいけど、本スレに張る前にレス自体の修正は頼むよ。

413 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 22:43:12

了解した。
悪いな、無茶言っちまって。じゃあミスだけ直しつつ待ってるぜ。

414 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:01:42
>>



 中枢である【Lady L 】が消滅したことにより、機構(システム)は狂い、蛭子神が生まれる。
 人々の願いを曲解し、終末という歪んだ形の救済をもたらす【機械仕掛けの神(メサイア)】が。

 人造の神(ガリバー)を依り代に、深紅の破壊神が降臨する。
 神罰(メギド)の矢を射る、慈悲無き神が。


.

415 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:02:50




ここに>>407>>408>>409 挿入



.

416 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:03:56
>>415



訂正
>>406>>407>>408>>409



.

417 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:05:04
えぴろーぐ
>>

 歌が倫敦に満ちていた。天から降り注ぐ歌が。地より湧き上がる歌が。
 最悪の破壊神と戦う仮面の破壊者を見上げながら人々は歌う。祈るように歌う。
 勝てるはずもない不条理(破壊神)に、それでも挑み打ち倒さんとする破壊者の姿。
 それを見上げながらみんなが歌う。

 歌を。人形(ステーシー)の歌を。

 誰からとも無く。申し合わせることも無く。何かに導かれるように、みなが歌う。
 人形の歌にあわせるように、みなが歌っている。歌声が重なっていく。

 歌う、歌う、歌う。

 神の息吹。上方世界より漏れ出した囀り。
 共鳴し同調し増幅されていく歌。
 

418 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:05:17
>>




――――――人形の歌が満ち溢れる世界で。




.

419 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:05:32
>>




――――――破壊神と破壊者のあいまみえる世界で。




.

420 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:06:23
>>





 歌が倫敦を満たしていく。祈りが倫敦を満たしていく。
 歌が人々の心をつないでいく。破壊者へと絆の力を運んでいく。
 人形の歌が。少女の歌が。人々の歌が。そう、みんなの歌が。






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421 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:07:01
>>









――――――この物語は祝福されたように奏でられる歌声(希望)とともに終わる。











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422 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:08:59

 以上。これでよければタグを調整して完成させるよ。
 突っ込んでくれればいろいろ修正もする。
 ただ、10秒でこれだけの物事が推移するのかという突っ込みは無視する!
 ……きっとみんなクロックアップしてるんだよ。


423 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 23:14:02

確認した。
こっちからは言う事はなしだ、むしろ見事って言う他ない。
 
http://charaneta.just-size.net/bbs/test/read.cgi/ikkokuRH/1095787239/627

あと、貼り付ける前にタグの修正版を上げたんで悪いが確認してくれ。
こっち(IE)だと大丈夫だが…ブラウザによってはミスが出てるかもしれないんでな。
 
>クロックアップ
…まぁ、多分それこそ奇跡って奴にしとこう。
降神機から地上に漏れ出た的なやつで。

424 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:17:40
おっけー。タグミスは無いようだよ。
じゃあ、>>414 をはってくるから、確認できたらそちらのレスを頼むよ。

425 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 23:21:16
 
了解したぜ。
 
>タグミス
問題がないようで何よりってやつだ。
…前に散々気付かなかったからな、単純なタグミスってのを。
 
【Alcard:ガーランドと悪魔狩人の闘争の件では手間をかけた】

426 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:25:44
>>425
はってきたよ。
いやいや、お気になさらず。誰にでもミスはあるから。

427 名前:門矢士 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 23:26:07
確認したぜ、じゃあ…行って来る。

428 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 23:33:13
 
そして――――あの男の物語はこれで終わりだ。
 
 
奴の〆を貼らせてもらった…最後の締めくくりを頼む。

429 名前:イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:40:27

 はってきたよ。これでついに終わったよ。

 森祭りに引き続き、付き合ってくれてありがとう。楽しかったよ。とても楽しかった。
 また機会があったらそのときは頼むよ。

 じゃあ、ぼくはレス番をまとめてくるから。

430 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 23:44:39
 
終わった……か。
 
礼を言うのはこちらの方だ。
此方の数々の無茶に付き合ってもらい、心から礼を言わせてもらう。
 
【Dacade:俺も同じだ。あんたとの“物語”は最高に楽しかった…って、柄じゃないが本心でそう言わせてもらうぜ】
 
ああ、また機会があればその時は宜しく頼む。


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