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■ 『王の矜持/凶事』

1 名前:◆vOzBAMUTHU :2007/07/29(日) 00:51:440




   『これは始まりであり、終わりである』

2 名前:◆vOzBAMUTHU :2007/07/29(日) 00:55:230

 ※注意!
 関係者以外が立ち寄ると死にます。

3 名前:『不死者王』ブラムス@レス:不死者王 ◆vOzBAMUTHU :2007/07/29(日) 00:57:090
『不死者王』対『英雄王』


―――――即ち、そういう事なのだろう。


神々の黄昏、ラグナロク。
その時代を体験した王にとっては、かつて起こったと記憶する現実である。
だが、幾多もの創造を経て変容した世界は、それを認めはしなかった。

過去の実存は神秘へ。
神々は現象へ。
そして――――歴史は幻想へ。
それが今在る『世界』の選択であり絶対宣告。

『世界』は神霊の所有を認めない。
其れは既に力ある現象であり、人々の信仰を集める偶像なのだ。
その定められた因果律に例外があってはならない。



―――そして、こういう事なのだろう。


『世界』とは因果であり法であり、律。
望む結果を絶対とするため、執行者は常に必勝の存在が選ばれる。
絶対の勝利者。
今の世において人はそれを『抑止力』と呼ぶ。



――――故に。

不死者王の魔城。
ノルンの三女を封ぜし、この玉座の間。
旧き主神、オーディンと比肩する不死者王ブラムスと対峙しているのだ。


新しき世が生み出した『原初の王』――――金色の英雄王が。
 

4 名前:『不死者王』ブラムス@レス:英雄王 ◆vOzBAMUTHU :2007/07/29(日) 00:59:330

―――――世界は彼を選んだ。

 黄金の王は一歩、また一歩と玉座に歩みを進める。
 足首まで埋まりそうな真紅の絨毯が、蝋燭の微かな明りと月の昏い光に照らされるその
様は、血の河を歩んでいると錯覚してしまいそうなほど―――――美しい。
 酷く幻想的で、夢幻の中に居るような雰囲気。
 彼の王だけが、酷く現実的で、生々しい。

 彼が目指すは―――玉座。
 王は、一人でいい。

 いや、王は一人でなくてはならない。
 その分類(カテゴリー)がなんであれ、絶対者として君臨する王は、ただ一人。


 ―――――世界は彼を選んだ。


 退廃的な城。
 人在らざるモノが住まう、異界の魔窟。
 その住人達は、今は姿も見せない。
 声を殺し、息を殺し、ただ『侵入者』の闊歩を見守る臣下のようだ。

 化生としての本能すら畏怖させる、絶対的な存在感。
 彼の王の前に出たとしても、歯牙にも掛からない、取るに足りぬ存在。

――――それが、完全なる王。
      それが、絶対なる王―――――


   ―――――世界は彼を選んだ。


 一歩、また一歩と歩を進め、ついには玉座の前へ。

「下郎、其処は―――――我の席である」

 金色の鎧を身に纏う王は、にべもなく言い放つ。
 それが当然であるかのように。

5 名前:『不死者王』ブラムス@レス:不死者王 ◆vOzBAMUTHU :2007/07/29(日) 01:04:320

――――<ruby><rb>世界</rb><rt>民</rt></ruby>のために<ruby><rb>神</rb><rt>王</rt></ruby> は在る。


「――――我の、と来たか」

不死者王が笑ったのは、気が触れたというわけでは決してない。
元は旧き時代、その知恵と勇猛さによって『賢王』とまで称えられた古代
ディパンの王こそがブラムスだ。
たとえ魂を冒涜する不死者となっても、その強靭なる理性は健在である。
悠久の時を経ようと、人の心を失うような脆弱さは存在しない。

ならば何故に笑うか?
問いの答えは明快に過ぎる。
今や世界に使役されるだけの、この死霊戦士――――
英霊が、まだ己を支配者などと思っているからに他ならぬ。

「神に報いることなく運命を狂わされたまま生を終え、存在すら自己のものですらなき『英霊』……
 新たなる世界の道具に過ぎぬものが、何かを所有する権利などあるのか?」

さも当然、という口ぶり。
十二の試練を踏破した大英雄にも劣らぬ体躯。
その全身から静かな、だが揺るぎ無い強大な気を放散させながら言い放つ。


  ――――<ruby><rb>神</rb><rt>王</rt></ruby>のために<ruby><rb>世界</rb><rt>民</rt></ruby>は在るのではない。


「お前はもはや王ではない。民も国もなく―――――何よりも、何人にも屈さぬ誇りを失った。
 今、ここに――――抑止の尖兵として立っているのがその証だ」

かつて、世界こそ我が物と宣言した大神オーディン。
金色を鎧(よろう)この王に、ブラムスは仇敵の影を重ねた。
世界の理が分からぬ、傲慢な愚か者――――だが、この男はそれ以下だ。

「子供でも分かる理を解せず、いまだ生前のごとく振舞うとは…愚かだな『英雄王』。
 いや――――」


  ――――だが、世界が神の傲慢を以って奪うのならば


玉座のはるか上、眠るのは魔術の晶石にて封じられしノルンの三女。
旧き真の名をシルメリア。神の所業に怒り、志を同じくした戦乙女。
今の新しき世界は知らない。
かつて、神の傲慢を正すため共に戦い―――そして、王を庇ったが故に封ぜられた真実を。
忘れてはいない、いまだ封印の解けぬ彼女への誓い。
オーディン亡きラグナロクの後。全ての決着をつけ、必ず姉妹たちの下へ送り出す。

自身を神の手より助けた恩義は、未だ何も返してはいないのだ。
もし阻むものがいるならば―――――

「―――新しき最古の王、ギルガメッシュよ」

玉座を離れ、黄金に輝く王の前―――はだかる様に不死者王が立つ。
黒の蓬髪、巌色の肌、そして神々をも屠り大地を歪ませる黒き闘気を立ち昇らせて。


  ――――我は、全霊を以ってそれに反逆する。 

6 名前:『不死者王』ブラムス@レス:不死者王 ◆vOzBAMUTHU :2007/07/29(日) 01:09:130

―――――<ruby><rb>我</rb><rt>オレ</rt></ruby>のために世界は在る。


 大気は停滞し、生ける者は既になく、朽ちるのを待つだけの城で、相打つ王。
 誰も知るコトのない戦いは、かつて聖杯を求めた戦いに似ている。
 だが―――――決定的に何か異なるコトは、英雄王にはマスターが居ないコトだろう。

 マスターからのバックアップを受け振舞う英霊(サーヴァント)ではなく、世界が作り出したシステムから
外れた者を葬る抑止の守護者(サーヴァント)。

「ハッ―――――」

 自嘲から零れる笑みではなく、侮蔑の成分を多く含んだ、禍々しいまでの笑み。


 ―――――世界は<ruby><rb>我</rb><rt>オレ</rt></ruby>のために在る。


「今更なにを云うのかと思えば―――――<ruby><rb>我</rb><rt>オレ</rt></ruby>は<ruby><rb>我</rb><rt>オレ</rt></ruby>だ。
 確かにこの身は座からの移し身に過ぎぬが―――――こうして現界した以上、<ruby><rb>我</rb><rt>オレ</rt></ruby>は<ruby><rb>我</rb><rt>オレ</rt></ruby>で
あり、世界も、民も、全て我に所有する権利がある。いや―――――義務が在る」

 それが、彼の王の在り方。

「一度現界すればこの世の全てを背負う。
 それができずして―――――なにが王か、なにが英雄か」

 この世の全てを背負い、天上天下唯我独尊の如く振る舞い、全ての責を誰に譲るでもなく
その身に背負う―――――金色の王。
 ただの独占欲や支配欲。それだけでは決してないからこそ―――――


   ―――――だからこそ、世界は例外的に<ruby><rb>我</rb><rt>オレ</rt></ruby>を選んだ。


「よかろう―――――『不死者の王』。
 我が御前にて膝を着き、赦しを請うコトにてその不遜な口の聞きかたは赦してやる」

 眼前には十と二つの試練を潜りぬけた英霊にも勝るとも劣らない巨躯。
 されども、黄金の王の前に立つには役者不足。

 十と二つの試練では足りぬ。
 この世全ての試練を集めてまだ足りぬ。

―――――無音の緊張感が張り詰めていた空間に、乾いた指を弾く音が響く。

 目の前の全ては武具となり、武具の数だけ絶望が生まれる。
 必殺ならぬ、必滅の具現。
 果てのない戦いの火蓋は、斬って落とされた。


    ―――――世界は彼を選んだ。
 

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