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■ 名護啓介 VS 有角幻也 闘争会議室

11 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/05/29(木) 21:34:37
[導入3(邂逅)]

その日、名護啓介はハンターとしての仕事に勤しんでいた。
ただし、相手はファンガイアではない。人間の、それも指名手配犯だ。
世間的には、名護啓介という人物は腕利きのバウンティハンター(賞金稼ぎ)として知られている。
(名護自身は、「バウンティハンター」と呼ばれるよりも「正義の味方」と呼ばれることを好んでいるが)
それも、報酬を全額恵まれない子供のために寄付している変わり者のハンターとして。

慌てふためきつつも、人込みを切り裂くようにして逃げる犯人。
鍛え上げられた肉体を全力で奮い、彼我の距離を詰める名護。
ゼノンのパラドックスが差し込む隙さえ無い、一方的な追跡劇は名護の勝利によって打ち切られる。名護の手が犯人の腕を掴んだのだ。

腕ごと引き寄せた犯人の身体が宙を泳ぐ。両肩を絡め取られ、有効な反撃手段を封じられた犯人の鳩尾目掛け、名護の膝が一直線に走る。
名護が指名手配犯と交戦する際は、確実に相手の行動を封じる一撃が初手になるように攻撃を組み立てる。
武器を持っているかもわからない相手に徒手空拳で挑む為の鉄則を忠実に守っていると言えるだろう。
そして、相手が立ち上がり反撃に移ろうとする瞬間に体勢が崩れるほどのロングストレートを叩き付ける。
反撃に移るたびに打撃を浴びせられ、気勢を削がれ抵抗する力を失った犯人が道路に倒れこんだ。

犯人を取り押さえた名護は、犯人の胸元のボタンに手を伸ばし服から千切り取る。
「このボタンは頂いておきます。貴方を捕まえた、記念にね」
―――このボタン集めは、名護の最大の特徴であるといっても過言ではない。
バウンティハンターとなるより昔、名護の心の奥底に刻み付けられた習性だ。
そして、手中に収められたボタンは“証”として輝き続ける。名護啓介という人間が、己の正義を万人に知らしめた足跡と共に。


しかし、今回はいつもと違っていた。
名護の口上は、雷鳴を思わせる轟音で断ち切られたのだ。
その轟音が耳に届いた瞬間、名護の身体は緊張状態へと入った。

―――これは銃声だ。俺が、撃たれた?

   撃たれた場所はどこだ? 痛みを感じない、いや感じられない状態なのか?―――

脳が情報を求めて全身の神経を励起させる。生存本能が求めたレスポンスが返って来るまでの一瞬は、体感的に無限に等しいほどに引き伸ばされていく。
実時間で5秒を数えた頃、名護は自身の肉体に何の損傷を受けていないことを把握した。自我の視点は内面観察から外界の把握へ切り替わる。
制圧した犯人の相貌には、驚きと諦めの色が浮かんでいる。諦めの意味は判る。余りにも大きすぎた実力の差と、正義に抵抗する愚かさを思い知ったと言うことだろう。
では、驚きの意味は何か? そう考えると、先ほどの銃声の意味も自ずと判って来る。

―――仲間が居たということか。
想定の範囲外、という使い古されてきた言葉を使うほどの事実ではないだろう。指名手配犯が長期間逃走を続ける為には協力者の存在は必要不可欠だからだ。
そして、万が一のために付かず離れずの距離を保ち護衛を務めていたというわけか。
―――では、万が一の事態のために放たれた銃弾はどこに行った?
犯人の視線の先に在ったのは、手を押さえた一人の男の姿。足元には拳銃が横たわっている。これが先ほどの銃声の主だろう。

男が手を取り落とした拳銃に伸ばそうとした瞬間、その手は名護によって踏みにじられていた。ぎゃあ、と短い悲鳴を上げた男をバックナックルで一撃加える。


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※以降は、そちら側の動きに合わせて修正することになると思いますが参考のために。

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