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■ 名護啓介 VS 有角幻也 闘争会議室

47 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/07/23(水) 22:13:15
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「――――名護啓介。
 まさか、ファンガイアと通じるところまで堕ちていたとはな」
 
有角が名護に続いて晒した手札。
それは、ファンガイアハンターとしての名護の立場を揺るがせる最悪のジョーカー。
キバを追い詰める為に、恵に執心するファンガイア・糸矢を脅迫し利用した一件を撮影した映像。
(……まさか、あの時の映像まで用意していたとはな)

名護は考える。背徳の証拠というべき映像を用意した有角の真意を。
あの映像が嶋の元に渡れば、名護はイクサの装着者として不適格と看做される。いや、それどころか『素晴らしき青空の会』を追放されかねない。
考えうる限りの最悪の未来。それだけは避けなければならない。

「今更言うまでもないが、監査は『Intercept X Attacker』装着者本人もその対象に含まれている。
 これは組織の内外から上がった声だ。
 現装着者であるお前の行動が最近、こと目に余るとは聞かされていたが…ここまでとはな。
 当然だが、これは重大な背任行為だ。
 不祥事というレベルすら軽く超えている、組織への裏切りそのものといっていい」 

名護は、有角の言葉を半ば聞き流しながら思考を巡らせる。
心に想い描く未来を、その手に掴む為に。

第二に、有角が単身でこの場所に現れたというこの現実は、『青空の会』が持つ政治力の賜物であり、有角はそれを認識している節が有る。
有角が打った手は保身のため。名護のスキャンダルを切り札にして自身の有用性を示し、この先に生き延びる為の戦略。

「念の為だが、この場合黙秘権は不利になるだけと言っておこう。
 ファンガイアへの寝返り―――この疑惑に対して、納得のいく説明を聞かせてもらおうか」

繰り返される有角の挑発的な言動の裏側にあるもの。
すなわち、ジョーカーだけでは完成しない手役を作り出したいという意図。
その手役が完成する時、名護の敗北は揺るがないものとなるだろう。

ならば名護の打つべき手は―――有角の手役の完成を阻むことに尽きる。
必要としないカードを送り込み、用意したジョーカーを無駄にする。それだけでいい。

「そんなことはありえないな」
名護は、有角の提示した映像そのものの信憑性を破壊することにした。
「第一、その映像が本物だとしよう―――だが、俺が言ったというその言葉のどこに、俺がファンガイアに寝返ったという文脈がある?」
あの映像は紛れもない本物であることは確かだ。しかし、名護の台詞そのものがおかしいのだ。
あの台詞をファンガイアが言っていたのであれば、名護の裏切りを造作も無く立証することが出来ただろう。
しかし、あの台詞を言っているのは名護だ。それは映像でも変わりはない。

「それに、俺がキバを狙うことは組織内でも認められている。22年前、キバが世界に対して何をしようとしたのか―――ドラキュラの息子である貴様が知らないわけがないだろう」
キバが、人類の敵と目される理由。それは過去に起こした事件にある。
そう、誰も過去からは逃れられない。

「証拠を捏造し、人類の敵であるキバを擁護してまで、俺を陥れようとするとはな……やはりその身体に流れている血は邪悪そのものということか」
名護は、確信した。自分の手札が、有角の手役を上回ったことを。
「もう、貴様の顔は二度と見たくない―――その忌まわしき命、神に返しなさい」

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