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■ 日守 秋星 vs 後藤

13 名前:◆bOIWj9Hr0g :2008/11/30(日) 23:11:06
なぜかも知らずこの世へと
 いずこからか水のごとく流れ着き
  荒野を吹き抜けるようにこの世から
   いずこへとも知らず風のごとく去る。

    

               ― ウマル・ハイヤーム


その種は突如として発生した。
生物の進化系の統樹のどこにも配置できない、完全なる新種。
その種の性質が解明されていくにつれて、人々はそれを人類の天敵や
増えすぎた人間達への自然の制裁などと呼んだ。

いかにも人間本位で傲慢な考えである。
この地上で最も繁栄しているのは目に見えぬ細菌達であり
肉眼で確認できるものに限定した場合でも地球の覇者は昆虫達であり
哺乳類にまで絞ったところで、多様性という面から見ればホモ・サピエンス以外の種が滅んだヒト属は
増えすぎるどころか滅ぶ手前にあると言えるだろう。

だが、滅びに瀕しているとはいえ、人類はこの新たな隣人に比べればまだ幸せである。
なぜなら彼らは、自らの肉体のみでは生存する事すらできず、個体数は人間に比べて圧倒的に少数であり、その上生殖能力すらない。
それでも彼らは一握りの力と得たばかりの知恵を絞り、懸命に今日を生きていた。

……人に寄り添い、その生命が尽きるまで。

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