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■ 天鵞絨の部屋
- 1 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/07(月) 22:53:16
- 残念だけど契約した人以外は立ち入り禁止だよ。
- 2 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/07(月) 23:01:47
- それじゃあとりあえず僕の考えている導入案だけど。
アメリカ軍がネバダ州の秘密基地でシャドウに関する実験をする。
↓
見事に失敗。出来上がった死神が脱走。
↓
一ヶ月で次々と人が刈られるもんだから大問題。影時間内の行動だから警察も軍も全く追えない。
↓
君がたまたま影時間に踏み込んじゃってさあ大変。
……今考えると専門用語多すぎだよね。
死神のスペックは今纏めている最中。影時間とシャドウについても説明しようと思っている。
他に聞きたい事があったら遠慮なく質問してね。
あ、念のために聞いておくけどペルソナ3か4は未プレイだよね?
- 3 名前:マカ=アルバーン ◆/j4MAKA./U :2009/09/07(月) 23:50:08
- ただいま到着っ。
導入案も読んだわ。これは楽しくなりそうね。
>原作ゲームの方
残念ながら、ゲームはどっちも未プレイなのよね…。
だから、ネットの海を調べるなりして作品のイメージを掴んでみてる。
でもまあ実際にプレイしてるわけじゃないからイメージするのにも
限度があると思うから、色々と望月さんに頼っちゃうかな。
- 4 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/08(火) 23:47:13
- 未プレイのことは気にしなくて良いよ。やった事はあるに越した事はないけど別段問題はないから。
僕だって昔はよく見知らぬ相手と戦ったしね。
それじゃ、いくつか纏めてきた事を話そうか。
・シャドウとは?
ペルソナ3及び4に共通して出てくる主人公たちの敵の事。ドラクエやFFで言うところのモンスターだね。
ペルソナ3ではタルタロスと呼ばれるダンジョン。ペルソナ4ではテレビの中の世界という異世界に登場するんだ。
その正体は―――3と4では厳密には異なるんだけど―――人の心の一部。抑圧された精神が人間から零れ落ちたものだ。
でも今回の闘争に出るシャドウは二つを混ぜた設定にするつもりだし深くは気にしなくて良いよ。
・影時間って?
1日は普通24時間だ。―――でも、実は今日と明日の狭間に隠された時間があったとしたら?
それが影時間。実態は多くの謎に包まれている。本当は多くのシャドウが集まった結果出来るもので原作だと全世界に広がっているけど
今回は強力なシャドウ、死神一匹だけ。規模はネバダ州一帯を包む程度だよ。
で、影時間の約束事もいくつか。
影時間に入るとその時間が明けるまで一切の機械類は停止するよ。時計も、電灯も、車もね。
頼りになるのは月明かりだけ。しかも訳あってその月は青緑色の光を発するんだ。
更に影時間を行動する事ができない人間は「象徴化」する。つまりその場で直立した棺桶の中に入っちゃうんだ。
この「棺桶」の中にいるとシャドウによって傷つけられる事もないし、また影時間も感じない。
君達普通の人間が1日を24時間だけだと感じるのはこれが原因だ。
でも、影時間内に踏み込む事ができる人間も存在する。
一つは「適性」を持つもの。統計とかは取れてないから不明だけど、稀にそんな人間が存在するんだ。
もう一つは「シャドウ」に呼ばれた者。これは適性がないものを無理に影時間に引きずりこんでその人間の精神を捕食する行動で
この形で影時間に入っても、影時間のことは覚えてないんだ。
今回の闘争では君とソウル君には「適正」がたまたまあったってことにしようと思うんだ。ただ適正があっても最初に影時間を体験したときは
記憶を無くすかパニックを起こすかするんだけど―――初体験でパニックを起こしながら死神に挑むもよし、近頃の影時間の体験を夢かな?と思いながら
釈然としない日常を送るもよし。そこらあたりのシチュエーションは君に任せたい。
- 5 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/08(火) 23:50:00
- ・死神「刈り取る者」とはいったい?
今回は死神一匹だけだけど、本当は人の数だけシャドウは存在する。シャドウは人から生まれるものだからね。
そして人から生まれたシャドウはその持ち主の個性を失ってしまう。だから自らを形作るためにタロットカードの「大アルカナ」にのっとった
形を作るんだ。魔術師ならテーブル。恋愛ならキューピットといったように。
そういった形で様々な種類のシャドウがいるけど大別して12のカテゴリーに分けられる。魔術師から刑死者までアルカナ順に数えてね。
全てのシャドウに共通する事項として自身のアルカナの番号が刻まれた仮面をつけている事が挙げられる。何のアルカナか見分けるならそこだね。
そしてその中の例外中の例外が「死神」だ。いまだこのアルカナの分類されるのは「刈り取る者」とペルソナ3のラスボスだけ。
当然、死神は全シャドウの中でも最強の能力を誇っている。
「刈り取る者」はペルソナ3ではペナルティ。同じフロアにずっと居続けるなどした場合に現れるいわば永遠パターン防止キャラとして登場。
ペルソナ4では隠しキャラ扱い。強いのは変わりないけどね。
姿は血まみれのロングコートに銃身が異様に長い銀のリボルバー2丁を携えている。顔はもちろん仮面に覆われているし、身長も君の二倍近くある。
あんまりにも怖い姿で歩いてるんで出会ったら一発で危険なやつだってのは分かるだろうね。
攻撃方法としてはリボルバー拳銃を使った通常攻撃から火・氷・風・雷の4属性のスキル攻撃、所謂魔法を使える。
あと吸血大殲らしく吸血も使ってくるよ。痛いだけでドラキュラにはなれないけど。
・てか何で死神出来たの?
シャドウというのは桐条グループという企業が「黄昏の羽根」というオーパーツを研究して発見した産物なんだ。
一企業でも研究できるんだからアメリカ軍もこの特殊な物に目をつけないわけには行かない。兵器転用を考えて実験してたけど失敗した上逃げられちゃったってことで。
それと影時間の説明の時言い忘れてたんだけど、影時間で意識不明になったり行方不明になったりすると、世間では「記憶の補完」が行われる。
つまり、シャドウの仕業が名も知れぬ通り魔の仕業になったり誘拐犯の仕業になったりするんだ。隠蔽しておこうと思えば死武専にすら知る事が出来ない素敵な仕様だね。
影時間中は一般人は動けないから目撃証言も皆無だもの。
それじゃ、今はとりあえずこんだけ。気になる事があったら何でも良いから言ってよ?
導入は書いている最中だから少し待っててね。
- 6 名前:マカ=アルバーン ◆/j4MAKA./U :2009/09/10(木) 01:17:26
- とっても詳しい説明ありがとう!
これだけの情報があれば何とかやっていけそう。
で…今のところは気になるところはないんで
ばしばしやっちゃってください。
- 7 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/11(金) 23:47:56
Nighthour
1ヶ月前 満月
「現在時刻23時30分。シャドウの状態はきわめて良好。現在命令通り実験室内を自由に動き回っています」
「最終調整を急げ。15分後には標的を投入する」
ネバダ核実験場。CTBT締結まで幾度となく核兵器の実験が行われ、痛ましい傷跡をその大地に残している。
残留放射能等の関係から一般人の実験場付近への立ち入りは深く禁じられており、だからこそ放射能の影響が薄い敷地内では
我々SOCOMの兵器開発部門メンバーによる半ばオカルト的な秘密実験も可能であったのだ。
「『黄昏の羽根』の状態は?」
「安定してます。過剰でも過小でもなく正に丁度良い状態でシャドウを形成。制御通りシャドウの力を最小限に抑えてます」
「気を抜くなよ。相手は我々人間の手に負えない化け物だ。『桐条』と同じ轍を踏む事だけは避けてくれ」
厚い特殊強化ガラスの向こうで這いずり回っているのは有形、無形どちらとも取れない姿をした『シャドウ』。
『黄昏の羽根』を媒体として生成した特殊生物兵器、つまり『怪物』である。
「標的を用意。これが『フール』最初の実戦だ。データを一つ残らず回収しろ」
「分かっております。エレベーター作動!標的をケージ内に降ろせ」
何故このような非現実的な実験を行う事になったか。全ては十年前の事故に起因する。
日本のとある場所、エルゴ研と渾名される桐条グループの団体が大量のシャドウを集め『時を操る神器』なるものの開発を
行っていた―――それがCIAからもたらされた情報である。
しかしその実験は何らかの理由で中断され、以後世界には『影時間』と呼ばれるものが発生した。それも今は原因不明ながら消失してしまったが。
10年以上の歳月をかけて収集された『黄昏の羽根』『シャドウ』『影時間』―――これらの情報から我々が出した結論、即ち
『軍事転用の可能性有り』である。
研究にあたりアメリカ国内で回収された『黄昏の羽根』には特異な性質があった。それは人間の抑圧された精神を引き付け、尚且つ具現化する力。
恐らく桐条もこの性質に目をつけシャドウを生み出したのだろう。我々も桐条と同じ結論に達し、そして目の前の小さな仮面すらつけてない
シャドウを生成、我々はこれに可能性を持つものと期待して『フール』と名前を付けた。
では我々は桐条と同じ道をこれから歩むか?答えは『No.』だ。我々はただ最小の力、人間を殺害できる程度の力を引き出すまで。
近年アメリカを対象としたテロリズムに軍は手を焼き、威信を傷つけられ続けている。
しかしCIAはレーガン政権の『暗殺禁止の原則』に縛られ、大層な行動を起こすことが出来ずにいた。
だが、誰にも知られず、国際法上問題となる事もなく、空爆より効率の良い、目標の命を奪う軍事行動―――そんな夢物語をシャドウは叶えられる。
- 8 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/11(金) 23:49:15
- >>
「目標投入完了。いつでも実験開始可能です」
ケージの中にあるエレベーターから褐色の肌をした男が放り出される。今回の実験の為に羽根の欠片を持たせた『標的』の死刑囚だ。
一般家庭の生まれから昼夜問わず勉学に励んで一流の州立大を上位で卒業し、薄給にも拘らず合衆国の為にSOCOMに身を投じた自分にとって
南方から私利の為麻薬を密輸して利益を稼いだ上、警官二人を殺害した目の前の男は軽蔑にしか値しなかった。
だから今ケージの中で必死に叫び許しを請っているだろう―――何枚ものガラスに阻まれて全くこちらには聞こえないのだが―――男が今から
異形の怪物によって『処刑』されても私の良心は一切揺れ動く事は無いのだろう。
むしろ私の愛する合衆国がこの実験によって更なる高みへと登れるその礎になる事、どれだけ落ちぶれていようと目の前に居るのは合衆国の一国民だ。
誇りに思って喜んで死んでもらいたい。
「―――主任。これを」
驚くべき事であった。絶えずシャドウの発する音声―――と呼べるのかどうかも怪しいのだが―――を拾いデータ化するモニターには
「Please order.」という文字が浮かび上がっていた。シャドウが自らの意思で次にすべき事を察したのである。
口元に微笑がこぼれる。目の前で必死にガラス戸を叩きながら喚く男の事などもはや何も気にならない。
はやる興奮を抑え、コンソールからシャドウ内部に搭載したコンピュータに『指令』を送る。正常に作動すればこの『フール』単体で十分兵器転用が可能である。
タイピング音がしばらく続いた後、目の前のモニターに私の出した『指令内容』が映し出された。「眼前の目標を撃滅せよ」と。
自由に動き回っていた『フール』の動きがピタリと止まる。然る後にモニターに「Roger.」と映し出された。
午前0時まであと1分。ケージの中という小規模ながら『フール』は影時間を発生させる。影時間の範囲の外に居る我々には知覚出来ないが
ケージ内の『黄昏の羽根』を埋め込んだ監視カメラはしっかりとあるはずの無い時間を捉えており、発生は確実である事がわかっていた。
今、『フール』がゆっくりと動き出し、男へと這い寄る。全ての研究員が固唾を呑んで見守っていた。
一分以内に恐らくシャドウは男を殺害するであろうし、殺害した後影時間ではどのようにすごすかというのも収集すべきデータである。
これまで全ての研究結果が現実での使用に値するのかどうか。かすかな不安と共に大きな期待を寄せ、目の前のイカレタ殺人ショーを見物していた。
- 9 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/11(金) 23:50:35
- >>
自動巡回モードより戦闘モードに切り替え......完了。
システムオールグリーン。視界良好。命令反復/『眼前の目標を撃滅せよ』=了承。作戦行動開始。
索敵開始...前方に標的確認。データ照合開始......データ無し。
独自分析開始......名称/不明 性別/男性 人種/不明 メスティーソの可能性大 年齢/30代後半?
状況/心拍数・血圧共に上昇。現在理解不能の行動中=錯乱状態? プリンパ等のスキルの影響下かどうか=否定。
微弱な大気振動を確認=男が叫んでいる?
聴覚システムオン......正常作動。標的の行動予測に効果的か?今回の戦闘に自己判断試験を兼ねる。
音声確認。データ化可能。変換及び内容の確認を行う。
『……に……たく……!』
凡そ105デシベル相当。音質改善。より細かいデータの収集を。
『……にたくない!出せよ!まだ死にたくないぃっ!』
データ解析完了、内容:死への抵抗=生物の本能。きわめて正常な反応。
次回戦闘にフィードバック可能なデータは無し。
『―――こんな化け物なんかに食われたくっ!いっそ、いっそのこと今ここで俺を殺せ!そうだ、殺してくれ!』
聴覚データに異常内容検知。標的は死に怯えるもの......データ照合確認。『教育』プログラムより発見。
前方の標的は性能の本能に反し死を望む=矛盾。聴覚システムのバグ?検査開始.........正常。
音声のデータ化に間違いなし。標的は死を進んで望んでいる。
『死への憧憬』?『破滅願望』?新データ作成。教育プログラムの改変許可無し/改変実行。
自身への重大なバグに転化する可能性あり。速やかな改変が望まれる...上書き完了。
新データ内容復唱『ヒトハススンデシヲノゾムモノ』『ヒトノウチナルノゾミハハメツデアル』
足りない。まだ足りない。まだ自身を何か決定付けるには足りない。
基礎構築データに新たな情報を添加。『シャドウトハヒトノヒメラレシガンボウ』『ヒトノヒメラレシガンボウトハ死ソノモノ』
『ヨッテワレハシャドウデアリシデモアル』『フール?ノー。ワレハ12ノアルカナニガイトウスルモノニアラズ』
『シャドウトハ』『ヒトトハ』『我は』『ワレハ』『死であり』『ノゾミデ』『アッテ』『』『』『』『』『』『』『』.........
- 10 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/11(金) 23:51:51
- >>
Darkness
―――全データ書き換え完了。『アルカナシフト』開始。
- 11 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/11(金) 23:52:57
- >>
『フール』の動きが突然止まった。ゆったりと標的に向かって進んでいたのに。
興ざめだ。もう間もなく影時間。『黄昏の羽根』の為、影時間内でも理論上人間も動けるはずだがそもそも影時間の
影響下に置かれなければ影時間を体験する事も出来ない。中の様子はケージ内の備え付けカメラが捕らえているはずだが
それでも直にこの目で見れないというのは非常に惜しい。思わず舌打ちの一つでもしてしまうほど苛立ってしまった。
……まあいい。どちらにしろデータさえ取れれば我々の目的は果たされる。今日と明日など一瞬にして変わる。
秒針が今にも頂点を指し、そして次の日を―――告げない?
自分の腕時計が突如として停止した。12:00:00:00を指したかと思えばいきなり電源が落ちた。目の前にあるのは
液晶に何も映し出さないデジタルウォッチ。
まさか。職員たちにも動揺が走った。研究員は全員黄昏の羽を所持している。この研究所の機器の殆どにも黄昏の羽根が
組み込まれている。唯一動かないのは外部から持ち込んだテレビのみ。
つまり、これは。
「か、影時間発生!?規模は特大、ネバダ州一帯を包み込んでいます」
どういうことだ。考えられる原因は一つ。先ほど停止した『フール』が何かを引き起こしたのだ。
モニターからケージ内に視線を戻し―――そこで私は思い知らされる事になる。
シャドウというモノは、人間には到底扱えきれぬ化け物であるという事を。
『フール』の背中から何かが生まれようとしていた。顔、いや『仮面』だ。
頭蓋骨を思わせる白の仮面。欠けている周辺だけが血のような赤で塗られ、穴から恐ろしい目を覗かせている。
頭部が完全に背中から浮き上がったと思えば横から銀のリボルバーを握った手が飛び出す。
まるで昆虫の羽化のようだった。背中から次々と新しいパーツが出てくる。両手の次はロングコートを着込んだ胴体。
それも腰あたりまで手を使って這い出ると次には片足を地面に付け、そして『フール』の抜け殻がもう一方の足に変わり
―――完全な人型となった。
「……任務再開。標的を撃滅する」
研究員の一人が呟く。音声をデータ化するモニターには先の言葉が浮かび上がっていた。
直後、ガラスの壁に何かが叩きつけられる。『標的』だ。あの握られた拳銃の威力は人間のモノより凄まじいらしく
軽々と大柄な体型をした男を吹っ飛ばしていた。男がずり落ちた後をなぞる様に赤い線が引かれていく。
しかし、化け物は追撃の手を緩める事は無い。両手に握られた拳銃から次々と弾を繰り出して眼前の人間の体をずたずたに
引き裂き、ついに人の形を留めなくなるまで引き金を引く事を止めなかった。
―――「死神」
思わずそう呟いた。呟くしかなかった。背筋が凍るような暴力の塊。
いや、これはただ単純な暴力ではないのだろう。我々が出した『指令』に従った秩序ある暴力。
人間にとって、いや生物にとってもっとも恐ろしい力だ。なぜこんなものを生み出してしまったのだろうか。
感動の前に後悔の念が浮かぶ。実験は完璧だ。人などこの化け物の前には襤褸雑巾に過ぎない。
軍事利用すれば無類の力を発揮できるのは明白だ。しかしだ。私の頭のどこからとも無く危険信号が発せられている。
この分厚いケージに阻まれながらも、どこか自分の命が危険にさらされているという感覚を覚えてしまう。
何か、我々はとんでもない事をしてしまったような気がして仕方が無い。
「しゅ、主任!?」
「……どうした!?」
「『シャドウ』がこちらを標的と認識!撃滅を計っています!」
命令内容をもう一度思い出す。
「眼前の目標を撃滅せよ」。「眼前」。そうかクソッタレ。指令がアバウトすぎたんだ。
「ケージ内に高エネルギー反応!?何かが来ます!」
顔を上げると目の前の『死神』が拳銃を上に掲げていた。その上方には光り輝く4つの玉。
特殊な製造で作り出した幾重にも重ねた世界一硬いガラスが溶解を始めている。ケージを破壊した上で
『標的』たる俺たち全てを消すつもりだろう。
「指令変更だ!攻撃を中止させろ!」
「駄目です!間に合いません!!」
小さな太陽が地に落ち、眩い光が辺りを包み込む。叫ぶどころか、感じる間もない。間もなくこの体は膨大なエネルギー波に晒されて消滅する。
先に飛んできたモニターには『死神』が発したであろう言葉「メギドラオン」の文字が表示されていた。
- 12 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/11(金) 23:54:22
- >>
in the early morning
当日 満月
……このネバダ州核実験場敷地内での観測所での漏電による火災から早1ヶ月が経ちました。
燃料に引火し大規模な爆発を起こしたものの幸い当時は建物の中に人は無く、死者は出ませんでしたが
この爆発による放射能被害が出るのではないかと住民の間では不安の声が上がっていました。
しかし今日合衆国エネルギー省は放射能被害の可能性は皆無と1ヶ月に及ぶ調査の結論を発表し、これからの安全管理をさらに徹底し
同じ過ちを繰り返さぬよう努める方針です。
同じくネバダ州からのニュースです。
最近州を騒がせている連続通り魔事件。また新たな被害者を出しました。
被害に会ったのはデスシティー在住の自営業の男性(37)です。
男性は胸部を13発の銃弾で打ち抜かれており発見されたときには既に死亡しておりました。
これまで1ヶ月で47人も通り魔に会って死傷を負っており、手口から州警察には同一犯の可能性が高いと発表されています。
しかし犯行現場はバラバラで、さらに目撃情報も皆無な事から操作は難航。近日中にFBIが捜査に加わるとも言われております。
また、今回の犯行現場が死神様のお膝元であるデスシティー内にあるにもかかわらず死者を出された事に職人達も大きなショックを与えているようです。
犯人はいまだ捕まっていない現状、付近の住人の方々は深夜の外出はお控えください。
では次のニュースです。日本の人気特撮、フェザーマンがハリウッドでリメイクされることに―――
- 13 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2009/09/11(金) 23:57:11
- ―――時間がかかった分無駄に長いね。ごめん。
もうちょっと削ったり切ったりして読みやすくするかも。
とりあえず僕の用意したプロローグはこれだけ。
次は君たちの番だよ。肩肘張らずに、ゆったり考えるといいから。
- 14 名前:マカ=アルバーン ◆/j4MAKA./U :2009/09/22(火) 01:02:09
「また通り魔かよ」
連日の度重なる「連続通り魔事件」の報道。
世間――少なくとも、アメリカ国内はこの話題で持ちきりだ。
しかし、もうその話は聞き飽きたとでも言うかのように、
ソウルはソファの上からひどく眠そうな、そして退屈そうな目でテレビを見つめていた。
「あーあ、とうとうデスシティーにも、通り魔の魔の手が伸びてきたかぁ…。
さすがにこんな所までは来ないと思ってたのに」
ソウルの隣で朝食のトーストをかじっていたマカは、
ソウルとは反対に、興味深そうにニュースに耳を傾けていた。
「この勢いだと、その内武器と職人まで狙われ始めちゃうかもね」
「縁起でもないこと言うなよ…」
と言うと、少年はくあ、と欠伸をひとつ。
「ほら、ボヘっとテレビみてないで早く朝ご飯食べちゃいなよ。学校遅刻するぞ」
「ん」
- 15 名前:マカ=アルバーン ◆/j4MAKA./U :2009/09/22(火) 01:02:39
その後、いつも通りに登校した二人はすぐにデスルームに呼び出された。
こんな朝っぱらから何を言われるんだろう、そもそも何故呼び出されたんだろう、
また補習だろうか、いやまさか、何もやらかしていないのにそれはないだろう…
などと二人はそれぞれ思いを巡らせながら、デスルームのドアを叩く。
「失礼します」
鎌のような不思議なアーチの続く、長い長い廊下を抜けると
死神様を模した鏡の置いてある部屋にたどり着く。
「おおっ♪来たね、二人とも」
部屋の丁度真ん中に置いてある鏡の中から、死神様が顔をのぞかせる。
「いや〜登校早々ゴメンね〜?
マカちゃんとソウル君に、ちょっとしたお願いがあるんだよねぇ。
ほら、ココ最近通り魔がなーんかブイブイ言わせちゃってるでしょ〜。
あれすっごく迷惑で困っててね…。住民の方々からも何とかしろって
苦情が多発しちゃってさあ」
はぁ〜、と溜息交じりに死神様が続ける。
「で、応急処置ってことで二人にデスシティーの見回りをお願いしたいのよ」
「見回り…ですか?」
またいつぞやの退学をかけた決死の補習でも
言い渡されるんじゃないかと、軽く身構えていた二人は思わずきょとんとする。
仮面で表情が分からない…というか、ひょうきんな表情にしか見えないのだが、
溜息からして、死神様はこの事件に対して相当頭を痛めているのだろう。
「ブラック☆スター組かキッド組にでも頼もうかと思ってたんだけど、
あいにく課外授業中で帰ってきてなくてね〜。
君ら二人なら、怪しい人に会ったってボコボコにできるデショ」
「はぁ」
「それにマカちゃんには魂感知能力があるから、
そーゆー怪しい人なんかは探しやすいと思ってね」
「はぁ…」
「どーにもこーにも、この事件、普通じゃない気がするんだよねェ…。
…まあ、私のカンなんだけどね〜。ホント、見回ってくるだけでいいから。
多分何にもないとは思うけど、何かあったらすぐに報告するんだよ?
そんじゃ、ガンバっちに〜♪」
ブツリ、と音を立て、鏡の中の死神様が消える。
…なんとも唐突な話だ。
- 16 名前:マカ=アルバーン ◆/j4MAKA./U :2009/09/22(火) 01:03:06
それから時は進んで―――
その日の深夜。デスシティー市街地。
とても、静かな夜だ。
先の報道の効果も相まってなのかどうなのか、人っ子一人居ない、深夜の街。
時折吹き抜けていく風が、頬を撫でていく。ひんやりしていて心地良い。
そんな街中を、二人は1,2時間ほど歩いていた。
「不審者なんて探して出てくる親切なもんでもねェだろうに」
そう愚痴を漏らすソウル。気持ちは分からなくもない。
どうせ夜中出歩いて出会うのは大抵、路地裏でたむろしている不良グループだの、
でろんでろんになっている酔っ払いだのばかりだ。
そうそう不審者にばったりと出くわすはずがない。
「夜の散歩とでも思ってればラクじゃん?」
と、適当に愚痴を受け流しておく。
死神様直々の頼みごとなのだから、今頃不満を言っても仕方が無い。
「どこまでも楽観的だなぁお前…つうか、これからどーすんだよ?
こんだけ歩いて怪しいヤツなんか一人も居なかったんだから、
もう帰っちまおうぜ」
「…そーねぇ…」
少し、考える。
街はこの静かさだ。きっとこれ以上歩いても歩くだけ無駄だろう。
死神様への報告は…まぁ、異状なしだし…明日にまわそう。
何より、さっさと帰って読みかけの本の続きを読みたくなってきた。
深く考えるまでも無かった。マカの選択は、すぐに「家に帰る」へと結びついた。
「…じゃあ、帰ろっか」
「おう」
二人はアパートのある方へとゆっくりと歩き出し始めた。
もうすぐ、日付が変わる時間だ。
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