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■ <剣聖>と「呪われし公子」の会議場 〜機械庭園のカフェテラスにて〜

1 名前:◆GAinErMg8k :2011/07/01(金) 00:11:55




ようこそ狂い咲きの園へ


.

2 名前:<呪われた公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/01(金) 00:14:45
ここは<剣聖>と余が戦いを交えるために用意された場所。
我ら以外は何人たりとも立ち入ることは許されぬ。しかと心得よ。

3 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/01(金) 00:16:43
では改めてよろしく頼むぞ<剣聖>よ。
シチュエーションだが予定通り魔力炉ネタでいくこととしようぞ。
それを前提に導入案を近日中にこの場にあげるとしよう。
長くは待たせぬ。しばし待つがいい<剣聖>よ。

汝も此度の闘争でやりたいネタがあれば遠慮せずに言うがよい。
全面的に取り入れようぞ。

4 名前:フリメルダ・ロティス:2011/07/02(土) 15:58:59
ご挨拶が遅れました。
よろしくお願いしますね、公子さん。

導入の件は分かりました。
任せきりで申し訳ありませんが、待たせてもらいますね。

闘争のネタは―――
私の希望は明快単純。「派手なファンタジーチャンバラ」です。
その願いは相手があなたであれば自然に叶えられるだろう、と考えてます。
期待してますよ。

シチュエーションでは特にネタはありませんが、
逆に〆の「炉の暴走に巻き込まれてゲイナーは異世界へ〜」に関しましては、
わたしに一案ございます。
ミストのオーバーロードの理由付けというか説得力付与というか…
次の闘争のお力になれるようであれば、是非に。
まぁこれは闘争がある程度進んでから相談してもいいでしょう。

5 名前:暫定版導入 ◆GAinErMg8k :2011/07/03(日) 21:34:20
>>

 遠くから聞こえてくる絶え間ない音。聞き慣れた音だ。
 金属と金属が打ち合わされる音。
 刃が肉に深々と食い込む湿った音。
 命が消えるときの断末魔の音。
 これはそう、戦場(いくさば)の音。

 ほんの数刻前まではそんな予兆などつゆほどに感じさせなかったが、
いまではここは凄惨な殺戮の舞台(キリングフィールド)だ。五感を研
ぎ澄ませば、むせ返りそうになるほどの血の匂いすら嗅ぎ取ることがで
きそうだった。そんな濃密な戦場の空気がこの建物を満たしていた。

 思ったよりも早かったか。
 まるで他人事のように考えながら彼は無機質な廊下を行く。

 奇妙な男だった。
 闇色のソフト帽。目の細かいブロードのホワイトシャツ。光すら吸い
込み逃さぬような漆黒の三つ揃え。シンプルな銀のループタイ。左手に
はシンプルな造形のステッキを握っている。一歩一歩踏み出すたびにト
リプルソールの重厚な足音が飾り気のない廊下に響く。

 そこまではいい。奇妙なのはその顔だった。彼の顔はオペラで使われ
るような仮面に覆われていた。顔の上半分を覆い隠す仮面によって、そ
の表情を伺うことはできない。ただあらわになったその口元には諦めに
も似た自嘲めいた笑みが浮かんでいる。

 状況はお世辞にも良いとは言いがたかった。
 莫大なコストーーー金銭的にも時間的にも労働力的にもーーーをかけ
て作り上げたこの施設も廃棄せねばならないだろう。

 ミストの力を効率よく抽出するための動力炉。彼が異界より持ち込ん
だ魔光炉の技術を応用して作り上げた魔導炉。予定よりもだいぶ早く破
棄するはめになってしまった。いったいどこから情報が漏れたのだろうか。

 まあ、いい。
 必要なデータは充分に集めることができた。後はこれをもとにまた別
の場所で仕上げれば良い。時間はあるのだ。そう、時間だけは彼には有
り余るほどにあるのだから。

6 名前:暫定版導入 ◆GAinErMg8k :2011/07/03(日) 21:35:11
>>

【中略】(スタイリッシュに登場したイケメンクールガイを瞬殺する描写。の予定)

7 名前:暫定版導入 ◆GAinErMg8k :2011/07/03(日) 21:35:58
>>

 銃口より撃ち出された弾頭が狙い過たず敵の頭部を吹き飛ばす。
 赤い飛沫が床を壁を醜く汚す。

 はじめの襲撃者から数えて、既にもう五組目だ。襲撃の間隙がどんど
ん短くなっている。予想以上の速度で浸透されていた。急がねばなるまい。

 使い終わった拳銃を空間の狭間に投げ捨て歩き出す。撃ち終わりだ。
これで手持ちの火器は使いきった。ここから先は剣と魔法のみが彼の矛
だ。先に立ち寄った次元でもう少し多めに補充しておけばよかったと少
しだけ反省する。有象無象を一掃するには剣や魔法よりもやはり火器が
お手軽だ。

 隔壁を開き最深部へと足を踏み入れる。殺戮の音は聞こえてこない。
この区画までは、流石にまだ侵入されていないようだ。

 ここまでくれば炉心まではもうすぐだった。自然に足が速くなる。厳
密に言えば彼の目的地は炉心ではなくその直近にある制御室だ。

 彼の目的は重要な研究結果を襲撃者たちの手に渡さぬことだった。そ
のための手っ取り早い方法は炉心を暴走させることだ。それでこの辺り
一帯はきれいに吹き飛び跡形も残らない。魔導炉の現物も資料もこの施
設のことを部分的にとはいえ知る研究者や作業員たちも、そしてもちろ
ん襲撃者たちも一切合切何も残らない。残るのは彼の頭の中にあるデー
タのみ。それを持って臨界点を突破する前にこの場所より『跳べ』ばいい。
 実に簡単で効果的で素晴らしいことではないか。

 データはもう充分に取れているのだ。次はこんな小国ではなく軍国主
義の帝国にでも取り入り派手にやるとしよう。そう思いながらついにた
どり着いた制御室の扉に手をかけたところで背後に現れた気配に一瞬だ
け動きを止め、そして振り返った。

「余になにかようかな?」

 その左手にしかとステッキを握ったまま。

8 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/03(日) 21:48:24
 とりあえずは暫定版の導入を用意した。
 本番までには改良を加えるゆえ、文章の粗さには目を瞑るがよい。

 この後そちらのレスをはさんで戦闘開始となる訳だが、汝から動くつ
もりがなければ余が仕込み杖で斬り掛かるつもりだ。
その後、「・・・拙いな本物か。ならば余も全力で相手しよう」などと
いった具合に全身鎧の姿へと変身するとしよう。

>派手なファンタジーチャンバラ
望むところよ。そなたならば相手にとって不足はない。余も全力で相手いたそう。

>ミストのオーバーロード
ではこの案については後ほど打ち合わせることとしよう。

9 名前:フリメルダ・ロティス:2011/07/05(火) 19:42:07
ぐ…思ったより書き出しで苦戦してます。
あまりにも長いこと文章から離れいた代償でしょうか。
今晩中か…遅くとも明晩には上げるのでもう少し待ってください。
ほんと、ごめんなさい…

10 名前:名無し子猫:2011/07/06(水) 21:42:01

 栗色の髪がミストに揺れた。

 翡翠色の双眸がわたしを射抜く。厳しさと優しさをあわせもった慈愛の瞳。
 歓喜の震えが総身を襲う。この人はあの時となにも変わっていない。
 うなじのあたりで短く切り揃えた髪も、触れば溶けてしまいそうな白肌も、数多の死線をくぐり抜けたとは到底思えない生娘のような素朴なかんばせも―――腰に提げた二振りの騎士剣も。
 緑を基調とした旅装束や革鎧など、装飾品に至るまでなにひとつ変わっていない。
 当然だ、この人は時の流れから解放された概念なのだから。

 くつくつ、と肺腑から笑いがこみ上げる。

 わたしの世界が赤熱したあの時から決めていた。絶対に連れていってもらう―――と。

11 名前:フリメルダ ・ロティス:2011/07/06(水) 21:44:54

 ここはどこなのか。
 なぜ、私はここにいるのか。

 なにも情報が与えられないまま見知らぬ研究室―――らしき部屋に呼び出されたところで、今更そういった疑問で戸惑うことはない。ミストが必要としたから、フリメルダ・ロティスはここにいる。

 私が“喚ばれた”ということは、Sランククエストが発生したことを意味する。ジャッジが、この依頼(クエスト)は現在活動しているクラン(ギルド)では達成不可能だと審判した。イヴァリースの法則を無視した巨大な理不尽が成されつつある。

 ジャッジとはミストの意思である。ミストは私たちにとって大気や日光と同じようなもの。ユトランドに満ちる大いなる力が、自らが敷く“法(システム)”の危機を訴えている。剣を執る理由としては十分だ。
 私はユトランドで生まれ、育った。ユトランドは笑顔も涙も等しく受け止めてくれた。
 ユトランドの平和―――誰にも壊させはしない。

 だけど、今回の召喚は普段のクエスト執行とは若干様子が違った。そこが懸念となって、胸裏にしこりを残している。

 まず、私の推参に立ち会った娘の存在。この施設の研究員だと自称していたが、不振なところがあまりに多い。なにせ、ミストの光気を帯びながら突如として顕れた私に驚きもせず、口角を歪めてこう言い放ったのだから。

「世界が赤熱する有様を見てみたいんだ」

 聞き捨てならない文句だった。
 魔術を学んではいるようだったが、魔力量は見習い程度しかなく、Sランククエストを発生させる魔王クラスの驚異には逆立ちしても見えなかった。いまの状況では施設からの脱出を促すことぐらいしかできなかったが、年若い容姿からは想像もつかない濃密な存在感が、見逃してしまったことに対して消化しきれない懸念となり胸にわだかまっている。それほどまでに娘の笑顔は邪悪だった。

 もう一つは、我が身をまとう充実したこの剣気。ユトランドの窮地に際して、不謹慎なまでに調子がいい。今ならば海を断ち、山を割り、空を穿つことすらできるのではないか。そんな錯覚を覚えてしまうほどだ。
 その原因はやはり、この大それた施設にあるのか。
 ミストを効率的に熱量へと変換するための動力炉。あの娘曰く“魔導炉”と呼ぶらしいが―――施設というよりも、もはや巨大な城塞だ。ユトランドにはあまりに不似合いな鋼材による無機物の異界。ミストの流れを読むだけで、如何に歪んだ存在であるか分かる。
 ミストの濃度が不自然に高められているからこそ、私の力も相応に高まっているのだとしたら、それはあまりに皮肉だ。

 どちらにせよ、人の手には過ぎた代物。ジャッジの審判に従い、最小限の被害で破壊しなければ。
 ならば、まずはこの舞台を演出した指揮者を討つ。娘の情報を参考に足を向けた制御室に―――果たして、ジャッジが“法の敵”と認めた男はいた。

 何か用か、と問うのならば、私の返答は一つしかない。

「争うつもりはありません。これ以上の流血は無意味だと訴えるために来ました。この施設の存在が露見してしまった時点で、あなたの目論見は破れているはず。ならば、ここは大人しく退くのが賢明な判断でしょう」

 言葉に説得力を持たせるため、剣の柄に手はかけない。

12 名前:フリメルダ ・ロティス:2011/07/06(水) 21:51:49
しまった…改行を忘れてしまいました。
恐らくたいへん見苦しいレイアウトになってることでしょう。
申し訳ありません。本スレに貼る段ではちゃんと調整します。

内容はご覧の通りです。
「?」な部分も多々あるかもしれませんが、そこは考えず、
当初の予定通り仕込み杖で切りかかって頂き、闘争を始めましょう。


しかし…
あまりに多忙で帰宅すらままならない生活の為、
必死で携帯端末で書いたのですが…
昔よりもはるかに手軽に打ち込めました。
これも時代というものでしょうか。ふふ。

13 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/07(木) 21:39:38
>>

 一目見てわかった。目の前に立つ女が何であるかが。

 天秤の騎士、永遠の戦士、勇者、英雄、決戦存在。呼び方は数多あ
れど、その本質はすべて同じ。世界の理に外れた事象がおこらんとす
るとき、それを修正するための抑止力。・・・・・・そういえば聞こ
えは良いが、なんのことはない。結局のところは愚集の尻拭いをする
掃除屋、世界の奴隷だ。

 報われることのない、終わりのない戦いを続ける孤独な戦士。かつ
ては彼がそうであったものであり、今や決定的に相反するものであり、
それでいて本質は全く同じものだ。

 凝り固まった既存の法(ロウ)を打ち壊し変化にとんだ混沌(カオス)
をもたらすか、混沌に満ちた世界に秩序をもたらすか、その違いでし
かない。法と混沌、言い換えれば秩序(コスモス)と混沌(カオス)
どちらかがより世界にとって害であるのか。光と闇そのどちらかが世
界にとって余剰であるのか。結局はそれを修正するために、天秤(バランス)
を保つための道具にすぎない。

 女の言葉に彼は苦笑を浮かべ大きくうなずく。

「もっともなことだ。汝の言うことはおおむね正しい。汝の言う通り、
この施設の存在が露見した時点で余の計画は破綻しているし、故に余
はこの場より去らねばならぬ」

 そういいながら彼は目の前の女へと近づいていく。まるで町中で偶
然古い知人とあったかのような気楽な足取りで。

「そう、汝の言うことはおおむね正しい。ただ一点をのぞいては」

 彼の口元から笑みが消え、左手に握ったステッキの先を女へと向ける。

「後始末をしていかなくてはなるまい?この施設に関わった者はただ
の一人も生かしておく訳にはいかぬ。ならば汝の言葉のうち、これ以
上の流血は無意味というその一点は間違っておるのだ」

 彼はそう言い放つと滑るような足取りで残りの間合いを一息に詰め
る。同時に左手に握ったステッキを目の前の女へと突き出した。空を
貫き女へと迫るステッキ。それが瞬く間に変化する。ただの道具から
人を傷つけ命を屠るための凶器へと。複雑な模様の描かれたレイピア
へと。

 混沌の魔力を秘めた極細剣。自在に曲がる刀身を持ち、防御の隙間、
鎧のつなぎ目から相手を貫く忌まわしい魔剣。その切っ先が鎌首をも
たげた蛇のごとく<剣聖>へと襲いかかった。

14 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/07(木) 21:47:20
 予定通り汝に仕込み杖で斬り掛かった。好きにいなすがよかろう。
 さて、導入の改訂版もできたので近々本スレに張ろうと思うが、その前に
この闘争の題名を決めておきたい。汝に何か良い案はないものか。サブタイ
トルはSaviorかmessiahあたりが今のところの候補だがそれもまた未定だ。

Furimeruda Rotisu vs Gaynor 〜Savior〜

 などとシンプルにいくのも悪くはないが、汝に何か案があれば出してもらいたい。

15 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/10(日) 14:36:28
題名案追加

鏡持て見るが如く(Through a Glass, Darkly)〜Savior〜

元ネタは
「童の時は語ることも童の如く 思うことも童の如く 論ずることも童の如くなりしが 人となりては 童のことを棄てたり
今我ら鏡持て見る如く 見るところ朧なり されどかのときには 顔を対せて相ま見えん」
〜コリント人への第一の手紙 第13章〜

16 名前:名無し子猫:2011/07/10(日) 21:01:25


〈剣聖〉フリメルダ。
 ユトランド地域はおろか、イヴァリース全土にまで名を轟かす伝説の女剣士。ガリーク
ランの筆頭騎士として、秘密結社カミュジャや犯罪組織デュアルホーンを壊滅させた救国
の英雄。ガリークラン解体後も旅を続け、力持たぬ人々のために剣を振るい続けた。

 あまりに高潔な、偉人の中の偉人。

 例外に漏れず、わたしもお母さんから子守唄代わりに様々な逸話を聞かされた。お父さ
んから、女性として彼女のように気高く育てと諭された。

 ……そう、あくまで〈剣聖〉は伝説の存在。
 ガリークランがユトランド最強の英雄ギルドとして活動していたのは、おじいちゃんお
ばあちゃんがわたしよりまだ若かった時代の話だ。

 ゾディアックブレイブやウイユヴェールがそうであるように、伝説も所詮は物語に過ぎ
ないのだから、必ず終わりがある。
 ……そのはず、なのに。
 〈剣聖〉の物語は未だ終幕を迎えていない。彼女は未だに独りで戦い続け、伝説を更新
している。
 行方は知れない。姿こそ多々確認されているが、誰も言葉を交えてはいない。ただ、災
厄あるとこに聖剣エクスカリバーの輝きがあるのみ。

 それが意味することを知ったのは、わたしの世界が赤熱したあの日―――

17 名前:フリメルダ・ロティス:2011/07/10(日) 21:01:50

 
「機兆(きざし)」や「観の目」などと称される対手の攻撃の先読み。素人の眼には奇跡
のように映るかもしれないが、数えきれぬ経験の果てに達人に至った剣豪ならば、無意識
下で相手の選択を見切るのは基本中の基本だ。
 私の持論では、対手の〈意〉のみを読んでいる段階ではまだまだ二流。せいぜいが達人
名人レベルだ。流派を立ち上げ、生活の糧としてひけらかすのが目的であればその程度で
も十分なのだろうけど―――世界を救うならば、その先を見なくてはならない。

〈剣聖〉が読むのは対手の選択ではなく、世界が操作する因果の流れ。心身を徹底した凪
として、ミストに同調することで数秒先の未来を〈予知〉する。
 理論上、ミストに包まれるこのユトランドでは、私に攻撃は届かない。

 ―――はずなのだが。

 この男、見えにくい。因果の仕組みがイヴァリースのそれとは若干異なっている。
 咄嗟に脳裏に浮かび上がったのは、グリモアに招かれた少年の横顔。この黒ずくめの男
もまた、あの子と同様に異世界からの来訪者ならば―――

「……なるほど、私が喚ばれたのも道理ですね」

 魔剣の切っ先が我が肉を食い破らんと襲いかかる。剣の道を進むだけでは満足できず、
魔道にまで手を染めた外法の剣士か。
 呼吸も踏み込みのタイミングも全て見えていたが、見えていたときには刃がきらめいて
いた。加えて、剣尖の軌跡は変幻自在。完全に後手に回された。

 ―――が。

 消失呪文〈デスペル〉が刻印された右の手甲が、魔剣の刃を白羽取る。
 この程度の軌跡の可能性では、因果を読むまでもなく見切れる。殺し技を戯れの初手に
使うなんて……気に入らない。

「ここに至り、まだ流血を希望するのであれば」

 手甲により一時的に魔術紋様を封殺された剣をそのまま握り潰す。砕け散った刃が頬を
傷つけるのも気にせず、私は静かなる怒りを立ち上がらせた。

「あなた自身の血をこのミストに捧げるのが筋というもの。……しかし、私は言いました。
これ以上、血が流れることを望まないと。〈剣聖〉に二言はありません。故に、」

 腰に下げた二刀のうち、一振りの柄を握る。
 聖剣エクスカリバー。
 我が剣の道の具象。
 神々が鍛造した刃は切れ味もさることながら、魔力の器としても莫大な許容量を誇る。

 ミストとは魔力の素。ミストの祝福によって剣を振るう私もまた、黒ずくめの男同様に
外法の剣客である。アライメントは正対だが、流儀は同じ。

 招かれざる来訪者よ。あなたが蹂躙しようとしたミストの力が如何に深遠に満ちた尊き
存在であるか、私が見せつけてあげましょう。

「蒸発しなさい。その穢れた肉も、血も。自らの罪とともに!」

 エクスカリバーを媒体として黄道十二宮が一柱〈慈愛の教皇デュダルフォン〉の雷を宿
らせる。聖剣をゾディアックストーンに見立て、十二使徒の力を借りる。これぞ長い旅路
の末に達した一つの境地―――名付けて神獣召喚剣。

「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん―――」

 聖剣が鞘走る。抜き放たれた刃は帯電する雷光によって可視は能わず、ただ膨大な光の
奔流がかろうじで刃のカタチを作るのみ。
 神話の時代、〈憤怒の霊帝アドラメレク〉をゼルテニアン洞窟へと叩き落とした浄化の
稲妻が、いま、聖剣を通してその一部の御力を現世に顕現させる。
 
「無双! 稲妻突き!」

 正面から受ければ灰さえも残さない雷槌の一撃は、制御室の一角のみならず、軌道上の
あらゆる建造物や装置を呑み込み、慈愛の名の下に平等に蒸発させる。

 ……刺突と称するには破壊力が少々高すぎるのが今後の改善点か。

18 名前:フリメルダ・ロティス:2011/07/10(日) 21:09:19

たいへんお待たせしました。難産の末、ようやく書き上げました。

まず、仕込み杖を勝手に砕いてしまったことをお詫びします。
拙いようであれば書き直しますので、遠慮無く言ってください。

また、いきなり全力で神獣召喚剣(笑)なんてものをカマしてしまいましたが、
せっかく全身鎧をお披露目するのであれば、派手な演出のほうがいいだろうと判断してのこと。
ノーダメージ望むところです。

制御室どころか棟そのものを半壊させかねない威力ですが―――
ま、まぁそこは後々フォローします。はい。
最終的に炉のミストを中和するのだから制御は必要ない、なんて理由で。
あはは……

どうせなら、広いところで存分に剣を振るいたい、というのもありますしね。

そんな感じです。


>>15
タイトルに関しましてはそれで問題ありませんよ。
私が秩序の抑止力であるように、あなたは混沌の抑止力―――
その解釈には感嘆しました。
非常に面白いアイデアです。

19 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/11(月) 21:24:47
>>

 まさしくそれは青天の霹靂であった。
 放たれた雷はその軌道上にあるものすべてを飲み込み打ち砕く。制御
室の一角を吹き飛ばしたにとどまらず、炉心へとつながる隔壁にすら風
穴をあけていた。
 なんという技であろうか。ただただ圧倒的なまでの威力。人の手で放
つことは考えられぬような神威の雷。その一撃は人を超えた一太刀、ま
さに神技と呼ぶにふさわしかった。

 ーーーーーーだが、それならば彼もまた。

「・・・・・・なるほど、恐ろしい威力だ。言うだけのことはある。人
の身であれば死んでいたであろう。だが、もはや余は人ではない。人間
以上の存在(Overman)なのだ」

 暗い笑いの響きを含んだその言葉とともに、破壊の跡よりそれは姿を
現す。
 それは先ほどまでのような黒衣を身につけた男ではなかった。彼が身
につけているのは、つま先から頭頂まで隙間なく体を覆い尽くす全身鎧。
人の手では作り得ぬほどに均整のとれた輪郭の鎧。その鎧は絶えず色を
変え続け、時には黄金、時にはまばゆい銀、青灰色、深紅に赤銅と数多
の色に輝いていた。そして鎧の胸甲には、八方に放射状にのびる矢印で
表される<混沌>の紋章が彫ってある。この紋章は<混沌>の特性たる
多様性を示していた。どのようなものにもなりうるという可能性を。

 そして彼の顔を覆っている仮面もまた、先ほどまで身につけていた亡
霊の仮面ではなかった。その顔を覆っているのは、継ぎ目のない被面具。
兜と呼ぶよりも刑罰の道具であるかのような継ぎ目の無い被面具に顔を
覆われていた。鎧と同様に数多の色に輝くその兜には、暗い黄色の羽根
が一つ飾り付けられていた。

 神の手による鎧に身を包んだ彼は、左手に大振りの楯を携えていた。
鎧と同等の素材で鍛えられた神の手による神造の防具。だがその表面は
黒く焼けこげ、無惨な様をさらしていた。先の一撃は神器にすら深い傷
を齎していたのだ。

 彼は焼けこげた楯を持った左手で鎧の胸元を軽くたたく。

「<混沌>より賜った鎧よ。余を守る城壁であり、また閉じ込める牢獄
でもある。」

 言葉とともに被面具の内よりぞっとするようなくぐもった笑いが漏れ
た。

20 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/11(月) 21:25:45
>>

 今やその本性をあらわにした<混沌の公子>は、振り返り破壊の跡を
みる。

「恐ろしいことをする。一歩間違えれば余も汝も炉心もろとも消し飛ん
でいたぞ」

 そう吐き捨て肩をすくめると、あらためて<剣聖>に向き直る。

「だが素晴らしい力だ。使うものが使えばミストとはここまでも有用な
ものか。汝の言う通りミストとはなんとも深遠に満ちた存在であること
か。・・・更なる研究が必要だな」

 そしてやや左半身となり楯を持った左手を軽く突き出した構えをとっ
た。
 それは相手の一撃を楯で受け止め、または受け流し、それによって生
じた隙をついて一撃を叩き込むための構えであり、また、敵から攻めて
こない場合は、防御を固めたままで楯の作り出す死角を利用して仕掛け
ることもできるという攻防一体となった構えだ。基本にしてバランスの
とれた構えだった。楯を構える彼のその姿は堂々としており、にわか仕
込みではないことを伺うことができた。

 身を包む上方世界の鎧越しに、混沌の公子は周囲の変化を感じ取って
いた。大気中の魔力の濃度がさらに増してきている。まるでねっとりと
まとわりつくかのようだ。理由は明白だった。炉心に通じた風穴より濃
縮された魔力が溢れ出してきているのだ。この様子ではそう長く持つま
い。早めに片を付ける必要があった。

 右手に握った中華風の刀を投げ捨てる。稲妻が放たれた瞬間にとっさ
に召喚した刀だ。この刀もまた多元世界を回ってかき集めた力ある品の
うちの一振りだった。雷を操るという能力を持つ刀だが、神威の雷撃ま
では逸らしきれなかった。刀身が根元からへし折れ、柄にまでひび割れ
が広がっていた。もはや使い物にならない。まあ、いい。もとより従順
な刀ではなかったのだ。それに加え武器でありながら情に脆いなどとい
う欠陥を備えた知性ある剣だった。駄剣だ。惜しむ必要など全くない。

 投げ捨てた刀にかわり、新たな武器を調達する。腰に佩いた愛剣は通
常ならばかの黒い剣とも切り結ぶことが可能なほどの魔剣だが、この濃
密なミストの加護をうけた敵の神剣と渡り合うにはいささか心もとない。

 混沌の公子は考えを巡らせる。
 手持ちの力ある品のうち、武器として使用可能なものは255。
 そのなかで目の前の女を滅ぼしうる品、Aランク以上の兵装は14振。
 うち一つは広域殲滅型で自滅の恐れが高いため除外。
 うち一つは制御不能のため封印中。

 ならば。

 導き出した答えに基づき右手の内に一振りの魔剣を召喚。
 それは透き通った美しい剣だった。氷の刃。鍔が雪の結晶をあしらっ
た造形となった騎士剣。刀身は半透明の水晶のような素材でできており、
高速で振り回せば太刀筋はきわめて見えづらく厄介だ。
 だがその最大の特徴はその刀身より放たれる冷気だ。斬りつけた部分
から敵を凍らせ、秘めた魔力を全力で解放すれば天候を支配し吹雪すら
呼び寄せるという高位の魔法剣。異界の魔将を数千年もの間封印してい
たという伝説を持つ強力な魔剣。

 召喚した魔剣を楯の裏側で隠すように構える。

「先ほど〈剣聖〉と申したな、女よ。ならば汝はかの〈剣聖〉フリメル
ダ・ロティスか。なるほどそれならばこの剣技の冴えもうなずける」

 <混沌の公子>は合点がいったようにうなずくと、慈愛すら感じさせ
る口調で〈剣聖〉へと語りかける。

「どうだ〈剣聖〉よ。余に仕えんか。いや、余と手を組みともに往かぬ
か。それほどの才能をかような汚れ仕事で腐らせるには惜しい。余と汝
の力を合わせれば、真の安息たる<天秤の安息>を手に入れることも不
可能ではないぞ。いや、それどころか<法>も<混沌>も放逐し、宇宙
の天秤すら切り落とし、今のような不完全な世界を無に返し、新たに完
全な世界を創り上げることすら可能やも知れぬ。どうだ〈剣聖〉よ。余
と轡を並べ戦うつもりはないか。余はかつて<宇宙>の公子たりしゲイ
ナー。いまでは混沌に仕える<呪われし公子>だが、その境遇に満足し
ている訳ではないのだ」

21 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/11(月) 21:34:06
 お言葉に甘え余自身は無傷とした。楯はもうそろそろ持たんだろうがな。
 このたびは言葉のみで返した。やりづらければ斬撃も加えるゆえ申すが良い。

>武器破壊
 最終的には吸血鬼の魔剣とアルテマの二刀流にするつもりなのでそれ以外の
魔剣はどんどん破壊してかまわぬ。

>題名
 ならばこれでいくとするか。

22 名前:名無し子猫:2011/07/17(日) 13:36:19


 十年前。わたしは“悪魔”を見た。

 比喩や言葉遊びなどではなく、正真正銘の悪魔―――かつて、イヴァリースを悲憤と絶
望で染め上げた神話上の存在〈ルカヴィ〉が、ユトランドの北方、フロージス校外の小村
に突如として顕れた。
 なぜ。
 後にアカデミーに入学し、禁呪ゼミに名を連ねたことでようやく真実を知れたが、原因
は魔術実験の失敗、〈ルカヴィ〉の召喚に必要な聖石と憑代、そのどちらも不完全であっ
たために起こった事件だった。
 正規の手段に則らずに顕現した雄羊の頭に巨人の肉体を持つ畸形の魔人〈ベリアス〉は、
自我を解放されながったゆえに狂い、破壊衝動の赴くままに小村を襲った。
 鎧として着込んでいる魔界の灼熱をもってして、わたしが生まれ育った村を一瞬にして
地獄に変え、目につく生命を片っ端から怪力でねじり殺した。
 高ランクのクエストとして賞金稼ぎクランが派遣されたが、神々に叛逆するほどの力を
持つ悪魔に人間がどう立ち向かえるというのか。鮮血がしぶき、積み重なった死体が薪と
なって地獄の業火をより猛らせるだけだった。

 両親も、兄妹も、みな殺された。
 記憶に残る限りのあらゆる知古の人間が、命乞いすら許されずに燃えていった。
 村より外に出たことがなかったわたしには、あの小村が世界のすべてだった。

 わたしの世界は赤熱した。

 ―――その時、颯爽と顕れたのが彼女だった。

 いま、こうして〈呪いの公子〉と相対しているように、あのときも〈剣聖〉フリメルダ
は聖剣を携えて魔人に立ち向かった。
 激戦の末に魔人ベリアスは斬り伏せられ、平和が取り戻された。〈ルカヴィ〉が現界し
たにも関わらず被害が小村一つとクラン数隊程度のみというのは奇跡に近い。
 ……いや、正しく奇跡だったのだろう。

 わたしは知った。
 なぜ、フリメルダ・ロティスの伝説は終わらないのか。
 どうして、人の身で100年も戦い続けることが可能なのか。
 
 それは彼女が無限存在であるがゆえ。

23 名前:フリメルダ・ロティス:2011/07/17(日) 13:36:45

 
 思わず奥歯を噛む。
 この男……。
 帯電した土煙から姿を現したのは、黒ずくめの剣士ではなく、まがまがしさを感じるほ
どに均整のとれた全身甲冑をまとう騎士だった。絶えず色調を変化させる鋼が、我がエク
スカリバー同様に彼の鎧も人ならざる者の手によって鍛えられたことを物語っている。
 これが正装というわけか。デュダルフォンの神雷を正面から受け止めたにも関わらず、
傷一つついていないなんて。

「いかにも、私はフリメルダ・ロティス。ユトランドの民の安息を守るため、世界の刃と
なった者です」

 エクスカリバーの柄を両手で握り直す。剣先は下げて、下段に構えた。

 相手がどういう腹算を持っているのかは知らないが、私のクエスト達成条件はミストを
冒涜するこの施設を穏便に機能停止させ、速やかに解体すること。そして、この異世界の
剣士の存在をユトランドから取り除くこと。
 ……だけど、男の正体を知って、私の胸のうちがわずかにさざめいた。
 混沌の騎士、ゲイナー公。いまの言葉が確かならば、私とはアライメントが相克の〈混
沌〉の抑止力だ。世界が著しくロウに偏ったとき、その流れをせき止めるために混沌をも
たらす。無論、本人は自由意志に基づいて行動をしているだけであろうが。なんぴとにも
縛れぬからこその〈混沌〉の抑止力だ。
 奇しくもここに、〈秩序〉と〈混沌〉の刃が相対することとなってしまったわけだ。
 私が〈秩序〉の刃である以上、使役される状況はいつだって過剰なる〈混沌〉の制圧だ
が、相手がその抑止力だというなら話は変わってくる。
 これはあくまで私の考えだが、世界の在りようとは結局のところ〈中庸(ニュートラル)〉
に過ぎず、その天秤のバランスを保つために時には秩序が倒れ、時には混沌が破れる。秩
序のみに縛られた世界も、混沌に支配された世界もあってはならない。だから、私や彼の
ような天秤の調停者がいる。
 そんな抑止力同士の衝突は、天秤のバランスに如何なる狂いを与えることになるのか。
 それともこの邂逅もまた因果の計量に含まれているのか。私如きには予測がつかない。
 こうして召喚された以上は、ジャッジの審判はゲイナー公の排除で揺るぎないのだが。

 道を見失った場合、なにに依るか。
 私の場合は、いつだってこれだ―――

「お誘いいただきありがとうございます、ゲイナー公」

 私は心からの感謝を頬に浮かべた。
 それは死合の場には不相応な微笑みだったかもしれない。

「たいへん魅力的なお話ではありますが……根本的な問題として、あなたは私を買い被り
すぎています。私は剣を振るうことしかできない女です。剣より他に得意なことなんてな
にもありません」

 だから、せめて剣だけは極めたかった。剣のみが取り柄だから、それを伸ばすより他に
生き方が思いつかなかった。剣しかないから、剣でだけは誰にも負けられなかった。
 そうして無我夢中で修練を重ねた結果、気付けば〈剣聖〉と呼ばれるようになっていた。
 抑止力として世界に使役されているのも、私みたいな剣道バカにはそれぐらいしか使い
道がないからだ。

「つまり―――」

 緩やかに刃を持ち上げ、星眼に構える。エクスカリバーの剣先がゲイナー公の鉄仮面を
睨んだ。文字通りの鉄面皮の向こう側では如何なる表情が作られているのか。

「私の『正義』とは、結局これなんです」

 私は生まれたときから今日まで別に世界に絶望も希望も抱いてはいない。ただ、こんな
勝手な生き方を許してくれたユトランドの人々に感謝はしていた。私は、私が〈剣聖〉で
あることを許してくれたこの世界を愛してる。
 だからゲイナー公の誘いに応じることはできない。ユトランドを食い物にしようとした
時点で、彼はフリメルダ・ロティスの敵だ。

「あなたの正義も是非、口舌ではなく刃にて」

 エクスカリバーの刀身が、ミストに反応して虹色に輝いた。

24 名前:フリメルダ・ロティス:2011/07/17(日) 13:36:57
(土下座

25 名前:フリメルダ・ロティス:2011/07/17(日) 13:38:53
言語道断の待たせっぷり、たいへん申し訳ありません。
なんの言い訳にもなりませんが、ようやく環境が落ち着きましたので、
さすがにもうここまでレスが遅れるということはなくなります。
これからはぽんぽんと返していきたいと思います。
重ねて申し訳ございませんでした。

レスのほうは長くなってしまったため、攻撃を仕掛けるまでには至りませんでした。
ご自由に斬りかかってきてください。

26 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/19(火) 23:39:43
>>

「残念だ。実に残念なことだ」

 ため息まじりにそういいながらも、彼の口調にはわずかながらも喜びが混じっていた。
 戦場から戦場へ幾星霜。気の遠くなるような年月を戦場(いくさば)で過ごし戦いに疲
れ倦んだ彼ではあるが、それでも腕の立つ戦士との戦いには胸が躍る。長い年月に摩耗し
た彼の心にも熱い火が宿る。

「汝は自身を過小評価しているようだが、汝が今まで成し遂げてきたことから思えばそれ
は誤りであるぞ。汝はこれまでに数々の偉業を成し遂げてきたではないか。・・・だが、
本当にそれでよいのか?」

 <混沌の公子>は、巧みな重心移動で、少しずつ間合いを調整しながら言葉を続ける。

「汝がこれまでに成し遂げてきた偉業。世界の救済。しかしその代償は汝自身ではないか。
汝はこの世界を守るために今までどれほどのものを費やしてきた?そして、これからもど
れほどのものを費やし続けるのだ?フリメルダ・ロティスよ、そうまでして守る価値がこ
の世界にあるのか?・・・いや、あるのであろうな、汝にとっては」

 彼はそういうと被面具に覆われたこうべを左右に振る。そして楯の陰に構えた魔剣を、
右手の感触を確かめるように改めて握り直す。彼の意志に反応し刀身を包む冷気が増す。
まるで気化するドライアイスのような白い煙に刀身が包まれる。

「ならば、これ以上は云うまい。汝の<正義>が刃ならば、余の<正義>も刃に込めよ
う。これより先は互いの刃にて語ることとしようぞ!いまここに〈秩序〉と〈混沌〉が、
<法>と<混沌>が刃を交えるのだ!」

 その言葉を良い終えるよりも早く、楯の陰から<剣聖>の右半身、首の付け根を狙った
刺突を放つ。無論これで決まるとは思っていない。手首の内側を上方へと向けた刺突から、
手首のスナップを利かせて放たれる裏刃をつかった引っ掛け切るような斬撃へと変化。そ
こから肘を起点にして繰り出されるコンパクトな袈裟切り。さらに左手に握った楯で相手
の顔面を殴りつけるように突き出し、それによって生じた死角から、流れるような動作で
繰り出される連続した刺突。

 サーブルやレイピアの様な軽やかさこそないものの、充分な速度と重さの乗った連続攻
撃が<剣聖>に襲いかかった。

27 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆GAinErMg8k :2011/07/19(火) 23:48:18
レスが遅れるのはお互い様だ。気に病む必要はなかろう。
 余もレスが遅れることは今後多々あるであろうからな。

 連続攻撃を放った。好きにいなすが良い。
 楯と吹雪の剣@勇者アベル伝説(元ネタ)はそちらのレスで破壊してもかまわぬ。
 もし破壊しないようならば、次のターンで両手剣(アイスソード)に変化させ、
冷凍剣もどきでも使って自壊させる。

28 名前:フリメルダ・ロティス:2011/07/21(木) 22:37:41

 この時ばかりは〈剣聖〉という驕りを恥じ、我が剣の未熟さを痛感した。
 心剣一体、明鏡止水。濁りなき刀光。曇りなき剣筋。無為の極地にこそもっとも気高く
澄みきった剣はあると信じて今日まで修練を重ねてきたのに―――あろうことか、この瞬
間、私は興奮していた。
 努めて平素を装ってもゆるむ口元までは隠しきれない。ああ、認めよう。私は昂ぶって
いた。好敵手の登場に心震えていた。

〈混沌〉の刃、いかほどのものか!

「ゲイナー公! いざ!」

 盾によって遮断された死角からの刺突を紙一重でかわす。因果率の暗算による疑似的な
未来視―――完璧ではないため、続く斬撃に首筋を薄皮一枚噛み千切られた。
 予想外の激痛。
 傷口は出血する暇すらなく凍結し、更にそこから体内に向けて冷気が迸る。掠り傷で相
手を凍死させる氷結の魔剣か。
 だが―――

「覇っ!」

 体内の魔力回路の循環を瞬間的に沸騰させ、魔性の凍傷を蒸発させる。

 いまの二手でゲイナー公の踏み込みと呼吸のタイミングは因果レベルで見切った。
 至近距離からの袈裟がけは鼻先で回避。まるで私がそう避けることを知っていたかのよ
うに体捌きの進路上に獰猛な盾が迫り来るが、

「身の盾なるは心の盾とならざるなり―――」

 二度目の神獣召還剣。〈守護者ファダニエル〉が司る大地の力を借りて、エクスカリバ
ーの刀身を超振動させる。更に、振動により暴れ馬の如く猛り狂う剣の柄を押さえ込むた
め握力をエンチャント。襲いかかる盾の中心に聖剣を突き立てる。

「油断大敵、強甲破点突き!」

 聖剣の剛性に超振動を加えることで硬度をゼロにする。その特性を利用して、武器破壊
に特化した不殺(コロサズ)の剣術―――名付けて「剛剣」。
 神雷をも耐えた強靱な盾だったが……いや、耐えたからこそか。魔盾は聖剣の一突きを
受けて為す術もなく四散した。

〈剣聖〉を相手に二合目はない。その所以がこの剛剣だ。

「地獄の鬼の首折る刃の空に舞う無間地獄の百万由旬……」

 破壊した盾の死角から閃光が幾条も走る。殺意を凝縮した重厚な連撃を締めるにふさわ
しい凶悪な連続突き。二突きめまでは軽妙にかわし、太刀筋を見切ったところで大胆に聖
剣で薙払った。

「冥界恐叫打!」

 刺突の横腹に剛剣が重なり、そのまま振り抜いて魔剣を叩き砕く。
 確かな手応え。
 凍土の刃が粉砕した瞬間、魔剣に封じ込められていた魔力が膨張し、吹雪となって荒れ
狂った。たちまちのうちに半壊状態だった制御室内は氷河期を迎え、私自身も衣服や睫毛
などを凍り付かせる。
 ……この程度の冷気、漲る我が剣気の前では熱冷ましの氷嚢にすらなり得ない。

「氷天の砕け落ち、嵐と共に葬り去る 滅びの呼び声を聞け!」

 剛剣三連撃。ゲイナー公の左右の獲物を破壊した聖剣が、今度は魔鎧ごと中身を打ち砕
かんと振り下ろされる。
〈守護者ファダニエル〉の超振動はいよいよ音の壁を突破し、刀身から生じた音速波が私
の手首や二の腕まで切り裂いている始末だ。正面からこの一太刀を浴びれば、いくら超常
の魔鎧といえど無疵では済むまい。

「覚悟! 咬撃氷狼破!」

29 名前:フリメルダ・ロティス:2011/07/21(木) 22:40:39
遠慮なく盾と魔剣を破壊して、更に斬りかかりました。
チート極まれりということですが、もちろんあなたの鎧が特別だというのは心得ています。
全然無疵で構いません。

希望としては、そろそろ狭い室内でのチャンバラは息苦しいですね。
思い切り剣を振りかざしたいので、次で私が攻撃を喰らって吹っ飛んでみようかと思ってます。

“彼女”のレスはようやくネタが固まり、方向性が見えてきたので
後回しにさせていただきます。
あとでまとめてあげるのでよろしくお願いします。

30 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆/GAynorYPA :2011/07/24(日) 12:59:07
>>

 混沌の魔力の込められた楯と吹雪の力を閉じ込められた魔剣は、ただ一太刀の元に打ち砕かれた。
開放されし膨大な冷気によってその破片は瞬時に凍結、ダイヤモンドダストとなって大気に舞う。

 剣聖の振るう刃は、楯と剣を破壊するに止まず、<呪われし公子>を一刀両断にせんとその頭上
に振り下ろされる。

 その刃が、並みの魔剣、並みの剣技ならば恐れるには値しない。<呪われし公子>のまとう鎧は、
エントロピーの神々の鍛えし上方世界の鎧だ。理論上破壊することは不可能。

 だが。<剣聖>の持つ聖剣は、彼の鎧と同じく神々の手による代物。そして彼女の剣技は、人の
域を超えた神技と呼ぶにふさわしい代物だ。さらに加えて言うならば、不可能を可能とする、この
世の理を覆す、奇跡を引き起こす存在こそが<抑止>だ。確実に防ぎきれる保証は無かった。

 ――――――ならば。

 <呪われし公子>の被面具よりただそれのみ覗く双眸が紅く爛と光った。そして混沌の英雄は魔
法の力を行使する。触媒を用いること無く、儀式を行うことも無く、呪文を唱えることすらなく、
瞬きするような自然さで、超常の力を具現化する。

 突如大気が渦を巻き、<呪われし公子>とその頭上に振り下ろされる聖剣の間に、超々密度に圧
縮された空気の壁を作り出す。さながら大空を圧縮したかのような見えざる結界を築き上げる。

 ラサの翼。風の精霊の女王の力の一部を現界させたものだ。

 聖剣の刃はそれでも止まることなく<呪われし公子>めがけて突き進むが、流石に速度は遅くな
る。その隙を突き次なる魔剣を召喚。

 それは美しい魔剣だった。さながら磨き上げられた金管楽器のような外見を持つ、華美な騎士剣。
あまりにも華やかすぎ、実用を無視した儀礼用の剣にすら見えた。鏡のように磨き上げられた刀身
には複雑な魔術文字が刻まれ、その柄頭には深紅の宝石、鍔元にはほのかに光る大振りな月長石が
埋め込まれていた。いかなる魔術によるものであろうか、その宝石の光は緩やかに満ち欠けし、ま
るで実物の月のようであった。その<月>をとり囲むように彫りこまれているのは己の尾を喰らう
蛇。円環の理を表すウロボロス。

 <呪われし公子>は召喚した魔剣を逆しまに振り上げる。地より天へ跳ね上りし刃は、振り下ろ
される聖剣の刃と交差――――――しなかった。

 刃と刃が喰らいあう直前。魔剣と聖剣が会合せんとする刹那。魔剣の刃が圧縮された空気の層を
捉えた瞬間にそれは起こった。

 そう、彼の狙いは聖剣の刃を魔剣の刃にて迎撃することではなかったのだ。いや、その前に展開
したラサの翼すら次の展開のための伏線に過ぎなかったのだ。彼が魔剣の刃にて狙ったもの、それ
は己が現界させた超々密度に圧縮された空気の層。

 <呪われし公子>の召喚した美麗な魔剣。それに込められた魔力は変化と練成。魔剣それ自体が
練成のための魔陣であり、切り裂いたものを使用者の望む姿へと創りかえるための装置であった。
ゲイナーがプラハにて錬金術師をしていた時代に異界の技術以て鍛え上げた、いわば錬金術師の魔剣だ。

 圧縮された空気の層を捕らえた刃は、空気の中から瞬時に窒素を分離させ再濃縮。固形として生
成された親指の先ほどの大きさのソレは、練成された瞬間に本来なすべき効果を果たした。生成さ
れたソレ。1,700℃、110万気圧で圧縮固形として錬成された膨大な窒素。すなわち窒素爆弾。

――――――初めに光が生まれた。そして音。破壊をもたらす衝撃波が刃と刃、魔剣と聖剣の狭間にて
生まれ、広がり、あたり一面を蹂躙する。

31 名前:<呪われし公子>ゲイナー ◆/GAynorYPA :2011/07/24(日) 13:14:44
 ようやくトリップが見つかったので、以降はこのトップで征かせてもらおう。

 範囲攻撃を行った。返し辛ければ改変するゆえ、遠慮なくいうがよい。
広い場所へ移動するのは余も賛成だ。今回の攻撃をきっかけに場所を変えることとしようぞ。

 なお今回の魔剣の元ネタは月の紋章の剣と FULLMETAL ALCHEMISTの錬金術である。

32 名前:フリメルダ ・ロティス:2011/07/31(日) 20:25:44

 ゲイナー公が獲物を持ち替えた瞬間、因果律が露骨に変動した。

 戦士に限らず、人間にとどまらず、動物にも植物にも、魔物にも、あらゆる生命体には
必ず“体内に循環するミストのリズム”が存在する。私は――正確には私の脳の一部に組
み込まれたジャッジの魔導式が――そのリズムを読み、ジャッジがユトランドで観測した
全事象と照会することで因果律を計算する。
 必殺のタイミングで放たれたゲイナー公の攻撃を幾手も捌いてみせたのも、公のリズム
を把握したからだ。

 ……だから、いま、こうして突如ミストが刻む旋律が変調されると、私が視ていた事象
の地平線も、無様な計算間違えの答案用紙でしかなくなる。

 ミストのリズムが書き換えられるなんて。
 武器を持ち替えた途端、まるでまったくの別人にすり替わったかのような印象を覚えた。
 まさかこの男―――武器によって、表面的な呼吸などの“間”などに留まらず、深層意
識や魔力循環の模様まで切り替えているのか。
 徹底的な魔剣との同調。魔剣士を名乗るには相応しい絶技だが、それを数多持つ全ての
佩刀に対して行うとは。
 もはや狂気の領域だ。

 私の因果律の暗算が、これでは通用しない。

 見えざる大気の壁を切り裂きながら、果たしてこの聖剣がゲイナー公の鉄仮面へと届く
事象はどこにあるのか。戸惑いつつもジャッジの審判を仰ごうとした瞬間―――

 光が私の視界を覆った。

33 名前:偽りの聖女:2011/07/31(日) 20:27:41
 わたしは隠れ潜んでいた研究員の休憩室から非常口に移動した。屋外の非常階段踊り場
から、本棟を眺める。噴煙が濛々と立ちこめ視認は難しいが、建物の輪郭は半壊では済ま
ないほどに変形している。炉へのダメージもそうとうなものだろう。

 死んだ、な。
 わたしは確信する。
〈剣聖〉フリメルダはあくまで人間。いくら魔法剣の達者といえど、不意打ちでここまで
の規模の爆発に晒されればひとたまりもない。私の使い魔と同じく、死体すら残らずに蒸
発したかもしれない。

 喉から湧きでる哄笑を止められない。

「面白くなってきたなァ。いい案配に世界が灼けている。〈混沌の抑止力〉よ、この調子
だ。この調子で〈剣聖〉を痛めつけてよ。何度だって殺してみせて!」

 ほら、と指さす。その先には―――

 噴煙の隙間から覗く奇跡の景色。
 瓦礫に足をかけ、口元からしたたる己の鮮血を拭う〈剣聖〉の姿があった。

34 名前:フリメルダ:2011/07/31(日) 20:33:06
 ミストが凝縮して血液を作り、血液が流れる路が血管となり、毛細血管を基として肉が再生する。
 薬も服用する分量を間違えれば毒となるように、過ぎたる急速な回復は精神に罅を走らせ、言いようのない自己矛盾の激痛に晒される。
 死ねない痛み。生の営みに背く苦しみは、何百度経験しても慣れるものではない。

 吐き気をこらえてまぶたを開く。見覚えのないキャットウォークに立っている。爆発の衝撃で瓦礫ごと上方に吹き飛ばされたのか。破壊の爪痕は壁面とキャットウォークを結びつけるボルトを歪ませ、足場をブランコの如く不安定にさせている。長く保ちそうにない。

 自身の身体は…爆風で煤けているものの、消し飛んだはずの両腕は掠り傷一つなく再生している。焼け爛れた全身の皮膚も同様だ。

 ごぷり、と気道から鉄味の液体が溢れた。無理な回復の反動が、逆に身体にダメージを与えている。

 聖剣のみで事態を納めようとしていたけれど、考えが甘すぎたか。
 私は腰に提げたもう一刀の柄に、左手を添えた。
 抜け落ちた床の下方に佇む混沌の騎士を無言で見つめる。

35 名前:フリメルダ:2011/07/31(日) 20:38:03
 例によって、また一週間もお待たせしてしまったことを心よりお詫びいたします。
 またまた、携帯端末からの書き込みのため、一部改行がされていないのも重ねて謝罪します。
 
 内容はみての通り、ゾンビ的復活をしただけです。
 こちらからは攻撃していませんので、どうぞかかってきてください。
 私も次から二刀流になってがつがつと攻めていくつもりです。

 このレスも改行が拙そうですね。
 ほんとうにごめんなさい……。

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