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■ 「陰陽頭」と「堕ちた天秤の騎士」の会議場
- 57 名前:柳生友景 ◆YAGYUbJ766 :2011/09/10(土) 01:29:24
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『返って』襲い来る己が使い魔を前に、友景の右手は刀印を結んだ。人差し指、中指のみを立て、
他の指は握り込んだ結印の形である。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前」
一気呵成に唱えられる呪言と共に、刀印が閃いた。宙空に縦四本、横五本の格子状の軌跡が刻
まれる。
同時に、槍の穂先に等しい嘴をかざして飛び込んできた異形の式神は、弾かれたように動きを止
めた。きょろきょろと不審げに周囲を見回す。
友景は平然とした態だ。手を伸ばせば届く至近距離にありながら、魔物の血走った目にはかつて
の主人が映っていないようであった。
友景が唱えたのは九字である。陰陽道に伝わる悪魔祓いの秘法だ。
これは本来、神山幽谷の果てを目指す修行者が唱える呪である。幾つもの異層を抜け、異界に
至る為の技なのだ。
この場合、友景は己を異なる次元へ転移させたのだった。目の前にいながら、別の層にいる友景
の姿を魔物は認識できないのだ。――もっとも、友景自身も式神へ触れる事はできないが。
困惑の唸り声を上げて、式神は右往左往している。つ、と進んだ直衣はその傍を通り抜けざま、
「オン・キリキャラ・ハラハラ・フタラン・バソツ・ソワカ」
九字の効能を解除する真言が唱えられた刹那、月下に銀蛇が舞った。
この世のものならぬ絶叫を上げて、式神は腰の辺りで両断されて大地に転がった。
二つ目の呪い穴を埋め、友景は歩みを止めずにぶんと一刀を血振りした。横薙ぎの抜き打ちを放
った刀身から、ねばっこい異界の血が飛び散った。
口中に一掬の甘露をふくんででもいるかのような、もの柔らかな笑みを浮かべつつ、友景は黒衣の
男との距離を滑るように詰める。
足元が砂地であったとしても、摺り跡ひとつ残さなかったに違いない。ある高みに至った剣術者のみ
が成し得る足さばきがそれである。
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