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■ 「陰陽頭」と「堕ちた天秤の騎士」の会議場

91 名前:<堕ちた天秤の騎士>ゲイナー ◆/GAynorYPA :2011/10/24(月) 22:01:14
>>

「なるほど。貴様はこの世界を憂うもの(ルシファー)より使わされた存在か。」

 そうつぶやくと、問いかけられた天秤の騎士は、その問いには直接答えず囁くようにして言
葉を告げる。

「おまえは己の住む世界を見てどう思う?これが素晴らしき世界だと言い切れるか?天秤によっ
て均衡を保たれたこの世界が。どちらかに傾きすぎぬよう、法と混沌が永遠に争い続けるこの
世界が。争いの絶えぬ、差別や暴力に満ちた、かくも無慈悲なこの世界が。」

 おれはそう思わんよ。そう言外ににおわせながら、呪われし公子は美しき陰陽師の瞳を覗き
込む。

「おれはかつて天秤の理こそが完全な物だと考えていた。ゆえに何も疑うことなく天秤に仕え、
その見返りとして天秤の安息の中におれはいた。それは素晴らしいものだった。完全な安息だ。
楽園と呼ぶにふさわしい物だった。あの様な安らぎをおれはもう二度と得ることは出来ないだ
ろうな。」

 懐かしむ様な切なげな顔でかつての天秤の騎士はそうつぶやく。

「そう、おれは天秤それ自体を否定している訳ではない。それどころかむさぼるごとく愛して
いる。・・・だが、同時に完全に肯定している訳でもないのだ。法と混沌がその覇権を争い戦
い続けるという、この多元宇宙の多様性と適応性にはかねてから不満を抱いていた。おれは天
秤を愛している。その有り様を肯定している。だからこそ、その不完全性には不満を持ち、お
れならばもっと巧くできるはずだとも思っているのだ」

 そこでいったん言葉を区切ると、剣を押し上げる諸手に己の内の激情のままに更なる力を込
めながら先を続ける。

「故におれは愛する天秤に対し反旗を翻したのだ。それ頃が天秤のためであるとも信じてな!
かねてよりその理念に共感を感じていた法の力を後ろ盾にして、ゲイナー大公としてこの世界
に君臨せんとな。自らの手によって世界を治め、不完全な世界を完全に作り替えるために!」

 叫ぶようにしてそういうと、呪われし公子はふと黙り込んだ。その口元に苦々しげなものが
浮かんでいる。

「・・・だがそれは失敗し、おれは天秤の安息を失った」

 先達と同じようにな。手の中の「白の剣(ライトブリンガー)」に一瞬だけ目を落としなが
ら、苦笑まじりにそういう。

「その後はしばらく法に仕えていたが・・・いや、それはどうでもいい話だ。大事なことはお
れはまだ諦めていないということだ。次こそはやり遂げてみせよう。そのための将門の力よ!
平新皇将門が力もって、いま一度天秤に挑み今度こそ、その支配権を手にしてみせよう。それ
が叶わぬならこの身に永遠の死を!」

 慟哭とともに吐き捨てる。

「おれが望むのはただ二つだ。完全な世界かさもなくば死か。それが叶うなら世界の一つや二
つ、滅び去ろうが安い物よ!」

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