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■ 「陰陽頭」と「堕ちた天秤の騎士」の会議場
- 99 名前:柳生友景 ◆YAGYUbJ766 :2011/11/07(月) 23:31:40
- >>
その絶叫の中から、ぎり、と鋼が軋む音が一度だけした。
刃を交えた影ふたつは、表面上は美しき二体の塑像のように動かない。
目視では判別できない程僅か、刀と剣の位置が上昇した時、「否(いな)」と抑えた声が応酬した。
「否否否、万遍否。そなたという飽くなき虚無の洞(うろ)を充たさんが為、三千大千世界(みちおほち)
の全てを捧げる訳にはゆかぬよ」
膨れ上がる剣圧を渾身で御しつつ、塑像の片割れが念じるように言った。
「しかし――表面の綺麗ごとで真実の代償を求めることは無理であり、血を賭け、肉を賭け、真実の
悲鳴を賭けねばならぬ。……そなたの厭悪も判らぬではない。悲しいかな、人間の実相はここにある。
しかり、実に悲しいかな、人間の実相はここにある。
さりとて運命はただの律にあらず。
徒に甘んじるのではなく、赤子のように受け入れるのでもない。迷い、疑い、呻吟した果てに感得す
べき理こそそれだ。
わたしはそうだった。そなたのかつての同胞、永遠ノ戦士≠ネる強者達もまた同じであったろう」
そなたは、と続く己が言辞の残酷さを理解した上で、永遠(えたーなる)ならざる柳生の剣士(ちゃん
ぴおん)は冷然と評した。
「そなたは他者に嫁して己の不幸を呪っているにすぎぬ。――己の進む道は己で切り開き、己一人で
己が運命へと挑む。正しい。<堕ちた天秤の騎士>よ、その言は正しい。
だがそれは躓き、泣きながら、各々が各々の手で掴み取るべき光。そなたから、完全な世界などと
いう結果として与えられるものなどでは断じてない。
なれば、この度は南風競わず、何がしかの因子揃わざれば現界かなわぬ永遠ノ戦士≠轤ノ成り
代わりて、我と我が運命を果たそう。それが」
そして柳生の陰陽師(ちゃんぴおん)は、とんでもない事実をさらりと述べた。
「それこそが、大魔王より――ルシファー猊下より授かりし秘命。先程そなたが喝破した通り、な」
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