■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50 read.htmlに切り替える ファイル管理
■ 饒舌な傭兵が子持ちの人妻(予定)と密kもとい殺し合う予定のスレ

53 名前:両儀式 ◆w7RsINNERs :2018/09/29(土) 17:23:45
>>52

 瓦礫と化した風景の中で、信じがたい声が聞こえた。

『ああ、返事はいらないぜお嬢ちゃん。
 …正直、これで死なないのは半分くらいイレギュラーだ。つーかバグだよ』

「……ああ、まさにバグだな。これで死なないってのは、確かに死にたくもなる」

 動揺を丁寧に押し隠す。どうやら、本当に死ねないらしい。
 それから足元から割れた硝子の欠片を拾い上げて、ナイフのように構えた。
 頼りない武器だが、今はこれが頼りだ。後は周りを見て何とかするしか無い。
 ―――作りかけのビルがワンフロア崩れ落ちると、そこは舞台の裏側だった。
 ぴかぴかに磨き上げられたステンレスの流し台に放り込まれているのは、フライパンや
寸胴鍋。あちこちに置かれた棚の中には無数の器。そしてオーブン、コンロ、ありったけ
の調理器具。
 つまり、ここは厨房だ。
 ……ざっと見て、武器になりそうなものは幾つかあった。調理用のペティナイフでも、
私にとっては充分過ぎる。後は、それを確保できるだけの時間を作れるかどうかで。

『だが知ってるか?いい男ってのはピンチをチャンスに変えるもんだ。
 不測の事態も機転と『コンナコトモアロウカト』の仕込みで切り抜ける。
 ああ、つまり何が言いたいかっていうとだ』

 首を刎ねられた男は、忌々しそうな顔をしつつも、何処か楽しげな笑みを浮かべている
ように感じた。私の眼は、死を捉えていなかったわけではないらしい。それを覆すだけの
何かが、コイツをこの世に引き戻したのだろう。

『鉛玉(アモ)のアミューズにオードブル。サイとコンビのサラダも、
 崩落添えた首はねスープも平らげた。となりゃ、後は分かるだろ』

 じりじりと殺意が高まって、綾を織り成していくようだ。
 私もこの手を血に濡らしてから、完全にスイッチが入ったと感じる。
 殺したのに殺せなかった。否、殺すにはまだ足りなかったのだ。
 絡まる死線を手繰り寄せるようにして、気配を感じ取り、相手の所在を把握する。
 そして―――見る。観る。視る。
 深く、強く、視線を研ぎ澄ますようにしてその男を凝視する。
 恐らく、アレの死期は一つではない。もう一つ、アレを不死足らしめている何かがある。
 それを断つことが、唯一この男を殺す方法だろう。

「ああ。分かってる。ここからが本番だろ? ならオレの方も―――」

 相手が動く。映画のワンシーンのように背の剣へ手をかける。大仰な動作―――歌舞伎
を思わせる見得の切り方。大仰でしかし隙の見えない動作は、自信の現れか、それとも。
 私の全身が予感していた―――凄まじいものが来ると。
 これまでよりもさらにギアを上に飛ばした、殺し間とでもいうべき何かがここにある。
 だから、身を低く、叢に身を潜める獣のように構えた。



98KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50 read.htmlに切り替える ファイル管理

名前: E-mail(省略可)
画像:

削除パス:
img0ch(CGI)/3.1.10