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■ 日守 秋星 vs 後藤
- 46 名前:日守 秋星 ◆g.FomaLl7. :2009/01/15(木) 01:59:38
- >>44
「なあぁぁぁぁぁがぁぁぁぁれぇぇぇぇぇえええっるぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅ!」
大洪水の中、生命体の未来をかけて大波に抗うノアの箱舟のごとく……
いや、それは大袈裟。精々が大雨の日の道端の側溝に流される煙草の吸殻のように、
溢れ出た給水タンクの水に飲まれる秋星。
タンクhが崩壊した瞬間、流されまいと手を伸ばしたのか、
それとも引き抜こうとしたのか、未だタンクに突き刺さる得物に手を伸ばす。
足元をすくおうとする流水に耐えて一歩、ぷるぷると手を一杯に伸ばしながら、もう一歩。
とう!と気合を込めて得物を掴んだ瞬間――
「っ……!?」
背中に走る痛みに顔を歪ませ、それでもなお不敵な笑みを浮かべたまま
サングラスの端から彼はそれを見た。
「ちょ……そんなのアリですか!?」
なんと表現していいのか、それは手だった。
成人男性の右手、としか形容出来無い確かな右手だった。
ただ、自立行動しながら指先を刃物に変形させて飛び掛り秋星の背中を斬り付けただけの右手だった。
激しい痛みに耐えかね、突き刺さる得物に身体を預けるように膝をつきかけた……
だが、流れる水の圧力を舐めてはいけない。
腰が水流の中に入った瞬間、一気に増えた対水面積に流水が猛威を奮い秋星を押し流す。
その暴力に頼りの綱の得物はあっさりと抜け……
「なあぁぁぁぁぁがぁぁぁぁれぇぇぇぇぇえええっるぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅうぅ!」
大洪水の中、生命体の未来をかけて大波に抗うノアの箱舟のごとく……
いや、それは大袈裟。精々が大雨の日の道端の側溝に流される煙草の吸殻のように、
溢れ出た給水タンクの水に飲まれたのである。
水は高い所から低い所へ流れる物である。
そして、ここは高層ビルの屋上。周囲はすべて低い所な訳で。
ぐるり一周は転落防止のフェンスに囲まれているものの、水には関係なく零れ落ちていく。
しかし、水ではない秋星はフェンスの隙間を抜けることはなく、
それはもう、大雨の日の道端の側溝に流される煙草の吸殻が
グレーチングに引っ掛かるように流水に踊っていた。
そこへ――
「死因は飛び降り自殺でいいな?殺人鬼。」
流れる水に足をとられぬように、軸足に力を込め
人がサッカーボールを蹴るように後藤は高く振り上げ……
「死因は飛び降り自殺でいいな?殺人鬼。」
「いや、確かに一番近い逃げ道ですけど!!」
自殺なんてのは人生からの逃げであって、この場からの逃走じゃないじゃないかな?
と、この期に及んでまだ、そんな余裕を見せた感想などいだく秋星だった。
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