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■ 日守 秋星 vs 後藤
- 49 名前:田村玲子 ◆bOIWj9Hr0g :2009/01/18(日) 23:31:22
- >>46
バグン
しなる足を鞭のように振るい、後藤は秋星を蹴り飛ばした。
秋星の体は子供が無造作に投げた人形のように軽々と飛び上がり、ゆうに5〜6メートルは浮かび上がっただろう。
吹き飛ばされた体は容易にフェンスの外側へ放り出された。
度々くだらない救命番組でとりあげられる奇跡とやらが起きない限り、秋星に待っているのは絶対なる死だ。
もっとも蹴り上げた時に骨の砕ける感触がした。地面に叩きつけられる前に死んでいたのかも知れない。
今となってはどうでも良い問題だったので、後藤はそこで思考を打ち切った。
ひょいと高台から降りると、広川が話しかけてきた。
「てこずったな。」
「妙な相手だった。人間に攻撃を避けられたのは初めてだよ。バカの振りをしているが感覚が他の人間より鋭い。
他にもあいつのような人間はいるのかも知れんな。」
「彼は吸血鬼と呼ばれていたそうだ。血啜る不死身の化物さ。」
「我々の仲間だな。握手して名刺を渡して、清き一票を、と言うべきだった。」
久々に体を動かしたので後藤は機嫌がよかった。流暢に口から皮肉が出る。
「投票権があるならな。後藤さんも大分、人間じみてきたよ。次は立候補してみるかい?」
「それは御免だな。」
しばらくして仲間が服を持ってくると、後始末を広川に全部押し付けて、すぐに後藤はその場を後にした。
秋星の死体が見つからないことを後藤が知ったのは、交戦から数時間後のことである。
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