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■ 「陰陽頭」と「堕ちた天秤の騎士」の会議場
- 26 名前:柳生友景:2011/08/14(日) 01:41:10
- >>25 続き
「主上、わたしを召されたは、またぞろ朝鮮の魔の手が――という訳ではございませぬようで」
玲瓏たる剣豪陰陽師は穏やかに口を開いた。
十数年に渡る暗闘の末に、友景は朝鮮の有する日本国侵略秘密機関、再東征中書省を壊
滅させている。現時点において、かの国が日本への謀略を企む背景はないといってよかった。
「さなり」と上皇も頷く。「此度の陰謀、国を揺るがす驚天の大事とは申せ、この世の事ではな
い。未だ来たらざりし――未来にて起こる出来事なのじゃ。およそ三百年も後に、喃」
「さ、それは」
友景は首をかしげた。霊的国防に携わる陰陽師のトップとして、彼は日本の領域内に霊的
防諜網を張り巡らせている。
しかし流石に未来へのカバーまでは想定の範囲外だし、そもそも出来よう筈もない。
「そなたの言は判る。常ならば、朕も未来に生ずる悪しき種を刈れと命じはせぬ。
それに第一、未来は未来、過去は過去。彼我は別個の世界であり、有態にいえば関係はな
い。枝葉が枯れたとて、必ずしも幹や根が朽ちる事なきが如く。
いや、いずれが主か従かは問わぬ。問題は、此度に限ってはそれが起こり得るという事じゃ。
行く末が絶たれるは、来し方たる今生をも遡って破壊する仕儀なれば」
――実にこの時、上皇は時空連続体の崩壊について示唆したのだった。
そんな「未来」に発生する概念は知らず、しかし陰陽の徒として備える隠秘学の智識によっ
て、友景は上皇の云わんとする所を完璧に把握した。
「さる御方が」と上皇は語を継いだ。「朕にそれを知らせてくれた。その大事を企みし敵の存在
もじゃ」
「その敵とは、如何なる者にて?」
「異界、異形の術客」
上皇は断言し、その「敵の陰謀」を語り出した。
――上皇は語り終えた。
燭台は、相変わらず寒々しい光を灯している。現実世界ならば蝋燭はその長さを半減させて
いたであろう。それほど長い、上皇の話であったのだ。
「戦いは恐らく厳しいものとなろう。しかし、友景よ。この任、見事果たしてくれるか?」
その龍顔に、後代の子孫にして、彼が現世にて供奉する後水尾帝の英邁なる血脈を見――
天皇の陰陽師、柳生友景は花のような笑顔で両手をつかえた。
「我が一命に代えましても、必ずや」
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