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■ 「陰陽頭」と「堕ちた天秤の騎士」の会議場

30 名前:柳生友景:2011/08/14(日) 01:58:44
>> 

 ――友景の脳裏で、出立前に崇徳上皇と交わした会話が蘇る。
 
 
「異界、異形の術客が企てしは、将門の覚醒(めざめ)よ」
「平将門公の……!」
 
 友景の表情が緊張の色を帯びた。
 人も知るように、平新皇将門は平安時代、関八州にユートピア建設を夢見て朝廷へ弓引い
た英雄だ。事破れて処刑された後も、怨念の塊でありながら、不可解にも関東を鎮護する大
地霊となったという。
 そしてこの最大の御霊は、今も江戸の地の底深く、冥府の眠りを貪っているのだった。
 
「確かに、ひとたび将門公が目覚めれば、その祟りは四百余州を焦土と変じせしめましょう。
 また霊的次元のみならず、果てしなく遠く、限りなく近い異世界(とつくに)すらも滅却させる
は必定。
 しかし公は、死せるが如きとこしえの眠りについていると聞き及びます。生半に喚び起こす
真似は叶いますまいが」
「その事よ。されば敵は、不知火検校、またの名を髑髏検校と申す妖人に目をつけたそうな」
「不知火検校? 聞かぬ名でございまするな」
「まだ生まれてはおらぬ者じゃもの、その名ではな」

 あっさりと上皇は言った。――島原は原城にて、江戸期を通じ最大の切支丹反乱が起こる
のは、もう少し先の話である。
 その旗頭となった美貌の天童が、呪詛と妄執の余り魔界へ転び生まれるのも。
 
 
「その者、恨(ハン)極まるが故に血吸い鬼へと転化≠オて後、徳川家への復讐を果たすべ
く江戸を襲ったが、智勇の士らの活躍により滅ぼされたという。――これもまた、未来の物語
よ。敵が白羽の矢を立てたるは、彼の者の遺灰。
 それに籠りし怨念を駆って将門を喚ぶ腹じゃ」
「さまでの存在なれば、その呪怨、将門公の眠りを覚ます火種としては十分でありましょうな」
 
 怨念を抱いて眠る将門を目覚めさせる起爆剤として、同じく怨念の余り真祖となった長生者
(エルダー)髑髏検校の骸を使う。――実に悪魔的な着想と言えた。
 
「その術客とやら、既に呪われし遺灰を手中に収め、将門復活の祭祀を執り行わんと致しおる
とか。急ぐ、事は急ぐぞ、友景よ」
 
 
 友景は小さく、だが力強く頷いたのだった――。
 

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