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■ 吸血大殲10周年祭会議室
- 1 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:18:25
1 ジュリアエドワード 01/11/20 20:04
NKTブラジルのジュリアエドワードが、
緊張の続くスレッド「吸血大殲―もの凄い勢いで吸血鬼が闘争するスレ―」前からライブでお送りします。
つい30分程前、スレッド「吸血大殲」>2-5あたりに武装したテロリストの男女二人組が
従業員・宿泊客数名を殺害し10数名を人質に引き篭もっているとのことです!!
あ、ただ今警察当局から犯人達の素性が明らかにされました。
男性の方は宿泊帳によりますと「ディオ・ブランドー」、女性の方はいまだ不明です。
本日は予定を変更して特別報道番組として報道しております。
―――あれから、十年。
- 2 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:20:06
吸血大殲10周年記念祭〜
prologue 1/7
焦熱の渇望が夜を燃やす―――
月下美人は、その清廉なる刀身を最後まで血に汚すことなく役目を終えた。アセルスの
剣客としての矜持を体現した愛刀が根本よりへし折れる。
隔離された結界より解放された妖魔の君には、もはや重力に立ち向かう余力すら残され
ておらず、赤絨毯の上にどうと崩れ落ちた。沸騰した鮮血が濃紺の煙となって炭化した皮
膚から立ちのぼる。
「アセルス様!」
「来ちゃ駄目だ……!」
駆け寄ろうとするジーナを苦悶の絶叫が押し止める。喉から溢れ出す血が石床にしたた
り、じゅうと悲鳴を鳴らす。アセルスの体内は灼熱が暴れ狂っていた。
「ほう」同じく自らの固有結界より帰還したエレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグSS
少佐は、瀕死のファシナトゥールの君主の様子を見て、僅かに眉をよせた。
「我が創造位階―――焦熱世界・激痛の剣(ムスペルヘイム・レーヴァテイン)を浴びて、
屍を残すどころか、まだ命もあるというのか。さすがは妖魔の君といったところか。夜を
統べたなどと嘯くだけはある」
エレオノーレは漆黒のSS軍服にかかった煤を大儀そうに払うと、葉巻を加え、炎のルー
ンで着火した。
「……それとも、私を喚んだ貴様のところの焼却炉とやらの熱が足りなかったかな」
くつくつ、とようやく口角を釣り上げたエレオノーレの表情は、笑みというにはあまり
に凄惨で、その顔面の半分を焼く火傷顔(フライフェイス)もあいまって、本物の妖魔よ
りもはるかに醜悪かつ邪悪なものに出来上がった。
ここは針の城の最上層、宵闇の魔宮ファシナトゥールを地平線まで睥睨できる君主の間。
かつて月下美人のきらめきによりオルロワージュを斬り伏せた場所で、いま今代の妖魔の
君は膝を突く。―――鉤十字の御旗の下に。
「愚かな顛末だな、アセルス」
一連の死闘を見守っていたグルマルキン・フォン・シュティーベルSS大佐は、マントを
翻してひれ伏す宵闇の君主に歩み寄る。身を包む衣装は当然エレオノーレと同じ夜より昏
き黒衣だ。終わらない常夜を恐れぬ二匹の暗黒が、アセルスを睥睨する。
- 3 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:20:15
吸血大殲10周年記念祭〜
prologue 2/7
グルマルキンが正体を偽り、占星術師として針の城に潜り込んだのは十年前。ナチに入
る以前は、ロシア帝国の宮廷に召し抱えられ、かのラスプーチンと権勢を競い合ったほど
である彼女にとって、剣技にばかり長けた政治を知らない小娘を懐柔するなど造作もなか
った。
十年間、息を潜めて好機を待った。決して目立った真似はせず、外様の下級妖魔を装っ
て妖魔貴族との線引きをしっかりと弁えた。城の景色として馴染むまで寡黙な忠臣であり
つづけた。
そうして信頼を培った後、彼女は踏み入ったのだ。永劫の業火が封印された通称『焼却
炉』―――地獄(ムスペルニブル)に直結されていると謂われる赤熱の地下空間に。
グルマルキンの目的は、ファシナトゥール制圧による千年王国の建国。より正確には、
第四帝国の基幹となる総司令部の設置だ。……もちろん、それは建前で彼女の悲願はあく
まで神秘の追求なのだが、鉤十字による妖魔帝国の蹂躙が狙いであることに変わりはない。
だが、ファシナトゥールはグルマルキンたちが住まう現世とは隔絶された異空間。大軍
を率いて進行するにも、まずは堅牢な護りを穿つ決死の先兵が必要だった。
アセルスは妖魔最強の剣客として武名を轟かしている。彼女と互角以上に闘える猛者な
ど、アーネンエルベの上級幹部クラスでも数名しかいまい。一番槍を命ずるにはリスクも
コストも大きすぎた。
そこでグルマルキンが利用したのは死者であり英雄だった。人の身のまま人の道を踏み
外し、人を超越したが故に人として現世に留まることを許されなかった英霊―――死霊戦
士(エインフェリア)の召喚。
本来ならば、故ラインハルト・ハイドリヒ大将の近衛として冥府に分類される“座”に
て無限の闘争を繰り返している“赤騎士”エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグSS少
佐を、水銀の魔術師が課したルールを無視して半強制的に現世に喚びだしたのだ。
生贄として万単位の死者を必要とする行為だが、ファシナトゥールには幸いにも、エレ
オノーレと同属性の“地獄の焦熱”が、焼却炉として煌々と燃え盛っていた。
かくして聖槍十三騎士団・黒円卓第九位にして三騎士が一人、元ドイツ軍武装親衛隊第
二師団ダス・ライヒ所属の“魔操砲兵(ザミエル・ツェンタウァ)”エレオノーレ・フォ
ン・ヴィッテンブルグSS少佐は焼却炉の炎を媒体に条件付で現界を果たし、見事妖魔公ア
セルスを討ち果たしたというわけである。
「ふん」
紫煙をくゆらせながらエレオノーレは言う。
「これで満足かシュティーベル大佐。約束通り初手より全力だ。一切の駆け引きなく、全
てを出し切った。……それでもまだこうして息があるのだから、妖魔とやらの不死性は驚
愕だよ。結果として、私がいまだ現界するには時期尚早というのを思い知った」
グルマルキンを睨む赤眼が眇められる。
- 4 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:20:26
吸血大殲10周年記念祭〜
prologue 3/7
「さあ、契約は果たした。さっさとこんな辛気くさいところか解放してもらおうか。おま
えに使役される立場に甘んじるなど……いつまでも我慢できるものではない」
「そう言うなヴィッテンブルグ少佐。約束は守るし、感謝もしている。だが物事には順序
がある。あそこまで莫大な魔力炉を捧げてまでおまえを喚んだのだ。もう少しだけこの余
暇に付き合ってもらうぞ。……おまえが現世を見限って半世紀、鉤十字の亡霊が行き着い
た果てに興味もあるだろう」
エレオノーレは不快そうに鼻を鳴らした。
「貴様やあの小太りの少佐が好きにできるのもハイドリヒ様が戻ってこられるまでの間だ
と知れ」
「分かっているさ。黄金の野獣殿は我々鉤十字騎士団もたいへん目にかけてくださった。
大将殿の愛とやらを否定するつもりはない。―――さて、」
グルマルキンの右の義眼が床に伏すアセルスを睨んだ。
「敗北の味はどうだ、妖魔の君」
返答はない。見ればアセルスの右足は太ももより先が炭化して失われ、左腕も肉が灼け
溶け、骨が覗いていた。
「愚かな顛末だな。そして憐れだ。誰も信用せず、自己も信用せず、世界を閉ざして魔宮
に引き籠もった君主の行く末がこれか。自慢の上級妖魔はどこだ。寵姫はどこだ。姿が見
えないが……ふん、まさかすべて喰ったのではなかろうかな。この針の城はもはや形骸か?
貴様の本当の城はどこにある」
軍靴の爪先で頬を蹴ったところで返ってくるのは苦渋の表情のみ。「まぁいい」と切り
捨てて、グルマルキンは庭から覗く終わらない漆黒の天蓋を指さした。
見れば、魔女の指の先―――遠く夜空の果てに、巨大な門が出現しているではないか。
常識を覆す狂気の光景。あれこそまさに異界と異界を繋ぐ錬金術の秘門“アメストリスの
門”だ。
「武装親衛隊第13師団“シャンバラ”―――これよりファシナトゥールは、我らアーネン
エルベの本隊が支配する」
闇夜に浮かぶ巨大な門は、音もなく開かれていく。
門の向こうから姿を見せるのは、寸胴な輸送機の軍列。実に12機にも昇る数秘機関駆動
のメッサーシュミットMe323“ギガント”が―――
- 5 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:20:38
吸血大殲10周年記念祭〜
prologue 4/7
「見ろエレオノーレ。慚愧しろアセルス。いま、ファシナトゥールは墜ちた。これより顕
れるのは、もっとも純粋なる闇にして地獄だ!」
グルマルキンの哄笑が夜に響く。
そして、数秘機関駆動のメッサーシュミットMe323“ギカント”が―――
立て続けに爆砕した。
「なに?!」
それは奇しくもグルマルキンの口上通りの地獄の再現となった。何機かは両翼がへし折
れ、また何機かはキャビンから爆炎が立ちのぼり、他にもエンジンが悉く粉砕するなどし
て、巨躯を炎上させながら闇の大地に墜落していく。
将校として常に沈着冷静なエレオノーレですら瞠目する異常な展開。司令官のグルマル
キンは驚愕に声すら失った。一騎当千の軍勢が為す術もなく炎に追われて闇に墜ちていく。
いったい何が起きたというのだ。
ついに輸送機は最後の一機を残すだけとなった。その一機さえも、激しく炎上しながら
緩やかに高度を落としていく。もはや墜落は逃れようがない。問題はその進路だ。まるで、
グルマルキンたちが立つ針の城に突貫していっているような……
「?!」
グルマルキンとエレオノーレは同時に気付いた。シルエットを大きくさせて接近してく
る最後の輸送機。その機種に堂々と仁王立ちする人影の存在に。
……なんだ、あれは。
人影は炎上する舞台で、高らかに名乗りの口上をあげる。
「ふははははははははははははは!!!!
全宇宙全並行世界で二番目に強く美しい、
夜の支配者(ナイトロードアルティメットエンペラー)
ダイ・アモン、此処に推参ですよォォォォ!!!!!」
そうして、輸送機は些かも速度をゆるめずに針の城に突貫した―――
- 6 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:20:49
吸血大殲10周年記念祭〜
prologue 5/7
グルマルキン大佐は言葉にならない呻きをあげながら立ち上がった。十秒ほど気絶して
しまったようだ。それほどまでに凄まじい衝撃だった。
巨大輸送機という圧倒的な質量による突撃は、純粋な暴威として針の城を蹂躙したよう
だ。十秒前とはまるで別世界の光景が視界に広がる。
君主の間は瓦礫の山へと成り果てていた。豪奢な内装も、重厚な石造りの外壁も原形は
留めておらず、輸送機に搭乗していた兵卒(シャンバラはその大多数を魔導甲冑による錬
金生成兵で構築しているので、この場合、死体は鉄屑になる)や兵器の残骸がかしこに散
らばっている。輸送機の燃料に引火した炎が闇を遠ざけていた。
いったい何が……。
「ヴィッテンブルグ少佐、無事か!」
懐刀にして切り札のサーヴァントの名を叫ぶ。
返答は野太い哄笑だった。
「ふはははははははははははははははははははは!!」
炎熱のカーテンの奥より人影が立ち上がる。グルマルキンよりも背丈が1.5倍はあろうか
という巨躯の持ち主だ。灼熱を乗り越えて男が姿を見せる。岸壁の如き屈強な筋肉を覆う
漆黒のマントに、悪魔的表情をより凄惨に際立たせる隈取り状の紋様。
グルマルキンは誰何をしかけ―――大男が左手に引き摺っているものの正体に気付いた。
「ヴィッテンブルグ少佐?!」
焦熱の赤騎士が、魔弾の射手が、鉤十字の反英霊が、血みどろの満身創痍という有様で、
大男に軍服の襟を掴まれ引き摺られていた。
異端の方式で召喚したとはいえ、腐っても国円卓の筆頭三騎士が一人だ。地獄の光景を
ヒトガタに圧縮したかのような存在が、まさかボロ雑巾に成り果ててグルマルキンの目に
つくことになるなんて。
「ぬん!」
巨椀が無作為に振られ、エレオノーレは放り投げられた。その無惨な姿がひび割れた石
床に転がる。
「貴様は―――」
“シャンバラ”大空輸船団を一瞬にして壊滅させ、ファシナトゥール攻略の要である赤騎
士を血の海に沈めたこの大男は一体何者なのか。
グルマルキンの右の霊視眼が、男の体内を胎動する濃厚な闇を確かに見て取った。ただ
者ではない。
「ふふ、わたくしは、全宇宙で二番目に美しい―――」
「アモン、貴様、こんなところでなにをやっている?!」
- 7 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:21:00
吸血大殲10周年記念祭〜
prologue 6/7
妖魔公アセルスが、寵姫ジーナの肩を借りて瓦礫の奥より姿を見せた。言葉を発したの
はその背後に控える親衛隊隊長ラスタバンだ。
「アモン? 誰だ」とアセルスは首を傾げた。
「アセルス様が名前を覚える価値などございません。ただのしがない下級妖魔。筋肉だけ
が取り柄の能なしではございます。地下迷宮の掃除人には打って付けと思いまして、十年
ほど前に召し抱えました」
「アモン……」
はっ、とグルマルキンは目を見開く。
「まさかダイ・アモン伯爵か。あの鬼道衆の……」
「Exactly!」
「なんだ、知っているのかグルマルキン」
「なにを暢気なことを言っている。ダイ・アモン伯爵といえば、嘘かまことか、最も尊く
古い血族の祖―――真祖の一柱ではないか。歴としたノーライフキングだぞ」
「ふーん。知ってるか、ラスタバン」
「いえ、知りません」
「ジーナは?」
「さあ……」
「だ、そうだが」
「き、貴様等、どこまで―――」
「ふはははははははははははははは!」
雄叫びの如き高笑いが会話を打ち切る。
「いい加減に名乗ってもよろしいですかな淑女方。私の名はダイ・アモン最終伯爵。全
宇宙全並列世界で二番目に美しい、闇の薔薇でございます。掃除人の姿は今日という好機
を待つまでの仮初めの姿。全ては私が主催する晩餐に招待するための仕込みの期間だった
のですよ!」
最後のほう、なんかどこかで聞き覚えがある台詞だな……とアセルスはグルマルキンを
睨んだ。彼女はそれを無視して――しかし、いったいどうなってるんだこの馬鹿妖魔の城
は、と胸中ではしっかりと悪態をついて――ダイ・アモン伯爵と相対した。
「伝説の真祖、か。……ふん、いったいどんなイカサマを使ってヴィッテンブルグ少佐を
斃したのかは知らんが、このグルマルキンを同じように―――」
「吸血破壊光線パンチ!」
「ぐあああああああああ!」
- 8 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:21:13
吸血大殲10周年記念祭〜
prologue 7/7
「おお!」
豪腕が繰り出した一撃の前に、グルマルキン・フォン・シュティーベルSS大佐は、為す
術もなく城外へと吹き飛ばされ、闇に消えた。
「なんという快挙。さすがだアモンとやら。お見事!」
妖魔の君主は頬を綻ばせ、拍手を打とうとしたが、そこで自分が隻腕であることに気付
いた。
「よし、貴様には恩賞として爵位をくれてやる。明日からアモン男爵と名乗るがいい」
「いつまですっとぼけたことを言っているんですか、あなたは!」
「アセルス様、危ない!」
繰り出される二度目の剛拳。咄嗟にラスタバンが盾となって受け止めた。一瞬にして防
御用の魔術障壁を幾重にも張り巡らしたが、その悉くを容易くぶち抜いて、グルマルキン
と同じように親衛隊隊長も城外に殴り飛ばされた。
「ラスタバン?! 貴様ァ、掃除人の分際で!」
「だからそれはあくまで変装で、ワタクシは伯爵だと言っているでしょうが。まったく
物わかりの悪い君主様ですねェ。あなたみたいな色狂いにこの宵闇の魔宮は分不相応です
よ。……ゆえにファシナトゥールという名の宝箱、この私が頂きましょう」
「なにを勝手な―――」
「あ、因みになんで十年も地下に潜っていたかというと、ここの地下迷宮の最下層が目
的だったんです。あの黒猫の本当の目的もそれでしょうな。まぁ手順は私とは違ったよう
ですが。んで、昨晩、私はようやく“それ”に辿り着きました」
「な、まさか」
「どどん!」
ダイ・アモンはマントを翻し、蝙蝠の羽根の如く羽ばたいてみせた。
「さあ、聴けよ夜のしもべども。耳を潜めなさい闇の子ら。そして慄くがいい、愚かな
る(あのお方ご一行以外の)人間ども! ダイ・アモンの独白タイムが始まりますよ!
全宇宙全平行世界実況生中継でお送りします! 交信路(チャンネル)はそのまま!」
- 9 名前:ダイ・アモン ◆aBDiEAMOnc :2011/11/19(土) 20:21:47
皆様、お久しぶりでございます。
ついに帰ってまいりましたよ。ダイ・アモンが!
十年の時を超えて!
最深の奈落より!
ただいま期間を果たしましたでございますよぉ!↑↑↑
思えば長き旅路でした。
……埃臭い地下迷宮での果てしない探索。
確たる終わりが見えないまま、
ただ自らの美とあのお方への愛を糧に闇へ闇へと潜り続けた十年間。
そこには伝説に値するドラマがありました。
山脈を震わし、海面を沸騰させる感動がありました。
真祖たる私ですら窮地に立たされることも幾度となくありました。
死の因果が逃れたはずの私がいったい何度消滅を覚悟したでしょうか。
苦難に次ぐ苦難。海嘯の如く押し寄せる大ピンチ!
……こうして私が生きて帰ってこれたのも、ひとえに、あのお方と私のこの美しさと!
そして!
皆様の恒久的平和のため―――!
そう、私はファシナトゥール地下迷宮の最深部に辿り着いたのです。
それが意味することはつまり!
「まさか!」
黙りなさい妖魔の君。いまは私のターンですよ。
「貴様、なにを考えている」
だから―――
「このファシナトゥールをどうするつもりだ」
ふん、そんなものはもはや存在しません。
私がこのリージョンの“夜”に触れ、“夜”と通じ、“夜”と同化したときから、
ここは『風雲アモンキングダム』へと生まれ変わったのです―――ッ!
「痴れ言を!」
地下迷宮の最深部に秘められていたのは、ファシナトゥールの核でございました。
終わりのない闇、明けない夜を維持するための永久機関。宵闇の結晶。
ファシナトゥールを常夜たらしめるひじょーに強大なエントロピーです。
エントロピーがなんなのかよく分かりませんが、とにかくすっげえパワーなんです。
天地開闢以来二分された昼と夜の両翼―――その片翼が眠っていると考えていれば、
いまいちピンと来ないお馬鹿で愛らしい視聴者の皆様方にも、
私が手にした力が如何に崇高かつ偉大であるかお分かりになるでしょう。
夜の原始ですよ?! 我ら夜族にとっての胎盤ですよ!
こんな無限大のエントロピーパワーをファシナトゥールの常夜のためだけに使うなど!
そんな独占行為は、あのお方が許してもダイ・アモン様が許しませんよ!
「まさか、貴様!」
その通り!
わたくしのものはあのお方のもの。
あのお方のものはあのお方のもの。
皆様のものもあのお方のもの。
つまり、わたくしのものは皆様のものというわけで―――!!
この無限の夜、お裾分け致しますよ!
- 10 名前:ダイ・アモン ◆aBDiEAMOnc :2011/11/19(土) 20:22:07
「馬鹿な、正気か」
そういうことで、せっかく開演したアモンキングダムでございますが、
早くも閉園のご挨拶となります。
たいへん名残惜しいのですが、アモンキングダムは一週間後ぐらいに自爆します。
ファシナトゥール(じゃなかったアモンキングダムですね)の“核”を励起し爆縮させ、
この終わりのない夜を全世界に飛び散らせます。
おお、素晴らしい。なんというメリークリスマス。
さすれば、もう二度と日光を恐れることはなく、
我々夜族は神にも等しき究極体へと達するのです!
これぞ、名付けて“全世界ナイトメア計画”でございますよォ!
「道化るな! ファシナトゥールの闇を別次元に浸食させるなど、狂気の沙汰だ。幻想を
幻想が侵せば、そこに必ずや摩擦が生じる。貴様がやろうとしていることは、終末への誘
いだ。ファシナトゥールという殻を破壊し、溜まりに溜まった因業の澱をぶちまけようと
しているに過ぎん。世界の調和を拒む気か!」
お黙りなさい吸血破壊光線フロントスープレックス!
「ぎゃー!」
「アセルス様!」
「ジーナー……逃げろ……」
ふははははは、というわけで。ファシナトゥール改め風雲ダイアモンドキングダムナイ
トメアバビロンより実況生中継でお届けさせていただきましたよ。
私という永劫の夜の前にひれ伏す運命にある人間の中で、もしも文句がある方がいらっ
しゃいましたら、いつでもアモンキングダムへいらっしゃいなさい。
ゲートは常時開放中。夜こそが我が城であり世界なのですから、あなたの身近にあるそ
の夜に迷い込めば、必ずや辿り着けることでしょう。
そして!
まさかまさか、この私が夜族の一億万年帝国を作ってさしあげようというのに、それを
拒むような愚かな不死者はいらっしゃらないでしょうが―――
応援の言葉! ファンレター! いつだって受け付けますよ!
是非に、直に渡しに来てください。差し入れは麗らかな処女なぞを……
熱っ! あちちちちちちち!
な、なんですかあなた! まだ生きていらっしゃったのですかしぶといですね。
いいでしょう、私の真の力を解放してその醜い火傷顔を―――
むむ? この匂い、まさかあなたも乙女……
ぶへら!
ぶちり
- 11 名前:ダイ・アモン ◆aBDiEAMOnc :2011/11/19(土) 20:26:06
- 〜この放送はすんげえ闇パワーであらゆる夜を経由して皆様のお耳に届きました〜
- 12 名前:ダイ・アモン ◆aBDiEAMOnc :2011/11/19(土) 20:34:20
- 以上、導入です。はい、お祭り始まりです! わー! わー!
- 13 名前:“動かない大図書館”パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2011/11/19(土) 23:32:21
- ぱちぱち、と。
まずはお疲れさま、というべきかしらね。
それで、ええと。
ロケーションは大体分かったけれど、レギュレーションはどのような感じになるのかしら。
まだいたら答えてくれたら助かるわ。
それによって、私か他の誰かが出るかが決まるから。
- 14 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2011/11/20(日) 00:57:39
-
外野でもなく、主催でもない。
中途半端な立ち位置でから。
―――――貴方が大殲であると思うものが大殲です。
この文言だけで良い。
派手に殺し。
派手に殺され。
派手に殺り。
派手に殺れ。
派手に犯し。
派手に犯され。
派手に犯り。
派手に犯られ。
死ぬコトと、死なすコトと。
殺すコトと、殺されるコト。
死に顔を赤く染めて笑えるコトがレギュレーション。
そうだろう?
- 15 名前:“動かない大図書館”パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2011/11/21(月) 05:04:25
- ……ああ、ええと。それはその通りなのだけれど。
そういう意味での制限はない事は分かってるわ。
私が言いたかったのは、現れる化け物たちの立場の事。
たとえば、以前あった「森祭り」では、参加者は「拡大する森に何らかの理由で巻き込まれた者」だったわ。
縛りは基本緩くて、主催のジャンヌ(今考えても凄かったわ)に挑む者を除いては、基本そのあたりで戦いあっているだけだった。
「血狂ひ」では、御前試合をモチーフにして、トーナメント風に戦うのが主眼に置かれていたわ。
ここでは化け物たちは「戦う者」という立場だった。戦闘組合せが非常にシステマチックだったのが特徴ね。
「空戦祭り」では、勢力分けがはっきりしていたのが特徴。「ナチスサイド」と「奪還サイド」、どちらでもない「巻き込まれ型」。
この3タイプの参加の仕方があって、巻き込まれ型を除いては勢力同士の戦い、という風情だった。
もっとさかのぼって「血祭り」なんかになると、これはやっぱり勢力分けがあるタイプ。
とはいっても、勢力キャラ間での協力はあまりなかったようだけれどね。「人間」「化け物」「ハーフ」といった勢力に分けられていたわ。
前置きが長くなったけれど、つまり私が聞きたいのは、「私たちはどういうノリでファシナトゥールに出ていけばいいのか」ということ。
特に気になるのが、「ダイ・アモン以外のオープニングに出たキャラクター達はどういう風に参戦するのか(しないのか)」ってことね。
そのあたりをある程度明確にしておいた方がいいんじゃないか、と思ってしたのがさっきの私の質問。
こういうのは、暗黙の了解だけでやってると事故るからね。念のため、ってこと。
レギュレーション、という言葉が誤解を招いたわね。そこは素直に詫びるわ。
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