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■ 吸血大殲10周年祭会議室
- 1 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:18:25
1 ジュリアエドワード 01/11/20 20:04
NKTブラジルのジュリアエドワードが、
緊張の続くスレッド「吸血大殲―もの凄い勢いで吸血鬼が闘争するスレ―」前からライブでお送りします。
つい30分程前、スレッド「吸血大殲」>2-5あたりに武装したテロリストの男女二人組が
従業員・宿泊客数名を殺害し10数名を人質に引き篭もっているとのことです!!
あ、ただ今警察当局から犯人達の素性が明らかにされました。
男性の方は宿泊帳によりますと「ディオ・ブランドー」、女性の方はいまだ不明です。
本日は予定を変更して特別報道番組として報道しております。
―――あれから、十年。
- 2 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:20:06
吸血大殲10周年記念祭〜
prologue 1/7
焦熱の渇望が夜を燃やす―――
月下美人は、その清廉なる刀身を最後まで血に汚すことなく役目を終えた。アセルスの
剣客としての矜持を体現した愛刀が根本よりへし折れる。
隔離された結界より解放された妖魔の君には、もはや重力に立ち向かう余力すら残され
ておらず、赤絨毯の上にどうと崩れ落ちた。沸騰した鮮血が濃紺の煙となって炭化した皮
膚から立ちのぼる。
「アセルス様!」
「来ちゃ駄目だ……!」
駆け寄ろうとするジーナを苦悶の絶叫が押し止める。喉から溢れ出す血が石床にしたた
り、じゅうと悲鳴を鳴らす。アセルスの体内は灼熱が暴れ狂っていた。
「ほう」同じく自らの固有結界より帰還したエレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグSS
少佐は、瀕死のファシナトゥールの君主の様子を見て、僅かに眉をよせた。
「我が創造位階―――焦熱世界・激痛の剣(ムスペルヘイム・レーヴァテイン)を浴びて、
屍を残すどころか、まだ命もあるというのか。さすがは妖魔の君といったところか。夜を
統べたなどと嘯くだけはある」
エレオノーレは漆黒のSS軍服にかかった煤を大儀そうに払うと、葉巻を加え、炎のルー
ンで着火した。
「……それとも、私を喚んだ貴様のところの焼却炉とやらの熱が足りなかったかな」
くつくつ、とようやく口角を釣り上げたエレオノーレの表情は、笑みというにはあまり
に凄惨で、その顔面の半分を焼く火傷顔(フライフェイス)もあいまって、本物の妖魔よ
りもはるかに醜悪かつ邪悪なものに出来上がった。
ここは針の城の最上層、宵闇の魔宮ファシナトゥールを地平線まで睥睨できる君主の間。
かつて月下美人のきらめきによりオルロワージュを斬り伏せた場所で、いま今代の妖魔の
君は膝を突く。―――鉤十字の御旗の下に。
「愚かな顛末だな、アセルス」
一連の死闘を見守っていたグルマルキン・フォン・シュティーベルSS大佐は、マントを
翻してひれ伏す宵闇の君主に歩み寄る。身を包む衣装は当然エレオノーレと同じ夜より昏
き黒衣だ。終わらない常夜を恐れぬ二匹の暗黒が、アセルスを睥睨する。
- 3 名前:名無し子猫:2011/11/19(土) 20:20:15
吸血大殲10周年記念祭〜
prologue 2/7
グルマルキンが正体を偽り、占星術師として針の城に潜り込んだのは十年前。ナチに入
る以前は、ロシア帝国の宮廷に召し抱えられ、かのラスプーチンと権勢を競い合ったほど
である彼女にとって、剣技にばかり長けた政治を知らない小娘を懐柔するなど造作もなか
った。
十年間、息を潜めて好機を待った。決して目立った真似はせず、外様の下級妖魔を装っ
て妖魔貴族との線引きをしっかりと弁えた。城の景色として馴染むまで寡黙な忠臣であり
つづけた。
そうして信頼を培った後、彼女は踏み入ったのだ。永劫の業火が封印された通称『焼却
炉』―――地獄(ムスペルニブル)に直結されていると謂われる赤熱の地下空間に。
グルマルキンの目的は、ファシナトゥール制圧による千年王国の建国。より正確には、
第四帝国の基幹となる総司令部の設置だ。……もちろん、それは建前で彼女の悲願はあく
まで神秘の追求なのだが、鉤十字による妖魔帝国の蹂躙が狙いであることに変わりはない。
だが、ファシナトゥールはグルマルキンたちが住まう現世とは隔絶された異空間。大軍
を率いて進行するにも、まずは堅牢な護りを穿つ決死の先兵が必要だった。
アセルスは妖魔最強の剣客として武名を轟かしている。彼女と互角以上に闘える猛者な
ど、アーネンエルベの上級幹部クラスでも数名しかいまい。一番槍を命ずるにはリスクも
コストも大きすぎた。
そこでグルマルキンが利用したのは死者であり英雄だった。人の身のまま人の道を踏み
外し、人を超越したが故に人として現世に留まることを許されなかった英霊―――死霊戦
士(エインフェリア)の召喚。
本来ならば、故ラインハルト・ハイドリヒ大将の近衛として冥府に分類される“座”に
て無限の闘争を繰り返している“赤騎士”エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグSS少
佐を、水銀の魔術師が課したルールを無視して半強制的に現世に喚びだしたのだ。
生贄として万単位の死者を必要とする行為だが、ファシナトゥールには幸いにも、エレ
オノーレと同属性の“地獄の焦熱”が、焼却炉として煌々と燃え盛っていた。
かくして聖槍十三騎士団・黒円卓第九位にして三騎士が一人、元ドイツ軍武装親衛隊第
二師団ダス・ライヒ所属の“魔操砲兵(ザミエル・ツェンタウァ)”エレオノーレ・フォ
ン・ヴィッテンブルグSS少佐は焼却炉の炎を媒体に条件付で現界を果たし、見事妖魔公ア
セルスを討ち果たしたというわけである。
「ふん」
紫煙をくゆらせながらエレオノーレは言う。
「これで満足かシュティーベル大佐。約束通り初手より全力だ。一切の駆け引きなく、全
てを出し切った。……それでもまだこうして息があるのだから、妖魔とやらの不死性は驚
愕だよ。結果として、私がいまだ現界するには時期尚早というのを思い知った」
グルマルキンを睨む赤眼が眇められる。
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