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■ 『異聞』 〜定められた終幕(エピローグ)へと到る物語〜

44 名前:『道化』ケフカ(M) ◆AAo1qoPdKCCx :2011/12/01(木) 01:08:45
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「ホァーッホッホッホッホ!」
            「ホァーッホッホッホ!」
                        「ホァーッホッホッホ!」


地獄に哄笑空高く。
再現されたムスペルヘイムに相応しく、響くは熱狂そのものをカタチと表す高笑い。
正気を侵食せんとまでに鳴り響く道化笑いの三重奏。その聞こえ方は異なる三方から聴こえたと
思えば前から順に三つと重なり、そうと思えば左右に分かれ上下に別れ直角と思わば螺旋を描く。
残像のごとく薄まった3人の道化は虚像にして同じく実像。
分身を消されぬ限りその攻撃に虚偽はなく、いずれか一人が攻撃を当てさえすれば3人違わぬ因果となる。
それは3にして1、分身効果が生み出した偏在の副作用。
ゆえに、3つのうちどれか一つさえ当たったならば、それは紛れもない本物による一撃となるのだ。

腕の根元一本どころか心臓すら射抜こうと躍る影三つ。
大きく後ろに飛んだ魔女を逃さぬと、三人の道化もまた追撃の型を取る。
しかし眼前の獲物に注力していたがゆえの行動は、だからこそ“もう片方”に対しては無防備であった。


「「「ホァーッホッホッホ!」」「ホァーッホッホ逃げても無駄ですyいったーーーーい!!?」


乱戦における被弾の可否を決める要因は二つある、運不運と用心の有無だ。
よって追撃の隙でそのいずれもが負に傾いていた道化にとって、不意に降り注ぐそれは必中の呪いを
掛けられていたに等しかった。

横合いから最高のタイミングで殺到する銃火が分身達を消し飛ばす。
元来物理的手段への防御法である分身は、その偏在性もろともに消滅し効果を消失。
だが一方で鉄火のスコールは留まるを知らず、そのまま道化の総身へ横からと逆しまからと降りかかる。


「痛いイタイイタタタタ痛痛痛痛ダダダ痛゛痛゛痛゛ァーーーー↑ーーーー痛痛痛痛痛痛痛痛痛
 痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛痛゛つかイテぇつってんだろテメエ!!」


ボロボロに引き裂かれた外套から奔る影一閃。
怒りを隠さぬ罵倒と共に、目にも映らぬ“それ”で弾幕を一気に両断すると道化は向き直る。
その血と煤で汚れた顔にはおどけた笑みなど何一つなく、在るのはただ剥き出しの激情めいた憤怒のみ。


「折角のディナータイムを邪魔しやがって…これだから軍人はキライなんですよ!!」


襤褸同然となった己の出で立ちを気にする事もなく、怒り苛立ち尚消えず、餓えも同じく静まらず。
予め多重詠唱しておいた『物理防護(プロテス)』で直撃こそは免れたものの、その損傷は明らかに大きい。
道化衣装と同じく大小様々に刻まれた火傷裂傷の数々、だが今はそのダメージを癒す余裕などはない。
回復の好機を奪われた以上、魔力の消耗という問題は未だ解決していないのだ。
酷く忌々しいことこの上ないが余分な魔力の使用は控えなければならなかった。

とはいえ……これより訪れるものが彼の読み通りならば、この事態も打開できるだろう。
自分たちの置かれた状況はいわば魔女の生み出した盤面の上。
しかして、その目指すところは大凡の見当が付いている。そしてそれを成す為に、次に魔女が如何なる手を打つかという事も。
魔女の目的が宣言どおり小癪な簒奪というのならば、そのために万全の準備を敷くに違いない。

道化の極めて冷え切った部分は告げる。
そう、あの小娘は明らかに自分とは違う。あれは糞のような計算や理屈で世界の全てを分かっている気になっている馬鹿の顔だ。
ああいう奴は物事をでっかちな頭で判断し、もったいぶった計算で動いて得意満面の笑みをする。今あいつ自身が見せたように。
そんなふうに動いているような者が、わざわざ灼熱地獄などという手札を見せておいて、それを未だ何ら利用もしていないのは何故か。
明らかなのは一つだろう。そう相手は確実に己の生み出した状況を動かす次の一手のため、この場は雌伏を選んでいる。
迎撃ではなく離脱したのもそういうことだろう。あれは逃走ではなく準備のための転進だ。
でなければ、あんな平然とした表情などするものか。あれは延々と考えてこしらえた理屈と計算で動いている詰まらない馬鹿の顔だ。
おぼろげな記憶に浮かぶこれ見よがしな学者どもと同じ、そして自分達以外を見下しながら謀を企てる『暴君』や『魔女』どもと
まったくもって同じ顔だ。だから、今このときは見逃して良いと確信できる。


「…まぁ、いいでしょう。代わりにお前たちの命で埋めるとしましょうか」


ならば、今必要なのはその時まで己を生かす事だ。
どうせ獲物は次の札を切る、今はそれを待てばいい。むしろ警戒するべきはこのしぶとい野良犬だ。
横合いから何度も殴りかかるこの犬どもに、ここで食い殺されては意味がない。


――――そんな思考を己の一部で弾き出しながら、道化の本能は狂気と怒りのままに既に行動していた。



「その硬いカラをカチ割って……




                   上昇/加速/蛇行/肉薄/
                   右側/強襲/突撃/転移/ 
                   詠唱/氷塊/炸裂/拡散/
                   空転/上方/展開/背面/

                                      
                 =ばらばらブリザガ+はかいのつばさ
      ―――覆うように弾ける氷の散弾と音の壁を破りて切り裂くべく奔る六翼―――



                   ナカミを食べてしまいましょうかーー!?」



【場所:現灼熱地獄 パチュリーを見逃しエリ&フィオと交戦中】

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