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■ 饒舌な傭兵が子持ちの人妻(予定)と密kもとい殺し合う予定のスレ

17 名前:デッドプール ◆zZQX9NVr63/V :2018/05/01(火) 02:09:45

>>11-12






              Aperitif/Amuse






―――――良い曲だ。実際聴くのは初めてだったが。


G線上のアリア。
お高く留まったハイソな場所でないと聴かないような、少なくとも俺の人生じゃ
一生聴くことはないと思っていたバッハの一曲。
シンプルながらも情緒のあるメロディライン、もの寂しさと穏やかなイメージが
得も言われぬマリアージュを醸し出す。脳内が程よいアルファ波で満たされる感覚。
レッドツェッペリンじゃこうは行かない、ビートルズでもここは流石に一歩譲る。
成る程、金持ちのジジババどもが聴きたがるのは見栄だけが理由じゃないってワケだ。


ソコに混ざるノイズ。いいや、こいつはアクセントさ。
これ見よがしに到来をアピールするハードな靴音。察するに、理由はズバリ威嚇に苛立ちってとこか。
カツンて足音一つには、それだけの怒気と敵意が込められてる。
ビルに仕込んだ監視カメラで誰かは分かってた、お目当てのバニーちゃんがようやくのお出ましだ。
それも只のバニーじゃない、とびきり残酷凶暴な首斬りバニー。

イイね、堪らない。ついついマスク越しに口元がニヤけちまう。
慎ましくも熱烈なアプローチ、ヤマトナデシコってこういうのをいうんだろうな。
普段なら最高にボッ●モノだが、生憎と今回ソイツはNG。
レディーを持て成す以上、たとえ俺ちゃんでも紳士に振る舞うのがマナーってもんだ。


「約束通りか、嬉しいね。
 なにせ俺の人生、約束は破られるのが常識だったものだからさ。
 ――――いらっしゃいませ、ファーストレディー。
 席はこちらで御座います……ってな?」


飛び起きるように席を立ち、恭しく一礼。
そこは絵に描いたような空に月、広がるのは無機質な空間。
幻想と写実が入り混じった光景は、さながらシックな現代劇の舞台のよう。
とはいえ、舞台のキモはそこじゃない。更にシュールのワンポイント。
そう、見れば分かる。
彼女のゾクゾクするような視線の先、つまりは俺のふんぞり返っていた所。


「いやさ、おかげでこっちの準備も無駄にならないで済んだよ。
 見てくれよこの豪勢なテーブルに並んだフルコース!
 調度品の一つからして高級品だ、態々注文したのを運んできたんだぜ?
 持て成しの心ってのは大切だからな。
 後あんたの好みが分からなかったんでね、食前酒はシンプルなシェリー酒にしてみたがいいかい?

 ああ、そこの吊るされてウーウー唸ってるバカは気にしないでくれ。
 ちょっとした乾杯前の景気づけだか、らっヒュウ!命題『ロシアの悪党は空を飛ぶか』?
 ……何だよ、やっぱ飛ばないでやんの。」


―――そう。
椅子にテーブル&テーブルクロス、カートにワゴンついでにレコードプレーヤーに
カメラ連動モニタ一式エトセトラエトセトラ……。
俺のいる一角だけがさながら高級リストランテの様相を呈している。
吊るしたマフィアのボスは、ああ、今ロープ切ったから墜ちてるに修正か。
まあこいつはただのアクセントだ。言うなればロシアントマトソースの実演パフォーマンスだな。


18 名前:デッドプール ◆zZQX9NVr63/V :2018/05/01(火) 02:13:52

>>


「……っておいおいおい、リアクション薄いなあ?
 そんなに恋人が気になるか?ったく少しは俺ちゃんの苦労も分かってもらいたいもんだね。
 こういうの、アレだろ?日本で言うところの『お前のために早起きしてお弁当作ってきたんだ』
 ていうムーブと同じだと思うんだけどな。折角お前さんとこのヤクザじゃなくて、外様の
 コナ掛けようとしてきた連中だけバラしてきたんだぜ?」


遠くなってく悲鳴をよそに、かぶりを振って再び椅子へ。
ふんぞり返るような元の姿勢。
だが視線はもちろん相対するベイベから外しちゃいない、何故なら外す理由がない。

切り裂くような刺し貫くような、一片の容赦もない冷酷な青い眼差し。
ツララどころか冷凍レーザーで貫かれたように感じる肌には、だが確かすぎる熱も感じる。
その原因は他でもない。こいつの煮えたぎった怒りと憎悪だ。
例えるなら表面張力。ギリギリまで水の入ったグラスと同じ。
ほんのちょっと……そう。本当に些細な、コイン一つぶんの切欠で見事に殺意が零れ落ちる。
むしろいきなり飛び掛からないのが不思議なくらい。
いわば奇跡的なバランス。
一見怒りに身を任せちゃいるが、そのじつ随分と理性が働いてるらしい。


―――つまりは最高の仕上がりだ。
薄氷を添えた煮えたぎるような、それでいて澄み切ったウォッカのよう。
スリルという名の素敵な食前酒は見事な出来栄えといえるだろう。

幸先は上々。
なら、後は乾杯のロックをぶち込むだけだ。
前置きが長いって?まあ待てって。これで完璧に始まるからさ。
ほらステージを見てみろよ。
俺ちゃんの席は奥、食卓を挟んで彼女は向こう。そして俺はこう言うのさ。


「しかし、もしかしてアレか?
 思ったより警戒してるってことは届いてないのか?
 ったく手違いかよ。日本の郵便は優秀だって聞いてたんだけどなー。
 分かりやすく手紙と一緒に送ったんだぜ?お前の彼氏ちゃんのああええとそう。
 
 ――――指とか」
 

瞬間、全力でテーブルを蹴り飛ばす。
吹っ飛ぶ椅子、シュートされるテーブル、飛び散る料理。
ついでに轟音とデザートイーグルのマグナム弾。どこまでもスムーズな抜き打ち一発。


食前酒にはアミューズが付き物だ。
殺意の酒には開幕の号砲が良く似合う。
そう、俺の最後で最高の晩餐にはお似合いさ。

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