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■ 饒舌な傭兵が子持ちの人妻(予定)と密kもとい殺し合う予定のスレ

56 名前:両儀式 ◆w7RsINNERs :2018/09/29(土) 17:28:49
>>56

「―――っ、何だ……!?」

 脳髄が突然痛みを発する。深淵を覗き込んで墜ちていきそうな危険な感覚―――本能が
何かを急き立てている。内側から誰か語りかけてくるようなむずがゆさに、反射的に後ろ
へ飛んで距離を取った。二間に及ぶ長い跳躍―――着地でブーツが高く音を立て、響く。

 ―――動揺と痛覚を押し込むように呼吸し、全身に酸素を巡らせる。

 私は、何を幻視したのか。
 死の線の先にあるモノ―――それは、果たして何を意味するのか。
 この眼はモノの死だけではない、この世ならざるカタチも映し取り、その死を視る魔眼
なのだと、橙子は言っていた。それを信じるのなら、あの一瞬だけ見えた姿と、髪の一本
ほどにか細い黒の線は、この男を無理矢理に活かし続ける何者かを示すものか。
 だが、全身の細胞が警鐘を鳴らすようなこの重圧は―――生物としての格の違いなのか。

 解からない。だが解かろうとすればそれは死を意味する。ここは死線なのだ。
 けれど、だから―――息を整えてナイフを構え直した。
 トラップにも限りがある。命にも限りがある。なら、どちらも恐れるべきことではない。

 ―――本当に恐ろしいのは。
 私が、永遠に、中途半端なまま、全てが、過ぎ去っていくことだけ。
 故に、しばし手と足を止めなければならない。

「少し視えたぞ―――その呪い、何処のバケモノが仕組んだ」

 問う。
 踏み込まねばならない。それが殺害という現象には必要だ。
 凪の時間、僅かな空白。そこに滑り込む私の言葉。時間にして三秒足らず。
 話が通じるかどうかは賭けだが―――そこを迷うような私ではなかった。



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