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- 321 名前:青銅名無し客:2005/07/20(水) 21:44:21
- ♥
- 322 名前:青銅名無し客:2005/08/25(木) 13:31:57
- あ〜テステステス
- 323 名前:青銅名無し客:2005/08/28(日) 23:15:18
- >>21
なんだそれは?
死への憧れの表明か?喜んで手伝ってやるぞ
- 324 名前:青銅名無し客:2005/08/28(日) 23:47:59
- >>23
思わないな。
そもそもわれらの紋章に限らず、紋章のモチーフによく使われる有翼竜、一角馬などの幻想の生き物は全て人が滅ぼしたモノであろ?
そもそも紋章に選ばれたのは八頸竜の姿に八つの門を持つ帝都
の姿を投影したからだ。
八頸竜の運命に憧れたわけじゃないぞ。
それに、母都市が生み出した神話において礎になった八頸竜がわれらの象徴として甦るのはある意味象徴的であろ?
- 325 名前:青銅名無し客:2005/09/06(火) 20:08:27
- test
- 326 名前:青銅名無し客:2005/09/07(水) 01:13:50
- 島の一番の高台に立って、俺は沈む夕日を見ていた。
黄色い球体が、水平線でゆがんで潰れ、消えてゆくそのさまと、
夕日が作る長い長い影が、島のすべてを覆い、飲み込み、おぼろな闇に沈んでいく様を、見ていた。
黄色い輝きのすべてが没し、闇が完全に辺りを覆ってようやく、
俺は自分が己でも気づかぬうちに、食い入るようにそれに見入っていたことに気づいた。
静かに、息を吐き出す。
――途端、血臭が鼻腔を刺した。
丘から見下ろすだけで、死骸がゴロゴロと目に入る。
日が暮れるのを待っていましたとばかりに、そいつらは蠢きだしていた。
この島は、今、どこでもこうだ。地相は最悪、積層都市の最下層並み。
生者と死者と魔物を一緒くたにし、幾人もの贄を得て、
殺し合いという名の祭祀を執り行おうとしている輩がいるらしかった。
俺も贄のうちの一人というわけだ。
気に入らないが、まあ、いい。俺は俺で、俺のゲームを始める。
生者をすべて吸血鬼にしてしまえば、そいつらはさぞ慌てるだろうさ。
「マクスウェル、休暇をやるよ」
その呟きを開始の合図に、俺は獲物を求めて闇の中へと踏み入った――
- 327 名前:青銅名無し客:2005/09/07(水) 01:14:27
- 最初の獲物はグールに襲われていた。
森の外れ、屍人に追われて運悪く崖下に追い詰められていたのだった。
おやおや、かわいそうに。
見れば整った顔立ちだ。ここまで走り続けてきたのだろう。
こわばった表情、押し殺された怯えの表情。
こりゃ、味のわかんねぇグールにくれてやるのはもったいない。
グールをどかしてコナかけようかと思った瞬間、
気合の声がほとばしった。
――おやおや。
追い詰められた鼠の逆襲だ。振り下ろされた木刀の一撃は、グールの頭骨をものの見事に砕いていた。
頭部をほとんど破砕させ、動きを止めた死者を前に、少女は荒い息をついていた。
木刀を構えた姿がなんとも様になっている。
凛々しいねぇ。
俺は足音をしのばせ、いまだ呼吸を整えている少女の後ろに回った。
驚かせたくなったのだ。
「大丈夫かい、おじょうちゃん?」
彼女の背後、数歩のところで俺はそう、声をかけた。
- 328 名前:◆LOSJACkEtA :2005/09/07(水) 03:13:00
水平線の彼方へと沈んでいく太陽を背景に、メリーベル号はようやく、軍艦島と呼ばれる
小島の港へと、進入を果たしていた。
船から渡されたスロープを伝い、車体をゆっくりと、船上から港へと進ませる。
ハンドルを握りながら、上陸作業を続けている船員に視線を走らせる。
が、目に入る表情はすべて、判で押したかのように引きつり、どこかおびえを感じさせるも
のばかり。まあ無理もないとは思う――上陸前に、あんな話をされてしまっては。
事前にされていた説明通り、つい先日まで誰かに管理されていた形跡はあるものの――
しかし、施設周辺ににぽつぽつと転がっている、身じろぎひとつ無い人影が、その状況が既
に過去のものであると、明確に物語っていた。
ぱっと見た限りで、五から六。
恐らくはこの港の施設要員だったのだろうが、季節は夏、既にそれらが腐敗を始めている
現実を見てしまえば、そんなことを確かめる気も起きない。
潮に混じって鼻をつく異臭に顔をしかめつつ――しかし、やはり信じられないという思いも
含めて、知らず俺は独りごちていた。
「この様子じゃ、本当に全滅してるっぽいな――いやはや、一体何が起こったんだか」
今回の仕事は、かみ砕いて言えば『調査』だ。
とある企業の所有する――していた小島の調査。元々はどこかの政府機関が研究施設
として使っていた島を買い取り、倉庫として使っていた云々……と言うことだったが、正直な
所、あまりよく覚えていない。
まあともかく、その島が、二週間ほど前に突如連絡を絶ったのだそうだ。
何かあったのかと不審に思い調査隊を派遣したものの、それ自体連絡を絶ち機関もせず。
しまいには、島上空からの航空偵察にまで乗り出したらしい。
そして彼らは――撮影された写真を見て仰天した。
島全域に渡って、無数の死体が転がっていたのだ。倉庫移設、湾岸施設の運営に当たっ
て、島には数十人からの職員が生活していたと言うことだが、状況から見て既に全滅してい
る事は間違いがない。だが、一体何が原因で――――
事態を重く見た社の上層部は、第三次の調査隊派遣を決定する。
だがそれは、前回、前々回のような、定期査察に毛が生えたようなものではなく――
重火器の携行すらも行う大がかりな代物だ。
そして俺は、その携行される『重火器』のひとつとして雇われ、社内から島の様子をうかがっ
ている――と、そんなところだ。
船員達とは違い、依頼を受けるときに予め、島の置かれている状況を聞いてはいたが……
実際に目の当たりにすれば、正直なところ驚きしか出てこなかった。
――が。
そんな驚きは、次の瞬間、粉々に吹っ飛んだ。
「……これは」
思わず車外に降りて、まじまじと観察したい衝動に駆られる――がそれは今、決してやっ
てはいけない行動なのは明白だった。
今、眼下に転がる死体。
そこには――前進が、なにものかに食い荒らされた痕跡が、まざまざと刻まれていた。
何が起こったのかは、判りすぎるぐらい明白だった。つまり。つまり、この島は――!
反射的に、急ごしらえで車内に設置された無線に怒鳴る。
「<メリーベル>、聞こえるか!? こちらはスタインバーグだ、島には絶対に降りるな!
早く離脱の準備を。此処はもう、『汚染』されて――!」
だが、言葉はそれ以上続かなかった。
もっとも恐れいていた事態が――目の前で、起こってしまっていたからだ。
先ほど見下ろしていたはずの喰われかけの死体が――立ち上がり、暗い眼窩をこちらに
向け、じっと、俺を見つめていたのだ。
「――――!」
同時に。
船の方から、散発的な炸裂音――銃声だ――が轟いている。
はっと、海の方に目を向けた。
太陽は既に沈みきり、その痕跡は水平線をうっすらと染める、紫色の帯だけだ。
「冗談――!」
反射的にギアシフト、キャリアをバックさせる――が、背後からの鈍い衝撃に、無理矢理
それは中断された。
のぞき込んだミラーには、やはりどす黒い血痕で全身を染めている、表情のない死者の
姿が――!
「喰屍鬼……!」
遠くから響く銃声と、無線から垂れ流される空電ノイズ。何が起こっているのかは、もはや
考えるまでもない。
「……邪魔だ!」
ドアを蹴り開けて、一番最初の死体を吹き飛ばす。
既に身のこなし、なんて単語は衣のととともにどこかに忘却していたらしいグールは、
抵抗らしい抵抗もせずに地面へと崩れ落ちる。
同時、抜きはなった拳銃を動く死体の頭部へと照準、立て続けに45マグナム弾を3発、
一気に叩き込む。粉砕された頭部から凝固仕掛の血液と、腐りかけの脳漿がコンクリート
へとぶちまけられるが、悠長にそんなものを見ている暇はない。
びくびくと、痙攣を続ける死体をそのままに、ギアシフト、アクセルを踏み込む!
急加速した車体に引き摺られ、キャリアコンテナ部に取り付いたグールが地面に削り取ら
れていく。さらに加速、いよいよ耐えられなくなったのか、取り付いていた三体の死体は、
車体表面に腐った皮膚だけを残して、無様に地面へとたたきつけられていた。
とりあえず息をつく――が、安心なんてしていられない。
「くそったれが――何が事故だ」
恐らくは。島に滞在していた全職員が、同じ事になっているのだろう。
そして俺達よりも前に、島に訪れたという調査員達も。
この島は――吸血鬼に、汚染されている。
(初期位置:A-3 湾岸部→B-3 居住区へと移動中)
- 329 名前:◆HORAIgd3qU :2005/09/07(水) 21:38:53
ひどく薄暗い月だけが見える曇り空の下、ほとんど光の差さない夜の竹林は何処までも
無気味だった。
すでに妖怪が跳梁跋扈するはずの領域は恐ろしいほど静かで、動くものが全く見えない。
まるで全てが息を潜めて眠っているようにも思える。
ただ、その例えはどこか正しくて、どこか間違っている。
息を潜めているのは確かだ。しかし、眠っているのではないだろう。
―――私たちに怯えているのかもしれないのだから。
足場と視界の悪い中、私は駆けながら苦笑した。
確かに怯えられて当然かもしれない。私たちがいつもこの竹林で夜中にやっていることに巻き込まれてしまえば、死体か灰しか残らない。低級の妖怪であればなおさらだ。
「……にしても、何処まで引っ張っていく気よ、あいつ」
かすかに速くなっている息の合間を縫って呟く。
輝夜。私の怨敵であり、月より来た姫君。そして今宵、いつものように殺しあう相手。
その姿はすでに見えていない。すっかり闇の中である。
その後を正確に付いていけるのは、気配を辿っているからだ。
ただ、おかしなことに。まったく立ち止まる様子はなかった。
「まったく、どういう了見なのよ。疲れるじゃない」
というより、さすがに疲れた。
だから私は一際強く地面を蹴り、“翼”を広げた。
赤く紅く輝く、燃え盛る不死鳥の羽根。
同時に暗かった森が赤く照らされ、さらに速く景色が流れていく―――
と、そこで気づいた。
「………ありゃ?」
空中で急制動をかけて、地面に降りて燃え盛る翼をしまった。
―――竹林じゃない。
景色が何時の間にか、鬱蒼とした森へと変わっていた。踏みしめる土の柔らかさは、腐葉土が積もっているからだろう。
どういうことだろうか、と考えて、すぐに至った。
「………やられた」
そう、私は結界の外へと出てしまっていたのだ。
たぶん、こうだ。
偶然結界の綻びを見つけた。面白そうだったので私が飛び込むように仕向けた。
すごい。たった一行で済んだ。
「……あーいーつーはー!!」
おもわず地団駄を踏むが、それでどうにかなるわけでもない。
急に景色が変わったところをみると、どこか別の場所に飛ばされたように見える。
潮の薫りがかすかにする。海沿いか小さな島、だろうか。
「まあ、とりあえずはどうにか戻んないと―――」
むう、と眉根を潜めて周りを見渡す―――
酷く、嫌な感覚。
「……なによこれ。死体だらけってことなの。それに……この昏い気配」
かすかに感じる死臭。そして―――覚えのある妖気。
思い出す。
これほど弱いものではなかったが、似たようなものを以前感じたことがある。
つまりは―――今現在、この場所には吸血鬼が跋扈している。現在進行形で。
「冗談……。ついてないにもほどがあるわ」
苛立ち混じりに呟いて、現在の自分の戦力を確認。
攻撃用の札と投擲に使う小柄の数は―――多少減っているが弾幕張れる程度には十分。体力もほとんど残っていて、スペルカードも三枚ほどある。この場から離れるには十分すぎるくらいだ。
「よし。なんとか帰らないとね―――幻想郷に」
一つ頷いて、私は駆け出した。
とりあえずは周囲の様子を把握できる、開けていそうな場所へ。
(初期位置:B-1 森林地帯 B-2 空港跡へと移動中)
- 330 名前:◆HORAIgd3qU :2005/09/07(水) 21:42:35
ひどく薄暗い月だけが見える曇り空の下、ほとんど光の差さない夜の竹林は何処までも
無気味だった。
すでに妖怪が跳梁跋扈するはずの領域は恐ろしいほど静かで、動くものが全く見えない。
まるで全てが息を潜めて眠っているようにも思える。
ただ、その例えはどこか正しくて、どこか間違っている。
息を潜めているのは確かだ。しかし、眠っているのではないだろう。
―――私たちに怯えているのかもしれないのだから。
足場と視界の悪い中、私は駆けながら苦笑した。
確かに怯えられて当然かもしれない。私たちがいつもこの竹林で夜中にやっていること
に巻き込まれてしまえば、死体か灰しか残らない。低級の妖怪であればなおさらだ。
「……にしても、何処まで引っ張っていく気よ、あいつ」
かすかに速くなっている息の合間を縫って呟く。
輝夜。私の怨敵であり、月より来た姫君。そして今宵、いつものように殺しあう相手。
その姿はすでに見えていない。すっかり闇の中である。それでも迷わずに後を付けられるのは、かすかに残った気配―――魔力だの妖気だのを辿っているから。
ただ、おかしなことに。
あいつにまったく立ち止まる様子はなかった。
「まったく、どういう了見なのよ。疲れるじゃない」
というより、さすがに疲れた。
だから私は一際強く地面を蹴り、“翼”を広げた。
赤く紅く輝く、燃え盛る不死鳥の羽根。
同時に暗かった森が赤く照らされ、さらに速く景色が流れていく―――
と、そこで気づいた。
「………ありゃ?」
空中で急制動をかけて、地面に降りて燃え盛る翼をしまった。
―――竹林じゃない。
景色が何時の間にか、鬱蒼とした森へと変わっていた。踏みしめる土の柔らかさは、
腐葉土が積もっているからだろう。
どういうことだろうか、と考えて、すぐに至った。
「………やられた」
そう、私は結界の外へと出てしまっていたのだ。
たぶん、こうだ。
偶然結界の綻びを見つけた。面白そうだったので私が飛び込むように仕向けた。
すごい。たった一行で済んだ。
「……あーいーつーはー!!」
おもわず地団駄を踏むが、それでどうにかなるわけでもない。
急に景色が変わったところをみると、どこか別の場所に飛ばされたように見える。
潮の薫りがかすかにする。海沿いか小さな島、だろうか。
「まあ、とりあえずはどうにか戻んないと―――」
むう、と眉根を潜めて周りを見渡す―――
酷く、嫌な感覚。
「……なによこれ。死体だらけってことなの。それに……この昏い気配」
かすかに感じる死臭。そして―――覚えのある妖気。
思い出す。
これほど弱いものではなかったが、似たようなものを以前感じたことがある。
つまりは―――今現在、この場所には吸血鬼が跋扈している。現在進行形で。
「冗談……。ついてないにもほどがあるわ」
苛立ち混じりに呟いて、現在の自分の戦力を確認。
攻撃用の札と投擲に使う小柄の数は―――多少減っているが弾幕張れる程度には十分。体力もほとんど残っていて、スペルカードも三枚ほどある。
この場から離れるには事足りるだろう。
「よし。なんとか帰らないとね―――幻想郷に」
一つ頷いて、私は駆け出した。
とりあえずは周囲の様子を把握できる、開けていそうな場所へ。
(初期位置:B-1 森林地帯 B-2 空港跡へと移動中)
- 331 名前:◆HORAIgd3qU :2005/09/07(水) 21:44:49
ひどく薄暗い月だけが見える曇り空の下、ほとんど光の差さない夜の竹林は何処までも
無気味だった。
すでに妖怪が跳梁跋扈するはずの領域は恐ろしいほど静かで、動くものが全く見えない。
まるで全てが息を潜めて眠っているようにも思える。
ただ、その例えはどこか正しくて、どこか間違っている。
息を潜めているのは確かだ。しかし、眠っているのではないだろう。
―――私たちに怯えているのかもしれないのだから。
足場と視界の悪い中、私は駆けながら苦笑した。
確かに怯えられて当然かもしれない。私たちがいつもこの竹林で夜中にやっていること
に巻き込まれてしまえば、死体か灰しか残らない。低級の妖怪であればなおさらだ。
「……にしても、何処まで引っ張っていく気よ、あいつ」
かすかに速くなっている息の合間を縫って呟く。
輝夜。私の怨敵であり、月より来た姫君。そして今宵、いつものように殺しあう相手。
その姿はすでに見えていない。すっかり闇の中である。
それでも迷わずに後を付けられるのは、かすかに残った気配―――魔力だの妖気だのを
辿っているからだ。
ただ、おかしなことに。
あいつにまったく立ち止まる様子はなかった。
「まったく、どういう了見なのよ。疲れるじゃない」
というより、さすがに疲れた。
だから私は一際強く地面を蹴り、“翼”を広げた。
赤く紅く輝く、燃え盛る不死鳥の羽根。
同時に暗かった森が赤く照らされ、さらに速く景色が流れていく―――
と、そこで気づいた。
「………ありゃ?」
空中で急制動をかけて、地面に降りて燃え盛る翼をしまった。
―――竹林じゃない。
景色が何時の間にか、鬱蒼とした森へと変わっていた。踏みしめる土の柔らかさは、
腐葉土が積もっているからだろう。
どういうことだろうか、と考えて、すぐに至った。
「………やられた」
そう、私は結界の外へと出てしまっていたのだ。
たぶん、こうだ。
偶然結界の綻びを見つけた。面白そうだったので私が飛び込むように仕向けた。
すごい。たった一行で済んだ。
「……あーいーつーはー!!」
おもわず地団駄を踏むが、それでどうにかなるわけでもない。
急に景色が変わったところをみると、どこか別の場所に飛ばされたように見える。
潮の薫りがかすかにする。海沿いか小さな島、だろうか。
「まあ、とりあえずはどうにか戻んないと―――」
むう、と眉根を潜めて周りを見渡す―――
酷く、嫌な感覚。
「……なによこれ。死体だらけってことなの。それに……この昏い気配」
かすかに感じる死臭。そして―――覚えのある妖気。
思い出す。
これほど弱いものではなかったが、似たようなものを以前感じたことがある。
つまりは―――今現在、この場所には吸血鬼が跋扈している。現在進行形で。
「冗談……。ついてないにもほどがあるわ」
苛立ち混じりに呟いて、現在の自分の戦力を確認。
攻撃用の札と投擲に使う小柄の数は―――多少減っているが弾幕張れる程度には十分。
体力もほとんど残っていて、スペルカードも三枚ほどある。
この場から離れるには事足りるだろう。
「よし。なんとか帰らないとね―――幻想郷に」
一つ頷いて、私は駆け出した。
とりあえずは周囲の様子を把握できる、開けていそうな場所へ。
(初期位置:B-1 森林地帯 B-2 空港跡へと移動中)
- 332 名前:青銅名無し客:2005/09/07(水) 22:22:35
- 茂みを掻き分けて、森の中へ飛び込む。
後ろは見ずに走る。
枝が頬を打って、草の葉が腕に赤い線を引く。
それでも走って、転がっていた1m程の枝を拾うと、多少心の余裕が出来た。
「……何、あれ……一体何なの?」
荒く、喘ぐように息を吸いながらようやくそう口に出す。
人に見えた。見えたけれど、あれは違う。
皮膚は腐れ落ちて赤黒い肉が露出していて、目は白く濁っていた。
爪は剥がれ、崩れた唇の間から疎らに抜け落ちた歯が覗いていた。
どう見ても、生きていなかった。
動く死体……俗に言うゾンビなのだろうか。
考えてみれば、私も映画や何かと同じように襲われている。
多分、捕まれば結末も同じだろう。
「はあっ、はっ……!」
追われるままに逃げて、森を駆け――視界が急に開ける。
自然と足は止まった。
「崖……?!」
梢の下からふらふらと進み、辺りを見回す。
……森伝いに逃げるか、それとも迂回してもう一度森に入るか。
逡巡していると、がさがさと音が聞こえた。
反射的に、手の中の棒を握り締める。
何とか怯ませて、その隙に振り切れれば――――
祥子の所へ早く戻らないといけないんだから。
覚悟を決めて、青眼に構えた枝を動く死体に向けた。
「――――はぁっ!」
無防備に伸びてきた右腕を狙って、加減せずに打ち込んだ。
最悪でも骨折で済む、そう考えて。
それが甘い考えだったのは、すぐに思い知らされた。
「っ――嘘!?」
まともに入ったはずなのに、動きは止まらない。
左腕を枝で払って、後ろに距離を取る。
声が掛かったのは、その瞬間。
驚きよりも先に危機感に襲われて、私の体は振り向きざまに枝を打ち振るっていた。
- 333 名前:『深緑の智将』グリニデ(M) ◆BECoOlA3c2 :2005/09/07(水) 22:58:00
- ――――満点の星空。
それが私がこの夜に、最初に見た光景だった。
「……ここは、一体何処なのだ……?」
私の勢力圏であった“黒の地平”は、配下の魔物が吐き出す黒煙によって
既に20年以上、陽光も、月光も差し込む事がない。
「『地脈の扉』の暴走か……?」
魔人が使用する、遠距離を行き来するための転移装置。
それが地脈の扉だ。
だが、私の覚えている限りでは地脈の扉を使ったのは大分前の事。
最近は『世紀の大偉業』の実現に向けて“あの部屋”に篭っていたのだからあり得ない。
「……ダンゴール、ダンゴールは居ないのか?」
自分に付き従う腹心の魔物の名を呼ぶ。
だが答えは返ってこない。
ややもすると、把握できぬ状況に対し湧き上がる、己の中の興りに気付く。
「落ちつけ……このような時こそBe Cool…Be Coolにだ…!」
興奮を、怒りを感じる時私はこう唱える。
理性的に、節度有る知性的な魔人として振舞いつづけるために。
そして、あの“獣”の姿を見ぬ為に……!
………ここが誰の勢力圏かは知らぬが、人跡がある以上は魔物も魔人も居る事には違いないだろう。
―――そして、我等のゲームの標的である人間も。
「フ、フフッ……予想さえ出来ぬ状況ではあるが、この私の智略の限りを尽くし、戦果を挙げ帰還すれば
『ゴール』もより近付くに違いない……!」
―――魔人の指導者にして、究極の栄光。それが八輝星だ。
幾度と無く夢に描き続けたゴールへ、どのような手段を用いてでも辿りつく。
―――それこそが、全ての魔人の目的にして、存在理由なのだから。
(初期位置:C-1 森林地帯→B-1森林地帯に向けて移動)
- 334 名前:青銅名無し客:2005/09/08(木) 00:08:49
屍が月明かりの下に集い、その屍を貪る塵。
それを目にした途端、頭の中では殺せと言う爆音が上がる。
血が滾る、血が暴れる、血が表へと溢れそうになる。
理性の枷を頑丈に。本能を殺げ。蛇を駆逐し勾玉を胸に。
屍が物語るのは惨劇の幕開け。
踊る役者は本能に襲われ続ける獣。
塵が向かってくる。生きた血肉でも欲しいのだろうか。
餌と狩人を間違えるとは、何処までも愚かな塵の群れ。
右手を―――それが当然だと言うように―――振るい、一つの塵を片付ける。
真紅の噴水は狂ったように水を吹き上げ続け、狂宴の開始を告げる雨となる。
左手は紫炎の帳を降ろし、塵の焼ける匂いが充満していく。
悲鳴は聞こえない。ただ聞こえるのは己が内に眠る声。
――――――――――――――舞台の幕は、上がったばかりだぜ?
久しぶりに表に出させてくれよ。『お前』だけいっつも満足しやがって。
『俺』にも血を、肉を、悲鳴を、くれよ。『お前』だけがそれを好きな訳じゃないんだ。
『俺』にも殺させろころさせろコロサセロ殺―――――――――――――――
「貴様は黙っていろ…そしてこれは、全て俺の物だ」
それにしてもあの女。何が楽な仕事だ。
血に染まるような仕事は楽な仕事とは言わんと事を、報酬を受け取る際に教え込もう。
調査結果はオロチではない異常事態。こう告げればそれで終わり。
まあ兎に角、此処から出ねばならんか…
自分の中に篭るのは一瞬。次の塵の処理。処理してはまた次。
これも業務の一環。だから―――殺して、殺して、殺して、殺して、殺す。
本能と理性が合致していれば、血に狂う事も早々あるまい。
暴力を振るう吐き気は問題だが、それは成功報酬に上乗せすれば良い。
そう言えば事態が異常ならば治めて来いとも言っていたか。
面倒だが、殺し続ければ良いだけ。ならば簡単だ。
月明かりの下、紅く染まり続ければ良いのだから。
「クックックックックッ…ハッハッハッハッハッ…ハァーハッハッハッハッハッ!」
―――――――――――――――結局同じだな、『俺』も『お前』も
(B-2で待機)
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