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■ RHマイナス板専用テストスレッド

336 名前:宇佐見 蓮子 (M) ◆0mM.SPARK2 :2005/09/08(木) 04:57:36
「……う、ん……?」

……暗がりの中で、目が覚めた。
あれ、電気どこ……っていうか、そもそもうちのベッドじゃないし。

ごつごつとした地面、辺りに響く声。
やがて目が慣れてきて……ここ、洞窟?
あれ、なんでこんなところで寝てるんだっけ……?
確か、えーっと。


 メリーとの待ち合わせに遅れそうだった、いつも通り。
 空を見ぃ見ぃ、時間を確認……うわ、予定より五分も遅れてる!
 遅刻遅「刻〜!」……はい?

 声がしたので隣を見れば――――うさ耳。うさ耳少女。おんなじように走ってる。
 いや何この未知との遭遇。いつ境界を割ったって?
 とりあえずなんだか、同じ方向に走っている。まさか目的地が一緒って訳もないだろうけど。
 でも必然、足の速い向こうを追いかける形になって、そして同じ角を曲がって
 そして、そしたら、足下が――――?


……なんか、はめられた?
落とし穴に落ちたような気がする。いやあんな道のど真ん中に落とし穴なんてあるはずないんだけど。
やっぱり知らない間に境界を越えてた? 私じゃメリーみたいに見えないからなぁ。
でもそうすると、ここは一体?
……とりあえず、外に出てみよっと。

そんなわけで私は、その洞窟? の外に出てみた。
まあ、この雰囲気なら森とかでも広がってるんだろうって思ってたわ。深く考えてなかった。
実際、その予想は当たってたし。


――物言わぬ死体と、物言う死体というおまけ付きで。


なによ、これ。なんの冗談よ。
それとも夢? メリーみたいに現実に繋がる夢でも見てるっての?
いやまさか。そんなはずはないわ。
でも、実際に目の前にいるこれは……


――逃げよう。
そうだ逃げよう。こんなものに付き合ってられない。
早くメリーのところに行かないと。このままじゃ大遅刻だもの。
地を蹴って駆け出す。駆けながらどうにか空を見上げる。
星が瞬いてる、月が照らしている。すなわち今は夜で、そして……


……時刻は午後十時前。ここは軍艦島と呼ばれる孤島。
手元にあって役立ちそうなのは、いつも持ち歩いてるカメラだけ。

たったこれだけで――――私は、逃げる。


(開始位置、A-1「坑道跡入口」→移動予定、B-1「森」)

337 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2005/09/08(木) 12:22:19

「試作兵器での降下作戦?」

 朝一で上の人間に呼ばれ、ノコノコやってきたアタシに命ぜられたのはそんな任務への従事だった。
「そうだ。次世代主力戦車の降下強襲実戦試験をやってもらう」
 どっしりとしたデスクに両肘をついて口元で手を組み、佐官クラスのお偉いさんは言った。
「お言葉ですが、あの機体は既に実戦を経て『現主力戦車に劣る』との結論が出ています。そんな機体で降下強襲作戦など、私に死ねとおっしゃるので?」
 そう、アタシは実際にその機体に乗ったことがある。ロールアウト直後に敵に鹵獲された機体を奪還する際に搭乗した。
 酷い性能だった。見掛け倒しもいいところで、「これなら初期型のメタスラの方がマシだぜ」なんて声もあがった。
「確かに。『新型なのに現用機以下の役立たず』と酷評された機体だ。…だが、この機体は違う」
 自信ありげにお偉いさんは言った。
「違う?」
「マルコ・ロッシ少佐を筆頭とする君ら四人の酷評を受けて兵器開発部が再設計を行ったのだ。コンセプトは同じだが他は完全に別物だよ」
 誇るように言うお偉いさん。どうだか。開発者サイドの言葉は額面どおりにとっちゃいけないってのが現場の声だ。
 例えばドロップショットとかサンダークラウドとか。
「欠点は全て改善されている。あとは運用して実戦データを取り、さらに煮詰める段階だ」
 で、その実戦における生贄にアタシが選ばれたわけだ。開発部め、よっぽど扱き下ろされたのが気に入らなかったんだな。
「これは正規の命令だ。納得いこうといくまいと君は命令に従わざるを得ない」
 お偉いさんのサングラスが光を反射する。どんな目でアタシを見てるのか窺えない。
「作戦前に技術士官から説明を受けておきたまえ。話は以上だ」
 そう言ってお偉いさんはアタシへの命令伝達を終えた。



 そして今、アタシは投下用パレットに固定された新型メタルスラッグの中で発艦を待っている。

 降下予定地より離れること数十キロ。洋上に浮かぶ輸送艦。
 スラグフライヤーに投下用パレットと新型とアタシを載せ、作戦開始と同時にテイクオフ。
 あとは実戦の経過をコーヒー片手に観戦。戦闘終了後におっとり刀で回収。それが仕事らしい。

「うーん…これ本当に飛べるんでしょうか? 発艦失敗で海にドボンなんて嫌ですよ」
 通信機から不安げなフィオの声。スラグフライヤーのパイロットはフィオだ。
 降下予定地までアタシを運び、必要があれば支援を行う。
 それが今回のフィオの仕事。
「重量配分とフライヤーの出力計算ぐらいやってるでしょ。大丈夫よ。…多分」
「多分ってなんですかぁ!」



 作戦開始時刻になった。

 ガッチガチに固定した荷物を背にスラグフライヤーは無事に発艦。
 発艦時にフィオは割と本気でビクビクしていた。

 投下予定地点は軍艦島、座標は『B-1』の森林地帯だ。

 南方より島へ侵入。妨害は今のところなし。
「なんだってこんな辺鄙なところで実戦ができるんだか」
 軍艦島って立ち入り禁止じゃなかったっけ? なんでグールが湧くのよ? どうしてそれを察知できたわけ?
 疑問は尽きない。
「そもそも実戦試験なのに相手がグールってどうなのよ」
 まあ、あんまりヤバイ奴が相手だと今度は帰ってこれなくなるかもしれないんだけどさ。
「油断してると痛い目見ますよ。…もうすぐ降下地点です」
 通信機からフィオの声。
「油断なんかしないわよ」
 簡単にチェックを行う。異常なし。
「降下高度まであと40秒です! 急いでチェックを!」
「もう済んでる」
 口にガムを放り込む。風船一つ。
「降下高度です! 投下します!」
 フィオの声とともに爆砕ボルトが炸裂。
 結合を解かれた投下パレットはスラグフライヤーと切り離され、たちまちのうちに地上に落ちていく。

 ―――はずだった。
 がこっ、という嫌な音。何かがフライヤーに引っかかったらしい。
「こ、高度がどんどん下がっ! いやあああ落ちるぅうううううう!!!」
 フィオの通信機越しの悲鳴がキンキン響く。
 アタシも冷や汗をかきながらスラッグのモニターをオン。外部情報を収集。
 ワイヤーが一本、半千切れでフライヤーに引っかかっていた。
「こいつか!」
 ハッチを開いて身を乗り出す。高空の夜気と風がびゅうびゅうと吹き付ける中クラシックマーダーを抜いた。
 銃声三つ。 半千切れワイヤーから全千切れワイヤーへ。
 アタシは急速落下を始める機体から危うく投げ出されそうになりながらも辛うじて堪え、ハッチを閉めた。
 程なくしてパラシュートが展開され、一気に減速がかかる。
 地上が近づき、パレットで地を滑りながら着地。爆砕ボルトが再び炸裂し、今度は用済みのパラシュートを切り離す。
 パレットが止まったところで三度爆砕ボルトが弾け、新型メタルスラッグを拘束から解き放つ。

「機関始動! 作戦開始!」
 エンジン音を響かせ、鋼の塊が地上を疾駆する。

 ……やべ、降下地点ズレまくり。

(初期位置:B-1「森林地帯」(降下失敗)からA-1「坑道跡入口」付近に降下完了)




338 名前:◆mSTYrlov6I :2005/09/08(木) 16:14:04
 人工の光が無い夜。人以外のモノしか、音を立てない森の中。
 一寸先は闇、と言われる。
 人は闇に灯りを点し、駆逐してきた。なぜなら見えないと云うことは、人間にとってとても恐ろしいことだったから。

「えー、うなぎー、八目鰻だよー」

 人の畏れる闇夜の静寂を台無しにしながら、人の畏れる妖怪が月明かりの下を練り歩く。

「混じりモノもあるけど、取りあえず夜盲には効くよ〜。ビタミンAたっぷりだよ〜」

 すでに宣伝ですらない、堂々とした詐欺の告白。いや、これでは最早詐欺ですら有るまい。口上の意味を、考えてから
口にしているかすら疑わしかった。
 堂々とした犯罪の暴露を、がらがらと屋台が引きずられる音が追いかける。灯りなどどこにもなかったはずの視界に
近付くと唐突に現れた紅提灯には、力強い筆致で「八目鰻」と。

「効かなくても、私が夜盲を解除するよ〜。……おっかしいなあ、今日はお客が来ないや」

 この店主、種族を夜雀、名をミスティア・ローレライと称する。少女の形をしてはいるが、世紀を渡って生きる歴とした
妖怪だ。
 夜雀は歌で人を狂わせ、夜道に惑わせる。人の夜目を効かなくし道に迷わせる怪異が、夜目に効くと八目鰻を売っている
のだ。毒を撒いて解毒剤で儲けるようなものである。
 むしろ客が来る方が、本来おかしい。
 おかしいのだが、店はなぜか繁盛している。おかしな妖怪がやっている商売故に、おかしな事も起こるのかも知れない。

「ん、あれ?」

 ふと何かに気付いて、夜雀が辺りを見回す。忽然と居場所が変わっている。月の位置も、木々の位置も、そもそも生えて
いる種類からして異なっている。

「もー、私が道に迷ってどうするんだか。私は迷わせる方なのに〜」

 そうは言ってみたものの、居場所がどこだかすらさっぱり判らない。それでも先ほどまでいた場所と全く異なることは、
疑いようもなかった。なぜなら、

「むむ、こいつは臭いわ〜。ゲロ以下の匂いがぷんぷんするわ〜」

 こんな下品な匂いは、長らく嗅いだことがなかった。少なくとも幻想郷では、吸い殻をポイ捨てするようなマナーの悪い
者など覚えがない。

「んじゃここは外かな? って吸い殻に聞いてもしょうがないか〜」

 目の前を彷徨く吸い殻、喰屍鬼グールである。腐りかけ、あるいは腐りきった腐臭が鼻を突く。喰屍鬼からは、夜雀の姿は見えて
いない様子である。
 無数の羽音が集う。
 それらは夜に全くそぐわない、雀の群れだった。しかしその羽音の群れは、雀にそぐわぬ凶暴な光をその目に宿している。
 猛禽ですらない、魔物の視線。
 夜盲の領域であたり包み込ませていた使い魔たちは、どうやら一緒にここへと飛ばされたようである。夜盲の妖力も途切れ
ていない。

「こーら。吸い殻相手にがっつかないの〜。ちゃんとエサあげてないと思われるじゃない」

 夜雀は興奮している眷属へ、たしなめるように言葉を掛ける。

「慌てなくても、外ならきっと新鮮なのが手に入るわ〜。人口問題、ってやつの解決を手伝ってあげましょ?」

 そこで、ふと気付いたように屋台を覗き込む。

「……、まあ八目鰻も売りながらね」

 今日はまだ売れていなかった。


(初期位置:B-1「森林地帯」に出現)

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