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■ RHマイナス板専用テストスレッド

353 名前:バタリアン ◆DEAD.xOMy6 :2005/09/09(金) 16:04:43
「あぁぁぁぁ……」
「うぅぅぅぅぅぅぅ………」

海から吹き付ける湿度の高い風が運んでくるのは、苦痛に喘ぐ男女の声。
その数は幾十か、幾百か、それとも幾千か。
数えきれない無数の呻きが、喘ぎが、怨嗟の声が森の中を経巡って埋め尽くしていた。

声の主たち――樹々の間を彷徨い歩く無数の生ける屍たち――は皆、一様に『或る物』を、
彼らを際限なく苦しめ続ける死の痛みを僅かなりとも和らげることができる唯一つの物を求めて
今日も闇夜の中を徘徊する。


「……おぉぉ…あぁ…」

夜道を仄かに照らす月に向かって吠えるのは、青ざめた顔の作業服姿。
血の気というものをまるで感じさせない肌のあちらこちらには紫色の死斑が浮き、瞳には白い膜がかかっている。
作業服の大半を染める赤茶けた染みは、凝固して変色した血液に相違あるまい。



「欲しい……が…欲し…い……」

全身の骨が折れているのだろうか。
あちこちが奇妙な方向にねじ曲がり、奇怪な昆虫のような姿勢で地面を這う女が
ずるずると音をたてながら呻きを漏らす。


「…痛い…ヒュー…とても痛い……
 ……を……ヒュー…れ…」

腐敗し、爛れきった皮膚から腐汁の糸を滴らせた老人が、もはや殆ど機能しない声帯で
求めるものの名を呟く。
ヒューヒューと鳴る喘鳴に混じって発音される固有名詞、それは……


「……脳…みそ」

「……脳みそだ」

「……脳みそ! 脳みそをくれ!!」


生者の脳みそを求めて止まぬ屍達の妄執の声が、風に乗って樹間を吹き抜けた。



(現在位置:B-1 森の中を徘徊中)

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