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■ RHマイナス板専用テストスレッド

481 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/08(水) 01:21:32


 血の河を踏みしだき、凶々しき軍靴がゆく。半世紀余り昔と同じように。


 つい先ほどまでこの壮麗なホールには、人知の及ぶ限りの贅によって満たされていた。
 テーブルにはさほど手もつけられぬ豪華な料理が山と積まれ、バンドは優雅なメロディを奏で、
くるくるとルーレットが回っていた。
 注がれるそばから干される酒、さんざめく笑い声、そして着飾った女達。


 だが、もうそんなものはない。
 なくなってしまった。

 VIP達の半数は物言わぬ血袋と化して転がり、残りはこれから饗される血袋として縛り上げら
れ、別室に監禁されていた。
 最高級ホテルの豪奢をそのまま空に移し、南極遊覧飛行に飛び立った筈の巨大飛行船は、殺
戮の暴嵐に軋みを上げる獄門船と成り果てたのである。

 現在、紳士淑女の代わりに大パーティホールを埋め尽くしているのは兵士達だ。
 野戦服、親衛隊、空軍(ルフトバッフェ)。各所で鈍色に輝く紋章は――鉤十字である。
 そう、かつて欧州を征した狼たち、二十世紀最強の悪人軍団――ナチス・ドイツ。その筋金入
りの精鋭野郎どもであった。


 軍集団の眼前に設置された簡易お立ち台の階段を、軍靴の主―― 一人の美女が登っていく。
 ナチス親衛隊の軍服・軍帽に身を包み、マントを羽織った彼女――SS大佐にして大魔導師グ
ルマルキン・フォン・シュティーベルは、台上で腰のサーベルを抜き払うと、

「貴様らァ!!」

 溜め無しでいきなり叫んだ。
 スピーカー不要、ドーラ列車砲もかくや蛮声であり、口蓋帆即ちのどちんこ丸出しである。
 眉毛のない怜悧な美貌は顔中口となり、既に見られたものではない。


「――貴様らみんな、レン高原へ行きたいかァァァァァァァァァァッ!!」


 音の核爆発のような大佐の問いに、一拍置いて兵隊どもは「ヤァァァァァッ!」と応じた。

「奈落堕ちしてもレン高原に行きたいかァァァァッ!!」
「ヤァァァァァッ!」
「狂気山脈は怖くないかァァァァァッ!!」
「ヤァァァァァッ!」

 ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよーん――
 と船体は大いに揺れた。
 それは絶叫と足踏みとジェンカのステップと、意味もなく火を噴くエルマ・ベルケMP40短機関銃
の銃口や、導火線が抜かれたM24型柄付手榴弾(ポテトマッシャー)のヘイパス! パス! ドリ
ブルドリブル! な投げっこによる小爆発の所為であった。

 同僚の癖にグルマルキンと仲が悪いヘルマン・タッツェルヴルムだが、ついノリノリで追加武装
のドリル右腕を突き上げながら「守れ友を倒せ敵を!」などと叫んでしまい、マシーネン・ヴァル
キュリアことヴァルトラウテ中佐にはっ倒される、といった光景は微笑ましい部類である。

 つき合いきれん、という顔で壁際に引っ込んでいる面子もいた。レップ中佐やジェームズ・ホワン
ら、(表面上は)やや冷静な人々である。
 脱糞するヤン、尿漏れするルーク、前日に吟味済みのおやつ(三百円まで。バナナは含まない)
をはや貪り喰うレザード等々、一億総発狂化の様相を呈している者どもと比べるといかにもク
ールだが、なに、中身のマッドさは大差ない(多分)。


 そう、ここでは誰しもが基地の外にいるのだった。
 

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