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■ RHマイナス板専用テストスレッド

501 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/24(金) 16:19:06
 凍て付く寒風/不安な足場/エッフェル塔4つ分以上の高度―――全ての障害
を気にも留めず、死神の首魁達は悠然と歩みを進める。
 甲板を経て回廊へ。
 ホテルの大廊下と見紛う長大にして広大な道―――グルマルキンは幽鬼のよう
に音もなく/しかし強烈な存在感を発して前進する。

「ジーク・ハイル!」
 迎えるは百戦錬磨の兵士ども。勝利万歳の咆吼がゴンドラを揺らす。
 その数、数十。
 掲げられたナチス式敬礼が槍衾のように天へと伸びていく。
 回廊の左右両端に一列に並んだ親衛隊。
 一行は、モーゼが波を切り開くが如く、親衛隊の間を突き進む。

 行進の先頭―――肩で風を切って進むグルマルキン/ゲームのボス。

 次列―――グルマルキンに続いて進む女神が二人/右後ろには、大佐に付き
従うモリガン。膨大な規律を課す制服を持ってしても、彼女の肢体から発する
頽廃の波動を抑え込むことはできない/左後ろには清廉なる美貌を引き締め
前進するヴァルトラウテ。整いすぎた容姿はそれ故にあらゆる穢れを許さない。

 グルマルキン/モリガン/ヴァルトラウテ―――三人の共通点。
 鏡のように磨き抜かれた長靴。しわ一つない漆黒の勤務制服。汗と血と硝煙
とガソリン―――最前線に付きまとうあらゆる汚れ≠ニ無縁の美貌。
 そこが一行を歓迎する武装SSとは決定的に違った。

 続く第三列―――打って変わって不可解な身なり。
 親衛隊の制服は身に纏っていない。純白のドレスシャツの上に、蒼いチェニ
ックを着込み、その上から更にマントを羽織っている。衣服にはそれぞれ凝っ
た意匠が施されていた。―――まるで中世の宮廷魔術士の如き衣装。
 頭頂から真ん中で分けられた鳶色の髪。日焼けとは無縁の生っ白い肌。鋭い
目付きを隠すかのようにかけられたシルバーフレームの丸眼鏡。
 口元には皮肉気な笑み。誰もが抱く印象―――端正な顔立ちを持っているが、
磨く技を知らぬ研究者。
 前の三人と違い、背筋を伸ばすこともせず、ただ歩いているだけだ。
 両脇の親衛隊員から浴びせかけられる奇異の視線すら飄々と受け流していた。
 稀代の錬金術師レザード・ヴァレス/黒猫の魔術士と組んだ人でなし。

 更にレザードの背後/第四列から第五列。ここにきて隊列の様子は一変する。
 甲冑を着込んだ人型のドラゴン―――四匹の竜牙兵。
 レザードの魔なる眷属として使役されたドラゴントゥースウォーリアー。
 この異形の竜の役目は戦闘ではなく聖櫃の移送にあった。
 聖櫃―――四匹の竜牙兵が神輿の如く担ぐアカシヤ材で作られた箱。金環
の装飾が無数施され、中味は金張りの重い蓋によって閉じられている。
 蓋には、やはり金でできた二体のケルビム像が天使の翼を広げていた。
「縦2.5アンマ。横1.5アンマ。高さ1.5アンマ」の聖櫃―――失われたアーク。

 鍛え抜かれた武装親衛隊の表情に、緊張が漲る。
 意思の灯火が見えぬこの竜牙兵が、少し躓いただけでも聖櫃は起動し―――
飛行船はおろか、南極までも闇に堕としてしまうのだ。
 緊張を覚えぬ方が難しかった。

 そんな兵員どもの畏怖を意にも介さず、グルマルキン一行は歩を進めた。
 竜牙兵の後に続くのは、漆黒の勤務服に身を包んだ親衛隊だ。
 所々で、その制圧の様子を目で確認しながら進むグルマルキンは、やがて
パレードの終点―――操縦室へと辿り着いた。

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