■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 最新50 read.htmlに切り替える ファイル管理
■ RHマイナス板専用テストスレッド

502 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/24(金) 16:19:37
 グルマルキン率いる一行が操縦室に辿り着くと、そこでもナチス式敬礼の
歓待を受けた。グルマルキンは適当にそれを捌くと、室内に目を見回した。
 かなり広大な間取りで、外への視界は良好だ。
 外殻が円形に設計されているため180度以上の視野を確保していた。
 これとJG1(第一戦闘航空団)/新戦乙女隊/ロンギヌス13の哨戒報告を利用
すれば、レーダーでは捉えきれない外敵――つまり、我々の同類だ――の接近
を早急に補足できる。実に好都合の設計だ。

 室内は硝煙の臭いと血臭が鼻につく以外は死体一匹見当たらない。
 制圧は完璧に済んでいるようだった。
 素早い上に、優雅な仕事をしてくれる。確か操縦席制圧の責任者はヴァレン
タイン兄弟の兄、ルークのはずだが―――いた。
 白いダブルスーツに返り血一つつけず、鷹揚な態度でこちらを見ている。
 敬礼は無かった。それも当然だった。彼は党員でも部下でもないのだ。

「ご苦労だったなルーク・ヴァレンタイン。弟のように操縦室を血桶にして
くれていたら、モップを持って掃除させるつもりだったが……その必要は
ないな。安心したぞ。何せ弟のほうはだいぶ酷かった」

 くく、と喉を鳴らして短く嗤う。
 室内にいたはずの操縦士や通信士はみな殺されたか、生きたままで空に放り
投げられたのだろう。操縦席はメッサーシュミットの時同様、ルフトヴァッフェ
の吸血鬼操縦士が席についていた。

「よし。各員、所定の位置につけ」

 号令とともに一行が散会する。
 グルマルキンは後方の、おぞましき魔術の化生―――竜牙兵を引き連れて
聖櫃を護送する錬金術師に身体を向けた。漆黒のマントが翻る。

「レザード・ヴァレス。貴公も作業に取りかかるがいい。貴公は予定通り、
箱≠ェ安定するまでここから離れるな。制御と解除に全神経を傾けろ。まだ
箱≠ヘだいぶ不安定だ……無用な衝撃を与えるのは何としても避けたい」

 言われるまでもない―――と稀代の錬金術師は答えると、わざとらしく眼鏡
の位置を治し、グルマルキンから離れた。箱≠引き連れて。
箱=\――契約の聖櫃(アーク)。
 数多の強力なガラクタを詰め込んだと言われる最強の玩具箱。その正確な中味
は、多数の犠牲を払って手にした彼女とレザードですら未だ知り得ていない。
 分かることは、この箱が世界の理(ことわり)に干渉し、ねじ曲げるだけの力
を有していること。無用な接触は即座に崩壊を招くということ。
 その二点だけだ。その二点で十分すぎた。

「せいぜい気張るんだな、異界の術者。我が盟友よ」
 レザードの背中に声をかける。
「さすればブリュンヒルドの加護も得られよう。ヴァルハラへと続く死霊の門は、
すぐそこまで迫っている。―――あとは貴公の働き次第だ」

 グルマルキンの嗤笑―――レザードへの皮肉。
 錬金術師は肩を竦めることでそれに応えた。

「グルマルキン大佐」
 錬金術師との会話を切り上げた、その頃合いを縫ってハルトマンが声をかける。
「放送の準備が整いました。こちらです」
 言って、指先を向けたその先に―――

「ほう」とグルマルキンは口端を歪めた。

 広大な操縦室―――その一角に、真っ赤な天鵞絨の絨毯が敷かれていた。
 壁面には同色の隊旗が貼り付けられている。
 隊旗にはDeutschland Erwache(ドイツよ目覚めよ)の文字が刺繍で施され、
旗の中央には当然のように漆黒のハーケンクロイツが描かれていた。

「上出来だ。実にナチ的≠カゃないか。これだけ大袈裟にやれば、否が応でも
我々が何者か知ることになる。クククっ―――良いだろう、ハルトマン。カメラ
を回せ。我々が何者で、何を目指し、何を為そうとしているか、舞台主が観客
どもに説明してやる」

805KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50 read.htmlに切り替える ファイル管理

名前: E-mail(省略可)
画像:

削除パス:
img0ch(CGI)/3.1.10