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■ RHマイナス板専用テストスレッド

621 名前:『蓬莱の人の形』藤原 妹紅 ◆zPhoEniXzw :2009/01/26(月) 23:51:36


 硫酸雨+落雷=世紀末。
 なんか予想以上に大事になってきた気がする。
 確かに酸の暴力とは拮抗出来てるけど、雷落として蒸発させるなんて発想は無かった。
 悪い手ではないが……硫酸はどんなカタチになっても物騒なシロモノだ。濃縮されれば
されただけ致死性は増すし、完全に水分を飛ばしたとしても強力な発火剤になる。だから、
蒸発させたとしてもまだ安心は出来ない。
 一番いいのは石造りの建物に逃げ込むことだが……あいにくとそんなものはすぐ近くに
見当たらない。これでは三分を待つなんて不可能に近い。いや、向こうとて誰かは知らぬ
が神を味方につけているのだから何とかなるかも知れないが、楽観が出来る状況ではない。
 そんなことを考えていると―――水に濡れた足音が。
 そして、

「じゅくじゅくビリビリで、かわいそかわいそ、なのですよ。にぱー☆」

 うわ、すげぇムカつく。
 声も出せないから―――いや、念話は脳がやられてないから大丈夫そうだ。まあ、頭を
潰されてたら即蘇生だったからどっちにしろ関係ないんだけど。
 とりあえずこの惨状から逃げもしない間抜けの頭の中へ直接声を叩きつけてやる。
 そんな余裕があったらとっとと逃げろっつーの/本気でそう思う。
 もちろん、負ける気なんて最初からない。考えてもいない。

『―――うるせーな。見た目ガキなのに無理して顔で嘲笑って心で泣いてんじゃねーよ、
一人前に。お前を巻き込まないようにするにゃコレしかなかったんだよ。いいからあと、
三分でいい。時間を稼げ。こちとら硫酸で脊髄焼かれたぐらいじゃ死にやしねーんだよ。
三分経ったらからそれまで保たせろ』

 ……沈黙。雨音だけが響く。さすがに言葉を失ったのか。
 なんかものすごい顔をされてるが気にしないでおく。見た目死人に頭の中で喋られたら、
まあ仕方ない。それでも、こいつは見た目よか聡いからすぐに我に返ってくれるはずだ。
 意識を自分に戻し―――硫酸の雨の中、全身に意識を集中させた。
 ぴくり、と指が動く。雨が当たるたびに火傷みたいなことになるのはきついが、神経に
届いてはいないらしい。つまり、雨だけなら修復中の神経系への損傷は無い。まだ勝ちの
目は十分にある。硫酸と電気で交互に虐待されてるのはなかなか辛いが、そもそも痛覚は
とっくに潰れている。ときどき電撃で筋肉が誤作動するくらいだ。
 だから別に大したことじゃない。
 こんなもの、数千、数万、数百万と死んできた私には大したことじゃない。
 

 ―――あと二分。

 正直動けないというのはじれったい。
 だからその分―――動ける瞬間に備える。
 必要なのは雲を吹き払うこと=少なくとも酸の雨を抑えるだけでも有利になる。
 そして、あのガマガエルに決定的な一撃を叩き込むこと。
 さっきの右ストレートも致命傷には至らない=恐らく通常の火力では止まらない。
 人間の限界を超えた火力でなければ、止まらない。

 式の再認―――緊急回避及び瞬間的な火力強化のための事前準備+法儀式済みの術理=
スペルカード。カテゴリ「不死」・「不滅」・「蓬莱」/いずれも理想的性能を発揮可能
な状況。ただし最後の一枚を除けば構造的に式が脆弱。相手の呪詛の量によっては自壊、
強制的にキャンセルされる危険あり。

 いずれも逆転の目が薄い手札。しかも今は動かせない。
 しかし―――速攻起動「でない」のなら、手は十分にある。

 唯一動く脳を限界まで活用―――「式」の構築/スペルカードそのものをこの場で作り
上げる+起動と活用のために必要な準備も行なう=ただ何も考えずに発動させたとしても
意味が無い。この状況を打破するにふさわしい形での反撃がベスト。
 使えるものは全て使う―――流れ出した血液に式をつけて動かす=陣の構築。この術は
本来の形で使用した場合、周囲に甚大な被害が起きる。弾幕として使う上では問題ないが、
そんな生温い術で倒せるとは思わず=被害を抑える+本来の威力を発揮させるための準備。
 紅い墨で陣を描く―――泥/硫酸/瘴気にも汚れない炎の紅。指向性を全て上向きに。
陰水の強い相は私で補う。起爆剤さえあればいい。後は地の底に眠る陽の火が全て仕事を
してくれる。天の牢獄と地の獄門を吹き飛ばす、理想の役割を。

 幸運なのがここが山がちの盆地だったこと。
 地の底には確実に「味方」が眠っている。
 龍脈を引き/地霊を呼び/火山を起す。
 天地+星辰+七曜+八卦。
 手足の代わりに意識でそれを掴む=操り続ける。
 意識しかない故、逆にそれらをより深く感知し、操作できた。
 はるか空の上から、大地を俯瞰するような感覚がある。
 まるで屍解仙のような気分だ。肉体の感覚と引き換えとはいえ、これは有難かった。
 構築終了まであと二分……いや、一分。
 大規模な術の割には圧倒的に早い。少なくとも復活までには間に合う。

『そら、奴が来るぞ、さっさと行け! お前が主役なんだ、まだ降りるんじゃない!』

 ―――だから、それまで保ってくれよ、望まぬ悲劇の主人公(ヒロイン)。
 もうすぐ台本ごとひっくり返してやれる。
 そして、気に食わない理不尽に一発を食らわせてやるから。



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