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■ ヤルダバオトvsスペシネフ “修羅”対“死神”
- 1 名前:名無し客スナイパーカスタム:04/10/02 01:58
- 『此処より先は死地である。
足を踏み入れるもの、心せよ。
仮令その身が修羅に千切られ、その魂魄が死神に刈り取られようと
一切は汝の不覚が成す処と知るべし』
修羅聖戦の儀 百殺闘場心得
- 2 名前:名無し被検体:04/10/02 02:04
- ――目が醒めると俺はこの薄暗いコクピットに座っていた。
全身を隙間なく覆ったパイロットスーツは汗と体温とを封じ込めて
不快指数の急上昇に一役買ってくれている。
言い様のないいらだちと倦怠感を覚えながらも頭を巡らせて
コンソール上の各種モニターと計器類を確認する。
催眠暗示とやらで頭に叩き込まれた操縦手順は、重く鈍い痛みに苛まれた意識とは
無関係に機械のように正確かつクリアーに俺の身体を動かしていく。
キーボードの上を指が踊り(頭が痛い)、足がフットペダルを調整する(俺は何故ここにいる)
メインモニターに灯が入り(だから何故俺は)、M.S.B.S.の起動画面が瞳に映る(思い出せない)。
>Wakeup M.S.B.S ver5.2
>Onboard/Remort [O/R]
>?_O
>
>
>Onboard [Ok]
>connect Navigator
>connectRVR-87 SPECINEFF proto type t-03
>Main/WRL>system check
>Main/WRL>system[Ok]
>Main/WRL>
>Main/WRL>
>Main/WRL>open connection
>Main/WRL>synchronize start
やってきたのはズン、と頭の芯にくる衝撃。
これまでかろうじて保っていた意識が一気に何処かへと吹き散らされ、落ちていく感触。
まるで脳味噌に手を突っ込まれ引っ掻き回されているような猛烈な頭痛と目眩。
意識が無理矢理拡散させられていく中、両手がコントロールスティックを握るのが
何故か鮮明に感じられる。
汗ばんだ手袋を通して伝わってくる生温い感触。(動作正常)
まるで他人事のような不快感。(オールグリーン)
意志とは無関係に整然と動き続ける手足。(トラブル皆無)
俺は――――
俺は一体どうしてしまったのだろう。
なぜ、こんな牢獄の中にいるのだ?
なぜ、こんな目に遭わなきゃいけないんだ?
なぜ、こんな事をやっているんだ?
なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? ――――
そもそも、俺は一体誰なんだ?
- 3 名前:名無し被検体:04/10/02 02:05
- Rentarea T-53 隣接区域にて
「――t-03起動に成功しました。
EVLバインダー、順調に稼動中―――
パイロットのV-ポジティヴ値、閥値内、
精神状態に若干の混乱が見受けられますが想定範囲内です。」
「標的の動向は?」
「現在戦闘エリア外周部を南南西方向に移動中。
t-03を発見した様子はありません。
現在の速度のままですと約30秒後に交戦距離に入ります――」
「t-03、標的を捕捉した模様、移動開始しました!」
戦闘エリアより数km離れた環境復元奨励指定区域。
遺棄されて久しい旧世紀時代の都市の廃虚の陰に状況を逐一見守る者達の姿があった。
新型バーチャロイド「スペシネフ」の実戦トライアルを行なうべくこの戦闘を仕掛けた
第六プラントのDr.アイザーマン直属のスタッフ達である。
彼らの目的は只一つ、「スペシネフ」の地上戦データをより多く取得すること。
その為なら試作機の損傷は勿論、喪失することをも厭わない。
パイロットの命?
そんなものは一顧だに値しない。
試作機のコクピットに座っているのは破産して全てを失った挙げ句、着の身着のままで
パイロットとして志願してきた男だ。
事前に行なわれた各種適性テストはいずれもCクラス以下の凡庸の上に凡庸なもの。
本来ならパイロットとしての採用などありえぬレベルであった。
しかしながら今回のトライアルにおいてはその凡庸さこそが必要なもの。
新装備「EVLバインダー」による憎悪増幅効果とそれによる機体への同調効果、
更にはEVLバインダーの発するサイコノイズに対する常人の限界耐久値を
計測するには、彼のような凡人こそが望ましかった。
- 4 名前:フォルカ=アルバーグ:04/10/02 02:18
- 其処には、死神がいた。
鎌と思しき竿を持ち、最低限の骨と皮で構成され、悪魔の如き翼と爪を生やした死神が。
金属とその他幾等かの無機物で構成されてはいたが、その異様は正しく死神そのものだった。
「…俺を迎えに来た、とでもいうつもりか?」
鼻を鳴らし、男は呟く。
赤い髪の若者だった。
年のころは青年に届く手前の少年、といったところか。
一切の無駄なく引き締められた体をした、端正な顔つきの若者である。
だが、その瞳には同じ年頃の者が概して持ち得ぬものがあった。
それは紛れもなく戦意と呼べるものだ。
信念とも執念ともつかぬ、絶えることなく静かに燃え滾る炎。
男の名はフォルカ・アドバーグ。
此処とは異なる世界『修羅界』の元戦士にして、闘争集団である『修羅軍』と戦う宿命を持つ男。
そしてフォルカが乗り、遥か前方の死神と対峙している機体は、かつて修羅であった者の証。
後頭部から生え揃う、まるで唐獅子の如き見事な一対の白い髪。
紅き甲冑に覆われた外観は、生きているかのようにすら錯覚すら見る者に与えるだろう。
これこそは、修羅界に勇名響く力の具現。
乗り手の命を喰らい、更なる命を奪い去る機械仕掛けの鬼神、修羅神。
フォルカ操る、その名も修羅神『ヤルダバオト』
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