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■ ヤルダバオトvsスペシネフ “修羅”対“死神”

5 名前:フォルカ=アルバーグ:04/10/02 02:22
事の発端は一つ。所謂救難信号と呼ばれる願いの声であった。
自分と同じくこの世界に来ている筈の、修羅の軍勢を追って彷徨う旅の最中のことだ。
修羅を追う、その目的の為に一度は捨て置く事も考えたが…
半時の後、発信源であるその廃墟にフォルカ、そしてヤルダバオトは居た。
修羅とは戦いにのみ生きる者達。もしかしたら、信号は修羅に襲われた者が発したものかもしれぬ。
そう結論つけての事だ――最も、救いを求めるものを捨てては置けないという感情もあったが。
だが、辿り着いた先には居る筈の生者や修羅は影もなく…代わりに一体の巨大な死神が存在していた。

「…どうやら、当たりという訳か」

背骨に直接氷柱を差し込んだような、強い悪寒が背筋を凍らす。
己でも気付かぬうちに額には冷や汗が滲んでいた。
その原因はモニター正面に映った死神が発している巨大すぎる「殺気」。

本来、果て無き戦いの世界に生きていたフォルカにとって殺気とは、
日常の域にまで浸透した極めて自然なものに過ぎない。
だが、今モニター正面の「死神」から感じる陰惨な気配は只事ではなかった。
今まで感じた誰よりも強く、暗く、純粋な憎悪。
それも単体ではなく、数多くの怨念を感じるのは錯覚ではあるまい。
まるでこの死神が、刈り取った幾多の怨霊を糧としているかのようにも見えた。
己以外の全てを…いや、己自身すらも殺し尽くさんとばかりの憎しみ。
最早、それは憎悪の枠を超えた一種の狂気であった。

「…だが、俺にはやらねばならない事がある」

受ける殺気を闘志に変えて、フォルカは両の拳を静かに構える。
と同時にヤルダバオトの拳も滑らかに持ち上がり、寸分狂わずに同じ構えを取った。

「此処で召されるわけにはいかないんでな。
 貴様には悪いが…」

その、次瞬。

「―――押し通らせて貰う!」

紅き機神が地を馳せる。
獣のしなやかさを秘め、血の通った人間の如き滑らかさで、勢いが乗った拳を突き出す。
修羅の機体は人機一体。
機体をただの機械としてではなく、己の力を伝える映し身とする。
闘争だけを唯一の価値とする、修羅という戦士達の狂的な技術の具現がそこにはあった。

かくて紅の修羅と、白露と蒼穹で彩られた異相の死神。
両者の戦端は、修羅の拳撃にて開かれた。

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