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■ 名護啓介 VS 有角幻也 闘争会議室
- 1 名前:[-{}@{}@{}-] 名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/05/24(土) 20:35:46
- このスレは 私と彼―――有角幻也の闘争のための会議スレです。
それ以外の人間およびファンガイアの侵入、書き込みを禁止します。
- 28 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/06/13(金) 18:42:58
- どうにか、戦闘に入るまでの流れを作ることが出来ました。
>>27での助言も組み入れています。
- 29 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/06/13(金) 18:43:41
- [3-3]
男の前に立った名護が最初に行ったこと、それは。
「どうやら、あなたに助けられた……ようですね」
礼ではなく、彼の不必要な介入を咎める言葉を投げつけることだった。
「少なくとも、あなたの手助けが無くとも私は彼らを取り押さえられました。ですが、あなたの行いは世界のためになることだったと―――」
そして、本題であるはずの感謝の言葉に入るかという矢先。
「――――そんな事はどうでもいい」
切れ味鋭く、怜悧な一言を持って切って捨てる男。
ぴくり、と名護のこめかみの辺りが僅かに動いた。
「私の行動に気付く程度の理解力があるなら、先にやるべき事があるはずだ」
矢継ぎ早に投げつけられていく棘のある言霊の群れ。
言霊の主は、メタンハイドレートの如く冷たく燃え盛る情念を押し隠しながら言葉を続ける。
「お前が下手をすれば、あの親子に流れ弾が当たっていた。
分かるか? お前が周囲への警戒を怠ったせいで、関わりのない人間が死ぬかもしれなかった
ということだ。―――何の関わりもない、母親と少女がだ」
男の視線の先には、未だ怯え竦む母子の姿があった。
もしも、名護が最善の一手を打っていなければ。
もしも、この男が介入していなければ。
射線上の二人は、悲劇の主人公として明日の紙面を飾っていたことは想像に難くない。
「お前が何のために犯罪者を捕まえるのか、何に拘るのか、それで何の不始末を追おうが別にいい。
それで生きようが、死のうがお前の自由だ。
だが、これだけは覚えておけ。
お前が何をしようがいい。だが、お前の身勝手に関係のない人間まで巻き込むな。
荒事にたずさわるのならば尚更だ。周囲の被害すら考えられないのなら、その仕事をする資格はない。
そんなものは、ただ迷惑なだけの狂った役立たずに過ぎん」
俺は、まだ、負けていない。
- 30 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/06/13(金) 18:44:06
- 名護の口は声無き声を紡いだ。
先日のキバとの戦いにおける敗北。癒えぬ傷口を抉るに等しい言葉の嵐。
だが、それ以上に名護の中で燻るのは、己の正義への信念、そして執着。
名護啓介にとっての正義とは、己の理想郷に至る為の道であり、己の生き様そのものであるといってもいい。
その正義が、今また踏み躙られた。
過去、今は亡き父がそうしたように。
「……黙れ」
―――面子や矜持など、それこそどうでもいい。
「……貴様に、貴様に俺の何がわかる!」
―――ただ、俺が進むべき道を閉ざそうとするものは、赦してはいけない。それは、俺の敵だ。世界を蝕み、破滅を齎そうとする敵だ。
二人の周囲の空気が一触即発の気配を孕み始めたその瞬間、男を呼ぶ声が時間を動かす。
―――有角幻也
その瞬間、名護は理解した。
この男こそが、『素晴らしき青空の会』へ送り込まれる監査官。そして、俺の敵。
「分かったなら早く行け。
私はお前に用などない、お前も私にこれ以上の用などないだろう。
名護啓介―――名うてのバウンティハンターであるお前なら、私の言っていることは理解できる筈だ」
有角が席を立つと同時に、残した言葉。
そこには先程までの棘はない。いや、有角にはもはや、名護に対する興味・関心さえ存在していないだろう。
この出会いが、そして『素晴らしき青空の会』への監査が、二人の状況を動かしていくにはまだ、少々の時間を必要としていた。
- 31 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/06/13(金) 18:44:40
[導入5]
Cafe mald'amour(カフェ・マル・ダムール)。
会長の嶋をはじめとする『素晴らしき青空の会』の会員は、この喫茶店を拠点のひとつとして活用している。
カウンター席に並んで座っているのは名護と、ファンガイアハンターの麻生恵。親子三代に渡って『素晴らしき青空の会』と関わってきた女性であった。
名護は、この店自慢のコーヒーを一口啜るのももどかしそうに恵に切り出した。
「恵、君はあの有角幻也という男の事をどう思う?」
恵は、名護の言葉の真の意図を察知しつつ返答する。
「んー、いわゆる“イケメン”って感じ……だと思うけど」
はぁ、と大きな溜息。
「俺は君にそういう意見を聞いているんじゃない、あの男が信用に値するかどうかということだ」
「……名護くん、あなたのそういう偽善的で独善的な態度、早く直さないと誰にも好かれないわよ?」
恵が呆れたように名護を窘める。
「あいにく、俺の事を嫌うのは悪人かファンガイアだけだ」
感情を押し殺すかのようにコーヒーをもう一口。
「だいたい、彼はあなたが思うほど悪い人間じゃないわ。監査だって、私達『素晴らしき青空の会』と協力する為の下準備でしょ」
「……恵、やはり君には人を見る目が無い」
再び溜息をつく。名護には、あの時垣間見た有角の姿こそが彼の本性の一端であるようにしか思えなかったのだ。
店内の静寂を破るかのように、嶋が店内に駆け込んでくる。その脇には茶封筒が抱えられている。
「良かった、ここに居たか―――名護君、ようやく彼についての調べがついた」
嶋が持っていた封筒を名護に手渡す。その内容は『素晴らしき青空の会』が持つ情報網をフルに活用して手に入れた『有角幻也』に関する報告書。正に値千金/珠玉の情報。
1ページ目を飾るは当たり障りの無い、戸籍謄本や住民票などの『有角幻也』という人物の公的情報。
その手の仕事屋を高給で雇えば、3日も掛からず偽造することは十分に可能だろう。
仕事柄、裏事情にも通じている名護は興味なさげに読み飛ばす。
数ページほど読み飛ばした所で、報告書は公的な情報とは一線を画す、核心に迫る情報を記し始めた。
『有角幻也―――本名:アドリアン=ファーレンハイツ=ツェペシュ』
『ドラキュラ伯爵ことヴラド・ツェペシュの息子』
名護の目を捉えたのは、有角の隠されていた素性の全て。読み進めるうちに、顔が綻んでいくのが自分でもわかる。
- 32 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/06/13(金) 18:48:33
- 大なり小なり、退魔組織に身を置く者にとって1999年の『最終決戦』は記憶していなければならない大前提の一つである。
それは、歴史を紐解いても類を見ない規模で行われたドラキュラ伯爵率いるその眷属と、人類が起こした未来を賭けた戦いであった。
当時13歳であった名護自身は、その戦いには参加していない。
しかし、名護が『素晴らしき青空の会』以前に所属していた『3WA(ワールド・ワイド・ウィング・アソシエーション)』のアーカイブで、その詳細を知る機会を得ていた。
その時は、人類側の戦力を纏めたのが誰であったかにまで思索を巡らせはしなかった。
だが、今ならばわかる。陰の功労者は有角幻也以外にありえない。
かつて、名護が国会議員だった父親の不正を告発したように、有角も父親を断罪の場に引き摺りだした。つまりは、そういうことだ。
「知らなかった……彼が、そんな凄い人だったなんて」
横から覗き読んでいた恵が、感嘆の声を挙げる。
「……凄いとかそういうことじゃない、奴は俺たちを欺いていたということに過ぎない」名護の心の奥底で、何かが蠢き出した。
それは怒りや憎しみなどというシンプルな感情ではない。
蠢くもの、それは“正義”だ。名護が目指すものは正義によってのみ到達できる。
そして、その正義はより高みに上ろうとしている。“絶対正義”という高みに。
「どれほどの功績を挙げようと、所詮奴には呪われた血が流れている―――俺にとって、奴はキバと同じだ」
“キバ”。
それはファンガイアと人の狭間に立ち、ファンガイアを狩る戦士。恵は何度か窮地をキバに救われていることから好意的に見ている。
しかし、『素晴らしき青空の会』が保有するアーカイブには恵の認識と反する記述が残されている。「世界を破滅に追い込もうとした存在」として。
それ故に、名護はキバを己の宿敵と定めた。己の絶対正義を完成させる為の試練に挑むかのように。
「だけど……」
恵の逡巡を断ち切るように、嶋が割り込む。
「君の考えは判る、だがそれは我々『素晴らしき青空の会』にとっては危険な賭けに出るということでもある」
嶋の懸念は当然だ。現在の有角の立場は政府機関から出向してきた監査官だ。監査自体が予定調和の産物であったとしても、『青空の会』そのものの立場を危うくしかねない。
「……それでも、私は有角幻也、いやアドリアン=ファーレンハイツ=ツェペシュは打ち滅ぼさねばならないと考えています」
名護の決意に、些かの揺るぎも無い。その意思の全ては己が理想を成就する為に有る。
「―――わかった、先方には私の方から説明しておこう」
嶋は、名護の決意に沿う決断を下した。政府には多少の借りを作ることになるだろうが、返済できる範囲の借りだと判断したのだ。
名護は、ベストの胸ポケットに収められたボタンを握り締めた。
この先にある戦への高揚を押し隠すように。
=========
これより先は、車を襲撃して誘い出すシーンになっていくと思います。
- 33 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/06/16(月) 00:20:17
- 反応が遅れたが、レスは確認した。
それで頼みというよりは提案がある。
・襲撃及び戦場までの誘導
これについてだが、
「私が戦場となる廃墟へ誘い出される→車襲撃(イクサナックルで)」
という流れに変えた方が手間も減り自然かと考える、最初に提案しておいて済まないがな。
…既にそう考えているならばいいが、下手をすると展開が悠長になる恐れがある。
今回は導入から長くなっている状況だ。互いに省略できるところはしておきたいと思っている。
――――どの道、一つのシーンで長くなるだろうからな。
【既に手遅れかもしれんが、そn(省略されました】
……私からは以上だ。
とりあえずは返答を聞きたい。
私の示した提案で構わなければ、車で廃墟に誘い出されるまでのレスを書いておこう。
誘い出される理由はどうにでもなるだろう。(更なる情報提供といった名目、など)
- 34 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/06/18(水) 01:41:58
- [導入6]※暫定
>>
宵闇に光る猛牛のエンブレム。
黒い闇夜のハイウェイを、更なる黒が疾駆する。
黒塗りのランボルギーニ・ミウラ。
フェラーリに対抗すべくして生まれたランボルギーニ社が創り上げた草分けにして異端児。
12気筒の大排気量エンジンを流麗なシルエットの中に、ミッドシップのスタイルで搭載した車である。
当時12気筒の大排気量をミッドシップに積んだ車は前例がなく、その型破りな発想と全部で750台しか
生産されなかったという希少性。誰一人欠けていたら生まれなかったと言われるデザイン/設計。
そして何よりも、切り裂いた風すらも従えるボディラインに12気筒のエンジンが織り成す重厚な排気音。
スマートとパワフルさを兼ね備えたこの雄牛は、世界で最も荒々しい芸術品とさえ言えた。
全てが黒に染まったランボルギーニ。
その黒い革張りのシートの中で、幻也は数日前のことを思い返していた。
あの日―――『素晴らしき青空の会』の監査を始め、名護啓介と出会った日のことを。
あの時。
幻也は明らかに感情的になっていた。
それは当の本人からみても、極めて珍しい事なのは間違いなかった。
異例を超え、もはや異変だとすら言えた。
“氷の男”。他人が幻也を評するに最も適した言葉である。
そして最も評されるこの言葉の通りに、幻也という男は感情を見せぬ男であった。
属する機関の内外を問わず常に冷静冷徹、鉄面皮で知られる男だ。
事実、それを常時とする男でもある。表情を見せず、感情を見せず。喜怒哀楽を見せることのない氷の男。
それが、有角幻也の自他共に認める事実である。
しかし。
あの時は明らかに怒りを抱いていた。名護啓介の迂闊な行動に対してだ。
僅かに垣間見せた程度の冷たい激怒。だがそれでも、幻也が見せるには余りある発露だった。
従来ならば、冷たい言葉を浴びせるにしても感情など込めなかったであろう。
軽く(それでも、常人なら3日は寝込む程度)辛辣な言葉で流していた筈だ。
何故か?
―――――母、か。
思い至ったならば理由は明白だった。
命の危機に晒されたのが母と子だったからだ。
逆に言えばそれだけの理由だ。だが、それだけの理由で幻也には十分だった。
あの時。犯罪者の凶弾は名も知らぬ母子にも向けられていた。
そう、失われていたのかもしれなかったのだ。
母の目の前で子供が、そして子供の目の前で母親が。
なんら謂れのない悪意によって奪われようとしていたのだ。
そう、かつての自分と同じように。
自分を襲ったと同じ悲劇が、形を変えて繰り返されようとしていたのだ。
ならばそれだけで十分だった。
眼前で母を失った悲しみを知るのは己のみでいい。誰も、あんな悲劇を知る必要はない。
そう思ったからこそ、それを自身の迂闊で引き起こそうとした男に怒りを抱いたのか。
―――――分かっている。
そう、所詮はこの怒りも幻也のエゴに過ぎない。
その事を誰よりも幻也自身は知っていた。あの男、名護啓介と同じく歪な陶酔の発露でしかないのだ。
そう深い自嘲と自戒の意を込め、自身の心に言い聞かせる。
――――我が身に背負うは、罪と罰。
自身はただの咎人に過ぎない。
母を見殺しにし、父を手にかけたこの身が咎人以外の何であるというのか。
誰が否定しようとも、赦そうとも。誰が知らずとも認めずとも。
誰が彼を善と呼ぼうと、背負う咎はいずれ裁かれなくてはならない。
人として生きることも、それ以外のものとして生きることも、己に許されはしないのだ。
- 35 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/06/18(水) 01:43:54
- >>
それでも尚、彼は現世に生きなければならなかった。
最初は隠れ蓑だった役職だが、それでも世界は彼のような者の力を必要としているのだ。
成すべきことは多かった。それも、今すべき事が目前にあった。
他でもない、『素晴らしき青空の会』の監査である。
幻也が車を走らせるには確たる理由があった。
上からの命令。今夜、監査対象である『素晴らしき青空の会』によるデモンストレーションが行われるというのだ。
使用される武装は『Intercept X Attacker』。機関からは『ハンター』とも呼ばれる対吸血種装備である。
22年前から開発が行われ、今回の監査における重要項目の一つでもあった。
監査に伴う段階的な情報開示の一環。そう説明を受けている。
――――表向きは、な。
妙な話だった。
タイミングとしては順当だ。もとより着地点の見えた監査でもある、順調ならばそれに越したことはない。
しかし、知らされた内容に不自然な点があった。
責任者の幻也が単身来るように、そう指名があったのだ。
監査の総指揮は幻也である。だが当然のように監査を行う人員は一人ではない。
任務に応じた権限を与えられるのが特務員の常だ。今回は監査に公安の人間を借りることが決定していた。
前にも接触した、『素晴らしき青空の会』のメンバーでもある公安の人間だ。
彼は幻也と組織を仲介する人間として、以降の監査に必ず立ち会うよう契約を結んでいた。
互いのトップが、わざわざ協議のテーブルに立って決めたという取り決めだ。それを反故にするような真似は
不自然だった。
指定されたポイントというのも気になった。
記憶が確かならば、その場所はかつて大事故で廃棄された元工場、加えて再開発の目処が立ってない所だ。
いわば都市部に点在する空白、現代の廃墟。
確かに、機密である特殊装備を見せるのなら打って付けではある。
そしてその土地は法的には嶋財団―――『素晴らしき青空の会』の所有地ということにはなっている。
機密保持の手段としては申し分がない。それも、不自然なほどに。
何より、決定的だったのが命令を伝えた調査室長の言葉だった。
「ああ、これも監査の一環だ。わざわざ君を指名している。
時間通りに指定した場所で向こうと接触してくれ」
―――了解しました。
「まぁ、あまり先方に失礼のないように。
機嫌を損ねて手のひらを返しはしないだろうが、事は慎重にな」
―――承知しています。
「ああ、そうだ。これとは関係ないんだが……」
―――他に何か?
「実は、最近家内が石楠花の栽培に凝っててね。
それでちょっと余ったもんだから、少し貰ってくれるとありがたいんだが」
一見何気ない会話に暗号を交える、公安機関での常套手段。
中でも内調特務においては、主に花の名前が暗号として用いられることが多い。
機密保持の方法としては陳腐で時代遅れだが、それでも有効性は確かにあった。
この場合は石楠花(しゃくなげ)の言葉が符丁にあたる。
そして今回。石楠花の符丁の意味は、そのままそれの花言葉に繋がっていた。
すなわち――――。
――――注意しろ、という事か。
恐らくは、『素晴らしき青空の会』の仕掛けた何らかの罠なのだろう。
内閣調査室のもつ力は、国の諜報機関というには余りにも脆弱である。
FBIなどの海外の同じ機関が持つような権力を持たず、概して便利屋として使われるのが幻也の知る実情だ。
少なくとも部下である特務の安全を、雇用主として主張するだけの発言権は存在しない。
もとから公的には存在しないとされている内調特務であれば、尚更だ。
たとえ特務員を陥れるための罠であろうと、正面からの圧力であれば応じるしかない。
最も、それは圧力に屈するとは違う。逆に言えば、その罠を破り切り抜ければそれは取引の材料となる。
そんな抵抗と綱渡りを繰り返し、借りと実績を得ることが内調の裏のやり方であり、有角を含めた内調特務に
必要な能力でもあった。弱い機関ゆえのしたたかな立ち回り方ともいえるだろう。
それに今の室長には恩もあった。
彼は幻也の素性を知る数少ない一人であり、知りながら機関に受け入れてくれた人間だった。
部下を見殺しにすることを良しとせず、影ながら今回のような警告をしてくれる人物だ。
ならば善意を感謝こそすれ、恨む理由は何一つなかった。
- 36 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/06/18(水) 01:44:46
- >>
漆黒の闇を裂いてその存在を主張する、更なる漆黒のランボルギーニ。
もはやハイウェイを降りたそれは世界で750台しか存在しない雄牛の一台、その中でも初期型のミウラP400だ。
しかし、その中身はほぼ別物になっている。
後のモデルチェンジで改善されたサスペンション系統・オプションは元より、電装系・制御系統は完全な最新式。
ミウラのシンボルでもあるV12エンジンに至っては、特別チューンまで施された非合法ギリギリの代物だった。
すなわち、幻也の“仕事”に耐えうるような専用の改修を受けているということだ。
彼は懐古主義者でもなければ浪漫主義者でもない。むしろ一種のリアリストですらある。
そのため彼の意向によって大幅な改造が成されていた。
尋常の皮をかぶりながらも尋常ならぬ力を秘めた、有角幻也という男が駆るに相応しい機体に。
その機械仕掛けの雄牛が今、約束の場所に乗り入れる。
人気のない、再開発が放棄された廃墟。
現代において生まれた繁栄の陰にして隙間、光溢れる世界に再び現出した無人の闇に。
月下。
雨ざらしのコンクリート。
朽ちるのみを待つ建築物。
地虫すら蠢く気配のない大地。
未だ車輪を進める鋼鉄牛が、幻也と共に荒野を進む。
- 37 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/06/18(水) 01:50:06
- >>34-36
ひとまずレスの方が出来たのでな…叩き台も兼ねて上げて置く。
いかなる形にするにしろ、これなら最後の部分だけ代えれば問題ないだろう。
……長い上に好き勝手極まるのは無視しろ、そうした方が身の為だ。
…ともあれ、此方の姿勢は変わらん。
返答を待つとしよう。
- 38 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/06/20(金) 21:43:43
- こちらの都合でレスを確認するのが遅れました。
>>33
その提案を受け入れる形で構わないと思います。
私が先行して書いていたレスでは、あまり描写が膨らまないと感じていた所でしたから。
とりあえず、暫定案を受け入れる形で続くようにしていきます。
- 39 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/06/22(日) 20:18:30
- [導入7]
>>
全ては繊細に、かつ大胆に進んでいた。
有角には知らされぬ政府側との再調停―――両者一両損、となる条件で承認を得る。
今回の監査に関わる機関に対する飴とムチ―――今回の件に沈黙する方向で決着。
政府内の『青空の会』会員による工作―――有角幻也を孤立させることに成功。
権力とは、然るべき意図を持って振われた時、その威力を最大限に発揮するものだ。
名護は改めて、自分が所属する組織の力を思い知る。そして、それが自分の理想のために動く時を夢想する。
そして、今日という日は汚れ無き世界への第一歩が刻まれた記念すべき日になるだろう。
予定された会合の場所は、再開発計画が頓挫し放置されたままの区画。解体途中のまま中身が丸見えになっている廃墟やまだ使えそうな倉庫などが立ち並んでいる。
それは、『素晴らしき青空の会』が用意した“狩場”の一つでも有る。
自前の“狩場”を持つメリットは、幾つでも考えられる。マスコミ対策、民間人の被害を抑制する、待ち伏せ、などがあるだろうか。
こういった“狩場”は、嶋のポケットマネーによって買収され各地に点在している。
名護が選んだのは、特に人気が昼夜を問わず少なく、邪魔の入りにくい“狩場”だった。
有角を呼び出す為の餌は、「未知なる脅威に対する迎撃戦士」のデモンストレーション。
Intercept X Attacker―――ライダーシステム『IXA』の力を、その身で味わってもらう。
全てのお膳立ては整えられた。
あとは、この舞台に主役が降り立つだけだ。
次なる英雄劇の前座を勤め上げる、運命に弄ばれた喜劇の主役が。
- 40 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/06/22(日) 20:20:10
- >>
有角幻也―――アドリアン=ファーレンハイツ=ツェペシュが目指す、再開発計画が放棄された区画。
点在する廃墟の陰に、名護啓介は身を潜めていた。
名護が胸ポケットに収めていた携帯が、きっかり3コール着信音を鳴らし沈黙する
<まもなく目標が到着する>、という合図だ。
それから3分足らずで月明かりに照らされた廃墟に、人工の光が注ぎ込まれる。
ようやく来た、というべきか。それとも迷わずに来れたのか、というべきか。
ともあれ、肝心のキャストが揃ったことには変わりない。
有角が車から降りた事を確認し、名護もその姿を相手に見せる。
「―――お待たせ」
名護は精一杯の笑みを浮かべて有角に相対する。
『笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙を剥く行為が原点である』
そんな言葉が、名護の脳裏を過ぎった。そうだ。俺はこの男に牙を剥くのだ。
笑顔に、より一層の険が刻まれたように感じた。
ふと、有角の足となった車を一瞥する。
ランボルギーニ・ミウラ。数十年前のスーパーカーの熱狂に身を焦がした者ならば垂涎の対象といえる名車だが、名護には何の感慨も浮かばない。
音楽と同じ、世の中の為にはならないモノ。ただ、それだけだ。
「約束通り、デモンストレーションを開始しましょう」
名護は、ベストの裏ポケットからメカニカルな造形のナックルダスターと思しきものを取り出し右手に装着した。
それは、『イクサナックル』と呼ばれる『素晴らしき青空の会』が開発した電磁ナックルだ。瞬間最大電圧5億Vとという雷に匹敵する電撃を発生させる、強力な武器。
「―――俺の手で、貴様を滅ぼすという最高のデモンストレーションを」
名護は、ランボルギーニのボンネットにイクサナックルを向けて、グリップ基部に設けられたトリガーを引いた。
現代の自動車は、ドライバーが考えている以上にコンピューターの恩恵を受けている。特に、燃料噴射制御装置とABSは車載コンピューターに依存したシステムの代表格といえるだろう。
燃料噴射制御装置とは、単体で燃焼することが出来ないガソリンと燃焼させるための空気を理想の比率で混合するシステムである。
そして、ABS(Anti-lock Brake System)は急ブレーキをかけた際にタイヤホイールがロックしないように制御するシステムである。
―――ではこの二つのシステムが、もしも走行中に、同時に壊れた場合自動車はどうなってしまうのだろうか?
まず、燃料噴射制御装置の故障によってエンジンに送り込まれるはずのガソリンと空気の混合気体の供給が断絶され、エンジンは活動することが出来なくなる。
これによってタイヤホイールは回転力を失い、急速かつ強力なエンジンブレーキを発生させることになる。
そして、急ブレーキ時に効果を発揮するABSも機能しなければただの飾りでしかない。結果、車体は横方向へと大きく滑る。そして制御不能のスライド状態は、熟練のドライバーでも対応は難しいという。
では、停車中にこれらのシステムが壊れた場合はどうなるか。
答えは簡単だ。エンジンを動かす力を失った自動車は、たちまち鉄の箱と成り果てる。
名護は、イクサナックルから放たれる電磁波によって有角が運転してきたランボルギーニの車載コンピューターの電子回路に致命的な損傷を与えたのだ。
有角にとって幸いだったのは、走行中ではなかったというべきか。
「―――これで、貴様の逃走手段は断ち切ったぞ、有角幻也」
既に、嶋が手配した人員によってこの付近一帯は包囲されている。そして名護の移動手段となる『戦獅子』も配置済みだ。
仮に有角が自分の足で逃げ出したとしても、名護は直ちに追撃することが可能となっている。
もはや、蜘蛛の巣に絡め取られたも同然といえよう。
「いや……ドラキュラが一子、アドリアン=ファーレンハイツ=ツェペシュ」
======
>>34-36の続きになります。
この後、変身→戦闘開始の流れに入っていく事になると思います。
- 41 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/07/05(土) 00:51:23
…済まんな、反応が遅くなった。
既に状況は確認している。だが、どう返すかで今まで難航していてな。
どうにか方法は思いついたので今週末には形に出来るはずだ。
悪いが、後もう少しだけ待ってもらいたい。
…それとお前に女難の相が出ているが、これは私の関わるべきことでもないな。
- 42 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/07/22(火) 01:18:50
- >>
突如襲来した瞬間電圧5億ボルトの電撃。
落雷に匹敵する電圧を秘めた鋼拳がランボルギーニに走る。
換装させた最新式の電装系が仇となったか、壮健なるミウラの鼓動は沈黙した。
狂気に見舞われたかと言わんばかりの突然な凶行。ほくそえむのは、そう――――名護啓介。
かつて幻也に氷の侮蔑を投げかけられた男。
絶対正義という硬く歪な礎を、ドライアイスの刃で抉られた男。
そして後に知らされた、『素晴らしき青空の会』が誇るゴミ処理のエース。
この唐突な裏切り劇の颯爽たる主役。
「――――やはりそういう事か」
だが幻也はその凶行に際して尚、氷の平静さを崩しはしない。
まるで全てを見通していたかというように。幻也、美しき男は名護啓介を静かに見据える。
「最初に会ったときからおかしい所があるとは思っていたが、此処までとはな。
だが、それも今の行動でようやく得心がいった」
男―――名護啓介の言葉を遮るように。
幻也、その冷徹なまでの言動は相手の顔色をうかがいすらしない。
アドリアン=ファーレンハイト=ツェペシュ。
絶対優位を得たがゆえの優越感を見せる男が言い放った、有角幻也の本来の名。
それを看破された動揺など存在すらしないように。
いや、事実―――幻也、かのドラキュラが一子には動揺という感情などありはしなかった。
奥底に隠すのはただ、一種の納得。
何ゆえ己が狙われたのか、その理由を得心するに至った際の感情のみだ。
そう、名護啓介の言葉は真実であった。
有角幻也とは、彼が今の時代に存在するために用意した仮の名に過ぎない。
彼は人間ではなかった。
わが身を災厄にまで落とし世界を呪った魔王の子、最悪の吸血鬼“ドラキュラ”の実子。
それが幻也が隠す真実だった。
しかし彼には素性を偽ってまでやるべき事があった。
それも眠るには短すぎる年月を、四半世紀近くを雌伏せねばならぬ理由があった。
そう、たとえ彼の正体を知ったハンターに命を狙われ続けようとも。
罪と罰の十字架を背負い続けてでも抗わねばならない理由が、見届けねばならない事があるのだ。
「お前が私を狙った理由は分かっている。
いや、疑念があったというべきか。流石にすぐには信じる事は出来なかった。
しかし―――――」
そう言うや否や幻也は、無造作に懐から黒い携帯電話を取り出した。
淀みない操作で行ったのはメモリーに記憶させたデータの再生。
ASV液晶の光情報が闇を照らし、選択された映像と音声が流れ始める。
そこには、
『貴様、命が惜しければ私の言うことを聞きなさい』
「――――名護啓介。
まさか、ファンガイアと通じるところまで堕ちていたとはな」
再生された声音と光景の再現。
そこから聴こえたのは紛れもなく目の前の男、名護啓介の声だった。
- 43 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/07/22(火) 01:19:35
- >>
人々を悪から守るべきハンターが、よりにもよってその人々を牙にかける、倒すべき存在と通じていたのだ。
それも罪を疑うべくもない悪党を相手に、組織の中枢を担う人間がだ。
利害の一致、己の保身、一つの目的を果たすための共謀。
世界においてありふれた歪みの一つでありながら、表に出たならば糾弾されるべき“不正”。
それが殺戮者と、それを追う者とによって行われるならば、その罪は他の何よりも重い。
「念のために言っておくが合成の類ではない。
れっきとした、偶然監視カメラに捉えられていた映像だ。信じがたい事だがな」
この背信行為の決定的証拠となる映像は、その実半分が捏造だった。
ただしその半分―――唇の動きから再現された音声を除いた一切は紛れもない真実でもある。
幻也の言うとおり、合成やCGによって作られた映像ではなかった。
全ては名護と吸血種とのこの会話が、とある街頭の監視カメラに捉えられていたことから始まる。
監査への準備を始めた頃から収集した情報の中に、この映像が紛れ込んでいたのだ。
まさに何万分の一にも満たない確率によって撮影された衝撃的映像。
これが幻也の手に渡ったのは偶然と、オカルト関連の疑いがある映像資料は
彼の手へ渡すよう、内調経由で民間の警備会社との契約を結んでいたからに他ならなかった。
無論、これだけではどうとでも言い逃れは出来るだろう。
だが幻也の知る“証拠”、彼の口から語られるはこれだけではなかった。
「無論これだけではない。
今まで私が集めた情報の中には、お前の行動に懐疑的な声も数多くあった。
一つ、3月9日。“キバ”と交戦中だったファンガイアを見逃した。
後のそのターゲットは更に人間を襲い、犠牲者の数は更に増加した。
ファンガイアを追撃可能なタイミングだったにも関わらずだ。
もう一つ、4月6日。ファンガイアと交戦中だった“キバ”を襲撃。
“キバ”を撤退させるも、当のファンガイアは完全に見逃す。
それこそ、完全に目もくれずにな。
この件とは無関係な不祥事を除いたとしても、既に二つだ。
そして、さっきの映像にあったファンガイアとの取引現場。
お前にかけられた疑惑を立証するには十二分だ、違うか?」
一度目は偶然であったとして。
二度目は奇跡であろうとしても。
しかし三度目となれば、これは既に理由のある必然ではなかろうか。
幻也を罪を問うため待ち構えた名護啓介に、幻也は逆に問いかける。
『Intercept X Attacker』装着者に問題があるのではないか―――ここ数日間に行った独自調査
の最中に得た、組織の成果に不満を持つ『青空の会』後援者たちの疑念をそのままに。
事実、監査に至った一因として組織内部からの声があったのも確かだった。
自分たちを護るべき側の人間が、その実役割を果たしていないのではという疑いの声。
組織の後援者から秘密裏に収集した数々、そして名護直属の上司にあたる嶋護―――
嶋財閥総帥にして『素晴らしき青空の会』トップ―――を経て、組織の協力者からもたらされた
情報が裏づけとなっていた。
一切の敵意も、戸惑いも、合切の殺意も無視して有角幻也の言葉は続く。
一触即発の状況に反してどこまでも冷静沈着に、的確に発言を続ける様はかえって異様。
道化の演ずる喜劇というには異質な空気。
もしこの舞台に観客がいたとするならば、どこか空寒いものを感じずにはいられなかったであろう。
「今更言うまでもないが、監査は『Intercept X Attacker』装着者本人もその対象に含まれている。
これは組織の内外から上がった声だ。
現装着者であるお前の行動が最近、こと目に余るとは聞かされていたが…ここまでとはな。
当然だが、これは重大な背任行為だ。
不祥事というレベルすら軽く超えている、組織への裏切りそのものといっていい」
曰く。
この件は既に双方へ資料を送っている。
曰く。
その上で改めて政府と『素晴らしき青空の会』に報告する。
曰く。
調査の途中で掴んだ、嶋財閥側、組織に属する政治家達の不正証拠と共に。
そう極めて淡々と幻也は告げる。
黒に最も近い灰色の真実。飾るのは白々しいまでのセリフの数々。
投げかけた幻也の言葉には、真実もあれば嘘もあった。まさにハッタリと言うに相応しい。
いや、そもそも名護啓介が本当に裏切ったという証拠は存在しない。
それでも幻也が断罪を語り、茶番のような真似を続けるのは理由があった。
すなわち必要な情報を、彼にとって必要な事柄を引き出すという理由が。
- 44 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/07/22(火) 01:21:36
- >>
幻也の上司が符丁まで使って危機を伝えたという事は、もはや政府との密約が交わされている
と考えるべきだった。
密約とは即ち、幻也―――否、アドリアンの抹殺。
恐らくは彼の命を取引材料として、監査の再調停が行われたのだろう。
珍しい事ではない。政府側からしてみれば、幻也は優秀だが得体の知れない男だ。
しかも内調特務という存在はその性質上、政治家や官僚の秘密を握る事を生業とする。
時には事件の証拠、また時には組織が利を得るための取引材料として。
どの道、秘密を握られる側にとって厄介な存在には違いはない。
そしてその邪魔者をわざわざ始末してやるというのならばと、黙認する人間もまた多い。
今回はそれを『素晴らしき青空の会』が持ちかけたであろうと、幻也には容易に想像ができた。
命を無視された人間――――内調特務がそう呼ばれる理由の一つが、こういった政府内の
敵の多さでもあるのだから。
だがこの程度の危難、彼は幾度となく切り抜けてきた。
孤立無援。命の危機に陥るのは幻也のようなエージェントにとっては良くある事だ。
政府内の工作、官僚の圧力、幾重にも仕掛けられた罠と放たれた刺客。
のみならず彼特有の敵―――教会の狂信者、無法者のハンター、魔道を奉じる異端教団、幾多の
吸血鬼とその信奉者たち。
これら人と人外による襲撃の全てを退けて、有角幻也という男は今ここにいる。
「――――全くな。何が『絶対正義』だ。正義が聞いて呆れる。」
物言わぬ廃墟で演じられる舞台演劇。
降り注ぐ青き月光は歪みなく、今の演目は有角幻也の一人がたり。
台詞は言われるのではない聞かせるもの、そう心得てか朗々と美しき男の即興は、夜の闇に染み渡る。
その黒衣、懐の奥にはそう。
次なる役者の演技を今か今かと待ちわびる、テープレコーダーの音なき胎動。
法が証拠と認める二つ。紅いスカーフに隠された超小型電子カメラの無垢な眼差しと共に。
「念の為だが、この場合黙秘権は不利になるだけと言っておこう。
ファンガイアへの寝返り―――この疑惑に対して、納得のいく説明を聞かせてもらおうか」
タネを隠すは役者のたしなみ。幻也の魔術/隠器術によって完全に秘匿されている観客達。
それらと共に幻也は待つ。
名護啓介というどんでん返しな喜劇の主役、この即興へいかなる台詞を返すのか。
- 45 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/07/22(火) 01:44:00
-
――――もはや返す度に言っている気もするが。
済まんな、また遅く(ry
だが、おかげで光明は見えた。
(今までの753のシーンと録画した25話のデータを懐に入れて)
…という訳で説明させてもらうとしよう。
このまま私の正体を認めれば、勝ったところで狙われる身になるのは目に見えているのでな。
悪いが、少しばかり酷い手を使わせてもらった。
要するに、お前の罪状を捏造してのハッタリと挑発だ。
ただし突き出した証拠(音声以外)と疑惑、提出したという事実は本物―――といった所か。
タグを使っている部分は故意でやっている挑発だと、そう思ってくれていい。
「目に余る」というのは誰の言葉か、そして「お前」自身が何をしてきたか…
そういった其方の(原典における)情報を吟味してのものだ。
とりあえず、どういった反応を取るにしろ戦端を開くには問題ないだろう。
―――二重の理由で私を殺さなければいけなくなった。これは事実だとしてもな。
その時、お前ならばどう動くべきか。お前が名護啓介なら分かる筈だ。
- 46 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2008/07/22(火) 02:06:07
-
……これだけでは分かりにくいか。
詰まるところ、此方が生き残るための大義名分を作った。という事だ。
お前がファンガイアと通じているという罪状を捏造し、あえて挑発する。
レコーダーとカメラを(厨だろうが魔術で隠匿して)隠し持った状態でな。
そしてお前が私の命を狙う以上、既成事実の上では口封じと見なされる訳だ。
(私を見逃したら見逃したらで、お前自身の査問が行われるのは想像に難くない)
後はお前の(捏造された)裏切り行為を焦点に再々調停へ持ちかける。
…再々調停の部分が色々と無茶だが、そこは政府側と組織の不正を掴んだ等でどうにかなるだろう。
それと余談だが、私のレスで致命的な間違いがあったので修正しておく。
といっても内閣調査室関連の事だ。お前のレスとは関わりがないので問題はない。
- 47 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/07/23(水) 22:13:15
- >>
「――――名護啓介。
まさか、ファンガイアと通じるところまで堕ちていたとはな」
有角が名護に続いて晒した手札。
それは、ファンガイアハンターとしての名護の立場を揺るがせる最悪のジョーカー。
キバを追い詰める為に、恵に執心するファンガイア・糸矢を脅迫し利用した一件を撮影した映像。
(……まさか、あの時の映像まで用意していたとはな)
名護は考える。背徳の証拠というべき映像を用意した有角の真意を。
あの映像が嶋の元に渡れば、名護はイクサの装着者として不適格と看做される。いや、それどころか『素晴らしき青空の会』を追放されかねない。
考えうる限りの最悪の未来。それだけは避けなければならない。
「今更言うまでもないが、監査は『Intercept X Attacker』装着者本人もその対象に含まれている。
これは組織の内外から上がった声だ。
現装着者であるお前の行動が最近、こと目に余るとは聞かされていたが…ここまでとはな。
当然だが、これは重大な背任行為だ。
不祥事というレベルすら軽く超えている、組織への裏切りそのものといっていい」
名護は、有角の言葉を半ば聞き流しながら思考を巡らせる。
心に想い描く未来を、その手に掴む為に。
第二に、有角が単身でこの場所に現れたというこの現実は、『青空の会』が持つ政治力の賜物であり、有角はそれを認識している節が有る。
有角が打った手は保身のため。名護のスキャンダルを切り札にして自身の有用性を示し、この先に生き延びる為の戦略。
「念の為だが、この場合黙秘権は不利になるだけと言っておこう。
ファンガイアへの寝返り―――この疑惑に対して、納得のいく説明を聞かせてもらおうか」
繰り返される有角の挑発的な言動の裏側にあるもの。
すなわち、ジョーカーだけでは完成しない手役を作り出したいという意図。
その手役が完成する時、名護の敗北は揺るがないものとなるだろう。
ならば名護の打つべき手は―――有角の手役の完成を阻むことに尽きる。
必要としないカードを送り込み、用意したジョーカーを無駄にする。それだけでいい。
「そんなことはありえないな」
名護は、有角の提示した映像そのものの信憑性を破壊することにした。
「第一、その映像が本物だとしよう―――だが、俺が言ったというその言葉のどこに、俺がファンガイアに寝返ったという文脈がある?」
あの映像は紛れもない本物であることは確かだ。しかし、名護の台詞そのものがおかしいのだ。
あの台詞をファンガイアが言っていたのであれば、名護の裏切りを造作も無く立証することが出来ただろう。
しかし、あの台詞を言っているのは名護だ。それは映像でも変わりはない。
「それに、俺がキバを狙うことは組織内でも認められている。22年前、キバが世界に対して何をしようとしたのか―――ドラキュラの息子である貴様が知らないわけがないだろう」
キバが、人類の敵と目される理由。それは過去に起こした事件にある。
そう、誰も過去からは逃れられない。
「証拠を捏造し、人類の敵であるキバを擁護してまで、俺を陥れようとするとはな……やはりその身体に流れている血は邪悪そのものということか」
名護は、確信した。自分の手札が、有角の手役を上回ったことを。
「もう、貴様の顔は二度と見たくない―――その忌まわしき命、神に返しなさい」
- 48 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/07/23(水) 22:17:34
- とりあえず、攻撃する為の理由付けを行うことで保身を図ってみました。
レコーダー類には気付かないままということにしてはいますが。
- 49 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/09/13(土) 22:30:17
>>
「――――名護啓介。
まさか、ファンガイアと通じるところまで堕ちていたとはな」
有角が名護に続いて晒した手札。
それは、ファンガイアハンターとしての名護の立場を揺るがせる最悪のジョーカー。
キバを追い詰める為に、恵に執心するファンガイア・糸矢を脅迫し利用した一件を撮影した映像。
(……まさか、あの時の映像まで用意していたとはな)
名護は考える。背徳の証拠というべき映像を用意した有角の真意を。
あの映像が嶋の元に渡れば、名護はイクサの装着者として不適格と看做される。いや、それどころか『素晴らしき青空の会』を追放されかねない。
考えうる限りの最悪の未来。それだけは避けなければならない。
「今更言うまでもないが、監査は『Intercept X Attacker』装着者本人もその対象に含まれている。
これは組織の内外から上がった声だ。
現装着者であるお前の行動が最近、こと目に余るとは聞かされていたが…ここまでとはな。
当然だが、これは重大な背任行為だ。
不祥事というレベルすら軽く超えている、組織への裏切りそのものといっていい」
名護は、有角の言葉を半ば聞き流しながら思考を巡らせる。
心に想い描く未来を、その手に掴む為に。
第二に、有角が単身でこの場所に現れたというこの現実は、『青空の会』が持つ政治力の賜物であり、有角はそれを認識している節が有る。
有角が打った手は保身のために、名護のスキャンダルを切り札にして自身の有用性を示し、この先も生き続ける為の戦略の最善手。
この戦略をどのように崩すか、反撃の一手を打とうとしたその矢先。
痛烈無比にして、決定的な王手が楔のように打ち込まれた。
「――――全くな。何が『絶対正義』だ。正義が聞いて呆れる。」
「……黙れ」
―――貴様に何がわかる。
「念の為だが、この場合黙秘権は不利になるだけと言っておこう。
ファンガイアへの寝返り―――この疑惑に対して、納得のいく説明を聞かせてもらおうか」
「……黙れと言った」
―――貴様に、俺の正義の何が判る!
名護の抱く『絶対正義』、それは未だ完成されていない。
神ならぬ人間が完全な物を作り出す為には、様々な代償を払わなければならない。
『絶対正義』の完成のために必要な代償。それは『キバ』であり有角幻也である。
「俺に、同じことを、二度言わせるな……!」
名護の怒気を孕んだ言葉が、有角の追求を阻む。
俗に言う“逆ギレ”という行動である。この行動が己の不利益に働く可能性が高い事を承知で、名護は勝負に打って出たとも言える。
「俺がファンガイアに寝返った……だと? 誰が捏造したかも判らないような映像を根拠に?」
有角が、なぜ名護の自白を求めるような言動に出たのか。それは映像単体では証拠能力に欠ける、それ以外に無いと名護はこの瞬間に、確信した。
ならば、打つべき手はただ一つ。
有角の行動の信憑性を完全に破壊することに尽きる。
「そのような胡散臭い映像をわざわざ用意した努力に免じて偽証の罪は見逃そう……
だが、ミスは罪だ。貴様の犯した、“俺を陥れようとしたミス”という罪は償わなければならない」
かくして弾劾者は逆転し、咎の在処は流転する。
己の証明を立てる術は唯一つ。
「アドリアン=ファーレンハイツ=ツェペシュ……その命、神に返しなさい」
力で捻じ伏せ、奪うのみ。
- 50 名前:名護啓介 ◆753/IdWG5E :2008/09/13(土) 22:39:52
- >>47を修正しました。
取りこぼした『絶対正義』の下りが中心になるよう加筆しています。
少々間が空いてしまいましたが、これは私の不徳と言わざるを得ないでしょう。
一つ提案なのですが、この闘争が本編27〜28話に登場した棚橋による青空の会撲滅の陰謀に
関わって行く、というのはどうでしょうか。
そちらの機関が意趣返しのために棚橋に加担する、というように。
ただこの提案はエピローグに関わってくることなので、没にしても構いませんが。
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