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■ RHマイナス板専用テストスレッド

503 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/24(金) 16:20:10
 船内各所に取り付けられた液晶装置。
 パーティルーム/カジノ/サロン/回廊には大型のプラズマビジョンが据え
付けられ、客室ならばテレビを兼ねた出力端末がその役目を果たしている。
 各施設を繋ぐ廊下などにも、広大な船内を迷わぬようにと設置された案内図
にタッチパネルの液晶装置が使われていた。
 トイレや格納庫にすら、映像出力装置は存在した。

 金と技術を詰め込めるだけ詰め込んだ巨大飛行船―――夜族どもの襲撃と
ともに沈黙していたそれら液晶装置が突如、一斉に明かりを灯したのだ。
 スピーカーからはノイズが迸る。
 制圧され、ナチの亡霊に銃口を突き付けられている被害者も、一難を脱して
吸血鬼どもの死角に逃れている逃亡者も、あらかじめこの事件を察知しており、
今はただオーダーを実行する時を窺っているだけの潜入者も、この船内にいる
モノはみな、否が応でも耳に入れ視界に留めざるを得ない状況がいま作られた。

 液晶はまず、堂々たるハーケンクロイツの隊旗を移した。
 カメラが引かれる。次に映し出されるは二人の美女―――隊旗を挟んで直立
する、ヴァルトラウテとモリガンだ。
 それぞれ口元と引き締めて、カメラよりもやや上部を見つめていた。
 ヴァルトラウテとモリガン―――性質の異なる美貌。
「潔癖/妖艶」「天使/悪魔」という二面性を対局させたかのような構図。
 共通するのは、二人が絶世の美女であるという事実と、ともに黒革の長靴/
乗馬ズボン風のボトム/黒革のベルト/漆黒の上衣/鉤十字の腕章という狂気
の制服で全身を固めているということ―――その二点だけだ。
 大半の乗客は、この映像を目にしたとき、国籍問わず真っ先に思った。
 ―――狂っている、と。

 更にカメラが引かれ、赤い絨毯をも移すようになると、画面外から漆黒の
マントで全身を覆ったグルマルキンが大儀そうに登場した。
 淡い金髪に透き通る白肌は、二人に勝るとも劣らぬ美貌を有していたが、
生憎とこの女、それ以上に禍々しすぎた。失われた額から右頬にかけて斜めに
走った疵痕。失われた右眼から覗く蒼い義眼―――グラム・サイト。
 残った左眼は右の義眼異常に冷徹で、腰に佩いた軍刀よりも鋭利な視線を
液晶越しに飛ばしている。まず堅気には見えず、人間とも思えなかった。

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