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■ 吸血大殲 夜族達の総合闘争会議室 其の五

125 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/09(木) 03:59:10
ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs」

 「黙れよ、クソ狗」

 ハイネ――――或いはそれに類する何か――――は空いている手で窓枠を掴んだ。
 銀髪がトンネルの壁に擦れて焦げ臭い臭いを発したが、気にせず身体を車内に戻す。

 自分の状態を確認……ルガーは床に転がっている。モーゼルもホルスターにある。ナイフは
外に飛んでいってしまったが、それは別に大した問題じゃない。
 身体の方も問題ない。男の放った血の刀に刺し穿たれた身体は既にほぼ修復され、体内に
潜り込んだ他者の血も「喰って」しまったから、また貫かれる事もない。

 「あぁ。気に入ってたのによォ、この服は」

 ボロボロの服を眺めたハイネは、可笑しそうに唇の端を歪め、顔についた血を舐める。

 「コイツはメチャ赦せんよ――――なぁ!?」

 吼えるように叫んだハイネは、先刻とは比べ物にならない――――それこそ、人外の知覚を
持つ筈の鬼ですら反応を赦さない速度で男の眼前に駆け寄った。
 そのまま男の後頭部を鷲掴みにして、車両の床に思い切り叩き付ける。ごぉん、という重い
音と共に、尋常ならざる腕力で叩き付けられた金属の床がへこむ。

 ハイネの背骨に埋め込まれた『ケルベロスの脊髄』は、彼の肉体限界を"後先考えず"最大
限まで引き出す――――例え己の力に肉体を破壊されようとも。

 「アハハッ!」

 狂った笑いを上げながら、ハイネは男の頭を座席横の鉄パイプに叩き付け、割れていないガ
ラスに叩き付ける。相手の如何なる抵抗も、最早彼を止める事は出来ない。

 ――――ケモノの強さとは、自身の死を厭わぬ愚か者の強さだ。

 「お、か、え、し」

 自動ドアを男の顔面で使い物にならなくしたハイネは、男の鳩尾目掛けて強烈な膝蹴りを放
った後、最後に男の身体を運転席に向かって投げ付けた。
 濡れ雑巾のような音を立てて男の身体が運転席に消えたが、その身の内に黒い狗を宿した
少年は、そのぐらいの暴虐で獲物を取り逃してやる積もりはなかった。

 落としたルガーを拾ってマガジンを交換し、腰のホルスターに差してあったモーゼルも取り出
す。空弾倉の代わりに突っ込んだのは、二十連発のロングマガジンだ。

 モーゼルM712シュネルフォイアーのセレクターを、セミからフルに切り替える。
 そして両手の銃を運転席に向け、トリガーを――――引かずに、ゆっくりと歩き出す。

 「締めにしようぜ、ブラザー」

 そう言って歩き出したハイネは、全ての銃弾を男の頭に叩き込む積もりでいる。

 ――――どんな生き物だって、頭が無くなれば生きていけない。

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