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■ 吸血大殲 夜族達の総合闘争会議室 其の五

164 名前:『蓬莱の人の形』藤原 妹紅 ◆zPhoEniXzw :2007/05/26(土) 15:52:440



藤原物語序


 余、たまたま怪しき閑話在りて、ここに記す。
 羅子は水滸を撰して三世唖児を生み、紫援は源語を著はして、一旦悪趣に堕するは、け
だし作り話にて世を惑わせし業の故也。雨月は雉鳴き龍戦ふ杜撰なる話にて、もとより当
に信と謂はざるべきものなりて、悪趣免れけり。余、これより語りし閑話は何れも偽り無
き事ゆえ、剪枝畸人とは違う異種にて悪趣免れんと思すなり。いみじくも浅ましく恐ろし
き話にて、目に見し地獄を語らんとす。之摘読せし者は、斯く浅ましき様を覚え、神仏に
祈り、慎ましやかに暮らせん。蓬莱遊人書す。




 暁に 負いし陽炎 胸焦がし
   茜差す日の 暮れ行く道へ


 §


 昇る日は、日照りの香りを宿したり。
 河辺は水子の霊と血肉で赤く冷たく染まり、この世ならざる光景を浮かべり。
 見る者、年の頃は若きと見ゆれども、目鋭く、歳経た獣の如し。
 網笠を外せば、絹の糸零れ、白き顔現れ、其の者白子と思しけれ―――



「いつの間に餓鬼道地獄に迷い込んだのかね、私は」

 旅の道すがら水を欲し、川べりを辿って清流を求めれば、出たのは悪鬼悪霊の類。川上
から流れてゆく赤子水子を見る限り、ろくでもないとは思ったが、まさか浮世に地獄が落
ちるとはさすがに思わなかった。続く日照りがそれだけ苦役ということだろう。
 遠めには、干からびた村が見える。ほとんど生きては居まい。居ても半死半生だろう。

「―――あさましい」

 胸元を血で汚し、周囲に肉を散らばせた餓鬼。
 河を紅くしているのはそいつの仕業に相違ないだろう。曇り眼鏡を外してみれば、その
美貌神妙なる人形。されど、行いは浅ましき餓鬼道なり。手に取れるもの全てを喰らい、
餓え続ける苦の輪廻。それこそ餓鬼道。

 さて、ここで取れる道は二つ。
 目の前の鬼を調伏するか、それとも見てみぬ振りをするか。
 正直を謂えば、面倒は御免という処。降る火の粉は払うが、自ら撒くこともあるまい。
 しかし―――首筋を焼けるような悪寒が走っている。
 それが、背を向けて去ることを許さない。

 一体何だというのか。あの人形は―――

 知らず、私は懐で符を握っていた。
 不動明王。炎を以って悪鬼を駆逐する護符である。
 大抵の妖怪であれば、一撃で退散するものだった。


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