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■ 月下の蜘蛛は露となり―――それでも彼女は笑うのか?
- 58 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:02:230
無防備であどけない少女とは言え、壮絶で凄惨な絵を見せるこの空間に立つコトができるのだから、
手を抜くわけにも行くまい。
なにより、『線』も『点』も辛うじて見える程度なのだから―――――まったく、俺も誰かのコトは笑え
やしないようだ。
感謝するよ、兄弟。 ―――――オマエの体質のお陰で愉しめる。
「ならば乾く前に色を着けるだけさ。―――――と、自己紹介がまだだったね。吾は七夜志貴。個展
『惨殺空間』の準備に忙しい、しがない殺人鬼さ」
逆手に構えたナイフは物欲しそうに怪しげな光を鈍く放ち、紅い月よりなお紅い液体を滴らせる。そ
れはまるで品のない犬のような姿だ。
しかし妄りに振舞う女のような芳香に、否が応でもこの躯は反応する。
手が、
腕が、
足が、
脚が、
心音が、
思考が、
早く―――
速く―――
疾く―――
殺せ、殺せと発情したかのように、囃し立てる。
まあ、待て。
未だ夜は長く、月は空を我が物としたかのように天に収まり、太陽は惰眠を貪っている。
ならば吾等に残された時間は両の手で抱えきれぬほどに存在し、絶頂に到るまでは十分以上に
有り余っている。
舞台の幕は上がったばかり。
一幕一場は状況の説明以上の意味はなく、それが殺し合いともなれば小競り合いもいいところだ
というもの。
巧く殺すのは二の次に、一先ずは挨拶を交わそうじゃないか。
地を這うように腰を落とし、疾走を開始する。
この程度なら十分対応できるコトを願っておくよ、お嬢さん?
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