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■ 月下の蜘蛛は露となり―――それでも彼女は笑うのか?

1 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 22:32:070
 取り敢えず、即席だがこれでよかろう。
 あまり見ていても面白いものじゃない。
 部外者の立ち入りは、基本的にはお断りだ。





   ―――――かくして惨劇の幕は上がり、

                      月の降る夜、

                           誰もが泣き笑う―――――

2 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/08(木) 22:52:200
 うん、立ててくれてありがとね。

 それじゃー、まずはどうしようかな。
 場所と、状況かしら。

 

3 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 22:56:220
 さてと、それじゃあ少しだけ建設的な話をしようか。
 ま、詰まるところ『俺』でいいのかというコトだね。

 オマエの原典は知っているし、なによりあの傍若無人でありながら理路整然とした弾幕は心得ている
だけに、スペックの違いというのは十二分に心得ている。しかも―――その『能力』は中々に厄介なもの
でね。舞台を整えたとしても、五分に持ち込めなくしてしまう鬼札だ。
 その辺りは互いの空気の読みようでなんとかなるが―――はたしてそれがオマエらしいのかは、聊か
疑問なところだ。

 使える手駒を晒してしまってもいいんだがね。俺の場合はそれが地雷の起爆装置と直結してしまって
いるから―――解答を待ってからかな。
 いやまあ、周知の事実に近いとは心得ているが―――マナーとして、ね?

4 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 23:04:290
 で、だ。もし『俺』が相手であると仮定した場合、森――或いはビルの林立地帯が望ましいかな。
オマエは飛べるかもしれんが、俺は飛べないんでね。多少の小賢しさは必要というわけだ。
 森であれば地上戦に引き摺り込めばいいし、上から虱潰しに叩くとしても深く広大な森であれば
徒労に終わる可能性とて高い。後者ならば、ビルを足場に三次元的に立ち回ればいい。

 加えて――舞台を森とするならば、博麗の社の付近というコトにしてしまえば、オマエがふらっ
と出てくる状況と言うのもありえぬ話ではないし、俺の方でも『里帰り』なんて安い理由付けができ
るんでね。街なら街で同様なんだけどさ。

 思いついた限り、俺がオマエに匹敵する状況を作るには、こんなところだろうか。
 使い魔の手を借りたっていいんだが――いまいちこちらは把握していなくてね。整合性を求めら
れると、かなり危ういんだ。

5 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/08(木) 23:13:280
 ん、そうね。こっち飛び道具が反則レベルだし、多少は制限あったほうがいいわよね。
 で、場所だけど……神社のそばだと無敵巫女が出てくる可能性があるから微妙かな。

 となると、私が外に出向いてあなたに出会う、って形がいいかも。
 場所はビル街―――だけど、森での戦いも面白そうだから、両方取っちゃおうかしら。
 ビル街のそばにある山林の向こうに、幻想郷が結界を張っている、って感じかな。
 それで、私は幻想郷から飛んでくる、ってところかな。

6 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/08(木) 23:20:360
 あ、そうそう。
 お相手はもちろん、貴方で、ね。
 手駒についてはまあ、またあとで。

 それで、こっちに質問とかある?
 出来る範囲でなら答えるよ?

7 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 23:26:320
 迷ったならば二つ取る、か。中々いい判断だよ、オマエ。
 となると、だ。街のほうで出会って森へ、が賢明な判断かな。森で見つけると言うのは聊か偶然に
頼りすぎだしね。
 森で虱潰しに撃たれたからビルへと駆けるほうが自然な気もするんだが―――どうかな、価値観
の違いかもしれないな、こればかりは。

 俺が森へ向かう理由は―――作ろうと思えば作れるな。
 どちらを先に持ってくるとしても俺は問題なく動けるから、後はそちらの好みかな。

8 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 23:27:350
 なに――そちらに関しては問題ない。
 これでもそこそこに資料を集めていたからね―――理由は、聞かないでくれ(何

9 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 00:08:260
 うん、聞かないでおく(何)
 人のことを根掘り葉掘り聞かないのもレディの嗜みだしね。

 で、そうね……うーん。
 とりあえず街で出会って、そこで少し遊んで、森に移動。
 その後は展開次第でどっちに移動してもいいかな。
 あんまり多いと大変だけどね。

 こっちは「退屈だから勝手に外に出た」で理屈付けは済んじゃうわね(何)
 だから、うん、わりと融通はきくから。
 そっちにも結構合わせられるかも。

 ―――こういう形の大戦は初めてだからちょっと勝手が分かりづらいかな。
 お祭りは勢い任せでも良かったんだけどねー。
 うん、だから、リードはお願いしますわ、なんてね。

 あ、じゃあ大丈夫かな? 私の方の資料とか。
 なら、うん。なんとかなりそうね。

10 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 00:15:270
 さて、それじゃあ大筋が決まったところで、導入でも入れるとしようか。
 暫し待っていてくれ―――と、言いたいところなんだがね。俺の活動限界も近いコトだし、先に
休んでいてもらっても結構だ。
――――ま、三十分もあれば書き上げて見せる自信はある。なにかで暇でも潰しておいてくれ。

11 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 00:18:230
 うん、分かった。のんびり待ってるね。
 急ぐ必要はないからね。夜ならこっちも十分時間が取れるし。

 それじゃ、リードはお願いね。

12 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 00:49:390
 空は遠く、月は天を手中に収めんばかりに輝く。

―――――紅く。
―――――赤く。

 空に浮かぶ大輪の華は見るものを狂気に誘い、死者は狂喜乱舞し現世へと舞い戻り、果たせぬ約定を
悔いてか儚んでか喚き蠢く。

「やれやれ―――――折角自由の身を手に入れたんだが、長く染み付いた習性は拭えやしない、か」

 アスファルトを打つ靴底の音は闇夜に紛れ、響くコトなく霧散する。
 これも、長く染み付いた習性だが忌避するものではなく、むしろ喜ばしい異能であるコトは事実であり夜
の街を闊歩するには非常にありがたい。

 ほら―――――こんな風に。

 音もなく手にしたナイフは前を歩いていた男の背中に突き刺さり、突き通し、傷口を抉って―――死に
至らしめる。その傷口からはゴボゴボと蛇口の壊れた水道のように、今夜の月と勝るとも劣らない紅い
血液を零し、水溜まりを作り上げる。
 男はその水溜りを踏んでようやく自分の”死”に気付き―――悲鳴を上げるまもなく解された。

 なんと甘美な―――”死”
 なんと優雅な―――”死”
 なんと無様な―――”死”

「で、今夜の目的はなんだ? 巧く使うのはそっちの領分だ。目的がないなら俺は散策も兼ねてこの街を
見て回りたいんだが―――――」
「好きになさい。今のところ予定はないし―――今夜は私の予定があるの。貴方は不要よ、七夜」
「ああ―――そうかい。ならば今夜は別行動としよう。精々、羽を伸ばさせてもらうよ<ruby><rb>使い魔</rb><rp>(</rp><rt>マスター</rt><rp>)</rp></ruby>」

 急激に都市開発が進み、未だ未開拓の土地が多い街。すぐそこにビルが林立していたかと思えば、そ
の十メートル先には深い森が待ち受けている。流石にこれは極端な例ではあるが、人の手の入らない箇
所は多く存在し、当然―――”殺す”には丁度いい場所が点在する。
 今しがた一人を解したここもその一つではあるが―――血の匂いに溢れ返ってしまった。「つくづく下手
な殺し方だ。これでは誘蛾灯どころか蚊帳の中だ」などと自嘲し、歩みを進める。

 ビチャリ、ビチャリと靴底に付着した血が音を立てるが、それもまた心地いい。
 これで漸く晴れて自由の身。”遠野”に潜む悪夢でも、噂の呼び出す殺人鬼でも、反抗の手駒でもない
―――”俺”の生だ。

「漸く―――漸く、か」

 俺は―――――漸く殺人鬼として振舞える。

 カツ、カツ、カツと月明かりの支配する世界に音が響く。「無様な―――」音を立てるなんて二流のする
コトだ。だから―――大凶に当たってしまう。

「吾は面影糸を巣と張る蜘蛛―――――」

 一息に音の主の前に立ち、

「―――――ようこそ、この素晴らしき惨殺空間へ」

 二人目の犠牲者もまた、音もなく闇へと紛れ逝く。

 ああ―――素晴らしきはこの世界。
 生命の循環は留まるコトを知らず流れ続け、されども儚き生命は何時でも、何処でも、災厄によって
淘汰される。死とは突然の終わりではなく、生命の循環の中に埋め込まれしモノ。
 ならば、終わりを甘美に彩ってこその生命だ。

 極彩と散る珠は―――――儚くも、美しい。

13 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 00:52:570
 一応上がったよ。
 そうだな―――血の匂いを嗅ぎ付けてやってきてもらっても構わないし、まずは外に出てくる描写を
挟んでワンクッション置いてもらっても構わない。
 そちらの好きなようにできるはずだが、修正はいつでも受け入れるよ。


 と、後は少し<ruby><rb>テストだ。</rb><rp>(</rp><rt>、、、、、</rt><rp>)</rp></ruby>

14 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 00:57:030
 やれやれ―――ルビは実装されていた筈なんだがな。
 まあ、いい。それにしても三十分も掛かるとはね―――感覚を取り戻せていないか。先が思いやら
れるよ、まったく。
 一応待つつもりではいるが、投下後十五分以上反応がないようであれば休んでもらって構わん。
殺人鬼なんて自由業の割りに、忙しくてね。

15 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 01:16:150
 っとと、いけないいけない。
 確認したわ。まあうん、大体の状況はこんなものでいいか。
 それじゃ、次は私だけど―――んー、少し時間がかかるかも。
 もしこっちが書いてる間にそっちが限界迎えるなら、休んじゃってもいいよ。
 一応毎夜毎夜は顔出せると思うし、打ち合わせはまたそのときにでも。

16 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 01:21:210
 心得たよ。じゃあお言葉に甘えて先に休ませてもらおうかな。
 基本的に毎日確認できるが―――場合によっては返答できない可能性もある。
 出来るだけ早く返すけど、限度があるってのは気に留めておいて欲しい。

 それじゃあ、また、夜に。

17 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 01:27:040
 ええ、また夜に。

 ……さて、まずは飛び出していこうっと。

18 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 17:28:070


 ここには風は通らない。光一つ差さない閉ざされた領域。
 冷たく薄暗い世界。私のほとんどが納められた場所。
 そんなところでも、生まれつきなのか、月の満ち欠けだけは肌で分かる。
 まるでこの目で見たかのように分かる。今日は紅い―――満月の夜。

「―――でよっか」

 だから、私は当たり前のように、外に出た。
 閉ざされた壁を砕き、歪められた空を潰し、封じ込める呪いを引き裂く。
 全ての運命の終わりは、私の右手の中に。
 ただ、それを握り締めれば、私を阻むものはない。
 ―――まあ、面白くないから、あんまり使うことなんてないけど。
 そんなことより、弾をたくさん撃ったり撃たれたりしたほうがはるかに面白い。

 長い階段を飛ぶように駆け上がり、紅い紅い―――月明かりでさらに紅い廊下へ出る。
 音もなく窓を破ると、冷たい風が体を掠めていく。この館は窓も風通しもほとんどない
ので、新鮮な感覚だった。
 ―――導かれるように、外へ飛び出す。
 音もなく、誰にも気づかれないように出て行くのは、なんだかいけないことをしている
ような気がして妙に楽しい。私が興味を持つ、数少ないこと―――外に出ること。
 外には見たことがないものも、壊したことがないものも、世界の果てまで広がっている。
 だから、気が向いたときだけ、私は外を楽しむ。

「……あは」

 空を見上げれば、真円を描く月。血を吸う悪魔の守り神。
 それが座する蒼い夜を、白い雲の狭間を、私は駆けていく。
 外へ。外へ―――
 それだけを気持ちに抱いて。
 足元には、深い森が広がっていた。
 深く―――深い緑色の地平が何処までも続いているような気がした。

 そして、その無何有を阻むのは、大きな結界だけ。


19 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 17:40:320


 結界を壊さないように、注意深く、くぐっていく。うかつに壊すと面倒なことになると、
良く知っている。せっかく内緒で抜け出してきたのに、目立つようなことはしたくない。
 運よく見つけた綻びに身を躍らせ―――ほら、出てきました。
 ぽつぽつと地上に光が見える―――外の人間の街。普段見ることすらない、空を突く建
物の並ぶ人間たちの城。今は夜だから、誰も出歩いてはいないけれど。目印にするには十
分だった。背が高いから、見失うこともない。
 足元の森が消えたところで、私は歩いてみることにした。
 音もなく空を下って、足元の硬い感触を楽しむ。

「よくこんなので歩けるなあ。疲れないのかな」

 かつ、かつ。
 わざと足音を立てて歩く。
 ―――途中で加減を間違えてめり込ませてしまったけど、別にいいや。
 立ち並ぶ灯りは、夜でも遠くまで見える。私には必要ないけど、便利なものなのだろう。
 ただ、それでもわだかまる闇を消せはしない。

「……あら」

 慣れ親しんだ匂い―――血の香り。
 なんでだろう。
 気が惹かれる。だから、それを辿りながら足を向けていく。
 闇へ、闇へと―――


 見つけた。


「ねえ、貴方は何をしてるのかしら」

 声をかけてから、ちりちりと背筋が熱いことに気がつく。
 足元には血が満ちている。それが気分を高揚させる。
 彼のいる袋小路は―――血で描かれた油絵のようになっていた。
 血と、肉と、死。
 非日常が―――生きている間では味わえない幻想が満ちている。

 ―――背筋の感覚が何なのか、思い出す。

 そうだ。私と対等に遊べる遊び相手と出会ったときだ。
 思わず、顔が笑う。嬉しさを押さえ切れなかった。

20 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 17:42:030
 とりあえず、こんな感じでいいかな。
 この後の出方は、そっちまかせ。
 一息置いてもいいし、いきなり襲い掛かってもいいよ。

21 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 21:31:040
―――――やれやれ、漸く戻れた。時間から取り残される感覚だけは、どうにもいただけない。
 ああ、そうだ。俺が現れるコトができるのは大抵がこの時間帯だ。少し気に留めておいてくれ。
 これで闇夜に紛れ消えるのも早いんだから―――まったく、たいした殺人鬼だよ。

 で、だ。続きは今すぐ取り掛かる―――と言いたいところだけどね。少し間を置いてからになり
そうだから―――そうだな、十一時には挙げよう。
 それまでは寛いで居てくれ。

 展開としては、ワンクッション置く形になるだろう。
 少し、ネタも思いついたんでね。それはまた後でだ。

 纏まらない思考で書くのは好きじゃなくてね。
 それじゃ、約定を果たすコトを肝に銘じて、一旦退かせてもらうよ。

22 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 23:03:250
 いつだって人は、光を求め闇夜を彷徨う。

 人工的で無機質な光だったとしてもそれは変わらず、眼下に広がる光景は今が夜であるコトを忘れ、
眠りにつく暇さえも与えぬまま、陽光の洗礼を待つ。
 いつかこの深い闇も、真円を描き深淵を照らす紅い月も、人の素顔も、幻想と呼ばれるようになり、
夏の降雪の如く儚く消え行くのだろうか――――。

―――――参ったね。
 こんな高いところから人を見下しているから、毒にも薬にもならない感傷に浸ってしまうんだ。

 ここは、この街でも一際高いビルの上。北を見やれば歓楽街が立ち並ぶ、喧騒の途絶えない不夜の
城が待ち、南は森、西には工業地帯が立ち並び、東は―――住宅街か。
 多くの人が集まる場所へ出向くのが得策ではあるが―――如何せんこの服は目立ちすぎるのが不服
だな。ま、今では学生服で夜の街を歩くなどさほど珍しくもないように思えるが、官憲とコトを構えるのは
得策じゃあない。
 如何に無力で無能だったとしても―――――数を揃えられては厄介なんだ。

 食い扶持が減ってしまうからね、後々を考えれば得策じゃない。
 住宅街も同様だし、工業地帯は既に歯車さえも眠ってしまっている。
 やはり、森に向かうのがここでは最善策か。幸い、日没直後と呼ぶには遅く、深夜と呼ぶには早い時
間だ。道中誰かに出くわすコトだってあるだろう。
 加えて、向こうはまだ煌々と明かりが燈っている。突貫工事、って奴だろう。

 お勤めご苦労様―――じゃあ俺も、頑張ってお勤めを果たさないと。
 それよりもまず、ここの掃除か? どうせ夜明けには消えるんだから、このビルがどれだけ汚れてい
たとしても誰も構いやしないか。たかだか十や二十の屍だ。慌てるほどじゃあないだろ?


―――――広大な森は、さながら陸に浮かぶ海のようなものだと感じるコトがある。

 夜の荒波も、夜の木々のざわめきも、似たようなものだ。波の崩れる音も、木の葉が立てる音も、酷く
落ち着ける。
 一定の周期で奏でられ、不定のテンポで奏でられる自然の音。雑踏に篭る陰鬱な音とは違い、自然の
それらは心臓の刻むリズムにも似ているのだから。
 だからこんなにも―――――殺しに精が出たって仕方あるまい。

 他人の心音も、                                                 /カツ、
 他人の血液も、                                                 /カツ、
 こんなにも俺を、                                                /カツ、
                                       ―――――落ち着けてくれるのだから。

                                                           /カツン。

「一つ、二つ、三つ――――四つ、だな」

 袋小路には三つつの亡骸と一人の亡者。
 誘われ出づるは蛇か鬼か?

「こんばんは、お嬢さん」

 振り返り、大袈裟に両腕を広げ

「俺はしがない絵描きでね。少し、個展の準備をしていたんだ」

 これまた大袈裟に腕を折り、深く一礼。

「―――――ようこそ、この素晴らしき世界へ」

 沸騰しそうな血液を押さえ、深い深い一礼を。
 敬意と、畏怖と―――殺意の。

23 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 23:11:430
 予定より数分遅れたか――――なんて、無様。
 まあいい、気を取り直すとしよう。悔いたところでなにも始まらん。
 ま、後で若干修正を加えるコトにしよう。大筋を変える気はないから、気にせず書くといい。


 で、思いついたネタだが、それほど面白みのあるものでもないんだけどね。
 台詞のみで少しだけ、五つか六つ、進めてみるのも面白いかと思うんだ。
 オマエのところで言う「弾幕ごっこ」前の掛け合いのようなものをイメージしてもらえればいいだ
ろう。
 要所要所に―――例えば場面の転換なんかに挟んでみたらどうかと、思いついたんだが。
 どうかな?

24 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 23:39:510
 ん、そうね。やってみましょうか、そういうの。
 てことでちょっと待っててねー。

25 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 00:01:450


 背筋が熱い。高揚しすぎて燃えてしまいそう。
 三つの亡骸に、鮮やかな紅い筆遣い。燃え上がるような色彩は文字通り炎を描いて――
硬い地面と高い壁をキャンバスみたいに仕立て上げている。

 画伯は、目の前の彼。
 優雅に、大げさに一礼するその姿が、とても気に入った。

「素敵な絵ね。それに貴方も。こんな血の匂いでそんな嬉しそうな顔が出来るのなんて、
私は一人しか知らないわ」

 その一人はお姉さま。運命を手に握る紅い悪魔。
 ―――私は、その妹。

「フランドール・スカーレットと申しますわ、絵描きのお兄さん。今日は月も綺麗だから、
ちょっと散歩に来たの。誰にも気づかれないように―――こっそりとね」

 くすりと悪戯っぽく笑う。一歩下がってスカートを持ち上げ、丁寧に一礼を返す。
 淑女の嗜みは大事な物。私も壊せない素敵な決まりごと。

「ところで、この絵。今日はどれだけ描いたのかしら。見たところ、筆はなかなか早いと
思うんだけど。これは―――三つで一つの絵になってる、ってところかしらね。躍動感が
あって好きよ、こういう絵。まるで何かが燃え上がってるみたいで―――綺麗」

 命の流れで描かれた絵画は、生き物のように揺らめく錯覚を覚える。まるで絵の具自体
が生きているようにゆらゆらと―――むせ返る血の匂いがそうさせるのだろうか。騙し絵
みたいに炎の抽象画がちらつく。

「出来れば、描いてるところも見てみたいわ」

 こみ上げる愉快さに、笑みを浮かべながら、私はそういった。
 ―――この人は、どんな風に私を魅せてくれるのだろう。
 その期待が、胸の奥の鼓動とともに、少しずつ膨らんでいった。


26 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 00:03:130
 んー、もうちょっと書こうと思えば出来たかな。
 後で足してみようかしら。

 まあ、大筋はこんな感じでいいかな。

27 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 07:27:230
 済まない、眠っていた。
 また夜に現れるから、続きはそのときに。

28 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 11:25:530
 はいはい。
 焦んなくてもいいよー。

29 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 22:40:090
 無防備であどけない少女とは言え、壮絶で凄惨な絵を見せるこの空間に立つコトができるのだから、
手を抜くわけにも行くまい。
 なにより、『線』も『点』も辛うじて見える程度なのだから―――――まったく、俺も誰かのコトは笑え
やしないようだ。

 感謝するよ、兄弟。  ―――――オマエの体質のお陰で愉しめる。

「                        」

 逆手に構えたナイフは物欲しそうに怪しげな光を鈍く放ち、紅い月よりなお紅い液体を滴らせる。それ
はまるで品のない犬のような姿だ。
 しかし妄りに振舞う女のような芳香に、否が応でもこの躯は反応する。


            手が、
                腕が、
                    足が、
                        脚が、
                            心音が、
                                 思考が、


                          早く―――
                        速く―――
                      疾く―――


 殺せ、殺せと発情したかのように、囃し立てる。

 まあ、待て。
 未だ夜は長く、月は空を我が物としたかのように天に収まり、太陽は惰眠を貪っている。
 ならば吾等に残された時間は両の手で抱えきれぬほどに存在し、絶頂に到るまでは十分以上に
有り余っている。

 舞台の幕は上がったばかり。
 一幕一場は状況の説明以上の意味はなく、それが殺し合いともなれば小競り合いもいいところだ
というもの。
 巧く殺すのは二の次に、一先ずは挨拶を交わそうじゃないか。

 地を這うように腰を落とし、疾走を開始する。
 この程度なら十分対応できるコトを願っておくよ、お嬢さん?


30 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 22:42:260
 これが殺し合いの契機かな?
 で、これの前に台詞のみ―――心情の描写も、行動の描写も挟まない台詞のみのやり取りを、と思っ
ているんだが……
 >>27のものに続けるならこんな感じかな?

31 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 22:43:100

     「残念だが、画材が足りなくってね。筆を振るうのは万全なんだが」
 

32 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 22:46:180
 こんな感じで幾つかやり取りをして、>>29の台詞の空白を埋めて終わりとする。
 試してみて嵌らなければ斬ってしまってもいいしね。
 嵌るようなら場面の転換毎に入れてみるのも悪くない。

 じゃ、取り敢えずは返答待ちか。
 十二時まではなんとか居られるように努力するよ。

33 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 23:18:470
 んー、ふむふむ。
 いくつか台詞を出して、それをお兄さんの方に入れていくのかしら。
 その言葉に続くとすると―――

「あら、こっちには人間がいっぱいいるじゃない。絵の具には困らないでしょ?」

 とかそんな感じかしら。

34 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 23:34:080
 いや、一レスそのものを台詞単体で埋めてしまおうかと思うんだ。
 後から貼るのには手間なんだけどね。

 弛緩と緊張―――というか、メリハリをつける感じで。
 お互い『遊び』だったり『快楽』だったりで、緊張感に欠けているだろう?
 だから、言葉遊びというか、緊張感のない会話だとかが嵌るんじゃないかと思ってさ。
 そっちの原典っぽいものも演出できるかも、なんて狙いもあるんだが。

 まあ、それに続けるとしたら。

 「人間には飽きちゃってね」

 こんな感じだろうか?

35 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 23:44:250

「そうなんだ。人間以外はこっちだと少ないから大変ね」

 こんな感じね。

 1レスで使っちゃうのかー。
 ……ん、まあそれはそれでいいかな。
 別にたくさん使うことなんてほとんどないし(何)

 わかった。
 じゃあ適当に掛け合い考えてみよっか。

36 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 23:49:090

「居ても鮮度が低くてね。ところで、お嬢さんは幾つかな?」

―――――これは何か拙い気がする(何

 他の奴はよく書くからね―――別の方法で目立ってみるのも悪くはないさ。
 賢しい足掻きだけどね。

37 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 23:55:570
 んーん。いいんじゃないかしら。こういうのも面白いからね。
 ……って、レディに歳を聞くのは失礼よ? くすくす。
 でもまあ、いいか。

「ほんの495年ほど。でもこういうことは女の子に聞いちゃ駄目よ、お兄さん?」

 こう、かな(何

38 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 23:59:480
「は―――それは済まなかったね、お嬢さん。お詫びにダンスでもいかがかな?」

 殺し合いに繋げるコトを考えるとこんな感じかな?

 面白いと思ってもらえるなら結構だ。ネタが腐らずに済むんだからさ。

39 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/11(日) 00:08:380
「あら、ダンスのお誘いなんて素敵ですわ。でも私は絵の具にはなれないわよ?」

 こんな風、かな。ちょっとぴりっとした感じ。
 この辺でそろそろ戦ってもいいけど―――その辺はまた今度かな。

 今やるとたぶん、その、途中で寝ちゃうかも(何)

40 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/11(日) 00:18:170
「それじゃあ乾く前に色を着けるだけさ。―――――と、自己紹介がまだだったね。吾は七夜志貴。
個展『惨殺空間』の準備に忙しい、しがない殺人鬼さ」

 じゃあこれで一旦打ち止めかな。
 >>29の台詞はこれで埋めてしまうとしよう。

 今夜は俺も限界だから――――続きは気長に待っておくさ。

41 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/11(日) 00:35:300
 うん、わかった。
 じゃあこの後にそっちの奇襲を迎え撃つ形でいいのよね。
 明日までには仕上げるわ。

 お休み、七夜のお兄ちゃん。
 ……呼び方、これでいいのかしら(何)

42 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/12(月) 01:23:550


 ―――こどうが、どこまでもたかなる。
 それは最高潮に達して、

「あら、それは素敵ね。でも紅いお化粧はお姉さまの専売特許だから遠慮しておくわ」

 ―――私は、自分の中で熱い空気が弾けるのを感じた。

 向こうも、私と遊びたいのだ。
 理解した瞬間、血の匂いが恍惚を煽る。

 それに誘われて、私は―――“遊ぼう”と決めた。

「私はフランドール・スカーレット。楽園の素敵な悪魔よ。―――それじゃあ、ダンスの
エスコートはよろしくね、志貴お兄ちゃん?」

 そして、大胆なステップで駆ける志貴お兄ちゃんに手を差し伸べ、
 無数の紅い、細く鋭く薄く、梳られた魔法の刃を生み出す。
 宝石のような輝きが個展を満たしていく。
 それはまるでシャンデリア。美麗に墜とせるシャンデリア。

「さあ、貴方はコンティニューしなくて済むかしら?」

 もちろん、させるつもりは、ない。
 風を切って、襲い来る獣へ紅い刃が撃ち出される。
 血のように赤い軌跡が、壁面の絵画に色付き硝子の花を添える。
 そして刃は、阻むものを切り裂きながら、惨殺空間へと飛び込んで行った。

 ―――彼もまた、“絵”の一部にするために。

43 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/12(月) 01:26:020
 とりあえず迎撃。
 最初だから、そんなに強くない弾幕。
 適当に避けてもいいし、切り払ってもいいわ。

 あ、それと……遅れてごめんね?
 ちょっとお寝坊しちゃったから、日付変わっちゃったの。

44 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/12(月) 21:18:050
 眼前に広がる血刀によって編まれた、死線を束ねまだ足りぬ剣林弾雨の幕。これは死を覚悟すべき
状況―――なのだろうか?

「続きがあるなら見てみたいものだけどね」

 呆と、蒼く光る『眼』に映るは血よりも紅く、月よりも醒めた、なによりも鋭き『死』のカタチ。朧の明かり
に照らされた、それに浮かぶ歪な線と点にナイフを走らせ―――るコトはせず、全てを紙一重で避ける。
上下左右天地の区別なく空間を蹂躙し、駆け―――抜ける。




 こんばんは―――――紫の君。

 君に捧げる歌はこの穢れきった躯に廻る黒き血で記し、
                                   /紙一重といえども傷付き、

 君の亡骸の隣で詠めば満足してくれるかい?
                             /流れた血は微々たる物でも、

 君は判ってくれるかな?
                /無駄にしちゃ勿体無いだろう?




                     この愛情にも似た殺意を。




 振るう刃は音もなく闇に潜むように突き進み、一点の迷いも曇りもないまま殺す為だけに銀弧を描く。
 慣れ親しんだ感触が脳に響くか、脊髄が焼きつくような空虚を掴むか。

 そんなコトはどうでもよく―――

「幕は開いたよ、フラン。
―――――ここは舞台の上だ。役者は役者らしく七転八倒する荒波のような世界で、終幕まで役を演
じなきゃならない。台詞の正誤も演技の上手も下手もないが――中途半端に舞台から降りるのだけは、
ご勘弁願いますようお願い申し上げます――――なんてね」



45 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/12(月) 21:20:390
 こんなところかな。
 ナイフが走った先は決まってないから好きにやってくれて構わない。
 取り敢えずは一振りだ。二の太刀とかは考えなくてもいいし、動かしてもらってもいい。
 ようは―――お好きにどうぞ、かな。


 じゃ、一旦消えるよ。
 ああ―――――それと。

「おにいちゃん」のほうがいいんじゃないか?(何

46 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/18(日) 21:10:520


 風雷の軌道。荒れ狂う風のような飛翔。
 しかしそれはどこまでも鋭く美しく―――
 志貴おにいちゃんは、空を飛べるはずもないのに、まるで翼を巧みに操る鳥のように、
ソラを踊って全てかわした。
 鮮やかなステップ。
 彼にとっては天も地も壁も舞台の床に過ぎないのだろうか。
 紅い刃は鏡のように光りながら壁や床につき立って、砕けて逝った。

「……人間ってすごいね。ここまで出来ちゃうなんて」

 きらめく闇。水平に奔る―――流れ星。
 それは無骨なナイフの一撃。
 首筋を狙う、残像だけが死神らしい弧を描く鎌。

「でもまだ、だーめ」

 それを、手に持ったいびつな杖で受け止める。
 その衝撃のまま空に舞い上がり、私は舞台を支配する。

「役者は―――観客を振り回してこそ役者よ。だって劇の主役は」

 しゃらん、と背中の羽を鳴らす。並ぶ宝石、奇怪な翼。私の象徴。

「私たちだもの」

 式を打つ。魔法の陣が生まれる。
 そこからこぼれる鮮やかな光が街を覆い―――輝き全てが魔弾となる。
 それは蔓を伸ばすように建物へ巻きつき、続いて眼下の彼へと走っていく。

「―――Cranberry Trap !!」

 それは、私の仕掛ける甘い罠。
 あらゆる方向から襲いかかる呪詛は、その腕で相手を絡め取る。

 紅い紅い―――血の色の実をつけるために。

47 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/18(日) 21:13:490
 おまたせ、志貴“おにいちゃん”。うふふ。
 ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった。

 とりあえずスペルカード発動ね。
 避け方受け方止め方は、そっち任せでいいかな。
 一応攻略法は原典と同じ(何)


48 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/19(月) 00:39:430
 惨劇の舞台は不協の和音ともに幕を上げ、余韻を残したままに閉幕へと胎動を始める。
 ざくり、ザクリと神経を殺ぎ落として行くような憐憫にも似た殺意に身を委ね、役者はただただ
物語の筋書きに沿って進行し、己を喰らい他者を喰らう為に侵攻を開始―――――。
 感覚が研ぎ澄まされ、神経を肉の上に貼り付けたかのような錯覚すら覚える。今の俺であれ
ばざらついた空気に紛れる原子の一つ一つを肌で感じ取れるのではないだろうか?

 それにしてもこの行為は――― 一種の信仰に似ている。
 親交を深める為に、親交を断絶する殺し合い。

 闘争の本義とは他人を自分だけのモノにする為の、究極の独占欲。究極の加虐欲。
 加虐は被虐に通じ、殺すコトと殺されるコトは同義であり、愛するコトと愛されるコトは対であり、
死と生は流転と廻り、ありとあらゆるモノは表裏一体で正しい形となる。


   例えば俺に殺意があるのなら―――例えば相手にも殺意があるというコトであり。
   例えば俺に愛情があるのなら―――例えば相手にも愛情があるというコトであり。
   例えば俺が死神であるならば―――例えば相手もまた、死神であるというコトだ。


 月の光は紅く、視界の先に移るモノも全て赤に染められ、煌々と輝く宝玉の数々は極彩色と夜
空を彩る星の瞬き。
 純粋なる殺意の結晶はどの星よりも眩く輝きを放ち、どんな生物をも、どんな生命さえも、有象
無象の区別なく破壊に破壊を重ね、壊滅という言葉では足りぬほどに残骸を生み続けるだろう。

 嗚呼―――――だがしかしだ、お嬢さん。
 なにも壊れるモノは壊れ易いモノから容易く壊れるワケではなく、頑丈であれば頑丈であると思っ
ていたものほど容易く欠け、折れ、朽ち果てるモノなんだよ?
 完全にして無欠なんて言葉はこの世にはありはしない。なにもかもは最終的には朽ち果て風化
してしまうのだから―――――。

「は―――――容易い。次の夜を望むなら、ヤマの問い掛けを微塵と砕く力を持つコトだ」

 縦、横、斜―――――縦横無尽に駆け巡る宝玉の数々も、避けられるように僅かな隙間がある
のだから始末に終えない。まあもっとも―――――”殺して”しまえばそれまでの話なんだが。
 不規則に見えるという規則性さえ判れば生身の人間すら踏破可能なモノを、人間の極端である
吾に避けきれぬ筈がなく、瞬く星も蜘蛛の巣に絡め捕られた蝶に過ぎぬ。

 余り舐めてもらっては困るよ。
 三次など随分昔に蹂躙し尽くしているのだから―――――!

 開けた視界に納まる愛しき愛しき紅の君よ。
 オマエの幼い頃など知らぬ。
 俺好みの女なのかも知らぬ。
 成長など望む訳もない。

―――――ただ甘美な、悦楽と共に舞い降りる死と共に眠り、安らかな寝顔を見せておくれ。

 地を這う疾走のベクトルを空を駆けるベクトルに変換し、頭上から狙うは心の臓。   /想像だけで。
 射抜き取り出しその鮮血を撒き散らし、キャンパスを思うがままに塗りつぶそう。   /脳が、脊髄が、
 それで一枚の絵が完成するんだからね――――。                     /蕩けそうだ。

49 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/19(月) 00:40:590
 上がったよ。
 菌糸類というよりは回文好きになってしまったが(何

 飛び上がってナイフで一突き―――だけなのにね。
 なんでこんなに長いんだろうか。

50 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/19(月) 01:16:350
 それだけ気合いが入ってるってことじゃないかしら。
 ……えーと、ろりこん?(何)


 じゃあとりあえず――レスは明日までに。
 あ、今日は待たせちゃってごめんね。
 それじゃ、おやすみなさい、おにいちゃん。

51 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/21(水) 05:32:480


 蔓が建物をひねり潰しながら降り注ぐ。
 その中を、掠りすらせずかわしていく―――軽やかなステップ。
 見惚れるような身のこなし。まるで翼が生えている。もしくは空を飛んでいる。地上を
離れて駆け往く姿は空の星。流星にも似た残像一閃。きらめくナイフ。私は突然貫かれた。

「―――いたたたた。よくここまで跳べるね」

 手だけを。
 掴み取ろうと伸ばした手のひら。そこに、あの無骨で日本的なナイフが貫通している。
流れ出す血は紅く赤い。果実を潰した甘露のようで、思わず心惹かれる。でも、私の血を
私が飲んでもあまり意味なんてないから、痛みを忘れてそっと振り払った。
 離れていくおにいちゃん。着地も危なげなく、猫みたいに鮮やかで素敵。

「私に怪我させたのって、何人くらいかしら。人間だと三人しか知らないわ」

 零れ落ちる赤い血を、そっと舐め取る。痛みはあるけど刃創はない。便利なのか不便な
のか分からない、治る早さ。痛みも一緒に治ればいいのに。
 でもまあ、我慢できるからいいや。
 それより向こうは待っている。
 次の曲目、演目を。
 リードすべきステップを。

「それじゃ、いくよ。上手く避けてね」

 私は杖を―――災いの杖を、バトンのように回しながら、頭上に掲げる。
 天には月。赤い光。突き刺すように、杖が止まる。

「―――Lavateinn.」

 囁くように、その術の名を唱える。
 ―――杖に光と炎が走った。
 暗い紅色の熱を肌に感じる。螺旋のように絡みついて伸びる炎。それは天を天を天を切
り裂くように夜を駆け抜けて―――巨人の剣になる。
 手になじませるように何度か振り回すと、火の粉が飛び散っては建物を砕いて溶かして
いく。この術だけは、加減がしづらい。けれど、もともと気にもしていない。
 だから―――

「せーのっ!!」

 笑いながら、真っ直ぐに振り下ろす。
 搭が崩れていくような一撃が、志貴おにいちゃんに落ちかかる。
 圧倒的な炎の滝。どうかいくぐって向かってくるのか、楽しみだった。

52 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/21(水) 05:37:260
 まだ夜が明けてないからセーフっ(何

 とりあえず上空からの唐竹割り(飛び散り弾付き)。
 どう避けるかは―――どうしよ。

【おい】


 まあうん、建物に飛び込んでもいいし、そっちの何でも殺せる魔眼で切り払ってもいいし。
 とりあえず大丈夫……だよね?(汗

53 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/21(水) 22:58:400
「―――――それはそれは、光栄だ」

 少し離れた位置から深い一礼と共に、溜息混じりに漏らす。
―――――やれやれ、”死に難い”とは十分過ぎるほどに理解していたが、千載一遇の好機を潰される
とは思いもしなかった。
 まあ、だからこそ愉しめるんだけどね。

 嗚呼―――――紅の君よ。
 その余裕に満ちた、気品と優美さを兼ね備えたあどけない顔は、どう苦痛に歪んでくれるのかな?
 その鈴の音のように清らかに流れる声は、どれだけ切ない喘ぎを漏らしてくれるのかな?
 その程度の苦痛に喘ぐ声じゃ、まだまだ俺は満足できそうにないんだ。

 願わくば―――――死に到るその瞬間まで、君は君のままで居てくれないか。

 死とは一瞬の出来事だ。
 連続性などあったものではない、刹那に刻まれるべき芸術。長く時間を掛けていたんじゃ見苦しい駄作
しか出来上がらない。空に大輪の華を咲かせるように、澱みない芸術であるコトが望ましい。
 だからこそ、最後まで。最期まで―――――

「二幕一場開幕で御座います。観客の皆様は首などの存在の確認をお願い申し上げると同時に、最期の
一時までごゆるりと鑑賞の程をお願い申し上げます―――――」

 目の前にはその身にまとう赤よりもなお紅い炎の剣。あどけない少女が握るには、余りにも無骨で、例え
るならばそれはまさに炎で作り上げる巨山。
 その軌跡の後には何一つとして残さず、灰すら昇華し浄化を待つだけだ。
 そして、付き従う従者は統率が取れた軍隊のように一部の隙すら存在しないまま隊列を組み、主に敵対
する全てのモノに、今まさに牙を向けようとしている。

 は―――――こんなにも月が紅いから、”殺す”にはいい日だ。

「なお、当舞台は生死に関わる舞台で御座いますので、観客の皆様は巻き添えに十分ご注意下さい」

 地を這う獣は疾走を開始する。なによりも速く、その先が絶望のみが待ち受ける死地だったとしても、そん
なコトは些細な問題だといわんばかりに駆け抜ける。
 右手にはなんの捻りもない無骨なナイフを。幾人もの血を吸い、幾人もの油を呑み、幾人もの骨を喰らっ
た生涯代わるモノなど見つけるコトができない半身。
 今日もまた蹂躙に蹂躙を重ね、犯しに犯した血塗られた短刀は、月明かりを反射し鈍く輝きを放つ。その
刀身に移る己の顔には壮絶な笑みが張り付き、さながら悪鬼―――いや、羅刹。殺すコトのみを突き詰め
た修羅。

 左手には―――――無造作に拾い上げた、死者の生首。

 死相は恐怖に歪むでもなく、悦楽に微笑むわけでもなく、眠ったように静かでもなく、ただ驚きのみを写し
ている。

 まあ、驚くだろうね。

 なんと言っても首だけで飛べるんだから、さ――――――!

 振るわれる剣の支点―――――担い手の腕に向かって投擲。
 さして障害になる筈もなく、されど僅かに剣速は鈍る。

 だが吾にとってその一瞬、その一刹那が十分に活路としての価値が生まれる―――――。

 疾走の勢いを殺さぬままに進路変更。目の前には壁。様々な余波で今にも崩れ去りそうなビルの壁を
蹴り上げ、昇り、空を翔る。
 振り下ろした勢いをそのままに振り上げるコトなど、彼女にとっては朝飯前と言ったところだろうが、生首
に刹那の時を奪われてしまえば話は別だ。凪払いでは高さが足りぬ位置まで昇ってしまえば、空間の制
圧は不可能ではない。

 ボコボコとコンクリートの壁が沸騰する音がする。
 だが―――――遅い。
 吾を殺したくば音よりも速く、刹那よりも短い時に生きてくれなくては。

 中空でくるりと反転。
 背後に回り―――――

「―――――覚えておけ、これがモノを”殺す”というコトだ」

 銀の輝きが断ち切るは歪な線。
 彼女の直線位置にある電灯に浮かぶ無様なラクガキをなぞれば―――ほら、”死”んだ。

 派手に騒ぎすぎた。
 人口の赤い光が微かながらも遠くに見える。
 やれやれ―――――まったく、場所を変えねばな。折角存分に”殺せる”というのに。

54 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/21(水) 23:03:160
 こんな感じで。―――――無闇に長いな。
 電灯はオマエに向かって倒れていっている、という解釈で頼む。
 避けたっていいし溶かしたっていいし好きに料理しておけ。

 で、舞台を写すようなそぶりも見せた。
 このままの場面で数回やりあってもいいし、場所を移したっていい。
 余り急ぐ必要はなかったけどね。どう考えても騒ぎすぎだからさ(何
 一度場面を転換するのも悪くない、かな?
 まあ、これはオマエの意見待ちだ。

 ああ、それと―――――俺に幼女趣味はないよ(何

55 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/05(月) 21:29:160


「―――!!」

 一瞬の違和感。蒸発する血の匂いと肉の香り。『人だったモノ』を投げつけられたと理
解したときには、すでに剣を振り下ろしている。一瞬の停止を経た黄昏の一撃は、相手に
終焉を与えること無く大地を蹂躙した。
 得たときは一瞬。されど彼の者は光の如く掴み取ろうとした指の隙間から零れ落ちる。
 まだ終わらない舞踏。訪れない死。与えられない終了。全てが更に気分を高ぶらせる。
その意識のまま二太刀目を放つ。

「っ、わっ!?」

 前に、予想外の奇襲を受けた。背中側から倒れこんでくる鉄塊―――細く長い棒の形を
持ったそれは、数秒前は煌々と光を出していた、科学の燭台。
 その衝撃で、軌道がズレる。狙い定めた相手より数メートル先、そこにあった背の高い
建物を撫で斬りに破壊してしまった。焼き切られた断面から、ゆっくりと巨大な質量が滑
り落ち、轟音と破壊を呼び寄せる。ガラスの割れる音と、岩が砕ける音。無数が重なって
狂騒を演奏した。
 まただ。また外した。

「ちぇ、やっぱりなかなか当たんないや」

 けれど、だからこそ面白い。

「……あれ?」

 ―――と、空気が変わるのを感じる。
 どんな夜も見通す瞳が、あらゆる音を聞き逃さない耳が、『ここはもうまずい』と推理
して私に教えてくれる。それに応じるように、向こうも姿を眩ましていた。夜の闇の向こ
う、黒い森の中へと。
 私はそばに倒れていた電灯を拾い上げた。電気の力で駆動する、人工の蝋燭。けれど今
はただのがらくた。その根元は、背筋が震え上がるほど綺麗に、切断されていた。
 あのナイフがそんな切れ味をしていたのだろうか、それとも―――
 私はその電灯を撫で上げると、

「……どかーん」

 轟音。
 右手を握り締めて、破壊した。
 どんなものにでも、壊れやすい部分がある。こと現実に―――そう、現実に存在するも
のであれば、全てに終わりはある。だから、私に壊せないものは無い。全ての核は、生ま
れた時から私の右手の中にある。
 電灯が、砕け散って光を散らす。
 けれど、それは不出来な花火。
 そんな風に思えた。
 ―――私では、どれだけ工夫しようとも。あの綺麗な壊し方が出来ない。
 すぐに悟って、気づく。
 ―――夜と血に濡れて輝いている、彼の蒼い目。
 その輝きが、何を見通していたのか。

「……そっか。“同じ”なんだね」

 気づいて、今までにないものを感じた。
 誰と戦おうと、何を壊そうと、決して感じたことのない感覚。
 体中がさわさわと撫で上げられているような、背筋の痺れる感触。

「同じ―――そう、同じなんだ!!」

 感動。
 唯一無二と思っていた同種の力。
 戯れることを望めなかった唯一の相手。
 なにもかもがないまぜになって体を突き抜けていった。

「いいわ、どこまでも、どこまでもつきあってあげる!!」

 炎の剣を消し去ると、赤い光を背に、黒い森へと翔ぶ。
 ―――永遠に訪れない午前零時。無限に続く舞踏会。
 影絵の街をすり抜けて、私は彼を―――“志貴”を求めた。

56 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/05(月) 21:32:540
 ごめんね、ちょっと空けちゃった。

 そっちの場面転換に追随する形にしてみたわ。
 この後は森に向かって、そこで続きをやる、ってことでいいかしら。
 邪魔が入ると醒めちゃうものね。


 ……え、そういう趣味ないの?
 私てっきり―――ま、いいわよね別に(何)
 あってもなくても歓迎よ。遊んでくれるならね。
 くすくす。

57 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:00:590

「残念だが、画材が足りなくってね。筆を振るうのは万全なんだが」

「あら、こっちには人間がいっぱいいるじゃない。絵の具には困らないでしょ?」

「人間には飽きちゃってね」

「そうなんだ。人間以外はこっちだと少ないから大変ね」

「居ても鮮度が低くてね。ところで、お嬢さんは幾つかな?」

「ほんの495年ほど。でもこういうことは女の子に聞いちゃ駄目よ、お兄さん?」

「は―――それは済まなかったね、お嬢さん。お詫びにダンスでもいかがかな?」

「あら、ダンスのお誘いなんて素敵ですわ。でも私は絵の具にはなれないわよ?」


58 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:02:230

 無防備であどけない少女とは言え、壮絶で凄惨な絵を見せるこの空間に立つコトができるのだから、
手を抜くわけにも行くまい。
 なにより、『線』も『点』も辛うじて見える程度なのだから―――――まったく、俺も誰かのコトは笑え
やしないようだ。

 感謝するよ、兄弟。  ―――――オマエの体質のお陰で愉しめる。

「ならば乾く前に色を着けるだけさ。―――――と、自己紹介がまだだったね。吾は七夜志貴。個展
『惨殺空間』の準備に忙しい、しがない殺人鬼さ」

 逆手に構えたナイフは物欲しそうに怪しげな光を鈍く放ち、紅い月よりなお紅い液体を滴らせる。そ
れはまるで品のない犬のような姿だ。
 しかし妄りに振舞う女のような芳香に、否が応でもこの躯は反応する。

            手が、
                腕が、
                    足が、
                        脚が、
                            心音が、
                                 思考が、

                          早く―――
                        速く―――
                      疾く―――

 殺せ、殺せと発情したかのように、囃し立てる。

 まあ、待て。
 未だ夜は長く、月は空を我が物としたかのように天に収まり、太陽は惰眠を貪っている。
 ならば吾等に残された時間は両の手で抱えきれぬほどに存在し、絶頂に到るまでは十分以上に
有り余っている。

 舞台の幕は上がったばかり。
 一幕一場は状況の説明以上の意味はなく、それが殺し合いともなれば小競り合いもいいところだ
というもの。

 巧く殺すのは二の次に、一先ずは挨拶を交わそうじゃないか。
 地を這うように腰を落とし、疾走を開始する。
 この程度なら十分対応できるコトを願っておくよ、お嬢さん?
 

59 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:03:450

 眼前に広がる血刀によって編まれた、死線を束ねまだ足りぬ剣林弾雨の幕。これは死を覚悟すべき
状況―――なのだろうか?
「続きがあるなら見てみたいものだけどね」
 呆と、蒼く光る『眼』に映るは血よりも紅く、月よりも醒めた、なによりも鋭き『死』のカタチ。朧の明かり
に照らされた、それに浮かぶ歪な線と点にナイフを走らせ―――るコトはせず、全てを紙一重で避ける。
上下左右天地の区別なく空間を蹂躙し、駆け―――抜ける。


                   こんばんは―――――紅の君。

       君に捧げる歌はこの穢れきった躯に廻る黒き血で記し、
                               /紙一重といえども傷付き、

        君の亡骸の隣で詠めば満足してくれるかい?
                            /流れた血は微々たる物でも、

              君は判ってくれるかな?
                         /無駄にしちゃ勿体無いだろう?


                     この愛情にも似た殺意を。


 振るう刃は音もなく闇に潜むように突き進み、一点の迷いも曇りもないまま殺す為だけに銀弧を描く。
 慣れ親しんだ感触が脳に響くか、脊髄が焼きつくような空虚を掴むか。

 そんなコトはどうでもよく―――

「幕は開いたよ、フラン。
―――――ここは舞台の上だ。役者は役者らしく七転八倒する荒波のような世界で、終幕まで役を演
じなきゃならない。台詞の正誤も演技の巧拙もないが――中途半端に舞台から降りるのだけは、ご勘
弁願いますようお願い申し上げます――――なんてね」



60 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:05:320

「―――――それはそれは、光栄だ」

 少し離れた位置から深い一礼と共に、溜息混じりに漏らす。
―――――やれやれ、”死に難い”とは十分過ぎるほどに理解していたが、千載一遇の好機を潰される
とは思いもしなかった。まあ、だからこそ愉しめるんだけどね。

 嗚呼―――――紅の君よ。
 その余裕に満ちた、気品と優美さを兼ね備えたあどけない顔は、どう苦痛に歪んでくれるのかな?
 その鈴の音のように清らかに流れる声は、どれだけ切ない喘ぎを漏らしてくれるのかな?
 その程度の苦痛に喘ぐ声じゃ、まだまだ俺は満足できそうにないんだ。
 願わくば―――――死に到るその瞬間まで、君は君のままで居てくれないか。

 死とは一瞬の出来事だ。
 連続性などあったものではない、刹那に刻まれるべき芸術。長く時間を掛けていたんじゃ見苦しい駄作
しか出来上がらない。空に大輪の華を咲かせるように、澱みない芸術であるコトが望ましい。

 だからこそ、最後まで。最期まで―――――

「二幕一場開幕で御座います。観客の皆様は首などの存在の確認をお願い申し上げると同時に、最期の
一時までごゆるりと鑑賞の程をお願い申し上げます―――――」

 目の前にはその身にまとう赤よりもなお紅い炎の剣。あどけない少女が握るには、余りにも無骨で、例え
るならばそれはまさに炎で作り上げる巨山。
 その軌跡の後には何一つとして残さず、灰すら昇華し浄化を待つだけだ。
 そして、付き従う従者は統率が取れた軍隊のように一部の隙すら存在しないまま隊列を組み、主に敵対
する全てのモノに、今まさに牙を向けようとしている。

 は―――――こんなにも月が紅いから、”殺す”にはいい日だ。

「なお、当舞台は生死に関わる舞台で御座いますので、観客の皆様は巻き添えに十分ご注意下さい」

 地を這う獣は疾走を開始する。なによりも速く、その先が絶望のみが待ち受ける死地だったとしても、そん
なコトは些細な問題だといわんばかりに駆け抜ける。
 右手にはなんの捻りもない無骨なナイフを。幾人もの血を吸い、幾人もの油を呑み、幾人もの骨を喰らっ
た生涯代わるモノなど見つけるコトができない半身。

 今日もまた蹂躙に蹂躙を重ね、犯しに犯した血塗られた短刀は、月明かりを反射し鈍く輝きを放つ。その
刀身に移る己の顔には壮絶な笑みが張り付き、さながら悪鬼―――いや、羅刹。殺すコトのみを突き詰め
た修羅。

 左手には―――――無造作に拾い上げた、死者の生首。

 死相は恐怖に歪むでもなく、悦楽に微笑むわけでもなく、眠ったように静かでもなく、ただ驚きのみを写し
ている。

 まあ、驚くだろうね。
 なんと言っても首だけで飛べるんだから、さ――――――!

 振るわれる剣の支点―――――担い手の腕に向かって投擲。
 さして障害になる筈もなく、されど僅かに剣速は鈍る。
 だが吾にとってその一瞬、その一刹那が十分に活路としての価値が生まれる―――――。

 疾走の勢いを殺さぬままに進路変更。目の前には壁。様々な余波で今にも崩れ去りそうなビルの壁を
蹴り上げ、昇り、空を翔る。
 振り下ろした勢いをそのままに振り上げるコトなど、彼女にとっては朝飯前と言ったところだろうが、生首
に刹那の時を奪われてしまえば話は別だ。凪払いでは高さが足りぬ位置まで昇ってしまえば、空間の制
圧は不可能ではない。

 ボコボコとコンクリートの壁が沸騰する音がする。
 だが―――――遅い。

 吾を殺したくば音よりも速く、刹那よりも短い時に生きてくれなくては。

 中空でくるりと反転。
 背後に回り―――――

「―――――覚えておけ、これがモノを”殺す”というコトだ」

 銀の輝きが断ち切るは歪な線。
 彼女の直線位置にある電灯に浮かぶ無様なラクガキをなぞれば―――ほら、”死”んだ。

 やれやれ―――――折角興が乗って来たと云うのに、無粋な。人口の赤い光が微かながらも遠くに
見えるのだから始末に終えない。
 オマエ達は知らなくていいんだよ。―――――知れば後戻りできないんだから、さ。

 存分に”殺せる”んだ。
 場所を変えるとしよう。なに、アレは必ず着いてくる。同じモノを持つのならば、確実に。
 向かうは深海にも似た深林。闇に紛れ狩るには絶好の狩場だ。

―――――さあ、二幕の序章は終わりを迎えた。
 即興曲に合わせ終わりを目指して行くとしよう―――――。

61 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:07:340
 いつだって人は、光を求め闇夜を彷徨う。

 人工的で無機質な光だったとしてもそれは変わらず、眼下に広がる光景は今が夜であるコトを忘れ、
眠りにつく暇さえも与えぬまま、陽光の洗礼を待つ。
 いつかこの深い闇も、真円を描き深淵を照らす紅い月も、人の素顔も、幻想と呼ばれるようになり、
夏の降雪の如く儚く消え行くのだろうか――――。

―――――参ったね。

 こんな高いところから人を見下しているから、毒にも薬にもならない感傷に浸ってしまうんだ。
 ここは、この街でも一際高いビルの上。北を見やれば歓楽街が立ち並ぶ、喧騒の途絶えない不夜の
城が待ち、南は森、西には工業地帯が立ち並び、東は―――住宅街か。
 多くの人が集まる場所へ出向くのが得策ではあるが―――如何せんこの服は目立ちすぎるのが不
服だな。ま、今では学生服で夜の街を歩くなどさほど珍しくもないように思えるが、官憲とコトを構える
のは得策じゃあない。

 如何に無力で無能だったとしても―――――数を揃えられては厄介なんだ。
 食い扶持が減ってしまうからね、後々を考えれば得策じゃない。
 住宅街も同様だし、工業地帯は既に歯車さえも眠ってしまっている。

 やはり、森に向かうのがここでは最善策か。幸い、日没直後と呼ぶには遅く、深夜と呼ぶには早い
時間だ。道中誰かに出くわすコトだってあるだろう。
 加えて、向こうはまだ煌々と明かりが燈っている。急激な開発に伴う歪みは有形無形に関わらず現
れている。突貫工事って奴だろう。

 お勤めご苦労様―――じゃあ俺も、頑張ってお勤めを果たさないと。

 それよりもまずここの掃除か? どうせ夜明けには消えるんだから、このビルがどれだけ汚れてい
たとしても誰も構いやしないか。たかだか十や二十の屍だ。慌てるほどじゃあない。

 日常の中に非日常を―――偶には五体不満足の人間を見るのも、正常な思考を保つためには必
要さ。生きているコトを知る為には死を見なければならないなんてコトはないが、何時だって不意に
訪れる死を識って居てもらわねば吾のような存在も忘れられてしまう。

 ならば―――――このビルに住まう生きているものは全て殺し尽くしてしまおうか。
 死に満ち溢れる石室の墓標。哀悼はすぐに人の心から消え去ってしまうが、モノは何時までも残る。
存在した証を残すコトができるならば死もそれほど悪くないとは思わないかい?

 もっとも―――――呪われたビルなんて仰々しい名前をつけられ、壊されるのは目に見えているが。
形として残らずとも畏怖と共にこの街における噂話として、何時までも心の中に聳え立っているだろう
がね。
 

62 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:09:510

―――――夜の広大な森は、さながら陸に浮かぶ海のようなものだと感じるコトがある。
 海の荒波も、木々のざわめきも、似たようなものだ。波の崩れる音も、木の葉が立てる音も、酷く
落ち着ける。
 一定の和音で奏でられ、不定のリズムで奏でられる自然の音。雑踏に篭る陰鬱な音とは違い、
自然のそれらは心臓の刻むリズムにも似ている。だからこんなにも―――――殺しに精が出たっ
て仕方あるまい。殺人鬼が人を殺すコトは自然の産物であり、自然の生み出す音こそ何物にも変
え難い最高のBGMなのだから。

 一人目はモノの数秒で解体してしまった。柔らかく、良質の絹のように滑らかな肌は女特有のも
ので、走らせるナイフが音もなく吸い込まれていく。ザクリザクリと音を立てるコトもなく、骨を断つ
鈍い音すら軽やかな音色。淡く漏らす苦痛の叫びはなんと極上のコーラスだろう。甘い吐息は俺
を絶頂に昇らせるには十全過ぎる。
 二人目、三人目はもう少し愉しもうと思っていたんだが―――――これでは盛りのついた犬だ。
豪勢な食事を前にした餓鬼だ。まったく、巧拙もなにもあったものじゃない。男だろうが女だろうが、
若かろうが老いていようが、成人であれ乳幼児であれ、殺すコトができればなんでもいいとでも?
 ま、その通りなんだが。


 他人の心音も、
                                                         /カツ、
 他人の血液も、
                                                         /カツ、
 こんなにも俺を、
                                                         /カツ、

                              ―――――落ち着けてくれるのだから。

                                                        /カツン。

「一つ、二つ、三つ――――」

 袋小路には三つつの亡骸と一人の亡者。
 誘われ出づるは蛇か鬼か?

「こんばんは、お嬢さん」

 振り返り、大袈裟に両腕を広げ

「俺はしがない絵描きでね。少し、個展の準備をしていたんだ」

 これまた大袈裟に腕を折り、深く一礼。

「―――――ようこそ、この素晴らしき個展へ」

 沸騰しそうな血液を押さえ、深い深い一礼を。
 敬意と、畏怖と―――殺意の。
 

63 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:19:020
>>12>>18>>19>>61>>62>>25>>57>>58
>>42>>59>>46>>48>>51>>60>>55

―――――と、こんなところかな。
 修正と、ついでに今までの分を纏めてみたよ。

 また若干の会話を挟んでお前のターンから回してもいいし、俺から始めたっていいんだが――――
前半戦は「ずっと俺のターン!」に近しい状況になってしまったからね。
 オマエが流れを握ってみるのも悪くないんじゃないかという提案なんだが、どうかな?
 考えてみてもらえるか?

64 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/14(水) 21:01:170
 よいしょっと、遅くなってごめんね。
 色々と手直しとかしてるんだけど、ちょっと時間かかっちゃてて。

 流れについては―――まあ、導入はこっちがもう少し書き足せば対等になるかしら。
 あとは戦闘の流れでどっちが主導権を握っていくか、よね。
 最初のビルでの戦いが私で、後半が貴方、っていうのが良いかな。
 そっちのホームグラウンドだしね、森って。

 ということで、貴方の意見に賛成ね。
 前半、少し弄って見るわ。
 ちょっとだけ待っててね。うふふ。

65 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 02:51:030
 ――うーん。どうも巧くできないなあ。

 改めて見ると主導権とかそう言うの気にならないのよね。
 私の方も派手にばら撒いてるわけだし。
 それにどっちもまだ本領発揮は無し。

 ……んー。無理に主導権とか弄らなくてもいいかもね。
 このままいっても大丈夫、かも。

66 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 02:53:210


 ここには風は通らない。光一つ差さない閉ざされた領域。
 冷たく薄暗い世界。私の495年が納められた場所。まるで閉ざされた災厄の箱のよう
な闇は、静かな眠りと孤独だけを約束してくれる。独りでいるのも嫌いではない。何もし
ないのも苦痛ではない。けれど―――退屈ではあった。
 そんなところでも、生まれつきなのか、月の満ち欠けだけは肌で分かる。まるでこの目
で見たかのように分かる。冷たい石の壁を、赤い屋根を突きぬけた先の空には、赤く紅い
―――満月。今日はもっとも満ちたりたる日。

「―――うん、でよっか」

 だから、私は当たり前のように、外に出た。紅い月に誘われて、この身の無卿を慰めに、
壁を砕いて、扉を潰す。空を掴んで呪いを引き裂き、阻む全てを払っていく。全ての運命
の終わりは、私の右手の中に。ただそれを握り締めればいい。私を阻むものはなくなる。
 ―――まあ、面白くないから、あんまり使うことなんてないけど。
 そんなことより、弾をたくさん撃ったり撃たれたりしたほうがはるかに面白い。
 壊さないから何度でも遊べると言うのが、またいい。
 一瞬の楽しさより、永遠と続く楽しさの方が素晴らしいに決まってる。

 無用な思考はもう要らない。
 長い階段を飛ぶように駆け上がり、紅い紅い―――月明かりでさらに紅い廊下へ出る。
音もなく窓を破ると、冷たい風が体を掠めていった。この館は窓も風通しもほとんどない
ので、新鮮な感覚だった。
 ―――導かれるように、外へ飛び出す。
 音もなく、誰にも気づかれないように出て行くのは、なんだかいけないことをしている
ような気がして妙に楽しい。私が興味を持つ、数少ないこと―――外に出ること。外には
見たことがないものも、壊したことがないものも、世界の果てまで広がっている。だから、
気が向いたときだけ、私は外を楽しむ。永遠に変化する、流れ行く世界を。
 それは壊さずとも自ら流れ、そしてよみがえっていく伝説の流転。
 私に欠けている創造を補う要素。
 だから、私は求めるのかもしれない。
 世界を。

「……あは」

 空を見上げれば、真円を描く月。血を吸う悪魔の守り神。
 それが座する蒼い夜を、白い雲の狭間を、私は駆けていく。
 外へ。外へ―――
 それだけを気持ちに抱いて。
 その足元には、深い森が広がっていた。その木々は赤い光を飲み込むほどに深く―――
緑色の地平が何処までも続いているような気がした。




67 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 02:57:160


 結界を壊さないように、注意深く、くぐっていく。うかつに壊すと面倒なことになると、
良く知っている。せっかく内緒で抜け出してきたのに、目立つようなことはしたくない。
 運よく見つけた綻びに身を躍らせ―――ほら、出てきました。
 ぽつぽつと地上に光が見える―――外の人間の街。普段見ることすらない、空を突く建
物の並ぶ人間たちの城。今は夜だから、誰も出歩いてはいないけれど。目印にするには十
分だった。背が高いから、見失うこともない。とりあえず、ぴかぴかと光る大きな看板を
ぶらさげたあの建物を目印にしよう。
 足元の森が消えたところで、私は歩いてみることにした。
 音もなく空を下って、足元の硬い感触を楽しむ。

「よくこんなので歩けるなあ。疲れないのかな」

 かつ、かつ―――
 わざと足音を立てて歩く。楽器を奏でるように強弱とテンポを変えながら、踊るように
足を進めていった。途中で加減を間違えてめり込ませてしまったけど、気にしないでおく。
きっと誰かが直すだろう。咲夜みたいに有能な人がいれば、だけれども。
 道に立ち並ぶ灯りは、夜でも遠くまで見通せるようにと、立てられたのだろうか。
 私には必要ないけど、人間にはきっと便利なものなのだろう。
 ただ、それでもわだかまる闇を消せはしない。

「……あら」

 慣れ親しんだ匂い―――血の香り。
 無機質な外の香りに混じって、じわりと実在を意識する印象。
 なんでだろう、慣れてるはずなのに、その香りに気が惹かれる。
 だから、それを辿りながら足を向けていく。
 闇へ、闇へと―――縫うように建物の影を渡り歩いて。

 見つけた。

「ねえ、貴方は何をしてるのかしら」

 声をかけてから、ちりちりと背筋が熱いことに気がつく。
 足元には血が満ちている。それが気分を高揚させる。零れ落ちているのが少々もったい
ないけれど、それはとても綺麗に夜の明かりで照らされて、美味しそうにも見える。
 彼のいる袋小路は―――血で描かれた油絵のようになっていた。
 血と、肉と、死。
 非日常が―――生きている間では味わえない幻想が満ちている。

 ―――背筋の感覚が何なのか、思い出す。
 そうだ。私と対等に遊べる遊び相手と出会ったときだ。




68 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 02:58:250


 ―――背筋が熱い。高揚しすぎて燃えてしまいそう。
 私が私の中で私を急かしている。早く始めよう、速く楽しもう、と歌うように踊るよう
に気持ちだけが駆け上がって行く。
 それを何とか押さえながら、後ろ手に体をくるりと躍らせて、“絵”を見上げる。

 三つの亡骸に、鮮やかな紅い筆遣い。燃え上がるような色彩は文字通り炎を描いて――
硬い地面と高い壁をキャンバスみたいに仕立て上げている。絵画のタイトルは「煉獄」と
でも名づけようか。他に名前があっても、きっと不吉で不気味なものになるだろう。そん
な不思議な確信が、私の中に在った。

 画伯は、目の前の彼。そして画廊は、この空間。
 優雅に、大げさに一礼するその姿が、とても気に入った。
 宝石みたいな蒼い目と、血に濡れたナイフ。
 パレットナイフとは違う。日本刀めいた美しさの刃。
 あれが、彼の絵筆なのだろう。

「素敵な絵ね。それに貴方も。こんな血の匂いでそんな嬉しそうな顔が出来るのなんて、
私は一人しか知らないわ」

 その一人はお姉さま。運命を手に握る紅い悪魔。
 そして―――私は、その妹。

「フランドール・スカーレットと申しますわ、絵描きのお兄さん。今日は月も綺麗だから、
ちょっと散歩に来たの。誰にも気づかれないように―――こっそりとね。ばれたら怒られ
ちゃうのよね。だから、内緒よ」

 くすりと悪戯っぽく笑う。一歩下がってスカートを持ち上げ、丁寧に一礼を返す。
 淑女の嗜みは大事な物。私も壊せない素敵な決まりごと。

「ところで、この絵。今日はどれだけ描いたのかしら。見たところ、筆はなかなか早いと
思うんだけど。これは―――三つで一つの絵になってる、ってところかしらね。躍動感が
あって好きよ、こういう絵。まるで何かが燃え上がってるみたいで―――綺麗」

 命の流れで描かれた絵画は、生き物のように揺らめく錯覚を覚える。まるで絵の具自体
が生きているようにゆらゆらと―――むせ返る血の匂いがそうさせるのだろうか。騙し絵
みたいに炎の抽象画がちらつく。

「出来れば、描いてるところも見てみたいわ」

 こみ上げる愉快さに、笑みを浮かべながら、私はそういった。
 ―――この人は、どんな風に私を魅せてくれるのだろう。
 その期待が、胸の奥の鼓動とともに、少しずつ膨らんでいった。




69 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 02:59:280


 ―――こどうが、どこまでもたかなる。
 最高潮に達して、

「あら、それは素敵ね。でも紅いお化粧はお姉さまの専売特許だから遠慮しておくわ」

 ―――熱い空気が弾けるのを感じた。
 向こうも、私と遊びたいのだ。

 理解した瞬間、血の匂いが恍惚を煽る。

 それに誘われて、私は―――“遊ぼう”と決めた。
 押さえていたものを、解く。

「私はフランドール・スカーレット。楽園の素敵な悪魔よ。―――それじゃあ、ダンスの
エスコートはよろしくね、志貴お兄ちゃん?」

 そして、大胆なステップで駆ける志貴お兄ちゃんに手を差し伸べ、
 無数の紅い、細く鋭く薄く、梳られた魔法の刃を生み出す。
 宝石のような輝きが個展を満たしていく。
 それはまるでシャンデリア。美麗に墜とせるシャンデリア。

「さあ、貴方はコンティニューしなくて済むかしら?」

 もちろん、させるつもりは、ない。
 風を切って、襲い来る獣へ紅い刃が撃ち出される。
 血のように赤い軌跡が、壁面の絵画に色付き硝子の花を添える。
 そして刃は、阻むものを切り裂きながら、惨殺空間へと飛び込んで行った。
 彼もまた、“絵”の一部にするために。




70 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 03:00:370


 風雷の軌道。荒れ狂う風のような飛翔。
 しかしそれはどこまでも鋭く美しく―――
 志貴おにいちゃんは、空を飛べるはずもないのに、まるで翼を巧みに操る鳥のように、
ソラを踊って全てかわした。鮮やかなステップ。彼にとっては天も地も壁も舞台の床に過
ぎないのだろうか。
 紅い刃はそれを彩っていく。鏡のように光りながら壁や床につき立って、砕けて逝った。
一撃たりとも彼の体に食い込む不手際はない。それが正しいと、私は直感する。それほど
までに妖しく華麗な体さばき。

「……人間ってすごいね。ここまで出来ちゃうなんて」

 きらめく闇。水平に奔る―――流れ星。
 それは無骨なナイフの一撃。
 首筋を狙う、残像だけが死神らしい弧を描く鎌。

「でもまだ、だーめ」

 それを、手に持った杖で受け止める。
 その衝撃のまま空に舞い上がり、私は舞台を支配する。

「役者は―――観客を振り回してこそ役者よ。だって劇の主役は」

 しゃらん、と背中の羽を鳴らす。並ぶ宝石、膜の破れた奇怪な翼。私の象徴。
 狂う世界。壊れる全て。滅びる美しさ。全てを表す私の羽。

「私たちだもの」

 杖を振るって式を打つ。魔法の陣が生まれ出る。
 そこからこぼれる血のような、眩い光が街を覆い―――輝き全てが魔弾となる。
 無数の破滅は蔓を伸ばすように建物へ巻きつき、続いて彼へと降り注ぐ。

「―――Cranberry Trap !!」

 それは、私の仕掛ける甘い罠。
 あらゆる方向から襲いかかる呪詛は、その腕で相手を絡め取る。
 紅い紅い―――血の色の実をつけるために。




71 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 03:01:510


 蔓が建物をひねり潰しながら降り注ぐ。
 その中を、掠りすらせずかわしていく―――軽やかなステップ。またも直撃はなく、あ
ろうはずもない。見惚れるような身のこなし。まるで翼が生えている。もしくは空を飛ん
でいる。地上を離れて駆け往く姿、まさに空の星のよう。
 そして伸びるは、流星に良く似た残像一閃。
 きらめくナイフ。しなる腕。
 私は突然貫かれた。

「―――いたたたた。よくここまで跳べるね」

 手だけを。
 掴み取ろうと伸ばした手のひら。そこに、あの無骨で日本的なナイフが貫通している。
流れ出す血は紅く赤い。果実を潰した甘露のようで、思わず心惹かれる。でも、私の血を
私が飲んでもあまり意味なんてないから、痛みを忘れてそっと振り払った。
 離れていくおにいちゃん。着地も危なげなく、猫みたいに鮮やかで素敵。

「私に怪我させたのって、何人くらいかしら。人間だと三人しか知らないわ」

 零れ落ちる赤い血を、そっと舐め取る。痛みはあるけど刃創はない。便利なのか不便な
のか分からない、治る早さ。痛みも一緒に治ればいいのに。
 でもまあ、我慢できるからいいや。
 それより向こうは待っている。
 次の曲目、演目を。
 リードすべきステップを。

「それじゃ、いくよ。上手く避けてね」

 私は杖を―――災いの杖を、バトンのように回しながら、頭上に掲げる。
 天には月。赤い光。突き刺すように、杖が止まる。
 さあ―――来なさい。
 空を割るもの。大地を焼くもの。月を砕いて全てを無にする終わりの杖。

「―――Lavateinn.」

 囁くように、その術の名を唱える。
 ―――杖に光と炎が走った。
 暗い紅色の熱を肌に感じる。螺旋のように絡みついて伸びる炎。それは天を天を天を切
り裂くように夜を駆け抜けて―――巨人の剣になる。
 手になじませるように何度か振り回すと、火の粉が飛び散っては建物を砕いて溶かして
いく。この術だけは、加減がしづらい。けれど、もともと気にもしていない。
 だから―――

「せーのっ!!」

 笑いながら、真っ直ぐに振り下ろす。
 搭が崩れていくような一撃が、志貴おにいちゃんに落ちかかる。
 圧倒的な炎の滝。どうかいくぐって向かってくるのか、楽しみだった。




72 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 03:04:140


「―――!!」

 一瞬の違和感。蒸発する血の匂いと肉の香り。『人だったモノ』を投げつけられたと理
解したときには、すでに剣を振り下ろしている。一瞬の停止を経た黄昏の一撃は、相手に
終焉を与えること無く大地を蹂躙した。
 得たときは一瞬。されど彼の者は光の如く掴み取ろうとした指の隙間から零れ落ちる。
 まだ終わらない舞踏。訪れない死。与えられない終了。全てが更に気分を高ぶらせる。
その意識のまま二太刀目を放つ。

「っ、わっ!?」

 前に、予想外の奇襲を受けた。背中側から倒れこんでくる鉄塊―――細く長い棒の形を
持ったそれは、数秒前は煌々と光を出していた、科学の燭台。
 その衝撃で、軌道がズレる。狙い定めた相手より数メートル先、そこにあった背の高い
建物を撫で斬りに破壊してしまった。焼き切られた断面から、ゆっくりと巨大な質量が滑
り落ち、轟音と破壊を呼び寄せる。ガラスの割れる音と、岩が砕ける音。無数が重なって
狂騒を演奏した。
 まただ。また外した。

「ちぇ、やっぱりなかなか当たんないや」

 けれど、だからこそ面白い。

「……あれ?」

 ―――と、空気が変わるのを感じる。
 どんな夜も見通す瞳が、あらゆる音を聞き逃さない耳が、『ここはもうまずい』と推理
して私に教えてくれる。人間は弱い。けれど、強い。統一された意志は、磨き抜かれた殺
意は、たとえ夜族も容易に討ち果たす。ドラキュラ公が滅ぼされたように、妖怪たちが駆
逐されたように。だから、私もそろそろ引き時だろう。場所を変えないと面倒だ。
 私に応じるように、向こうも姿を眩ましていた。夜の闇の向こう、黒い森の中へと。
 ふと―――私はそばに倒れていた電灯を拾い上げた。なんとなく、私にぶつかったもの
が気になったからだ。電気の力で駆動する、人工の蝋燭。けれど今はただのがらくた。そ
の根元は、背筋が震え上がるほど綺麗に、切断されていた。
 あのナイフがそんな切れ味をしていたのだろうか、それとも―――
 私はその電灯を投げ上げると、

「……どかーん」

 轟音。
 右手を握り締めて、破壊した。
 どんなものにでも、壊れやすい部分がある。こと現実に―――そう、現実に存在するも
のであれば、全てに終わりはある。だから、私に壊せないものは無い。全ての核は、生ま
れた時から私の右手の中にある。
 電灯が、砕け散って光を散らす。
 けれど、それは不出来な花火。
 そんな風に思えた。
 ―――私では、どれだけ工夫しようとも。あの綺麗な壊し方が出来ない。
 少し妬ましくて、羨ましくて、けれど素敵だと思った。
 思い返す―――夜と血に濡れて輝いている、彼の蒼い目。

 ……そこで、私は気づいた。
 どれだけ優れたナイフでも、こんな風に切ることは出来ない。妖怪が作ったとか、そん
な出自がおかしなものでもないかぎり、人間が作ったものである限りは、切りつけた刃物
の方が壊れるだろう。生身とは違う、鉄の塊なのだ、あの電灯は。

 ―――じゃあ、おかしいのは彼の方なのか。
 蒼い目が、意識の奥に凛として残っている。
 血に濡れてなお、蒼い輝きを失わない、瞳。
 そう、その眼はおそらく―――

「……そっか。“同じ”なんだね」

 気づいて、今までにないものを感じた。
 誰と戦おうと、何を壊そうと、決して感じたことのない感覚。
 体中がさわさわと撫で上げられているような、背筋の痺れる感触。

「同じ―――そう、同じなんだ!!」

 感動。
 唯一無二と思っていた同種の力。
 戯れることを望めなかった唯一の相手。
 なにもかもがないまぜになって体を突き抜けていった。

 声が上がる。
 私とは思えないような、笑い声。
 高らかに響く、高ぶるままに叫ぶ歓喜。

「いいわ、どこまでも、どこまでもつきあってあげる!!」

 炎の剣を消し去ると、赤い光を振り切って、黒い森へと翔ぶ。
 月を背に、星を散らし、私は夜を往く。
 ―――永遠に訪れない午前零時。無限に続く舞踏会。
 影絵の街をすり抜けて、私は彼を―――“志貴”を求めた。

73 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 03:12:010
>>12>>66>>67>>61>>62>>68>>57>>58>>69>>59>>70>>48>>71>>60>>72


 とりあえず、ちょっとだけ修正。
 少しは映えるようになったかな。そっちに。
 時間かかってごめんね。


 この後はどうしようかなあ。
 一気に森に場面写しちゃうか、途中で一戦入れて見る?
 さっくり移動してじっくり戦うのも良いと思うんだけどね。
 どうかしら。

74 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/23(金) 01:45:300

 時間については構いはしないよ。オマエもなにかと忙しいだろうしね。
 俺も現状簡単に時間を取れるわけじゃないから、お互い様さ。

 で、だ。
 どちらでも構わないといえば構わないんだが―――――場面転換は急激にやった方が映える、
かと思うんだが……どうだろうな、判断がつきかねる。
 構想としてはここは第二幕。終幕であるる三幕への繋ぎ、なんて考えていたからね。
 ああ、ちなみに三幕は繁華街でのエキストラを巻き込んだ殺し合いを想定している(何

 それはさて置き、また台詞だけでやり取りをして森へと移ってみるか―――――イメージとしては
そちらの『永夜抄』の四ステージ……と、これだと俺が追われる立場だから敗れなきゃならないのか。
 まあ、これもいいとして。森の入り口付近で追いつきオマエが攻撃を仕掛け、俺が完全に森の中へ
逃げ込むか。
 もう一つの選択肢として、完全に森の中に入った状態で出会うか。

 一つ目と三つ目は統合可能だが、森としての面白みを活かすにはワンクッション必要か。もっとも、
そんなに手間じゃないんだがね。
 飛び道具があるそちらが、俺の逃走にそこまで付き合うかというのは疑問だがね。
 二つ目ならば、森の利点を活かした戦い方が直ぐに可能、と。後の終幕へも繋げ易いと言えば繋
げ易いが―――――これはどっちも変わらないか。

 ま、お好きなものをチョイスしてみてくれればそれで良いさ。

75 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/06/03(日) 02:41:060
 ごめん、お待たせ。
 ようやくまた動けるようになったわ。
 お姉さまったら最近厳しいのよねー。

 とりあえずいくつか台詞でやり取りするのはおっけーよ。
 その方が面白そうだもの。

 で、展開は―――そうね。

> まあ、これもいいとして。森の入り口付近で追いつきオマエが攻撃を仕掛け、俺が完全に森の中へ
>逃げ込むか。

 こっち採用で。
 私はまあ、遊んでるわけだから物凄い勢いで付き合うつもりよ(何)
 あとは森の中でずっと貴方のターンね。楽しみにしてるわ。

76 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/06/03(日) 14:03:460
 あ、それと。
 これからしばらくは夜中にいるから何かあったらいつでも言ってね。

77 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2007/06/03(日) 23:49:480

―――――やあ、フラン。
 久しぶりだね。相変わらず可愛らしいのは素晴らしいコトだと思うよ。
 なにやら不名誉な称号を得てしまって退屈はしてなかったんだが―――――まあ、再会と再開を祝っておく
のがここでは筋だろう。

 と、前置きはさて置き。
 では、取り敢えずこちらで用意できる部分に関しては先に用意しておくが――どちらから回すかが問題かな?
 そちらのアクションで逃げられたコトにしてしまってもいい―――――そういうコトさ。

 暫くは居るよ。――――― 一時間程度かな?
 健康的な殺人鬼として俺は有名なんだ。

78 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/06/04(月) 00:26:250
 お待たせ。

 んー、そうね。今は私のターンで終わって、そこで追いかける描写してるね。
 じゃあ、貴方の方から逃走と掛け合いを始めて、その次に私が一発撃って、外して、
森へ向かって行く描写までするのが良いかしら。

79 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2007/06/04(月) 00:48:140

 というコトは、だ。取り敢えずは好き勝手に書き殴ればいいわけか。
 了解したよ。明日の夜――遅くとも明後日の夜にまでは上げておくとしよう。

 少し、この闘争に関する感覚がズレてるみたいでね。
 思うようなカタチが浮かばないんだ。
 カタチさえ浮かべば形成するのにさほど時間は掛からないから、そこまで待たせるコトもないだろう。

 それじゃあ、健康的に過ごす為に、休ませて貰うとするよ。
 思考回路の全てが短絡しかねないんだ―――――ま、これが要因だろうね。
 じゃあ、オヤスミ。明日の夜にでも、また。
 

80 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/06/04(月) 00:50:590
 うん、お休みお兄ちゃん。
 また明日。

81 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2007/06/04(月) 22:12:380

 新雪のような肌を汚していくのは何にも代え難い快楽だと思う。膝の上で震える子猫にそんなコトを
言えば間違いなどある筈もなく、「莫迦じゃないの」という言葉が帰って来るコトだろう。こうして抱き抱
え、解し、梳かし、弄ってやっている時とは大違いだ。
 桜色に染まる肌に接吻。微かに上がる嬌声に思わず苦笑が浮かぶ。こんな顔を見られたら、機嫌を
損ねるだけだろうから、何時だって俺は顔を見せなくても済む体位を好む。残念ながら主人は気に入っ
てくれてはいないのだが―――――まあ、構うまい。互いに快楽を得ているんだから、等価交換は成り
立っている。
 未熟な起伏に指を這わせれば、一際大きな声が上がった。淑女を自称するだけあって、恥ずかしそう
に俯いている姿は、加虐心を充分に満たし、燃え上がらせる。執拗なまでの愛撫に息を切らせ喘ぐ子猫。
 思考に浮かんでは消える絶頂までの道程。思考が単純化され、もはやそれだけを求める獣の所業。
 二人は一つになり、一つは二つに別れ、解け合い、混ざり合い―――――しかし、何処まで行ったとし
ても訪れるコトのない合致。


 究極の別離の果てにある―――――同調。


―――――月は蒼く輝いていた。



「ねえ、貴方は幻想を信じているかしら?」
「なんだ、突然」
「……気になっただけよ。他意はないわ」
「幻想に住まうオマエからそんな言葉が漏れるだなんてのは、俺への不満の現れかい? やれやれ、
しっかりと使い魔をしているだろう? 今夜だって―――――」
「そのコトは口にしないで!」
「人の膝の上で丸くなっている奴の云う科白じゃないな……で、だ。オマエの質問に答えてやるとすれ
ば、人でありながら人という理から外れてしまった俺に、人の信じている幻想なんてものは信じるコトは
できないさ。人間が空を飛び、駆け回る。化物が往来を闊歩し、生血を啜る。――――-殺人鬼が街に
訪れ、惨劇の幕を開く。人の理の中で信じられていないモノ、人の理の中から忘れ去られてしまったモ
ノ。それらを総じて幻想と呼ぶとするならば、否定する要素をみつけるコトが困難なほどだろう? なら
ば、俺は幻想を信じていないコトになる。そもそも、幻想などというものが存在しているのかも疑わしい。
目の前に肉を持ったオマエがいるのだから、余計に幻想なんてものは信じていないさ。俺の周りには常
に溢れているからね―――――。さて、何点かな?」
「28点ね。因みに47点満点よ」
「また中途半端な数なコトで」
「37は素数だから、丁度いいのよ」
「それでは二という数字はキリが悪いから、もう一度味わっておくとしようか」
「ちょっと! 止めなさい―――――ん……」
「夜は永い……一夜の快楽を貪るのはなにも、人殺だけじゃないさ」

82 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2007/06/04(月) 22:22:370

 走る。

 走る。

―――――走り続ける。



 追いかけられているのではなく、追いかけるように。
 クスクスと響く笑い声を連れ去るように。
 音より速く、刹那よりも疾く、時すら置き去りにし、全てを攫い尽くし、全てを踏破し、駆け抜ける。


 生と死の狭間を抜ける鬼事。
 静と動の狭間に潜む悪鬼。
 天と地を統べる為の鬼事。
 光と闇を喰らい尽くして行く悪鬼。


 鬼と鬼の戯れは、全てを分け隔てなく愛して行く。


 嗚呼―――――なんて素晴らしいんだ!


「はっ―――――鬼事には自信があったんだけどな」

83 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2007/06/04(月) 22:26:010

―――――場面転換を急激に、などと言っていた口でなにを書き出しているんだ、俺は(何
 まあ、幻想を少しだけリンクさせる為の布石というか……自己満足なんだが。
 別名、エピローグの為の布石、かな。

 取り敢えずは、追いつかれた描写と言う事にしておこう。
 力が入っていないように見えるのは、次に備える為だよ。

84 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/06/10(日) 21:36:040
 ……えっちー(何)

 ちょっと時間がかかってるの。ごめんね。
 明日か明後日の夜には張れると思う。

 ……うー、相変わらず待たせちゃってなんだか悪いわ。
 

85 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/06/12(火) 23:40:280


 回転する星空のように流れる景色―――ダンスする視界。
 青い瞳のきらめきを求めて切る風―――夜気のコーラス。
 影絵の町にくるくる光る赤い灯火―――クランベリーのシャンデリア。


 紅い死屍累々を思い返す。
 幻想郷に来る前の、最後の夜。
 紛い物の狩人と戦った時のこと。
 開幕は夜いっぱい、終幕はわずか数秒。




「……所詮は幻想の不出来な写し身。現実と科学の枷で私たちを縛ろうだなんて無様にも
程があるわ。フランともまともに遊べないで、私に勝てるとは思い上がりにも程がある」
「あらお姉様。まるで私が格下みたいな言い方ね」
「五歳違いで私が格上だから正しいのよ。でも血統は一流、品格はまあ身内びいきで同じ
位ってところね。いいじゃない、結局は瑣末よ。貴女は壊し、私は紡ぐ。役割が違うだけ
で立ち位置は同じなの。……世界を壊そうと思ったことはある?」
「あるけどつまんないからやらない。お姉様は花占いをする時根元からちぎるタイプ?」
「私は花びらをつまむタイプね。そんなことしなくても未来はなんとなくでわかるけど。
……そろそろここも限界ね。我が親愛なる友人に頼んで準備しようかしら。外には私たち
を楽しませるものがもう存在しない。幻想は忘れられて人のサイズにまで縮んでしまった。
フラン―――貴女と遊べる相手ももう、こっちにはいない」
「退屈で厭だなあ。本当になにもかもいなくなっちゃったのかしら。もしそうだとしたら
私は静かに閉じこもって白雪姫を演じたいわ。気が済むまで眠って、迎えに来る王子さま
を待つのよ。夜の正午を過ぎても、北極星が移動してもね」
「貴女の場合は赤の方が合うわね。私もだけど。……そうね、いなくなっちゃったのね。
諦めた方がいいんじゃないかしら。でも向こうならきっといるわよ。貴女の王子さまが」
「でもこっちにはいないんだ。……ちょっと寂しいなあ」
「意外に夢見がちなのね。寂しくは無いわ、私たちも共に忘れられて影と消えるのだもの。
ただ存在は消えない。人の心に刻まれた恐怖も消えない。そして十二時間ごとに訪れる夜
の闇も消えることは無い。……もしいるとしたら、そんな影絵の中ね」
「保証は?」
「私に見える紅い糸」
「ならなるべく壊さないようにするわ」




 ―――運命=気に食わない視界。
 けれど、今はそれに感謝したい。
 影絵の中で、外の夜で、午前零時を永遠に引き伸ばして、私は出会った。
 最高のパートナーに。

「さあ、そろそろBGMも折り返しね―――」

 影絵をすり抜けて、リードをする紳士に追いつく。
 影と影と影をすり抜けた先には緑色の闇。枝葉のざわめきだけが語る森の深淵。
 ―――意図を読む。そこが彼のホームステージ。本当の舞台なのだと。
 今迄など、ただ踊り場でじゃれあって、バルコニーで愛を語らっていたに過ぎない。
 夜はこれから。

「―――"Star"」

 紡ぐ。紅き血と契約、そして破壊の名の元に、偉大な魔法を。
 盛大な花火を上げよう。空をシャンデリアに、虹を星に。
 煌く万華鏡を作り上げる―――帯を引いて回る星の群れ。まるで螺旋階段。

「―――"bow"」

 永遠の美しさ。光年の彼方で燃える輝き。
 それを集めて、一瞬の美しさに注ぎ込んでいく。
 滅美=ホロビの刹那さ=切なさと至上の宝石を創り出すために。
 結界が空を括る。引き伸ばされた星たちが円弧を描いている。
 それを―――

「―――"break"」

 砕いた。
 天蓋に穴を開けられ、要石を破られ、空の宝石が砕けながら地上に降り注いだ。
 雨を作る虹。虹に見立てられた星。星が砕けて出来た光。
 紅いシャンデリアも一緒に壊して、全て彼に捧げよう。

 ―――さあ、夜はこれから。
 お楽しみもこれから。
 コンティニューは要らない。
 一度きりの百年祭。

86 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/06/12(火) 23:54:490
 お待たせ。
 とりあえず一発撃ったけど……まあパトカーの人にはご愁傷さま?(何)

 見た目は派手だけど実際は安全地帯あるから一番楽勝なスペル。
 さっくり避けて森への御招待、お願いするわね。

87 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2007/06/14(木) 21:43:300

 壊れ毀れ集いて散るは街の灯りに群がる蝶と物言わぬままに咲き誇る華。
 盛大に響く爆音は狂騒曲の調べを奏で、破壊滅壊塵の一つも残さずに蹂躙に蹂躪を重ね、調べの痕に残るは
無明の闇と残響を飲み干して奔り逝く風だけだ。
 人が繁栄を謳歌する夜に尊厳は踏み躙られ、葬と幻は同義となりて、人に仇なす牙を剥く。

 ポツリポツリと舞い散る雨は、火の粉と鉄錆の中にこそ在り、虹が星となって降り注ぐための前奏曲。
 愛おしくも肌を舐め上げるであろうその舌は、死という誰も逃れるコトが叶わない真理にして摂理、道理を運び
行くだろう。もしその快楽に身を委ねようものなら待つのは従者達による、何物にも劣るコトのない至上の折檻(快楽)が
待ち受けているのは想像に易い。

 一時だけでもその快楽に身を沈め、真摯な愛撫をこの身に受けて、絶頂という名の終わりに浸って見たいという
甘美な誘惑に抗い続けなければいけないこの生は、酷く滑稽で、醜いものではないだろうか?
 人を害したいという欲求に身を任せ続けるにはこの人生の幕を下ろすには未だ早く、背後に迫るあどけない淑女
の甘露をこの全身で啜り尽くすまでは醜くも無様に、華麗に舞って見せようじゃないか―――――。



 闇の深さすら飲み込んでいる森林は既に眼前。

                                        背後に迫る―――――死。

             クスクストワラウノハ?

                             縦横無尽に迫るは彩虹の意思。

                                               コノオレカ?

                        広がる緑の匂いを肺に落とし込む。



  「お嬢様―――――若干手荒なご招待では御座いましたが、私が用意した舞台。ごゆるりとお楽しみ下さい」



            終わるコトなき破滅への序曲。

    森羅万象との同化が不可能なれば。

                                     この舞台に意味は無く。

               純然たる意志の塊――――だからこそ視える。

  カノジョナノカ?

88 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2007/06/14(木) 21:44:520

 判り辛いけど、森へ逃げ込んだというコトで頼むよ。

 安地? そんなもったいないコトができるか。
 すべて気合で避けて見せての愛だろう?(何

89 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2007/06/14(木) 21:47:490

 新雪のような肌を汚していくのは何にも代え難い快楽だと思う。膝の上で震える子猫にそんなコトを
言えば間違いなどある筈もなく、「莫迦じゃないの」という言葉が帰って来るコトだろう。こうして抱き抱
え、解し、梳かし、弄ってやっている時とは大違いだ。
 桜色に染まる肌に接吻。微かに上がる嬌声に思わず苦笑が浮かぶ。こんな顔を見られたら、機嫌を
損ねるだけだろうから、何時だって俺は顔を見せなくても済む体位を好む。残念ながら主人は気に入っ
てくれてはいないのだが―――――まあ、構うまい。互いに快楽を得ているんだから、等価交換は成り
立っている。
 未熟な起伏に指を這わせれば、一際大きな声が上がった。淑女を自称するだけあって、恥ずかしそう
に俯いている姿は、加虐心を充分に満たし、燃え上がらせる。執拗なまでの愛撫に息を切らせ喘ぐ子猫。
 思考に浮かんでは消える絶頂までの道程。思考が単純化され、もはやそれだけを求める獣の所業。
 二人は一つになり、一つは二つに別れ、解け合い、混ざり合い―――――しかし、何処まで行ったとし
ても訪れるコトのない合致。

 究極の別離の果てにある―――――同調。

―――――月は蒼く輝いていた。

「ねえ、貴方は幻想を信じているかしら?」
「なんだ、突然」
「……気になっただけよ。他意はないわ」
「幻想に住まうオマエからそんな言葉が漏れるだなんてのは、俺への不満の現れかい? やれやれ、
しっかりと使い魔をしているだろう? 今夜だって―――――」
「そのコトは口にしないで!」
「人の膝の上で丸くなっている奴の云う科白じゃないな……で、だ。オマエの質問に答えてやるとすれ
ば、人でありながら人という理から外れてしまった俺に、人の信じている幻想なんてものは信じるコトは
できないさ。人間が空を飛び、駆け回る。化物が往来を闊歩し、生血を啜る。――――-殺人鬼が街に
訪れ、惨劇の幕を開く。人の理の中で信じられていないモノ、人の理の中から忘れ去られてしまったモ
ノ。それらを総じて幻想と呼ぶとするならば、否定する要素をみつけるコトが困難なほどだろう? なら
ば、俺は幻想を信じていないコトになる。そもそも、幻想などというものが存在しているのかも疑わしい。
目の前に肉を持ったオマエがいるのだから、余計に幻想なんてものは信じていないさ。俺の周りには常
に溢れているからね―――――。さて、何点かな?」
「28点ね。因みに47点満点よ」
「また中途半端な数なコトで」
「47は素数だから、丁度いいのよ」
「それでは2という数字はキリが悪いから、もう一度味わっておくとしようか」
「ちょっと! 止めなさい! それににも素す―――――ん……や……」
「夜は永い……一夜の快楽を貪るのはなにも、人殺だけじゃないさ」


90 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2007/06/14(木) 21:48:360

 ついでに若干の修正だ。
 欲望に忠実じゃないと殺人鬼なんてやってられないのさ(何

91 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2008/03/13(木) 22:25:03
 ―――おまたせ。

 待たせてごめんね。ようやく復帰、ってとこかな。
 最低でも一週間以内にはレスでつなぐわ。

92 名前:[-{}@{}@{}-] 七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2008/03/16(日) 23:49:44
 
 ああ――済まない。確認が遅れた。
 ならばこの錆付いた思考を如何にかしておかないとね。
 
 切れ味の悪い刃物って嫌いなんだ。
 肉も削げない、骨も断てない鈍らじゃあ、ほら、相手に悪いだろ?
 
 ま、ゆるりと待つさ。

93 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2008/03/18(火) 02:49:11


 エメラルドのシャンデリアは砕けて―――土に還り。
 虹色の天蓋は閃光を曳いて飛び去り―――空に帰り。
 影絵の町の王子様は森へと誘われて―――闇に還る。

 果たして星屑は届かず、不出来な文明だけを引き裂いた。うん、そう来なくっちゃ。
 私の見初めたお兄ちゃんだもの。このくらいでゲームオーバーにならないのは当然。
 さあ―――はぐれないように。後を一生懸命ついていくんだ。

 高度を落として飛び込む―――翡翠の匂い。
 いやらしい光を覆う影絵の神殿―――いや、巨大なお城。
 王子様のお誘い―――誰も知らない舞踏会。

 人の手も光も届かない、闇という幻想の中へ。
 そこには全てがある。恐怖があり、妖怪があり、幻影があり、夢想があった。
 何もかもを投げて捨ててしまった人間の世界で、唯一残る世界―――光なき夜。
 そこに錯覚する―――あの蒼い目の、シキが手を伸ばして誘っている光景を。

 その手は死神、同時に恋人。
 取れば愛の毒で死に至る病。

 どちらがその命の唇を奪うのかしら。
 どちらがその心を奪われるのかしら。

 一度限りの恋で、一度限りの死。
 生も死も幸福なら、だれも選ぶことなんて出来ない。

「……舞台。ああ、舞台なのか。ここが貴方の劇場なのね。貴方だけの」

 追いかけて追いかけて―――辿り着いた森の広場。
 薄く削られた翡翠色の闇が、彼の姿を覆い隠している。
 けれど、わたしの赤い目が―――紅に染まった、吸血鬼の瞳が。
 あの、寒気がするほど綺麗な―――蒼に染まった、死神の瞳を。

「鬼ごっこの次は、かくれんぼ。貴方が遊び好きで嬉しいわ」

 壊したい=壊されたい。死にたい=死なせたい。愛したい=愛されたい。
 わたしの全てを/わたしの全てで―――犯されたい/犯したい。
 だから、黒く忌まわしい捩じれを持った杖を振る。
 誰にも理解できない形状が、世界を狂わせる。

 風を切るたび壊れる世界=光も闇も捻じ曲げて。
 波紋のように散らばる輝き=魔力は弾丸となって私の周りを巡る。
 その速度は速く・速く・速く・どこまでも速く・世界の理を破約する。
 光の速度を超えて―――世界が逆行を錯覚し始める。
 刻みつけるもの―――時計すら狂い始める歪みが生まれる。
 ―――私の手で。手の中で。

 届かぬ想い。何より鋭利で美しいあの破壊。
 そこに至ることを恋焦がれ、願うように私は術式を紡ぐ。
 美しき過去よ、時計の針を逆回し、乙女の祈りでよみがえれ―――と。

 感じる。狼のような息遣い―――それは錯覚。アレはそんな不出来なものじゃない。
 狼なんてものじゃない―――銀色の牙と蒼色の瞳を持った、私にも解からないケモノ。
 この世で一番美しい肉食動物。


 ―――来て。私の命(なか)に。


 祈り続けることで、世界は変容され続ける。
 その中で、私は待った。自分でも解からないような高揚の中で。
 志貴が、蒼い眼の王子様が、捻じ曲げた世界すらも断ち切ってしまうことを。



94 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2008/03/18(火) 02:52:02
 ……うん。まあ、そこそこかな(何)

 ということで、森の中まで追いかけてチャージ中。
 ここからは貴方のターンだから、好き放題しちゃって。
 ……食べてもいいのよ? なんてね。


 そだね。咲夜も切れない刃物は嫌いだって言ってたから。
 私もどうせならすぱーっと綺麗にやってほしいし?

 うん。大丈夫。いっぱい待たせちゃったんだもの。
 その分くらいは待ってて当然よね。
 それじゃ、また。

95 名前:[-{}@{}@{}-] 七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2008/05/20(火) 22:38:50

 序曲「殺人鬼の葛藤と選択―Easy―」 Score&Bonus――Unpaid

 
 細い手足。掴めば折             れそうな腰。薄い胸。             柔らかさを残した肉。
 異形の羽。無邪気さ             を残した瞳。可憐な唇            ..未成熟な少女。完熟
 した化物――嗚呼、             嗚呼、壊してしまいたい。           逸る鼓動を窘めて、
 誰かの面影を重ねる            ,,事なく食い入る様に、孔           ..を穿つ程に、初めて
 の恋に戸惑うような少            年の眼差しで、見つめ続           ける。時間が止まっ
 たかのような錯覚。世            界には己と彼女しか存在           していないかのよう
 な倒錯。今この場で彼女を犯したところで罪に問われる事もなく、む          ..しろ合意の元と言う
 判断すらしてしまえそうな程、酔っている。嗚呼、そうだ。彼女と俺は          今、この瞬間、誰が
 どんな言葉を用いて否定したところで、それを鼻で笑い、繋がってい          ると、二人だけが分
 かち合える快楽に酔っ           ..ていると断言出来るだろう。         .茹だるような殺意で
 脳髄を犯られてしまっ            ているのだから、救えない。         救われたいと言う願
 いすら無粋だろう。染            ..め上げる思考はただの一つきりで良い――極上の殺意だけで。
 彼女は祈るように森を            見る。ガラクタの様に歪な世界を慈しむように。壊れやすい世界
 を幼さしか残らない胸            .に抱いている。その凛とした様で、茫洋した表情に、心を奪われ
 てしまったんだろう。そ            う俺はきっと、彼女をこの世         で一番愛してしまって
 いる。愛している。陳腐           ..極まりない科白――だから         ..こそ思考の端に留め
 るに値する。つまりは            馬鹿げた、どうしようもない          己自信の業なのだ。
 愛しているからこそ、彼女を己だけのものに、殺してしまってでも、           その顔を愛しみたい。
 宝石のように光る眼に口付けし、陽光にも似た髪に指を這わせ引き          .千切り、あの薄い胸を
 蹂躙し切開し解体し、少女特有の柔らかい肉に歯を突立て、ゆっくり         ..ゆっくりと肉の繊維を
 一本一本丁寧に引き            剥がす。女として機能しているなら、本来の意味で犯してみるの
 も悪くはない。欠損を            抱えた化生が嘆きを見せるなんて事はないだろうし、抵抗されちゃ
 面白くはないんだが、           ..膨大なる生命を終えた後では彼女の亡骸はきっと消えてしまう。
 無残な終わり、無情な           終わり。嗚呼――死とはなんと凄惨で、陰気で、全ての愉しみを
 奪って行ってしまうの           ..か――化物になら大いに           .欲情出来て、殺せて
 殺せて、殺し尽くしてしまえると言うのに。人間よりも後の愉しみが           ないだなんて。神は
 慈悲も容赦も持っちゃいないらしい。殺人鬼風情に投げ掛けてや           ..る愛を持った神なんて
 のも恐ろしくも悲しい存在だろうが。世界から嘲笑われるべき存在。          異端ゆえに駆逐される
 べき畜生。夜にしか生きられぬ余りにもお粗末な夢。認めていた事          実。と、そろそろ下らぬ
 思案は捨て置くべきか。          レディを待たせる事は罪だ          と口喧しい猫に言われ
 続けているのだし。―           ..―ハッ。己が粗末な欲求を他人の所為にするのは良くもないか。
 そうだ、俺は、吾は、            アレを、犯して、殺して、解して、並べて、揃えて、再び構築させ、
 何度も、何度も、何度           も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度
 も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何          度も何度も何度も何度
 も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何          度も何度も何度も何度
 も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何          度も何度も何度も何度
 も何度も何度も何度も           何度も何度も何度も何度          .も何度も何度も何度も。
 快楽に酔い絶頂へと            到り屍山血河の果てに己          .が欲深さに厭きれを覚
 えよう。そうしてまた殺           す為に、犯す為に、街を行         ..く。だから――先ずは。
 倒壊する樹木の果て            に夢を見ろ。甘い甘い夢だ         から――悪くない筈さ。

96 名前:[-{}@{}@{}-] 七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2008/05/20(火) 22:45:41
 
 まったく――随分と遅れてしまったね。
 申し訳なさで心が張り裂けそうだよ。
 
 補足をしないと判り辛い事この上ないだろうから補足。
 何本も樹木を切り倒してその影から忍び寄っていると思ってもらえば良い。
 三本が偶々あみだ籤になったように見える、ってトコかな。
 三本の内どれを選んでも外れだよ、俺から見れば三本全部が当りだけど、さ。
 遊びだからね、遊んでみた。
 
 内容に関しては――読んでも読まなくても良いんじゃないか?
 どうせ電波だしね(死
 まあ――読むのは然程問題はない、筈だけど。左から右に読めば読めるだろうから。
 内容の理解に関しては――責任は持たないけどね(何

97 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2008/06/16(月) 15:46:25
>>

禁弾「過去を刻む時計」




 変容する世界。樹木が飛び込んで破砕されてゆく。
 逆行する時間。非常識の風穴に世界が滑り込んだ。

 弾丸は収束し、十字に針を広げてさかしまの時間を謳い続ける。
 時間は逆流し、扇形に分解されて歯車のようにバラバラとなる。

 ああ、過去を刻むもの―――汝の名前は時計なり。
 私の作り上げる時計もやはり狂気に感染している。
 因果律の定めた法に従わず、世界をゼロに戻すための加速。
 世界そのものを壊しかねない、禁呪の塊のような魔法行使。


「Ten little nigger boys went out to dine;
      One choked his little self, and then there were nine.」


 カウントダウン―――慣れ親しんだ詩と共に。楽しげに。

 ダムに穴が開いたような狂乱。この森はもはや現実の場所ではなく。

「Nine little nigger boys sat up very late;
      One overslept himself, and then there were eight.」

 歪みが基盤を揺るがして往く。この空はもはや墜落を待望するだけ。

「Eight little nigger boys travelling in Devon;
      One said he'd stay there, and then there were seven.」

 カウントダウン―――ゼロの到来した時は、私にすら解らない。

 暴れ、謳い、踊りだす世界。
 樹木/暴力に粉砕される+大地/引力に切削される+天空/斥力に切断される。
 暴力と暴力と暴力のサバト。

」Seven little nigger boys chopping up sticks;
      One chopped himself in half, and then there were six.」


 その全てを華麗に斬り裂いて飛び込む蒼―――私の世界を殺す流星。

 稲妻のように―――ああ、まるでアミダクジ。
 飛び散る木片は弾丸に。弾丸の収斂は梯子に。

 遊び心はこちらの流儀―――相手も舞台に踏み込んだ。
 さてさて、互いの生と死を繋ぐ一筋の道は何処にある?

「素敵ね。もっと見てみたいわ、そういうの」

 一番右の選択肢―――なぞるように過去が飲み込んで行く。
 外れ。逆行する光時計の長針は流星に切断されて消失した。

 じゃあ、一番左の選択肢―――舐めるように過去が吸い取って行く。
 外れ。過去の最果てに飛ばしたものは木片と空間、そして虚無だけ。

 なんて不運―――やっと中央の選択肢に。
 あれ、外れ? 彼は何処にも居なかった。


 そして、全ての道が飲み込まれ―――



               ―――もう一つ、新たな道が浮かび上がった。


 重なり合う時計。飲み込んで行く過去。
 混沌を超えて終末―――暗黒を越えて光明。

 ああ、なんてこと。アミダクジに手を伸ばしたら。
 時計の針は重なることを忘れ、過去は吸い込むことを忘れた。
 時計の中身は剥き出し。過去の扉は閉じ始める。

 なんてコト―――もう一つの道があったなんて。
 なんて芸術―――こんなコト誰も思いつかない。


 私の/前まで/道が/出来ている―――!!

98 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2008/06/16(月) 15:53:39
 ……おまたせ(苦笑)
 私としたことが待たせちゃうなんて……もう。恥ずかしいわ。


 ということで、弾幕に大穴が開いて一本、道が出来てるって感じね。
 そろそろ一刺しくらい欲しいところだったから遠慮なく刺して良いわ。
 遊びだものね。一本くらいなら死なないかも知れないから。
 というか死なないけど。いっぱい突いてくれないとねー。


 まあ、一応全部読んでるよー?
 前から思ってるけどすごく面白いわ、その文体。

 ……内容?
 えっと、18禁にならないと良いね?(何)

99 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2008/06/17(火) 00:52:25
 
 やれやれ――確認が遅れたか。
 まあ、明日……と言うか、今日か。日付が変わらないうちには上げよう。
 
 面白い、ね。
 他の誰も使っていないような――使ってももっと理路整然とした――ものだからね。
 そう思っていただけるなら幸いといったところかな。
 
 何を言っているんだい?
 登場人物は勿論十八歳以jy(省略されました。
 
 ま、某ヴァレンタインより酷くならないようには気をつけるとするさ。

100 名前:七夜志貴 ◆Murder/Kq6 :2008/06/17(火) 22:28:12
 
 影絵「彼岸の交差点―Normal―」 Score&Bonus――Unpaid
 
 
 ねえ、泣いているの?ねえ、怒っているの?ねえ、笑っているの?ねえ、驚いているの?
 嗚呼―-受け止めてくれるのかい?嗚呼――抱きとめてくれるのかい?嗚呼――故に
 愛す。憂鬱な日常に抱えるたった一つの娯楽にして生命の糧。今更人を害し<愛し>、犯
 し<侵し>、手中に収め<留め>、記憶の末端に補完する事に何の感慨も抱くはずもなく、
 縦横無尽ざっくばらん、斬――惨――残と薔薇と薔薇<バラバラ>を重ねたとしても欲求
 を満たす事も無い。人格障害人間失格不感症と禁忌を求めて止まぬ哀れな己に乾杯。
 病的魔的死して屍を残す事すらなく朝露と消えた己が骸を看取るものは居らず、その死
 を悲しむ者は同類と言う名の畜生以下の何か。もはや人でもなく獣でもなく化生と呼ぶに
 も不適切な憐れな餓鬼。死肉を貪り喰らう餓鬼よりも下等な生物とも呼べぬ、『何か』と形
 容するしかない――形容するに相応しい愚者。死してなお焦がれ続ける甘き死――与え
 られるものではなく与えるものとして――そう、己と彼女は異なる者。決して同類とは成れ
 ず哀れみの目を持って蔑まれる存在が己。肩にも並ばぬ少女からの見下す目線にゾク
 ゾクとした倒錯的な快楽――愛してしまえる喜び壊してしまえる喜び犯してしまえる喜び
 殺してしまえる喜び。布切れに隠された肉に刃を突立てる至上の快楽、ぷつりぷつりと肉
 を裂き、銀に浮かぶ朱の色に目を奪われ、射精よりも濃い快楽が運動神経交感神経を反
 射よりも速い速度で駆け抜け脳髄を痺れさせる。もっと、もっと、もっともっと、もっともっと
 もっともっともっと――甘美な快楽に酔い続けアルコールの酩酊よりも性質の悪い快楽に
 酔いしれよう。対個の昔より同属を殺す事は禁忌とされてきた。己が仲間を暗い尽すような
 愚物は自然には存在しない。存在できない。排斥されるべきなのだから。故に、己に浮かぶ
 紅い印は好みに刻むべき咎。それすらも愛して止まぬといった高揚感。己は何時の間にか
 闇に溶けてしまったかのよう、熱に浮かされた脳は既に判断と言う文字すら、己と言う唯一
 無二の存在すら壊してしまった。魅力的な少女に浮かぶ微笑にも似た驚愕。失敗など何処
 にもなかった道は全て潰した、底に己が潜めばまず間違いなく十と七つに分割されたよりも
 酷い死を迎えただろうに、そうなればどれほど楽だったのか。この熱病に浮かされずに済む
 のだから――右の手、左の腕、可憐な顔、挑戦的な瞳、七色の翼、原色の赤、薄い胸、吸
 い付きたくなる唇全てが愛おしき存在――だから、だから……殺さなくっちゃなあ?さあ、快
 楽に踊れ。甘い痺れを体中で感じるといい。一<人>薙ぎ、二<不多>薙ぎ。走る銀弧の調べ。
 不協和音ですら心地良く聴こえるであろう、最低にして最悪の底知れぬ汚濁に塗れた感情。
 底知れぬ狂気に彩られた太刀筋。一つ、二つと、視線<死線>を追うように駆け抜けて行く。

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