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■ 月下の蜘蛛は露となり―――それでも彼女は笑うのか?
- 62 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:09:510
―――――夜の広大な森は、さながら陸に浮かぶ海のようなものだと感じるコトがある。
海の荒波も、木々のざわめきも、似たようなものだ。波の崩れる音も、木の葉が立てる音も、酷く
落ち着ける。
一定の和音で奏でられ、不定のリズムで奏でられる自然の音。雑踏に篭る陰鬱な音とは違い、
自然のそれらは心臓の刻むリズムにも似ている。だからこんなにも―――――殺しに精が出たっ
て仕方あるまい。殺人鬼が人を殺すコトは自然の産物であり、自然の生み出す音こそ何物にも変
え難い最高のBGMなのだから。
一人目はモノの数秒で解体してしまった。柔らかく、良質の絹のように滑らかな肌は女特有のも
ので、走らせるナイフが音もなく吸い込まれていく。ザクリザクリと音を立てるコトもなく、骨を断つ
鈍い音すら軽やかな音色。淡く漏らす苦痛の叫びはなんと極上のコーラスだろう。甘い吐息は俺
を絶頂に昇らせるには十全過ぎる。
二人目、三人目はもう少し愉しもうと思っていたんだが―――――これでは盛りのついた犬だ。
豪勢な食事を前にした餓鬼だ。まったく、巧拙もなにもあったものじゃない。男だろうが女だろうが、
若かろうが老いていようが、成人であれ乳幼児であれ、殺すコトができればなんでもいいとでも?
ま、その通りなんだが。
他人の心音も、
/カツ、
他人の血液も、
/カツ、
こんなにも俺を、
/カツ、
―――――落ち着けてくれるのだから。
/カツン。
「一つ、二つ、三つ――――」
袋小路には三つつの亡骸と一人の亡者。
誘われ出づるは蛇か鬼か?
「こんばんは、お嬢さん」
振り返り、大袈裟に両腕を広げ
「俺はしがない絵描きでね。少し、個展の準備をしていたんだ」
これまた大袈裟に腕を折り、深く一礼。
「―――――ようこそ、この素晴らしき個展へ」
沸騰しそうな血液を押さえ、深い深い一礼を。
敬意と、畏怖と―――殺意の。
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