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■ 月下の蜘蛛は露となり―――それでも彼女は笑うのか?
- 70 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/22(木) 03:00:370
風雷の軌道。荒れ狂う風のような飛翔。
しかしそれはどこまでも鋭く美しく―――
志貴おにいちゃんは、空を飛べるはずもないのに、まるで翼を巧みに操る鳥のように、
ソラを踊って全てかわした。鮮やかなステップ。彼にとっては天も地も壁も舞台の床に過
ぎないのだろうか。
紅い刃はそれを彩っていく。鏡のように光りながら壁や床につき立って、砕けて逝った。
一撃たりとも彼の体に食い込む不手際はない。それが正しいと、私は直感する。それほど
までに妖しく華麗な体さばき。
「……人間ってすごいね。ここまで出来ちゃうなんて」
きらめく闇。水平に奔る―――流れ星。
それは無骨なナイフの一撃。
首筋を狙う、残像だけが死神らしい弧を描く鎌。
「でもまだ、だーめ」
それを、手に持った杖で受け止める。
その衝撃のまま空に舞い上がり、私は舞台を支配する。
「役者は―――観客を振り回してこそ役者よ。だって劇の主役は」
しゃらん、と背中の羽を鳴らす。並ぶ宝石、膜の破れた奇怪な翼。私の象徴。
狂う世界。壊れる全て。滅びる美しさ。全てを表す私の羽。
「私たちだもの」
杖を振るって式を打つ。魔法の陣が生まれ出る。
そこからこぼれる血のような、眩い光が街を覆い―――輝き全てが魔弾となる。
無数の破滅は蔓を伸ばすように建物へ巻きつき、続いて彼へと降り注ぐ。
「―――Cranberry Trap !!」
それは、私の仕掛ける甘い罠。
あらゆる方向から襲いかかる呪詛は、その腕で相手を絡め取る。
紅い紅い―――血の色の実をつけるために。
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