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■ 月下の蜘蛛は露となり―――それでも彼女は笑うのか?
- 61 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:07:340
- いつだって人は、光を求め闇夜を彷徨う。
人工的で無機質な光だったとしてもそれは変わらず、眼下に広がる光景は今が夜であるコトを忘れ、
眠りにつく暇さえも与えぬまま、陽光の洗礼を待つ。
いつかこの深い闇も、真円を描き深淵を照らす紅い月も、人の素顔も、幻想と呼ばれるようになり、
夏の降雪の如く儚く消え行くのだろうか――――。
―――――参ったね。
こんな高いところから人を見下しているから、毒にも薬にもならない感傷に浸ってしまうんだ。
ここは、この街でも一際高いビルの上。北を見やれば歓楽街が立ち並ぶ、喧騒の途絶えない不夜の
城が待ち、南は森、西には工業地帯が立ち並び、東は―――住宅街か。
多くの人が集まる場所へ出向くのが得策ではあるが―――如何せんこの服は目立ちすぎるのが不
服だな。ま、今では学生服で夜の街を歩くなどさほど珍しくもないように思えるが、官憲とコトを構える
のは得策じゃあない。
如何に無力で無能だったとしても―――――数を揃えられては厄介なんだ。
食い扶持が減ってしまうからね、後々を考えれば得策じゃない。
住宅街も同様だし、工業地帯は既に歯車さえも眠ってしまっている。
やはり、森に向かうのがここでは最善策か。幸い、日没直後と呼ぶには遅く、深夜と呼ぶには早い
時間だ。道中誰かに出くわすコトだってあるだろう。
加えて、向こうはまだ煌々と明かりが燈っている。急激な開発に伴う歪みは有形無形に関わらず現
れている。突貫工事って奴だろう。
お勤めご苦労様―――じゃあ俺も、頑張ってお勤めを果たさないと。
それよりもまずここの掃除か? どうせ夜明けには消えるんだから、このビルがどれだけ汚れてい
たとしても誰も構いやしないか。たかだか十や二十の屍だ。慌てるほどじゃあない。
日常の中に非日常を―――偶には五体不満足の人間を見るのも、正常な思考を保つためには必
要さ。生きているコトを知る為には死を見なければならないなんてコトはないが、何時だって不意に
訪れる死を識って居てもらわねば吾のような存在も忘れられてしまう。
ならば―――――このビルに住まう生きているものは全て殺し尽くしてしまおうか。
死に満ち溢れる石室の墓標。哀悼はすぐに人の心から消え去ってしまうが、モノは何時までも残る。
存在した証を残すコトができるならば死もそれほど悪くないとは思わないかい?
もっとも―――――呪われたビルなんて仰々しい名前をつけられ、壊されるのは目に見えているが。
形として残らずとも畏怖と共にこの街における噂話として、何時までも心の中に聳え立っているだろう
がね。
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