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■ 超クロスオーバー空想大戦・作品考証談話室

1 名前:村上 峡児 ◆ROSE/l4266 :04/03/28 09:20
***スマートブレイン本社ビル・54階・社長室***

我々は人間を襲うことで、彼らをオルフェノクにすることが出来る。
人を襲うことは、愛故の行為なのです……。

ここは、リレーSS『超クロスオーバー空想大戦』
http://appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/1084962936/l50
に参加されている上の上たる出演者の皆さんが、
特撮やアニメ、そしてゲームや漫画、ジュニア向けSF・ファンタジー小説等、
全てのヒーロー作品での出来事は、同一時間軸上で起こっているものと想定し、
各作品世界を、ポジティブに、SF的に考証していきながら
楽屋裏として利用するスレッドです。

レギュラー参加を希望される方がこちらへお越しの際は、
必ず何かの作品の登場人物になりきっての形式にてお願いします。
私は賑やかなのが好きな方なので、中身お一人で同時に複数のキャラになりきり
独自のチームを編成されても結構ですよ(中の人など最初からいませんが…)。
尚、一般の名無し客や部外者の方が感想や批評を書き込みたい場合は、
ここではなくしかるべき該当スレにてお願いします。

このスレッドを利用する際のマナーは、以下の通りです。

●秘密保持及び鉄の規律維持のため、sage進行を推奨しましょう。
●情報提供やネタバレは大歓迎ですよ。
●E-mail欄に出典作品を明記してください。
●『超クロスオーバー空想大戦』のあらゆる運営に関する全ての権限は、
 不肖この私、村上 峡児◆ROSE/l4266が掌握しております。
●私に「下の下ですね」と言われても、決して怒ってはいけません。

860 名前:新章/少年少女出立・SSテスト:2013/03/30(土) 13:32:31


 麻帆良。そこは東関東に位置する魔法の勢力者が集う拠点にして一つの巨大な学園都市である。
 その中の麻帆良学園と呼ばれる都市に今、多くの人々が集っていた。

 話の舞台となるのはその学園の中の一室。

老人「始めるとするかの」

 発言の主は特徴的な頭をしていた。細長い冬瓜のような頭に、腰まである長いひげ。
 その風貌は年月を経た仙人を思わせる。

 近衛近右衛門。それが、この会合を主催した人物にして麻帆良の長である。

近衛「皆さん。本日は遠いところよくぞお越しくださった。まずは自己紹介をお願いしたい」

 そういって最初に近衛翁が目を向けたのは一人の青年。さらさらとした茶がかかった髪と青を基調とする服。

青年「ヒカルといいます。またの名は『天空聖者サンジェル』。主に魔法世界・マジトピアで魔法使いを育成する教師をしています」

 礼儀正しく挨拶をすると、ヒカルは人好きのする笑顔を見せて着席した。

 次に立ち上がったのは一般的なYシャツと黒いズボンをはいた男性。
 黒い髪と太い眉が日本人らしい顔を示している。一般的なサラリーマンといって通用しそうであるが、
 左手に黒い皮手袋を嵌めているのが不気味であった。

皮手袋の男性「鵺野鳴介、小学校教諭をしながら悪霊を除霊する仕事をしています。よろしく」

 鵺野はいささか緊張した雰囲気で挨拶を終えた。彼が緊張するのも無理は無い。
 今回の会合を主催した近衛翁は『関東一の魔法使い』と噂される力量の持ち主。

 対するヒカルはつい先日、Dショッカーに匹敵する邪悪なる軍団。『地底冥府インフェルシア』を壊滅させた戦士の一人。

 だが、かくいう鵺野もただの人物ではない。悪霊払いに関してはそこらのゴーストスイーパーや陰陽師に
 引けを取らぬ腕前を持っている、伝説の教師といっても良いくらいの力の持ち主なのだ。
 その彼が緊張するほどの人物。

 鵺野の正面に居る2人の人物こそ、今回の会合で呼ぶのが最も困難だと思われていた生ける伝説。

 そのうちの一人、白い白衣を着た男性が、立ち上がって自己紹介を開始する。

白衣の男性「星川学。小学校教諭の資格を持っていますが、今は惑星シドンという星で緑地化作業を行っています。
        今回の会合も本来なら出られるか分からなかったのですが、そこにいらっしゃるヒカル先生のおかげで
        こうして会議に出席することが出来ました」

 礼儀ただしく挨拶する学はヒカルに向かって頭を下げた。ヒカルも恐縮して頷き返す。

近衛「星川殿、惑星を越えていらっしゃるとはご足労痛み入りますわい。この老いぼれからも厚く御礼申し上げる。
    しかし、一体どうやってこの麻帆良にいらっしゃったのですかな?」

学「ヒカル先生の持つ魔法特急トラベリオンにてこちらまで送っていただきました。
    しかも惑星シドンの緑地化に心強い味方まで連れて来て頂いて」

 星川学はそういって再び、礼をして腰を下ろした。その場に居た皆の視線が残る一人に集中する。

壮年の男性「八的猛。私も教師としての資格は持っていますが、その資格は自らは放棄してしまった者です。
        今回は特別に、そこにいらっしゃる近衛さんの計らいで招いていただきました」

 立ち上がって挨拶をしたのは壮年の男性だ。
 意志の強そうだが、優しい目をしている彼は教師らしい、という顔つきをしている。

 八的が自己紹介を終えると同時に、今回の会合の主催者である翁は語り始めた。

近衛「諸君。つい先日、小学生から高校生までの年若い戦士たちが平和を守るために結成した
    『スクランブルフォース』という団体をご存知じゃろうか?」

 鵺野だけが『はい』と返事を返す。他の三人は任務や作業が忙しく、そちらにまで情報が回っていなかったようだ。

近衛「若い世代が人々や町を守りたいと思う、その心意気は素晴らしい。が……少年少女達を戦わせておいて
    ワシらだけが安穏と過ごすのは果たして是といえるじゃろうか?
    何より学業が本分の彼らに生死を賭けた戦いを押し付けることが我らは納得できるかの?」

 全員が首を横に振る。その問いを投げかけた近衛翁自身も答えはおのずと分かっていたようだ。

近衛「星川殿。無理を承知で頼みたいのじゃがご兄弟をしばしの間、地球へと帰還させることが出来るじゃろうか?」

学「……状況が状況です。ヒカル先生。お願いできますか?」
ヒカル「大丈夫です。任せてください」

近衛「八的先生……貴殿の力もお借りしたいのじゃ。光の国の戦士としての力、我らが活動に役立ててはもらえまいか?」

八的「教職に就くのは不可能ですが、人々の安全を守るため、一時的にでしたら……」

鵺野「私の知り合いに妖怪ですが、医師として活動している者がいます。彼にも助力を申し出ましょう」
近衛「頼みます。我が学園の魔法教師達にも参加を勧めますじゃ」

 近衛翁はそういうと、己の杖を天に掲げた。
 それに合せるように八的が己の変身器具であるブライトスティックを。
 鵺野が皮手袋を占めた黒い左手を。
 学がVチェンジャーブレスをつけた右腕を。
 ヒカルもまた己の変身アイテム、グリップフォンを。

近衛「それではここに教師による子供達のための活動団体 、ATP≪Association of Teachers Powered≫の設立を宣言する。
    活動内容は『スクランブルフォース』の補助、そして児童や生徒の安全確保。皆さん、何かと立て込むとは思いますが宜しく頼みますぞ」


 かくしてここに教師達による悪を砕き、子供達の心を導く団体が発足した。
 
 
 
 
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
 
 
 
   そのころの惑星シドン

蒔人「うおぉぉぉーっ!! 草が無い! 木が無い! 畑がなぁい!! だがしかぁし!! この蒔人兄ちゃんが居る限り!
    この惑星に再び緑を取り戻して見せる! 見てろよー! 魁! 父さん! かあさ(中略)みんな―!!
    兄ちゃんはここに、夢の大アニキ農場を作ってみせるからなー!!」

 義理の兄、マジシャインから命を受け、緑の魔法使いの新たな戦いが始まる……!


861 名前:新章/少年少女出立・SSテスト:2013/03/30(土) 13:33:44
○近衛近右衛門→戦闘能力の高い教師達を招集。新たな団体の設立を宣言する。
○ヒカル→星川家族を地球に輸送を決意。ATPに参加を表明する。
○星川学→惑星シドンから地球へ召喚。ヒカルと同じくATPに参加。
○鵺野鳴介→ウルトラマンと戦隊ヒーローに囲まれて緊張する中、ATPに参加。
○八的猛→ATPに参加を表明。ただし、ウルトラマンとしての責務を果たすため栄誉会員としてATPに参加を決意。
○小津蒔人→惑星シドンの荒野に大農場を作るべく奮闘中。

【今回の新規登場】
○近衛近右衛門(魔法先生ネギま!)
魔法使い。関東魔法協会の長にして麻帆良学園の学園長を勤める。
学園で最強の魔法使いと言われているが、本編ではその力は明らかにされていない。

○鵺野鳴介(地獄先生ぬ〜べ〜)
小学校教師でありながら霊能者という異例の肩書きを持つ。学校に取り憑きやすい悪霊や妖怪を祓う教師として、
表裏問わず広く名を知られている。また、雪女のゆきめを妻に持つ。

○ヒカル/天空勇者マジシャイン/天空勇者サンジェル(魔法戦隊マジレンジャー)
マジレンジャーの先生であり、家族である魔法使い。真の姿は天空勇者サンジェル。
鵺野鳴介と同様に奥さんを持つ。妻はマジレンジャーの一人、小津麗。

○星川学/ファイブレッド(地球戦隊ファイブマン)
スーパー戦隊の一角、地球戦隊ファイブマンとして戦ったファイブレッド。
5人兄弟の長男で弟と妹が2人いる。兄弟が全員スーパー戦隊に変身し、また全員が教師という変わった経歴の持ち主。

○小津蒔人/マジグリーン(魔法戦隊マジレンジャー)
スーパー戦隊の一角、魔法戦隊マジレンジャーのリーダーを務めた小津家長兄であり、ヒカルとは義弟の関係。
自宅の近くに「アニキ農場」と称した畑を構える農業経営者であり、家計を実質一人で支えている。
ベジタリアン料理の腕も抜群で、将来ブラジルに「大アニキ農場」を作る夢を持っている(それ故語学も堪能)。
植物との繋がりを主軸とする「植物魔術」を得意とする。

862 名前:新章/少年少女出立・SSテスト:2013/03/30(土) 13:34:47


 極東軍指令基地。

 そこはモビルスーツや他のロボットたちが集う、アジア最大の防衛拠点。
 今、この基地にて歴史に残るイベントが行われようとしていた。

リポーター「ご覧下さい。子供たちが続々と基地に入って行きます。
       彼らは今日、子供達による自衛団として結成される『スクランブルフォース』の戦士たちです」

 子供たちはそれぞれ私服であったり、学校の制服であったり、あるいは巫女服や法衣のようなものを着ている子供もいる。

 彼らは特に報道陣を気にすることも無く基地内部に入ってゆく。

リポーター「世間からは、『子供たちが戦うなんて、人道に反する』という意見が大勢寄せられています」

 それと同時、極東軍の基地の周りを行進する一団があった。

主婦A「スクランブル・フォース反対!」
主婦B「子供達による武力行使反対!」

 カメラがS・F反対を叫んでいる主婦たちを写す。それは善とも悪とも呼び難い行進だった。

 子供たちを戦いに駆り立てるのは悪かもしれない。
 だが、子供たち自身の選択権を奪うのは悪ではないのだろうか?

 大人は笑う。
 『子供は人生の何たるかを分かっていない。だから我々が導かなくてはならない』と。

 しかし、この世界を傷つけているのは、欺瞞で満たしているのは、他でもない善人の皮を被った大人だ。
 無論、全ての大人が悪党なはずが無い。

 だが、S・Fに選ばれた者達はその多くが自らの目で真実を確かめ、自らの耳で世界の声を聞いてきた。

 時に救えぬ涙を知り、時に憎しみに身を任せた。
 そんな彼らに、庇護を強制するのは……果たして『正しい』のだろうか

 世論は割れる。
 子供たちを戦士と認めることに、是とする者と。
 争いを認めず、否とする者に。



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


   AM23:00 銀成学園 屋上


 銀のコートを着た男「来てくれたか、カズキ、そして斗貴子」

 三人の人物が学園の屋上にいた。
 月光の月明かりを受けて、彼らの影が何処までも長くのびている。
 少年……武藤カズキと津村斗貴子はきりっと背筋を伸ばし、言うべき言葉を選ぶ。
 目の前の男……キャプテンブラボーが純銀の鎧を纏った。
 それは彼らの戦いが再び起こったことを意味する。

斗貴子「ブラボー、あなたがその服……シルバースキンを身に纏ったということは……」
ブラボー「そうだ、錬金戦団は再び戦いに介入することを決意した。 敵はDショッカー、ネスツそして……1人の宇宙犯罪者だ」

 Dショッカー……世界を守り通した英雄、仮面ライダーが妥当した幹部が中心となって組織している。
 大量殺人、核使用記録、全世界における結社の数、それら全てが地球歴代の独裁国家のいずれよりも多いというのだから、
 その規模も尋常ではない。一部の宗教家や歴史学者によれば『人類が知恵をつけた頃から存在する秘密結社』と言わせるほどだ。

 ネスツ……Dショッカー同様、世界で暗躍する秘密組織…
 優れたクローン技術を用い世界の要人や優れた戦士のクローンを作り出すことの出来る技術を持つ。
 その規模こそDショッカーに及ばないが、つい最近ではウルトラマンのクローンを作り出し、
 地球はおろか、遥か遠くの宇宙連合まで震撼させた恐るべき組織である。

ブラボー「そして最近になり、ようやくその尻尾を掴めた宇宙犯罪者……それが、エージェント・アブレラだ」

 エージェント・アブレラ。
 宇宙を又に架ける武器商人。数々の悪の組織…… 取り分け、悪名高きディバイン・ショッカーとの繋がりも深く、
 一説によれば伝説の武器密売組織、セプテントリオンのメンバーではないかとも言われている。
 闇世界におけるブラックマーケットをいくつも抱えていたが、宇宙警察地球署の『デカレンジャー』の手により
 『銀河消滅及び惑星間戦争における大量殺人の罪』で処刑された男。

カズキ「その宇宙人……アブレラだっけ? そいつが黄泉がえりを起こしてしまった」
ブラボー「そうだ。奴が蘇れば多くの兵器が作られる。野放しにしておけば、『核金』を作り出すかもしれない」

 核金とは錬金術が生み出した英知の結晶である。六角形の金属板であるそれは、使用するものの意志によって武器に変化し、
 また肉体の治癒力を高め、臓器の変わりに移植することもできる。

 最も並の人間には扱うことも製造することも出来ない。
 だが、天才的な頭脳を持つエージェント・アブレラならやりかねないという可能性があった。

ブラボー「核金が氾濫するような状態になれば世界中で大混乱が起きる」

 そこでブラボーは言葉を区切った。歯をぎりっと噛み締め、彼は言う。

ブラボー「本当は言おうかどうか迷った。だが、カズキ お前の心臓が核金である以上、
      いつアブレラを初め、秘密結社がお前の命を狙ってくるかもしれない」

 右拳を握り締め、カズキは前を向いた。
 この少年は一度死んでいる。今の彼を動かしている心臓は先に述べた核金なのだ。

カズキ「分かっているよブラボー。Dショッカーが暗躍している以上、俺もやっぱり平凡な日常に戻るのは駄目だと思う。
     昔の俺ならともかく、今の俺には力があるから。みんなを守りたいと思える力が」

 あまりにも大きな世界の闇。
 かつて闘った、L・X・Eという組織を相手にするよりも今度の戦闘は格段に辛く厳しいものになる。
 それを覚悟した上での決意。

 自分が行く必要は無い。
 心のどこかでそう思うこともある。
 決して正義の味方を気取るつもりは無いのだ。
 武藤カズキには恋人がいる。
 妹がいる。
 友人がいる。

 そして世界の淵でうごめく残酷な連中から、彼らを守りたいという『思い』がある。

 だから闘う。
 そう、決意した。

 カズキは斗貴子に詫びようと彼女の目を見た。彼女を置いて、戦場に立つ自分を。

カズキ「とき…」
斗貴子「私も行きます。私はもう、化け物に殺される人々を見たくない。それに……カズキを放っておくことはできない」

 斗貴子にとって人生は戦いの歴史である。
 かつて津村斗貴子は学び舎であまりにも酷い現実を見た。
 級友が化け物に殺されるという現実を。
 そして、彼女が戦いの中で共にいたいと願った少年……武藤カズキも一度は人間であることを止めた。

 今、少女は愛する少年と共にある。平和を享受している。
 だが、それでも――否、だからこそ再び戦う。自己犠牲の精神ではない。
 恋人の詫びを斬り捨て戦乙女もまたカズキの目を見据えた。

カズキ「と、斗貴子さん……」

 手をばたばたと振り、顔を赤く染めるカズキに斗貴子は言い切る。

斗貴子「言っただろう。カズキ。君と私は一心同体。どこまでも一緒だ」

 人は笑うかもしれない。二人が戦う理由はただ一つ。

 愛ゆえに。
 身近な人を守りたいが故に。
 パートナーを失わぬために。

ブラボー「やれやれ、こんなストロベリーな展開を見せられるとは――だが、ブラボーな答えだ。
      カズキ。斗貴子……いや、戦士カズキ、戦士斗貴子」

 名の前に戦士をつけるのはキャプテン・ブラボーが真に闘う資格があると認めたものだけ。

 ブラボーはカズキと斗貴子の手に何かを握らせた。
 斗貴子の手にひんやりとなじむのは彼女のアイデンティティ。

 シリアルナンバー『XLIV(44)』の核金は再び戦士・斗貴子の手に還った。

 そしてもう一つ、カズキと斗貴子二人に渡されたのは一通の白い封筒。
 差出人は『星川学』。

ブラボー「任務を説明する。明日より戦士カズキ、斗貴子の両名はスクランブルフォース変身戦隊チェンジフォースに参加し、
      個々の秘密結社の動向を探ってくれ」

斗貴子・カズキ「了解!」

 山吹色の心を持つ戦士〈サンライトハート〉 武藤カズキ

 戦場を駆ける斬鉄の乙女〈ヴァルキリースカート〉 津村斗貴子


 S・F 変身戦隊へと参入決定!


863 名前:新章/少年少女出立・SSテスト:2013/03/30(土) 13:35:54
○キャプテンブラボー→カズキと斗貴子に、Dショッカーにネスツの脅威、
              そしてエージェント・アブレラの手による核金量産の危機を伝える。
○武藤カズキ、津村斗貴子→自分達の守りたいものの為に、S・Fへの参加を決意。

【今回の新規登場】
防人さきもりまもる=キャプテンブラボー(武装錬金)
戦闘防衛組織「錬金戦団」の戦士長。表向きは銀成学園の寮の管理人を務めている。
防護服である武装錬金『シルバースキン』を用い闘う。歴戦の戦士として戦ったが「赤銅島事件」で多くの命を死なせてしまい、
それ以来本名を捨て『キャプテンブラボー』を名乗る。豪快であり、明るい性格。

○武藤カズキ(武装錬金)
錬金戦団の戦士。かなりの熱血漢で正義感が強い。
また明るい性格でクラスのムードメーカーでもある。
山吹色の光を放つ突撃槍ランスサンライトハートを操る。

津村つむら斗貴子ときこ(武装錬金)
錬金戦団の戦士。カズキの戦士としての先輩に当たり、恋人でもある。
クールで負けず嫌いな性格だが、短気で『キレると凶暴になる』(ブラボー談)。
処刑鎌の武装錬金『ヴァルキリースカート』を操り敵と戦う。

 ◇錬金戦団(武装錬金)
 錬金術の成功の証である、核金の機密保持や保管。人造人間ホムンクルスの討伐を任務とする戦闘組織。
 後者のホムンクルスとは事実上、和解状態にある。
 ホムンクルスとの戦いを終えて一時は凍結していたが再び活動を解禁。
 空想大戦においては錬金術の力を悪用せぬように監視する組織として活動する。


864 名前:新章/少年少女出立・SSテスト:2013/03/30(土) 13:38:07


 日差しが強い。
 季節は夏真っ盛り。
 子供達が携帯ゲーム機を片手に、その二人の脇を通り過ぎてゆく。

 二人とは一組の少年と少女。
 彼らとすれ違うたびに道往く人の何人かが振り返った。

通行人A「おい見ろよ。あの子すっごい可愛くねぇ?……男と一緒だけど」
通行人B「超美人じゃん! ……野郎と手ぇ繋いでいるけど」

 未だ幼さを残す容姿ながらかなりの美男美女である。
 制服を着ており、二人とも学校カバンを右手に携えていた。

少女「小狼君、指令基地ってこっちでいいのかな?」
少年「ああ、大丈夫だ。 少し疲れたか さくら?」

 カバンから地図を取り出し行き先を確認する少年。
 少し短い天然色らしい茶の髪に栗色の瞳。
 その顔は少年らしくありながらしっかりとした男の顔をしていた。

 彼の脇から地図を覗き込んでいるのはこれまた少女らしさを残しながらも
 整った顔立ちが人目を引く。

 二人は道を歩きながら、ゆっくりと昨夜の出来事を回想していた。



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


   東京 深夜 木之本邸


 薄い黄色の小綺麗な部屋。
 そこは部屋の主、木之本 さくらの自室である。
 愛らしいピンクの座布団にちょこんと正座し、彼女はそこで「あるもの」と向かい合っていた。

 学習机や女の子らしい小物が飾られた清潔感のあるその部屋の中心に居座るのは一匹のぬいぐるみ。
 本来 ぬいぐるみを『匹』と呼称していいものなのかはいささか疑問ではある。
 だがそのぬいぐるみ、物理法則に逆らい宙に浮かびながらクッキーを頬張っている。
 ともすれば、このぬいぐるみは生命体なのだろうか?
 それを証明するかのようにかわいい物体はその口から人語を発した。

謎のぬいぐるみ「……で、いきなりその手紙が送られてきたわけやな?」

 クッキーをほお張りながらその生き物は部屋の主であるさくらに問いかける。

さくら「う、うん。小狼君の所にも同じ手紙が来たって」

 さくらが差し出した手紙。
 ごく普通の白い手紙にそれなりに達筆な文字で『鵺野鳴介』と書かれている。
 そして肝心の内容とは。

謎のぬいぐるみ「スクランブル・フォースに参加して欲しい、なあ」
さくら「ケロちゃんはこの、差出人の『鵺野鳴介』って人知ってる?」

 『ケロちゃん』というのが生物の呼称であるらしかった。
 そのケロちゃん……正式名称 ケルベロスは可愛らしく首をかしげる。

ケロ「聞いたこと無いな。さくらのことを知っているから魔法・魔術の関係者やと思うんやけど……」

 その時、来訪者を告げるドアのチャイムが鳴った。

さくら「あ、小狼君だ」
ケルベロス「なんや、小僧も呼んどっとんかい」

 ケロはつまらなそうに口を尖らせる。

 来訪者である小狼はさくらの彼氏であり、腕のいい符術士でもある。
 大魔導師 クロウ・リードの直系の血を引く李家の一員だ。

 そして少女、さくらはクロウ・リードの遠い血縁に当たり、彼の魔術遺産をそのまま相続した稀代の天才魔法使い。

 最初は衝突もしていた二人だが、今は紆余曲折を経て、互いに想い合う関係として日々を共に過ごしている。
 ケロは、はっきりいうとこの小狼という少年が好かない。
 性格の堅い小狼と柔軟な気性を持つケルベロスは互いに相性が悪いのだ。

 ドアが開かれ、待ち人がやってくる。
 開口一番にして、彼は懐から白い封筒を取り出した。

小狼「さくら、お前のところにもこの手紙が来たのか?」
さくら「う、うん」
ケロ「なんや小僧はその鵺野っていうのを知ってるんか?」

 小狼は頷いた。

小狼「鵺野鳴介…ここ数年で広く名を知られる様になった腕利きの<霊能者>ゴーストスイーパーだ。
    教師をしていて主に学校に取り憑く悪霊を除霊して回っている」
ケロ「ほうほう」
さくら「すごい先生なんだね……」

 さくらは感嘆のため息をついた。
 自己も世界で指折りの力を持つ魔法使い、であるのだがさくらは未だその認識が薄い。
 何より彼女は幼少期の頃のトラウマゆえか『お化け』と呼ばれる類のものが大の苦手であった。
 そんな彼女にとって悪霊を払う『ゴーストスイーパー』は尊敬の対象である。

 一方のケロはかじっていたクッキーを一息に飲み込む。
 真面目な顔つきになったぬいぐるみはゆっくりと息を吐いた。

ケロ「小僧……この鵺野鳴介って術者は何者なんや? 鵺野って苗字は昔しか知らんワシには聞き覚えの無いモンや」
小狼「……クロウ・リードが死んだと同時に眠りについていたお前はそうかもな」

 小狼の言葉にうんうんと頷くケルベロス。
 さくらの前のあるじ、クロウは大魔術師として名を馳せ、自身の魔術を研究するため様々な大陸を渡り歩いた。
 その足は無論、この日本にも届いている。

 そしてケルベロスはクロウが死ぬと同時に長い眠りについた。約数100年。
 ここ最近は覚醒し、それなりに魔術の情報を耳に入れるようになったケルベロスだが、
 スクランブルフォースの人間にはまだ手をつけていなかった。

ケロ「最もワシの会うたことのある日本の術師なんて『妖の森の結界師』と『シャーマンの麻倉一族』、
   それに『猛士のおっちゃんたち』、あとは……『魔戒騎士の番犬所』、『光覇明宗の総本山』、
   『K都の志村家』、『陰陽師の皇家』くらいやけどな……で、さくら スクランブル・フォースの件についてはどうするンや?」

 ケルベロスと小狼の視線を受けてさくらはたじろいだ。

さくら「……とりあえず話だけでも聞いてみるよ」
小狼「俺も一緒に行こう」

 小狼は騎士役を買って出た。
 さくらは人が良い。
 騙されるかもしれない。

 さくらを心の底から大切に思っている小狼は万が一彼女が危険な目に遭わない様に見守るつもりだった。


 かくして翌日。
 二人はスクランブル・フォースが新生される式場 『極東軍指令基地』へ通じる一本道へと足を踏み入れた訳なのだが……

小狼「すごいな……」
さくら「これ、全員 スクランブル・フォースに反対している人たち?」

 彼らが見たのは『S・F反対!』のプラカードを掲げながら行進している人々。
 主婦を中心としているそれは、いまや、様々な人々の入り混じる混沌とした行列になっていた。
 警備員が目を光らせているため直接進入することは叶わないが、それでも多くの人が
 『子供たちを政府の非道な政策から救い出さんとする、一方的な“正義”に心満ちた者達の眼差し』で基地の周りを行進している。

 だが、中にはどう見ても場違いな者達がいた。
 特に行列の後半を見ると、今時な若者達が携帯電話のカメラ機能を用いて基地に入ってゆく子供たちを笑いながら撮っている。

ギャルA「この子さあ、マジカワイくなぁい?」
ギャルB「え〜、うそぉ アンタ趣味悪いって〜。どんだけ〜?」
チャラ男A「っていうか基地に入ってくヤツラって、マジでヤバクない?」
チャラ男B「普通、自分からテロリストや宇宙人と戦おうとなんてしないっしょ〜。マジ、『バカ』なんじゃねえ?」

 人々は口々に好き勝手なことをいいながら行進する。

主婦たち「子供達に戦争をさせるな!」
ギャル「っていうか、戦うなら私ら巻き込むなって感じ〜?」
アキバ系「巫女服…セーラー服…幼女…ハァハァ(*´д`*)」

 人々の主張や妄想が入り混じりなんとも近寄りがたい。
 小狼は自分の後ろでにさくらを隠した。

小狼「さくら、大丈夫か?」

 大衆の視線が痛い。その先にある基地への扉が遠い。
 すでに二人は、己の精神が試されているように感じた。

 話を聞くつもり……それだけだった。
 だが、この先に通じるのはイバラの道だ。

 無理して通ることは無い。引き返せばいい。
 だが、おそらく、自分たちはこの道を歩むこととなる。

 ――それは直感。
 ――二人は強力な力を持つ以上、その力に引き寄せられる様々な者と相対することとなるだろう。

 小狼は思う。自分はまだいい。
 科学ではなく魔術を扱う自分は『異端』と揶揄されても生きてゆく覚悟がある。
 現在、政府の対霊専門部であるAMPやオカルトGメンなどが大衆から色物扱いされているのを彼は知っていた。
 だが、符術と呼ばれる東洋呪術を幼い時から使い続けた李小狼にはちゃんとした覚悟がある。

 魔術をキチンと扱い、悪霊に苦しむ人々やこの世に無念を残してさまよう霊の手助けをして生きたい、
 そして、自分達を害する者があるならそれを『殺す』という覚悟が。

 だが、自分の傍らにいる少女はどうだろう?

 いくら、大魔法使いの血を引いていても。
 いくら、自愛に満ちた心を持っていても。

 さくらは裏の世界など微塵も知らない純真無垢な少女だ。
 そして霊というものを極度に怖がる。

 やはり、彼女にはむりではなかろうか?
 そう小狼が思案し彼女の身を己の体で隠したとき、少女は己の意志で選んだ。
 足を一歩踏み出し、強く大きく歩く。

 一瞬あっけにとられた小狼だが、彼は表情を引き締めさくらの右手をそっと取った。

 まだ幼さの残る騎士にエスコートされる少女。
 新たな基地への来訪者に気づいた数台のカメラが彼らを写す。

 二人は互いの顔を見ることなく、正面を向きながら会話する。

さくら「小狼君、心配掛けてごめんね?」
小狼「ああ、平気だ。……でも、いいのか? さくら」

さくら「うん。私自身が、もっと詳しく知りたいと思ったの。 戦うってコト。平和について、
    そして『生きているということ』『死ぬということ』……そのために基地に行きたい……
    そこに行けば、全部じゃないけど、分かる気がする」

 ワガママかな?と少女は歩みを止め、不安そうにそこで小狼を見つめた。
 少年は笑みを浮かべ、立ち止まって彼女の頭を撫でる。

小狼「ワガママなんかじゃない。今を生きてゆくのに、それはきっと必要なことだ。だから、さくらの行く道は俺がつくるよ」

さくら「……ありがとう。小狼君」

 心の中で、彼らは暗唱する。
 かつて、さくらがカードキャプターと呼ばれていた頃、唱えていた無敵の呪文。

 ――絶対 大丈夫だよ――

 二人は改めて正面を見据え、道を進む。
 幾人かの主婦が自分たちの行進を止めようと前に立ちはだかった。

主婦A「ちょっと、あなたたち! まだ小、中学生じゃないの!? 駄目よ! まだ小さいのに!!
     子供はね、親の言うことを聞いていればいいの! 大体、貴方たち御両親の許可を得て、ここに来ているの!?」

 警備員にその女性がどかされる前に小狼は言った。

小狼「……どいてください」

 有無を言わせぬ。ドスを聞かせるのとはまた違う。
 覚悟を秘めたその声。
 刃のように透き通った目が、女性たちを射抜く。

主婦A「……な、なによ」
小狼「…どいてください。 そこは俺たちが歩く道です」

 あくまでも静かに、小狼は告げた。
 気圧され、道を空けた主婦たちの只中を通り二人は進む。



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


侑子「そう、前に進むのね」

 狭い座敷の中に紫煙が立ち込める。
 部屋の主 『次元の魔女』はふっと息を吐き出した。
 艶のある長い黒髪をかきあげ、その手でキセルを口にくわえる。

侑子「……皮肉なものね。若きオオカミが『灰色のオオカミ』と同じ意味の言葉をなぞるなんて」

 彼女の反対の手中にある水晶はその光景を映し出していた。

侑子「いいでしょう。 それもまた必然。 行きなさい。貴方達の意志で選んだ道を。 その先にある縁とともに。」


大魔術師 クロウ・リードの血を引く者 李小狼

クロウの遺産を継ぐ者〈カードキャプター〉 木之本さくら

 S・Fに参戦決定!


865 名前:新章/少年少女出立・SSテスト:2013/03/30(土) 13:38:53
○李小狼&木之本さくら→S・Fの説明を受けるため極東軍指令基地へ。 
○壱原侑子→二人を見守りながらも『灰色のオオカミ』という言葉を残す。

【今回の新規登場】
○木之本さくら(カードキャプターさくら)
大魔術師クロウ・リードの遺産を受け継いだ魔術師。
元は一般人であったがふとしたことから生きた札であるクロウ・カードを捕獲する『カードキャプター』となる。
明るく優しく、誰に対しても分け隔てない心を持つ。李小狼の恋人である。

○封印の獣ケルベロス(カードキャプターさくら)
もとはクロウの使い魔であった強力な力をもつ獣。通称ケロちゃん。太陽の属性を持つ。
普段はぬいぐるみのサイズだが、封印を解くことで翼の生えた獅子のような姿に変化する。
魔術に対しては卓越した知識を持ち、口からは熱線を吐くことが出来る。
30年ほど関西にいたためか大阪弁で会話をする。

○李小狼(カードキャプターさくら)
クロウ・リードの妻である中国人女性の血統から生まれた魔術師。『李家』の一族。
雷や炎を護符に封じ、呪文と杖代わりの剣を用いそれらを操る。クールな反面、重度の照れ屋である。

866 名前:新章/少年少女出立・SSテスト:2013/03/30(土) 13:39:36


 皆さんはヒーローを何名ご存知だろうか?
 この国、日本には小さい子どもたちが必ず耳にし、目にする三つのヒーローの物語がある。

 異星よりやってきた数多くの侵略者や地の底に眠る大怪獣から人々を守った光の巨人
 『ウルトラマン
 その体を悪の組織に改造され、望まぬ運命を強いられながらも人々の自由と命を守り通した鋼の英雄
 『仮面ライダー
 そして、1人では脆くともチームを組むことで戦い、人々に団結することの勇気を教えたヒーロー
 『スーパー戦隊

 子どもたちは彼らを見て育った。
 あるときは世界の崩壊を止める姿をその目で直接。
 あるときはブラウン管やラジオ越しに。
 またあるときは歴史や近代史に載る教科書や、新聞、絵本の読み物などとして。
 三種のヒーローは、多くの組織に対するため徐々にその人数を増してゆく。
 子どもたちや一部の大人の中には彼らの名前や武器に至るまで諳んじることが出来るものも大勢いる。
 それほどまでに、彼らは人々の心の中に残る英雄なのだ。

 そして、今回話をするのはスーパー戦隊の一角。
 人々からはあまり知られていない。正典に対する外典の様な、若きヒーロー達の物語である。



 赤城あかぎひかるという少女がいる。
 普通の女子高生。
 性格は真面目で熱血で一直線。
 好きな科目は体育。特技は剣道。
 そんな彼女にも、公にすることの出来ない秘密があった。

ヒカル「人目なし、気配なし、それじゃ、任務開始っと……」

 今、彼女がいる場所は自分の学校の保健室。
 その中の床板を一枚、取り外す。そこにはダストシュートのような傾斜の鋭い孔があいていた。
 ちょうど、成人男性1人が通れる程度の穴である。

ヒカル「イィィヤッホォォォオオオウウウゥゥゥウ!!」

 ドップラー効果を伴う楽しそうな掛け声と共に、彼女の姿が消える。
 やがて、『ズリズリ』と床板が自動で動き始め、穴を塞いだ。
 ちなみにこの間、約一分。
 あっという間の出来事であった。

 スライダーから着地したヒカルが到着したのは学校の地下にあるとは思えないほどの広大なトンネル。
 彼女は勢いもそのままに目的地へと駆ける。
 途中、ヒカルは見知った顔を見つけ、その肩を叩いた。

ヒカル「おはよ いいんちょ」
青野「ああ、おはよう」

 振り向いた彼に挨拶を交わし光は彼の隣に並んだ。
 メガネと落ち着いた身のこなしを持つ少年。
 『いいんちょ』と呼ばれた彼の名は青野あおの利明としあき
 光とは同じの学校のクラスメイトで、あだ名の通りクラスの委員長をしている。

光「みんなは?」
青野「もう着いてる。僕らが最後だ」

 二人が行く先には巨大な塔がそびえ立っている。
 幅のある滑走路や対空火砲をそなえたそれは、平和な日本には場違いとも呼べる。
 まごうことない『軍事要塞』であった。

 正面の分厚い鋼鉄の扉の前に立つ二人。
 その手首には今時の高校生がつけるにしては少々無骨なブレスレットが巻きついている。
 二人はそれを扉の脇にある変わった形の機械に押し当てた。
 ピッ、と軽い音がした後 巨大な鉄の扉が音を立てて二つに割れる。

 その中に入っていく道すがら、二人は今日の集まる内容についてお互いの意見を交し合っていた。

ヒカル「司令が直々に私達に話す用件ってなんだろ? 奴ら……帝国の連中に関してかな?」
青野「いや、多分スクランブル・フォースに関してだろ。帝国はここの所動いてないし……
    っていうかヒカル、新聞やニュースを見てないのか?」

 少々呆れたように委員長に返され、ヒカルは赤面した。

ヒカル「べ、べつに見てないわけじゃないよ! 朝起きたらニュース見てるし!!」

 青野は、はぁっとため息をついた。
 彼は目の前の少女が毎日遅刻スレスレで学校に来ているという事実を知っている。
 つまり、朝のニュースを見ている余裕など無い。彼女が朝早く起きるのは修学旅行の時くらいである。

ヒカル「スクランブル・フォースっていうのは未成年のヒーローで構成された民間組織。
    そのスクランブル・フォースが今度から新生されるんでしょ?」
青野「そう、そしてその団結式が明後日に極東軍司令基地で行われる」
ヒカル「えぇ!? 嘘!?」

 今、世間で最も関心のある話題。
 それが、未成年の自己防衛と平和貢献するための民間機関。
 スクランブル・フォースの新生である。
 だが、これに対する世間の風評は最悪といっていい。

ヒカル「司令、私達になにを言うつもりなんだろ」
青野「分からない。予想するならS・Fに対して協力体制をとるか…もしくは」

 世間の目を考え、自分たちを解雇するか。
 自分の頭に浮かんだ考えを青野は首を振ってかき消した。
 自分達が解散していいのは彼ら…クァークゴ帝国との決着がついてからだ。
 
 クァークゴ帝国…
 約600年前までは宇宙の大海原をまたにかけ、数々の星々を侵略して回った強大な軍事国家。
 だが、現在ではその気風も払拭され、周辺からは「のんびりとした平和な国」という形で知れ渡っている。
 ところが数年前にクァークゴ帝国第13王子、サーティン・クァークゴが地球の侵略を決意。
 辺境である第13惑星 地球へと宣戦を布告した。

 彼女 赤城ヒカルと青野利明はそのクァークゴの侵略者と戦うために選ばれた戦士の1人だ。
 そしてその戦いの行方は2年経つ今も、終わっていない。
 青野は思う。
 自分たちの先輩はほぼ全員が、一年で敵を撃退してきた。
 二年もかけている自分たちは果たして彼らのあとを継ぐのに相応しいのだろうか? と。

ヒカル「いいんちょ? どこまでいくの?」
青野「……あれ?」

 考えことをするあまり、行くべき部屋を通り過ぎてしまうところだった。
 司令室と書かれたそのドアをノックする。

男の声「入りたまえ」
青野「失礼します」
ヒカル「失礼しますっ!!」

 対照的なテンションで二人はその部屋へ入室した。
 青野とヒカルの他に、三人。
 テーブルの前に立っている少年少女たちがいる。
 全員がヒカル達と同じ制服を纏い、その腕にはヒカル達と同じブレスレットが装着されていた。

 そしてテーブルに座っている一人の男。 
 軍服姿にサングラス。
 見るものに威圧感を与えるその姿は、彼が並大抵の人物ではないということを如実に示していた、その男。
 本名不明。年齢不明。過去一切の経歴、不明。
 現時点で地球防衛組織 EDC〈Earth Defence Corps〉の司令官を務めていること以外全てが謎に包まれている男。
 便宜上彼はこの基地アースベースの司令を務めていることから、こう呼ばれていた。

 『アース司令』と。

アース司令「諸君 良く来てくれた」
ヒカル「長官、またクァークゴの奴らが進撃してきたんですか!?」
黄乃「落ち着いてヒカル。今それを長官が言おうとしてたの」

 ヒカルの仲間である髪の長い女生徒、来須くるす黄乃きのがヒカルをいさめる。
 彼女の言葉には凛とした響きがあった。
 黄乃の言葉に引き下がると、長官―アース司令は重い口を開く。

アース司令「諸君らも聞き及んでいると思う。スクランブル・フォースのことを」
一同「!」
アース司令「世間では子ども達を戦わせている一部の軍関係者を辞職に追い込む運動も開始されている」

 全員の背筋が震えた。
 司令の言葉に耐えられなくなったように1人の少女が口火を切る。
 子猫のような印象を受ける少女、名を大窪おおくぼ桃子ももこ

桃子「長官! 私たちは………」
司令「諸君、君達は選ばれた戦士だ。だが、私自身、心のどこかで疑問に思っていたのだ。
    子ども達に戦いを強いることが果たして是といえるのか?……真に立ち上がるべきは我々大人なのではないかと」

 桃子の言葉をさえぎり、司令は言葉を続ける。
 彼は戦士たちから視線を離し、外の景色を見やった。

ヒカル「待ってください!」

 強い意志を露にしたのはヒカルが最初だった。
 司令は窓を見るのをやめ、ヒカルの目を見据える。
 常人なら息を詰まらせるようなプレッシャーの中で彼女は熱く真情を吐露した。

ヒカル「司令、覚えていますか? 私たちが高校に入学した日、基地で言った言葉を」
司令「『世界を守るために君達の力が必要だ。君達で無ければいけないんだ』
    ……忘れるはずも無い。二年前に君達を招集したとき、初めて使った言葉だ」

 司令を五人が見つめた。

青野「司令。僕達は戦いから降りるつもりはありません」

 青野の言葉に全員が頷く。
 呼応するように、五人の中の最後、
 5人の中でガタイのいい男子生徒。緑川みどりかわ弘道ひろみちが重く言葉を被せる。

緑川「司令。俺たちは全員が望んでここにいます。強制されたことはただの一度も無い」
黄乃「なによりここで辞めてしまったら歴代の先輩方に顔向けが出来ません」

 歴代の先輩。
 世界を救った英雄達。

司令「ありがとう。君達から今一度聞いておきたかった。世界を守る意志を」

 振り返った彼の手には、封筒があった。

司令「諸君達も聞き及んだことがあると思う。第14代目の英雄 地球戦隊ファイブマンの名を」
青野「聞いています。偉大な戦士の先輩方であり、また偉大な教師であったと」

 青野の言葉に満足そうに頷いた司令は、手刀で手紙の封を切る。

司令「彼らはスクランブル・フォースの補佐組織 ATPと呼ばれる民間団体を設立した」
緑川「ATP?」

 緑川が首をかしげた。
 S・Fについては知っている者もこの名前には聞き覚えが無いらしい。

黄乃「確か……戦闘能力を持つ教師による、子ども達と平和を守るための組織」
司令「その通り。その代表者には歴代戦士の何名かが、補佐に当たっている」

 そこで司令は改めて全員の顔を見回した。

司令「アースレッド、赤城ヒカル」
ヒカル「はいっ!」

司令「アースブルー、青野利明」
青野「はい」

司令「アースイエロー、来須黄乃」
黄乃「はい」

司令「アースピンク、大窪桃子」
桃子「はい」

司令「アースグリーン、緑川弘道」
緑川「うっす」

司令「君達に任務を与える。任務内容はS・Fの戦闘援護、そしてまもなく行われるスクランブル・フォースの団結式に出席して欲しい」

 全員が返事を肯定で返した。
 それは、必然。
 彼らはこの星を救うために集まったのだ。
 ならば、出向こう。
 偉大なる先輩。かつて地球にその人ありと言われたスーパー戦隊の名を汚さぬためにも。

アース司令「『人類戦隊アースファイブ』出動せよ!」
総員「ラジャー!!」

スーパー戦隊の外典に記された戦士たち。

人類戦隊アースファイブ S・Fに参戦決定!



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


青野「ですが、司令。今、我々が交戦しているクァークゴ帝国の相手はどうするのですか?」
司令「それに関しては問題ない。我々はクァークゴ帝国と一時的であるが停戦協定を結ぶことに成功した。
    それに、君達とスクランブルフォースの面々が出会うことで、地球を守る結束もより強くなると私は信じている」
緑川「うっす。わかりました」


to be continued


867 名前:新章/少年少女出立・SSテスト:2013/03/30(土) 13:40:04
○人類戦隊アースファイブ→S・Fに参戦

【今回の新規登場】
赤城あかぎひかる/アースレッド(雅先生の地球侵略日誌)
いつでも元気。どんな時でもプラス思考の女子高校生。
人類戦隊アースファイブのレッドを務める。
尚、後述するアースファイブのメンバーとは全員同じ学校の同じクラスである。

青野あおの利明としあき/アースブルー(雅先生の地球侵略日誌)
どんな時でも冷静。常に敵を分析し戦う。アースファイブの司令塔。
メガネをかけ、学級委員長をしているため周囲から『いいんちょ』と呼ばれる。
人類戦隊アースファイブのブルーを務める。

来須くるす黄乃きの/アースイエロー(雅先生の地球侵略日誌)
青野と同様に冷静で暴走しがちなメンバーを抑える役割を負う。
腰まで届く長い髪と雰囲気から漂う凛々しさが目を引く美少女。
アースブレスレットを用いてアースイエローに変身する。

緑川みどりかわ弘道ひろみち/アースグリーン(雅先生の地球侵略日誌)
温和な性格とがっしりとした体格。頼りになる男。
級友達からは所属するクラスを含め『3-Bの仏』と呼ばれている。
変身後の姿はアースグリーン。

大窪おおくぼ桃子ももこ/アースピンク(雅先生の地球侵略日誌)
子猫のような愛らしい容姿を持つ女生徒。
レッドである光と性格が似ているため、よくレッドとじゃれあっている。
アースピンクへと変身する。

○アース司令(雅先生の地球侵略日誌)
出身経歴年齢 全てが謎に包まれた男性。生身で怪人を粉砕する力を持つ。
地球防衛組織EDCの長官であり、全責任者。

 ◇地球防衛組織EDC(雅先生の地球侵略日誌)
 地球を侵略者から守るための防衛組織。
 過去何度も地球に侵略者が現れたため、国家が防衛予算を使って組織した武装組織。
 本拠地を日本に置き、人類戦隊アースファイブを主力に置く。

 ◇人類戦隊アースファイブ(雅先生の地球侵略日誌)
 正規のスーパー戦隊とは一線を画す戦隊組織。
 アースファイブ以外にも戦隊組織に数えられない外典の戦隊戦士たちは
 かなりの数が存在している。

868 名前:新章/少年少女出立 番外編・SSテスト:2013/03/30(土) 13:41:13


   クァークゴ帝国要塞 ワルスギー中央部 モニター室


 地球の侵略者 クァークゴ帝国が司令官補佐 ワルザード・スルーは憂鬱であった。
 黒い軍服をきっちりきこなし、スレンダーなスタイルと右目を覆う眼帯。
 美しい顔立ちが目を引く彼女だが今は少々気が抜けてしまっている。

ワルザード「つまりこういうことですか? 明日からいなくなるアースファイブに代わり、
      よりにもよって私たちが地球を守れ、と」

 それも目の前の女性のせいだ。

渚「いえ、そこまでは。ただ、不可侵条約を結んでくれるついでに、
  地球の皆さんと仲良くしてくれるとうれしいなぁ。なんて」

 一橋ひとつばしなぎさ
 養護教諭を営む傍ら、地球防衛組織 EDCの副司令を営む女性。
 人類戦隊アースファイブの上官である。
 敵地に単身でやってきた彼女は、武器は愚か、防具すらつけていない。
 ベージュの質素なワンピースを着ているのみの状態で、宿敵(?)であるワルザードと対談していた。

ワルザード「立場というものがあるでしょう!? それに私と貴方は敵同士ですよ!」
渚「まあまあ そういわず。源先生」

 源先生、という言葉にワルザードは言葉に詰まった。
 ワルザードの表の顔。地球での潜入捜査官。
 若者の意識調査という侵略者らしくない任務を行うときの偽名。
 みなもとみやび
 職業、高校の教師。
 そして、目の前の一橋渚と職場の同僚でもある。

ワルザード「今更、源雅の名前を出したところで無意味です。今の貴方はていのいい人質だ」
渚「まあまあ」

 渚のおっとりとした雰囲気にワルザードは毒気を抜かれてしまう。
 毎回この調子でお酒に誘われたり買い物に連れ出されたりしているワルザードとしてはそろそろ気を引き締めたい。
 というか、今は無理にでも引き締めないとマズイ。
 先ほど行ったように今は立場上敵対していなければ部下に示しがつかないのだ。

渚「源先生だってあの子達が他の組織……Dショッカーに敗れたりするのは嫌でしょう?」
ワルザード「ぐ」

 だが、渚はいつも、言葉勝負にストレートは使わない。
 搦め手だ。それも一番弱いところを突いてくる。
 渚の説明に補足しておくが、ワルザードは教師をしている過程で自分のクラスを受け持っている。
 その中に、こともあろうに宿敵であるアースファイブも生徒として紛れ込んでいるのだ。

 正直、アースファイブが破れることはどうでもいいとワルザードは思っている。
 決して『自らの生徒であるからかわいそう』などとは思っていない。

 重要なのは、自分達がDショッカーなどの大多数の組織と地球の覇権をかけて争わなければいけないことだ。

 現在、自分たちは正義のヒーロー5人組に248戦中248連敗を喫している。
 正直なところ、アースファイブと名乗る高校生五人組に手も足も出ない状態で他の組織と戦うのはごめんこうむりたかった。

渚「それに、クァークゴ帝国が地球を守ることで色んな恩恵もあるんですよ?」
ワルザード「恩恵?」
渚「クァークゴ帝国はこれまでに怪人を投入する作戦しか取っていません。何故ですか?」

 うちのバカ上司に聞いてくれ。と、ワルザードは殺意を込めた流し目をくだんの上司に送った。
 金髪碧眼の超絶美形でありながら、頭空っぽのニート(28歳)。
 サーティン・クァークゴ王子。
 上司、サーティンは体を縄で縛り付けられた状態でありながら、足で器用に茶を飲んでいる。
 セクハラ防止のためにワルザードが講じた処置だ。
 彼の名誉のためにマゾヒストではないことを付け加えておく。

サーティン「歴代の組織の伝統にのっとって、見たいな? 
       それに、あんまり強力な質量破壊兵器使ったら、地球のアニメやマンガが見れなくなっちゃうじゃん」

 その言葉にワルザードは頭を抱え、天を仰ぎ見てから王子が乗った椅子にとび蹴りをかました。
 ワルザードの上司に対する無礼を誰もとがめない。ここではこれが日常デフォルトである。

渚「まあまあ、源先生落ち着いて。彼の作戦行動は決して間違ってはいないんですよ?」

 はい?と上司を蹴りつけていたワルザードは顔を渚に向けた。
 相変わらずニコニコと笑みを浮かべ渚は話を続ける。

渚「先ほどサーティンさんも仰っていましたが、歴代組織が怪人を少数しか用いず、作戦を遂行するには訳があるんです」

 そういって渚は語り始める。侵略者にとっては『鬼門』ともいえる地球の歴史を。

渚「まず、地球侵略者というのは当然ながら異星からの侵略者を指します。
  悪の組織にはこの『地球侵略者』と『地球内に潜む怪物』と『一部の人間』の三種類があるのですが
  今回は地球侵略者に限ってお話させてもらいますね」

 ここで渚は差し出されている茶を一口飲んだ。
 そして語りを続ける。

渚「地球侵略者(以後、略して侵略者)が戦う敵は主に4つです。地球の人間が指揮する軍隊。
  単身で世界を救える能力を持つ、ヒーローと呼ばれる人種。地球と同盟を結んでいる異星の国家。
  そして宇宙警察や時空管理局を初めとする世界を又に掛ける治安維持組織」

ワルザード「存じています。スーパーロボットを所有するロンド・ベルを初めとする軍隊にはある程度の対策を立ててあります。
       それに、事前に宇宙警察には根を回しましたし、
       時空管理局には魔力を持たない兵器のみで戦うことを明言したため干渉はさせません。
       地球と星間同盟を結んだZAFTやナメック星。
       セフィーロなどとも『惑星間戦争における規約』を遵守しているため、連中が介入してくることはありえません」

 唯一、誤算だったのはヒーローと呼ばれる連中だった。
 たかだか、五人の高校生に自分は二年近く辛酸をなめさせられている。
 とすると、渚の言う「恩恵」とはこのヒーローに関する情報か何かを流してくれるということだろうか。

渚「源先生は一つ、重要なことをお忘れになっております。
  地球の同盟国の中で一番恐ろしいのはセフィーロやナメック星ではありません。
  ましてやZAFTとも違います。地球人が最もお世話になっている遠い宇宙の友人。
  それはM87星雲を初めとする光の国の人々……通称、『ウルトラマン』とよばれる宇宙の治安維持をする方々です」

サーティン「あ」
ワルザード「げ」

 ウルトラマン。自分たち『地球外侵略者』の天敵。
 宇宙警備隊の肩書きを持つ彼らは、その気になれば、全宇宙を統一することも出来る。
 高校生五人組だけで手一杯の自分達が、このうえウルトラマンまで敵に回したらどうなるのか。

ワルザード「ま、待ってください。宇宙警備隊は宇宙警察と提携しています。
       だったらウルトラマンだってそう簡単に出動することは……」

渚「話が地球に限れば別です。ウルトラマンには地球出身者や地球に戸籍を持っている方も大勢いるんですよ。
  自らの故郷が侵略の危機になったら、正当防衛としてクァークゴ帝国と戦う方も現れるでしょう」

 地球侵略どころではない。それでは最悪の場合、クァークゴ帝国と光の国の全面戦争に突入する恐れもある。

 そうなったら、結果は見るまでもない。
 おとなしく白旗を挙げなければ、国家が滅ぶ。

渚「歴代組織の侵略者が、最初から巨大怪獣や大規模な質量兵器を使わない理由がここにあるんです。
  ウルトラマンが戦うのは巨大怪獣や宇宙人のロボット兵器が主です。
  人間と同じ大きさの怪人や地球の中で生まれた組織には干渉したくてもめったに出来ない。
  そこまでの権限はウルトラマンには無いんですよ」

 ワルザードは頭を抱えたくなった。
 赴任した当初は、任務を一週間で終えて帰還する予定だった。
 ところが箱を空けてみればとんでもない。
 この地球という星は魔窟である。
 なぜ、数多の組織が地球をわざわざ侵略しようとしたのか分からない。
 メリットに相対するデメリットが大きすぎる。

渚「それに、地球には仮面ライダーを初めとする文字通りの超人もいます。
  等身大の怪人を相手にさせれば、彼らほど強力な戦士もいません。
  特撮知識には深いサーティンさんなら当然御存知ですよね?」
サーティン「私的にはV3のかっこよさは素晴らしいと思います。彼のキックなら生身で受け止めてもい……」

ワルザード「脳みそがスポンジでできてんのかアンタは!

 あまりに現実を見ていない上司にワルザードの怒りは沸点を越えた。
 一度壁に向かって三角跳び、その壁を蹴りつけ反動した力を利用してのジャンピングキック。
 顔面に入った一撃はさながら、V3反転キックのそれである。

ワルザード「そんなに厄介な敵がいるならどうして最初から言わなかった!!この野郎!!この野郎!!」
渚「まあまあ、源先生。恩恵というのは実は「それ」なんです」

 それってどれだよ。やさぐれた心でワルザードは思った。

渚「つまりですね。建前では地球征服を掲げておき、アースファイブのみを相手にします。
  一つの組織を相手にしている間、他のヒーローがくることはめったにありません。
  そして別の侵略者……Dショッカーなんかが現れたときは皆さんが、ヒーローの代わりに一般市民を守る」

サーティン「そして、守った市民に対して『勘違いするな。地球を侵略するのは我々だ』
       とかっこよく返すわけですね。わかります!」

 分かるか!なんだその素直になれない思春期の男女みたいな感情は! アホか!! とワルザードは心の中で嘆いた。

 『地球保全型侵略者』――平たく言うと、地球侵略を掲げておきながら看板だけになっている組織。
 実は地球人類と友好を結びたいと考えている組織の俗称。
    
 渚の話ではこの手の組織が流行しているらしい。 

 そして、話を聞くたびにワルザードはますます不愉快になった。

 必死に地球侵略をしていた自分が馬鹿みたいだ、ていうか、それ まんまうちの上司じゃん。
 と、彼女は、自分が縄に縛りつけた保全型侵略者を眺めた。

サーティン「なるほど、ツンデレってやつはすたれてるかと思いましたが、
       こんなところで需要があるとは、良いね。乗ってみようか」
ワルザード「ツンデレ?」
サーティン「ワルザード……おまえなあ、ツンデレぐらい理解しろって。じゃないと流行に乗り遅れげぶぁ!!」
ワルザード「侵略される側の流行に乗ってどうすんだよ!あたしら地球の敵だぞ!自覚あんのか!このニート!!」

 予想通りの意見にまたしてもブチ切れ肩で息をして、蹴り続けるワルザード。
 そのワルザードの肩をポン、と叩いて渚は話を続けた。

渚「でも、保全型侵略者の代表格である『彼ら』などを例にしますと、良く分かっていただけると思います」

 突如、立体スクリーンに映像が映し出された。
 その言葉と共に立体スクリーンに映像が映し出された。
 というか、囚われの身である彼女はいつこの映像を準備したのだろう。

 緑、黒、赤、青、黄のカラフルなカエル型宇宙人たちの姿。
 文明スピードなら最先端を行くと噂される宇宙人。
 ケロン星人だ。
 彼らも地球侵略に乗り出していたのか、ワルザードは敵が増えたとことに頭が痛くなった、
 が……よくよく見るとその映像にはおかしいところがあった。
 彼らは接触している地球人とボードゲームなどの遊びに興じたり、自分たちの科学技術を使って人命救助しているのだ。

ワルザード「これが、保全型侵略者……」

渚「彼ら…ケロロ小隊の場合、地球のヒーローからはノーマークです。理由は簡単。
  地球を何度も防衛しているため、『地球征服の意志なし、現状は観察処分にとどめる』
  と判断されているから、好き勝手に行動できているんですよ。
  今現在の地球ではおよそ100を超える地球侵略組織があります。
  その中で我々、地球の平和を守る防衛組織は侵略者達にランクをつけ、対応しているんです」

 次にスクリーンに映し出されたのは数多の組織の情報だ。
 把握している構成員、確認している拠点、首謀者など、ありとあらゆる情報が白日の下に曝されている。

渚「侵略組織は主にAからEの五段階に分かれます。侵略を行うペース、軍の規模、
  交渉の余地があるかないか、他にも判定基準はありますがこのような形ですね」

 『Dショッカー (中略) 危険度A』
 :
 :
 :
 『クァークゴ帝国 (中略) 危険度E』

ワルザード「ハ…ハ…ハ…」

 もはや笑うことしか出来ない。
 自分たちは正体を暴かれるどころか侵略される側の地球に勝手にランク付けまでされていたというのだから。
 しかも5段階中の最下層である。
 怒りと悲しみで、酒をあおりたくなるワルザードであったが、最後の理性を振り絞り話を整理した。

 様は二択なのだ。

 選択肢A
 アースファイブを初め、全スーパー戦隊、歴代仮面ライダー、そしてウルトラマンを倒してから地球侵略を行なう。

 不可能である。演算するまでもない。光の国の戦士の攻撃力は惑星一個を粉々に出来る。
 歴代スーパー戦隊や仮面ライダーも、ほぼ全員が反則級のスペックを持っている。
 連中全員と戦おうなど正気の沙汰ではない。

 そして選択肢B
 ウルトラマンを初めとする超人たちを敵に回したくなければ、自分たちと手を組み地球を防衛しろ。
 もし、手を組むのなら今すぐ総攻撃を掛けることはしない。


 B以外の方法はない。
 白旗振りつつ祖国に撤退するよりましだ。
 屈辱は倍だろうが。



 こうして、世にも珍しい対談が終了した。
 以下はその対談の際に結んだ条約の略文である。

 クァークゴ帝国と地球間に於ける 一時不可侵条約

 第1条
 貴国 クァークゴはアースファイブが地球にいない際、我が星における破壊活動を行ってはならない。

 第2条
 クァークゴ帝国がアースファイブを初めとするスーパー戦隊に(※)勝利した時点で地球を貴国の属国とすることを認める。
 なお、勝利における定義は以下に記載する。

 第3条
 危険度C以上の組織が、地球侵略をし、貴軍の拠点を侵害、または貴官らのいずれかに被害が及んだ場合、
 武力を持って貴官らと貴官らの駐留する地球を防衛することを推奨する。
 なお、その際に侵略者と認定していない地球人類を傷つけてはならない。

 第4条
 クァークゴ帝国がアースファイブに敗れ、指揮官全員が捕縛、排除、太陽系から逃走をした場合
 これをもって地球とクァークゴにおける惑星間侵略を地球側の防衛勝利として終結とする。


 ※地球侵略における『勝利』

 ○歴代スーパー戦隊の半数以上を倒し、スーパー戦隊の基地を破壊すること。
  これをもって地球は貴国への属国となることを認める。

          
               初代スーパー戦隊 レッド アカレンジャー
                      仮面ライダー1号 本郷猛 
           新西暦××年 第××代内閣府総理大臣 剣桃太郎 


869 名前:新章/少年少女出立 番外編・SSテスト:2013/03/30(土) 13:42:11
○EDC副指令 一橋渚→クァークゴ帝国と一事不可侵条約を結ぶ
●クァークゴ帝国侵略幹部 ワルザード・スルー→地球人と不可侵条約を結ばされる

【今回の新規登場】
●ワルザード・スルー=みなもとみやび(雅先生の地球侵略日誌)
クァークゴ帝国地球侵略部隊の幹部を務める。26歳の女性。
地球では教師として活動。として生活している。頭脳明晰で容姿端麗だが少々頭の硬いところがある。
宿敵であるはずのアースファイブの担任教師を務め、副指令である渚とは良く一緒に酒を飲む。
自らの『常識』と地球でのヒーロー補正の間に涙をのむ毎日をおくっている。

一橋ひとつばしなぎさ(雅先生の地球侵略日誌)
地球防衛組織EDCの副指令を勤める傍らアースファイブの所属する学校の保険女医として活動。
ゆったりとした物腰とほんわかした言動で周囲をまとめる。
なお、アースファイブが授業中に欠席する理由は彼女の裏工作によってなされている。

●サーティン・クァークゴ(雅先生の地球侵略日誌)
クァークゴ帝国の第13皇太子。
28歳にもなって酒とゲームとアニメ、女が大好きのニートもとい、地球征服の総司令官。
外見はそこらのモデルも裸足で逃げ出すような金髪碧眼のイケメンだが頭は空っぽである。
ちなみに地球征服を宣言した張本人である。
ただ単に地球に観光しに来たのではないかと言う噂も耐えないが。

870 名前:新章/少年少女出立 ≪未来から来た外道と悪魔≫・SSテスト:2013/03/30(土) 13:47:05


 世界とは一つではない。
 そしてこの世界において時間とはただ流れ行くものではない。

 時に停滞し、あるときは逆行する。

 これから話す物語は空想大戦から数十年を経た未来の出来事だと思ってほしい。

 それはある1人の男の話。
 その男はこの話の中でさほど重要ではない。
 まかり間違っても主役にはならない。
 人としての器が小さいからだ。
 だが、この話のキーポイントとなる故、少しの間我慢して聞いて欲しい。

 話が横道にそれた。

 男はジャーナリストである。
 特ダネを探し、フリーの身で生計を立てる。
 俗に言うパパラッチと呼ばれる類の人間だ。
 だが、彼は特ダネの中でも最上級のものを仕入れておきながら、台無しにしてしまった。
 記事を台無しにしたのではない。
 書いた記事の内容があまりに人道と反する内容だったため男の人生を台無しにしてしまったのだ。

 その男。
 名を蛭川光彦という。
 読者諸君にはこういったほうが記憶に新しいかもしれない。
 ウルトラマンメビウスを売った男。
 外道記者、ヒルカワと。

ヒルカワ「くそっ!!」

 道に転がっていた空き缶を蹴飛ばす。
 周囲の人々が驚いた様に彼を見たが、皆視線を合わせず、そそくさと立ち去った。
 夜。酒臭い息を吐き、世のあらゆる事象に毒づきながらヒルカワは当てもなくさ迷い歩いていた。

ヒルカワ「なにが、『お前の写真はもう使わない』だ、クソ野郎!!」

 ここ数日。彼の周囲は一気に冷えた。
 それは匿名のゴシップ記事によるもの。
 皮肉にもその記事を出したのは彼が懇意にしている雑誌社であった。

 『ウルトラマンメビウスを売った男』

 書かれていたのは、自分の所業。
 ウルトラマンメビウス……ヒビノミライに銃口を向けたことに始まり、
 そのメビウスの正体をメディアに公開、
 ウルトラマンメビウスとチームGUYSを辛辣にバッシングしたこと。
 これにより、彼は社会的に抹殺されたも同然になった。
 人類の恩人に唾を吐きかけ、エンペラ星人の軍門に下ることをテレビで進言した彼は
 ウルトラマンと敵対し、地球人類こそ至高と考える「地球教」からも弾圧されている。

ヒルカワ「なにがウルトラマンだ。得体の知れない宇宙人を勝手に祭り上げやがって
      『友人だ』『救世主だ』……馬鹿が! タダほど高いものがこの世にあるか!」

 酩酊しながら悪態をつき人気のない裏路地へと迷い込む。
 彼の目にはぼんやりとだが、明かりを放つ自販機が見えていた。
 だが、そこにアルコール飲料がないのに気がつくと
 腹立たしげに自販機を殴りつけまたふらふらと歩き出す。

 遠目に、電気店のウィンドウに飾られた街頭テレビの明るい光が視界にチラつく。
 そこで映されていたNEWSの中で描かれていたのは、人類にとっての“希望”を彩る話題の数々……

キャスター『皆様、ご覧ください! 極東軍指令基地に集結した、今を生きる若きヒーロー達の姿を!
       これより、彼ら若者の手によって、かつての戦乱において数々の巨悪に対し敢然と立ち向かった、
       あの『スクランブル・フォース』が、数十年の時を経て再結成されようとしているのです!」

 地球人類史上、最も激しい戦乱が巻き起こった時代とも後世の歴史評論家が評した“新西暦189年と、その前後”。
 ディバイン・ショッカー、宇宙連合強硬派、ジュピトリアンetc... 当時、地球圏に蔓延っていた侵略者どもを
 仮面ライダーにスーパー戦隊、そしてウルトラマン…… 数多のヒーロー達と地球人類が退けた後も、
 地球圏から戦乱の火種が完全に消えることは無く、僅かな歪みから大戦に繋がりかねない事態さえもあった。
 その中で、かつての闘いを生き延びた戦士達も再び戦火に身を投じていった。

 それから数年、数十年の時が経った現在においても、先のウルトラマンメビウス、並びにチームGUYS……
 彼らを筆頭に、かつて人々の自由と平和を守るために戦った戦士達の意思を引き継いだ
 次世代の戦士達の手により、再び地球圏に襲いくる脅威に備えての組織編成が今、成されようとしていた。

 この宇宙から戦の炎が消える事は、恐らく未来永劫ないだろう。
 事実、メビウスとGUYSが倒した筈のエンペラ星人が遺した、暗黒の鎧『アーマードダークネス』の襲来により
 その懸念はここ最近になって世間を騒がせており、日本の防衛予算の底上げを提唱する政治家の声も多い。
 ―――尤も、かつての“新西暦189年”ほど、一般市民とヒーローの間に軋轢が生じる事は無いだろう。
 その当時でさえも、彼らはロゴスやティターンズなど地球教勢力の妨害を受けながらも、それでもなお
 自分達の信じるものの為、そして例え僅かであろうと自分達を信じてくれた人々の声援を受け、
 かつての戦いから数十年経過した今、ようやく未来へと繋がる“光”を掴み始めていたのだ。

 そして、その第一歩として、かつての戦乱において結成されたと言われる組織……
 もはや歴史の教科書などでも伝説であるかのように語られる存在、かつての『スクランブル・フォース』が
 現役で戦っている若手のヒーローたちの手により、再編されることが発表されたのであった。
 NEWSの映像に映し出された若者達は、ある者は照れ隠しの表情を浮かべ、
 またある者は決意を新たに使命感を背負った者特有の引き締まった様子を見せ……

 いずれにせよ、彼らから感じられる希望に満ちた華々しさは、全て乞食やルンペン同然のヒルカワが失った物であった。

キャスター『――――続いてのNEWSです。つい数か月前、我ら人類の希望を背負って外宇宙へと旅立った、
       地球連邦の外宇宙航空艦<スメラギ>から、地球に向けての第一報が―――――』

 キャスターの言葉を待たずして、ヒルカワの注目は既に街頭テレビから離れていた。
 ……アルコール漬けになった彼の神経細胞ニューロンにも、自身が尤も忌み嫌う者共の存在が
 社会的な認知を強くし、かつ広く受け入れられているという“現実”は、鮮明に映し出された事であろう。

ヒルカワ「ウルトラマンだけじゃねえ。仮面ライダー。スーパー戦隊。
      今度のスクランブル・フォースだってそうだ。
      ようは人間以上の力を持つ化け物どもの集団じゃねえか」
 
 彼の発言は聞くべき人が聞いたら殴られても文句は言えない暴言だ。
 だが、幸い周りに人がいないため、彼が吐き出す言葉の暴力は止まることを知らない。

ヒルカワ「へへ。その意味じゃあスクランブル・フォースってのはありがたいぜ。
      化け物みたいな力を持ったガキなんざ大人になる前に
      とっと宇宙人や妖怪と戦争でも何でもして、消えちえばいい」

 ―――酒に溺れることで全てを忘れようとしている彼だが、薄々ヒルカワは気付いていた。
 自分は社会から抹殺された、と。

 もう家はない。職もない。天涯孤独。

ヒルカワ「……畜生!! なんで、オレがこんな目に遭わなくちゃいけねえんだ!!」

 自業自得である。
 彼はかつて命を助けてもらった恩人を撃った。
 利益が欲しいがためにメディアを使いその恩人を陥れようとした。
 そのしっぺ返しを食らったのだ。だが、当の本人は気付かない。

 本来ならヒルカワはこのまま誰にも相手にされず社会から断絶され生きていくはずだった。

 そして彼は出会う。
 お世辞にも運命の出会いには向かない場所。
 酒を売る自販機の前にソレは立っていた。

ヒルカワ「おい、お前。邪魔だよ。酒を買わねえならとっととどきな」
黒い怪人「私のことかね?
ヒルカワ「あ? ひッ!!」

 飛び退り尻餅をつく。
 目の前に黒い異形が立っていた。
 喋りかける前にどうして気がつかなかったのか。
 ソレは一見して人間ではない。
 青く輝く目には瞳孔も光彩もない。
 人の口にあたる部分には金色に光る器官がある。
 ヒルカワはその怪人を知っていた。

ヒルカワ「ひっひひぃっ!!」

 尻餅をついた状態で逃げようとするが立ち上がることすら出来ない。
 酒気と恐怖で腰が抜けてしまった男は両手で持って必死に後退を試みる。
 だが当然、そんな腰砕けの四つんばいが二足歩行に勝てるわけもなく。
 怪人はヒルカワの行く手を塞いだ。

ヒルカワ「こ、殺さないでくれ。何でもする。何でもするから!!
      う、ウルトラマン…… 仮面ライダー…… 誰でもいいから助けろよ!お前らヒーローなんだろ!?」

 逃げられないと分かったら恥も外聞もなく汚いアスファルトに頭をこすり付ける。
 土下座をした男の背中はただひたすらに死に対して脅え震えていた。
 目の前にいるのは人類の敵。過去に何度も地球に襲来し、侵略しようとした者。

黒い怪人「君は何故、生きていたいんだ?」
ヒルカワ「死にたくねえからに決まってるじゃねえか!」

 くぐもった『ふっふっふ』という声は、目の前の黒い怪人が笑っているものだと知る。

黒い怪人「今の君は社会から隔絶されているとしてもかね?」
 ヒルカワ「生きていたい!死にたくないんだよ! オレは!!」

 みっともないと言われようと、それが男の本心。
 例え、生きていく術が見つからなくても人は本能的に死を恐れる。

黒い怪人「安心しなさい。私は暴力が嫌いだ」

 そして、目の前にいる黒い異形……いや悪魔は、堕ちた男に手を差し伸べた。

黒い怪人「どうかね?ヒルカワ君。君が今話していた連中……
      彼らが心の拠所としている存在に、一泡吹かせてみないか?」
ヒルカワ「……?な、なんだ?」

 怪人が空をなぞり、一枚の写真をその手から引き出した。
 そこに描かれているのは、曲りなりにもジャーナリストだったヒルカワでも知っている顔。
 学校の歴史の教科書でもよく目にする顔…… 新西暦189年当時の総理大臣、剣桃太郎。
 それと同時代に活躍していたと記録されているスーパー戦隊の一角、アースファイブ。
 そして良く分からないが数多くの子ども達の写真。

黒い怪人「まず、仕事のない君にお金を上げよう」
ヒルカワ「は?」

 間抜けな答えを返すと同時、ヒルカワの頭上にひらひらと浮遊するものがあった。
 彼は一瞥した途端、反射的にそれを掴み取る。
 印刷されているのは福沢諭吉。
 それは日本国で使われている紙幣。
 魔術か奇術かは知れぬが、後から後からまるで雨の様に一万円札の束が幾枚も幾枚も降り続けるその光景。
 その様はまるで、かの文豪ゲーテが描いた戯曲『ファウスト』における悪魔メフィストフェレスを連想させるものであった。

ヒルカワ「!!」

 ヒルカワは恐怖と歓喜の入り混じった目で札束を掴んだ。
 夜空の月明かりに紙幣をかざす。
 透かしが入っている。間違いなく日本国の一万円札だ。

黒い怪人「どうだい嬉しいかね? 君達人間は紙幣が何より好きだろう?
       望むのなら日本で使う通貨以外でもこの倍額を払おう」

 あまりに呆然として声も出ない。
 そして、こういう突発的な事態に直面すると人間というのは思考が停止するものだ。

黒い怪人「君はこの金がほしいかね?」

ヒルカワ「……オレになにをさせたいんだ?」
黒い怪人「君は情報を扱うんだろう。その君の手腕を借りたいのだよ。その写真を君の手で公開して欲しいのさ」
ヒルカワ「そ、それだけでいいのか?」
黒い怪人「ああ、それだけでいい。この計画が成功すれば君は社会的な地位を取り戻せる。
      それどころか、協力してくれるならこの紙幣に加えて君の望む物を差し上げよう」
黒い怪人「へ、へえ。そいつは嬉しいなあ」

 媚を売っているのが見え見えなその顔。
 見る人が見れば嫌悪を抱くだろうが、目の前の怪人には違った。

 ――――突如、光が彼を包み込む。眩しさに目を瞑り、反射的に手を顔の前にかざす。
 光が収まったとき、そこはつい先程まで自分達のいた裏路地ではなく、白い建物の中だった。
 ……足元に視線を移せば、怪人が呼び寄せた万札の束は変わらず山のように転がっている。

黒い怪人「理解してくれて嬉しい限りだ。私は暴力が嫌いだが、聞き分けのない人間はもっと嫌いだ。
      首を縦に振ってくれなければ、君を消してしまうところだった」

ヒルカワ「……(ゴクリ)」

 目の前の怪人の言葉を聞き、ヒルカワは己の対応が間違っていなかったことを知る。
 やがて、悪魔のようなその異形は手を差し出した。

黒い怪人「握手をしよう。我々の友情と契約の証に」


 手を取ることに躊躇いはなかった。
 たとえ、相手が悪魔とわかっても彼にとっては目先の生と、金が何よりも大切なのだから。
 かつて記者だった男が手を取った、その悪魔の名は。

ヒルカワ「……宜しく頼む。メフィラス星人

 ―――かくしてここに悪魔と、その手を取った堕ちたジャーナリストの二人が、過去の世界に牙を剥く。


871 名前:新章/少年少女出立 ≪未来から来た外道と悪魔≫・SSテスト:2013/03/30(土) 13:47:42
●蛭川光彦→メフィラス星人と手を組み暗躍を開始。
●メフィラス星人→ヒルカワを金で釣り、買収。

【今回の新規登場】
●蛭川光彦(ウルトラマンメビウス)
狡猾で自己中心的なフリージャーナリスト。
ウルトラマンメビウスに命を助けられておきながらそのメビウスに暴行。
しかも彼の正体を目撃しマスコミに曝すなど、まさに外道。
その利己的な正確が災いしてか(因果応報とも言う)周囲からは白い目で見られ、
エンペラ星人の取引に応じようとしたため、ウルトラマンを初め、全宇宙人を敵視する地球教からも弾圧されていた。
社会的に抹殺された自分の名声と富に目がくらみ、メフィラス星人と手を組む。


●悪質宇宙人メフィラス星人(初代) (ウルトラマン/ウルトラマン Fighting Evolution Rebirth)
暴力を嫌うかわりに策謀を用い侵略を行う。
IQ20000、という桁外れな知能指数を持ち紳士的な振る舞いをみせているが
自分の思い通りにことが運ばないとすぐに激昂する。
暴力が嫌いというわりにその戦闘能力は高く、初代ウルトラマンとは互角の戦いを見せた。
一度は退くも、後にジェロニモンやバルタン星人、カオスロイド等を利用してウルトラの国に再度挑戦している。
なお、ウルトラマンタロウと戦った二代目、ウルトラマンメビウスと戦った暗黒四天王の知将は彼の弟達である。
ヒルカワを唆し、過去の世界にやってくる。その理由は不明。

872 名前:新章/少年少女出立 番外編part2・SSテスト:2013/03/30(土) 13:48:27


ナワヤ「始まったな……」

 ブラウン管にうつるのは極東軍にある司令基地。
 雑誌編集者 ナワヤは胡乱な目つきでその基地を見ていた。
 少年少女が主となって地球を守る防衛組織。
 スクランブル・フォース。
 世間の矛が向かう先。
 つい先日。同僚のトマルと口論した言葉が思い起こされる。

ナワヤ「いくらなんでも子供が武器を持って殺しあうなんて、許されるわけねえじゃねえか」

 少年マンガの作成に関わっている彼は、子供に対する愛情が深い。
 故に、今回のS・Fという組織について彼は賛同しかねた。
 だが、同僚であるトマルは違った。

 『その少年が自分の意思で地球を守りたいと願うなら、断ることはない』

 果たして、それが自分の息子ならどうしたか?
 ナワヤは思う。この国には自衛隊を初め数々の武装組織がある。
 自衛隊。科学特捜隊から系譜を継ぐ対怪獣防衛組織。
 歴代スーパー戦隊が築き上げた30以上の防衛組織。
 それら……数多の組織は罪のない無力な存在……子供を守るためではないのか?

 彼がそこまで思考した時だった。

ナワヤ「なんだ? ……ニュース速報?」

 画面が切り替わった。
 そこにうつるのは1人の少女が何者かをロボットアームのようなもので切り裂いている映像。
 飛び散る血しぶきや、機械のような肉片、
 衝撃音に重なって聞こえるのは、『臓物をぶちまけろ!!』という叫び。
 明らかに大衆向けではなくR指定がかかりそうなほどのグロテスクさ。
 ナワヤはその映像に吐き気を覚えた。

ナワヤ「なんだよ……これ」

 ニュースによると、これはスクランブル・フォースのある戦士の映像らしい。
 彼は知らない。
 その画像が『罠』であることに。
 その映像こそ真実だが、戦っている少女の想いはまったく語られていない。
 スプラッタムービーは悪魔のような侵略者と
 その手を取った堕ちたジャーナリストの用意した『罠』だと。

 大衆も踊らされる。
 テレビから流れるあの男の声に。

ヒルカワ「ニュースをごらんの皆さん。良く見てください。
      これが、スクランブル・フォースとよばれる連中の正体。連中は戦闘狂の集団です。
      自分たちをただ正当化したいが為に正義を謳い、騙っている偽善者に過ぎないのです!」

 誰も知らない。彼女は確かに戦っていた。
 だが、それは背後にある学校と、そこにいる人々を守るためだったことを。
 かくして、悪魔メフィラス道化ヒルカワの用意した舞台に今 全員が引きずり込まれた。


873 名前:新章/少年少女出立 番外編part2・SSテスト:2013/03/30(土) 13:49:04
●蛭川光彦→情報を歪めて公開。
○ナワヤ→メディアからの情報に踊らされる。

874 名前:新章/少年少女出立 ≪未来から来た外道と悪魔≫・SSテスト:2013/03/30(土) 13:49:47


  宇宙飛空挺


 かつてヒルカワがいた一室とはまた別の部屋。
 青白い照明が部屋を申し訳なく程度に照らしている。
 中央にはテーブル。
 日本、それも首都東京を模した精密なジオラマがそこにあった。
 そのテーブルを囲んでいるのは、メフィラスのほかに5人。

メフィラス「情報操作は随分有効に働いたようです」
ピット星人A「これで地球を手に入れるのは大分容易くなるわ」
ピット星人B「私たちはここが欲しい」

 美しい二人の少女であった。
 黒い髪に色白な肌。
 どこか日本人離れした、否 人間離れした美しさを持っている。
 彼女たちは己の指でくるくると旗をもてあそび、ダン!とある一角に突き立てる。

 「東京タワー」。

ピット星人B「ここが東京で最も美しいと聞いたわ」
ピット星人A「ゆくゆくは『銀河の宝石』と呼ばれた地球全てをいただくつもりだけれど」
ピット星人B「さすがに今回の規模でそこまで出来るとは思ってはいないわ」

 メフィラスは笑っていた。
 彼はそのまま残りの三人にもどうぞ、と手で促す。
 旗を立てろ、というのだろう。
 二人の少女が三人をジット見た。

 三人は全員が作業服を来た男性だ。
 彼らは己の旗を見ると、地面にほうり捨てた。

レボール星人A「必要ない」
レボール星人B「我々の旗はすでに東京中に立っている」
レボール星人C「これがある限り、我らはもう負けることはない」

 そういって指差す手には信号機。
 彼らはいちど、この信号機を使って東京侵略を企てたことがあった。
 最もその作戦は一度、失敗しているのだが。

ピット星人A「貴方達だけ東京を一度に侵略するなんてなんてずるいわ」
レボール星人A「……レボール、早い者勝ちだ」

 空気が変わった。
 「邪魔をするならお前達から殺してやろうか」
 という雰囲気が少女たちと男性達の間で流れる。

メフィラス「事が過ぎたら好きにやるといいでしょう。侵略スペースが大きければその分、リスクも高くなる」

 少女たちはふい、と男達から目を背けメフィラスの方に向き直る。

ピット星人A・B「「貴方はどこを侵略するの?」」
メフィラス「領土には興味がありません。私はあくまでこの星の人間の『心』に挑戦します」

 そういってメフィラスは指をふる。
 ジオラマが消え、代わりに現れたのはテレビ。
 そこに映るはあの男。

ヒルカワ「テレビをご覧の皆さん。良く考えてください。少年犯罪の増加が叫ばれている今、S・Fのような団体を野放しにしていいものでしょうか?」

 ヒーローへの復讐……それも一方的な逆恨みだが、ヒルカワは水を得た魚のように生き生きと毒舌を振るっていた。
 己の生存、利益の両方が掛かっている今 間違いなく彼はこの地上にいる戦士たちを窮地に追い込んでくれる。
 メフィラスの期待通りの効果をヒルカワは挙げていた。

メフィラス「それでは参りましょうか。 これが計画のかなめ、皆さんにも御同行していただきますよ?」

 気軽にメフィラスは言った。
 『計画』とは他でもない、侵略であり。
 『参る』とは当然、出撃だ。


ピット星人B「……」
レボール星人B「しゃくだが、貴様には借りがある」
レボール星人C「……レボール。今しばらくは言うことを聞いてやろう」

 満足そうに頷いて黒い悪魔は再びテレビに眼を向けた。
 そしてメフィラスに同調するように五人の男女もTVに視線を移す。

メフィラス「この星の人間の心はじつに興味深い。なかでもわたしが最も興味を抱いたのは『純粋な子供の心』です。
      ですが……同時にそれは人間の心の中でも『特別』なものです」

 そして、と メフィラスは言った。
 『特別であるというのは異端である。しかり異端とは害悪である』

ヒルカワ「私は国民の皆さんの安全を考え、提言します。すなわちスクランブル・フォースの対象者達は、危険である! と。
      もし、連中が今すぐにでもテロを起こそうと思えば、東京を簡単に破壊できるだけの力をヤツラは持っているのです!!!」

 この世で最も強い毒。
 それは二つある。
 一つは金。
 毒というより麻薬に近い。
 依存し、破滅する恐れを持つ『金』を人は、だがしかし手放せない。

 そしてもう一つ。
 その毒とは『情報』である。
 人は他者と関わることで己を保つ。
 情報とは古代から人類が互いを認識するための手段として発達させてきた。
 しかし、新西暦というこの時代において。
 我々が得るべき情報はあまりに多い。
 なかでもインターネットやテレビから得られる電子情報は世界中の情報を一度に収集することすら出来る。
 だが、この情報には偽物が含まれていることがある。

 いや、偽物の情報というのもおかしいのかもしれない。
 例えるなら情報とは床に置かれた6面ダイスだ。
 ダイスの目を一度に全て見ることは難しい。
 床に置けば、床につけたその一面は隠されてしまう。
 そして情報ダイスを扱う人間が狡猾になれば、自分が見せたくない面を床に伏せ、人々に公開することも出来る。
 床に伏せられた面。本来ならそれは人々の生きる指針となる想いだった。
 だが、その面を伏せた故に かの情報はねじれ狂う。
 そして大衆も。

 転がり落ちる。 
 転がり落ちる。
 事態はまだ、底辺には達していない。

 異端であり、危険であると烙印を押された子ども達は何処へ行くのか。


875 名前:新章/少年少女出立 ≪未来から来た外道と悪魔≫・SSテスト:2013/03/30(土) 13:51:04
●メフィラス星人→ヒルカワの情報操作をバックに侵略を開始。
●ピット星人→メフィラスと共に地球侵略開始。
●レボール星人→メフィラスと共に地球侵略開始。

【今回の新規登場】
●信号怪人レボール星人(ウルトラマンA)
かつて地球にと共に飛来した異星人。
赤、緑、黄の三色の個体が確認されており、信号怪人の異名を取る。
体色だけではなく実際に東京の信号を狂わせ交通災害を引き起こした。
ウルトラマンA=北斗に倒されるも再び来襲。今回現れた彼らが黄泉還りか、同種の別の個体なのかは明らかにされていない。

●変身怪人ピット星人(ウルトラセブン)
ピット星人は女性しかいない種族であり、宝石を求める程度の軽い気持ちで地球侵略に乗り出し
見事にウルトラセブンに撃墜される。一見して人間の美少女だが正体は昆虫のような顔の中々にグロテスクな怪人である。
言動から推測するに当たり、彼女達は黄泉還りをした本人だと思われる。

876 名前:新章/少年少女出立 ≪未来から来た外道と悪魔≫・SSテスト:2013/03/30(土) 13:51:33


 ナワヤは急いでいた。ニュース速報を見て彼は即座に編集長に直談判。
 許可を取るや否や、タクシーを捕まえ向かう先は日本有数の軍事基地。

ナワヤ「どうなってんだ。チクショウ!」

 車中で爪を噛み、彼はカーラジオから聞こえて来る声に耳を傾けた。
 それは彼が危惧していたのとはまったく別の事態。
 子ども達の安全を訴えていたはずの団体までが掌を返したようにS・Fに恐怖している。
 道中、武器を持った人間が基地に向かうのを見たほどだ。
 いつから、彼らは世界の敵となったのか。
 全国に流れたあのVTRは確かに残虐なものだった。
 だがそれが本当に少年少女の起こしたものなのか。
 いや、起こしたとしても何らかの理由があったのではないか?
 ナワヤは急ぐ。真相を確かめたいがために。

ナワヤ「司令基地はまだか!?」
運転手「もうすぐ。あと500mほどですよ」

 いらいらと貧乏ゆすりをするナワヤ。
 その時だ。
 車が急に揺れ、クラクションと物凄い音が響く。

ナワヤ「な!?」
運転手「前のほうが事故ったかな」

 運転手はフロントガラスに顔を押し付けるように前を見た。
 一方のナワヤはしたたかに頭を打ちうずくまる。
 その行動の違いが、両者の状況を明確に分けた。
 瞬間、蒼い閃光が走る。
 声をあげる間もなく運転手はハンドルに突っ伏した。

ナワヤ「おい、運転手さん! どうした!?」

 閃光を直接見なかったナワヤは奇跡的に助かった。
 一方の運転手は身体が痙攣し顔は青く染まっている。

運転手「……(ピクピク)」
ナワヤ「な、なんだ!? なにが起こっているんだ!?」

 反射的に自動車から飛び出す。
 そこには地獄絵図が展開されていた。
 人々は地に伏し、皆その顔は青く染まっている。
 突き出した腕は空を掴み、かすかな悲鳴、あえぎ声だけが大地に流れる。

 あまりに凄惨な光景に、彼は立ち尽くす。


  Side Girl


 少女は幼い頃から特撮ヒーローが好きだった。
 自分にはない不思議な力。
 その力に溺れることなく人々の為に戦う戦士たち。
 『私も彼らのようになりたい』
 そんな彼女だからスクランブルフォースが再結成されると聞いた時、
 自分たちと同年代の戦士が正直羨ましかった。
 だが、彼女はブラウン管ごしに見た。
 飛び散る鋼の肉片。
 臓物をぶちまけろ!!という叫び。

 ―音を立てて崩れ落ちる気がした―


 ヒーロー。確かにそういったはずだ。
 子ども達は世界と人々を守る戦士なのだと。
 だがこれはどうだ?
 まるで虐殺ではないか。

 ―確かめなきゃいけない―



 財布と竹刀を掴んで、少女は家を飛び出す。
 神奈川から電車とバスを経由し、動揺する感情を抑えながらもようやく東京都内に辿り着いた。

 それが、つい先刻の出来事。

 そして今、運命は交差した。
 本来なら会わないであろう二人の人間。

 真っ青になった何者かの手を握り、誰かに助けを求めるように彼女はオロオロと辺りを見回す。
 ちょうど、ナワヤと彼女の視線が合った。

珠姫「す、すみません。手が空いているなら救急車を呼んでもらえませんか?」
ナワヤ「お、おう」

 ナワヤは急いで携帯電話を取り出し反射的に119番を押す。

電話「ガガガ……ビ――……」
ナワヤ「くそ! イカレてやがる! ミノフスキー粒子でもばら撒いてんのかここら一帯は!? 」
珠姫「……(ギュッ)」

 少女は何かを握り締め、恐々と辺りを見回す。
 ナワヤは少女の握り締めている物に見覚えがあった。
 『超剣戦隊ブレイドブレイバー』のリーダー。
 レッドブレイバーのマスコットだ。

ナワヤ「君もひょっとして極東軍基地に行くのか?」
珠姫「……はい」
ナワヤ「君は……スクランブルフォースの戦士なのか」
珠姫「いえ……私は」

 何の力も持っていないんです。と、悔しそうにマスコットを握り締め彼女はうつむいた。

 携帯を握り締め、ナワヤも少女と同じように辺りを見回した。
 思い知る。自分が無力だと。
 『子ども』を守る大人の自分ですら、突発的な事態に何も出来ない。
 ふと、ナワヤは思った。
 こんなときに、スクランブルフォースのヒーローが来てくれれば、と。

ナワヤ「(馬鹿、何考えてるんだ。オレは)」

 恐怖を感じれば弾圧し、危機に瀕すれば助けを求めるなど虫が良すぎる。
 少なくとも今の自分が大人として、報道者として出来ることはただ一つだ。

ナワヤ「君、名前は?」
珠姫「珠姫です。川添珠姫」
ナワヤ「そうか。俺はナワヤ。少年マガジンの編集をやっている」

 二人はどちらからともなく握手をする。
 ナワヤは腹をくくった。
 彼が報道者としてできること。それは。

ナワヤ「(この子と一緒にここから生還し、救助を呼んで真実を見極める。キバヤシだってきっとそうするはずだ)」

 頼りになる同僚達は今隣にいない。
 報道者 ナワヤの戦いが始まった。



  Side hirukawa


 笑いが止まらない。というのは今のような状況を言うのだろう。
 ヒルカワは缶ビールをあおりながら思った。

 メフィラスがジャックした電波に乗せて流したVTRの効果は絶大だ。
 その音声を聞き、映像を見るだけで徐々に子ども達に対しての猜疑心が芽生える。
 それは伝染し、やがて一つの大きな波となる。
 極めつけは基地周辺の道路で起きた謎の集団昏倒事件。
 事件の首謀者は子ども達の仕業であると。
 大人たちは武器を持った子ども達に敵意を向け、彼らを処断しようと決起する。

 それをヒルカワは笑いながら見ていた。

 東京、極東軍基地周囲に張り巡らせた特殊な妨害電磁波。
 それから複数の細工をした信号機。
 これらを使った作戦の『第二段階』も順調に進んでいる。

 ちなみに彼はテレビ局ではなく、メフィラスの円盤の中に居た。
 一見してテレビ局にいるように見せかけて実は1人で中継し、合間に酒を飲んでいる。

ヒルカワ「いや〜すいませんねえ 皆さん」

 酒に酔った赤ら顔でヒルカワはテレビの向こうの人々に謝った。
 彼の瞳には顔を青白く染めて倒れている人々の群れが映っている。

ヒルカワ「メフィラスの話じゃ『命に別状はない』らしいんでしばらくそのまま寝ててもらえますかね。
      俺も数十億って金と自分の人生が掛かっているんで。まあ、そのうち『ヤツラ』が助けに来るはずですから」

 「命」に別状がなければ何をしてもいいのか?
 「己」さえよければ何をしてもいいのか?
 「富」のためなら人類を売ってもいいのか?

 そのすべての問にヒルカワはYEsで返す。

 ―だってそうだろう?人間って生き物はこの世で自分が一番大事なのさ―

 ヒルカワは躊躇わない。
 侵略者としての所業を彼は冷静にこなす。

ヒルカワ「こちらポイントS、現在作戦はとどこおりなく進行中」  
メフィラス「ご苦労様。君はそのまま待機していてください」

 メフィラスは通話回線を切った。

 作戦は順調だ。
 全てが予定通りに進んでいる。

メフィラス「さあ、後は君達次第です。このまま侵略をするなり、もう少しこの喜劇を愉しむなり、御自由になさい」
ピット星人A「私達が侵略を成功させたら?」
メフィラス「そうしたら地球は君らのものです。最も、『侵略できれば』の話ですが」

 『やれるものならやってみろ』
 そういわんばかりに黒い悪魔の視線は挑発するように蒼く、鈍く光っている。

レボール星人「我々を嘗めないことだ。少なくともこの星の人間より科学水準は遥か先を行く。
         連中と戦うために新兵器も用意した。地球の猿に遅れは取らん。もう二度と……な」

 安い挑発には乗らず彼らは出て行く。
 その彼に聞こえたかどうか分からぬ声でメフィラスは呟いた。

メフィラス「分かっていませんね。この星にきた侵略者は皆、地球人より高度な文明を持っていた。
       なかにはウルトラ戦士を倒したものすらいる。
       それでも地球侵略をなしえた者はいない。
       それはひとえに頭脳や身体能力とはちがう、彼らの心の強さですよ」

 それに合わせるように日本上空には、メフィラスの手の者たち……異星からの侵略者が次々と侵攻を開始する。

メフィラス「東京の全住民の方々に告げます。私はメフィラス。私は皆さんの味方です。
      悪しき子ども達……スクランブルフォースの者たちを処断しにきました」

 その声が決定打。
 半ば洗脳状態にあった民衆は恐怖に駆られ子ども達を捕らえようと動き出す。

 ここが物語の最下層。
 果たして彼らは立ち上がる事が出来るのか。


877 名前:新章/少年少女出立 ≪未来から来た外道と悪魔≫・SSテスト:2013/03/30(土) 13:52:02
○ナワヤ→人々の昏倒事件に遭遇。珠姫と共に脱出を試みる。
○川添珠姫→TVの報道が信じられず真実を確かめに基地へ。だが事件に巻き込まれる。
●蛭川光彦→酩酊しつつ侵略作業を進行中。
●ピット星人&レボール星人→メフィラスから挑発を受け退出。
●メフィラス星人→計画の最終段階へ。

【今回の新規登場】
○川添珠姫(BAMBOO BLADE)
剣道が得意でアニメ、特撮が大好きな小柄な女子高生。身長149cm。
おとなしい性格で友人達からはマスコット的存在として扱われる。
剣道の腕は全国をレベルで現在は剣道部で精進中。
超常的な力、変身能力などは持っていないが正義を愛する心は誰にも負けていない。

878 名前:新章/少年少女出立 ≪未来から来た外道と悪魔≫・SSテスト:2013/03/30(土) 13:52:29


メフィラス「東京の全住民の方々に告げます。私はメフィラス。私は皆さんの味方です。
      悪しき子ども達……スクランブルフォースの者たちを処断しにきました。
      彼らを差し出しなさい。条件を聞いてもらえば皆さんに危害は加えません」

 その放送はまさしく悪魔のものだった。
 声音こそ優しい。
 だがその内容は毒と牙とを過度に含んでいる。

 声だけではなくUFOが立体映像を写した。信号機フラッシュを浴び青い顔で倒れ伏す人々。
 そしてビルほどもある巨大な影が蠢く。
 どんなモンスターなのかは分からない。
 それが余計に人々の心を恐怖に煽る。

 悪魔はもう一度言葉を繰り返した。

メフィラス「『言うことを聞けば』危害は加えません。早く子ども達を私に差し出しなさい!!!」

 もはや恫喝。言うことを聞かなければどうなるのか。
 考えるだに恐ろしい
 人々からすればもはや子ども達が悪か否かなどどうでもいい。
 望むものはただ一つ。
 己の保身である。

作業服の男A「このままじゃ俺達がメフィラスに殺される!」
作業服の男B「殺される前にヤツラを殺せ!!」

 メフィラスの言うことを聞けば助かる。
 そう思い込んだ者達が暴動を開始した。
 警察も消防も自衛隊ですら機能しない。
 通信遮断。電気機器の使用不可。
 それは人々の牙と爪がもがれた事に他ならないからだ。
 皮肉なことに電信は通じなくとも、人々の狂気と正への執着は恐るべき速度で伝播していた。
 それは一つの大きな波となり、理性や常識 
 そして子どもたちを守るとする者達までも犠牲にして飲み込んでゆく。

『極東軍司令基地の周りで原因不明の昏倒事件が発生。
 人々は恐怖のあまり暴徒と化しこの基地に向かっている』

 極東軍指令基地の警備員はそう言って気を失った。
 彼の服には様々な傷跡がついており、それが民衆のものだと分かるのに時間は要らなかった。

 団結式に集っていた面々は初め、その知らせに驚愕した。
 何者かの陰謀。
 いや、何者かなんて白々しい言葉はいらない。
 警備員は確かに言ったのだ。『メフィラス』と。

頭上の円盤/メフィラス「皆さん。どうか、われわれの言うことを聞いてください。悪しき子供たちを。
              兵器を持った軍人たちを、皆さんの手で倒すのです」

 人々は恐れている。頭上に控えたメフィラスたち……侵略者の円盤を。
 そしてスクランブルフォースの子供たちを。

 基地の格納庫は破壊された。
 中に眠っているのは駐留していたホワイトベース、アーガマやナデシコといった武装戦艦。
 歴戦のモビルスーツやスーパーロボット軍団。
 無論、むざむざ破壊させはしない。
 ただ、相手は腐っても民間人。
 皮肉なことに多くの人々を守っていた軍は、その人々の手で破壊されつつあった。

 鉄で出来た扉が軋みを上げる。
 モビルスーツや戦艦だけでは飽き足らず、遂にここまでも魔の手が伸びる。
 学は拳を握り、他の教師たちにアイコンタクトを取った。

学「この場に集った戦士の皆。君達に頼みがある」
カズキ「頼み……?」

 学は脇にいるマジシャイン/ヒカルを見た。
 彼は頷く。そして鵺野も。

学「スクランブルフォースに敵意を抱かせ群衆を操っている者がいる」
ヒカル「メフィラス星人。やつは人々の心を操りこの世界を脅かそうとしている。彼を倒し、民衆を恐怖の呪縛から解き放って欲しい」
鵺野「すまない。本来なら大人の俺たちが君達を守らなきゃいけないのに」

 鵺野が黒い手袋を嵌めた手を強く、強く、握り締める。
 それは悔恨か、はたまた憤怒か。

ヒカル「ここは僕達が食い止めます」
さくら「そんな……危険です!」

 危機を案じる少女の頭を、天空聖者はそっとなでた。

ヒカル「さあ行くんだ。じき人々がここになだれ込んでくる」
さくら「で、でも……」

 ドン!ドン! という音が扉の向こうから響いてくる。

 天空聖者は転移魔法を使った。
 一人、また一人と子供たちは団結式の会場から消えてゆく。

 学「頼む! どうかこの世界を……!!」

 そして子ども達は司令軍基地から消失した。
 後に残った教師達は覚悟を決める。

鵺野「近衛学園長がいないのは幸いでした。魔導都市『麻帆良』と魔法使いの連絡が生きていれば反撃の糸口はつかめます」
ヒカル「それに八的先生も。彼ならきっと子ども達を助けてくれるはず」

 ダァン、音を立てて扉は破られた。
 暴徒は蹂躙するが為に、基地を土足で踏みにじる。

作業服の男A「子供たちを皆殺しにしろ!!」
作業服の男B「じゃないと俺たちが殺される!」
作業服の男C「殺せ!!」

 民衆は100人は下らない。
 ある者は松明たいまつを。
 ある者は角材を。
 はたまたあるものは包丁を。

 武装で身を固めた彼らは口々に『殺せ!』という言葉を叫びながら基地を襲った。
 だが、そこに子ども達はいない。

 いるのは三人の教師達だけだ。

学「手加減はします。少しの間眠っていてください」
鵺野「でも、気持ちは……怒りだけは込めさせてもらう。うちの生徒に手出しはさせない!」
ヒカル「……すみません」

 三人の言葉を聞くヒマもあらばこそ。
 暴徒たちは凶器を取って教師達に襲い掛かる。
 向けられる武器は、向けられる憎悪は彼らに行くべきではない。
 その刃は、はるか天空で笑う外道と悪魔に向かうべきだというのに。


879 名前:新章/少年少女出立 ≪未来から来た外道と悪魔≫・SSテスト:2013/03/30(土) 13:52:53
●メフィラス星人→人々を先導し、基地を襲撃させる。
○S・Fの子ども達→マジシャインの転移魔法により基地から撤退。
○S・Fの教師達→子ども達を逃がし人々を食い止める。

880 名前:新章/少年少女出立 番外編part2・SSテスト:2013/03/30(土) 13:53:29


 東京、司令基地から数100mはなれた交通路。

 舞台は整った。
 余興はコレまで。
 暴動を煽った作業服の男達。
 彼らはいつの間にか離れたこの場所にテレポートし、その本当の姿を見せる。

作業服の男A「レボール……」
作業服の男B「レボール……」
作業服の男C「レボール……」

 赤、青、黄 三原色の怪人達。
 彼らの叫びに呼応するように信号機が点滅し巨大な魔人……否、超獣が姿を現す。

レボール星人A「さあ、全てを破壊しろ! 我がしもべ達よ!!」



 アースファイブのピンク、大窪桃子は泣いていた。
 彼女をなだめるイエロー、来須黄乃もどうしていいかわからない。
 マジシャイン/ヒカルの手によって彼女達は暴徒たちの手を逃れ、ひと気のない公園に転移していた。

桃子「うぅ……」
黄乃「桃子……」
桃子「私たちは、精一杯人類を守ろうと戦ってきた。でも、こんなの、こんなのあんまりだよ……」

 桃子は嘆く。
 彼女たちは必死に戦った。
 命を懸け、数え切れない傷を負いそれでもこの星のため戦った。
 だが、彼女たちに対する褒章はあまりに非道なものだった。

桃子「先生達は『守れ』って言った。でも私にはもう『何を』守ったらいいか分からない。
    しかも、相手はあのメフィラス星人。あんな凶悪な敵と戦うなんて……今の私には無理、無理だよぉ……」

 すでに心は折れていた。
 桃色の少女は見つからぬようただただ涙を流し、黄色の少女はただ黙って彼女の肩を抱いてやることしか出来ない。
 そんな彼女たちの元に、複数の足音が近づいていた。
 二人は反射的に身をすくめ、植え込みの間で息を押し殺す。

珠姫「ナワヤさん。こっちです」
ナワヤ「本当かい? タマちゃん」

 桃子と黄乃のそばにやってきたのは1人の青年と竹刀を持った少女。
 黄乃達は息を殺す。

球姫「さっきこっちで何かが光っているのが見えたんです」
ナワヤ「でも、コレといって何かがあるわけでも……」

 ナワヤとタマは人々の救助を終えた際、メフィラスのあの放送を聴いた。
 それとほぼ同時に近くで起きた発光現象。
 タマはヒーローが助けに来てくれたのかもしれない。とナワヤを連れてきたのだ。

球姫「……早く助けないと。信号の発作を起こした人たちも。スクランブル・フォースの人たちも」

 球姫は焦りながら、きょろきょろと公園を見回す。
 力がないのがもどかしい。
 自分が強ければメフィラスを倒しに行くのに。
 ヒーローを助ける事が出来るのに。

ナワヤ「……タマちゃん。やっぱり戻ろう。」

 二人が行った救助活動は人々を屋内に運び入れるという、はっきり言ってその場しのぎにもならない処置であった。
 店舗の中に居てかつメフィラスの放送に動じなかった人々に救護者を託し、二人は一時発光の正体を探りに来たのだ。

ナワヤ「スクランブルフォースの子たちは心配だけどあの人たちを放っておくわけにも行かない。
     それに俺やタマちゃんみたいに他にも信号の光を見ずに発作をやり過ごした人がまだいるかも知れない。
     その人たちとも連絡を取らないと」
珠姫「はい……」

 二人が戻ろうとしたそのときだった。

球姫「ナワヤさん。危ない!!」

 反射的に少女は身体を庇う。
 彼女と青年の上を刃が通過した。

ロボット「ウィーン
ナワヤ「なんだこいつは!?」
球姫「これは……アーナロイド!」
ナワヤ「知っているのかタマちゃん!?」
球姫「地球侵略者……アリエナイザーの使用するアンドロイドです」

 汎用戦闘兵アーナロイド。
 レボール星人が用意した新兵器。
 その数約100。
 そして……

群衆「いたぞー! 子供だ!!」

 二人の前に現れたのは角材や包丁を持った人々の群れだった。
 驚いたことに彼らはアリエナイザーと連携を組み、球姫とナワヤを包囲する。
 その先にはある1人の男の姿があった。

ナワヤ「て、てめえらどういうつもりだ!?」
ヒルカワ「決まっているだろう。そこの竹刀を持った子供をメフィラスに引き渡す」
桃子・黄乃「!?」

 外道の声はナワヤだけでなく植え込みに隠れている二人にも衝撃を与えた。

ナワヤ「ま、待て、この子はスクランブルフォースじゃない!」
ヒルカワ「メフィラスのところに連れて行けばはっきりするさ」

 その言葉を口走った男の胸倉を、ナワヤは掴んだ。

ナワヤ「てめえ、年端も行かない子供を侵略者の生贄にしろって言うのか!?」
ヒルカワ「こいつらを差し出さないと俺たちが殺されるんだぞ!」」
民衆A「そうだ、それにS・Fの連中は血と殺戮が好きな化け物だ!!」
ナワヤ「……勝手なことばっか言いやがって!!普段は被害者ヅラして守られて……
     決起すれば子どもだからって押さえつけられて……今度は『悪だ』って決め付けて…… 挙句の果てに生贄にする?」

 ナワヤという人物は沸点が低い。
 メンバー達が冷静に振舞う中で感情的な立場から多くの意見をしてきた。
 裏を返せばそれは情に厚いということ。
 その彼にとって目の前の人々がいうことはとても認められるものではない。

民衆B「いいからその子どもをよこせ!」

 球姫を守ろうとするナワヤ。だが彼の前に突如、植え込みから1人の少女が飛び出した。

桃子「もう、やめてぇ!!!」
黄乃「桃子!」

 釣られるようにもう1人の少女が飛び出す。
 彼女達は珠姫とナワヤをかばい、前に出た。

民衆A「な、なんだ」
黄乃「貴方達が探していたスクランブル・フォースよ」
桃子「その人たちを解放して!!」

 その言葉を聞いた途端、ヒルカワの顔が邪悪に歪んだ。
 だが、笑顔を浮かべたのも一瞬。
 彼は尻餅をつき、迫真の演技を見える。

ヒルカワ「お、俺達に攻撃するのか!?」
民衆C「私たちは何の罪もない被害者だぞ!?」
ヒルカワ「やはりお前達は悪魔だったんだ!!」

 ヒルカワの演技に合わせるように戦闘兵――アーナロイド達が動き
 「ウィーン」という間の抜けた機械音とブレードの金属音で人々を威圧する。
 恐慌状態に陥った人々は武器を振りかざし、戦闘兵と共に少女達を取り囲む。

ヒルカワ「おれたちがこの戦闘員達に殺されてもいいっていうのか!?」
民衆B「そうだそうだ!!」
ヒルカワ「お前達はヒーローなんだろ!?だったら俺たちのために死んでくれよ!!」

 あまりに残酷だった。むき出しの人間の心は何処までも醜かった。
 だが……。

球姫「……違う!」

 桃子達の変わりに剣を向けるものが在った。
 彼女は物怖じすることなく竹で出来た剣をアーナロイドと人々に向け、断言する。

珠姫「……違う!!……違う!!!

 上手く言葉にして伝える事が出来ない。
 自分の胸に宿る思いを言い表せない。
 球姫は涙を流しながら、言葉を発しようとする。だが、

ナワヤ「危ない!!」

 戦闘兵の刃が迫る。
 誰もが終わりだと思った。
 誰もが眼を閉じた。

 刹那、ブレスレットがそれを弾く。
 二人の戦士が球姫に向けられた攻撃を阻んだのだ。

 人々の中に動揺が走った。
 先ほどまで人々に威圧されていた二人の少女。
 彼らは理解できない。
 なぜあの速度に反応できたのか?
 彼らは悪魔ではなかったのか?
 先ほどまでの儚い印象からは一転、今は足を掬われるほどの覇気が彼女達から巻き起こっている。
 人々の印象をよそに二人は再び戦う決意を固める。
 攻撃を受け止めながら桃子は涙を拭き、黄乃は囁いた。
 ありがとう、と。

桃子「私たちは裏切られてなんかいなかった」
黄乃「ええ……もう二度と迷わない」

桃子・黄乃「アース・チェンジャー!!

 球姫の思いは彼女達に届いた。
 変身で起きた突風で竹刀に下げられた超剣戦隊レッドのマスコットが揺れる
 ナワヤにはそれが二人の少女を肯定しているように見えた。
 ―二度と迷ってはならない それがただ一つのヒーローの不文律なのだから―
 と。


881 名前:新章/少年少女出立 番外編part2・SSテスト:2013/03/30(土) 13:53:53
○ナワヤ、川添珠姫→ヒーローを信じ続ける
○来須黄乃、大窪桃子→心が一度折れるも球姫の思いに応え変身
●アーナロイド→襲撃を開始
●蛭川光彦→民衆を扇動しS・Fを窮地に追い込もうとする

【今回の新規登場】
●アーナロイド(特捜戦隊デカレンジャー)
エージェント・アブレラが販売している、人工的に量産できるアンドロイド。
戦闘兵としての腕はそこそこだがまともなヒーロー相手では歯が立たず、
地球の戦隊ヒーロー(1人)に100体まとめて切り倒されるという不名誉な記録を持っている。
ただその生産コストは安価で、Dショッカー傘下組織や敵性異星人に限らず、経営に厳しい各組織から定評がある。

882 名前:新章/少年少女出立 番外編part3・SSテスト:2013/03/30(土) 13:54:17


 ―――アースイエローとアースピンクが力を戦う理由を取り戻したその頃。



  ホテル・トアール 屋上


 赤い外套を着た男と、屋上にバイクを持ちこんだ男が揃って眼下を睨んでいた。
 彼らの遥か上には空を覆う邪悪な影。
 そして、地上にはひしめき合う人々。
 彼らは逃げまどっているのだ。
 メフィラスやそのしもべたちから。
 我先にと。
 わが身の無事だけはと。
 屋上にいた1人がその光景を見て吐き捨てた。

アーチャー「見ろ、これが正義の成れの果てだ」
本郷「……」

 二人の男。
 赤い外套を纏った白髪の青年。
 その名は英霊、世界の守護者アーチャー。
 黒いレザースーツを着、特徴的なバイクに跨った1人の男性。
 生ける伝説 仮面ライダー1号=本郷猛。 

アーチャー「人々の正義はここに瓦解した」

 民衆は正義を行使し、子供たちを弾圧した。
 だが、彼らが行った正義はあまりに一方的な押し付けだった。
 そのツケは巡り巡って民衆達に返ってくる。

本郷「彼らが行ったのはただの暴動だ。正義ではないし、彼らもまた被害者だ」
アーチャー「いいや、違うな」

 英霊は皮肉を込めて唇を釣り上げた。

アーチャー「正義とは正しい行いだ。『悪を裁く』ことであり、『悪以外の誰かを守る』ことだ。
       ならば、それはつまり『悪という名の誰かを犠牲にする』ということだ」
本郷「……何が言いたい」

 アーチャーが皮肉を向けるのに対し本郷は冷静だった。
 本来なら守護者が向けるべきではない言葉を聞いて尚。
 いや、本郷は見抜いていたのかもしれない。
 アーチャーの皮肉を浮かべたその笑み。
 それが自嘲だと。

アーチャー「S・Fの子供たちは生贄に過ぎなかった。人々の不安や本質は極限の中でこそ見える。
       民衆からすればS・Fの子供たちもDショッカーの怪人同様、異端であり災厄にしか過ぎなかった。少なくとも人々はそう思っていた」

 先ほど、アーチャーが自分で言った言葉。正義は『悪』という名の犠牲を必要とする。
 それはS・Fが悪であり今の社会が正義だと言っているに他ならない。
 そして、今 弾圧という名の正義が崩壊した。

アーチャー「本郷猛、お前は知っているはずだ。正義を貫くことがどれほどの犠牲を強いるのか。そして、どれほどの傲慢を生むのか」

 自分たちを『正義』と定め、他者を一方的に『悪』へと貶め、制裁する。
 この世界においてこれ以上の邪悪はない
 今のスクランブル・フォースに敵意をむき出す民衆を見ろ。

 アーチャーの鷹の様に鋭い目がそう語っている。

本郷「お前の言うことも真理なのだろう。
    だが、それでもこの世界には許してはならない悪が確かに存在する。
    そんなやつらを放っておくことは出来ない」
アーチャー「……それが傲慢だといっている!!」

 怒号とともに本郷の喉下に短剣の切っ先が突きつけられた。
 だが、本郷は動じない。
 彼は淡々と己の意志を口にする。

本郷「……なら、俺は傲慢でも偽善者でもいい。この世界がいとおしい。だから守る。それだけだ」

 『己が愉しみたいがためだけに他者を傷つけ殺戮する者』
 『気に入らないというただそれだけで世界を滅ぼそうとする者』
 そんな『悪』を本郷猛は打倒する。
 そして守る。この世界の 『命』と『自由』と『理』を

 ―我らは―

本郷「気づいているのだろう。これが侵略者の陰謀であることを」
アーチャー「貴様は介入するのか?」
本郷「見過ごすことなどできるものか」

 ―戦おう―

エミヤ「断言する……貴様らの戦いに終わりはない。
     一つの組織を潰してもまた次の組織が現れる。
     貴様は永遠に戦い続けるというのか?」
本郷「覚悟はある。必要とあれば英霊の契約を結ぶことをも厭わない」

 He was born of his janck
  ―身体は異形で出来ている―
 Spirits is hisbody   Brave is hisblood
  ―血潮は風で、心は鋼―
 He had forty eight skill
  ―幾たびの決斗をくぐり不敗―
 The mask isn't wet because of tears
  ―ただの一度も悲しみはなく―
 The belt doesn't shine even if it wins
  ―ただの一度も栄光はない―
 Men who never die occasionally defend the world with the motorcycle
  ―彼の意志は常に継がれ、世界を憂いて鉄馬を駆る―
 He not got his happiness
  ―故に生涯に平穏はなく―
 His hole life was unlimited justice works
  ―その身体はきっと無限の正義で出来ていた―


 悪が影ならば、善は光。
 二つは対極。どちらか片方を滅ぼすことなど出来ない。
 世界が破滅を迎えるそのときまで、彼らはきっと戦い続ける。
 ならば、それはすでに。

エミヤ「契約を結ぶまでもない。貴様はすでに英霊だ」

 英霊とは世界の守護者。
 世界が崩壊の危機に瀕したときにそのつど召喚される存在。
 アーチャーは笑う。
 この男は真の英霊だと。
 悪の組織と戦い、一人でも多くの人間を守ること。
 恐らくそれは永遠に終わらない。
 悪の組織とは、『人の心の闇』そのものだ。
 人間がいる限り、組織は決して滅びずまた立ち塞がるのだろう。
 それでも、男は戦うというのだ。
 これが守護者ではなくてなんだというのか。

 エミヤは思い出す。

『大丈夫だよ、爺さん、爺さんの夢はオレが継ぐから』
『大丈夫だよ、答えは得た。遠坂』

 自分はかつて義父と友に誓ったではないか。
 だからこそ、弓兵は目の前の伝説に問いたかった。

 【サーヴァント・アーチャー。真名、エミヤは改造人間である】

アーチャー「本郷、何を求める」
本郷「人々の自由を」
アーチャー「本郷、何処に求める」
本郷「争い渦巻く闇の中に」
アーチャー「本郷、何処を目指す」
本郷「決まっている。人々が≪仮面ライダー≫を必要としない世界を」

 【彼は正義の味方になろうとして、磨耗した】

 本郷猛が、この世から『悪』を滅ぼす、といえばアーチャーは彼を討つつもりだった。
 その理想は抱いたまま溺死するべきだ、と断じて。
 だが本郷は人々の心の闇を見てそれでも「守る」と言った。
 ならもはや止めまい。否定もすまい。
 人々のもっとも醜悪な心を見ても。
 修羅の世界に堕ちようとも。
 男は突き進むと言うのだから

 【それでも彼は真の平和を求め走り続けるのだ】

 怪人達の一団がこちらへ向かっている。
 アーナロイドだけではない。
 多くの組織から生み出された再生怪人達がホテル・トアールを取り囲もうとしている。

 ――――このホテルは、敵性勢力からの攻撃等を想定し、市街地から隔絶された場所に設立され
 その敷地内の安全の確保の為に様々なシステムを用いて検問や監視等を行っている。
 恐らく先んじて潜入してきた…… “僻地への潜入に特化した能力を持つ怪人”の手により
 転移システムでも備え付けられたか。“奴ら”の技術であれば、その程度お茶の子さいさいだろう。

本郷「メフィラスに企みにDショッカーが便乗したか」
アーチャー「…………歌が」

 ホテルから音楽が響いた。
 まだ幼さ残る少女の歌声だ。

 アーチャーはふと思った。
 歌姫のいる舞台を守るなどまるで正義の味方のようじゃないか、と。

 本郷のベルトが唸りをあげて暴風を起こす。
 弓兵は武器を作り出す。
 本来なら決して交差することなかった二人の正義の味方。

本郷「ライダー……」
アーチャー「投影……」

 彼らは少年少女達が葛藤している中でただ戦う。
 『正義』のあり方を示すために。

本郷「変身!」
アーチャー「開始!」

 轟音が起きた。
 屋上が飛び降りた二つの影が……否、二つの風が荒れ狂う。
 ホテルに進軍した彼らは、今回一番の貧乏くじを引かされたに違いない。
 だが、同情の余地はない。
 無力な人々に侵略という狂気と鋼の刃を持って襲い掛かろうとした。
 裁かれる理由はそれだけで十分。
 あなたはそれを……傲慢と笑うだろうか?

 戦闘兵達が、混乱したように飛び降りた存在を取り囲む。
 怪人達は口々に叫ぶ。
 何者だ!?と。

 本郷猛/仮面ライダー1号「仮面ライダー1号!!」 
 アーチャー「いくぞ、侵略者…… 武器の貯蔵は十分か?」 


883 名前:新章/少年少女出立 番外編part3・SSテスト:2013/03/30(土) 13:54:42
○アーチャー→本郷に正義の意義を問う。
○本郷猛/仮面ライダー1号→守るために戦う。
●再生怪人→襲撃を開始。

【今回の新規登場】
○本郷猛/仮面ライダー1号(仮面ライダー/その他仮面ライダーシリーズ)
仮面ライダー本郷猛は改造人間である。
彼を改造したショッカーは、世界征服を企む悪の秘密結社である。
仮面ライダーは人間の自由のために、ショッカーと闘うのだ。
ウルトラマン、ゴレンジャーと並び始まりの戦士と称される事がある。
彼の最強の武器は決して折れぬ意志と真に人を愛する心である。

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