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1 名前:名無し客スナイパーカスタム:04/09/22 02:20
様々な書き込みテストにご使用ください。

551 名前:名無し子猫:2007/04/28(土) 22:21:540







 波濤(なみ)は運び来たり
 波濤は運び去る
 剣(つるぎ)の歌……







.

552 名前:メタルアルカイザー ◆8/KAIZERps :2007/04/30(月) 12:38:570


 完全なる直撃/三重の防御を破壊する感触/攻撃成就の確信。
 警告/オーバーヒート/限界を超えて稼動する出力機関の悲鳴/破損した箇所を黒炎が
苛む―――エラーメッセージを全て無視して、勝利のビジョンを視る。
 勝つ。勝てるはずだった。この一撃で。
 例え相手を葬れずとも、確実に戦闘不能を強いる切り札=必殺技。




 その瞬間、ノイズ混じりの視覚センサが奇跡を目にした。




 闇を弾く/白の輝き/最後のカートリッジ。
 存在するはずのなかった第四の盾―――虚無の拳を束の間受け止めた。
 そして第五の盾が、完全に弾き飛ばす/閃きの現象を確認。新たに生まれる技。
 爆発。慣性の法則によって放たれた炎は、打撃を与えながらも必至にはならず。
 彼我の状態を再計測―――シグナム/ダメージ大。しかし戦闘能力の低下を確認出来ず。
 メタルアルカイザー/ダメージ大。機関冷却中/ダークフェニックスの使用不能―――
更に驚愕/陰術機関のオーバーロードによる機能停止/さらに再使用まで時間がかかる。

 シグナムの行動―――守護神たる最後のカートリッジを装填。

「私一人を敵に回していると思うな。
 私は、ここに一人でいるのではない。
 今まで戦った者、轡を並べた者、多くの者と共にいるのだ。
 これが、お前と私の違いだ、メタルアルカイザー。
 私は、お前のように一人で立っているのではない。
 だから、私の強さが正しいというのなら、それは私の多くの友が正しいということだ!」

 シグナムの強さ/源流を確信する―――その背に負ったものが全て強さとなる。
 孤高の武人と対極を成す姿=決して得られぬ、しかし厳然たる答え。
 死の予感/正しくそれを受け入れる/彼女にならば殺されても構わないと言う涼やかな
覚悟。“正しき強さ”の、一つの究極形を見た感慨と満足が思考を占める。

 だが、ここで何もせずただ斬られるのは完全な非礼。
 故に―――この鋼の命を込めて、限界を超える。
 ビジョン/三度目の死の光景が蘇る。
 アルカイザーの声―――“間違った強さだった”。
 それを教えられたことに対する感謝の念=まだ終われないと言う意志が生まれる。

「―――確かに間違っていただろう。だが、だからこそ終われん。まだ私は、起点にすら
立っていないのだから!!」


 抑制装置ヲ解除……コレニヨリ、全武装の使用不能。


 自らを護るための枷を外す―――オーバーヒート警告/臨界まで数秒/内部機関損傷の
危険……最悪の場合は自壊する。鋼の内の魂が、農耕に死を感じ取る。常に傍にいた死神
の息遣い/思考に忍び寄る恐怖のイメージを偉大な精神で弾き飛ばす。
 ドクター・クラインの機能説明を思い返す/リミッター解除――“一度しか使えない”
という意味。それは確実な致命傷を自身に跳ね返す諸刃の剣。
 だからこそ、あらゆる不可能性を超えられる。

「<ruby><rb>炎王結界</rb><rp>(</rp><rt>インビジブル・フレア</rt><rp>)</rp></ruby>!」

 放たれる新生の一撃。鮮やかな白の流星。
 迎え撃つ―――あと一度だけ、命=稼働時間を代償に許された攻撃。

 陰術機関使用不能/ジェネレータから直結/属性持たぬエネルギーの放出―――装甲の
急速な消耗。さらに全身のバイパスが断末魔/想定されていない量の出力によりいくつか
破損。内部で小爆発を起こす=装甲が弾け飛んで行く。
 文字通り命を燃やした一撃。
 吹き上がった炎は―――黒ではなかった。
 陰術機関を通さない、心術ジェネレータによる、精神と命の輝きたる黄金の炎。
 その炸裂―――偉大なる閃光。

 おお、<ruby><rb>炸裂よ</rb><rp>(</rp><rt>エクスプロード</rt><rp>)</rp></ruby>―――!!

 己から生まれた輝きの炸裂―――感動/歓喜を覚える。
 奇しくもアルカイザーの放つ不死鳥と同じ輝き。
 これほどふさわしい、美しい技はない。

 スラスター全開/爆発的な加速。
 纏う炎が翼を生む/流星を迎え撃つために。
 黒き装甲は白きフェニックスに転じた。

 視覚センサがターゲットをロック/例え死んでも外すことはない/真向からの直撃。
 それはもはや闇の不死鳥にあらず。
 だからこそ私は叫んだ。

「真アル・フェニックス―――!!」

 それは、本来絶無。
 機械の閃き。込められた偉大な魂と精神が起こした一つの奇跡。
 英雄のみが使える技、その発現。

 内部機関への恐るべきダメージ/火の粉のように散っていく装甲/壮麗な輝き。
 その全てを乗り越えての一撃。
 システムダウン寸前の朦朧とした意識の中―――ゼロに到達する。
 爆心地。互いの激突する地点。

 私は炸裂した。
 システムダウン―――全ての機能を停止しながら。



553 名前:橘朔也 ◆X5lDK8LQyw :2007/04/30(月) 18:41:540
【 魔王 vs ギャレン エピローグ 】


―ハカランダ

未だに帰らぬ友を待つ者。
広瀬、虎太郎、睦月、そして相川始。
外を打つ雨音が一層激しくなるにつれ、その思いは暗雲へと変わっていく。

「橘さん……遅いですね。」

「せっかく私が腕によりをかけて作ったケーキとパスタなのに……橘さん。」

相川始が空を見て首を横に振る。
その目は、ただ広がる暗雲を見つめていた。

「橘が、あいつがそう簡単に死ぬなんて……俺は信じない。
また笑って、帰ってくる。……剣崎なら、そう言うはずだ。」

―紛争地帯 遠くない何処かの国

戦乱が続く国。子供の顔に笑顔はなく、そこには無益な争いと悲しみだけが渦のように
回っていた。

「大丈夫、俺がついてる。だから、泣いちゃダメだ。男の子だろう?」

戦火を逃れて彷徨う少年に、手を貸す一人の男。
その男はかつて、「仮面ライダー」として世界を絶望から救った戦士。
― 仮面ライダーブレイド 剣崎一真 ―

今日も、雨が降る。まるでこの争いの絶えぬ世界を悲しむかのように。
だが、剣崎は少年の手を引き歩き出す。たとえ今が土砂降りの雨でも。
それでも、歩く。運命に、負けたくない。
その思いが、彼を動かす。たとえ、自分の身が他者から忌み嫌われる存在
不死者―アンデッド―に変わってしまっても。
少年を勇気付けるように、剣崎が微笑みながら言う。

「こんな俺にもさ、友達がいるんだ。今は理由があってあえないけど……
でも、いつか会える日が来る。お互いが争う必要がなくなって、みんなが
笑顔で会える日が……」

雨が、上がった。
空は青く、太陽が輝き始める。

探した答えは 変わり続けてく生まれ変わるほど 強くなれる Got to be Strong





554 名前:名無し子猫:2007/04/30(月) 19:05:240
「これだけの数を相手にねぇ……正気か?」
「正気でやってられるかよ、こんな事」

 雲霞のように群がる悪鬼、凶鬼どもを二人の男が眺めている。

 一人は継ぎ接ぎのコートを纏い、マスクで両目を覆っていた。
 恐らくは盲目(めしい)なのだろうが、その立ち居振る舞いには一切の隙が無い。

 もう一人は真紅のツナギに派手に立てた髪、手にはエレキ・ギター。
 場違いとか言う他無い男の姿は、いっそ悪い冗談のように見えた。

 生ある者であれば、満ちる瘴気で肉体は侵され、非現実的な光景に精神は破壊され死に至るだろう。
 だが此処に立つ男達は、そんな物を全く意に介さない。

 それもその筈。この二人は既に命を失っているのだ。

 継ぎ接ぎコートの男は『屍十二(かばね・じゅうじ)』。
 死体を超人として蘇らせる技術によって蘇った死人兵士。

 そして、ギターの男は『ロケットビリー・レッドキャデラック』。
 魂をエレキ・ギターに宿らせた幽霊。

「今じゃ世界中がイカレてやがるんだ。マトモを装ってても仕方ねェだろうが」
「そりゃ、ごもっとも」

 ロケットビリーが、ややオーバーに肩を竦めて応じる。

「それより――分かってんだろうな、RB?」

 返答の代わりにギターを爪弾くと、エレキ・ギターのサウンドと共に青白い火花が弾けた。
 エレキ・ギターの演奏に伴って発生する静電気を束ね、電撃として放つ。
 物理的な破壊力を持つに至ったロックンロール、それが彼の武器だ。

「任せとけって。お前の道は開いてやるよ、ジュージ」

 彼の言葉を確認して、屍十二は満足気に微笑んだ。
 そして、腰から自らの獲物を抜き放つ。
 一見して『それ』は二振りの日本刀に見えるが、『それ』はそんな真っ当な物ではない。

 鍔であるべき部分は銃身。柄であるべき部分は銃把。それは見紛う事なく二丁の拳銃。
 一振りは銃身から刃を伸ばし、もう一振りは銃把から刃を伸ばしている。
 拳銃と日本刀を一体化させるという狂人の発想。
 『それ』は正しく異形の武器(フリークス・ウェポン)――“ガンブレード”であった。

「そんじゃ、クソ野郎を棺桶に蹴り返しに行くとするか」
「ああ、派手なGIGにしてやろうぜ! Rock 'n' Roll!!」

 二人の死人は示し合わせると、目の前の敵に――その奥の“悪魔城”に向かって駆け出した。

 彼等は別段依頼を受けた訳でも、悪魔城に対して因縁がある訳でもない。
 だが、どうしても城主である“神祖”を許してはおけなかった。

 死人には死人の身の程というものがある。
 それも弁えず、生者の世界を掻き乱す行いは二人を激怒させるには十二分。

 理由は単純明快。『ムカついたからブッ潰す』。ただそれだけだ。

555 名前:デスマスク ◆xmpp2OfICI :2007/04/30(月) 19:14:560
(ナレーション/田中秀幸)

女神―アテナ―を守り、地上の正義と平和を守るべき存在。
それが聖闘士―セイント―。神話の時代より受け継がれしその聖衣―クロス―を纏い常に
世界を邪悪から守ってきた者達。
ギリシャ、聖域―サンクチュアリ―にその拠点は在る。

黄 道 1 2 宮

聖闘士の頂点に立つ、12の存在。最強無敵の存在として語り継がれてきた戦士達の名を
黄金聖闘士―ゴールドセイント―を呼んだ。
その力、地上のあらゆる現象を操り宇宙の力さえも使いこなすとまで言われた。

そして、今。地上にその姿を現した悪魔城の主、ドラキュラの野望を阻止せんとする為
アテナの聖闘士が向かう。
地上の正義、そして平和の為……

のはずであった。

――ギリシャ・聖域 教皇の間

「デスマスク……このような命を受けてくれるのはお前だけであろう。」

聖域の中でも、最も深い場所に存在する教皇の間。
そこへ招かれるは黄金聖闘士、蟹座―キャンサー―のデスマスク。
おおよそ正義の聖闘士とは最も縁遠いこの男が呼ばれた理由とは如何に。

「この俺をわざわざお呼びとは……」

粛々としながらも、邪気を放つこの男。
他者を排除するには、こういった危険な存在が必要な場合もある。

「デスマスクよ……私が、お前に教えた”真実”。そして、その野望。
そしてその真実を知った今でも私に忠誠を誓うという事実。
その思いに、私は応えようと思う。」

デスマスクは、笑う。教皇の正体など、この男にとってはどうでもいい事。
ただ「今と同じように力で全てを征服する」ことが叶えば他はどうとでもなる。
それがデスマスクの考えであった。

「貴方の真実など……俺にはどうでもいいことですよ。
私はただ、力による正義の執行が叶えばいい。ただ、それだけの事。」

教皇は思う。このような男が、聖なる存在とは神も気まぐれなものだと。
しかし、自分の手駒としてここまで都合の良い存在もあろうか。

「その言葉を待っていた。私が目指すのは”人が神を、魔を操る世界。
流血と死が溢れる慟哭の世界”。それ以上でも、それ以下でもない。
そして……悪魔城の主。魔王もその例外ではない。」

神を操り、更には魔王さえも蹂躙する。
それが教皇……いや、この男の野望だ。
デスマスクはゆっくりと踵を返すと手を振りつつ間を後にする。

答えは1つ。YESだ。
悪魔を殺し、魔族さえも平伏す。これこそが自らの求めていた世界。
殺して、殺して、殺しまくればいい。

 ―幻 朧 魔 皇 拳―

……!?

一瞬でデスマスクの目から光が消えた。
意識を失う寸前にデスマスクが聞いた声……幻聴?
いや、違う……チガウチガウチガウチガウ


「デスマスク……許せ。貴様の力を信じていないわけではないが、
念には念を、な。」

556 名前:名無し子猫:2007/04/30(月) 19:16:380
「――チッ、とはいえキリがねェな」

 ガンブレードを振り、纏わり付いた血と脂を振り落とす。
 この程度で切れ味が落ちるような鈍らではないが、余り続くようだと面倒な事になる。

 既に弾倉も幾つ取り替えたのか、覚えてもいない。
 分かっているのは、饐えた腐臭を発するクソどもには手当たり次第に弾丸を叩き込んだ事だけだ。

「クソムカつくぜ……数だけは多いと来やがる」

 ガンブレードの弾倉を交換し、屍は更に歩を進める。
 この狂った城の中では足場すら覚束ない場所もあったが、彼が進む上での問題にはならない。
 何も知覚を行うのは目だけではない。嗅覚、聴覚、触覚、味覚、そして“気”を感じ取る第六感。
 視覚を失った分、他の感覚がそれを補うように発達した屍は、むしろより正確に空間を把握する事が出来るようになっていた。

「ったく、この城は一体どうなってやがる? 昇ってんだか下ってんだか分かりゃしねぇ。
 イカレ野郎は城ン中までイカレてやがんのか」

 だが、屍の知覚能力をもってしても首魁の元へ一直線、という訳には行かなかった。
 常識が通用しない“悪魔城”内は迷路も同然。あちこちへ振られ、手間取るのも無理は無い。

「……まぁいい。何処行こうがやる事は決まってんだ。
 臭ェ奴等を撃って刻んでバラす。そうしてりゃ何時かはブチ当たるだろ」

 屍が進んだ先――其処で彼を出迎えたのは割れるような歓声と罵声だった。

「……ああン? 何だこりゃあ?」

 まず鋭い嗅覚が、もう嗅ぎ慣れてしまった低級な妖魔どもの臭いを察知する。
 ぐるりと取り囲まれているのは別に問題ではない。
 次に感じた風の流れは、何故か目の前に開けた空間がある事を示している。
 一斉に襲い掛かればいいものを遠巻きに囲んでいる、という不可解な状況が其処にはあった。

 しかし、屍の真正面。そこから感じる妖魔のものとは異なる気配を捉えて理解に至る。

「……成る程な、俺を見せ物にしようってハラか。何処までもムカつく連中だ」

 屍は銃口を相手に向け、互い違いの刃が天地を指す形で、ガンブレードを構える。
 尋常の剣術では考えられない構えだが、間合いを選ばないガンブレードに剣の術理は相応しくない。

「――見物料は安かねェぞ、ドサンピンどもが」

 言い終わるが早いか、屍の背から鬼の貌(かお)が現れた。
 鬼は錯覚ではなく、実体ある炎だ。
 燃え立つ炎は、コートを焦がす事も無く赤々と燃え上がる。

 超人兵士であると同時に、屍は朽葉流忍術を修めた忍者でもある。
 炎は“気”を用いた忍術の前触れ、いわば導火線に火を点けたような状態。
 それは即ち――全力を持って、この場に居る存在を殲滅するという意思の表明だった。

557 名前:名無し子猫:2007/05/01(火) 00:11:360
テスト。

558 名前:名無し子猫:2007/05/01(火) 03:18:030
【ヴィゼータvs斎月雪那/狂乱の庭園】
>>230

全超越最終必殺奥義、それを放つ直前で私の前に殺到する無数の斬撃斬撃斬撃。
ヴィゼータさんの放つ、斬撃という名の弾幕。

いくら私の奥義が強くとも、あの斬撃の弾幕を破れるのか。
一瞬、弱気が心を過ぎる。

『セツナ・・・』

その私の心を、華麟が後押ししてくれる。
信じろと。
自分を、そして華麟を、信じろと・・・!

そうだ、信じるんだ。
自分を、華麟を・・・私たち自身を・・・!

天命石『リア・フェイル』と華麟の魔力、そして私の魔力全てを解放する。
膨大な魔力が私の回りに収束し、周囲の空間物質存在因果律を書き換える。
そして、アストラルをマテリアライズ。
そう、これで――――『私』をあと二人産み出す。

「絶華・玲雪斬!!」

力尽くで・・・打ち抜く!

559 名前:名無し子猫:2007/05/01(火) 23:50:440
【ヴィゼータvs斎月雪那/狂乱の庭園】
>>278
血色に染まったクラウ・ソラス。
一振りして血を払う。それだけで聖別された刃は白銀の輝きを取り戻す。
けれど、それを振るった私の手は・・・

『セツナ、ごめんなさい・・・またあなたに重い咎を背負わせてしまった・・・』

私の背で悲嘆に暮れる華麟。
その華麟に、笑顔を見せる。
弱々しいかもしれないけれど、それでも。

「大丈夫よ、華麟。私が、私自身が選んだんだから」

そう、ヴィゼータさんと戦うことも。
彼女を・・・殺すことも、全ては私の選択、私の意志。
だから、嘆いたりはしない。
少なくとも、今は。

夜気が、冷たさを増す。
私の行く道を照らすものは何もない。
でも、私は、私が選んだ道を過たず歩いていく。

・・・それが、最後に微笑んで見せてくれた、彼女への最大の返礼だと思うから。

「行こう、華麟! この戦いを・・・無駄にしないために!」

私は駆けだした。
夜の、中へと。

560 名前:屍十二:2007/05/03(木) 22:52:250
【屍 十二 vs イグニス】
導入

 闇の中、苛立った足音を響かせながら屍は歩を進めていた。
 マスクを失った為、今は懐に仕舞っておいたサングラスでその両目を隠している。
 闇夜にサングラスを付ける人間なんて物は存在しないだろうが、どうせ見えないなら同じだ。

「……クソムカつくぜ。腐った臭いがする城で、余計胸糞悪くなるなんざ」

 城内で人間と――生者と戦う事になるとは思っていなかった。
 ましてや、それを見殺しにするような真似をする事も。
 自分への後悔、望んだ誰かの趣向への怒り、全てがない交ぜになった憤りが胸を焦がす。

 そして暫く進んだ後、鼻をつく臭いが変わる。
 先程までこの城に立ち込めていたのは、思わず顔を顰めたくなる腐臭だった。

 今、その鼻腔に飛び込んで来たのは――夥しいまでの、人間の血臭。

 つい先刻流されたような物から、染み付いて取れなくなったような物まで。
 其処で流された血から、一体何人の人間が殺されたのか想像も付かない程だ。
 血臭の中、僅かに混じる金属の臭い。
 空気の流れが示す形は、明らかに人を苛み、殺す為の形状をしていた。
 ここは、人間を切り刻み、モノのように扱う空間だ。

「――クソ野郎が、」

 臭いから、過去の映像が蘇る。

 神経を一本ずつ切断し、その反応を確認された。
 骨を粉々に砕き、再生するまでの過程を記録された。
 時には自分から取り出した内臓を、目の前に突き付けられた事もあった。

 そして、その全てには無邪気な笑いが伴っていた。
 実験を行ったのは、たった一人の少年――

「何処まで俺を虚仮にすりゃ気が済むんだ! えぇ!?」

 皹が入る程の力で壁を殴りつけ、叫ぶ。
 出来る事ならば、忌まわしい記憶を思い出させる、この部屋全てを叩き壊してやりたかった。

「チッ……こんな時に」

 怒り狂う屍が、また新しい呼吸音と人間の臭いを察知する。
 またしても、この城へ飛び込んだ命知らずの侵入者だろう。
 自ら進んで死にに来るような人間に、気遣いをしてやるような余裕は今の屍には無かった。

「……今、機嫌が最高に悪ィ。ふざけた真似するようなら叩ッ殺すぞ」

 叩き付けるのは剥き出しの殺意。これで退くようであれば、少しは楽なのだが――

561 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2007/05/03(木) 23:20:260

 ――ひゅん。
 音にすれば、その程度のものだ。
 その音とともに奔った銀閃は、その音に合わせたようにあっさりと――そう、至極あっさりと、
場に立ちふさがる巨躯を通り抜けた。

「――え?」

 それは、いったい誰の言葉だったのか。
 声を発した当人さえ自覚してはいないだろう。

 だが、本来ならば、この御前試合を首尾良く――悪くかもしれないが――勝ち進んだ勝者
に立ちふさがる、その筈だった夜族は、突如として眼前に現れた焔に、何が起こったのかわ
からない、という表情を浮かべ……

 そして、浮かべたまま凍り付いた表情は、ころん、という音が似合うそんな具合に首の上か
ら転がり落ち、床に叩きつけられ、そのまま灰と散った。
 その瞬間、己が斬られたのだ、という事実に行き着いた胴は、盛大に天井に向けて鮮血の
噴水を吹き上げるとぐらり、と重心を崩し、首と同じように灰となって周囲へとまき散らされた。

 照明を受けて鈍く光を返す漆黒の刀身を一振りし、血と灰を払う。
 周囲へと詰めかけていた愚か者どもに視線を移す。恐らくは観戦と洒落込むつもりだったの
だろう、低級の化け物たち。

 ぽかん、と間の抜けた面を覗かせるそれらに、彼女はにぃ、と微笑を浮かべ、

「ああ。せっかくのお楽しみのところ、非常に申し訳ないが」

 それ自体が刃であるかのような、確定された運命を口にする。

「――皆殺しだ」

 処刑場に焔が奔る。
 ”人類の守護者”による、殺戮が始まった――――

562 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2007/05/03(木) 23:22:540
 ――最後の銃弾が、逃げまどう死人の頭蓋を打ち砕いた。
 血と腐りきった脳髄がぶちまけられて、石床を濡らす前に灰と化して消え去る。
 そして、処刑は完了した。

 空にまったマガジンをイジェクトし、新たなそれを叩き込む。スライドが音を
立てて元の位置へと戻り、起きあがったままの撃鉄が即座に射撃可能であること
を主へと告げていた。

 食い残しがいないことを確かめて、すぐさま場を後にしようとした――その時
だった。奥から、明確な戦意を持った”なにか”が近づいてくる……

>>

 戦闘の痕跡から、”参加者”の類だと談じた。
 だが、人間かどうかの判断がつかない。妙な気配だ。生きているような、それ
でいて死んでいるような……

「ひとつだけ訊いてやる」

 右手に剣。左手に銃。武器は手に。構えは無形。

「貴様は人か、それとも化け物か?」

 ――どちらであろうとも、斬る。
 そう決めて、イグニスは問うた。
 わずかでも敵となる可能性があるのなら、それだけで十分だった。

563 名前:名無し子猫:2007/05/04(金) 21:41:110
【宮本武蔵 対 マリア・バルゼリート 妖魔迎賓館】
>>373

 背中合わせになった相手を、姿勢を変えずに斬る事は出来ない。こんな状態から発揮で
きる剣法はない。
 反転して斬らざるを得ず、その瞬間こそ致命を分ける隙となるであろう。武蔵にとっても、
少女にとってもだ。

「初めてだぞ」

 『六十余度まで勝負すといえど、一度もその利を失わ』なかった武蔵の、どこか酔ったよう
な答えである。
 事実、この大剣士は酔い痴れているのだ。妖しい少女の囁きにではなく、剣もて命の遣り
取りをするという魔天の美酒――戦いと死の血つむじに。
 侮ってはいない、とはいったものの、心のどこかで女人の剣という認識があったのは否め
ない。その驕慢を少女の烈剣はまんまと打ち砕いた。
 この大武蔵に! という憤怒は、しかし即座に随喜へと化学変化した。魔人に堕ちても、
否、だからこそいよいよ盛んな剣への愛がそうさせたのである。


「見事。――まりあとやら、お主、その若さで相当斬った喃」

 問いではなく、単なる事実の確認として武蔵はいい、相手の返事も待たず小刀を上空へ
放り投げた。
 唸りを上げて回転しつつ、高い天井すれすれまで達した刀は、操り糸が切れでもしたよう
に落下してくる。――煌く切っ先を、ぴたと少女の脳天へと定めつつ。

 まるで故事にいう「ダモクレスの剣」だ。頭上から降り落ちる「危機の象徴」を避けるにしろ、
受けるにしろ、それは武蔵に対して晒す大いなる隙に他ならない。
 そして反転した武蔵が鷹徴の一撃を放つ「拍子」に他ならない。――
 

564 名前:名無し子猫:2007/05/04(金) 21:42:350
【宮本武蔵 対 マリア・バルゼリート 妖魔迎賓館】
>>373

 背中合わせになった相手を、姿勢を変えずに斬る事は出来ない。こんな状態から発揮で
きる剣法はない。
 反転して斬らざるを得ず、その瞬間こそ致命を分ける隙となるであろう。武蔵にとっても、
少女にとってもだ。

「初めてだぞ」

 『六十余度まで勝負すといえど、一度もその利を失わ』なかった武蔵の、どこか酔ったよう
な答えである。
 事実、この大剣士は酔い痴れているのだ。妖しい少女の囁きにではなく、剣もて命の遣り
取りをするという魔天の美酒――戦いと死の血つむじに。
 侮ってはいない、とはいったものの、心のどこかで女人の剣という認識があったのは否め
ない。その驕慢を少女の烈剣はまんまと打ち砕いた。
 この大武蔵に! という憤怒は、しかし即座に随喜へと化学変化した。魔人に堕ちても、
否、だからこそいよいよ盛んな剣への愛がそうさせたのである。


「見事。――まりあとやら、お主、その若さで相当斬った喃」

 問いではなく、単なる事実の確認として武蔵はいい、相手の返事も待たず、六尺余の巨体
は一陣の風となった。
 横へ走り出したのだ。それも正面を向いたまま。
 蟹みたいな不自由さは微塵も感じさせぬ動きで左右に疾り、或いは前後に跳ぶ。頭上から
俯瞰すれば、得体の知れぬ幾何学上の罫線をえがくようにも見えたかもしれない。

 ――この魔的な走行の間中、武蔵はおのれの背に、ぴたりと貼りついたような馥郁たる体
温を感じていた。
 

565 名前:名無し子猫:2007/05/04(金) 22:43:300
>>382

【宮本武蔵 VS マリア・バルゼリート 妖魔迎賓館】


「そっか」

武蔵の返答に、マリアも短く応える。
彼の答えは、取りも直さずマリアの思惑が成功していることを意味していた。
型の無い、我流ゆえにこそ可能な動きで、相手を翻弄し、勝機を見出す。
今やマリアの戦法は、その一点に特化している―――いや、せざるを得ない。

「実はね、私も初めてなんだ、アミーゴ」

そう、大事なのは<ruby><rb>ここからだ<rt>、、、、、</ruby>。
如何にして相手の裏を掻き、思考を読み、その上を行くか。
そして、彼女の<ruby><rb>相棒<rp>(<rt>コンパニエーロ<rp>)</ruby>が、彼の魔人の肉を斬り裂く
イメージを、明確に持てるか。
その為には、信じなければならない。
これまで幾多の修羅場を潜り抜け、幾人もの人間を斬って来た自身を。
全ての闘いで、自身と共にあった相棒を。


しかし、そんな思惑とは裏腹に。
刀と刀との打ち合いとしては余りに異様なこの状況から、
いち早く適応し先に手を打ったのは、武蔵のほうだった。

最小限の動きで、武蔵は小刀を高く放り上げる。
狙いは、マリアの頭頂部―――言うまでもなく、致命の一刀だ。
しかして受ければ、避ければ、マリアは自ら大きな隙を作ってしまう。
その瞬間に、彼女は武蔵の一撃によって斬り捨てられる。

ならば―――


マリアの腰が、沈み込んだ。
そのまま振り向くことなく、両足を後方―――
すなわち、武蔵の<ruby><rb>股下<rt>、、</ruby>へと、繰り出す。
そして、両の爪先が接地したと同時に、マリアは全身のバネを利用して
上半身を両足の存在する方に引き戻す。
そうして、まるで蛇のように、マリアは武蔵の股下を<ruby><rb>くぐり抜けた<rt>、、、、、、</ruby>。

かくして再び、マリアは武蔵の正面へと舞い戻る。
相手は一刀を手放した状態、自らは、二刀を保持したままに。


「これが本当の、『裏をかく』―――ってヤツかな?」


左下段。そして、右上段。
上下から挟み込むような二つの銀光が、迸る。

566 名前:名無し子猫:2007/05/26(土) 01:05:470

「人形」とは何かしら。

                                「人形」とは何なのかしら。

それは《玩物》。
めでるもの、もてあそぶもの。

                                      それは《呪物》。
                                まじなうもの、のろうもの。

無邪気な子供たちのための、無邪気な玩具。

                          暗い呪詛の、昏い欲望のための呪具。

人を模したもの。

                           腕を模した、腕の代わりが義手なら。
                           眼を模した、眼の代わりが義眼なら。
                  人を模した「人形」は、何のために作られたのかしら。

人の代わりに?

                                      人の身代わりに?

其処に人形たちの紡ぐ《物語》は在るのかしら?

               人形たちと人形遣い、両者が紡ぐ《残酷劇》は在るのかしら?


              『僕が生まれるに至る《物語》はあるのだろうか』
                   『<ruby><rb>青の紫陽花姫</rb><rp>(</rp><rt>オルタンス</rt><rp>)</rp></ruby>』

Bonjour.

                    『<ruby><rb>紫の菫姫</rb><rp>(</rp><rt>ヴィオレッタ</rt><rp>)</rp></ruby>』

                                  Bonjour,monsieur.

                  『さあ、行っておいで』

                  Oui,monsieur.

 

567 名前:名無し子猫:2007/06/08(金) 12:34:420

ある晴れた昼さがり
ttp://charaneta.just-size.net/bbs/test/read.cgi/ikkokuRH/1179256727/

568 名前:名無し子猫:2007/07/01(日) 23:41:120
ttp://charaneta.just-size.net/bbs/fupbbs/obj/obj6_1.txt

569 名前:名無し子猫:2007/07/01(日) 23:41:510
txt

570 名前:名無し子猫:2007/08/18(土) 00:46:370
 彼女は決まって夜に来る。足音も立てず、星の河を流れてきたのと問いた結局住めるのは夜だけだった。自
なるくらい唐突に。でもそれが自然。一つ処に留まる猫は居ない。それが由を手にしたと言うのに、縛ら害。
然。だから代わりに「ニャン♪」と啼いてみる=泣いてみる? セオリーれていた。鎖は強固。陽の当たる害。
従うなら泣くのがきっと、ベストアンサー。それでも私は啼いている。場所に居場所はなく、卑である場所害。
を夢見る籠の鳥のように。ドリームズ・カム・トゥルー、叶う夢ならばこそが我が舞台。天幕は闇に閉ざさ人鬼。
う一度私の胸に。風に揺られる花の様に、空を駆けてみたい。それ、人工の明かりが街を照らす夜に。塵鬼。
な心境も露知らず、彼女の首はきっかり三十度傾く。自然で可黄昏刻が逢魔ヶ刻ではなくなって以来人衝動。
い。思わずギュッとして、チュウがしたくなる。こんな時は少魔が現れるのは決まって夜だ。人が謳歌塵衝動。
だけ、少しだけ、今の身体が怨めしい。人見知りで寄ってくすべきは昼の間だけ。夜に出歩く人間は人鬼登場。
ないんだから、余計。――っと、彼女に気が変わらない即ち――外れてしまった人ではないもの。塵鬼登場。
に、何時も通り会話の中で羽ばたこう。そもそも会同族・同属ならぬ同類、お仲間と呼んでも差し支由なき殺人。
の成立はない。一方通行の片思い。フォーリンラヴえのない、無様な獣達。夜を我が物に、そん由なき殺塵。
映画のように巧くは行かないのだった。。。。。がっかりなたいそれた妄想を現実とする為に。夜をれが理由だ。
なんでもない日常のコトを語る。何時も病院は退屈で駆ける。恐れるものは皆無。恐れられる為れが理由か。
代わり映えがないのだけれど、それでも意外と居心――その一心で。実に下らない存在理由。れも理由だ。
は悪くない。うん、まあまあ。合格点は赤点スレスレ実に下らないからこそ、意味がある。――――Dead line。
ラインだから、これも当然だ。ただしそんな話じゃ彼刹那の快楽とは、その実意味がない。その時が良けれ
ようの微笑みは受け取れない。凄く残念だ。私のコトも―-少ばそれで良いという考え方には、発展性も何も存
穿ち、くらいは知って欲しいのに。彼女の興味はここに来た在しないのだから。――無意味な生、無意味な死。
く。肩く点で定まっているのだから仕方ないけど、、、少し嫉妬それこそ我ら夜に生きるモノの本懐だと言うもの。
いは持ってじゃあ今日も、少しだけ走り方を教えてあげよう「さあね――玩具は玩具だ。少なくとも厭きるまでは
きたかったんけどちょっとだけイヂワルをして、何時も少しだけ、壊れるまでは遊んでやるべきだと、そう思った
が――まあ、仕か教えてあげていない。そして、何時も通り、メールまでさ。――――単純明快でいいだろ?」
あるまい……契約定型文みたいな常套句を彼女に投げ掛ける。「なんで飛ぶの?」変な人間だった。一言も喋べ
契約だからな。それに―――――Cut off all road―――――らない私に向かって延々と喋り続ける彼女。姿を変え
しても――何故飛ぶ、か。―――――Cut off all road―――――ていたとしても、それは変わらなかったのだから、
軽口で返したは良いが、改―――――Slash down dead line―――――余計に。変な人。憎めないけど。色々と教
めて考えるとなると、中々に―――――Slash down dead line―――――くれる親切な人だし。だから私は、一度き
哲学的だ。人は空に憧れ、飛ぶ―――――Slash down dead line――――-りの気紛れで、口を開いてあげるのだ。
コトに執着した。執着して、今へと到る。「きっと―――――理由をつけるまでもない本能」――――-Extermination。


571 名前:名無し子猫:2007/08/18(土) 00:53:510
 彼女は決まって夜に来る。足音も立てず、星の河を流れてきたのと問いた結局住めるのは夜だけだった。自
なるくらい唐突に。でもそれが自然。一つ処に留まる猫は居ない。それが由を手にしたと言うのに、縛ら害。
然。だから代わりに「ニャン♪」と啼いてみる=泣いてみる? セオリーれていた。鎖は強固。陽の当たる害。
従うなら泣くのがきっと、ベストアンサー。それでも私は啼いている。場所に居場所はなく、卑である場所害。
を夢見る籠の鳥のように。ドリームズ・カム・トゥルー、叶う夢ならばこそが我が舞台。天幕は闇に閉ざさ人鬼。
う一度私の胸に。風に揺られる花の様に、空を駆けてみたい。それ、人工の明かりが街を照らす夜に。塵鬼。
な心境も露知らず、彼女の首はきっかり三十度傾く。自然で可黄昏刻が逢魔ヶ刻ではなくなって以来人衝動。
い。思わずギュッとして、チュウがしたくなる。こんな時は少魔が現れるのは決まって夜だ。人が謳歌塵衝動。
だけ、少しだけ、今の身体が怨めしい。人見知りで寄ってくすべきは昼の間だけ。夜に出歩く人間は人鬼登場。
ないんだから、余計。――っと、彼女に気が変わらない即ち――外れてしまった人ではないもの。塵鬼登場。
に、何時も通り会話の中で羽ばたこう。そもそも会同族・同属ならぬ同類、お仲間と呼んでも差し支由なき殺人。
の成立はない。一方通行の片思い。フォーリンラヴえのない、無様な獣達。夜を我が物に、そん由なき殺塵。
映画のように巧くは行かないのだった。。。。。がっかりなたいそれた妄想を現実とする為に。夜をれが理由だ。
なんでもない日常のコトを語る。何時も病院は退屈で駆ける。恐れるものは皆無。恐れられる為れが理由か。
代わり映えがないのだけれど、それでも意外と居心――その一心で。実に下らない存在理由。れも理由だ。
は悪くない。うん、まあまあ。合格点は赤点スレスレ実に下らないからこそ、意味がある。――――Dead line。
ラインだから、これも当然だ。ただしそんな話じゃ彼刹那の快楽とは、その実意味がない。その時が良けれ
ようの微笑みは受け取れない。凄く残念だ。私のコトも―-少ばそれで良いという考え方には、発展性も何も存
穿ち、くらいは知って欲しいのに。彼女の興味はここに来た在しないのだから。――無意味な生、無意味な死。
く。肩く点で定まっているのだから仕方ないけど、、、少し嫉妬それこそ我ら夜に生きるモノの本懐だと言うもの。
いは持ってじゃあ今日も、少しだけ走り方を教えてあげよう「さあね――玩具は玩具だ。少なくとも厭きるまでは
きたかったんけどちょっとだけイヂワルをして、何時も少しだけ、壊れるまでは遊んでやるべきだと、そう思った
が――まあ、仕か教えてあげていない。そして、何時も通り、メールまでさ。――――単純明快でいいだろ?」
あるまい……契約定型文みたいな常套句を彼女に投げ掛ける。「なんで飛ぶの?」変な人間だった。一言も喋べ
契約だからな。それに―――――Cut off all road―――――らない私に向かって延々と喋り続ける彼女。姿を変え
しても――何故飛ぶ、か。―――――Cut off all road―――――ていたとしても、それは変わらなかったのだから、
軽口で返したは良いが、改―――――Slash down dead line―――――余計に。変な人。憎めないけど。色々と教
めて考えるとなると、中々に―――――Slash down dead line―――――くれる親切な人だし。だから私は、一度き
哲学的だ。人は空に憧れ、飛ぶ―――――Slash down dead line――――-りの気紛れで、口を開いてあげるのだ。
コトに執着した。執着して、今へと到る。「きっと―――――理由をつけるまでもない本能」――――-Extermination。


572 名前:名無し子猫:2007/08/18(土) 00:57:090
 彼女は決まって夜に来る。足音も立てず、星の河を流れてきたのと問いた結局住めるのは夜だけだった。自
なるくらい唐突に。でもそれが自然。一つ処に留まる猫は居ない。それが由を手にしたと言うのに、縛ら害。
然。だから代わりに「ニャン♪」と啼いてみる=泣いてみる? セオリーれていた。鎖は強固。陽の当たる害。
従うなら泣くのがきっと、ベストアンサー。それでも私は啼いている。場所に居場所はなく、卑である場所害。
を夢見る籠の鳥のように。ドリームズ・カム・トゥルー、叶う夢ならばこそが我が舞台。天幕は闇に閉ざさ人鬼。
う一度私の胸に。風に揺られる花の様に、空を駆けてみたい。それ、人工の明かりが街を照らす夜に。塵鬼。
な心境も露知らず、彼女の首はきっかり三十度傾く。自然で可黄昏刻が逢魔ヶ刻ではなくなって以来人衝動。
い。思わずギュッとして、チュウがしたくなる。こんな時は少魔が現れるのは決まって夜だ。人が謳歌塵衝動。
だけ、少しだけ、今の身体が怨めしい。人見知りで寄ってくすべきは昼の間だけ。夜に出歩く人間は人鬼登場。
ないんだから、余計。――っと、彼女に気が変わらない即ち――外れてしまった人ではないもの。塵鬼登場。
に、何時も通り会話の中で羽ばたこう。そもそも会同族・同属ならぬ同類、お仲間と呼んでも差し支由なき殺人。
の成立はない。一方通行の片思い。フォーリンラヴはえのない、無様な獣達。夜を我が物に、そん由なき殺塵。
映画のように巧くは行かないのだった。。。。。がっかりなたいそれた妄想を現実とする為に。夜をれが理由だ。
なんでもない日常のコトを語る。何時も病院は退屈で駆ける。恐れるものは皆無。恐れられる為れが理由か。
代わり映えがないのだけれど、それでも意外と居心――その一心で。実に下らない存在理由。れも理由だ。
は悪くない。うん、まあまあ。合格点は赤点スレスレ実に下らないからこそ、意味がある。――――Dead line。
ラインだから、これも当然だ。ただしそんな話じゃ彼刹那の快楽とは、その実意味がない。その時が良けれ
ようの微笑みは受け取れない。凄く残念だ。私のコトも―-少ばそれで良いという考え方には、発展性も何も存
穿ち、くらいは知って欲しいのに。彼女の興味はここに来た在しないのだから。――無意味な生、無意味な死。
く。肩く点で定まっているのだから仕方ないけど、、、少し嫉妬それこそ我ら夜に生きるモノの本懐だと言うもの。
いは持ってじゃあ今日も、少しだけ走り方を教えてあげよう「さあね――玩具は玩具だ。少なくとも厭きるまでは
きたかったんけどちょっとだけイヂワルをして、何時も少しだけ、壊れるまでは遊んでやるべきだと、そう思った
が――まあ、仕か教えてあげていない。そして、何時も通り、メールまでさ。――――単純明快でいいだろ?」
あるまい……契約定型文みたいな常套句を彼女に投げ掛ける。「なんで飛ぶの?」変な人間だった。一言も喋べ
契約だからな。それに―――――Cut off all road―――――らない私に向かって延々と喋り続ける彼女。姿を変え
しても――何故飛ぶ、か。―――――Cut off all road―――――ていたとしても、それは変わらなかったのだから、
軽口で返したは良いが、改―――――Slash down dead line―――――余計に。変な人。憎めないけど。色々と教
めて考えるとなると、中々に―――――Slash down dead line―――――くれる親切な人だし。だから私は、一度き
哲学的だ。人は空に憧れ、飛ぶ―――――Slash down dead line――――-りの気紛れで、口を開いてあげるのだ。
コトに執着した。執着して、今へと到る。「きっと―――――理由をつけるまでもない本能」――――-Extermination。



573 名前:名無し子猫:2007/08/18(土) 01:02:000
 彼女は決まって夜に来る。足音も立てず、星の河を流れてきたのと問いた結局住めるのは夜だけだった。自
なるくらい唐突に。でもそれが自然。一つ処に留まる猫は居ない。それが由を手にしたと言うのに、縛ら害。
然。だから代わりに「ニャン♪」と啼いてみる=泣いてみる? セオリーれていた。鎖は強固。陽の当たる害。
従うなら泣くのがきっと、ベストアンサー。それでも私は啼いている。場所に居場所はなく、卑である場所害。
を夢見る籠の鳥のように。ドリームズ・カム・トゥルー、叶う夢ならばこそが我が舞台。天幕は闇に閉ざさ人鬼。
う一度私の胸に。風に揺られる花の様に、空を駆けてみたい。それ、人工の明かりが街を照らす夜に。塵鬼。
な心境も露知らず、彼女の首はきっかり三十度傾く。自然で可黄昏刻が逢魔ヶ刻ではなくなって以来人衝動。
い。思わずギュッとして、チュウがしたくなる。こんな時は少魔が現れるのは決まって夜だ。人が謳歌塵衝動。
だけ、少しだけ、今の身体が怨めしい。人見知りで寄ってくすべきは昼の間だけ。夜に出歩く人間は人鬼登場。
ないんだから、余計。――っと、彼女に気が変わらない即ち――外れてしまった人ではないもの。塵鬼登場。
に、何時も通り会話の中で羽ばたこう。そもそも会同族・同属ならぬ同類、お仲間と呼んでも差し支由なき殺人。
の成立はない。一方通行の片思い。フォーリンラヴはえのない、無様な獣達。夜を我が物に、そん由なき殺塵。
映画のように巧くは行かないのだった。。。。。がっかりなたいそれた妄想を現実とする為に。夜をれが理由だ。
なんでもない日常のコトを語る。何時も病院は退屈で駆ける。恐れるものは皆無。恐れられる為れが理由か。
代わり映えがないのだけれど、それでも意外と居心――その一心で。実に下らない存在理由。れも理由だ。
は悪くない。うん、まあまあ。合格点は赤点スレスレ実に下らないからこそ、意味がある。――――Dead line。
ラインだから、これも当然だ。ただしそんな話じゃ彼刹那の快楽とは、その実意味がな。その時が良けれ
ようの微笑みは受け取れない。凄く残念だ。私のコトも―-少ばそれで良いという考え方に、発展性も何も存
穿ち、くらいは知って欲しいのに。彼女の興味はここに来た在しないのだから。――無意な生、無意味な死。
く。肩く点で定まっているのだから仕方ないけど、、、少し嫉妬それこそ我ら夜に生きるモの本懐だと言うもの。
いは持ってじゃあ今日も、少しだけ走り方を教えてあげよう「さあね――玩具は玩具だ。なくとも厭きるまでは
きたかったんけどちょっとだけイヂワルをして、何時も少しだけ、壊れるまでは遊んでやべきだと、そう思った
が――まあ、仕か教えてあげていない。そして、何時も通り、メールまでさ。――――単純明快でいいだろ?」
あるまい……契約定型文みたいな常套句を彼女に投げ掛ける。「なんで飛ぶの?」変な人間だった。一言も喋べ
契約だからな。それに―――――Cut off all road―――――らない私に向かって延々と喋り続ける彼女。姿を変え
しても――何故飛ぶ、か。―――――Cut off all road―――――ていたとしても、それは変わらなかったのだから、
軽口で返したは良いが、改―――――Slash down dead line―――――余計に。変な人。憎めないけど。色々と教
めて考えるとなると、中々に―――――Slash down dead line―――――くれる親切な人だし。だから私は、一度き
哲学的だ。人は空に憧れ、飛ぶ―――――Slash down dead line――――-りの気紛れで、口を開いてあげるのだ。
コトに執着した。執着して、今へと到る。「きっと―――――理由をつけるまでもない本能」――――-Extermination。





574 名前:名無し子猫:2007/08/18(土) 01:09:330
 彼女は決まって夜に来る。足音も立てず、星の河を流れてきたのと問いた結局住めるのは夜だけだった。自
なるくらい唐突に。でもそれが自然。一つ処に留まる猫は居ない。それが由を手にしたと言うのに、縛ら害。
然。だから代わりに「ニャン♪」と啼いてみる=泣いてみる? セオリーれていた。鎖は強固。陽の当たる害。
従うなら泣くのがきっと、ベストアンサー。それでも私は啼いている。場所に居場所はなく、卑である場所害。
を夢見る籠の鳥のように。ドリームズ・カム・トゥルー、叶う夢ならばこそが我が舞台。天幕は闇に閉ざさ人鬼。
う一度私の胸に。風に揺られる花の様に、空を駆けてみたい。それ、人工の明かりが街を照らす夜に。塵鬼。
な心境も露知らず、彼女の首はきっかり三十度傾く。自然で可黄昏刻が逢魔ヶ刻ではなくなって以来人衝動。
い。思わずギュッとして、チュウがしたくなる。こんな時は少魔が現れるのは決まって夜だ。人が謳歌塵衝動。
だけ、少しだけ、今の身体が怨めしい。人見知りで寄ってくすべきは昼の間だけ。夜に出歩く人間は人鬼登場。
ないんだから、余計。――っと、彼女に気が変わらない即ち――外れてしまった人ではないもの。塵鬼登場。
に、何時も通り会話の中で羽ばたこう。そもそも会同族・同属ならぬ同類、お仲間と呼んでも差し支由なき殺人。
の成立はない。一方通行の片思い。フォーリンラヴはえのない、無様な獣達。夜を我が物に、そん由なき殺塵。
映画のように巧くは行かないのだった。。。。。がっかりなたいそれた妄想を現実とする為に。夜をれが理由だ。
なんでもない日常のコトを語る。何時も病院は退屈で駆ける。恐れるものは皆無。恐れられる為れが理由か。
代わり映えがないのだけれど、それでも意外と居心――その一心で。実に下らない存在理由。れも理由だ。
は悪くない。うん、まあまあ。合格点は赤点スレスレ実に下らないからこそ、意味がある。――――Dead line。
ラインだから、これも当然だ。ただしそんな話じゃ彼刹那の快楽とは、その実意味がな。その時が良けれ
ようの微笑みは受け取れない。凄く残念だ。私のコトも―-少ばそれで良いという考え方に、発展性も何も存
穿ち、くらいは知って欲しいのに。女の興味はここに来た在しないのだから。――無意な生、無意味な死。
く。肩く点で定まっているのだか仕方ないけど、、、少し嫉妬それこそ我ら夜に生きるモの本懐だと言うもの。
いは持ってじゃあ今日も、少しけ走り方を教えてあげよう「さあね――玩具は玩具だ。なくとも厭きるまでは
きたかったんけどちょっとだけイヂワルをして、何時も少しだけ、壊れるまでは遊んでやべきだと、そう思った
が――まあ、仕か教えてあげていない。そして、何時も通り、メールまでさ。――――単純明快でいいだろ?」
あるまい……契約定型文みたいな常套句を彼女に投げ掛ける。「なんで飛ぶの?」変な人間だった。一言も喋べ
契約だからな。それに―――――Cut off all road―――――らない私に向かって延々と喋り続ける彼女。姿を変え
しても――何故飛ぶ、か。―――――Cut off all road―――――ていたとしても、それは変わらなかったのだから、
軽口で返したは良いが、改―――――Slash down dead line―――――余計に。変な人。憎めないけど。色々と教
めて考えるとなると、中々に―――――Slash down dead line―――――くれる親切な人だし。だから私は、一度き
哲学的だ。人は空に憧れ、飛ぶ―――――Slash down dead line――――-りの気紛れで、口を開いてあげるのだ。
コトに執着した。執着して、今へと到る。「きっと―――――理由をつけるまでもない本能」――――-Extermination。





575 名前:名無し子猫:2007/08/22(水) 21:10:480
書き込みテスト

576 名前:名無し子猫:2007/09/01(土) 02:04:410
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm535395
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm918391

こうです。

577 名前:名無し子猫:2007/10/05(金) 06:36:29 0
テスト

578 名前:名無し子猫:2007/10/07(日) 23:35:14
テスト

579 名前:名無し子猫:2007/10/08(月) 02:18:39
テスト。

580 名前:名無し子猫:2007/10/11(木) 12:22:22


581 名前:名無し子猫:2007/10/11(木) 19:05:18
 ス

582 名前:名無し子猫:2007/10/12(金) 01:05:47
  ト

583 名前:名無し子猫:2007/10/12(金) 01:06:18


584 名前:名無し子猫:2007/10/12(金) 01:07:09
ウホッ

585 名前:名無し子猫:2007/10/12(金) 17:34:35
テスト書き込み

586 名前:名無し子猫:2007/10/13(土) 00:13:47
イイオトコ

587 名前:名無し子猫:2007/10/15(月) 00:48:43
テスト書き込み

588 名前:名無し子猫:2007/10/21(日) 00:16:57
テスト

589 名前:名無し子猫:2007/10/21(日) 00:17:56
テス党

590 名前:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉
……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

591 名前:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉
……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

592 名前:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉
……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

593 名前:名無し子猫:2007/11/19(月) 22:58:39
キャップテスト

594 名前:森祭削除人 ★:2007/11/19(月) 23:00:22
もういちど

595 名前:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉
……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

596 名前:リサ・トレヴァー ◆Lisayc.tVc :2007/11/22(木) 02:27:14

ある製薬会社員の日記

        まったく、癇に障る泣き声を出しやがる。

        先月アメリカの何とか山中で発見された化物を
        今、俺たちが運んでいる。
        名前はリサちゃん。しかし可愛らしいのは名前だけときたもんだ。

        声、姿、行動、全てが気色悪い。
        時々なんか喋ったかと思ったら「ママ」としかいわねえ。
        まったく、"雨傘"の連中も酷な事しやがるねえ。

                   両手両足に枷を嵌めているおかげでジャラジャラと
                   鎖が地面を擦る音を出す。ああ、いやだ。
                   俺の神経まで擦り減らすつもりかよ。

                   高圧電流の檻に鉄の鎖なんて大袈裟とも思える
                   囲いなんだが、こいつに限ってそうとも言えないらしい。

                   なんでも捕獲に向かった実行隊員5人を撲殺―――しかも
                   頭蓋骨砕かれて即死―――したとのコトだ。
                   それが本当ならこれでも不安なくらいだ。寝ていたら頭砕かれ
                   ましたなんて洒落にならない。

                                 まあいい。こいつをフランスの研究所に届けたら
                                 この気色の悪い声ともおさらばだ。

                                 せっかくフランスにまで飛んできたんだ。今夜は
                                 美味いワインでも飲むとするか。

『T』に関しての注意事項


         1.『T』の概要

         『T』は非常に強い感染力を持っており。
         サンプルによるウィルスの空気拡散の心配は無くも、
         血液等の接触により感染する可能性が高い。
         引っ掻かれる、噛まれる等して外傷を負わぬ様注意すること。

                    2.外傷を負った場合の対処法

                    速やかにワクチンの摂取を行 こと
                    不可能であれば感染者の頭部の破壊し、
                    それ以上の感染防ぐこと。

                                  3.サンプルの脱走に関する対処法

                                  速やかに本社に連絡後、
                                  全力をもってサンプルを破壊に勤めること。

                                                4.サンプルを破壊できない場合
                                                3の下線部を読むこと。

597 名前:ゼアド ◆rX9kn4Mz02 :2007/11/23(金) 20:18:48

『死神(デス)ゼアド vs <呪われし公子ゲイナー>』
 
>>67 
 
その全てを呑込む深(侵)緑の坩堝に、漆黒の影は埋没することなく存在していた。
 
 
カソックじみた黒衣を纏う禿頭の男である。
その俗さというものを感じさせない、物静かで飄々とした装いは牧師のそれだ。
 
だが男は凡庸な存在とはまるでほど遠く、むしろ異様ですらあった。
露出しているのは首から上だけであり、それ以外は全て黒の装束に覆われている。
異様なのは唯一露出した頭部もだった。  
一切の体毛が存在しないのだ。頭髪はもとより、眉毛や睫毛、さらには産毛の一本までも。
まるで髑髏へ肉付けのみをした死面(デスマスク)を思い起こさせる。
それは男のいる施設においても同様で、他の職員は皆、彼を心の底で恐れていた。
嫌悪感でもない、それ以上の本能的な恐怖と畏怖。
施設に収容されているいかなる異形より、死を想起させるものとして。
 
だが、それよりもこの男を異様たらしめているものは。
  
 
「――――ああ、お待ちしておりました。 
 貴方もご健在だったようで。それはそれは……」
 
まこと、ご災難であったでしょう。
そう続けて男が続けて切り出したのは、バトラーが客賓を迎えるがごとき恭しい一礼。
常より躊躇も乱れもない柔らかな物腰、相手の地位役職を問わず丁寧懇切であり流暢なその語り口。
世に言う慇懃無礼、などというものとは違う。
“これ”は理屈(ロジック)で現せるような表層ではなく、もっと根源的なものだ。
例えるなら、
  
「はて……何を、と申されますか。
 ですがゲイナー殿。言うなれば……それは此方の台詞。
 貴方こそ、一体何をされるお積りですか」
 
その声音は流暢でありながら、
口以外の部位から捻り出され、心の奥底へ、ねっとりと絡み付くようであり。
 
「貴方ならばお分かりの筈……左様、これは“可能性”なのです。
 今、怠惰と腐敗を重ねた現世に、聖処女は黒の位相より舞い降りた。正に“奇跡”と言えましょう。
 そして、世の因果、秩序に反するこれこそが<混沌>―――これぞ貴方も深く知るところである、
 無限に広がる“可能性”の発露ではありますまいか」

僅かに熱に浮かされながらも、その物言いは聞こえよく淡々として。
 
      ――――嘔吐を催す絶対的な嫌悪感は、
              生きた人間を材料にして奏でる楽器の 
                 隠しきれぬ怨念と絶叫を孕んだ牧歌を聴くようで。
    
  
「ならば、です。この祝福の、何を阻み蔑む道理がありましょうか?
 そう……貴方様は何ゆえに? グルマルキン公ですか?
 ああ、残念ではあります。私も不肖ながら別室で見ておりました。
 しかし、いや……よもやあの剣が一体誰のものか、分からずじまいだったとは……」
 
心の底から残念そうに、かぶりを振る仕草。
彼の動作は滑らかでありながら、
本来人間のあるべき動作からは極めて僅かに、だが致命的に掛け離れ。
 
「しかし悔やむ事もありますまい。いずれ、抑止の手も届きます。
 貴方の想定とは違うでしょうが…“世界”よりの修正を受ければ、抱く願いも叶うのではと」
  
向き直り、まるで最良の結果を告げるように。歌うように。
 
      ――――潜在的な領域で揺り起こされる不快感は 
              生贄である大勢の人間を搾り絵具とした
                 清冽さと優雅さを謳った油絵を見せられるようで。

 
 
「何より、折角の祝祭です。手を引いて頂きたい。
 貴方とて異界はマシャバク神の下僕、世に<混沌>をもたらすべきもの。
 これは好機ともいえる、破滅と混乱の発露なのです。貴方の務めにとっては祝いこそすれ、止める道理など…。
 ああ……いや、まさか。まさかとは思うのですが……」
 
そこで相対するゲイナーへ、男―――ゼアドが初めて表情を形作る。
そう、“作る”。
まるでヒトならざるモノが人を模したかのような違和感。
まるでヒトの声を持たざるものが人間のそれを真似たかのような違和感。
その酷くおぞましい存在の歪みが、最大となる。
 
「あの『聖女』に憐憫の情でも覚えられましたか? 
 災厄として死してなお担ぎ出される救国の英雄に……永遠の救世主として時を越え、残滓として君臨
 し続ける乙女に………いやいや、或いは同情か、哀れみか。
 よもや、恋慕などということはありますまいが――――――」
 
 
薄闇の中。
深(森)淵の中で朗々と語り、問い、そして笑む。
薄い哂いを張り付かせ。
生で満ちる異界を死で満たし。
正気なき地を瘴気で満たす。
            
      ―――――多彩の公子に対峙し嘲う黒白は
               死と闇より生まれ其れを知り尽くした
                   忌まわしい神を、誰もが知る忌まわしき神を

 
薄闇の中、独り笑む。
其れは黒衣を纏う白い髑髏。 
 
 
【現在地:C地区 腐海神殿(研究所)地下】

598 名前:名無し子猫:2007/11/26(月) 23:05:30
テスト

599 名前:名無し子猫:2007/11/27(火) 23:59:49
 

600 名前:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉
……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

601 名前:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉:……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉
……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

602 名前:名無し子猫:2007/12/10(月) 05:17:46
憂いはたった今断った。
するべき事は全て終え、留まる意味を失った。
いや、これ以上留まる事は危険を呼び込むだけでしかない。
人が何人も消えている事実と自分の存在が、結び付かない筈がないのだから。
遠からず世間は騒がしくなり、そうなってからでは逃げるには遅い。
動くのならまだ容易な今の内に。

そうして、この狭い国から脱出する事を決意した。


潜り込むのなら、隠れる余地の多い大きな船が良い。
大勢の乗客が乗り合わせる客船よりは、タンカーの類の方が見つかる危険を抑え
られるだろう。
水や食料は、乗員用の物を拝借すれば問題ない。
何しろ病院内に数ヶ月も住み着いた経験があるのだから、それを参考にすれば
さほど難しい事でもないだろうと思う。
彼女にばかり負担を押し付けてしまう事になるが、下手に僕が出歩いて見つかる
よりは余程良い……と言われてしまっては反論の余地もなかった。

選んだ船が燦月製薬所有の船舶だった事も行き先がフランスのとある新興都市だ
った事も、偶然の産物だった。


偶然の産物とはいえ、日本の企業が進出したお陰で急速に発展しつつある新興都
市と言うのは、極めて都合が良かった事は言うまでもない。
よそ者の日本人が一人でうろついていても注目を引く事は無く――いや、実際は
そうでもなかったのだろうけれど、住人が好奇心その他から声を掛けてくるよう
な事は皆無だった。
僕としては、それだけで十分だった。

急速な発展と言う強い光が街の足元に歪んだ黒い影を落とす。
そんな公式は日本でも海外でもそう変わらないらしく、それなりの賑わいから切
り取られた隙間のような空間がこの街にも同じようにあった。
繁華街の外れの入り組んだ裏道を進み、投棄された様々なごみの合間を抜けて、
そんな空間の内の一つに腰を据える事にする。
この場所なら暫くは落ち着けるだろう――そんな風に考えて。


とは言え、生活そのものは注意して行わなければいけない事だらけだった。
万が一騒ぎになってしまえば、ここも去る羽目になる。
基本的には殆ど出歩く事も無く、食事も自制に自制を重ねた。
日々人口が増え月単位で成長する都市であれば、その内の数人が消えても大した
問題にはならないかとも思ったものの、警戒心を忘れてしまう事は避けなければ
いけない。

何処まで行っても、人の社会にとって僕は異物なのだから。

603 名前:名無し子猫:2007/12/10(月) 05:19:32
住処と定めた場所の一角をようやく塗り終え、暫く振りの安眠を貪り――目を覚
ました時には既に事態は一変していた。
パニックは既にかなり広がっていて、何がどうなっているのかはまでは良く分か
らなかったものの、街全域が不可思議な現象に飲み込まれている、らしい。
怒号や悲鳴、果ては発砲音らしいものまで聞こえ、遠く空が赤く染まっているの
も見る事が出来た。

この規模で災害(と呼んで良いのかは分からないが)が発生したとなれば、被災
民の保護や救助やらで政府の介入がないはずはない。が、逃亡者の身の上では、
その手の連中に見つかるわけにもいかない。
何より、災害そのものが危険かもしれないのだ。
混乱の収まる前に、ここから逃げる必要がありそうだった。


流石に少なからず気分が滅入っていたところで、死体に鉢合わせた。
流れ出る血の匂いを嗅いで、悪い事ばかりでもないな、と思い直した。

どうせ捨てる街だ。去る前に飽食してみるのも良いだろう。

604 名前:名無し子猫:2007/12/10(月) 23:57:29
 「いやはや…コイツは酷いわな…。」

 そう呟いて、煙草を取り出し火をつけ…俺は繁華街に入る。
 既に本来の役目であるネオンは光ってねぇし…店やコンクリを破壊し、突き出た植物の根。
真っ黒に焦げた店舗…根によって倒れたであろう消火栓から吹き出る水で、偶然消火されたのが幸いだわな。

 「ったく…ここまで酷いって話は、聞いちゃいないんだがなぁ。」

 

 旅先で教会に泊めて貰ったは良いが…明朝、郵送されて来やがったヴァチカンの命を伝える伝令書。
 俺は出る直前で準備も粗方終えてたし、その教会から『一宿一飯の恩+小金になる』と…依頼を受けた。
 ―――で、その後ヘリに十時間以上揺られてこんなトコまで輸送された訳だが…こりゃ失敗したかね…。
 



 「―――ま、情報は鮮度が命だ…。
 こんな「異常」が起こってるんじゃ、状況なんて直ぐ変わるわな。」


 苦笑しつつ、俺は煙草を消して再び歩き出した。

605 名前:名無し子猫:2007/12/11(火) 00:30:24
人間ヒト

606 名前:名無し子猫:2007/12/15(土) 01:29:50
 目標は、廃屋に入って行った。
 俺もそれに遅れる形で廃屋に踏み込もうとしたが―――


 「…ぐ…なんだってんだよ、この臭いは…っ!。」


 腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭


 廃屋に近づくにつれ、漂う臭いがどんどんキツクなって行きやがる…。
 嗅覚が正常な奴なら、10人中10人悪臭と感じ取り不快感や吐き気を催すだろう。
 ―――この悪臭の元は、あの廃屋…だろうな。
 臭いの元を睨み付け、地に煙草を落としてブーツで火を踏み消す。
 …だが、こんな悪臭の中煙草がなけりゃ鼻が耐えられねぇ。
 右手を使い、再び懐から煙草を取り出しライターで火を点ける。
 そのまま煙を肺に入れ、吐き出す…ああ、いくらか楽になった。


 「さて、そんじゃ…確かめに行くかねぇ―――

                              八割方、正常な人間じゃなさそうだが。」

607 名前:天京院・鼎 ◆mVOKem4Kv2 :2008/03/31(月) 13:49:39
吾亦紅われもこう

608 名前:[-{}@{}@{}-] 摩夜 ◆XOZOvuKWhM :2008/04/27(日) 04:36:19
レスを確認させてもらった。
まずは雑事への返答を。

>ただ……そうだな、なるべくなら自レスでこっちの行動や言動は
>書かないでくれるとありがたい。
了解。もとより導入部以外でそちらの行動を描くつもりはないから。


>アンタはどのくらいの再生能力を持ってる?
>そしてどのくらいやれば死ぬ?
>例えば、腕を切り飛ばしたとして生えてくる? くっつく?
>首を切られても生きてる? 心臓潰されたら?
再生能力は……傷を受けた部位にもよるけど、目安としては
「腕の肘から先を切り飛ばされて、再生するのに一日〜一日半程度」
といったところか。
人間の治癒力とは比べ物にならないが、お前のそれと比較すると少々見劣りするかな。

あと、完全に切り離されるとくっつかない(新しく生えてくるのを待つしかない)が、
切断までいかない切り傷で済めば、傷口近くの細胞の浸透圧を調節することで無理矢理つなぎとめることができる。
神経が切れていたら繋がるまでは自由に動かせないけれど。
同じ理屈で、銃弾のような傷の面積が小さいダメージにはわりと耐性がある
(あくまで『切断にくらべれば』であって、あのカスール弾を急所にくらえば十分に危険だが)。

翼手の再生能力を封じて完全に殺すには、一度に大量の失血を強いることだ。
首を切られたり心臓を潰されたりすれば一発で御陀仏。
そうでなくとも、肩口からみぞおちまで『聖者の絶叫』で叩き切られたりすれば
おそらく致命傷になるだろう。
それから、頭……というか脳をやられてしまったら、これまた致命傷だ。

(あと『音無小夜の血』があれば再生能力を一発で潰せるけど……今回は考えなくていいだろう)




で、次が今日の本題。

>ヴェドゴニア化した俺は到底まともな人間の青年には見えねェから、
>そこだけは修正しといてほしい。
申し訳ない、変身シーンを入れるのを忘れていた。というわけで

  「だったら遠慮はいらねえな」
  言いながら得物を抜き放つ。
  「上等だ」
  女も、椅子の肘掛を叩いて立ち上がった。

のところを

  「だったら遠慮はいらねえな」
  言いながら得物の小剣を抜き放ち、その切っ先を――自らの首へ突き立てた。
  高く舞い上がってから重力に従い落ちてくる血の軌跡……
  その中で、青年の身体が瞬く間に異形の怪物へと変じていく。
  そんな気狂いじみた光景を目にして、女は――
  「上等だ」
  口の端を一層高く吊り上げ、椅子の肘掛を叩いて立ち上がった。

と置き換えようと思う。これで大丈夫だろうか?
問題なければ、>>6に対応してこちらの行動を書くことにする。

609 名前:[-{}@{}@{}-] 摩夜 ◆XOZOvuKWhM :2008/05/02(金) 12:54:19
死体を蹴り返されたのも予想外だったが、なおのこと意外なのは――
逆向きにかっ飛んできた骸の頭部の軌道が、私の腕の軌道と正確に重なっていること。
こいつ、パワーだけでなく精度も半端じゃない!
「ちぃ!?」
哀れな骸の顔面を砕いたせいで、こちらの攻撃の方向が僅かに逸らされ、
 ――ああ、そういえばこの娘、私が首筋に噛み付いた時いい声で鳴いてくれたっけ――
そんなことをチラと思い出す間に、私の腕はヴェドゴニアの口当てを掠めていた。

ぎぃ、と耳障りな音が響く。
奇襲の失敗を悟り、腕を引こうとして……直後、死体の腹を破る銃剣が視界に入った。
見る間に銃身が、そして奴の手首が突き出てくる。
――でかい。
奴の手に対して銃の大きさが半端でない。
銃の知識なんて碌にないが、でかい=ヤバい、とは容易に想像がつく。

血の気が引くより先に、腰と膝と足首が反応していた。
全身を捻って射線から外れる。それでまず第一射は凌げるはず――

やたらと長く感じるコンマ数秒。
一発目の銃弾が吐き出され、さっきまで左胸があった辺りを素通りしていく。
が、撃発の反動で銃口が斜めへずれて――奴は銃を横向け、いわゆる馬賊撃ちの格好に構えていた――私の胸元に照準が合う!

寸手のところでかわすのと、二発目が放たれるのがほぼ同時。
弾は三つ編の髪の房を吹き飛ばし、窓ガラスをぶち割って外へかっ飛んでいく。
――半端に避けたせいで姿勢が低くなって、今度は頭に射線が来てしまった。

まともに食らうのだけは避けねばならない。
これまでの回避行動のツケで右足と左足が逆向きになっていて、飛び退くことは出来そうにない。
いま自由に出来るのは……左腕だけ、か!

三発目が放たれる寸前に左手を、見た目はヒトのそれと変わらぬか細い左手を、銃口へ向けて真っ直ぐに伸ばす。
「っ――――!」
銃弾は小指と薬指の間に食い込み、両の指を吹き飛ばし、皮膚を破り、肉を裂き、骨を削りながら腕の中を突き進み、肘から抜けて――
それで僅かに軌道を逸らし、最後に左耳の耳朶を吹き飛ばした。

痛い。衝撃で頭がガンガンする。洒落にならないくらい痛い。左腕は肘から先の感触がない。死ぬほど痛い。視界がチカチカと点滅する。どこから痛みが来ているかわからないくらい全身が痛い。
痛いが、しかし、それだけだ。
左の肩はまだ動く。左の耳は当分聞こえまいが、もとよりこれは音速を上回る速さでの闘争だ、関係ない。
平衡感覚に悪影響が出ていないかどうかが気がかりだが――ああ面倒くさい、そんなものは身体を動かしていればそのうち判る!
「――――らあぁぁぁぁ!!」
その絶叫は、痛みをこらえる為に放ったのが半分。もう半分は次の攻撃・・・・にありったけの気迫を込めるため。
銃弾から押し付けられた莫大な運動エネルギー、本来なら私の身体を後ろへ押し返そうとしてくるはずのそれを、右足を軸とした回転のトルクへ強引に転換する。
両の肩を振り回し、棒のようになった左手が捻じくれるのも構わず。

そして、暢気に骸を放り投げて後ろへ退こうとしているヴェドゴニアへ、トルクと体重と私の全力を込めた右腕を再び見舞う!

610 名前:名無し子猫:2008/05/14(水) 05:55:08

「あはははは! 絶対にいじめてやるわよ、吸血鬼スカーレット・デビル!」

 ―――日傘の石突がわたしの脇腹を抉り、鮮血をしぶかせ、

「くく、ははははは! もう我慢できないってわけね、ひまわり女フラワーマスター!」

 ―――わたしの爪が彼女の胸を切り裂いて、花びらを散らす。

611 名前:名無し子猫:2008/06/23(月) 00:18:11
テスト《、、、》

612 名前:名無し子猫:2008/06/23(月) 00:19:45
やはりそういうことか――――(何
 
テスト、、、

613 名前:名無し子猫:2008/07/30(水) 00:37:10
てす

614 名前:名無し子猫:2008/08/17(日) 11:36:27
一刻館いっこくかん

615 名前:名無し子猫:2008/08/17(日) 11:45:13
一刻館
一刻館
キャラネタ喫茶・一刻館
キャラネタ喫茶・一刻館
キャラネタ喫茶・一刻館
キャラネタ喫茶・一刻館
キャラネタ喫茶・一刻館

一刻館いっこくかん

616 名前:◆epL6OCHcsg :2008/12/04(木) 03:02:31
テスト

617 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2008/12/19(金) 01:03:07
 ‐Count Down. Are you ready? ‐

『Five little nigger boys going for law,
 One got in chancery, and then there were four.』



           私
           の
           中
           で
           狂
           え
           る
 私の胸から紅い 歯車が飛び出した。
           時
           計
           が
           切
           り
           開
           か
           れ。








「あ――――――、っ、はぁっ」

 体が勝手に後ろへ下がる。熱い。胸に刻まれた十字。
 胸骨をなぞって、三番目の肋骨の隙間を縫うように。
 服がはだける。覗く子供のまま時を止めた[しろ]い体。
 永遠の証。逸脱の印。私は素敵な吸血鬼。

 そこに刻み付けられた断罪の十字。
 私は神を信じない。ただ、刻んだ痛みは信じられる。

「いいわ……これ、すごくいい。ちょっと浅かったけど、痺れちゃった」

 傷は浅い。どうせすぐに塞がる。夜族の血はわずかな欠陥も許さない。
 でも、焼けるような熱さ。これだけは私の芯に留まった。
 中からじりじり体を焦がす。涙が出るほど―――気持ちいい。

 でも足りない。
 まだまだ。もっと―――

「まだだよ、まだまだ。もっと―――私を喜ばせて!!」

 ―――ああ、私を殺して。

 感極まって叫ぶ―――ちょっとはしたない?
 ごめんなさい、495年経ってもまだ子供なの。
 それでも貴方は紳士で、私は淑女で。
 ここは妖精のダンスホール。
 そして、そう―――

「そう」「夜は」

 一割る二は? 二つ。

「まだ」「続く」
「から」「ね?」

 二割る二は? 四つ。

 四人。全て私。でも、本物は一つだけ。

「―――Four of a kind」

 愛を囁くように宣言する。それだけで平行世界の壁があっさりと壊れる。
 砕け散る法則―――舎密なんてこんなもの。うすっぺらくてつまらない。
 カケラから、生まれる紅いシャンデリア―――ガラスのような弾が四倍。
 私の残機も四倍。私の場所も四倍。私の死線も四倍。私の難易度も四倍。
 そして私の愛も四倍。
 ―――愛は元々数えられないけどね?

 そう、私にだって壊せやしない。壊せる目なんてどこにも無い。
 なんて腹立たしくて―――でも、素敵な愛。
 どうぞ、一夜限りの逢瀬ですから。
 好きに愛して、全て注いで。

618 名前:『蓬莱の人の形』藤原 妹紅 ◆zPhoEniXzw :2009/01/18(日) 17:54:26


 ―――右腕の痛み=指先から肩に至るまでの複雑骨折=回復まで四半刻。
 つい勢いで殴りつけてしまった代償は少々大きい。肩から焼き切って新しく生やしても
いいんだが、今度は骨折と筋肉の断裂に火傷の苦痛まで残ることになる。如何に慣れてる
といっても、絶えず励起され続ける痛覚は動きと判断力を鈍らせるから、それは避けたい。

「羽入以外の神様なんて、自称多少問わずはじめて見たもの」

「ん、ああ、そうなのか。道理で雰囲気が違うわけだ。こっちでカタチを取れるほど信仰
のある神様なんてそうそう居ないんだけどな……まあ、見えることは見えるよ。ちょっと
色々と事情はあるんだが、『特殊な訓練を受けてる』くらいに思ってくれればいい」
 だから、痛み気を逸らすために二人の会話へ乗ることにした。
 ……実を言えばとっとと切り札を切って、あの化生にトドメを刺したいところなのだが。
それをやるとこの二人も巻き込みかねない。もちろんこの馬鹿騒ぎで誰かに迷惑をかける
気は毛頭ない。
 どう追い払うか考えつつ―――

 あれ、何か間違ってないか。
 待て待て、私は神様なんて大層なモノじゃないぞ。
「なに勘違いしてんだよ。私は人間だぞ。ちょいと長生きはしてるがね。少なくとも神と
祀られるようなことはした覚えがないし、そんな面倒なモノになる気もない―――ああ、
やべ、さっきのか。そりゃ疑われても仕方がないな。けどさ、神がいるんなら魔術や仙術、
妖術の類があっても不思議じゃないだろ?」
 どうせ信じてくれないだろうが、まあ実際本当に人間なのだから仕方が無い―――

「生き返るとしたら?」

「……何?」
 怪訝な顔をする。死んでも生き返るなんて、私じゃあるまいし。
 けどそういうのは私の他にあと二人はいるから、実は。

「教えてあげるわ、私は数年後の六月に、誰かに殺されるの。
 そしてそのたびごとに過去へとループして、別の世界へと飛ぶ。そして新しい可能性を探す」
 ――一人が死に、一人が消える。
「その伝承になぞらえて、私は殺される。それが『オヤシロ様の祟り』。
 笑っちゃうわよね。そのオヤシロ様本人は、すぐ後ろであぅあぅ言ってるだけなのに。
 私はそうして、100年を生きてきた。1000も2000も殺されてね。
 腸を引きずり出されるのが普通だったけど、毒を盛られたり首を掻き切られたりもしたわね。
 ああ、自分で包丁を頭に突きたてたこともあったっけ。あれは結構痛かったわ」

「―――なんだ、じゃあご同類……か?
 っても蓬莱人なんてそうそういるわけじゃないだろうけど」
 それに転生の仕方も違う。
 いちいち過去の時間に戻ってやり直せるというのは。ついぞ聞いたことが無い。
 「蓬莱の薬」は魂を現世に固定することで死亡した際に輪廻転生をその場で行い、記憶
と肉体、そして精神を保存したままその場に復活する、まさに禁断の薬にふさわしい効果
となっている。それでも、時間を遡ることは出来ない。
「……推測だが、そいつは後ろの神様の力かい? だとしたら破格のご加護だな、そりゃ。
例えるなら“マンダム”か“バイツァ・ダスト”くらいか? 私の知ってるメイドも時間
止めたり加速させたり出来るけど逆行は難しいって言ってたしね。反則レベルだ」
 出来ない、とは言わなかった辺りが怖い。もしかしたら明日にでも時間を巻き戻したり
出来るようになるかも知れない。能力は究極へと行き着くまで、生きている限り常に成長
する。私も肉体的な成長は止まっているが、精神では未だに変化を続けている。
 ―――ただ、私はもし遡れるとしてもそんなつもりはないが。
 やり直すには少々、長く生き過ぎた。捨てる荷物が増えすぎた。
 要は過去ではなく現在に未練がある、という本末転倒な状況だ。
「……しかし、ワケが解からんほど壮絶な人生だな。いったい何をどうすればそんなことになるんだよ。英米のシリアルキラーより性質が悪い殺され方なんてそうそう……そうか、その犯人が解からないからループしてるわけ、か」
 酷い話だ。見た目は私より五つか六つは年下なのに―――知らず左で握る拳がより強く
硬くなる/理不尽への怒り/ここに渦巻く祟りと相似した感情/共感。余計なお世話だと
解かっているが、それでもそいつを櫓櫂及ぶ果てまで追い詰めてブッ飛ばしてやりたい。
「――死ぬ経験なんて一度で十分なのに。いっぺん下手人をブチ殺してやりたい気分だ」
 あ、口に出てた。さっきの戦闘のテンションはまだ引きずってるようだ。もちろんいい
ことなのだが、あんまり物騒なこと言ってると怖がられそうでちょっとアレな感じが。

「ひょっとして、あなたは私を助けにでも来てくれたのかしら?
 でも残念ね、私より先に、この世界が死んでしまったもの。
 あなたも見たでしょう? 打ち捨てられたノボリやビラを。
 ダム戦争は、私達の敗北に終わったのよ。
 百年の中でも、こんなことは初めてね。最大の、そして最悪のイレギュラー。」

「……そうだったのか」
 だからこその無念か。増幅された怒りか。
 死者の怒りと、今生きている人間の怒り。
 故の無差別なジェノサイド。災害という名の復讐。
 そして―――目の前の神と巫女。向こうで停止している古き荒神。
 これじゃ、祟りが起きない方がおかしい。
 これだけ揃っていればダムどころか大地震で国の半分が全滅しても不思議じゃない。
 ある意味、その鍵をこの古手梨花が握っている、ということだ。

「この世界は、もうおしまい。
 私は私と共に戦うべき仲間と出会うこともなく、街のどこかで殺されるでしょう。
 だから、私もこの世界に見切りを付けて、次の世界に行くことにした。
 誰もいない村で、いつもの部屋でワインを飲んで、布団に入る。
 気がついたら水の中で、私は死んで、次の世界に。
 そのはずだったのに、あなた達のせいでとんだ邪魔が入ったわ。これじゃ飲み直しね」

 だから、それだけの力を。
 暴力を。
 奇跡を。
 味方につけておいて。

「まったく……どうせ滅びゆく世界だというのに、なぜあなた達はそれすら許さないと言うの!?
 滅ぼすなと言うんじゃない、ただ静かに滅んでいくのを見ていてくれればいいのに。
 だから私は一人、自分の部屋で水に沈んで、そしてこの世界を見限ってやるつもりだったのに。
 それさえも、それさえもあなた達は許さないと言うの!?」

 なんでそうなるんだ?
「―――死にたがりが何を言ってるんだ、大馬鹿野郎。死んでもいないのに勝手に諦めて
入水なんぞ気取るんじゃない。それでも稀有な不死者(イモータル)かテメェ。過去まで
戻れるからって人生無駄遣いする余裕があるなら、もっと早く下手人を見つけて樺太辺り
までブッ飛ばしてやれば良かったんだ」
 頭に血が上る―――思考自体は冷静。
 ただ感情自体が“ふざけるな”と大合唱。
 誰よりも有利な条件=必ず勝てる戦い/百回も繰り返せば誰だって勝てる。
 けどこいつは手札を見る前にドロップしている。
 ―――そんなんじゃ、ツキに/神に/仲間にだって見放される。
「……ああ、確かにこんなザマじゃ逃げたくもなるだろうよ。投げたくもなるだろうよ。
けどお前は“まだ”生きてるんだろうが。“まだ”殺されちゃいないだろうが。だったら
いくらでも手の打ちようはあるだろう。んな洒落た死に方のために、お前の神様は奇跡を
与えたのか? だとしたら本気で救いようの無い馬鹿だ」
 加速する罵倒―――どう見ても子供に向ける類ではない。
 だが、
「殺されるって解かってるなら相打ちに持ち込むくらいやれ。自分が死ぬ直前まで相手を
ブチ殺すことを止めるな。いや、死んでもいいからブッ飛ばせ。そして相手に自分の行い
を後悔させてやるんだ。お前は自分が思ってるよりはるかにデカい手役を持ってんだぞ。
そんなロイヤルストレートフラッシュみたいなカード持っててドロップなんて正気の沙汰
じゃねーぞ。“まだ”故郷が水に沈むだけだ。そして“まだ”水は入ってないんだ。勝負
はこれからだ。というよりまだ始まってもいねェよ」
 そうだ、だから。
 こいつと一つの賭けをする。
「―――そう、そして今日は。その手役に私ってチートが入ったんだぞ。
 これで勝てないなんて、地球が真っ二つに割れるより有り得ねーよ」
 そうだ。私はここで起きている何もかもが気に食わない。
 八つ当たりする祟りと、死にたがりの人間と、そしてほくそ笑む理不尽と。
 根こそぎブチ壊したくなった。
 獰猛な笑みが勝手に浮かんでくる。
 さあ、この勝負、お前は乗る(コール)か降りる(ドロップ)か。

「まあ、あなたに言ってもしょうがないことかもしれないけど。
 でも、人の最期の楽しみを邪魔したのだから、そんな意地悪な神の名前くらい聞いても、
罰は当たらないわよね?
 名前が分かっているもう片方は、あなたに叩きのめされて死んだみたいだし」

「……馬ぁ鹿。相手は仮にも神代の国譲りですら信仰の揺るがなかった、祟り神中の祟り
神だぞ? 正直、私が後先考えないで全力出しても勝てるかどうかってくらいの―――」

>>957

 そして、惨劇はすでに始まっている。
 ぽつりと降り出した雨―――それが私の左腕に当たる。
「つっ」
 焼けるような痛み―――皮膚に焦げ跡。
 見覚えがあった。
 確かそれは、強烈な脱水作用による炭化。
 硫酸。
「―――逃げろッ!!」
 そして二つ目の猛毒が身体に当たると同時に、私は突っ走り、古手の襟首を掴んで校舎
の玄関口まで全力で投げ飛ばしていた。ひょっとしたら骨折くらいはするかも知れないが、
神のご加護があるならたぶん平気だろう。
 だが、私は無事じゃない。
 そのくらい解かっている。
 背中越しに蝦蟇の動く気配―――濃厚な酸の匂い。今度は蒸発していく汚泥。そして雨
が強さを増し―――あらゆる酸素と水素を根こそぎ奪い取っていく。強烈な発熱/火傷と
変わらない、しかし性質の悪い痛み。
 そして最悪なのは。
 その蝦蟇がどこから造ったのか、硫酸を土石流みたいにぶっ放そうとしていることだ。
 口から硫酸を吐き出す生物なんて、千三百年生きててもお目にかかれない。
 回避不能/防御不能/反撃不能=スペルを起動させる暇も無い。
 常ならば即死/幸運補正でも重傷。神経を侵されれば不随は免れない。
 そしてその幸運は今回、裏返る。
「―――ッ!!」
 背中に意識が吹き飛びそうな痛みを感じた。腕も足もお構い無しに酸で引き連れて故障
していく―――圧倒的な量の硫酸は、薄紙よりたやすく皮膚を焼き、神経をちぎった。
 髪が焦げる/服が焦げる/背中が焦げる。薬の仕様で火傷しない体質だが、恐らく火傷
をしたとしたらこういう痛みだろう。滅多に経験出来るものじゃない。
 だから踏みとどまり切れない。酸を浴びた勢いのままもんどりうって倒れる。
(くそ……動けない……治るまで何秒かかる?)
 背中からもろに浴びたのがマズかった。脊椎がやられている。意識はある。が、手も足
も棒切れみたいに動かない。完全に神経を潰されていた。痛覚が消失したのはある意味で
運が良かったかも知れないが、そんなもの大して意味は無い。
 なまじ、即死より性質が悪い。復帰まで時間がかかる上に硫酸は未だに降り注いでいる。
その分だけ再生の手間がかかる。
 まるで私の弱点を知っているかのような布石/布陣―――
(いや、知ってても不思議じゃないか? 何しろ神様だ、何処にでもいるし、神様同士で
知り合いなんてありふれ過ぎている)
 もしも“向こう”で岩永の姫とこいつが世間話でもして、私の話題が出たとしよう。
 神の本質は全にして一。何処にいてもそれが固有の名前を共有する限り、どれだけ分霊
されていても一つの神として扱われる。だからここにいるこいつも、向こうにいるこいつ
も、同じ存在だから知識も経験も信仰もまた同質として扱われるわけだ。
 だから、解かっていてやっていたとしても不思議じゃない。
 むしろ、私の厄介さを知っているなら最初から準備していたのかも知れなかった。
(―――せめて、早く逃げてくれればいいんだけど)
 私一人なら幾ら死んでも平気だが……古手の方は違う。
 過去に遡ってやり直す―――言い換えれば、今がどれほど良い手札でも死んだら御破算。
 私の身体なんかより、そっちの方が心配だった。

 ―――再生まで、約三分。



619 名前:『蓬莱の人の形』藤原 妹紅 ◆zPhoEniXzw :2009/01/18(日) 18:13:03


 ―――右腕の痛み=指先から肩に至るまでの複雑骨折=回復まで四半刻。
 つい勢いで殴りつけてしまった代償は少々大きい。肩から焼き切って新しく生やしても
いいんだが、今度は骨折と筋肉の断裂に火傷の苦痛まで残ることになる。如何に慣れてる
といっても、絶えず励起され続ける痛覚は動きと判断力を鈍らせるから、それは避けたい。

「私は古手梨花。ここの守り神であるオヤシロ様の巫女、そう言ったはずだけれど?
 で、私の後ろで半透明にあぅあぅ言ってるのが、そのオヤシロ様こと羽入。
 これで満足?
 羽入が見えるのは驚いたけど、まあ、ここまでくればなんでもありよね。
 羽入以外の神様なんて、自称多少問わずはじめて見たもの」

「ん、ああ、そうなのか。道理で雰囲気が違うわけだ。こっちでカタチを取れるほど信仰
のある神様なんてそうそう居ないんだけどな……まあ、見えることは見えるよ。ちょっと
色々と事情はあるんだが、『特殊な訓練を受けてる』くらいに思ってくれればいい」
 だから、痛みから気を逸らすために二人の会話へ乗ることにした。
 ……実を言えばとっとと切り札を切って、あの化生にトドメを刺したいところなのだが。
それをやるとこの二人も巻き込みかねない。もちろんこの馬鹿騒ぎで誰かに迷惑をかける
気は毛頭ない。
 どう追い払うか考えつつ―――

 あれ、何か間違ってないか。
「ちょ、ちょ、ちょ。ちょっと待てオイ」
 待て待て、マジで待て。
 私は神様なんて大層なモノじゃないぞ。
「なに勘違いしてんだよ。私は人間だぞ。ちょいと長生きはしてるがね。少なくとも神と
祀られるようなことはした覚えがないし、そんな面倒なモノになる気もない―――ああ、
やべ、さっきのか。そりゃ疑われても仕方がないな。けどさ、神がいるんなら魔術や仙術、
妖術の類があっても不思議じゃないだろ?」
 どうせ信じてくれないだろうが、まあ実際本当に人間なのだから仕方が無い―――

「生き返るとしたら?」

「……何?」
 怪訝な顔をする。死んでも生き返るなんて、私じゃあるまいし。
 けどそういうのは私の他にあと二人はいるから、実は。

「教えてあげるわ、私は数年後の六月に、誰かに殺されるの。
 そしてそのたびごとに過去へとループして、別の世界へと飛ぶ。そして新しい可能性を探す」
 ――一人が死に、一人が消える。
「その伝承になぞらえて、私は殺される。それが『オヤシロ様の祟り』。
 笑っちゃうわよね。そのオヤシロ様本人は、すぐ後ろであぅあぅ言ってるだけなのに。
 私はそうして、100年を生きてきた。1000も2000も殺されてね。
 腸を引きずり出されるのが普通だったけど、毒を盛られたり首を掻き切られたりもしたわね。
 ああ、自分で包丁を頭に突きたてたこともあったっけ。あれは結構痛かったわ」

「―――なんだ、じゃあご同類……か?
 っても蓬莱人なんてそうそういるわけじゃないだろうけど」
 それに転生の仕方も違う。
 いちいち過去の時間に戻ってやり直せるというのは。ついぞ聞いたことが無い。
 「蓬莱の薬」は魂を現世に固定することで死亡した際に輪廻転生をその場で行い、記憶
と肉体、そして精神を保存したままその場に復活する、まさに禁断の薬にふさわしい効果
となっている。それでも、時間を遡ることは出来ない。
「……推測だが、そいつは後ろの神様の力かい? だとしたら破格のご加護だな、そりゃ。
例えるなら“マンダム”か“バイツァ・ダスト”くらいか? 私の知ってるメイドも時間
止めたり加速させたり出来るけど逆行は難しいって言ってたしね。反則レベルだ」
 出来ない、とは言わなかった辺りが怖い。もしかしたら明日にでも時間を巻き戻したり
出来るようになるかも知れない。能力は究極へと行き着くまで、生きている限り常に成長
する。私も肉体的な成長は止まっているが、精神では未だに変化を続けている。
 ―――ただ、私はもし遡れるとしてもそんなつもりはないが。
 やり直すには少々、長く生き過ぎた。捨てる荷物が増えすぎた。
 要は過去ではなく現在に未練がある、という本末転倒な状況だ。
「……しかし、ワケが解からんほど壮絶な人生だな。いったい何をどうすればそんなこと
になるんだよ。英米のシリアルキラーより性質が悪い殺され方なんてそうそう……そうか、
その犯人が解からないからループしてるわけ、か」
 酷い話だ。見た目は私より五つか六つは年下なのに―――知らず左で握る拳がより強く
硬くなる/理不尽への怒り/ここに渦巻く祟りと相似した感情/共感。余計なお世話だと
解かっているが、それでもそいつを櫓櫂及ぶ果てまで追い詰めてブッ飛ばしてやりたい。
「――死ぬ経験なんて一度で十分なのに。いっぺん下手人をブチ殺してやりたい気分だ」
 あ、口に出てた。さっきの戦闘のテンションはまだ引きずってるようだ。もちろんいい
ことなのだが、あんまり物騒なこと言ってると怖がられそうでちょっとアレな感じが。

「ひょっとして、あなたは私を助けにでも来てくれたのかしら?
 でも残念ね、私より先に、この世界が死んでしまったもの。
 あなたも見たでしょう? 打ち捨てられたノボリやビラを。
 ダム戦争は、私達の敗北に終わったのよ。
 百年の中でも、こんなことは初めてね。最大の、そして最悪のイレギュラー。」

「……そうだったのか」
 だからこその無念か。増幅された怒りか。
 死者の怒りと、今生きている人間の怒り。
 故の無差別なジェノサイド。災害という名の復讐。
 そして―――目の前の神と巫女。向こうで停止している古き荒神。
 これじゃ、祟りが起きない方がおかしい。
 これだけ揃っていればダムどころか大地震で国の半分が全滅しても不思議じゃない。
 ある意味、その鍵をこの古手梨花が握っている、ということだ。

「この世界は、もうおしまい。
 私は私と共に戦うべき仲間と出会うこともなく、街のどこかで殺されるでしょう。
 だから、私もこの世界に見切りを付けて、次の世界に行くことにした。
 誰もいない村で、いつもの部屋でワインを飲んで、布団に入る。
 気がついたら水の中で、私は死んで、次の世界に。
 そのはずだったのに、あなた達のせいでとんだ邪魔が入ったわ。これじゃ飲み直しね」

 だから、それだけの力を。
 暴力を。
 奇跡を。
 味方につけておいて。

「まったく……どうせ滅びゆく世界だというのに、なぜあなた達はそれすら許さないと言うの!?
 滅ぼすなと言うんじゃない、ただ静かに滅んでいくのを見ていてくれればいいのに。
 だから私は一人、自分の部屋で水に沈んで、そしてこの世界を見限ってやるつもりだったのに。
 それさえも、それさえもあなた達は許さないと言うの!?」

 
「―――死にたがりが何を言ってるんだ、大馬鹿野郎。死んでもいないのに勝手に諦めて
入水なんぞ気取るんじゃない。それでも稀有な不死者(イモータル)かテメェ。過去まで
戻れるからって人生無駄遣いする余裕があるなら、もっと早く下手人を見つけて樺太辺り
までブッ飛ばしてやれば良かったんだ」
 頭に血が上る―――思考は冷静/口調も淡々。
 感情―――“ふざけるな”と大合唱。
 誰よりも有利な条件=必ず勝てる戦い/百回も繰り返せば誰だって勝てる。
 けどこいつは手札を見る前にドロップしている。
 ―――そんなんじゃ、ツキに/神に/仲間にだって見放される。
「……ああ、確かにこんなザマじゃ逃げたくもなるだろうよ。投げたくもなるだろうよ。
けどお前は“まだ”生きてるんだろうが。“まだ”殺されちゃいないだろうが。だったら
いくらでも手の打ちようはあるだろう。んな洒落た死に方のために、お前の神様は奇跡を
与えたのか? だとしたらどっちも本気で救いようの無い馬鹿だ」
 加速する罵倒―――どう見ても子供に向ける類ではない。
 だが、
「殺されるって解かってるなら相打ちに持ち込むくらいやれ。自分が死ぬ直前まで相手を
ブチ殺すことを止めるな。いや、死んでもいいからブッ飛ばせ。そして相手に自分の行い
を後悔させてやるんだ。お前は自分が思ってるよりはるかにデカい手役を持ってんだぞ。
そんなロイヤルストレートフラッシュみたいなカード持っててドロップなんて正気の沙汰
じゃねーぞ。“まだ”故郷が水に沈むだけだ。そして“まだ”水は入ってないんだ。勝負
はこれからだ。というよりまだ始まってもいねェよ」
 そうだ、だから。
 こいつと一つの をすることにした。
「―――そう、そして今日は。その手役に私ってチートが入ったんだぞ。
 これで勝てないなんて、地球に客星がぶつかって真っ二つに割れるより有り得ねーよ」
 そうだ。私はここで起きている何もかもが気に食わない。
 八つ当たりする祟りと、死にたがりの人間と、そしてほくそ笑む理不尽と。
 根こそぎ

 獰猛な笑みが勝手に浮かんでくる/これでいい/これがいい。
 何万回と死生を潜ってきた私は、いつだって逃げられなかった。
 そしてやがて逃げることを止めて、目の前の理不尽や自分の罪を殴り倒すようになった。
気づいてしまえば簡単だったんだ。解かってしまえば、そんなもの苦しくなんてなかった。
立ち向かう『覚悟』さえあれば『幸福』になれたんだ。

 さあ、この勝負、お前は乗る(コール)か反る(ドロップ)か。
 私は乗る―――ここまで来て降りるなんて有り得ない/絶対に叩いて潰す。
 いつでも真正面から。そいつが私と世界の摩擦の消し方で、理不尽の潰し方だ。

「まあ、あなたに言ってもしょうがないことかもしれないけど。
 でも、人の最期の楽しみを邪魔したのだから、そんな意地悪な神の名前くらい聞いても、
罰は当たらないわよね?
 名前が分かっているもう片方は、あなたに叩きのめされて死んだみたいだし」

「……馬ぁ鹿。相手は仮にも神代の国譲りですら信仰の揺るがなかった、祟り神中の祟り
神だぞ? 正直、私が後先考えないで全力出しても勝てるかどうかってくらいの―――」

>>957

 そして、惨劇はすでに始まっている。
 ぽつりと降り出した雨―――それが私の左腕に当たる。
「つっ」
 焼けるような痛み―――皮膚に焦げ跡。
 見覚えがあった。
 確かそれは、強烈な脱水作用による炭化。
 硫酸。
「―――逃げろッ!!」
 そして二つ目の猛毒が身体に当たると同時に、私は突っ走り、古手の襟首を掴んで校舎
の玄関口まで全力で投げ飛ばしていた。ひょっとしたら骨折くらいはするかも知れないが、
神のご加護があるならたぶん平気だろう。
 だが、私は無事じゃない。
 そのくらい解かっている。
 背中越しに蝦蟇の動く気配―――濃厚な酸の匂い。今度は蒸発していく汚泥。そして雨
が強さを増し―――あらゆる酸素と水素を根こそぎ奪い取っていく。強烈な発熱/火傷と
変わらない、しかし性質の悪い痛み。
 そして最悪なのは。
 その蝦蟇がどこから造ったのか、硫酸を土石流みたいにぶっ放そうとしていることだ。
 口から硫酸を吐き出す生物なんて、千三百年生きててもお目にかかれない。
 回避不能/防御不能/反撃不能=スペルを起動させる暇も無い。
 常ならば即死/幸運補正でも重傷。神経を侵されれば不随は免れない。
 そしてその幸運は今回、裏返る。
「―――ッ!!」
 背中に意識が吹き飛びそうな痛みを感じた。腕も足もお構い無しに酸で引き連れて故障
していく―――圧倒的な量の硫酸は、薄紙よりたやすく皮膚を焼き、神経をちぎった。
 髪が焦げる/服が焦げる/背中が焦げる。薬の仕様で火傷しない体質だが、恐らく火傷
をしたとしたらこういう痛みだろう。滅多に経験出来るものじゃない。
 だから踏みとどまり切れない。酸を浴びた勢いのままもんどりうって倒れる。
(くそ……動けない……治るまで何秒かかる?)
 背中からもろに浴びたのがマズかった。脊椎がやられている。意識はある。が、手も足
も棒切れみたいに動かない。完全に神経を潰されていた。痛覚が消失したのはある意味で
運が良かったかも知れないが、そんなもの大して意味は無い。
 なまじ、即死より性質が悪い。復帰まで時間がかかる上に硫酸は未だに降り注いでいる。
その分だけ再生の手間がかかる。
 まるで私の弱点を知っているかのような布石/布陣―――
(いや、知ってても不思議じゃないか? 何しろ神様だ、何処にでもいるし、神様同士で
知り合いなんてありふれ過ぎている)
 もしも“向こう”で岩永の姫とこいつが世間話でもして、私の話題が出たとしよう。
 神の本質は全にして一。何処にいてもそれが固有の名前を共有する限り、どれだけ分霊
されていても一つの神として扱われる。だからここにいるこいつも、向こうにいるこいつ
も、同じ存在だから知識も経験も信仰もまた同質として扱われるわけだ。
 だから、解かっていてやっていたとしても不思議じゃない。
 むしろ、私の厄介さを知っているなら最初から準備していたのかも知れなかった。
(―――せめて、早く逃げてくれればいいんだけど)
 私一人なら幾ら死んでも平気だが……古手の方は違う。
 過去に遡ってやり直す―――言い換えれば、今がどれほど良い手札でも死んだら御破算。
 私の身体なんかより、そっちの方が心配だった。

 ―――再生まで、約三分。



620 名前:古手梨花 ◆ReNAW5TNRU :2009/01/26(月) 00:52:36


――――ぴしりと。
何かがひび割れるような音を、感じた。
物理的なそれではない。
違和感? 既視感? その両方がないまぜになったような。


刹那の戸惑いを、目前の神(仮)の言葉が現実へと引き戻す。
小首を傾げるも、すでにその感覚は去った後。

>「なに勘違いしてんだよ。私は人間だぞ。ちょいと長生きはしてるがね。少なくとも神と
>祀られるようなことはした覚えがないし、そんな面倒なモノになる気もない―――ああ、
>やべ、さっきのか。そりゃ疑われても仕方がないな。けどさ、神がいるんなら魔術や仙術、
>妖術の類があっても不思議じゃないだろ?」

「人、間……?」

なんとまあ、面妖な人間もいたものね。
羽入は見える、火は吹く……というよりばら撒く?
私と同じように、巫女のような力を持っているということかしら?
だとしても、反則に変わりはないけれど。
まったく――本当に今日はイカレた夜ね。

>「……推測だが、そいつは後ろの神様の力かい? だとしたら破格のご加護だな、そりゃ。
>例えるなら“マンダム”か“バイツァ・ダスト”くらいか? 私の知ってるメイドも時間
>止めたり加速させたり出来るけど逆行は難しいって言ってたしね。反則レベルだ」

反則、ずる、チート。
確かにそうだろう。
本当なら「あの一回」で――それがいつかを忘れたほど昔の「一回」で――終わったはずなのだから。

けれど、それが何?
同じことの繰り返しを百年。期待と失望、不安と諦念。
その繰り返しをもう百年。
こんな百年に、それを可能にした奇跡に、何の意味があるというの?

私は内心、そう嗤う。
だが、目の前の彼女は笑わない。むしろ怒っている。

>「――死ぬ経験なんて一度で十分なのに。いっぺん下手人をブチ殺してやりたい気分だ」

そう、彼女は怒っている。
そして、

>「―――死にたがりが何を言ってるんだ、大馬鹿野郎。死んでもいないのに勝手に諦めて
>入水なんぞ気取るんじゃない。それでも稀有な不死者(イモータル)かテメェ。過去まで
>戻れるからって人生無駄遣いする余裕があるなら、もっと早く下手人を見つけて樺太辺り
>までブッ飛ばしてやれば良かったんだ」

その怒りを、私に向けた。

>「……ああ、確かにこんなザマじゃ逃げたくもなるだろうよ。投げたくもなるだろうよ。
>けどお前は“まだ”生きてるんだろうが。“まだ”殺されちゃいないだろうが。だったら
>いくらでも手の打ちようはあるだろう。んな洒落た死に方のために、お前の神様は奇跡を
>与えたのか? だとしたらどっちも本気で救いようの無い馬鹿だ」

ふざけるな。
お前に何が分かる。

>「殺されるって解かってるなら相打ちに持ち込むくらいやれ。自分が死ぬ直前まで相手を
>ブチ殺すことを止めるな。いや、死んでもいいからブッ飛ばせ。そして相手に自分の行い
>を後悔させてやるんだ。お前は自分が思ってるよりはるかにデカい手役を持ってんだぞ。
>そんなロイヤルストレートフラッシュみたいなカード持っててドロップなんて正気の沙汰
>じゃねーぞ。“まだ”故郷が水に沈むだけだ。そして“まだ”水は入ってないんだ。勝負
>はこれからだ。というよりまだ始まってもいねェよ」

理屈を言うな。
感情を叫ぶな。
何も知らないくせに。
死ぬことさえできない人間モドキの出来そこない。

「あなたは何も知らないのね……。
 この村がどんなムラだったのか」
 
冷静に話す。激情を隠すために。
そう、感情に流されてはいけない。
それは無益だ。

「教えてあげるわ、このムラの姿を。
 おだやかな裏では、ダム賛成派と反対派で、村を挙げての疑心暗鬼。
 私の友達は、ダム反対派の娘だったってだけで、今でも買い物さえ満足にさせてもらえない」
 
冷静になれ。感情を押し殺せ。仮面をかぶれ。
怒りは感情を揺らがせる。感情の揺らぎは期待につながる。
期待はそして、失望で終わる。

「数年後にできるハズの『友達』は、自分の姉妹の爪がはがされてるのを黙って見ていた臆病者。
 別の『友達』は、疑心暗鬼にかられて自分の家族と友達を拷問して殺した。
 ああ、この前の世界での、ある『友達』が一番笑えたわね。
 宇宙人が攻めてきたとか妄言吐いて、私を含めて片っぱしから鉈で殴り殺して回ったもの」
 
感情を殺して、諦念の笑みで顔を覆え。
寸分の狂いなく、鉄面皮の壁をつくって自分を覆え。
どこからも漏れることのないような、完璧な盾をつくれ。

「疑心暗鬼に殺しあい、これがこのムラの住民の姿。
 分かるかしら? 私を含めて、誰もがイカれてるのがここなのよ。
 そんな中で、本当の仲間なんてできるはずない、力になるはずもない。
 そして子供の私一人で、運命をひっくり返すなんてもっと無理。

 私が持っているカードは羽入、たった一枚だけ。
 オヤシロ様の生まれ変わりと言われようと、羽入が見えようと、
 所詮は焼け石に水」
 
そうだ、これでいい。
期待なんかするから、裏切られる。
殻をつくれ。殻にこもれ。それで守られる、「その時」までは。

これ以上この正義気取りの顔を見たくなくて、私は目をそらす。
空を見上げれば、そこには満天の星。

「そうね……知ってるかしら?
 ヒジリとは……日知り、の謂いだそうよ」
 
『ところで、今日のお弁当は何なのですか』――
クラスでそう聞いた時のようにさらりと、話題を転じる。

「日と星を知り、暦を知り、種蒔きの時期も収穫の時期も知る。
 すなわち、天地の理を知る者。
 人々を導く、人ならざる者。神と人の代弁者、聖なるものにして邪なるもの。
 ゆえに日を知る者をヒジリ、すなわち聖という」
 
それは、かつて母に教わったこと。
常ならざる力を持ち、人々の役に立つ。だから尊ばれる。
だがもし、それが役に立たないのなら、人に害をなすのなら――

「そして私は、『オヤシロ様の生まれ変わり』、と呼ばれた。
 鬼の血をひく古手家の中でも、とりわけ神に近い存在と。
 聖なる存在として、誰もがかわいがってくれた。
 
 でも、今こうしてムラそのものが消えようというのに、
 幼い私の言葉は誰にも届かなかった。
 ダムなんかに負けちゃいけない、私達の場所を守ろう、そう言ったのに。
 
 笑わせないでよ。何が聖よ。何も導けやしない。
 導きたくても、誰も私の言葉なんて聞きやしない。
 私の『仲間たち』だってそう。
 何度も何度も警告しても、いつも無視して疑心暗鬼で最後は殺し合い。
 
 ここの人間は、みんなそう。
 そんな中で、先のことを『予言』する私なんて、恐怖の目で見られるだけ。
 やれ神の使いだヒジリだなんて綺麗に取り繕っても意味なんてない。
 そうよ、私なんて――」
 
――ただの、化けものだ。

羽入が見えたって、不気味がられるだけだった。
羽入が見えない母親にも疎まれた。
何がロイヤルストレートフラッシュよ。
手札切ろうにも、まわりに誰も切る相手がいなかったら意味ないじゃない。

「知ってるかしら? 私の血には鬼が流れている。
 そして、職を失いまつろわぬ民となったかつてのヒジリ、陰陽師たちも、
 鬼と呼ばれたそうよ?
 だとすれば、私こそ鬼。化けものじゃないかしら?
 誰にも助けられず、誰も助けられない、化けもの。
 
 だから私は、化けものらしく大人しく死ぬこととしたの。
 最期くらい悪あがきしないできれいに、ね。
 たまにはこういう死に方をする世界があってもいいでしょう。
 分かったら、とっとと――」
 

>「―――そう、そして今日は。その手役に私ってチートが入ったんだぞ。
> これで勝てないなんて、地球に客星がぶつかって真っ二つに割れるより有り得ねーよ」






――――え?





何かが崩れる音がした。
彼女は何を言っているの?
「私ってチート」?
彼女は、私を助けようというの?

鉄面皮が崩れる。
皮肉と笑みの盾にひびが入る。
心臓が早鐘を打って、苦しい。

チート?
確かにこれはチートだ。
彼女なら、どんな「人間」が攻めてきても、確実にそれを撃退できる。

相手が軍隊だろうと、千、万が攻めてこようと、それを引っくり返せる最高のカード。
そう、これは最高のチート。
彼女なら、あるいは?

――馬鹿なことを考えるのはよしたほうがいい。
頭がそう告げる。
けれど、一旦破れた堰は、音を立てて崩れ始める。
何年かぶりに感じる「期待」の感覚。
ああ分かっている、この後に来るのは「失望」以外あり得ないと。
けれど、けれど――!

>「―――逃げろッ!!」

思考を絶叫が切断する。
同時に浮遊感、ついで飛翔、最後に落下。
強烈な衝撃。身体を伝わる痛み。
全身が痺れる。

「か、はっ」

何とか肺から息を絞りだす。
状況を確認すべく目を開くと――押し寄せる硫酸。倒れている少女。
満天の星空は雲に覆われ、いつの間にか雨。
しかも、その一滴一滴が校舎の窓の桟を溶かし始めている。

「硫酸の雨? 物理法則さらりとガン無視なんて、さすがにチートは神様のお家芸ね。
 どう後始末付けるつもりよ、これ」

毒づきながら立ち上がる。……なんとか、体はまだ動くらしい。
と同時に、胸の中に失望感がこみ上げる。

あの少女も、偉そうな講釈を垂れておきながら、こうもあっさりボロ雑巾。
所詮こんなものか。
分かっていたはずなのに、期待は裏切りへの一本道だと。
それでもつい期待してしまった。
まったく、なんて道化かしら、私。

もっとも、ここにも硫酸の濁流は押し寄せつつある。

『あぅあぅ……梨花、このままでは保たないのです!
 あんな量、僕の結界じゃ防ぎきれないのです!』
 
羽入が悲鳴を上げる。
硫酸の雨は、羽入が結界で守ってくれていたらしい。
まったく、あんたも同じ神様のはしくれなら、このくらいなんとかしなさいって言うのよ。

「羽入」
『……梨花、まさか』
「それしかないでしょう」
『梨花、でもそれじゃ』
「やりなさい!」

倒れている少女の方を見る羽入に、私は一喝。
あんなものに気を使って、こんな終わり方はごめんよ。

『……分かったのです』

羽入が不承不承頷くと、稲妻が走る。
空中放電。神威の発現たる雷撃。
雲は親切にもあちらが呼んでくれていたから、たいした負担でもない。
昔、部活メンバーと勾玉争奪戦やった時に、調子にのったこの馬鹿が
『オヤシロサンダーなのです☆』とか言って稲妻落してたの、覚えておいてよかったわ。

とはいえ、威力としては大したものはない。
あくまで微弱な雷撃、人間でも痺れる程度だろう。
おそらく、あのミシャグジとやらには、毛ほどの痛みもないだろう。
それでも充分。
雷撃は地面の硫酸を次々に蒸発させ、私のところにまでは届かない。

もっとも、これの欠点は範囲がそうそう狭めないことだ。
当然、倒れている少女のところにも雷は落ちる。
稲妻に打たれた少女が、顔を歪めさせているのが見える。

たいしたものではないでしょうけれど、治りかけた傷口を稲妻が打つのだ。
たとえるなら、治りかけのすり傷に、レモン汁をいちいち刷り込まれるようなもの。
それは当然、痛いでしょうね。

ほら、無様。
私の痛みも知らずに、知ったような説教をするからそういう目にあうのよ。
おかげで、いらない期待まで抱いて、また失望する羽目になったじゃない。
そういうの、余計な御世話というの。知らなかった?

あざけりを胸の中に秘めて、私はゆっくり少女に近づく。
そして、部活でよく見せた、満面の作り笑顔で、こう言ってやった。

「じゅくじゅくビリビリで、かわいそかわいそ、なのですよ。にぱー☆」

621 名前:『蓬莱の人の形』藤原 妹紅 ◆zPhoEniXzw :2009/01/26(月) 23:51:36


 硫酸雨+落雷=世紀末。
 なんか予想以上に大事になってきた気がする。
 確かに酸の暴力とは拮抗出来てるけど、雷落として蒸発させるなんて発想は無かった。
 悪い手ではないが……硫酸はどんなカタチになっても物騒なシロモノだ。濃縮されれば
されただけ致死性は増すし、完全に水分を飛ばしたとしても強力な発火剤になる。だから、
蒸発させたとしてもまだ安心は出来ない。
 一番いいのは石造りの建物に逃げ込むことだが……あいにくとそんなものはすぐ近くに
見当たらない。これでは三分を待つなんて不可能に近い。いや、向こうとて誰かは知らぬ
が神を味方につけているのだから何とかなるかも知れないが、楽観が出来る状況ではない。
 そんなことを考えていると―――水に濡れた足音が。
 そして、

「じゅくじゅくビリビリで、かわいそかわいそ、なのですよ。にぱー☆」

 うわ、すげぇムカつく。
 声も出せないから―――いや、念話は脳がやられてないから大丈夫そうだ。まあ、頭を
潰されてたら即蘇生だったからどっちにしろ関係ないんだけど。
 とりあえずこの惨状から逃げもしない間抜けの頭の中へ直接声を叩きつけてやる。
 そんな余裕があったらとっとと逃げろっつーの/本気でそう思う。
 もちろん、負ける気なんて最初からない。考えてもいない。

『―――うるせーな。見た目ガキなのに無理して顔で嘲笑って心で泣いてんじゃねーよ、
一人前に。お前を巻き込まないようにするにゃコレしかなかったんだよ。いいからあと、
三分でいい。時間を稼げ。こちとら硫酸で脊髄焼かれたぐらいじゃ死にやしねーんだよ。
三分経ったらからそれまで保たせろ』

 ……沈黙。雨音だけが響く。さすがに言葉を失ったのか。
 なんかものすごい顔をされてるが気にしないでおく。見た目死人に頭の中で喋られたら、
まあ仕方ない。それでも、こいつは見た目よか聡いからすぐに我に返ってくれるはずだ。
 意識を自分に戻し―――硫酸の雨の中、全身に意識を集中させた。
 ぴくり、と指が動く。雨が当たるたびに火傷みたいなことになるのはきついが、神経に
届いてはいないらしい。つまり、雨だけなら修復中の神経系への損傷は無い。まだ勝ちの
目は十分にある。硫酸と電気で交互に虐待されてるのはなかなか辛いが、そもそも痛覚は
とっくに潰れている。ときどき電撃で筋肉が誤作動するくらいだ。
 だから別に大したことじゃない。
 こんなもの、数千、数万、数百万と死んできた私には大したことじゃない。
 

 ―――あと二分。

 正直動けないというのはじれったい。
 だからその分―――動ける瞬間に備える。
 必要なのは雲を吹き払うこと=少なくとも酸の雨を抑えるだけでも有利になる。
 そして、あのガマガエルに決定的な一撃を叩き込むこと。
 さっきの右ストレートも致命傷には至らない=恐らく通常の火力では止まらない。
 人間の限界を超えた火力でなければ、止まらない。

 式の再認―――緊急回避及び瞬間的な火力強化のための事前準備+法儀式済みの術理=
スペルカード。カテゴリ「不死」・「不滅」・「蓬莱」/いずれも理想的性能を発揮可能
な状況。ただし最後の一枚を除けば構造的に式が脆弱。相手の呪詛の量によっては自壊、
強制的にキャンセルされる危険あり。

 いずれも逆転の目が薄い手札。しかも今は動かせない。
 しかし―――速攻起動「でない」のなら、手は十分にある。

 唯一動く脳を限界まで活用―――「式」の構築/スペルカードそのものをこの場で作り
上げる+起動と活用のために必要な準備も行なう=ただ何も考えずに発動させたとしても
意味が無い。この状況を打破するにふさわしい形での反撃がベスト。
 使えるものは全て使う―――流れ出した血液に式をつけて動かす=陣の構築。この術は
本来の形で使用した場合、周囲に甚大な被害が起きる。弾幕として使う上では問題ないが、
そんな生温い術で倒せるとは思わず=被害を抑える+本来の威力を発揮させるための準備。
 紅い墨で陣を描く―――泥/硫酸/瘴気にも汚れない炎の紅。指向性を全て上向きに。
陰水の強い相は私で補う。起爆剤さえあればいい。後は地の底に眠る陽の火が全て仕事を
してくれる。天の牢獄と地の獄門を吹き飛ばす、理想の役割を。

 幸運なのがここが山がちの盆地だったこと。
 地の底には確実に「味方」が眠っている。
 龍脈を引き/地霊を呼び/火山を起す。
 天地+星辰+七曜+八卦。
 手足の代わりに意識でそれを掴む=操り続ける。
 意識しかない故、逆にそれらをより深く感知し、操作できた。
 はるか空の上から、大地を俯瞰するような感覚がある。
 まるで屍解仙のような気分だ。肉体の感覚と引き換えとはいえ、これは有難かった。
 構築終了まであと二分……いや、一分。
 大規模な術の割には圧倒的に早い。少なくとも復活までには間に合う。

『そら、奴が来るぞ、さっさと行け! お前が主役なんだ、まだ降りるんじゃない!』

 ―――だから、それまで保ってくれよ、望まぬ悲劇の主人公(ヒロイン)。
 もうすぐ台本ごとひっくり返してやれる。
 そして、気に食わない理不尽に一発を食らわせてやるから。



622 名前:名無し子猫:2009/05/12(火) 18:07:04
てすと

623 名前:名無し子猫:2009/05/13(水) 01:41:11
         /゙ヽ    __     ,...
         !;:..ヽ\ |● |   ,/'.,:|
         ';:,:..ミシ"''|r;;;;;┘;;''ぐ/.:. .;|
         ,}.:''~::;:;:;;;;」l;;;;;_;;;;:,;::ヾ、;.;.:.ミ
         [ ̄   ●  ´~"'''‐ ::;;`ミ
         };;;;:三;;: ̄ ̄~';;;;;- ...,,__ ノ
         } ゙てじハ:   ;'ハiり >;;;;:;;:ゝ
       ____ミ  ゙`"¨〉  '^"''":::::;;;;;;:ミ_
      _... -‐_.ニ‐: :丶_ノ: : :ニ二._千‐- 、
         '´ ,.o:''-.,,`ー'ー-- _,. ‐''"::(`丶    
     , -‐''"::::@:l:::l´゙゙'''''''~´ /::::::/:::`ヽ、__
      !:ヽ:::::::::::::::::l:::!       |:::::::i:::::::::/:::::::::`ヽ
     ノヽ:::::::::::::@:|::|      |:::::::|::::::::::::::::::::::_}
   /:::::::::`;:::::::::::::::l/ /`'ー-、 |::::::!:::::::::/´ 米 |
   /::::::::::::::|::::::::@::V/__鼎__/__|:::::|::::::::::!"´ ̄ ̄`!
  /:::::::::::::::::!:::l:::::::::::|::::::::::::::::::::::|::::|:::::::::|::::::::::::::::::::}
  ;'´ ̄`ヽ:/|::ノ::::@!:|ー‐rー┰―l::::|:::::::::}' ̄ ̄`ヽ;;」
 ;'    ,' |':::::::::ノ:::|--仄---|:::|:::::::::}      }

624 名前:◆mVOKem4Kv2 :2009/05/16(土) 13:22:03
テスト……

625 名前:名無し子猫:2009/10/08(木) 01:14:52
(&H6229) 戩
(&H6229) &# 25129;

TEST

626 名前:名無し子猫:2009/11/15(日) 02:15:36


627 名前:テスト ◆rX9kn4Mz02 :2010/02/11(木) 22:51:00
>>
                 De.
                 De.
                  De. 
                   De. 
                    De. 
                     De. 
                    De. 
                   De. 
                  De. 
                 De. 
                De. 
               De. 
              De. 
             De.
            De.
           De.
          De. 
         De.
          De.
           De.
            De.
             De.
              De.  
               De.              
                De.
                 De.                     
                  De.       
                   De. 
                    De. 
                     De. 
                      De. 
                       De.
                        De.

      其処に“破壊者”は存在した。   De. 
                           De.
                           De.
                           De.
       加速をするための加速で    De.
                          De.  移動をするための加速で、
                         De.
                        De. 破壊をするための加速で。
                       De.
                       De.De.De.De.
                           De. 
                          De.

                            De.
軌道を描いて生成され続ける紋章が     De.
                          De.
                         De.  彼を加速させ、昇華させ、光速化させる。
                        De. 
                       De.  上とも下ともつかない道筋。
                      De. 
                     De.  だが確実に届くべき前へと進む道。 
                    De. 
                   De.  其処に破壊者は存在した。
                  De. 
                 De.  元来た道を、風穴を抜け、青き星を臨む世界へ。
“物語”を壊す破壊者が、 De. 
                 De.    崩壊するエネルギーと同化した破壊者が。
                   De. 
                    De. 
                      De. 
        終わりを壊す破壊者が  De. 
                       De. 
                      De.    全てを台無しにする破壊者が。
                       De.  
              ガリバーの    De. 
                          De. 
                 ギガントの    De. 
                            De. 
            機械仕掛けの神の御許へ De. 
                             De. 
   今にも降り注がんとする炎の矢へ向かい、 De. 
                              De. 
        レティクルの神様に向かい、    De. 
                            De. 
                           De.   全てを救おうとする“結末”に向かい、
                          De. 
                         De.  本当の“機械仕掛けの神”の元へ
                        De. 
                       De.   メギドの矢より速く一直線に突き進む破壊者が。
                      De.  
                     De.   命尽きる瞬間まで光り輝く
                     De.
                     De.    流星のように
                     De.
 望み叶え給え  望み叶え給え De.ノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエタDe.エノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエDe.マエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナDe.タマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエDe.マエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエタDe.エノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエタマDe.ノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエDe.ゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
ノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエノDe.ミカナエタマエノゾミカナエタマエノゾミカナエタマエ
                        De.
                   『駄目だ』De.『そんな望みは叶わない』
                         De.
    ―――俺は破壊者だ。         De.  
                           De.      機械仕掛けの旋律が聴こえる。
  ―――悲劇で終わるヒーローにも、    De.
                            De.
                            De.  ―――悲運の末路に溺れるヒロインにも成れはしない。
                           De.
終末という名の救いを唱える旋律が聴こえる De. 
                             De.    ―――覚悟ならとっくに出来てる。
                            De.
                           De.    ―――壊す覚悟ならとっくに出来てる。
                          De.
 燃え尽きる結末に翻弄されるヒーロー De.   にもヒロインにも、最初からなる気はない。 
                        De.
                       De.     ―――だから、後は神様とやらの覚悟だけだ。
                      De.
                     De.     ―――機械仕掛けの終幕を繰る“物語”の覚悟だけだ。
                      De.
                       De.
“摂理”を壊し、“世界”を壊し、      De. 旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                         De. 旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                          De.  旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
    “必然”を、“帰納”を、“結末”を、   De.  旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                           De.            
                            De.   “物語”を破壊してしまう一撃が。
                             De.
  終焉を引き起こそうとする“破壊”を壊し    De.  終焉(メロディ)、終焉(メロディ)、終焉(メロディ)!
                              De.   崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)!
     生み出され生み出した“救い”を壊し    De.    結末(メロディ)、結末(メロディ)、結末(メロディ)!
                                De.    終幕(メロディ)、終幕(メロディ)、終幕(メロディ)!
       機械仕掛けの神という“絶対”を壊す    De.
                                De.               
終焉(メロディ)、終焉(メロディ)、終焉(メロディ)! De.
旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!  De.      崩壊を迎えながら、どこまでも  
終焉(メロディ)、終焉(メロディ)、終焉(メロディ)!  De.     前のめりに突き進む“破壊者”の一撃が。  
旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)! De.  
                              De.
                               De. 
 ―――破壊者に結末(物語)を          De. ―――打ち壊される莫迦げた覚悟、あんたにあるか?
                             De.
■■ユメノヨウニ                  De.  崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)!
     ナニモカモガ               De.   旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
  ■■キエテユク                De.  終幕(メロディ)、終幕(メロディ)、終幕(メロディ)!
    ■■コワクナイ              De.  旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
        キイテクレヨ            De.   救済(メロディ)、救済(メロディ)、救済(メロディ)!
         タダキエルダケナノサ     De.   旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                           De.   
                  『嫌だね、そんな救いはお断りだ』
                           De.   
                           De.   
   彼に“物語”はない。            De.   
   彼は破壊と再生のために生まれた者。 De.   
   全てを破壊し、全てを繋ぐためだけに  De.    生み出され、存在するもの。
                           De.
   そしてこの倫敦の“物語(結末)”    De.    を破壊するもの。 
                          De.
        彼は“]”。           De.     旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
        彼は“悪魔”          De.     旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!  
        彼は“旅人”。         De.     旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
                         De.     旋律(メロディ)、旋律(メロディ)、旋律(メロディ)!
        彼の名は――――――    De.
                            De.
                              De.     ―――俺か?
                               De.
                                De.     ―――俺は、
崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)、崩壊(メロディ)!  De.
救済(メロディ)、救済(メロディ)、救済(メロディ)!  De.
物語(メロディ)、物語(メロディ)、物語(メロディ)!  De. 
世界(メロディ)、世界(メロディ)、世界(メロディ)!   De.
                                  De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.
                               De.                                  
 


628 名前:◆DOLLmR5Q5A :2010/02/11(木) 23:15:55
>>627
てすと

629 名前:[-{}@{}@{}-] 名無し子猫:2010/08/16(月) 10:41:05
てすと

630 名前:◆YAGYUbJ766 :2011/09/02(金) 23:53:10
てすと

631 名前:名無し子猫:2011/10/26(水) 14:25:55
テスト。

632 名前:名無し子猫:2011/11/06(日) 02:54:14
さて、次は――何を起こして楽しもうか ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

633 名前:名無し子猫:2011/11/06(日) 02:54:57
                バシュッ
   ―――― ( ゚д゚)・∵.-×∵.  

634 名前:名無し子猫:2011/11/06(日) 02:55:54
――ぞぶり、ぐしゃっ

635 名前:<堕ちた天秤の騎士>ゲイナー ◆/GAynorYPA :2011/11/24(木) 00:51:12

>>

 数日前。某所にて。

 薄暗い部屋の中、姿見の前に一人の男がたたずんでいた。その男の体は鎧に覆われてい
た。銀、黄金、青灰色など数多の色に輝く色定まらぬ鎧を身に着けていた。そしてその胸
甲には、八方にのびる矢印で表される<混沌>の紋章が彫ってあった。

 彼の名は<呪われし公子>ゲイナー。<混沌>エントロピーに仕える邪悪なる公子。かつては並ぶも
のなき<天秤の騎士>でありながら、仕えるべき天秤自体を裏切るという罪を犯したこと
により、その存在を100万もの数に分割され、その自我も100万もの数に分割された
男。彼には顔が無い。彼には無数の顔がある。その顔は継ぎ目のない被面具に覆われ、他
者に見せることなど出来はしない。・・・・・・出来はしないはずであった。

 あり得ぬ光景がそこにはあった。決して外すことの出来ぬ被面具は、外してはならぬ暗
い黄色の羽根の付いた継ぎ目の無い兜は、あるべき場所ではなく傍らのテーブルの上にお
かれていた。

 鏡に映るは一人の男。黄金の髪と氷のような透き通った青い瞳を持つ整った美しい顔立
ちの男。ハンガリー風の美貌と魅力に満ちあふれた男だ。だがその口元には邪悪と呼んで
もいい笑みが浮かんでいた。

「おれはおれを認識できる。100万に分割され<崩壊した自我ゲシュタルト>は、ここに再び統合さ
れた。もはや鋳型よろいは必要ない。本来の姿、あるがままの姿をおれは肯定できる。」

 そういいながら、主観時間で数千年ぶりにあらわになった己の顔を、鎧に包まれたまま
の右手でそっとなで下ろす。

「おれは、ゲイナー・パウル・ザンクト・オドラン・バーデホフ = クラズナー・フォン・
ミンクト。混沌の僕でも法の奴隷でもない。<法>と<混沌>を支配し<宇宙の天秤>に
挑む、運命の公子だ。」

 暗い部屋の中、男が嗤う。呪われし己の運命を、この世界の理を、<宇宙の天秤>それ
自体を、男は嗤う。

 かくして虚ろな哄笑が暗い部屋の中に満ちあふれた。

636 名前:<堕ちた天秤の騎士>ゲイナー ◆/GAynorYPA :2011/11/24(木) 00:52:20
>>
>>

 墜落し炎上するメッサーシュミットMe323“ギカント”の中から、残骸を押しのけ鎧姿の
騎士が姿を現す。だがいかなることであろうか、業火の中から現れたというのに、その頭
頂からつま先までを隙間なく覆う全身鎧フルプレートは傷一つなく数多の色に輝いていた。そう、機体
を燃え上がらせる灼熱の炎も、すべてをなぎ払う爆風も、地形を変化させるほどの墜落の
衝撃ですらそのを傷つけることは出来ない。神の鍛えし<上方世界の鎧>は、物理法則
すらねじ曲げ拒絶する。

「・・・宵闇の結晶と同化しただと。世界の半分をその身に宿したようなものではないか」

 姿を現した<呪われし公子>はうめくようにそうつぶやく。同化した力をどの程度使い
こなせているかは不明だが、その程度によっては神々や宇宙そのものに近い力を持つこと
になる。野放しにすることなど出来ようはずもなかった。

 ゲイナーにとってアモンの目的自体はどうでもよかった。終わりのない夜を全世界に飛
び散らせようが、全宇宙が朝のこない夜に抱かれようが、その結果<宇宙の天秤>の均衡
が崩れ全世界に終末が訪れようがかまいはしなかった。むしろ望むところだ。・・・問題
なのは。

「それでおれが死ねるのか、ということだ」
 
 死ねるのならばそれでよい。だがそうでないならば。世界の片翼にすら彼の望みを叶え
るだけの力がないのならば・・・。

 <呪われし公子>はわずかな時間考え込んでいたが、結論を出したらしく懐から小型の
端末を取り出し片手で操作する。それは数秘機関と人工精霊オートマトンを搭載した高機能型の携帯電
話だ。クロックワークス社の最新機種、オレンジの愛称で呼ばれる製品をアーネンエルベ
のラボが大幅に改造したものであった。

 タッチパネルを操作し、携帯を耳元に当てるが応答がない。かける相手を次ぎ次ぎに変
えるが結果は同じだ。大幅な霊波障害がおこっているのか、さもなくば・・・。いずれに
せよ連絡は取れなかった。ほかの手段を試したがいずれも同じだ。命令系統は完全に崩壊
していた。こうなってしまってはもはや軍とはいなかった。軍事的作戦などとれようはず
も無い。動くとしても、個として動くしか無かった。

「だからといって放っておくわけにもいくまい」

 放っておくなどということは、できようはずも無かった。そう、そんなもったいないこ
となど出来るはずもない。世界の半分に匹敵するほどの力、見逃すには惜しすぎる。何と
してでも己のものにせねばならない。勝算は無い訳ではなかった。敵は神々に等しいが、
手持ちの札をうまくきれば、勝ち目の無い勝負ではなかった。

「ならば、いままた、神に挑むとしよう」

 <呪われし公子>はそうつぶやくと、携帯電話を懐に戻し、この城にあふれる膨大な魔
力の中枢へと向けて足を進めて行った。

637 名前:閑馬永空:2011/11/25(金) 01:26:53
 
 その時、私はひとり座していた。
 待っていた。誰とも知れぬ対手(あいて)を待っていた。
 
 
 
 其処は奇妙な城だった。
 袖を通す衣服の意匠は年経るごとに様変わりし、その都度据わりの悪い思いをしてはすぐに馴
れるものだが、その時感じた違和感は多分そう簡単には消えないだろう。
 機能的な暗いグレーの野戦服と軍帽、それに黒い軍靴は、美麗と退廃を信じ難い規模で融合さ
せたこの巨城の造りとは、存在自体が絶望的なまでに合っていない。
 もっとも壁には大きな亀裂が走り、柱の幾本かは倒れ、豪壮なシャンデリアは落下して臓腑の如
き様を晒していたが。
 
 私は大型トラックが二列横隊で昇ってゆけそうな、大階段の下の方に腰を下ろしていた。愛刀ひ
と振りを抱くようにして。
 
 
 さて、どこから話すか。私が過ごして来た日月を語ろうとすれば、それと同じ時間がいる。
 ――では、ここからにしよう。
 
 「その時」から半世紀ほど前だ――二度目の世界大戦の最中、私は大日本帝国陸軍に所属して
いた。
 正確には所属は変わったばかりだった。事もあろうに、ドイツ武装親衛隊(SS)へである。
 内々にドイツから打診された特務を果たすべく、陸軍のはみ出し者が屑と滓を掻き集めてでっち
上げたこの部隊は後世では――正史に記載はないが――東亜総統特務隊≠ニ呼ばれる事に
なる。便宜上、軍籍をSSへと移した私達はドイツからの要請を着実にこなし、シベリア鉄道を爆破
し、イラン鉄道を爆破していたものだった。
 頬に向こう疵のあるあの中尉はどうなったか。それに別の貧相な眼鏡は――名前が何といった
か思い出せないが、それまで後ろから撃たれず済んだのがふしぎな位のろくでなしだった。いずれ
どこかで野垂れ死んだろう。
 
 まあ、人の事は云えないし、彼らはもう関係がない。
 兎に角、私は、私だけは今度はもっと胡乱な部隊に編入されたのだった。狂った少佐≠ェ率
いるあの大隊≠ヨだ。
 
 
 私は、常人とは些か異なる体をしている。
 それまでは何とか誤魔化し、隠し通して来た体の秘密が、任務中の戦場で遂に露見した。その
報告は一応の所属元であるベルリンへも伝わったらしい。
 これがさる連中の興味を引いた。
 連中は――これまた表の歴史にはその名を留めないが――最後の大隊≠ヘ、私の身柄を
自組織へ抱え込んだ。
 そして私の体を弄くり回した。それは噂に聞くメンゲレ悪魔医師もかくやの方法でだった。
 
 吸血鬼の兵士を製造し、武装化して運用するという狂気の沙汰を遂行していた連中には、私の
ような存在は格好の実験材料だったのだろう。
 逃げようとしなかったのは、独力では到底叶わなかったという事情もある。言い訳でしかないが、
少佐≠ノ付き随うあの大尉≠ヘ恐ろしい。あれを斃すのは少なくとも私だけでは不可能だ。
 ただ――連中は、私が望むものだけはきちんと与えてくれた。
 以来何十年、私は連中に首輪をつけられた地位に甘んじる事になる。

 ヴェアヴォルフなる泡沫(うたかた)の肩書きを被せられ、私はある程度の単独行動を許された。
ほぼ全てが吸血鬼で構成される軍組織では、私のような異能を持つものはまさしく異物だ。適切
な部隊運用を阻害しかねない。それ故の処置だった。
 どうせ何処にいようと、仮寝の宿に過ぎない。そんな嘯きは引かれ者の小唄に過ぎず、もっと忌
々しい事には単なる事実だった。
 

638 名前:閑馬永空:2011/11/25(金) 01:28:32
>>637 続き
  
 今回のファシナトゥール制圧作戦において、私が大隊≠ゥら命じられたのは、だから単独での
支援行動だった。
 内実はあの魔女¢蜊イらへの監視だ。同じ呪われた旗の下、死の舞踏(トーテンタンツ)を踊
り続けている癖に、彼らは一枚岩という訳にはいかないようだった。まあ組織などというものの在り
様は、何時でも何処でも大きく変わるものではない。
 空軍の侵攻に先んじて、私は目標である針の城へと単身潜入を試み――
 
 
 そしてメッサーシュミットの戦団が撃墜され、天地で盛大な火柱をぶち上げる様を、黙して眺めた。
 
 
 奴の名はアマンといったか。いや、ラモだったろうか?
 そのどちらかなのは間違いないが、悪魔的笑いと悪魔的動きをふんだんにちりばめた奴の宣言
は、どういう理屈かは知らないが私の目と耳にも届いている。
 大戦この方、最もくだらない冗談を聞いた思いだった。――因みに第一次の方だ。二次ではなく。
 
 あの宣言を耳にした私は、一服して落ち着こうと軍服のポケットを漁った。ここ百年、喫煙の習慣
は特にない事を思い出して止めた。
 ゆっくり瞑目した。
 私は動転していたらしい。無理もないと自分を慰めたが、わけのわからない虚しさがあった。
 
 
 そうして、私は城内に入り込み、大階段に腰掛けることにしたのだ。
 周囲は静かだった。時折、天井や壁の一部が落剥する乾いた音が響くばかりだ。
 火の手もまだここまで達してはいない。先刻、あれほどの破壊があったばかりだと云うのに。
 ふと、懐から小型の無線機を出す。耳に当てる。
 先程と変わらず、聞こえるのは雑音だけだ。放り捨てた。からからと階段を滑り落ち、ひび割れた
床に転がる。

 もう我が軍は軍の態を為していないのは明らかだった。ファシナトゥール制圧作戦は、純軍事的に
は失敗したのだ。
 
 何モンだかが号していた、クリスマスより先のナイトメアだの何だのという目的は、そんな事は私に
はどうでもよかった。此岸も彼岸も灰燼に帰そうが、別段かまいはしなかった。むしろ望むところだ。
 問題なのは――そう、問題なのは誰がいるのかという事だ。私の対手となるものがいるのか如何
か、という事だ。
 
 
 そっと刀を引き寄せる。
 私は待つ事にした。大隊≠ェ与えてくれた餌を貪るとしよう。
 人殺しと、戦場だ。
 それはある。確かに此処にある。
 

639 名前:不確定名:不気味な人影(M):2011/11/25(金) 03:51:00
数週間前――南米某所

二本の爪が振り下ろされた。爪は男の顔に食いこみ、血が噴き出した。
ゆっくりと、ごくゆっくりと、爪が男の顔を引きはがす。水夫の男は苦痛に絶叫した。指が鼻をむしり取り、別の手が喉にかかる。
すさまじい力が悲鳴を押し殺し、頸動脈を破裂させた。
ブラジル娘は血だらけの壁にぐったりともたれた。見えない目をショックに見開き、神経は苦痛を感じているのだが、
脳は反応を返すことができない。
喉にかかった手が肉を引きちぎり、血管と脊髄を露出させた。血のにおいと暖かさに引かれて影たちが押し寄せてくる。
別の影がかがみ込んだ。目が赤々と燃えている。爪がきらめき、ずたずたになった頬の肉をむしり取った。
拳の骨がむき出しになった三本指の手が目玉を探り、次の瞬間には葡萄を摘むように、指が目玉をえぐり出していた。

男娼の若者は口を開いてうめき声を上げ、激しく身震いした。頭ががくりとのけぞり、引き裂かれた喉が月の光にさらされる。
破裂した動脈からはまだ血が噴き出して、血溜りを広げつづけていた。
と、真紅の目をした影たちが男に群がり、唇と舌を貪欲に顔と喉を押しつけた。歯が肉を引き裂き、骨に食いつく。
影たちの重みで男は押し倒された。
片手が上がったもののむなしく空気をかくばかりで、やがて指が曲がり、力が抜けた。
部屋じゅうに死体をむさぼる音が満ちる。歯と骨がぶつかる音、傷口の血をすする音、肉を食いちぎる音。床が血だらけになり、
そこに腹這いになって血を舐める者までいる。
甘美で強烈な血の味に狂乱しているのだ。影たちは死体をばらばらに引き裂きはじめた。骨を噛み割って髄と体液をむさぼる。
その動きはますます速く、狂気の度を強め、せわしない息遣いが部屋の中にあふれた。
元モデルだとかいう金髪女は、倒れたまますすり泣いている。影たちは押しのけあいながら傷口に殺到し、
一つの傷をむさぼりつくすと次の傷に群がった。
押しのけられて怒りの叫びを上げる者もいる。新しい桶からワインを汲みだすように、次々と新しい傷をつけては体液をすする。
饗宴はせわしなく、貪欲に続いた。肉を引きちぎっては噛みしだき、最後の体液まで絞り取ろうとする。

――そのときドアが開いて、部屋中が静まり返った。寒気がドアからバーの中へと広がってゆくようだ。
飲食の音がとだえ、港の船のエンジン音や、遠い霧笛さえ聞こえそうなほど静かになった。
固い木の床にブーツの音が響く。
コリンが外から入ってきた。ほかにも二人、いっしょに入ってきた男がいたが、今は艦長の背後に控えている。
コリンはバーの中を見渡し、乗組員の顔を一人ずつ順に眺めていった。

「ハイル・ヒトラー…」
艦長はブーツの踵をかちりと合わせ、ナチス式に右手を伸ばして敬礼した。全員が立ち上がり『ハイル・ヒトラー』とぎこちなく唱和する。

640 名前:不確定名:不気味な人影(M):2011/11/25(金) 03:53:30
顔の中で、目だけ唯一生気を保っていた。
その目は落ち窪み、しぼんだ頭に埋まった邪悪な溝のようだ。
かつて、その幾時代か前、この目は狼のように鋭く、栄光に満ち、戦闘の炎を宿していた。
鷲の嘴のようだった鼻は腐り落ち、今はただの孔となって、その中に全体が呑みこまれてゆくようだ。
Uボート士官帽の下の黄色い髪は、その形の崩れた頭蓋骨にわずかばかり張りつき、
薄く開いた口は笑顔のつもりなのだろうか…折れてギザギザになった歯が店の照明に輝いた。
黒い手袋をはめ、雨に濡れた暗褐色のコートを肩から羽織っている。
その襟には騎士十字章が輝いていた。

「わたしがヴィルヘルム=コリンだ…」
艦長の声は想像したよりもずっと静かだった。
「なるほど…」

彼はふたたび部屋の中を見まわした。燃えるような目を細めて見つめられ、誰もが背中に氷を押し当てられたような気がした。

「これがわたしの乗組員か…」
いっしょに入ってきた二人のうち一方に顔を向け、
「ゲルト、出航のたびに乗組員の知能が下がってゆくな。まあ、すぐに経験を積むことになるが……」
副官は小さく唇を動かして微笑んだ顔から黴が落ちる。艦長は乗組員に注意を戻した。

「すぐに経験を積むことになる。戻ってきたとき、諸君らの何人かは老練な水夫になっているだろう。
 死ぬ者もいるだろう。英雄になっている者もだ。だが、臆病者は一人もいなくなっている」
彼はしばらく部下をじっと見つめ、見つめられた男は居心地悪げに身じろぎした。

「諸君の中には、ほかの艦でわたしが指揮した者もいるし、まったく初めての者もいる。だが、わたしが求めるのは簡単なことだ。
 ドイツの旗のもとで軍人として最善をつくし、命令には無条件で従うこと、それだけだ」
喰屍鬼は血の滴るブラジル女の乳房を上げた。コリン艦長はすぐさま動きに気づき、じっと水兵を見つめた。
喰屍鬼はたまらず女の肉片を唇から離した。

「われわれはドイツが造り上げた最高の軍艦に乗ることになる。そしてわたしの指揮下にいる限り、諸君は一人一人が軍艦の重要な部品だ。
 諸君は艦とともに呼吸し、艦とともに揺れ、腹の底で艦の震えを感じ、艦のことを愛人のようによく知ることになるだろう」
コリンは両手を椅子の背に置いた。黒い手袋に包まれた指は外科医の指のように長くしなやかだ。

「今夜いっしょに騒げなくて残念だが、わたしは代行――…否、少佐殿に呼ばれている。諸君だけで大いに楽しみたまえ。誰と何をしても構わん。
 ただ、これだけは言っておく。出港は明日の夜明けだ。点呼に遅れた者は、わたしの前で申し開きしてもらう。わかったな…」
彼は手を手を伸ばしてテーブルの上の太った鼠を取り、握り締めるとその血をグラスに半分ほど注いで、乾杯するようにグラスを上げた。
歪んだ、悪魔のような顔が血の海に浮かんでいる。
「諸君、乾杯だ…」
コリンがしわがれた声で言った。
急いでグラスが満たされ、無言で差し上げられる。

「――よき狩りに」
艦長は一息にグラスを空け、テーブルに戻した。それからふり向きもせずに、二人の士官を連れて、バーから出ていった。
ブーツの足音が街路にこだまする。
部屋の中では沈黙が続いた。やがて誰かが小さく声を出し、ゆっくりと活気が戻ってきた。


金髪娘の悲鳴が木霊した。

641 名前:不確定名:不気味な人影(M):2011/11/25(金) 03:54:48
――そして現在

月の黄色いいびつな円盤が雲に隠れたかと思うと、黒々した海面に雲の切れ目から再び光が降り注いだ。動かない月のまわりで、雲は次々と形を変えてゆく。
まるで生あるもののように、渦巻き、ちぎれ、また一つになる。
軟体動物のようなその形は、まず空想の怪物の口となり、悲鳴を上げる人間の顔に変わり、やがて肉の落ちた骸骨になって風に吹き散らされていった。

針の城の周囲を覆う巨大な"水流"…魔術により形成された巨大な"水界"に覆われていた。その光景はかつて古代人が空想した水盤の上にある世界に酷似している。
やがて城から少し離れたあたりで海が割れはじめた。海水が白く泡立つ中、狩人が姿を現わそうとしている。
まず潜望鏡が海面に突き出し、多角形の司令塔がそれに続き、最後に巨大な船体が浮上してきた。海水の流れ落ちる船体はぎらぎらと輝いて見える。
Uボートは獲物に向けてまっしぐらに進む……。夜の船(ナイト・ボート)、海の底にある墓から甦ってきた船……

「敵の悪魔(ファイントリヒ・トイフェル)……」
髑髏の艦長は囁く、最後の大隊 喰屍鬼海軍 旗艦"ゼーガイスト" ファシナトゥール制圧において彼らが命じられたのはあくまで後方支援だった。
が、今その状況は大きく変わろうとしている。
そう…これは戦争だ。1942年当時のままの、戦争なのだ。彼らにとって、時は止まっていた。
海底にいるあいだ、彼らの目的はたった一つだけだった。反撃すること。彼らは怒りと憎悪を半世紀ものあいだ燃やし続けていたのだ…
その日が来るまで彼らは無限に歩き続けなければならない……

――そう、今その好機がやってきたのだ。


(現在、魔導書 水神クタアトを用いた儀式魔術によってファシナトゥール周辺に巨大な"海"が発生、術者は死亡。
 ヴィルヘルム=コリン艦長以下、喰屍鬼海軍は作戦行動に入る 作戦目標は友軍の支援と、針の城への砲撃。無線連絡があればどこにでも攻撃する!)

642 名前:◆.TJiJWx/Es :2011/11/25(金) 21:50:47
てすてす

643 名前:妖煌帝オルロワージュ:2011/11/26(土) 03:53:44
ファシナトゥールは陥落し、妖魔の君とその側近は無惨にも斃れ果てた。
闇の核は曝かれ、偉大なる刺草の城は最早、形を成すだけの骸に過ぎない。

だが、それはこの幽冥にとって本当に初めてのことなのだろうか?

今の妖魔の君は誰に取って変わった?ならばこの城の主は誰か?
その蒼き血の源流は果たして誰か?果たしてその君は本当に死んだのか?

それは正当な後継者ではなかった。そもそも後継者など望んではいなかった。
だが、彼は心の底で望んでいたのかもしれない。この終わり無き夜を変革する者が現れることを。

それは、かつて想った寵姫を追っていた。それだけのことだった。
だが、望む望まぬにかかわらず運命は輪り出した。もはや、誰にも止めることはできなかった。
馬車は少女の命を奪い、気まぐれか、はたまた必然か、妖魔の君はその少女に血を与えた。

巻き込まれた少女は運命に抗い、それはいつからか大きな渦となった。
そして、数多の運命を呑み込み、運命を受け入れた少女は先帝を淘汰した。
世界の果ての薔薇の間で革命の鐘は鳴り響き、少女は新たなる妖魔の君となった。


だが、彼女の生存戦略は本当に正しかったのだろうか?
果たして、世界の果ては本当に潰え、革命は為し遂げられたのだろうか?


答えはまさに今ここにある。彼女は斃れた。彼女は世界を革命できなかったのだ。
時代が今代の君を否定したように、新たな君の簒奪もまた時代が認めることはない。

───── ならば、真たる君主は誰なのか!

そして、夜の扉が開き、対の光が甦る。それは、かつて妖煌帝と呼ばれし魅惑の君。
その問いに答えるかのように、ファシナトゥールの嘆きに応えるように。
在りし日の輝きを纏い、今ここに再び、闇の支配者、裁きの主が舞い戻る。

最後の望みはここに望まぬ形で果たされる。

───── 宝箱に残っていたのは果たして希望なのか、それとも絶望なのか。

それはこの幽冥の魔界、ファシナトゥールの闇ぞ知る。

644 名前:デッドプール:2011/11/27(日) 04:09:14
かんっぜんに、パーフェクトに誰も見てねえよここ。
なんでここ選んだの?
 
『こっちに聞かれてもなあ』
 
まぁいいさ……。
ここが俺たちの決着を付ける――聖域(サンクチュアリ)だ――
 
『あ、なんか毒されて来てる』

645 名前:レン ◆Murder/Kq6 :2011/11/27(日) 04:14:01
>>644
 
「もはや語る言葉なんてものは必要じゃ無いだろう――」
 
 生まれたての小鹿のようにプルプルと震えながら、囁く。
 もはや声も張れない程度には弱っているらしい。
 
「極死・七夜―――――」
 
 投げられたナイフの勢いは弱く、跳躍はホントにそれで頑張っているのという有様。
 視ていられなかった。
 
 頬を伝う水。
 泣いている?
 
 いいえ、冷や汗です。
 

646 名前:デッドプール:2011/11/27(日) 04:18:12
>>645
 
望む所だ、行くぜ!
デッドプール様のLv3ハイパーコンボで即昇天キメてやる!!
 
『ねえ』
 
プップッピ……なんだよもう盛り上がって来たとこなのに。
 
『君のLv3ハイパーコンボ、カウンター技だよね』
 
オーウ、ゲージ三本無駄、に、した……。
あ、ヤバイ。なんかヤバイ。
生きる望み的な物失って来た。
 
俺ちゃん、もう、ダメかもしんない……。
 
『え、欝死?』
 
墓は……海が見えてヒマワリが咲いて4LDKで駅近くて築五分で……

647 名前:レン ◆Murder/Kq6 :2011/11/27(日) 04:23:48
>>646
 
 かくして、この馬鹿げた争いの幕は閉じたのだ。
 一人は跳躍不足で頭からまたもや落ち、頚椎を損傷。半身不随。
 一人は喚き散らす事無く、欝に塗れて。
 
「―――――虚しい、戦いだったわ」
 
―――――殺す事を、強いられてきたんだ。
 
「そんなダイイングメッセージってアリなのっ!? てゆーかそろそろ締めさせなさいよ!
御仕舞にさせて!助けてオジサマ!まだ凄惨な殺し合いの方がマシだわ!」
 
 

648 名前:デッドプール:2011/11/27(日) 04:25:55
>>647
 
あ、じゃあ終わろっか。
 
 
はい、お疲れサーン。
俺ちゃんも何か眠いのと笑い疲れでヤバイ事になってきたわ。
ベッドにダイブしてぐっすり寝るよ。
 
バイ・バイ・ベイビー!
 
 
(デッドプール・退場?)

649 名前:名無し子猫:2011/11/27(日) 12:33:06
>>347
 
「止めろって言ってんのが解らねえのか――このバカ!」
 
 種族特性で、ミシェルは包帯男が纏う魔力量を推し量れていた。
 対峙した時点では解らなかったが、今なら理解できる――自分達とは、否、他の誰とも次元が違う。広場で踊るあの魔人は、人
のカタチをした恒星だ。
 膨大なエネルギーを放射し続けながら、その運動は際限なく加速していく――怪物と形容するにも生温い。この街で怪物を見る
ことは難しくないが、なら――怪物を見慣れたミシェルが畏怖に畏怖を重ねても足りないほどの恐怖を覚えるこれは、一体なんと
呼ぶべきなのか。
 
「あの風は……くそっ、想像でしかないが、恐らく世界の前提を書き換えてやがる、、、、、、、、、、、、、、。プランク定数レベル以下から、量子力学的な実
体の根本を……この世界って絵柄を、時間と空間ごと丸ごと再描画してやがるんだ。……俺が教授に死ねと思ったら本当に死ん
だ――馬鹿言え、それじゃ魔法のランプドッキリじゃねえか。呪詛だとしたら世界を丸ごと呪うような極め付けだ。こんなことができるのは、
本物の――」
 
 魔王くらい、と零すミシェルに、同僚の怒声が重なった。
 
「――じゃあ、お前の気まぐれな妄想にイチイチ魔王様が反応したってのか!? っざけんな馬鹿! どっちにしろ、あいつを殺さ
なきゃこのフザけた事態は収まらないって事だろ――」
 
 だから、殺せると思っているのか。
 言外に視線で投げ付ける非難は、魔人が何を考えているか解らないからだ。
 超高位の魔術師が気まぐれにでも敵意を向けてきたらどうなるのか――そんなものは、想像するまでもない。
 
「――銃弾は、効くかもしれないだろ」
 
 睨み付けるミシェルに、敵愾心すら混じった視線が返る。恐怖と恐慌をカクテルされた同僚は、脅威の排除しか現状に残された
手段がないと確信しているようだった。
 ……確かに、高レベルの魔術師であっても物理的手段による暗殺が有用な場合はある。
 普段から魔術的な対策で自分を防御する魔術師は、物理的な攻撃に自分が害される、という状況を軽視しがちだ。位階が上が
れば上がるほど肉体と精神の繋がりが希薄になる魔術師は、肉体、というものに自分が縛られていることを殊更嫌悪し、魂の研
鑽に全力を注ぐ。それ故に、奥義を究めたマギがライフルでヘッドショットされて暗殺された――という話が実際に転がり込んでく
ることもあるのだ。
 しかし、それは可能性の話だ。眼前の標的は、これまでに殺された『大魔道士』の魔力を全て掻き集めたところで遠く及ばない
魔人である。比較すれば絞りカス程度の魔術師を暗殺した手段が通じるのかと言えば、どうしようもなく怪しい。
 まるで釣り合わないリスクとリターンだ。
 止めろ、と繰り返すミシェルに、同僚が侮蔑したような視線を返した。
 
「あれでも俺達の師匠だったんだ――冗談でも、俺はあの人に死ね、なんて考えるお前とは違う。いい加減にしろ、腰抜け、、、、、、、、、、、
 
 その瞬間、憎悪ノイズが脳裏を埋めた。
 お前こそ何を考えてる――死ぬなら、勝手に死ね。
 そして。
 視界の隅で、魔人が動いていた。
 黄金の銃身がミシェル達に突き付けられる。
 声を上げる間もなかった。
 碧の風が吹いた。
 ミシェルと睨み合っていた同僚は、呆然とした表情で両手を見詰め――直後、その銃口を自分の口内に突っ込んでいた。
 発射された強化粒弾は、伯爵級どころか男爵級にも満たない同僚の耐久力を易々と上回った。
 頭部を失った同僚の躯は、ミシェルに向かって数歩よろよろと歩み寄ると、支えをなくしたように胸に倒れ込んできた。
 友人は勝手に死んだ、、、、、、、、、
 ミシェルの願いは叶っていた、、、、、、、、、、、、、
 スプリンクラーのように血を吹き上げる胴体越しに、黄金銃の男の姿がある。
 包帯に覆われた魔人の顔――その瞳が、穏やかな笑みに満たされたような気がした。
 

650 名前:『道化』ケフカ ◆AAo1qoPdKCCx :2011/11/27(日) 17:25:04

                    異説 〜知られざる物語・その終焉へと至るもの〜




次元の狭間に浮かぶ『竜』が、狭間より下界を垣間見る。

常闇の世界に渦巻く混沌は、更にその様相を加速させていた。

既に始まりつつある崩壊の序曲。

勢いを増し続けているそれは、早くも終章に向かおうとさえしていたのだ。

願いも、狂気も、策動も、暴虐も、祈りですらも。

全てが終わりを迎えるべく、終焉にして最高潮の瞬間へと到達しようとしている。



―――これならばたとえ『駒』が失敗しようとも、『力』は手に入ることだろう。



巨大な力のうねりを感じ、世界の崩壊による『力』の開放を前にして―――――

飢えたる『神たる竜』は、静かにその目で滅びゆく世界を見続ける。

その目には、確かな歓喜の色が浮かんでいた。



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