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■ 月下の蜘蛛は露となり―――それでも彼女は笑うのか?

1 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 22:32:070
 取り敢えず、即席だがこれでよかろう。
 あまり見ていても面白いものじゃない。
 部外者の立ち入りは、基本的にはお断りだ。





   ―――――かくして惨劇の幕は上がり、

                      月の降る夜、

                           誰もが泣き笑う―――――

2 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/08(木) 22:52:200
 うん、立ててくれてありがとね。

 それじゃー、まずはどうしようかな。
 場所と、状況かしら。

 

3 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 22:56:220
 さてと、それじゃあ少しだけ建設的な話をしようか。
 ま、詰まるところ『俺』でいいのかというコトだね。

 オマエの原典は知っているし、なによりあの傍若無人でありながら理路整然とした弾幕は心得ている
だけに、スペックの違いというのは十二分に心得ている。しかも―――その『能力』は中々に厄介なもの
でね。舞台を整えたとしても、五分に持ち込めなくしてしまう鬼札だ。
 その辺りは互いの空気の読みようでなんとかなるが―――はたしてそれがオマエらしいのかは、聊か
疑問なところだ。

 使える手駒を晒してしまってもいいんだがね。俺の場合はそれが地雷の起爆装置と直結してしまって
いるから―――解答を待ってからかな。
 いやまあ、周知の事実に近いとは心得ているが―――マナーとして、ね?

4 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 23:04:290
 で、だ。もし『俺』が相手であると仮定した場合、森――或いはビルの林立地帯が望ましいかな。
オマエは飛べるかもしれんが、俺は飛べないんでね。多少の小賢しさは必要というわけだ。
 森であれば地上戦に引き摺り込めばいいし、上から虱潰しに叩くとしても深く広大な森であれば
徒労に終わる可能性とて高い。後者ならば、ビルを足場に三次元的に立ち回ればいい。

 加えて――舞台を森とするならば、博麗の社の付近というコトにしてしまえば、オマエがふらっ
と出てくる状況と言うのもありえぬ話ではないし、俺の方でも『里帰り』なんて安い理由付けができ
るんでね。街なら街で同様なんだけどさ。

 思いついた限り、俺がオマエに匹敵する状況を作るには、こんなところだろうか。
 使い魔の手を借りたっていいんだが――いまいちこちらは把握していなくてね。整合性を求めら
れると、かなり危ういんだ。

5 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/08(木) 23:13:280
 ん、そうね。こっち飛び道具が反則レベルだし、多少は制限あったほうがいいわよね。
 で、場所だけど……神社のそばだと無敵巫女が出てくる可能性があるから微妙かな。

 となると、私が外に出向いてあなたに出会う、って形がいいかも。
 場所はビル街―――だけど、森での戦いも面白そうだから、両方取っちゃおうかしら。
 ビル街のそばにある山林の向こうに、幻想郷が結界を張っている、って感じかな。
 それで、私は幻想郷から飛んでくる、ってところかな。

6 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/08(木) 23:20:360
 あ、そうそう。
 お相手はもちろん、貴方で、ね。
 手駒についてはまあ、またあとで。

 それで、こっちに質問とかある?
 出来る範囲でなら答えるよ?

7 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 23:26:320
 迷ったならば二つ取る、か。中々いい判断だよ、オマエ。
 となると、だ。街のほうで出会って森へ、が賢明な判断かな。森で見つけると言うのは聊か偶然に
頼りすぎだしね。
 森で虱潰しに撃たれたからビルへと駆けるほうが自然な気もするんだが―――どうかな、価値観
の違いかもしれないな、こればかりは。

 俺が森へ向かう理由は―――作ろうと思えば作れるな。
 どちらを先に持ってくるとしても俺は問題なく動けるから、後はそちらの好みかな。

8 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/08(木) 23:27:350
 なに――そちらに関しては問題ない。
 これでもそこそこに資料を集めていたからね―――理由は、聞かないでくれ(何

9 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 00:08:260
 うん、聞かないでおく(何)
 人のことを根掘り葉掘り聞かないのもレディの嗜みだしね。

 で、そうね……うーん。
 とりあえず街で出会って、そこで少し遊んで、森に移動。
 その後は展開次第でどっちに移動してもいいかな。
 あんまり多いと大変だけどね。

 こっちは「退屈だから勝手に外に出た」で理屈付けは済んじゃうわね(何)
 だから、うん、わりと融通はきくから。
 そっちにも結構合わせられるかも。

 ―――こういう形の大戦は初めてだからちょっと勝手が分かりづらいかな。
 お祭りは勢い任せでも良かったんだけどねー。
 うん、だから、リードはお願いしますわ、なんてね。

 あ、じゃあ大丈夫かな? 私の方の資料とか。
 なら、うん。なんとかなりそうね。

10 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 00:15:270
 さて、それじゃあ大筋が決まったところで、導入でも入れるとしようか。
 暫し待っていてくれ―――と、言いたいところなんだがね。俺の活動限界も近いコトだし、先に
休んでいてもらっても結構だ。
――――ま、三十分もあれば書き上げて見せる自信はある。なにかで暇でも潰しておいてくれ。

11 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 00:18:230
 うん、分かった。のんびり待ってるね。
 急ぐ必要はないからね。夜ならこっちも十分時間が取れるし。

 それじゃ、リードはお願いね。

12 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 00:49:390
 空は遠く、月は天を手中に収めんばかりに輝く。

―――――紅く。
―――――赤く。

 空に浮かぶ大輪の華は見るものを狂気に誘い、死者は狂喜乱舞し現世へと舞い戻り、果たせぬ約定を
悔いてか儚んでか喚き蠢く。

「やれやれ―――――折角自由の身を手に入れたんだが、長く染み付いた習性は拭えやしない、か」

 アスファルトを打つ靴底の音は闇夜に紛れ、響くコトなく霧散する。
 これも、長く染み付いた習性だが忌避するものではなく、むしろ喜ばしい異能であるコトは事実であり夜
の街を闊歩するには非常にありがたい。

 ほら―――――こんな風に。

 音もなく手にしたナイフは前を歩いていた男の背中に突き刺さり、突き通し、傷口を抉って―――死に
至らしめる。その傷口からはゴボゴボと蛇口の壊れた水道のように、今夜の月と勝るとも劣らない紅い
血液を零し、水溜まりを作り上げる。
 男はその水溜りを踏んでようやく自分の”死”に気付き―――悲鳴を上げるまもなく解された。

 なんと甘美な―――”死”
 なんと優雅な―――”死”
 なんと無様な―――”死”

「で、今夜の目的はなんだ? 巧く使うのはそっちの領分だ。目的がないなら俺は散策も兼ねてこの街を
見て回りたいんだが―――――」
「好きになさい。今のところ予定はないし―――今夜は私の予定があるの。貴方は不要よ、七夜」
「ああ―――そうかい。ならば今夜は別行動としよう。精々、羽を伸ばさせてもらうよ<ruby><rb>使い魔</rb><rp>(</rp><rt>マスター</rt><rp>)</rp></ruby>」

 急激に都市開発が進み、未だ未開拓の土地が多い街。すぐそこにビルが林立していたかと思えば、そ
の十メートル先には深い森が待ち受けている。流石にこれは極端な例ではあるが、人の手の入らない箇
所は多く存在し、当然―――”殺す”には丁度いい場所が点在する。
 今しがた一人を解したここもその一つではあるが―――血の匂いに溢れ返ってしまった。「つくづく下手
な殺し方だ。これでは誘蛾灯どころか蚊帳の中だ」などと自嘲し、歩みを進める。

 ビチャリ、ビチャリと靴底に付着した血が音を立てるが、それもまた心地いい。
 これで漸く晴れて自由の身。”遠野”に潜む悪夢でも、噂の呼び出す殺人鬼でも、反抗の手駒でもない
―――”俺”の生だ。

「漸く―――漸く、か」

 俺は―――――漸く殺人鬼として振舞える。

 カツ、カツ、カツと月明かりの支配する世界に音が響く。「無様な―――」音を立てるなんて二流のする
コトだ。だから―――大凶に当たってしまう。

「吾は面影糸を巣と張る蜘蛛―――――」

 一息に音の主の前に立ち、

「―――――ようこそ、この素晴らしき惨殺空間へ」

 二人目の犠牲者もまた、音もなく闇へと紛れ逝く。

 ああ―――素晴らしきはこの世界。
 生命の循環は留まるコトを知らず流れ続け、されども儚き生命は何時でも、何処でも、災厄によって
淘汰される。死とは突然の終わりではなく、生命の循環の中に埋め込まれしモノ。
 ならば、終わりを甘美に彩ってこその生命だ。

 極彩と散る珠は―――――儚くも、美しい。

13 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 00:52:570
 一応上がったよ。
 そうだな―――血の匂いを嗅ぎ付けてやってきてもらっても構わないし、まずは外に出てくる描写を
挟んでワンクッション置いてもらっても構わない。
 そちらの好きなようにできるはずだが、修正はいつでも受け入れるよ。


 と、後は少し<ruby><rb>テストだ。</rb><rp>(</rp><rt>、、、、、</rt><rp>)</rp></ruby>

14 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 00:57:030
 やれやれ―――ルビは実装されていた筈なんだがな。
 まあ、いい。それにしても三十分も掛かるとはね―――感覚を取り戻せていないか。先が思いやら
れるよ、まったく。
 一応待つつもりではいるが、投下後十五分以上反応がないようであれば休んでもらって構わん。
殺人鬼なんて自由業の割りに、忙しくてね。

15 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 01:16:150
 っとと、いけないいけない。
 確認したわ。まあうん、大体の状況はこんなものでいいか。
 それじゃ、次は私だけど―――んー、少し時間がかかるかも。
 もしこっちが書いてる間にそっちが限界迎えるなら、休んじゃってもいいよ。
 一応毎夜毎夜は顔出せると思うし、打ち合わせはまたそのときにでも。

16 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 01:21:210
 心得たよ。じゃあお言葉に甘えて先に休ませてもらおうかな。
 基本的に毎日確認できるが―――場合によっては返答できない可能性もある。
 出来るだけ早く返すけど、限度があるってのは気に留めておいて欲しい。

 それじゃあ、また、夜に。

17 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 01:27:040
 ええ、また夜に。

 ……さて、まずは飛び出していこうっと。

18 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 17:28:070


 ここには風は通らない。光一つ差さない閉ざされた領域。
 冷たく薄暗い世界。私のほとんどが納められた場所。
 そんなところでも、生まれつきなのか、月の満ち欠けだけは肌で分かる。
 まるでこの目で見たかのように分かる。今日は紅い―――満月の夜。

「―――でよっか」

 だから、私は当たり前のように、外に出た。
 閉ざされた壁を砕き、歪められた空を潰し、封じ込める呪いを引き裂く。
 全ての運命の終わりは、私の右手の中に。
 ただ、それを握り締めれば、私を阻むものはない。
 ―――まあ、面白くないから、あんまり使うことなんてないけど。
 そんなことより、弾をたくさん撃ったり撃たれたりしたほうがはるかに面白い。

 長い階段を飛ぶように駆け上がり、紅い紅い―――月明かりでさらに紅い廊下へ出る。
 音もなく窓を破ると、冷たい風が体を掠めていく。この館は窓も風通しもほとんどない
ので、新鮮な感覚だった。
 ―――導かれるように、外へ飛び出す。
 音もなく、誰にも気づかれないように出て行くのは、なんだかいけないことをしている
ような気がして妙に楽しい。私が興味を持つ、数少ないこと―――外に出ること。
 外には見たことがないものも、壊したことがないものも、世界の果てまで広がっている。
 だから、気が向いたときだけ、私は外を楽しむ。

「……あは」

 空を見上げれば、真円を描く月。血を吸う悪魔の守り神。
 それが座する蒼い夜を、白い雲の狭間を、私は駆けていく。
 外へ。外へ―――
 それだけを気持ちに抱いて。
 足元には、深い森が広がっていた。
 深く―――深い緑色の地平が何処までも続いているような気がした。

 そして、その無何有を阻むのは、大きな結界だけ。


19 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 17:40:320


 結界を壊さないように、注意深く、くぐっていく。うかつに壊すと面倒なことになると、
良く知っている。せっかく内緒で抜け出してきたのに、目立つようなことはしたくない。
 運よく見つけた綻びに身を躍らせ―――ほら、出てきました。
 ぽつぽつと地上に光が見える―――外の人間の街。普段見ることすらない、空を突く建
物の並ぶ人間たちの城。今は夜だから、誰も出歩いてはいないけれど。目印にするには十
分だった。背が高いから、見失うこともない。
 足元の森が消えたところで、私は歩いてみることにした。
 音もなく空を下って、足元の硬い感触を楽しむ。

「よくこんなので歩けるなあ。疲れないのかな」

 かつ、かつ。
 わざと足音を立てて歩く。
 ―――途中で加減を間違えてめり込ませてしまったけど、別にいいや。
 立ち並ぶ灯りは、夜でも遠くまで見える。私には必要ないけど、便利なものなのだろう。
 ただ、それでもわだかまる闇を消せはしない。

「……あら」

 慣れ親しんだ匂い―――血の香り。
 なんでだろう。
 気が惹かれる。だから、それを辿りながら足を向けていく。
 闇へ、闇へと―――


 見つけた。


「ねえ、貴方は何をしてるのかしら」

 声をかけてから、ちりちりと背筋が熱いことに気がつく。
 足元には血が満ちている。それが気分を高揚させる。
 彼のいる袋小路は―――血で描かれた油絵のようになっていた。
 血と、肉と、死。
 非日常が―――生きている間では味わえない幻想が満ちている。

 ―――背筋の感覚が何なのか、思い出す。

 そうだ。私と対等に遊べる遊び相手と出会ったときだ。
 思わず、顔が笑う。嬉しさを押さえ切れなかった。

20 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 17:42:030
 とりあえず、こんな感じでいいかな。
 この後の出方は、そっちまかせ。
 一息置いてもいいし、いきなり襲い掛かってもいいよ。

21 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 21:31:040
―――――やれやれ、漸く戻れた。時間から取り残される感覚だけは、どうにもいただけない。
 ああ、そうだ。俺が現れるコトができるのは大抵がこの時間帯だ。少し気に留めておいてくれ。
 これで闇夜に紛れ消えるのも早いんだから―――まったく、たいした殺人鬼だよ。

 で、だ。続きは今すぐ取り掛かる―――と言いたいところだけどね。少し間を置いてからになり
そうだから―――そうだな、十一時には挙げよう。
 それまでは寛いで居てくれ。

 展開としては、ワンクッション置く形になるだろう。
 少し、ネタも思いついたんでね。それはまた後でだ。

 纏まらない思考で書くのは好きじゃなくてね。
 それじゃ、約定を果たすコトを肝に銘じて、一旦退かせてもらうよ。

22 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 23:03:250
 いつだって人は、光を求め闇夜を彷徨う。

 人工的で無機質な光だったとしてもそれは変わらず、眼下に広がる光景は今が夜であるコトを忘れ、
眠りにつく暇さえも与えぬまま、陽光の洗礼を待つ。
 いつかこの深い闇も、真円を描き深淵を照らす紅い月も、人の素顔も、幻想と呼ばれるようになり、
夏の降雪の如く儚く消え行くのだろうか――――。

―――――参ったね。
 こんな高いところから人を見下しているから、毒にも薬にもならない感傷に浸ってしまうんだ。

 ここは、この街でも一際高いビルの上。北を見やれば歓楽街が立ち並ぶ、喧騒の途絶えない不夜の
城が待ち、南は森、西には工業地帯が立ち並び、東は―――住宅街か。
 多くの人が集まる場所へ出向くのが得策ではあるが―――如何せんこの服は目立ちすぎるのが不服
だな。ま、今では学生服で夜の街を歩くなどさほど珍しくもないように思えるが、官憲とコトを構えるのは
得策じゃあない。
 如何に無力で無能だったとしても―――――数を揃えられては厄介なんだ。

 食い扶持が減ってしまうからね、後々を考えれば得策じゃない。
 住宅街も同様だし、工業地帯は既に歯車さえも眠ってしまっている。
 やはり、森に向かうのがここでは最善策か。幸い、日没直後と呼ぶには遅く、深夜と呼ぶには早い時
間だ。道中誰かに出くわすコトだってあるだろう。
 加えて、向こうはまだ煌々と明かりが燈っている。突貫工事、って奴だろう。

 お勤めご苦労様―――じゃあ俺も、頑張ってお勤めを果たさないと。
 それよりもまず、ここの掃除か? どうせ夜明けには消えるんだから、このビルがどれだけ汚れてい
たとしても誰も構いやしないか。たかだか十や二十の屍だ。慌てるほどじゃあないだろ?


―――――広大な森は、さながら陸に浮かぶ海のようなものだと感じるコトがある。

 夜の荒波も、夜の木々のざわめきも、似たようなものだ。波の崩れる音も、木の葉が立てる音も、酷く
落ち着ける。
 一定の周期で奏でられ、不定のテンポで奏でられる自然の音。雑踏に篭る陰鬱な音とは違い、自然の
それらは心臓の刻むリズムにも似ているのだから。
 だからこんなにも―――――殺しに精が出たって仕方あるまい。

 他人の心音も、                                                 /カツ、
 他人の血液も、                                                 /カツ、
 こんなにも俺を、                                                /カツ、
                                       ―――――落ち着けてくれるのだから。

                                                           /カツン。

「一つ、二つ、三つ――――四つ、だな」

 袋小路には三つつの亡骸と一人の亡者。
 誘われ出づるは蛇か鬼か?

「こんばんは、お嬢さん」

 振り返り、大袈裟に両腕を広げ

「俺はしがない絵描きでね。少し、個展の準備をしていたんだ」

 これまた大袈裟に腕を折り、深く一礼。

「―――――ようこそ、この素晴らしき世界へ」

 沸騰しそうな血液を押さえ、深い深い一礼を。
 敬意と、畏怖と―――殺意の。

23 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/09(金) 23:11:430
 予定より数分遅れたか――――なんて、無様。
 まあいい、気を取り直すとしよう。悔いたところでなにも始まらん。
 ま、後で若干修正を加えるコトにしよう。大筋を変える気はないから、気にせず書くといい。


 で、思いついたネタだが、それほど面白みのあるものでもないんだけどね。
 台詞のみで少しだけ、五つか六つ、進めてみるのも面白いかと思うんだ。
 オマエのところで言う「弾幕ごっこ」前の掛け合いのようなものをイメージしてもらえればいいだ
ろう。
 要所要所に―――例えば場面の転換なんかに挟んでみたらどうかと、思いついたんだが。
 どうかな?

24 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/09(金) 23:39:510
 ん、そうね。やってみましょうか、そういうの。
 てことでちょっと待っててねー。

25 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 00:01:450


 背筋が熱い。高揚しすぎて燃えてしまいそう。
 三つの亡骸に、鮮やかな紅い筆遣い。燃え上がるような色彩は文字通り炎を描いて――
硬い地面と高い壁をキャンバスみたいに仕立て上げている。

 画伯は、目の前の彼。
 優雅に、大げさに一礼するその姿が、とても気に入った。

「素敵な絵ね。それに貴方も。こんな血の匂いでそんな嬉しそうな顔が出来るのなんて、
私は一人しか知らないわ」

 その一人はお姉さま。運命を手に握る紅い悪魔。
 ―――私は、その妹。

「フランドール・スカーレットと申しますわ、絵描きのお兄さん。今日は月も綺麗だから、
ちょっと散歩に来たの。誰にも気づかれないように―――こっそりとね」

 くすりと悪戯っぽく笑う。一歩下がってスカートを持ち上げ、丁寧に一礼を返す。
 淑女の嗜みは大事な物。私も壊せない素敵な決まりごと。

「ところで、この絵。今日はどれだけ描いたのかしら。見たところ、筆はなかなか早いと
思うんだけど。これは―――三つで一つの絵になってる、ってところかしらね。躍動感が
あって好きよ、こういう絵。まるで何かが燃え上がってるみたいで―――綺麗」

 命の流れで描かれた絵画は、生き物のように揺らめく錯覚を覚える。まるで絵の具自体
が生きているようにゆらゆらと―――むせ返る血の匂いがそうさせるのだろうか。騙し絵
みたいに炎の抽象画がちらつく。

「出来れば、描いてるところも見てみたいわ」

 こみ上げる愉快さに、笑みを浮かべながら、私はそういった。
 ―――この人は、どんな風に私を魅せてくれるのだろう。
 その期待が、胸の奥の鼓動とともに、少しずつ膨らんでいった。


26 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 00:03:130
 んー、もうちょっと書こうと思えば出来たかな。
 後で足してみようかしら。

 まあ、大筋はこんな感じでいいかな。

27 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 07:27:230
 済まない、眠っていた。
 また夜に現れるから、続きはそのときに。

28 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 11:25:530
 はいはい。
 焦んなくてもいいよー。

29 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 22:40:090
 無防備であどけない少女とは言え、壮絶で凄惨な絵を見せるこの空間に立つコトができるのだから、
手を抜くわけにも行くまい。
 なにより、『線』も『点』も辛うじて見える程度なのだから―――――まったく、俺も誰かのコトは笑え
やしないようだ。

 感謝するよ、兄弟。  ―――――オマエの体質のお陰で愉しめる。

「                        」

 逆手に構えたナイフは物欲しそうに怪しげな光を鈍く放ち、紅い月よりなお紅い液体を滴らせる。それ
はまるで品のない犬のような姿だ。
 しかし妄りに振舞う女のような芳香に、否が応でもこの躯は反応する。


            手が、
                腕が、
                    足が、
                        脚が、
                            心音が、
                                 思考が、


                          早く―――
                        速く―――
                      疾く―――


 殺せ、殺せと発情したかのように、囃し立てる。

 まあ、待て。
 未だ夜は長く、月は空を我が物としたかのように天に収まり、太陽は惰眠を貪っている。
 ならば吾等に残された時間は両の手で抱えきれぬほどに存在し、絶頂に到るまでは十分以上に
有り余っている。

 舞台の幕は上がったばかり。
 一幕一場は状況の説明以上の意味はなく、それが殺し合いともなれば小競り合いもいいところだ
というもの。
 巧く殺すのは二の次に、一先ずは挨拶を交わそうじゃないか。

 地を這うように腰を落とし、疾走を開始する。
 この程度なら十分対応できるコトを願っておくよ、お嬢さん?


30 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 22:42:260
 これが殺し合いの契機かな?
 で、これの前に台詞のみ―――心情の描写も、行動の描写も挟まない台詞のみのやり取りを、と思っ
ているんだが……
 >>27のものに続けるならこんな感じかな?

31 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 22:43:100

     「残念だが、画材が足りなくってね。筆を振るうのは万全なんだが」
 

32 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 22:46:180
 こんな感じで幾つかやり取りをして、>>29の台詞の空白を埋めて終わりとする。
 試してみて嵌らなければ斬ってしまってもいいしね。
 嵌るようなら場面の転換毎に入れてみるのも悪くない。

 じゃ、取り敢えずは返答待ちか。
 十二時まではなんとか居られるように努力するよ。

33 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 23:18:470
 んー、ふむふむ。
 いくつか台詞を出して、それをお兄さんの方に入れていくのかしら。
 その言葉に続くとすると―――

「あら、こっちには人間がいっぱいいるじゃない。絵の具には困らないでしょ?」

 とかそんな感じかしら。

34 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 23:34:080
 いや、一レスそのものを台詞単体で埋めてしまおうかと思うんだ。
 後から貼るのには手間なんだけどね。

 弛緩と緊張―――というか、メリハリをつける感じで。
 お互い『遊び』だったり『快楽』だったりで、緊張感に欠けているだろう?
 だから、言葉遊びというか、緊張感のない会話だとかが嵌るんじゃないかと思ってさ。
 そっちの原典っぽいものも演出できるかも、なんて狙いもあるんだが。

 まあ、それに続けるとしたら。

 「人間には飽きちゃってね」

 こんな感じだろうか?

35 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 23:44:250

「そうなんだ。人間以外はこっちだと少ないから大変ね」

 こんな感じね。

 1レスで使っちゃうのかー。
 ……ん、まあそれはそれでいいかな。
 別にたくさん使うことなんてほとんどないし(何)

 わかった。
 じゃあ適当に掛け合い考えてみよっか。

36 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 23:49:090

「居ても鮮度が低くてね。ところで、お嬢さんは幾つかな?」

―――――これは何か拙い気がする(何

 他の奴はよく書くからね―――別の方法で目立ってみるのも悪くはないさ。
 賢しい足掻きだけどね。

37 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/10(土) 23:55:570
 んーん。いいんじゃないかしら。こういうのも面白いからね。
 ……って、レディに歳を聞くのは失礼よ? くすくす。
 でもまあ、いいか。

「ほんの495年ほど。でもこういうことは女の子に聞いちゃ駄目よ、お兄さん?」

 こう、かな(何

38 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/10(土) 23:59:480
「は―――それは済まなかったね、お嬢さん。お詫びにダンスでもいかがかな?」

 殺し合いに繋げるコトを考えるとこんな感じかな?

 面白いと思ってもらえるなら結構だ。ネタが腐らずに済むんだからさ。

39 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/11(日) 00:08:380
「あら、ダンスのお誘いなんて素敵ですわ。でも私は絵の具にはなれないわよ?」

 こんな風、かな。ちょっとぴりっとした感じ。
 この辺でそろそろ戦ってもいいけど―――その辺はまた今度かな。

 今やるとたぶん、その、途中で寝ちゃうかも(何)

40 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/11(日) 00:18:170
「それじゃあ乾く前に色を着けるだけさ。―――――と、自己紹介がまだだったね。吾は七夜志貴。
個展『惨殺空間』の準備に忙しい、しがない殺人鬼さ」

 じゃあこれで一旦打ち止めかな。
 >>29の台詞はこれで埋めてしまうとしよう。

 今夜は俺も限界だから――――続きは気長に待っておくさ。

41 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/11(日) 00:35:300
 うん、わかった。
 じゃあこの後にそっちの奇襲を迎え撃つ形でいいのよね。
 明日までには仕上げるわ。

 お休み、七夜のお兄ちゃん。
 ……呼び方、これでいいのかしら(何)

42 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/12(月) 01:23:550


 ―――こどうが、どこまでもたかなる。
 それは最高潮に達して、

「あら、それは素敵ね。でも紅いお化粧はお姉さまの専売特許だから遠慮しておくわ」

 ―――私は、自分の中で熱い空気が弾けるのを感じた。

 向こうも、私と遊びたいのだ。
 理解した瞬間、血の匂いが恍惚を煽る。

 それに誘われて、私は―――“遊ぼう”と決めた。

「私はフランドール・スカーレット。楽園の素敵な悪魔よ。―――それじゃあ、ダンスの
エスコートはよろしくね、志貴お兄ちゃん?」

 そして、大胆なステップで駆ける志貴お兄ちゃんに手を差し伸べ、
 無数の紅い、細く鋭く薄く、梳られた魔法の刃を生み出す。
 宝石のような輝きが個展を満たしていく。
 それはまるでシャンデリア。美麗に墜とせるシャンデリア。

「さあ、貴方はコンティニューしなくて済むかしら?」

 もちろん、させるつもりは、ない。
 風を切って、襲い来る獣へ紅い刃が撃ち出される。
 血のように赤い軌跡が、壁面の絵画に色付き硝子の花を添える。
 そして刃は、阻むものを切り裂きながら、惨殺空間へと飛び込んで行った。

 ―――彼もまた、“絵”の一部にするために。

43 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/12(月) 01:26:020
 とりあえず迎撃。
 最初だから、そんなに強くない弾幕。
 適当に避けてもいいし、切り払ってもいいわ。

 あ、それと……遅れてごめんね?
 ちょっとお寝坊しちゃったから、日付変わっちゃったの。

44 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/12(月) 21:18:050
 眼前に広がる血刀によって編まれた、死線を束ねまだ足りぬ剣林弾雨の幕。これは死を覚悟すべき
状況―――なのだろうか?

「続きがあるなら見てみたいものだけどね」

 呆と、蒼く光る『眼』に映るは血よりも紅く、月よりも醒めた、なによりも鋭き『死』のカタチ。朧の明かり
に照らされた、それに浮かぶ歪な線と点にナイフを走らせ―――るコトはせず、全てを紙一重で避ける。
上下左右天地の区別なく空間を蹂躙し、駆け―――抜ける。




 こんばんは―――――紫の君。

 君に捧げる歌はこの穢れきった躯に廻る黒き血で記し、
                                   /紙一重といえども傷付き、

 君の亡骸の隣で詠めば満足してくれるかい?
                             /流れた血は微々たる物でも、

 君は判ってくれるかな?
                /無駄にしちゃ勿体無いだろう?




                     この愛情にも似た殺意を。




 振るう刃は音もなく闇に潜むように突き進み、一点の迷いも曇りもないまま殺す為だけに銀弧を描く。
 慣れ親しんだ感触が脳に響くか、脊髄が焼きつくような空虚を掴むか。

 そんなコトはどうでもよく―――

「幕は開いたよ、フラン。
―――――ここは舞台の上だ。役者は役者らしく七転八倒する荒波のような世界で、終幕まで役を演
じなきゃならない。台詞の正誤も演技の上手も下手もないが――中途半端に舞台から降りるのだけは、
ご勘弁願いますようお願い申し上げます――――なんてね」



45 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/12(月) 21:20:390
 こんなところかな。
 ナイフが走った先は決まってないから好きにやってくれて構わない。
 取り敢えずは一振りだ。二の太刀とかは考えなくてもいいし、動かしてもらってもいい。
 ようは―――お好きにどうぞ、かな。


 じゃ、一旦消えるよ。
 ああ―――――それと。

「おにいちゃん」のほうがいいんじゃないか?(何

46 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/18(日) 21:10:520


 風雷の軌道。荒れ狂う風のような飛翔。
 しかしそれはどこまでも鋭く美しく―――
 志貴おにいちゃんは、空を飛べるはずもないのに、まるで翼を巧みに操る鳥のように、
ソラを踊って全てかわした。
 鮮やかなステップ。
 彼にとっては天も地も壁も舞台の床に過ぎないのだろうか。
 紅い刃は鏡のように光りながら壁や床につき立って、砕けて逝った。

「……人間ってすごいね。ここまで出来ちゃうなんて」

 きらめく闇。水平に奔る―――流れ星。
 それは無骨なナイフの一撃。
 首筋を狙う、残像だけが死神らしい弧を描く鎌。

「でもまだ、だーめ」

 それを、手に持ったいびつな杖で受け止める。
 その衝撃のまま空に舞い上がり、私は舞台を支配する。

「役者は―――観客を振り回してこそ役者よ。だって劇の主役は」

 しゃらん、と背中の羽を鳴らす。並ぶ宝石、奇怪な翼。私の象徴。

「私たちだもの」

 式を打つ。魔法の陣が生まれる。
 そこからこぼれる鮮やかな光が街を覆い―――輝き全てが魔弾となる。
 それは蔓を伸ばすように建物へ巻きつき、続いて眼下の彼へと走っていく。

「―――Cranberry Trap !!」

 それは、私の仕掛ける甘い罠。
 あらゆる方向から襲いかかる呪詛は、その腕で相手を絡め取る。

 紅い紅い―――血の色の実をつけるために。

47 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/18(日) 21:13:490
 おまたせ、志貴“おにいちゃん”。うふふ。
 ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった。

 とりあえずスペルカード発動ね。
 避け方受け方止め方は、そっち任せでいいかな。
 一応攻略法は原典と同じ(何)


48 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/19(月) 00:39:430
 惨劇の舞台は不協の和音ともに幕を上げ、余韻を残したままに閉幕へと胎動を始める。
 ざくり、ザクリと神経を殺ぎ落として行くような憐憫にも似た殺意に身を委ね、役者はただただ
物語の筋書きに沿って進行し、己を喰らい他者を喰らう為に侵攻を開始―――――。
 感覚が研ぎ澄まされ、神経を肉の上に貼り付けたかのような錯覚すら覚える。今の俺であれ
ばざらついた空気に紛れる原子の一つ一つを肌で感じ取れるのではないだろうか?

 それにしてもこの行為は――― 一種の信仰に似ている。
 親交を深める為に、親交を断絶する殺し合い。

 闘争の本義とは他人を自分だけのモノにする為の、究極の独占欲。究極の加虐欲。
 加虐は被虐に通じ、殺すコトと殺されるコトは同義であり、愛するコトと愛されるコトは対であり、
死と生は流転と廻り、ありとあらゆるモノは表裏一体で正しい形となる。


   例えば俺に殺意があるのなら―――例えば相手にも殺意があるというコトであり。
   例えば俺に愛情があるのなら―――例えば相手にも愛情があるというコトであり。
   例えば俺が死神であるならば―――例えば相手もまた、死神であるというコトだ。


 月の光は紅く、視界の先に移るモノも全て赤に染められ、煌々と輝く宝玉の数々は極彩色と夜
空を彩る星の瞬き。
 純粋なる殺意の結晶はどの星よりも眩く輝きを放ち、どんな生物をも、どんな生命さえも、有象
無象の区別なく破壊に破壊を重ね、壊滅という言葉では足りぬほどに残骸を生み続けるだろう。

 嗚呼―――――だがしかしだ、お嬢さん。
 なにも壊れるモノは壊れ易いモノから容易く壊れるワケではなく、頑丈であれば頑丈であると思っ
ていたものほど容易く欠け、折れ、朽ち果てるモノなんだよ?
 完全にして無欠なんて言葉はこの世にはありはしない。なにもかもは最終的には朽ち果て風化
してしまうのだから―――――。

「は―――――容易い。次の夜を望むなら、ヤマの問い掛けを微塵と砕く力を持つコトだ」

 縦、横、斜―――――縦横無尽に駆け巡る宝玉の数々も、避けられるように僅かな隙間がある
のだから始末に終えない。まあもっとも―――――”殺して”しまえばそれまでの話なんだが。
 不規則に見えるという規則性さえ判れば生身の人間すら踏破可能なモノを、人間の極端である
吾に避けきれぬ筈がなく、瞬く星も蜘蛛の巣に絡め捕られた蝶に過ぎぬ。

 余り舐めてもらっては困るよ。
 三次など随分昔に蹂躙し尽くしているのだから―――――!

 開けた視界に納まる愛しき愛しき紅の君よ。
 オマエの幼い頃など知らぬ。
 俺好みの女なのかも知らぬ。
 成長など望む訳もない。

―――――ただ甘美な、悦楽と共に舞い降りる死と共に眠り、安らかな寝顔を見せておくれ。

 地を這う疾走のベクトルを空を駆けるベクトルに変換し、頭上から狙うは心の臓。   /想像だけで。
 射抜き取り出しその鮮血を撒き散らし、キャンパスを思うがままに塗りつぶそう。   /脳が、脊髄が、
 それで一枚の絵が完成するんだからね――――。                     /蕩けそうだ。

49 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/19(月) 00:40:590
 上がったよ。
 菌糸類というよりは回文好きになってしまったが(何

 飛び上がってナイフで一突き―――だけなのにね。
 なんでこんなに長いんだろうか。

50 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/19(月) 01:16:350
 それだけ気合いが入ってるってことじゃないかしら。
 ……えーと、ろりこん?(何)


 じゃあとりあえず――レスは明日までに。
 あ、今日は待たせちゃってごめんね。
 それじゃ、おやすみなさい、おにいちゃん。

51 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/21(水) 05:32:480


 蔓が建物をひねり潰しながら降り注ぐ。
 その中を、掠りすらせずかわしていく―――軽やかなステップ。
 見惚れるような身のこなし。まるで翼が生えている。もしくは空を飛んでいる。地上を
離れて駆け往く姿は空の星。流星にも似た残像一閃。きらめくナイフ。私は突然貫かれた。

「―――いたたたた。よくここまで跳べるね」

 手だけを。
 掴み取ろうと伸ばした手のひら。そこに、あの無骨で日本的なナイフが貫通している。
流れ出す血は紅く赤い。果実を潰した甘露のようで、思わず心惹かれる。でも、私の血を
私が飲んでもあまり意味なんてないから、痛みを忘れてそっと振り払った。
 離れていくおにいちゃん。着地も危なげなく、猫みたいに鮮やかで素敵。

「私に怪我させたのって、何人くらいかしら。人間だと三人しか知らないわ」

 零れ落ちる赤い血を、そっと舐め取る。痛みはあるけど刃創はない。便利なのか不便な
のか分からない、治る早さ。痛みも一緒に治ればいいのに。
 でもまあ、我慢できるからいいや。
 それより向こうは待っている。
 次の曲目、演目を。
 リードすべきステップを。

「それじゃ、いくよ。上手く避けてね」

 私は杖を―――災いの杖を、バトンのように回しながら、頭上に掲げる。
 天には月。赤い光。突き刺すように、杖が止まる。

「―――Lavateinn.」

 囁くように、その術の名を唱える。
 ―――杖に光と炎が走った。
 暗い紅色の熱を肌に感じる。螺旋のように絡みついて伸びる炎。それは天を天を天を切
り裂くように夜を駆け抜けて―――巨人の剣になる。
 手になじませるように何度か振り回すと、火の粉が飛び散っては建物を砕いて溶かして
いく。この術だけは、加減がしづらい。けれど、もともと気にもしていない。
 だから―――

「せーのっ!!」

 笑いながら、真っ直ぐに振り下ろす。
 搭が崩れていくような一撃が、志貴おにいちゃんに落ちかかる。
 圧倒的な炎の滝。どうかいくぐって向かってくるのか、楽しみだった。

52 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/02/21(水) 05:37:260
 まだ夜が明けてないからセーフっ(何

 とりあえず上空からの唐竹割り(飛び散り弾付き)。
 どう避けるかは―――どうしよ。

【おい】


 まあうん、建物に飛び込んでもいいし、そっちの何でも殺せる魔眼で切り払ってもいいし。
 とりあえず大丈夫……だよね?(汗

53 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/21(水) 22:58:400
「―――――それはそれは、光栄だ」

 少し離れた位置から深い一礼と共に、溜息混じりに漏らす。
―――――やれやれ、”死に難い”とは十分過ぎるほどに理解していたが、千載一遇の好機を潰される
とは思いもしなかった。
 まあ、だからこそ愉しめるんだけどね。

 嗚呼―――――紅の君よ。
 その余裕に満ちた、気品と優美さを兼ね備えたあどけない顔は、どう苦痛に歪んでくれるのかな?
 その鈴の音のように清らかに流れる声は、どれだけ切ない喘ぎを漏らしてくれるのかな?
 その程度の苦痛に喘ぐ声じゃ、まだまだ俺は満足できそうにないんだ。

 願わくば―――――死に到るその瞬間まで、君は君のままで居てくれないか。

 死とは一瞬の出来事だ。
 連続性などあったものではない、刹那に刻まれるべき芸術。長く時間を掛けていたんじゃ見苦しい駄作
しか出来上がらない。空に大輪の華を咲かせるように、澱みない芸術であるコトが望ましい。
 だからこそ、最後まで。最期まで―――――

「二幕一場開幕で御座います。観客の皆様は首などの存在の確認をお願い申し上げると同時に、最期の
一時までごゆるりと鑑賞の程をお願い申し上げます―――――」

 目の前にはその身にまとう赤よりもなお紅い炎の剣。あどけない少女が握るには、余りにも無骨で、例え
るならばそれはまさに炎で作り上げる巨山。
 その軌跡の後には何一つとして残さず、灰すら昇華し浄化を待つだけだ。
 そして、付き従う従者は統率が取れた軍隊のように一部の隙すら存在しないまま隊列を組み、主に敵対
する全てのモノに、今まさに牙を向けようとしている。

 は―――――こんなにも月が紅いから、”殺す”にはいい日だ。

「なお、当舞台は生死に関わる舞台で御座いますので、観客の皆様は巻き添えに十分ご注意下さい」

 地を這う獣は疾走を開始する。なによりも速く、その先が絶望のみが待ち受ける死地だったとしても、そん
なコトは些細な問題だといわんばかりに駆け抜ける。
 右手にはなんの捻りもない無骨なナイフを。幾人もの血を吸い、幾人もの油を呑み、幾人もの骨を喰らっ
た生涯代わるモノなど見つけるコトができない半身。
 今日もまた蹂躙に蹂躙を重ね、犯しに犯した血塗られた短刀は、月明かりを反射し鈍く輝きを放つ。その
刀身に移る己の顔には壮絶な笑みが張り付き、さながら悪鬼―――いや、羅刹。殺すコトのみを突き詰め
た修羅。

 左手には―――――無造作に拾い上げた、死者の生首。

 死相は恐怖に歪むでもなく、悦楽に微笑むわけでもなく、眠ったように静かでもなく、ただ驚きのみを写し
ている。

 まあ、驚くだろうね。

 なんと言っても首だけで飛べるんだから、さ――――――!

 振るわれる剣の支点―――――担い手の腕に向かって投擲。
 さして障害になる筈もなく、されど僅かに剣速は鈍る。

 だが吾にとってその一瞬、その一刹那が十分に活路としての価値が生まれる―――――。

 疾走の勢いを殺さぬままに進路変更。目の前には壁。様々な余波で今にも崩れ去りそうなビルの壁を
蹴り上げ、昇り、空を翔る。
 振り下ろした勢いをそのままに振り上げるコトなど、彼女にとっては朝飯前と言ったところだろうが、生首
に刹那の時を奪われてしまえば話は別だ。凪払いでは高さが足りぬ位置まで昇ってしまえば、空間の制
圧は不可能ではない。

 ボコボコとコンクリートの壁が沸騰する音がする。
 だが―――――遅い。
 吾を殺したくば音よりも速く、刹那よりも短い時に生きてくれなくては。

 中空でくるりと反転。
 背後に回り―――――

「―――――覚えておけ、これがモノを”殺す”というコトだ」

 銀の輝きが断ち切るは歪な線。
 彼女の直線位置にある電灯に浮かぶ無様なラクガキをなぞれば―――ほら、”死”んだ。

 派手に騒ぎすぎた。
 人口の赤い光が微かながらも遠くに見える。
 やれやれ―――――まったく、場所を変えねばな。折角存分に”殺せる”というのに。

54 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/02/21(水) 23:03:160
 こんな感じで。―――――無闇に長いな。
 電灯はオマエに向かって倒れていっている、という解釈で頼む。
 避けたっていいし溶かしたっていいし好きに料理しておけ。

 で、舞台を写すようなそぶりも見せた。
 このままの場面で数回やりあってもいいし、場所を移したっていい。
 余り急ぐ必要はなかったけどね。どう考えても騒ぎすぎだからさ(何
 一度場面を転換するのも悪くない、かな?
 まあ、これはオマエの意見待ちだ。

 ああ、それと―――――俺に幼女趣味はないよ(何

55 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/05(月) 21:29:160


「―――!!」

 一瞬の違和感。蒸発する血の匂いと肉の香り。『人だったモノ』を投げつけられたと理
解したときには、すでに剣を振り下ろしている。一瞬の停止を経た黄昏の一撃は、相手に
終焉を与えること無く大地を蹂躙した。
 得たときは一瞬。されど彼の者は光の如く掴み取ろうとした指の隙間から零れ落ちる。
 まだ終わらない舞踏。訪れない死。与えられない終了。全てが更に気分を高ぶらせる。
その意識のまま二太刀目を放つ。

「っ、わっ!?」

 前に、予想外の奇襲を受けた。背中側から倒れこんでくる鉄塊―――細く長い棒の形を
持ったそれは、数秒前は煌々と光を出していた、科学の燭台。
 その衝撃で、軌道がズレる。狙い定めた相手より数メートル先、そこにあった背の高い
建物を撫で斬りに破壊してしまった。焼き切られた断面から、ゆっくりと巨大な質量が滑
り落ち、轟音と破壊を呼び寄せる。ガラスの割れる音と、岩が砕ける音。無数が重なって
狂騒を演奏した。
 まただ。また外した。

「ちぇ、やっぱりなかなか当たんないや」

 けれど、だからこそ面白い。

「……あれ?」

 ―――と、空気が変わるのを感じる。
 どんな夜も見通す瞳が、あらゆる音を聞き逃さない耳が、『ここはもうまずい』と推理
して私に教えてくれる。それに応じるように、向こうも姿を眩ましていた。夜の闇の向こ
う、黒い森の中へと。
 私はそばに倒れていた電灯を拾い上げた。電気の力で駆動する、人工の蝋燭。けれど今
はただのがらくた。その根元は、背筋が震え上がるほど綺麗に、切断されていた。
 あのナイフがそんな切れ味をしていたのだろうか、それとも―――
 私はその電灯を撫で上げると、

「……どかーん」

 轟音。
 右手を握り締めて、破壊した。
 どんなものにでも、壊れやすい部分がある。こと現実に―――そう、現実に存在するも
のであれば、全てに終わりはある。だから、私に壊せないものは無い。全ての核は、生ま
れた時から私の右手の中にある。
 電灯が、砕け散って光を散らす。
 けれど、それは不出来な花火。
 そんな風に思えた。
 ―――私では、どれだけ工夫しようとも。あの綺麗な壊し方が出来ない。
 すぐに悟って、気づく。
 ―――夜と血に濡れて輝いている、彼の蒼い目。
 その輝きが、何を見通していたのか。

「……そっか。“同じ”なんだね」

 気づいて、今までにないものを感じた。
 誰と戦おうと、何を壊そうと、決して感じたことのない感覚。
 体中がさわさわと撫で上げられているような、背筋の痺れる感触。

「同じ―――そう、同じなんだ!!」

 感動。
 唯一無二と思っていた同種の力。
 戯れることを望めなかった唯一の相手。
 なにもかもがないまぜになって体を突き抜けていった。

「いいわ、どこまでも、どこまでもつきあってあげる!!」

 炎の剣を消し去ると、赤い光を背に、黒い森へと翔ぶ。
 ―――永遠に訪れない午前零時。無限に続く舞踏会。
 影絵の街をすり抜けて、私は彼を―――“志貴”を求めた。

56 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2007/03/05(月) 21:32:540
 ごめんね、ちょっと空けちゃった。

 そっちの場面転換に追随する形にしてみたわ。
 この後は森に向かって、そこで続きをやる、ってことでいいかしら。
 邪魔が入ると醒めちゃうものね。


 ……え、そういう趣味ないの?
 私てっきり―――ま、いいわよね別に(何)
 あってもなくても歓迎よ。遊んでくれるならね。
 くすくす。

57 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:00:590

「残念だが、画材が足りなくってね。筆を振るうのは万全なんだが」

「あら、こっちには人間がいっぱいいるじゃない。絵の具には困らないでしょ?」

「人間には飽きちゃってね」

「そうなんだ。人間以外はこっちだと少ないから大変ね」

「居ても鮮度が低くてね。ところで、お嬢さんは幾つかな?」

「ほんの495年ほど。でもこういうことは女の子に聞いちゃ駄目よ、お兄さん?」

「は―――それは済まなかったね、お嬢さん。お詫びにダンスでもいかがかな?」

「あら、ダンスのお誘いなんて素敵ですわ。でも私は絵の具にはなれないわよ?」


58 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2007/03/07(水) 22:02:230

 無防備であどけない少女とは言え、壮絶で凄惨な絵を見せるこの空間に立つコトができるのだから、
手を抜くわけにも行くまい。
 なにより、『線』も『点』も辛うじて見える程度なのだから―――――まったく、俺も誰かのコトは笑え
やしないようだ。

 感謝するよ、兄弟。  ―――――オマエの体質のお陰で愉しめる。

「ならば乾く前に色を着けるだけさ。―――――と、自己紹介がまだだったね。吾は七夜志貴。個展
『惨殺空間』の準備に忙しい、しがない殺人鬼さ」

 逆手に構えたナイフは物欲しそうに怪しげな光を鈍く放ち、紅い月よりなお紅い液体を滴らせる。そ
れはまるで品のない犬のような姿だ。
 しかし妄りに振舞う女のような芳香に、否が応でもこの躯は反応する。

            手が、
                腕が、
                    足が、
                        脚が、
                            心音が、
                                 思考が、

                          早く―――
                        速く―――
                      疾く―――

 殺せ、殺せと発情したかのように、囃し立てる。

 まあ、待て。
 未だ夜は長く、月は空を我が物としたかのように天に収まり、太陽は惰眠を貪っている。
 ならば吾等に残された時間は両の手で抱えきれぬほどに存在し、絶頂に到るまでは十分以上に
有り余っている。

 舞台の幕は上がったばかり。
 一幕一場は状況の説明以上の意味はなく、それが殺し合いともなれば小競り合いもいいところだ
というもの。

 巧く殺すのは二の次に、一先ずは挨拶を交わそうじゃないか。
 地を這うように腰を落とし、疾走を開始する。
 この程度なら十分対応できるコトを願っておくよ、お嬢さん?
 

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