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■ とかげ

221 名前:とかげ ◆LIZARD.khE :2009/09/11(金) 22:45:25
んで、つづき。


>>

 かくして物語は終局へ向けて、疾走する。文字通りに地の果てまでも。
 あちらこちらに火の手が上がるも、それは俺らの行く手を遮りはしない。
 行く手を阻む物は何も見えない。ゆえに、ただ前へひた走るのみであり、希望の未来へれっつらごー……
 
 か?
 
 ……はっ、まさか。
 
 絶対的な大前提、「この期に及んで奴が諦めるはずがない」。ゴールするまでは、油断なんか出来ねえ。
 ましてや姫さんはこいつの運転に手一杯だろう。だから警戒は俺の役目だ。
 抜き身の月下美人を右にぶら下げて、何かあればすぐに斬りかかれるよう、油断無く周囲を見据える。
 
 ……その右腕だが、思ったより治りが早い。薄皮がだいぶ形成されてきて、痛覚が抑えられてきている。
 ついでに全身を穿った荊の傷も、ほとんどが完治してきている。
 こいつは、俺の現在の『より』である姫さんの後ろにぴったりくっついているせいか。
 おまけにその姫さん自身も、希望が現実的になってきたとあって、かなり昂揚しているようだしな。
 全身に力が行き渡る感覚。俺だって昂揚しようと言うものだ。
 
 
 “共に外へと行ける”
 
 
 くく、こいつが正真正銘のイーリンとリリーだったら、最高の絵面だったんだろうがな。
 だが代役でも物語は物語だ。
 ハッピーエンドを迎えてみせる。
 警戒は怠らない、だが正直、何が来たって……負ける気はしねえ。雑魚の百や二百、斬り伏せてみせる。
 
 
 
 
 ――というその考えはやはりまだ甘かったのだと、僅かな後に思い知らされた。
 
 
 初めは、奇妙な閉塞感だった。
 
 前方には何もない。吹き上がる炎に煌々と照らされるその光景には未だ、俺らを阻む物は見えない。
 だというのに、何か袋小路へ突き進んでいるかのような感覚に襲われる。
 何なんだ。何があるってんだ?
 
 前方。何もない。
 後方。何もない。
 右方。何もない。
 左方。何もない。
 下方。轍が刻まれるだけ。
 上方。そもそも何もあるわきゃね……え、ええ!?
 
 我が目を疑うとはこの事だ。
 いや、実際には何があった訳じゃねえ。何もない。
 ――ただし、“地面があるのを除けば”、だ。
 
 それは紛れもなく地面だった。何しろ気づけば、土くれや雑草までが見えるほどにその“地面”が
近付いてきていたからだ。
 さらに程なくして、その“地面”がたわみ始める。
 慌てて前方を見やれば、ゴールが待っているはずの地平線までもが歪んでいた。
 ……素直にゴールさせる気は毛頭ねえってか、おい!
 
「くそ――おい姫さん! しっかり運転してくれよ! こりゃこの先あんたのアクセルワークにかかってんぞ!」

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