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■ とかげ

1 名前:◆MidianP94o :2008/08/29(金) 23:52:50


転生無限者【てんせいむげんしゃ】

 生き続けるもの。
 死に続けるもの。
 無限に転生を繰り返すことで、死徒や妖魔とは異なる不老不死を可能とする。
 死ねば肉体を離れ、新たな躯に憑いたり生まれ変わったりするため、追跡は
困難を極める。死徒27祖のひとりアカシャの蛇≠ェ有名だが、教会や協会は
他にもタイプの異なる数人の転生無限者を存在していることを確認している。
 転生無限者が果たして人間なのか、それとも人外なのか。その定義は非常に
曖昧で、機関や研究者によって見解は異なる。

                ――――オーガスト・ダーレス『神秘学用語辞典』より

220 名前:とかげ ◆LIZARD.khE :2009/09/11(金) 22:44:54
>>216↓これ↓>>217-219、の順だな。
ちなみに赤字は追記な。……つーか、入れるつもりで書き忘れてた。


>>

 掴んだ月下美人でそのまま斬り上げ――同時に、左手の鞘を上空に放り投げる。
 空いた左手で嘯風弄月を掴み取り、反転一閃。
 俺流二刀十字斬、ってか。二刀を振るうにゃ流石に鞘は邪魔だからな。
 
 ……どうやら結構なダメージになったようだ。奴の驚愕のツラに胸がすく。
 もっともこれで致命傷だとは思わねえが……残念ながら追撃の余裕はない。
 即席二刀流はそうそう続かねえし、それに俺にはやるべきことがある。
 こいつを殺るのは決して「本懐」じゃあない。それよりも……片手フリーにしとかなけりゃな。
 
 驚愕が憤怒に塗り替えられていく様を油断無く見つめながらも、右の月下美人を地面に突き刺し
落ちてきた鞘を掴み、嘯風弄月を血振るい、納刀。
 そして…………姫さんが特攻して今に至る。
 いや、つーかやりすぎ。別にやりすぎて困ることはねえけど。
 むしろ「してやったり」ではあるけど。
 
 
「ああ、待ちくたびれたぜ。おかげでイーリンに泥を塗るハメになっちまった」
 
 実際、半分くらいは「見ればわかる」と言った案配だろう。衣服がボロボロってだけならまだしも、
右腕が「中の肉が剥き出し」となりゃあ、な。
 それに姫さんのことだ、おまけに俺が何をやらかしたかさえも、あのバカの様子から察しを付けるかも
知れねえしな。
 
 ……不甲斐ねえ、な。こうして我が身振り返ると。
 それでも、やっとの思いで掴んだ活路だ。不死者が死人の振りをする、なんて狼藉働いてまで
切り開いた脱出口だ。
 何としてでも逃げてやる――一緒に。
 そう。
 
 ……差し伸べられた手を取る代わりに、ある「もの」を拾い上げ、手渡す。
 
 そいつは、さっきの激突でアセルスが取り落としたもの。
 絶対に渡すべきではないもの。
 不甲斐ない俺が手放してしまった、俺のものではあったが、もう俺のものではないもの。
 ――切り落とされた、「イーリンの」、右腕。
 俺は自分の手で姫さんの手を握る代わりに、そいつを握らせた。
 ……今のこの血塗れの腕は、最早イーリンの腕ではない。こんな手では握れない。
 それにこいつを持って行かなけりゃ、目的は果たされない。拾っていくためには片手が必要……
と、そういうわけだ。
 
「ああ、気味悪いとか言うんじゃねえぞ? そいつも一緒に、弔ってやらなきゃいけねえからな。
 本当は俺が持って行くべきなんだろうが、まだまだ攻め手で手一杯になりそうなんでな。
 預かっといてくれや」
 
 手が空いたので、行きがけの駄賃とばかりに月下美人を引き抜いて、姫さんの後ろに跨る。
 これで全部だ。これで手の届くものは全部、奪い返してやった。
 奴の言う「喜び」、文字通りの偶さかの喜びさえもだ。
 あとは。
 
「それじゃ、仰るとおりノンストップで頼むぜ、姫さん!」
 
 逃げる、だけ。

221 名前:とかげ ◆LIZARD.khE :2009/09/11(金) 22:45:25
んで、つづき。


>>

 かくして物語は終局へ向けて、疾走する。文字通りに地の果てまでも。
 あちらこちらに火の手が上がるも、それは俺らの行く手を遮りはしない。
 行く手を阻む物は何も見えない。ゆえに、ただ前へひた走るのみであり、希望の未来へれっつらごー……
 
 か?
 
 ……はっ、まさか。
 
 絶対的な大前提、「この期に及んで奴が諦めるはずがない」。ゴールするまでは、油断なんか出来ねえ。
 ましてや姫さんはこいつの運転に手一杯だろう。だから警戒は俺の役目だ。
 抜き身の月下美人を右にぶら下げて、何かあればすぐに斬りかかれるよう、油断無く周囲を見据える。
 
 ……その右腕だが、思ったより治りが早い。薄皮がだいぶ形成されてきて、痛覚が抑えられてきている。
 ついでに全身を穿った荊の傷も、ほとんどが完治してきている。
 こいつは、俺の現在の『より』である姫さんの後ろにぴったりくっついているせいか。
 おまけにその姫さん自身も、希望が現実的になってきたとあって、かなり昂揚しているようだしな。
 全身に力が行き渡る感覚。俺だって昂揚しようと言うものだ。
 
 
 “共に外へと行ける”
 
 
 くく、こいつが正真正銘のイーリンとリリーだったら、最高の絵面だったんだろうがな。
 だが代役でも物語は物語だ。
 ハッピーエンドを迎えてみせる。
 警戒は怠らない、だが正直、何が来たって……負ける気はしねえ。雑魚の百や二百、斬り伏せてみせる。
 
 
 
 
 ――というその考えはやはりまだ甘かったのだと、僅かな後に思い知らされた。
 
 
 初めは、奇妙な閉塞感だった。
 
 前方には何もない。吹き上がる炎に煌々と照らされるその光景には未だ、俺らを阻む物は見えない。
 だというのに、何か袋小路へ突き進んでいるかのような感覚に襲われる。
 何なんだ。何があるってんだ?
 
 前方。何もない。
 後方。何もない。
 右方。何もない。
 左方。何もない。
 下方。轍が刻まれるだけ。
 上方。そもそも何もあるわきゃね……え、ええ!?
 
 我が目を疑うとはこの事だ。
 いや、実際には何があった訳じゃねえ。何もない。
 ――ただし、“地面があるのを除けば”、だ。
 
 それは紛れもなく地面だった。何しろ気づけば、土くれや雑草までが見えるほどにその“地面”が
近付いてきていたからだ。
 さらに程なくして、その“地面”がたわみ始める。
 慌てて前方を見やれば、ゴールが待っているはずの地平線までもが歪んでいた。
 ……素直にゴールさせる気は毛頭ねえってか、おい!
 
「くそ――おい姫さん! しっかり運転してくれよ! こりゃこの先あんたのアクセルワークにかかってんぞ!」

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