■掲示板に戻る■
全部
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
最新50
read.htmlに切り替える
ファイル管理
■ RHマイナス板専用テストスレッド
- 1 名前:名無し客スナイパーカスタム:04/09/22 02:20
- 様々な書き込みテストにご使用ください。
- 469 名前:なめんなよ、この名無し:2006/09/02(土) 04:41:15
, 、 -‐ ‐ - . 、
/ ".i 、
./i i ヽ
i i i i
i .i .i i
i ノ i i .i /i
iヽ' 、ヾi / ヽ/` i
i 〉、__ 、.,__,ゝメ,__,.、 -ェ' i
.i `'ー--‐''´i レ`'‐-‐'´ i i
i´ヽ , ヽ.,_, -‐' ,ノ
ゝ.,iヽー ..入 ,k' i
i/ i´ `""` ´yヽ i
i . γ -ニ二ニ=-`' .ゝi
'、 ー-‐'' 乂
ゝ., .,t'`
`''ー - ‐'
- 470 名前:なめんなよ、この名無し:2006/09/02(土) 14:33:54
- 規制テスト
- 471 名前:なめんなよ、この名無し:2006/09/02(土) 18:35:31
- かきこみてすと。
- 472 名前:テスト:2006/09/05(火) 03:01:39
- 性質
- 473 名前:◆7v.r55Qi.w :2006/09/23(土) 10:16:02
- テスト
- 474 名前:なめんなよ、この名無し:2006/09/24(日) 01:18:43
- テストテストテスト
- 475 名前:なめんなよ、この名無し:2006/09/29(金) 01:57:40
- 試験書き込み
- 476 名前:レナス・ヴァルキュリア ◆AesirGt.x6 :2006/10/09(月) 09:16:20
- もう一度テストさせて頂く。
- 477 名前:テスト名無し:2006/10/19(木) 03:00:43
- テスト。
- 478 名前:テスト名無し:2006/10/19(木) 03:01:46
- テストする。
- 479 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/03(金) 20:35:26
- 一刻館
- 480 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/03(金) 20:36:55
- 最微塵
- 481 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/08(水) 01:21:32
血の河を踏みしだき、凶々しき軍靴がゆく。半世紀余り昔と同じように。
つい先ほどまでこの壮麗なホールには、人知の及ぶ限りの贅によって満たされていた。
テーブルにはさほど手もつけられぬ豪華な料理が山と積まれ、バンドは優雅なメロディを奏で、
くるくるとルーレットが回っていた。
注がれるそばから干される酒、さんざめく笑い声、そして着飾った女達。
だが、もうそんなものはない。
なくなってしまった。
VIP達の半数は物言わぬ血袋と化して転がり、残りはこれから饗される血袋として縛り上げら
れ、別室に監禁されていた。
最高級ホテルの豪奢をそのまま空に移し、南極遊覧飛行に飛び立った筈の巨大飛行船は、殺
戮の暴嵐に軋みを上げる獄門船と成り果てたのである。
現在、紳士淑女の代わりに大パーティホールを埋め尽くしているのは兵士達だ。
野戦服、親衛隊、空軍(ルフトバッフェ)。各所で鈍色に輝く紋章は――鉤十字である。
そう、かつて欧州を征した狼たち、二十世紀最強の悪人軍団――ナチス・ドイツ。その筋金入
りの精鋭野郎どもであった。
軍集団の眼前に設置された簡易お立ち台の階段を、軍靴の主―― 一人の美女が登っていく。
ナチス親衛隊の軍服・軍帽に身を包み、マントを羽織った彼女――SS大佐にして大魔導師グ
ルマルキン・フォン・シュティーベルは、台上で腰のサーベルを抜き払うと、
「貴様らァ!!」
溜め無しでいきなり叫んだ。
スピーカー不要、ドーラ列車砲もかくや蛮声であり、口蓋帆即ちのどちんこ丸出しである。
眉毛のない怜悧な美貌は顔中口となり、既に見られたものではない。
「――貴様らみんな、レン高原へ行きたいかァァァァァァァァァァッ!!」
音の核爆発のような大佐の問いに、一拍置いて兵隊どもは「ヤァァァァァッ!」と応じた。
「奈落堕ちしてもレン高原に行きたいかァァァァッ!!」
「ヤァァァァァッ!」
「狂気山脈は怖くないかァァァァァッ!!」
「ヤァァァァァッ!」
ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよーん――
と船体は大いに揺れた。
それは絶叫と足踏みとジェンカのステップと、意味もなく火を噴くエルマ・ベルケMP40短機関銃
の銃口や、導火線が抜かれたM24型柄付手榴弾(ポテトマッシャー)のヘイパス! パス! ドリ
ブルドリブル! な投げっこによる小爆発の所為であった。
同僚の癖にグルマルキンと仲が悪いヘルマン・タッツェルヴルムだが、ついノリノリで追加武装
のドリル右腕を突き上げながら「守れ友を倒せ敵を!」などと叫んでしまい、マシーネン・ヴァル
キュリアことヴァルトラウテ中佐にはっ倒される、といった光景は微笑ましい部類である。
つき合いきれん、という顔で壁際に引っ込んでいる面子もいた。レップ中佐やジェームズ・ホワン
ら、(表面上は)やや冷静な人々である。
脱糞するヤン、尿漏れするルーク、前日に吟味済みのおやつ(三百円まで。バナナは含まない)
をはや貪り喰うレザード等々、一億総発狂化の様相を呈している者どもと比べるといかにもク
ールだが、なに、中身のマッドさは大差ない(多分)。
そう、ここでは誰しもが基地の外にいるのだった。
- 482 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/08(水) 01:22:47
- >>481
例え今まさに総統その人が出現し、オーストリア併合の演説をぶち上げたとしてもこうまでには
なるまいというフィーバーぶりは、グルマルキンがお立ち台からジャンプし、兵隊の群れに身
を投げ込んだ事であっさりと限界突破した。
喉も裂けよといわんばかりの「た・い・さ! た・い・さ!」の掛け声。
「エル・オー・ブイ・イーぼくらの大佐! オーバースト・グルグル最高絶好調!」という、品性っ
て言葉ぁママの腹ん中置いてきたかこの糞虫! 的なシュプレヒコール。
軍兵のウェーブの上を、どこか恍惚とした表情のグルマルキン大佐が運ばれてゆく。
狂乱した人の雪崩の下敷きになり、やや影の薄いクロエネン大佐が圧死寸前なのを尻目に、
とどまる所を知らぬ熱狂は、期せずして国歌斉唱の形へと昇華した。
♪世界で一番 イカれた民族
ドイツ ドイツ ユーバーアレス
命令絶対 規則がいっぱい
ユーバーアレス インデアヴェルト♪
みんなのうたに合わせ、船外では制空権を確保したリヒトホーフェン大尉ら吸血鬼撃墜王(ヴァ
ンパイア・エース)、空中機甲兵ロンギヌス13による合同アクロバッティング・ショウが、今まさ
にたけなわであった。
因みに演目は「竜鳥飛び」や「クモの巣攻撃」などである。
そして魔女の箒を傍らに、船体の頂上に腰掛けたふみこ・O・Vは、口の端を冷ややかな形に歪
めるのであった。
いざゆかいでか、我ら約束の地へ。
嗚呼、ナチス第四帝国の明日は明るい……。
――――船体後部から垂れたケーブルに必死で掴まり密航中の私こと、弓塚さつき記す。
寒いよ志貴くん……。
【空戦祭り本編へ続くものか、馬鹿め】
- 483 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/09(木) 02:10:42
- ―――――世界は薄闇に包まれる。
何処の国でも日没の光景はさほど変わる筈もなく、徐々に徐々に世界は太陽に暗幕を
掛け、全てに等しく闇の訪れを告げる。だがまだ性懲りもなく太陽は世界に別れを告げる
のを惜しんでいる為、中途半端に赤い光を放っている。
この広大な甲板もまた例外ではなく、血を連想させるかのような光に包まれ、私と他に
もう一人――この船には似合わない風体の――を残し、訪れる夜を待つだけだ。
これではまるで、巨大な『船』で、彼と二人きりになってしまったかのように錯覚してしまう。
そう、私は巨大な船の甲板に立っている。どのパーツを取っても全て独逸に在る資源の
みで造られたと言うこの船は、現代の科学力の粋を結集して建造された―――『飛行船』。
時代錯誤も甚だしい、まるで御伽噺の中の登場人物になったかのような気になってしまう
形状は、私の中の童心を擽るに相応しい。
気球に乗って空を飛ぶ。誰もが一度は夢見たような――しかし簡単には叶わない夢では
あるが――を叶えるには充分過ぎる程造り込まれた飛行船。外観を見ただけで思わず私は
溜息を漏らし、開いた口が塞がらなくなってしまったほどに――素晴らしい。
現代科学の結晶でありながら、まるで時を遡ったかのように感じさせる無駄のないボディ。
しかし、遊び心もしっかりと感じさせてくれるのだから、設計者は浪漫の何たるかをしっかりと
理解しているに違いない。
全長651m。
全高153m。
全幅208m。
最大速力152Km/h。
最大乗員数562名。
エンジンは両翼に2基――姿勢制御用を合わせるならば14基。
内装は豪奢を誇り、客室は高級ホテルのロイヤルスウィートルームを更に凌ぐとまで言われ、
定員二名の部屋だったとしても、大人十人を詰め込んだ所でなおスペースが余る。
更に各国のVIPを接待する為に設けられた遊戯室にはルーレットは勿論の事、ラスベガスを
凌ぐ勢いのカジノが開かれている。一日に何千、何万と言うドルが動くのは見ていて圧巻では
あるが、その裏にある『何か』を疑わずには居られない。
またダンスホール、バーラウンジ、パーティールームなどは最高級のアンティークで彩られ、
華やかでありながらも落ち着きを持った雰囲気を醸し出し、正に上流階級の社交場と呼ぶに
相応しい造りだ。
また、最大乗員数562名とあるが、実際に持て成される側として乗るのは200名前後。後の
残りはこの船のスタッフで締められ、一人一人にサービスが行き届くようになっている。まあ、
今回の渡航ではスタッフも合わせて200名ばかりしか乗ってはいないのだが。
言わば今回の渡航は、この飛行船のお披露目を兼ねた物であるからだ。現代科学の結晶
を多くの人に見てもらおうと言うのは分からないでもない心理だ。そしてそのプレミア性に集る
人間が多いのも事実だろう。かく言う私もその一人なのだから。
「失礼致します。そろそろ出航ですので、船内にお入り頂けますか?」
「ああ、失礼。あちらの男性にも声を掛けておいて貰えるかな」
どうやらもう出航の時間だ。
私は甲板と――名残惜しくはあるが――暫しの別れを告げ船内へと戻る。
敷き詰められた赤い絨毯は、外の光すら吸い込み、眼に痛いほど赤く輝く。
―――『Zeppelin Neue Ara』
そう名付けられた船は正に今飛び立たんとする。
微かに響くエンジン音に心を震わせながら、割り当てられた客室に戻り、外の景色を眺めて
いるとしよう―――――。
- 484 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/09(木) 04:53:43
- 「ツェッペリンによって創造された歴史は、ツェッペリンにより再び浮上する」
1937年5月。大西洋横断航路に就航していた硬式飛行船ヒンデンブルク号は、原因不明
の出火事故を起こし爆発炎上。この悲劇は巨大飛行船時代の終焉を告げるものとなった。
―――それから70年。
「伯爵の曾孫」によって、ツェッペリンは再び空を往く。
「新たな時代のツェッペリン(Zeppelin Neue Ara)」と名付けられた、全長1キロにも
及ぶ超巨大硬式飛行船は、ドイツ製飛行船による空の再征服計画「ネオ・ツェッペリン
・プロジェクト」によって完成された現代飛行技術の結晶だ。
フンフツェーン・フォン・ツェッペリン伯爵によって発案されたこの企画は、スピード
ワゴン財団やトムスン・アンド・フレンチ商会など多くの有力者による出資協力や、ツェ
ッペリン・ルフトハンザ社などの飛行船企業から人材支援を受け、ヒンデンブルク号爆発
炎上より70年目の今日ついにお披露目となった。
現在公表されているスペックは以下の通りである。プロジェクトチームによると、より
詳細なスペックは企画の次段階「ツェッペリン事業の開拓」に併せて公表するとのことだ。
姿勢制御用小型エンジン12基
推進用メインエンジン2基
全高約350メートル
全長約1000キロメートル
最大飛行可能距離5000キロメートル
大雑把なスペックだが、これだけでも「ツェッペリン・ノイエ・アラ号」が如何に巨大
な飛行船かは分かるはずだ。現在のところ、これを上回る飛行物は地球上に存在しない。
「新たな時代」の名に相応しい超ド級飛行船だ。
プロジェクトの立案者であり、飛行船の設計技師でもあるフンフツェーン・フォン・
ツェッペリン伯爵は完成したド級飛行船に絶対の自信を賭けている。
彼の野望は曾祖父である飛行船の父<cェッペリン伯爵が成し遂げることのできな
かった「飛行船ビジネスの完成」だ。
そのためには、今回の規格外な超ド級飛行船がどうしても必要だったと語る。
「現在、空は航空機によって支配されている」
「移動手段、輸送手段としての空の征服者は、以後数世紀航空機のままだろう」
「だが空を楽しむ≠ニいう一点においてだけは、今後の王者はツェッペリンだ」
「航空機の台頭によって忘れ去られた空の魅力はツェッペリンによって想起される」
空を楽しむため。なぜ、プロジェクトのお披露目の第一段階が超豪華遊覧飛行なのか
という問いに対して、伯爵はそう答えた。富裕層のための新たな娯楽提供が第一の目的。
次に軍事利用。輸送や移動手段としての利用はあくまで二次目的に過ぎないと語る。
事実、今回の進水式°yび処女航海≠フために用意された「南極上空遊覧飛行の
旅」は最安値のプランで1千ドルだというのに、一般受付を開始する前に各国のVIPによ
って席は買い占められてしまった。伯爵自身は乗り合わせず、離陸地のニュージャージ
ー州レイクハースト――ヒンデンブルク墜落の地だ――で飛行を見守る予定だと言う。
「南極上空遊覧飛行の旅」はアメリカ合衆国ニュージャージー州から出発し、途中アルゼ
ンチンで物資と燃料補給を受けてから南極上空を3日間遊覧、その後は全速力で帰路に就
き、生産国のドイツで着陸するという。全日程7日間豪華遊覧の旅だ。
広大な容積を誇るゴンドラは、その殆どを娯楽施設と客室で占められている。飛行船と
いうよりも、空に浮かぶスウィートホテルと言ったほうが正しいだろう。
ツェッペリン・ルフトハンザ社この旅程の成功により、飛行船による観光ビジネスは
一気に注目を浴びることになると強きの姿勢を見せている。
―――エアシップ・マガジン11月号特集『再浮上するツェッペリン』より抜粋
- 485 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/12(日) 17:34:08
- テスト
- 486 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/12(日) 17:40:04
- さすが名無しだ、NGワードなんてアウトオブ眼中。
- 487 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/12(日) 17:43:15
- test
- 488 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/12(日) 20:51:29
- NGワードひっかかりテスト。
- 489 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/14(火) 22:07:46
- テステス
- 490 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/16(木) 00:39:30
- 意識に、灯が点る。
闇の中で意識は、朧気な光を放ちながらも、やがて一つの像を結ぶ。
目を開くと、其処は地下墳墓を思わせる空間だった。
堆く積み上げられた無数の木箱は柩さながらで、或いは物言わぬ墓標とも見える。
しかし、其処には墓地特有の悼惜たる念を感じることはない。
共通するのは唯、やがて訪れる忘却という名の死の匂い。
「Sieg heil , ようやくのお目覚めか。
かつてのよしみで箱の中から見つけ出してやったはいいが、貴公ら、すっかり壊れてし
まったかと思ったぞ」
その墓標……否、木箱の一つに腰掛けながら、一際濃密な、死の匂いを孕んだ黒い影が
声をかけた。
闇に溶ける黒の外套と同色の制服。
肩よりもやや短く切り揃えられた金色の髪。
怜悧な美貌は、しかし右目に残る疵痕と共にその奥底に野獣めいた残酷を覗かせている。
「……貴殿か、グルマルキン」
男は、重い歯車が油を切らし軋みを上げる様に、声を出した。
それに応じ、グルマルキンは口の端を吊り上げた。
「口は利けるようだな、話が早い。
貴公ら両名にお誂え向きの任務がある」
「断る」
間、髪を入れぬ拒絶にも動じず、グルマルキンは更に言葉を継ぐ。
「討ち死にもまた武人の誉れ、勲しか?
だがな、ガラクタ人形どもの行くヴァルハラなど有りはしないのだよ」
皮肉気な笑みを浮かべながら。
「そのことは貴公にも十分に理解出来たはずだがな。
さもなくば此所で朽ち果てるのを待つか、それとも米国人どもの晒し者になるか。
理解できたなら返事を聞こう。
“Ja”か“Nein”か」
――手許へと目を落とす。
腕の中で身を横たえているのは、余りにも華奢な、未だ少女とも見える姿。
その豊かな金髪の一房が頬に掛かるのを、武骨な指でそっと払った。
「私に、そうするに足る理由があるというのかね?」
「理由……そうだな。
望む限りの報償がある、といえばどうするかな」
自信に溢れるその口振りに、彼は眉根を寄せた。
「……貴殿、何を企んでいる」
「随分な言い種だな。
『望むものをくれてやろう』、こう言っているのだよ。
現にその力は我らの手の内にある」
腰掛けていた木箱の、その一つに手をかけながら、指先でこつこつと叩いて見せる。
「“Die Verlorene Arche”、『神の力』だよ。
ではもう一度問おう。
返事は“Ja”か“Nein”か」
目を閉じる。
刹那の、重い静寂が周囲を包む。
――再び目を開くと、男は意を決しこう告げた。
「“Ja”-“Javohl”.
鉤十字騎士団四騎士が一騎、ヘルマン・タッツェルヴルム、同じくヴァルトラウテと共に
現時刻を以て戦列に復帰する」
- 491 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/16(木) 21:40:59
- test
- 492 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/17(金) 23:31:10
- 牙と棺桶をあしらった枠のなかで、三連のドラムが、縦に回っている。
俺は慎重にボタンを押した。ひとつ、ふたつ……和風の少女が、二つ並ぶ。リーチだ。
軽く舌で唇を湿らせ、三番目のボタンに指を置く。慎重に、タイミングを見計らい――
ガクン
船が揺れた。乱流に揉まれたか、いやそれにしては鋭い揺れか、そんな一瞬の警報が脳裏をよぎるが、
「ああ、くそ!」
悪態の前に警戒心は吹っ飛んだ。スロットマシンの3列目には、隈取を施した暑苦しい吸血鬼の顔が収まっていたのだ。
揺れた拍子に押しちまったらしい。
遊びに注がれていた熱を冷ますのは、いつだって無粋な外からの干渉だ。
すっかり興をそがれた俺は、「吸血鬼スロット」(誰が考えたか知らないが、アホなシロモノもあったもんだ)の筐体をバンと叩くと、その場を離れた。
ぶらぶらと歩きながら、俺はカジノを見渡した。
紳士淑女の皆々さま方は、今日も賭け事にご執心だ。いやいや、十把一絡げにすべきじゃあ、ない。
カジノに慣れて存分に楽しむやつ、場の空気を支配しちまう油てかてかのおっさん、巧みな話術で淑女に人気のディーラー、
慣れない様子でエスコートされる少女、等々、等々。
その中に入って遊ぶのも良かった。いやさ、ちと飽きちまったのだ。
この飛行船、豪華はいいのだが、イマイチ俺の興味を引くものがなく、やむなくカジノに入り浸ってたわけだが、
どんな遊びもぶっ続けじゃ飽きる。賭けそのものにも、人にもだ。
もうひとつ言やあ、ここのカジノは、ディーラーにもうちっと金使ったほうがいいな。
ま、場の質は結構な度合い、ディーラーに左右されるっつーことだ。
そんなわけで、興味を引くものを探して隅っこのスロットマシンまで一巡りしたのだが、さすがに好奇心も打ち止めだ。
俺はカジノの隅のバーに行き、カウンターに陣取って、投槍にカクテルを頼んだ。ブラッディナントカ。
バーテンが妙な顔をする。俺が、いいからやれよ、という顔をする。バーテンが後ろを向いてカクテルを造り始める。
カクテルが出てきた。ブラッディナントカ。赤い。煽る。不味い、なんだこのタルい喉越しは。
バーテンを睨む。ヤツが知らん顔をする。俺はさらに煽り、不機嫌な顔で頬杖をついた。
ああくそ。
- 493 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/19(日) 20:24:52
- ○コダマ導入
Where there's Lights, Shadow's lured and fear rains and by the Blade of Nights, mankind was given HOPE.
- 494 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/19(日) 21:42:44
- >>493は気にしない。
○コダマ導入
Where there's Lights, Shadow's lured and fear rains .
光あるところに、漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた。
and by the Blade of Nights, mankind was given HOPE.
しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ。
―――かつて、人類は闇に生きる魔獣『ホラー』と果ての無い闘いを続けていた。
しかし、『守りし者』魔戒騎士と、彼らを支える者たちの絆によって人類はホラーに打ち勝った。
人類は、ホラーとその始祖“メシア”を流刑地と呼ぶべき牢獄『真魔界』へと封じた。
だが、今もホラー達は真魔界より現世へ出でるための唯一の手段である、陰我を宿すオブジェへと群がる。
そして、魔戒騎士たちも「守るべきもの」を守るため日夜ホラーとの闘いを続けている。
そんな魔戒騎士たちを統括しホラーを送還する役目を負う『番犬所』は、正常に機能していた。
そう、表向きは―――。
「……メシアを、蘇らせられない?」
目深に被ったフードで顔を隠した若々しい男の声が、東の『番犬所』を静かに打つ。
「ええ」
男の言葉に答えたのはブランコに乗った三人の少女、彼女らはこの東の『番犬所』を担当する神官。
何百年という長い時を生きたその魂は、もはや人間のままでは居られなくなっていた。
大人びたケイルの返答を受けて、ベルが言葉を続ける。
「時空の法則……因果律の因果が狂いだそうとしています」
三人の中でもっとも幼い印象のローズが、さらに言葉を続ける。
「鍵十字の亡霊は、南極の奥地に眠る狂気の王の座に迫ろうとしています」
フードの男――暗黒魔戒騎士バラゴ――は、彼女らの返答に疑問を投げかけた。
「……理論的に言って、その亡霊たちがやろうとしていることがどうしてメシアの復活を阻むことになるんだ?」
これにはベルが答える。
「今この世界を覆う時空の法則は、メシアが真魔界に封じられたその時から不変のもの」
ローズが続く。
「その法則が狂えば、用意したゲートが役割を果たさなくなる可能性が大なのです」
「つまり、バラゴ様の宿願である『メシアとの融合』は果たされなくなるのです―――」
ケイルが締めくくると同時に、“主”であるバラゴの返答を待つように押し黙る。
「―――つまり、亡霊たちの思惑を潰さなければ僕は最強にはなれないということか」
バラゴは、フード付きローブのポケットに収めていた招待状を握りつぶしそうになる。
その招待状こそ、バラゴの表の顔である心理カウンセラー・龍崎駈音に充てられて
送られてきた「Zeppelin Neue Ara」号の遊覧飛行のへの搭乗券だった。
「ええ、ですがバラゴ様のお手を煩わせるまでもありませんわ―――コダマ?」
ケイルが今にも飛び出していきそうなバラゴを止め、沈黙を保ち続けていた従者・コダマに声をかけた。
長身痩躯、しかし寡黙。鍛え抜かれているであろう肉体をタキシードで包み、影のように寄り添う男。
「貴方が行って、亡霊の夢を覚ましてあげなさい?」
「夢は生きている者が見るもの」
「かび臭い亡霊が見てはいけないもの」
三人は口々に命令をコダマに下し、微笑う。
コダマも、彼女らの言葉に眉一つ動かすことなく従う様子を見せる。
「ああ、それならば僕からも餞がある」
バラゴは、ポケットから搭乗券を―――胸元から小さなガラス瓶を取り出し、コダマに差し出す。
「バラゴ様、それは―――」
「ああ、『変化の秘薬』だ」
バラゴの隠す素顔には、正面から刻まれた十字の傷がある。死の呪いが掛けられた傷だ。
バラゴは、死の呪いから逃れるために変化の秘薬を用いて容貌を変える必要が在った。
「ストックに限りがあるとはいえ、この場合は仕方ないだろう。
なにしろ、この招待状は『龍崎駈音』に充てられたものだからね」
龍崎駈音本人が『代理人を立てる』といってもキャンセル扱いになる可能性が高いだろう。
招待者が望んでいるのは、どこの馬の骨ともわからない人物ではない。文化人『龍崎駈音』だ。
「コダマ、君はこの薬で『僕の顔』に顔を変えるんだ。服装は……そのままで良いだろう。
どうせ、下らないパーティがあるんだ。礼装しておくに越したことは無い。
声は……筆談で『医者に声を出すことを止められている』とでもしておけば良い」
―――コダマは考える。母と“主”の命令は絶対だ、と。
母の願いである「メシアの降臨」、それを妨げるものはあってはならない。
人類を守る魔戒騎士であろうと、滅び去った鍵十字を掲げ続ける者たちであっても。
「出来れば、土産に鍵十字の影に隠れたホラーを狩ってきてほしいが……『養殖物』は味が薄そうだ」
バラゴは知っている。かつて、『第四帝国』の栄光を求めた者達は人工的にホラーを人間に陰我憑依させる技術や
魔術を用いた兵器を手にしようとしたことを。
だが、所詮は紛い物だ。メシア復活の糧にもなりそうにない。
「さすがでございますわ、バラゴ様」
「その慧眼に、ますます感服いたしました」
「我らの願いは、バラゴ様とともに」
そして、ケイル・ベル・ローズは心の中で嘲笑う。バラゴは大事な餌なのだ。
ここでしゃしゃり出て、帰ってこれなくなったら元も子もない。
最も信頼するコダマならば、首尾よく目的を果たすだろう。
陰我と因果の糸車に、思惑は絡み合う。
二日後、コダマは遠い異国の地・レイクハーストに、『龍崎駈音』の顔で。
母の願いを叶えるために、その先に光明の見えぬ闘いにその身を投じようとしていた。
- 495 名前:自己紹介スレテンプレテスト ◆DOGS.MVbhk :2006/11/21(火) 04:36:02
- このスレは祭りに参加するメンバーが自身の能力を評価するスレでござーます。
別に全員の能力を纏めるのが面倒だった訳では……まぁ、面倒だったんだけどさ。
>スレの趣旨
祭りの中では、常に見知らぬ誰かとカチ合ってしまう可能性がある。そうなった時に自分の
能力がちゃんと伝わっていないと、上手く次に繋げられない。
特に「絶対やってほしくない事」や「確実に死ぬ弱点」なんかを、相手が意図しないうちにや
られてしまった場合、早々に退場せねばならなくなってしまう。
そんな自体に陥らないよう、敵も味方も互いの事をよく知っておく必要がある。
要するに「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という事だ。
……いや、俺みたいな単純な奴だと、あまり意味はないけど。
>ルール
・必ずテンプレを利用する
・直リンしない
・妄想設定はやり過ぎない(やってもいいけどキャラ壊したら×)
・自己紹介以外のレスは全て陰スレや会議スレへ(ノイズになるから)
・祭りの最中に見ても大丈夫な判り易い構成にする
>テンプレ
名前:
出典:
性別:
年齢:
外見:
能力:
装備:
>紹介時の注意
"名前"と"出典"はそのままの意味。
"性別"は見た目や口調、名前から判別出来ない莫迦のため。俺とか。
"年齢"は実年齢の他、「この年齢であると思ってもらいたい歳」を書く。
例えば俺なんかは「大体十代後半ぐらいだろうか」と相手に表現してもらいたいから。
A、B、Cの三人がいて、BがAを十五歳と思い、CがAを十歳だと思ったりしたら変になる。
別にどうにでもして、っていう人は、あまり気にしなくていい。
"外見"は画像を持ってくれば相手に色々な表現をしてもらえるので吉。
但し一刻館用アップローダーに張り付けて持ってくる事。直リンは禁止。
どうしても画像がない場合は、上手く言葉で説明するしかない。
"能力"は一番重要なところ。自分の能力を簡潔に、判り易く説明する。
誰かと戦う時、相手がここさえ見れば円滑に進められるぐらいが丁度いい。
特に出典限定の専門用語や法則などを駆使しなければならない場合は念入りに。
「本当は持ってるけど祭りでは使わない」ような力は書かなくてもよろしい。
但し「一応持ってるけど使うかどうか判らない」のは書いておいた方が良い。
"装備"は二番目ぐらいに重要。特別な武器を使う場合など。
基本は"能力"項目と同じで、簡潔に判り易く不足ないように説明する。
場合によっては"能力"よりこっちの方が長くなる奴もいるかもしれない。
言うまでもないだろうが、大殲の目的は必ずしも「勝つ事」ではない。
余計な切り札を隠し持つような事はしないで、ここで全部バラした方がいい。
それに、イザって時の切り札が相手に上手く意味が伝わらないとか、締まらないからな。
……原典見れば大体判るから、隠しても意味ないし。
- 496 名前: ◆MVlNEREMIA :2006/11/21(火) 20:28:01
- テストよ。
- 497 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/23(木) 01:39:25
- 吸血大殲 Blood Lust 大規模闘争 The Carnival
空戦祭/南極戦/ナチ祭り
「新標綱作戦」
――Operation Neue Ziel――
.
- 498 名前:ルーク・ヴァレンタイン(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/24(金) 02:00:53
「何だね君たちは。ここからは立ち入り禁止区域だ」
連絡通路に現れた一行―――――。
操縦室区域担当警備コールマン・コンラッドの前に来た連中は、経験豊富な彼をして明らかに
不審と言わしめるものだった。
深く被ったコートの上から北欧系と分かる男が数名。
先頭に立って彼らを先導しているのは、白いスーツにジャケットを軽く羽織った神経質そうな青年である。
手には同じく白い手袋をはめ、長く伸ばした金髪を後ろで束ねた、端正な顔立ちの男。
「これはこれは失礼。実は私達、フンフツェーン伯の個人的な友人でしてね。
折角だから操縦室の見学をと彼に頼んでいたのですがねぇ……伺っていない?」
あくまで知的で冷静な物腰。
慇懃に応える青年の対応は、それが嘘ではないと思わせる程度には自然体だ。
隣に控えている――この船に派遣された警備会社の後輩でもある――ルドルフならば、それだけで恐縮し
迂闊にもこの場を通しかねないだろう。
彼は気質や実力といった面は悪くないのだが、何分ブルジョアの空気というものに慣れていない。
「失礼ですがそのような話は伺っていませんな。
とはいえ、此方の手違いの可能性があるので確認は取りますが、一旦お戻りいただきたい。
我々も何分、規則ですのでご了承の程を」
この業界でもベテランを自負するコールマンは、元々優秀な軍人だった。
内部のいざこざを理由に一線を退いた後、元上司が勤める警備会社に誘われ今に至る。
さて、もとよりVIPのなりをしていようと不審者と見れば疑わねばならないのが警備員だ。
賓客が実は偽装したテロリストだった、という事例も最近多い。(彼と彼の会社を悩ませる一因だ)
今回のクライアントがVIPではなく飛行船の所有者、ツェッペリン・ルフトハンザ社なら尚更だろう。
ならば、ありうる可能性を徹底的に考慮するのが当然の対応というものであり、事実コールマンは
常にそう努めてきた。ゆえにコールマンのそれは石頭ながら、警備員としてベターな対応であるはずだった。
そう、本来ならば。
「おや、そいつは失礼。では――――」
青年が踵を返す、その半ば。
きわめて自然な動作で掲げられた左腕、手の隙間からわずかに垣間見え光る50センターボ硬貨。
白手袋に包まれた指がスナップを響かせ――――
―――聴こえたのは乾いた破裂音。
経歴上実戦経験も豊富なコールマンの考えが正しければ―――それは明らかに、
人体が撃たれたとき発する着弾音だ。そして全てを現実として認識させるのは音の発生源であり、
コールマンが何事かと振り向いた視線の先。
傍らにいたルドルフが眉間を穿たれ、脳漿をぶちまけ崩れ落ちていく光景に他ならない。
「おやおや、顔色が悪いようだが…?」
男の声は既に聴こえない。
ホルスターの拳銃を抜き放つと同時にセーフティを解除、そのまま流れる動作でコールマンは
銃口を突きつける。クソッタレ、そう、クソッタレだ。
この仕事が終わったら結婚する筈だったルドルフ、そんなルドルフをブチ殺したこいつ、そして
こんな事態を防げなかったコールマン自身。全員がクソッタレという以外にない。
だから銃を突きつけて、引き金に手を添える、誰だろうと動けば撃つ。ためらわず撃つ。
これ以上目の黒いうちは誰も腐った真似なんかさせやしない、そう強い意思を込めて「フリーズ!」の
言葉を叫ぼうとした、瞬間。
「―――大丈夫かね?」
――――肝が冷えて、そして潰れた。
体感時間にして1秒以下、さっきまでそこにいた男が後ろの耳元で囁いているのだから。
幾多の訓練と実績を潜った彼ですら、動いたと視認すら出来ぬSFじみた瞬間移動。そうとしか言いようがない。
まるで悪い夢を見ているかのようだった。
そんな一瞬にも満たない間、コールマンがパニックに陥る精神をギリギリで繋ぎとめた時にはもう遅く――――
青年は消えて、軌跡だけがコールマンの周りに弧を描く。
次にその白い姿が現れたとき、歴戦の警備員であったモノは輪切りの肉片となって転がっていた。
人体の急所その全てを切り刻まれ、かつ出血は医学的限界の最小限に抑えられて。
「少し時間を食ったか、急ぐぞ」
惨殺した相手に一切の感慨もなく。
取り出したハンカチでナイフの血糊を拭いながら、白スーツの青年――――ルーク・ヴァレンタインは
飛行船の制圧班を従え、規則正しい歩調で操縦室へと歩き出した。
- 499 名前:ルーク・ヴァレンタイン(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/24(金) 02:07:31
- >> 続き
――――新要綱作戦(オペラツィオン・ノイエ・ジール)。
それはすなわち鉤十字騎士団の魔女と、総統代行とも接触したあの錬金術師の手による混沌の顕現。
突きつけられた命令書の存在だけではない。
その最高とも云える戦争の舞台を、元よりあの狂った大隊指揮官が見逃すわけもなかったのである。
『最後の大隊』が今作戦に際して派遣した戦力、その数々が何よりも物語っている。
制圧・飛行船の制御を役目として結成されたSSおよびドイツ空軍出身の吸血鬼たちは元より。
狙撃兵として遊撃を務めるレップ中佐、襲撃班には彼とヤンの兄弟。
そして命令系統には属さないが――――『最後の大隊』現時点での最高戦力である人狼(ヴェアヴォルフ)『大尉』。
――――要は入れ込んでいるという事だ。あのお方も。
操縦室から見えるオーロラの遠景。
銜えた紙煙草から紫煙をくゆらせ、ルーク・ヴァレンタインはそう一人ごちた。
喫煙を―――否、それ以前に不法侵入を咎める警備員も操縦員も、もういない。
正確には、「だった」モノが今ダストシュートに運び込まれている真っ最中だ。
代わりに居るのは彼に随行してきた元ドイツ空軍士官の吸血鬼たち。
飛行船操縦に関するマニュアルは既に叩き込んである、あとは本隊を迎え入れるための
細かい調整を終えるのみ。
制圧は当然のように簡単だった。もはや気に留める事ですらない。
桁外れのパワーはただのコイントスを銃弾同然の兇器に変え、袖口から取り出した拳銃の射撃は
1センチの狂いもなく眉間を撃ち抜く。そして、人間には視認すら不可能なスピード。
銃を抜こうとした警備員も。
エマージェンシコールを発動しようとした操縦士たちも。
デクのように殺された連中は、何が起こったという過程もわからず死んでいったに違いない。
そして死因に反し、さしたる流血もなく始末された事実すら。
理由は単純に上からの「部屋に血の一滴すら垂らさず、汚れひとつ無い状態で譲渡せよ」とのリクエスト。
この部屋は制圧後、合流した本隊の司令室として利用するらしい。
仕事は静かに、クールに完遂するものだ。
ルーク・ヴァレンタインの口癖でありモットーである。
人間の限界をはるかに超え、従来の吸血鬼すら凌駕するスペックは彼の効率・完璧を旨とする
志向により活用され、至難を十重二重に束ねたようなオーダーは万全の仕上がりを見せていた。
「さて……通信士、周波数を合わせておけ。仕上げに入る」
その指示と共にルークが取り出したのはシルバーの携帯電話。
呼び出す相手は無論、今作戦でツーマンセルをなす彼の弟、ヤン・ヴァレンタイン。
「こちらルークだ。操縦室の制圧は完了した。
後は打ち合わせどおりだ。こちらの準備は済んでいる、お前のほうのパスコードを入力しろ」
作戦前、大隊指揮官のブレイン『博士(ドク)』から渡された一組の携帯電話。
それには狂った少佐のリクエストを受け、今回の作戦をより“素晴らしく”演出するための発明が仕込まれていた。
片方が特定の周波数を拾い、同調する事で回線をジャックする。
―――簡単に原理を説明すればこうだ。とはいえ、そんな真似をどうやって可能にしたのかは聞いていないし、
渡されたルークにも興味はない。重要なのはもう片方だ。
片方が受信機の役割を担うならば、もう片方は送信機の役割を果たす。すなわち――――。
「そして存分にその汚い口舌を船内にぶち撒けろ、盛大にだ。
それがあの方による命令であり、お前の重要な仕事のひとつだからな」
――――これで、弟の宣言は船内にくまなく伝達される。
その地獄の様を想像してか、あるいはおぞましい仕事の完遂ゆえか。
ルークは歪んだ薄笑いを浮かべた。
弟と何から何まで相反する兄もまた――――その狂える根本は同一なのだ。
『フェンリルは巨人に喰らいつく』。
その一節の通り、破滅を呼ぶ大獣の牙は喉元深くに突き立てられた。
ここから先にあるのはただ一つ、“神々の黄昏”にも等しき戦争の地獄のみである。
- 500 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/24(金) 16:18:36
- 銃を抜く暇も与えられず蜂の巣にされたSP/相手は、日頃の訓練が一切通用
せん相手だと知り、狂騒のままに喉元を喰い千切られた警備員/持ち前の騎士
道を発揮させて、本物のゲルマン騎士に頭蓋を噛み砕かれた青年実業家/
「私はドイツ人だ。当時は国防陸軍に従軍していた」―――老獪な航空会社
名誉会長は「敗北主義者」の誹りとともに短剣を刺し込まれた/ハリウッド
スターは「俺様ちゃんの○○と結婚して離婚したから」という理由でヤン・
ヴァレンタインに殺され/スーツに唾がついたという理由で副操縦士はルーク
・ヴァレンタインに殺された/レップとタッツェルヴェルムに挑んだ警備員は
自分が如何に無謀だったかを知る前に殺された。
狂騒/パニック/慈悲の叫び/怒声/懇願/悲鳴/混乱/パニック/
パニック/銃声/絶叫/銃声/銃声/銃声銃声/銃声銃声銃声銃声銃声。
一秒単位で増えゆく死体。金持ちは死んだ。金を持たぬ者も死んだ。
狂おしき人類平等の到来―――賓客達はやがて学んだ。
彼等は誰にでも平等だ、と。彼等の前では誰もが平等に死ぬ。
生きるための条件。目に付かぬこと。騒がぬこと。喋らぬこと。死体と自分
―――その差を無くすこと。自分達が死体ほどに静かであれば、彼等は命を奪
わない。
彼等は自分達を人質とすら見なさない。その程度の価値すら与えてくれない。
なんて屈辱。だがその屈辱に耐えてでも賓客達は生きたかった。
だから彼等達は黙った。それだけが生きるための道だった。
混沌/騒乱はやがて制圧され、狂騒に変わって押し殺された恐怖が飛行船を
支配する。賓客達の学習―――彼等は生きるために死ぬことにした。
速やかに実行される戦後処理。片付けられる死体。黙々と作業に没頭する夜
の眷属達―――近付くエンジン音。俄に船内が騒がしくなってきた。
今度は賓客共の狂乱ではなく、兵士達の怒声。
「連隊指揮官殿が到着された!」
「手が空いているものは回廊に集まれ!」
「整列、整列だ!」
「良いか、決してSS大佐殿の右眼を見るなよ!」
「死体を片付けろ。血糊を拭け。速く!」
接近するメッサーシュミットMe323ギガント―――ギガントの名を冠する
輸送機も、全長1キロに及ぶ飛行船の前ではただのグライダーに過ぎない。
メッサーシュミットが速度を緩める。飛行船の尻に取り付いた。
ごうん―――音を立てて、再度前部ハッチが開放される。
吐き出される新戦乙女隊/第一戦闘航空団リヒトホーフェン・サーカス/
合計16機のルフトヴァッフェ。―――散会。
新戦乙女隊は哨戒/索敵のために飛行船周辺を縦横無尽に飛び回る。
サーカス―――飛行服を着たガーゴイル達は、スパンダウ機関銃の代わりに
手にした工具で早速ハッチと飛行船甲板を繋ぐ架橋作業に取りかかった。
ブリッツクリークの基本―――橋を破壊される前に敵を駆逐せよ。
もしも破壊工作を許してしまった場合は、速やかに架橋/追撃の再開。
ただし今回の架橋場所はドナウ川ではなく南極の大空だ。
リヒトホーフェン兄弟を抜かした6人の飛行士による突貫の架橋作業―――
五分とかからずに結ばれるツェッペリンとメッサーシュミット。
だが、その繋がりはあまりに脆弱だ。
ツェッペリンとメッサーシュミット―――曲芸じみた飛行速度のシンクロ。
どちらが少しでも速度計算を誤れば、即座に橋は瓦解する。
だが前部ハッチから姿を現した無数の人影は、臆することなくパレードを
開始した。手すりすらない空中の架け橋―――風に煽られて足を踏み外すのが
落ちだ。人間なら誰もがそう思う光景だった。
- 501 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/24(金) 16:19:06
- 凍て付く寒風/不安な足場/エッフェル塔4つ分以上の高度―――全ての障害
を気にも留めず、死神の首魁達は悠然と歩みを進める。
甲板を経て回廊へ。
ホテルの大廊下と見紛う長大にして広大な道―――グルマルキンは幽鬼のよう
に音もなく/しかし強烈な存在感を発して前進する。
「ジーク・ハイル!」
迎えるは百戦錬磨の兵士ども。勝利万歳の咆吼がゴンドラを揺らす。
その数、数十。
掲げられたナチス式敬礼が槍衾のように天へと伸びていく。
回廊の左右両端に一列に並んだ親衛隊。
一行は、モーゼが波を切り開くが如く、親衛隊の間を突き進む。
行進の先頭―――肩で風を切って進むグルマルキン/ゲームのボス。
次列―――グルマルキンに続いて進む女神が二人/右後ろには、大佐に付き
従うモリガン。膨大な規律を課す制服を持ってしても、彼女の肢体から発する
頽廃の波動を抑え込むことはできない/左後ろには清廉なる美貌を引き締め
前進するヴァルトラウテ。整いすぎた容姿はそれ故にあらゆる穢れを許さない。
グルマルキン/モリガン/ヴァルトラウテ―――三人の共通点。
鏡のように磨き抜かれた長靴。しわ一つない漆黒の勤務制服。汗と血と硝煙
とガソリン―――最前線に付きまとうあらゆる汚れ≠ニ無縁の美貌。
そこが一行を歓迎する武装SSとは決定的に違った。
続く第三列―――打って変わって不可解な身なり。
親衛隊の制服は身に纏っていない。純白のドレスシャツの上に、蒼いチェニ
ックを着込み、その上から更にマントを羽織っている。衣服にはそれぞれ凝っ
た意匠が施されていた。―――まるで中世の宮廷魔術士の如き衣装。
頭頂から真ん中で分けられた鳶色の髪。日焼けとは無縁の生っ白い肌。鋭い
目付きを隠すかのようにかけられたシルバーフレームの丸眼鏡。
口元には皮肉気な笑み。誰もが抱く印象―――端正な顔立ちを持っているが、
磨く技を知らぬ研究者。
前の三人と違い、背筋を伸ばすこともせず、ただ歩いているだけだ。
両脇の親衛隊員から浴びせかけられる奇異の視線すら飄々と受け流していた。
稀代の錬金術師レザード・ヴァレス/黒猫の魔術士と組んだ人でなし。
更にレザードの背後/第四列から第五列。ここにきて隊列の様子は一変する。
甲冑を着込んだ人型のドラゴン―――四匹の竜牙兵。
レザードの魔なる眷属として使役されたドラゴントゥースウォーリアー。
この異形の竜の役目は戦闘ではなく聖櫃の移送にあった。
聖櫃―――四匹の竜牙兵が神輿の如く担ぐアカシヤ材で作られた箱。金環
の装飾が無数施され、中味は金張りの重い蓋によって閉じられている。
蓋には、やはり金でできた二体のケルビム像が天使の翼を広げていた。
「縦2.5アンマ。横1.5アンマ。高さ1.5アンマ」の聖櫃―――失われたアーク。
鍛え抜かれた武装親衛隊の表情に、緊張が漲る。
意思の灯火が見えぬこの竜牙兵が、少し躓いただけでも聖櫃は起動し―――
飛行船はおろか、南極までも闇に堕としてしまうのだ。
緊張を覚えぬ方が難しかった。
そんな兵員どもの畏怖を意にも介さず、グルマルキン一行は歩を進めた。
竜牙兵の後に続くのは、漆黒の勤務服に身を包んだ親衛隊だ。
所々で、その制圧の様子を目で確認しながら進むグルマルキンは、やがて
パレードの終点―――操縦室へと辿り着いた。
- 502 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/24(金) 16:19:37
- グルマルキン率いる一行が操縦室に辿り着くと、そこでもナチス式敬礼の
歓待を受けた。グルマルキンは適当にそれを捌くと、室内に目を見回した。
かなり広大な間取りで、外への視界は良好だ。
外殻が円形に設計されているため180度以上の視野を確保していた。
これとJG1(第一戦闘航空団)/新戦乙女隊/ロンギヌス13の哨戒報告を利用
すれば、レーダーでは捉えきれない外敵――つまり、我々の同類だ――の接近
を早急に補足できる。実に好都合の設計だ。
室内は硝煙の臭いと血臭が鼻につく以外は死体一匹見当たらない。
制圧は完璧に済んでいるようだった。
素早い上に、優雅な仕事をしてくれる。確か操縦席制圧の責任者はヴァレン
タイン兄弟の兄、ルークのはずだが―――いた。
白いダブルスーツに返り血一つつけず、鷹揚な態度でこちらを見ている。
敬礼は無かった。それも当然だった。彼は党員でも部下でもないのだ。
「ご苦労だったなルーク・ヴァレンタイン。弟のように操縦室を血桶にして
くれていたら、モップを持って掃除させるつもりだったが……その必要は
ないな。安心したぞ。何せ弟のほうはだいぶ酷かった」
くく、と喉を鳴らして短く嗤う。
室内にいたはずの操縦士や通信士はみな殺されたか、生きたままで空に放り
投げられたのだろう。操縦席はメッサーシュミットの時同様、ルフトヴァッフェ
の吸血鬼操縦士が席についていた。
「よし。各員、所定の位置につけ」
号令とともに一行が散会する。
グルマルキンは後方の、おぞましき魔術の化生―――竜牙兵を引き連れて
聖櫃を護送する錬金術師に身体を向けた。漆黒のマントが翻る。
「レザード・ヴァレス。貴公も作業に取りかかるがいい。貴公は予定通り、
箱≠ェ安定するまでここから離れるな。制御と解除に全神経を傾けろ。まだ
箱≠ヘだいぶ不安定だ……無用な衝撃を与えるのは何としても避けたい」
言われるまでもない―――と稀代の錬金術師は答えると、わざとらしく眼鏡
の位置を治し、グルマルキンから離れた。箱≠引き連れて。
箱=\――契約の聖櫃(アーク)。
数多の強力なガラクタを詰め込んだと言われる最強の玩具箱。その正確な中味
は、多数の犠牲を払って手にした彼女とレザードですら未だ知り得ていない。
分かることは、この箱が世界の理(ことわり)に干渉し、ねじ曲げるだけの力
を有していること。無用な接触は即座に崩壊を招くということ。
その二点だけだ。その二点で十分すぎた。
「せいぜい気張るんだな、異界の術者。我が盟友よ」
レザードの背中に声をかける。
「さすればブリュンヒルドの加護も得られよう。ヴァルハラへと続く死霊の門は、
すぐそこまで迫っている。―――あとは貴公の働き次第だ」
グルマルキンの嗤笑―――レザードへの皮肉。
錬金術師は肩を竦めることでそれに応えた。
「グルマルキン大佐」
錬金術師との会話を切り上げた、その頃合いを縫ってハルトマンが声をかける。
「放送の準備が整いました。こちらです」
言って、指先を向けたその先に―――
「ほう」とグルマルキンは口端を歪めた。
広大な操縦室―――その一角に、真っ赤な天鵞絨の絨毯が敷かれていた。
壁面には同色の隊旗が貼り付けられている。
隊旗にはDeutschland Erwache(ドイツよ目覚めよ)の文字が刺繍で施され、
旗の中央には当然のように漆黒のハーケンクロイツが描かれていた。
「上出来だ。実にナチ的≠カゃないか。これだけ大袈裟にやれば、否が応でも
我々が何者か知ることになる。クククっ―――良いだろう、ハルトマン。カメラ
を回せ。我々が何者で、何を目指し、何を為そうとしているか、舞台主が観客
どもに説明してやる」
- 503 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/24(金) 16:20:10
- 船内各所に取り付けられた液晶装置。
パーティルーム/カジノ/サロン/回廊には大型のプラズマビジョンが据え
付けられ、客室ならばテレビを兼ねた出力端末がその役目を果たしている。
各施設を繋ぐ廊下などにも、広大な船内を迷わぬようにと設置された案内図
にタッチパネルの液晶装置が使われていた。
トイレや格納庫にすら、映像出力装置は存在した。
金と技術を詰め込めるだけ詰め込んだ巨大飛行船―――夜族どもの襲撃と
ともに沈黙していたそれら液晶装置が突如、一斉に明かりを灯したのだ。
スピーカーからはノイズが迸る。
制圧され、ナチの亡霊に銃口を突き付けられている被害者も、一難を脱して
吸血鬼どもの死角に逃れている逃亡者も、あらかじめこの事件を察知しており、
今はただオーダーを実行する時を窺っているだけの潜入者も、この船内にいる
モノはみな、否が応でも耳に入れ視界に留めざるを得ない状況がいま作られた。
液晶はまず、堂々たるハーケンクロイツの隊旗を移した。
カメラが引かれる。次に映し出されるは二人の美女―――隊旗を挟んで直立
する、ヴァルトラウテとモリガンだ。
それぞれ口元と引き締めて、カメラよりもやや上部を見つめていた。
ヴァルトラウテとモリガン―――性質の異なる美貌。
「潔癖/妖艶」「天使/悪魔」という二面性を対局させたかのような構図。
共通するのは、二人が絶世の美女であるという事実と、ともに黒革の長靴/
乗馬ズボン風のボトム/黒革のベルト/漆黒の上衣/鉤十字の腕章という狂気
の制服で全身を固めているということ―――その二点だけだ。
大半の乗客は、この映像を目にしたとき、国籍問わず真っ先に思った。
―――狂っている、と。
更にカメラが引かれ、赤い絨毯をも移すようになると、画面外から漆黒の
マントで全身を覆ったグルマルキンが大儀そうに登場した。
淡い金髪に透き通る白肌は、二人に勝るとも劣らぬ美貌を有していたが、
生憎とこの女、それ以上に禍々しすぎた。失われた額から右頬にかけて斜めに
走った疵痕。失われた右眼から覗く蒼い義眼―――グラム・サイト。
残った左眼は右の義眼異常に冷徹で、腰に佩いた軍刀よりも鋭利な視線を
液晶越しに飛ばしている。まず堅気には見えず、人間とも思えなかった。
- 504 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/24(金) 16:20:40
- 「この船舶はドイツ国籍だ。それが意味することとは何か? そう、つまりは
偉大なるドイツ帝国の財産だ。そして私は、この命令書が示すように本作戦を
実行するため、総統権限を授かっている。分かるかね? これは不当なハイジ
ャックや侵略行為ではなく、総統権限に基づいた正統なる徴発なのだ。臨時の
ため、情報伝達が些か遅れてしまったことは詫びるが、この船舶がドイツ帝国
の財産である以上、我々が本船を管理することに異議申し立てをする権利はない
と知ってくれ。この命令書の正統性に疑問を挟むのであれば、それは総統閣下
に対する疑問と同義だ。それは立派な反逆行為であり、我々も然るべき対処を
せざるを得ない。故に言葉は選び、できる限り口は謹んで頂きたい。
我々の目的はあくまでこの船だ。だから、大人しく部屋の隅でがたがた震え
ている分には諸君等の命を保証する。下船を望む者がいれば、できる限り請け
負おう。最下層のハッチに人員を配備しておく。飛び降りたければいつでも声
をかけてくれたまえ」
グルマルキンの狂気―――その正体はどこに秘められているのだろう。
SS大佐は口振りは冷淡で、全ての事柄を至極当然のように語る。
ナチス親衛隊が存在し、ハーケンクロイツを背に熱弁を振るっていることも、
武装集団が超巨大飛行船を徴収≠オたことも、「総統権限」などというもの
が通用すると信じていることも、全て許容して語っているのだ。
まるで、それについては何ら意外に思うところは無いとでも言うように。
「さて、」
もう用無しだとばかりに命令書を懐にしまう。
「遅れてしまったが、これより我々の目的及び、本船の目的地について簡潔に
説明したいと思う。まず目的だが、諸君等の中にアメリカ人はいるかね?
乗船名簿に目を通す限り、かなりのヤンクが乗り合わせているはずだ。植民
地の人間が豪華客船に乗り込むなど増長も甚だしいが、まぁいいだろう。最寄り
のアメリカ人に尋ねてみたまえ。『ジョージ・ルーカスを知っているか?』と。
それで事足りる。私は生前のジョーンズ博士に何度か会っていてね。作中で
はだいぶ歪曲されていたが、彼が人類最後の冒険家であることは保証しておく。
それと諸君等には残念な報せになるが、この船に合衆国大統領は乗り合わせ
ていない。つまりジョーンズ博士の参戦も期待できない。悪いが10年待っても
我々の作品がルーカス・フィルムによって映画化されることはないだろう。
次に目的地だが、これを知らぬと諸君等も不安だろうからはっきりと言う。
本船は目的地を南極点より変更し南緯82度、東経60度から南緯70度、東経115度
に向けて発進する。諸君悦べ。我々は諸君等を南極旅行のフィナーレに相応
しい、前人未踏の地へと案内するのだから。
いくら金を注いでも不可能な旅ができるぞ。
そう、目指す地は最高34000フィート(約10363メートル)に達する高地。
その裏側≠ノ禁断の高原を有した古の都市。―――狂気山脈。
そこが諸君等の旅の終点であり、我等が第四帝国の始まりの地だ」
カメラが引かれる。最後にグルマルキンは右手を掲げ、勝利万歳と叫ぶと、
そこで映像は途切れた。
- 505 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/24(金) 16:21:16
- 「極点での豪奢な遊覧を愉しむ諸君」
スピーカーが震えた。
「まず、突然の非礼を詫びさせてもらおう。私は本作戦の指揮を務めるグル
マルキン・フォン・シュティーベルSS連隊指揮官だ。SS戦闘部隊の特別部に
所属している。部隊名は極秘事項のため明かせないが、私もまた偉大なる総統
閣下に永遠の忠誠を誓ったゲルマン騎士であることはお分かり頂けるはずだ」
グルマルキンは冷徹な面持ちのまま、淡々と語った。
「私がこの映像を持って諸君等との接触を求めたのは、我々に対して抱く誤解
を解き、我々の行動―――本船の接収を理解してもらうためだ。
せっかくの遊覧――新たな時代のツェッペリン。素晴らしい船だ――を阻害
してしまったことは私も悲しく思う。情報伝達の混乱により命を落とした乗客
が幾人かいるみたいだが、そのことについては我々親衛隊が一切の責任を取る。
被害者はみなしっかりと『立って歩ける身体』に戻すため、諸君等の不安は
杞憂に過ぎないとここで保証しよう。
また、一部の先走った愚か者のせいで本船は我々にハイジャックされたなど
という馬鹿げた勘違いをしている輩もいるみたいだから、その過ちもここで正
させてもらおう。いま現在行われている我々の行動は、全て然るべき権力機構
からの保証を受けており、ハイジャックやテロ行為などという―――忌々しい
レジスタンスどもが行う卑劣な違法行為とは、まったく趣を異にするものだ」
「ここに」
漆黒の魔女は、マントの内側から一枚の書類を取り出し、カメラに向けた。
「我々の行為の正統性を保証する文書がある」
カメラがアップになり、書類―――命令書の文字が視認できる距離まで近付
いた。命令書の上部には国章である鷲の印と金色の鉄十字章が印刷されている。
10秒ほど命令書をアップで映すと、カメラは再びグルマルキンを映す。
「ドイツ語が読めぬ奴も多いだろう。私が諸君等にも分かるよう、英語で訳して
やる。つまりは、こういう意味なのだ。
総統兼首相より
―極秘―
グルマルキン大佐は、私の直接かつ個人的命令に基づき、ドイツ帝国にとって
極めて重大な任務に服している。 彼女は私に対してのみ責任を有する。
軍、民を問わず、階級に関わりなく関係者全員が彼女の必要を満たすべく、
最大限の協力をすることを要求する。
アドルフ・ヒトラー
―――理解できたかね?」
ここで初めて、グルマルキンの凍て付いた表情に狂相が浮かんだ。
- 506 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 16:23:22
- >>500>>501>>502>>503>>505>>504
少し貼る順番を間違えた。
そこだけは気を付けて欲しい。
名前はグルマルキン・フォン・シュユティーベル名義で。
メール欄は「翡翠峡奇譚」で構わない。
>>501のレスだけメール欄は
「BGM:BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY by布袋寅泰」
にしてくれ。
誰か頼む。
- 507 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/24(金) 23:58:47
- 久しぶりに出た外は、沢山の刺激に満ちていた。
例えばそれは数え切れないほどの人間だったり、紅魔館よりも大きな空飛ぶ船(飛行船
と言うらしい。外の世界で使われる魔法だとパチュリーが言っていた)だったり、そして
その騒々しさは、幻想郷のどこでも聴けないほどだったり!!
私は、恐らくここで一生分をお姉さまに感謝したことだろう。
あのお姉さまが、何の気まぐれか、私を連れて行ってくれることに頷いたからだ。運命
を見据えるレミリア・スカーレットが何を見たのかは知らないけれど、少なくとも私にと
ってはとても嬉しい出来事だった。グルマルキンと言う人が招待状をくれたおかげだ。後
で会ったらお礼を言っておこうと思う。お姉さまは「言わなくていいわよ、あんな奴に」
とかぶつぶつ言ってたけれど。
船に乗ってからも、それはそれは、魔理沙たちが初めて紅魔館にやってきた時よりも大
騒ぎだった。何しろ私があちこちで大暴れ。ちょっとした悪戯で近くのお姉さんに軽く噛
みついてみたり、スロットとか言う玩具で遊んでいて(なんと吸血鬼の絵柄が回っている。
そろえるとコインが出てくる)、力が入りすぎてドラムを回すレバーを折ってしまったり
と、そこそこ迷惑をかけたかもしれないけど、私には全く気にならなかった。(でも後で
お姉さまに叱られた。ちゃんと謝ったけど、またやるかも知れない。てへ)
多少の不自然な所は、お姉さまと一緒に魅了の魔眼でごまかした。こういう細かいとこ
ろはあいつの方が得意らしくてちょっと癪だった。今度、魔理沙や小悪魔でちょっと練習
してみようかと思う。もちろん、変なのじゃなくて、私のことがちょっと素敵に見えたり
とかそんな感じのやつ。
そういえば、外の世界にもまだ吸血鬼はいたみたいで、それっぽい人に声をかけて挨拶
したら逃げられた。……ちょっとだけ悪いことをしたかも知れない。反省した。でも、あ
の風貌はきっと忘れられないから、次は人気のいないところでちゃんと挨拶しよう。
――そうして私は久しぶりの外を満喫して、広々とした客室でぐっすりと寝てしまった。
本当に、ここまで楽しくて、面白くて、騒がしい時間を過ごしたのは久しぶりだった。
だから、思ったよりも疲れてしまったのだろう。
窓から見える風景は綺麗な満月と青い夜空に彩られていて、星が涼しく瞬いていた。北
の国はとても空が綺麗だと本で知っていたから、これがそうなのだろうと、私には不思議
に納得できた。
……魔理沙や霊夢、咲夜にも見せてあげたかったな。
そんなことをまどろみながら考えて、私は気持ちのいい月の光に抱かれて夢の中。
――少し、船が揺れて、私は目を覚ました。
「……ふにゃ?」
揺れただけじゃ、目は覚めない。
夜の匂いを感じる。
姉以外の、吸血鬼の気配。
思わず跳ね起きると窓の外が目に入る。
そこでは―――
「……わあ」
花火が、上がっていた。
駆け巡るガーゴイル。火花を散らす鴉。そして炎を吐いて雲を引く鋼の鳥。
美しい華と火を纏って舞い躍る姿は、まるでサーカスのよう。
そう、これは、ダンスパーティの続き。
夜に住まう者の贈る、最も激しく美しいショウ。
「―――私も、」
私も、一緒に躍りたい。
炎の杖を振り、鮮やかな波紋を振り撒きながら、星の虹を砕いて―――!!
気が付けば、私はドアに駆け寄っていた。窓を破らなかったのは、戻った時に寒そうだ
ったからだ(といっても、結局この時点でこの船が沈んでしまうことには気づかなかった
けど)。しかしドアには鍵がかかっていた。かけた覚えはない。お姉さまやパチュリーも
いつの間にかいない。だから、かけたのは恐らく外の誰かだろう。
―――でも、そんなのは私にとっては無駄だった。
「きゅっとして、」
だって、全てこの世にあるならば。
「どかーん!」
私に壊せぬ物は無し!
ドアが弾けて砕け散る。
これで意地悪な魔法は消え去った。
―――ドレスとダンスは淑女のたしなみ。始まる前から整っている。
後は舞台に上がるだけ。
私は廊下に飛び出した。
舞台へと、夜という名の舞台へと、最高の姿で上がるために。
- 508 名前:山崎渉:2006/11/25(土) 00:51:37
- (^^)
- 509 名前:『レザード・ヴァレス』ふられストーカー(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/25(土) 02:30:08
彼の心は穢れを知らぬ子供のように純粋で、冥界の悪魔より遥かに狡猾。
見初めた乙女のためならばいかな代償も厭わぬ純情。
目的のためなれば手段を選ばぬ非情。
一心に女神を求むる無垢さ。
神を超えんとする邪欲。 例え神が怒ろうと
全ては歪んだ野心。
総ては偽らぬ愛。 止まる訳がどこにある?
例え因果がその牙剥こうとも。
――――全てが複雑に捻れ生まれた一本の“芯”。
我が願い適えぬ理由、何処に在る。
進まぬ道理が何所に有る? 総てが旅の果て。
全ては次元の彼方。
どれだけ律に背こうと 律を越えんとする執念。
一心に手段を求むる只管に。
元より巡らすその策動に陣営は問わず。
焦がれた彼女のためなれば世界の破滅も厭わぬ狂気。
その悲願は鉤十字の魔女と逢い、夢郷の門を解き放つことで達成される。
――――ようやく、此処まで漕ぎ付けられた。
彼は眼鏡の位置を直し、笑いを浮かべ眼前のそれに視線を移した。
遥けき伝説に謳われし伝説の聖遺物、『聖櫃』。
彼がミッドガルドよりこの“世界”に赴いて後、話にだけは聞いたことがある。
曰く、『神の遺物』
曰く、『神の御業』
曰く、『禁忌の函』
曰く、『禍福の根源』
曰く、『失われたアーク』
その旧き箱に内包されるは天地創造の欠片、かつて十の戒めを刻み込まれ、
投じられる事で天地を割った石版。創生神が遺わした神威の奇蹟。
その力は加護ではなく、一つの国と民を滅ぼした、むしろ災厄の形を以って顕現すること幾度。
だが―――――この男にとって。
こんなものの由来も、正体すらも如何でもよいのだ。
必要なのは唯一。
数多の想念を溜め込み、発動するその絶大な“力”―――――。
異界の錬金術師レザード・ヴァレスの悲願を適えるだけの、威る力が存在する一点のみ。
故に彼は手を組んだ。
異界の敗残者、鉤十字を掲げる狂った亡霊どもと。その他の者とすらも。
故に彼は此処にいる。
パラケルススより遥か昔、彼が『賢者の石』を有したと識る魔女と共に。
因果律は確かな歪みを見せている。
本来この次元に存在せぬ彼が歴史の陰で名を残したことに“なっている”事実、それが何よりの証左。
律は乱せる。秩序は破壊せしめられる。
その賢者の石にも記されておらぬ真実が、彼の狂気を狂喜に変える。
今、彼は異界を越えて此処に実存しているのだ。
唯一絶対の目的の為に、為だけに。
確たる知性に彩られたその瞳に宿る“色”は誰よりも濁り、かつ誰よりも澄んだ矛盾の色。
そのようなものを孕む人間の、魂のあり方とは一つしかありえぬ。
それは即ち―――――。
- 510 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/25(土) 06:17:28
- >> 続き
「では――――レン高原への門も待ちかねている、いざ制御と参りましょうか。
ですがその前に…そこの士官殿。命脈…いえ、パイプラインの制御系はどちらか」
司令官グルマルキン大佐により、司令室の兵はレザードの要請あれば最大限協力するよう命令されている。
すなわち「盟友である錬金術師の為す事 全ては今作戦遂行において最優先事項である」と。
魔女の携えた命令書が亡霊たちに対すお墨付きであるならば、レザードの指示は―――『聖櫃』
制御および起動に関する案件ならば―――現司令室においてそれ以上の絶対権限を有するといえた。
故に、程なく部外者である彼が操縦室の中枢に案内されるのも至極当然。
これからの作戦に必要な『儀式』を始めるのだから。
「結構。では――――――」
コンソールの前で光芒が躍る。
現代文明の最先端に進入するは、逆行の果て科学を超越した神秘の技法。
言霊と方陣展開による、紛れなき真の魔法である。
竜脈は地霊の気を以って網を為し――――
命脈は血の息吹に因って河と成る―――――
其れ”は魔力を伴う術式であった。
ツェペリン船内全域を、正に網の目のごとく張り巡らされた電精と熱、そして情報のケーブル。
その内部を怒涛の速度で走りぬけ、原子レベルで周囲に式を刻み込む。
刻まれた式はまた式を生み、刻んで進む。
内部の構造材を微細な、だが力あるルーン文字で隙間なく埋め尽くすために。
表壁に疾く刻まれ奔るは神の叡智――――――
血肉は至精を孕み其の密を増し――――
これはあくまで外的な強化を促す魔術『レインフォース』とは似て非なる、肉体内部の神経を経(パス)として
直接必要な魔力術式を送る「強化」の呪法。
他ならぬ神々の争いにより失伝され、稀代の錬金術師が『賢者の石』から得た技術が一つ。
そう――――これぞこの男だけが有する神代の叡智。
――――泥は石に拠りて鐵へ。
聖櫃の周囲を空間レベルで結晶化せしめ、霊的影響を無にした『凍結魔法』も。
―――――鐵は火に拠りて鉅に。
聖櫃を運ぶにたるレビ氏族の魂を竜牙兵に宿らせ、厳格な様式を欺き笑う『輸魂の呪』も。
――――――そして、鉅は賢者に拠りて黄金と成る。
位相の赤/風向きの蒼/冷温の緑/音壁の灰/磁気の黒。
まばゆき五色五重に展開された光芒の五星、今もなお制御の根幹を成して稼動する『多重方陣』も。
―――――故に其の楼閣は 霊験を経て城砦へと刷新されん。
そして、今。
聖櫃制御が最後の要、飛行船そのものを巨大な霊的媒体と変容させる―――
「古が『霊起の呪』、今ここに―――――“Rune Reinforced”!」
『神の御業』――――失われたアーク。
そう呼ばれ古今人類に遍く畏れられた聖櫃は今、『神々の御業』によって陵辱される。
因果の律を越え来訪した狂人、ミッドガルド最大最悪の錬金術師に。
船に音なき息吹が満ち、レザードがその場を離れ聖櫃のある場に戻ったと同時。
脚をくず折らせ、体を開き変形するのは運搬を担った竜牙兵たち。
その4体がチェスの駒を思わせる威容へと変わったとき、聖櫃は自動的にそれら4つが
構成する四角の中央――――結界装置の中心へと収まった。
儀式はまだ終わっていない、むしろこれからが本番だ。
これだけの施術をして未だ不安定にある聖櫃の制御を行うため。
陵辱された神秘をあるべき姿へ調教するために。
尚も紡がれる言霊。胎動するかのように明滅する方陣。
幾多の術式は更なる構成を編まれ、連動の果てに渾然となる。
―――――断言しよう。
此処に神はいない。
居るのは、神を犯す狂気だけである。
- 511 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/25(土) 20:12:03
- >>217-222
豪奢なる宴は、たちまち血と狂気に染め上げられる。
パーティールームに詰め込まれていた各界のセレブリティは、たちまちの内に死者の列に
並べ立てられていく。
コダマ――今は『龍崎駈音』は、幸いにもまだその行列には並んでいなかった。
だが、それも時間の問題だろう。そう、時間の問題なのだ。
『龍崎駈音』は、右手に持っていたカクテルグラスを床に取り落とすのと同時に
左手で視界を遮るように顔に押し当てた。
グラスの割れる音が、呼び鈴のように高く鳴り響き近くに居たグール達を呼び寄せる。
紳士淑女の仮面を剥ぎ捨てたがごとき矮小な人間たちが逃げ惑う。
そう、仮面を脱ぎ捨てるのだ。
“テレビでおなじみ”の『龍崎駈音』が、髪を撫で付けるように左手を上げると
そこには見知らぬ顔があった。
コダマは、ライフルを構えた目の前のグールの両手首に蹴りを打ち込み。
そのまま足を下ろすことなく、頭蓋を踵で叩き割る。
そして、もう二体のグールの襟首を掴んで引き寄せると同時に後方に宙返り。
高さが足りないのでバック宙ではなくバック転。
ふさがった両手の代わりに、グールの頭で接地してバック転を完了させた。
卵の割れるような音。そして、血のプリンのような脳髄を露出させるグールが三体。
コダマは、新しい死の風を宴席の場に吹き込んだのだ。
- 512 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/25(土) 20:40:36
- test
- 513 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/26(日) 20:04:25
- 独自
- 514 名前:なめんなよ、この名無し:2006/11/28(火) 08:15:21 0
- 規制テスと
- 515 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/29(水) 00:58:52 0
-
此処は因果地平の吹き溜まり。
巻末にして裏表紙、犬達がパロディという名の寸劇を舞い、伝説の存在よりネトゲチャンピオンが強いという
理不尽と暴虐と財宝の園。いけいけ僕らのセラフィックゲート。
その一角で。
「さて、みなさん」
彼はこの上なくさわやかな笑顔を浮かべると、
「異世界にまで進出してレナスゲッチュという我が計画は
ものの見事に失敗したわけですが、私は元気です」
そう、グングニル目当ての彼女達に告げた。
レザード・ヴァレス レス番纏め
『VP外伝 レザードの野望 〜また黒歴史です、本当にありがとうございました〜 』
1日目
>>262>>263
2日目
>>751>>786>>806>>830>>846>>857>>859(>>875)
>876(>888)>892>902>903>907>913
>932>934>943>945>949>951>952>950>953
>955>956
- 516 名前:『レザード・ヴァレス』ふられストーカー(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/29(水) 01:00:14 0
…いえ、流石にこのエピは台無しですね(何
- 517 名前:名無し子猫:2006/12/24(日) 06:50:32 0
- 「ごきげんよう。微妙に旬を外しつつも始まりましたこのコーナー、
『リリアン・トリビアの種』。
司会は私、ペンは剣よりも強しでおなじみゲッベルス三奈子(仮名)と、」
「ごきげんよう、真実の報道をでおなじみピュリッツァー真美(仮名)でお送りします。
……って、何ですかこの名前」
「いや、ほらね、本名のままじゃ新聞部……ゲフンゲフン、今後の活動に色々と支障を来すでしょ?
そんな些末事は置いておいて、こちらのお便りから。
『ごきげんよう、初めてお便りいたします。
先日の生徒会役員選挙、どなたが当選なさるのか、結果が発表されるまでハラハラし通し
でした。
選挙演説のときの皆さまも、こちらにまで熱意が伝わってきて。
特に、白薔薇さまに二期連続で立候補なさった藤堂志摩子さま。
お話を聞いていると、いつの間にか眠くなって聞き惚れてしまって、ついつい投票して
しまうところでした。
ところで、志摩子さまって、いつもお言葉使いが丁寧な気がするのですが、丁寧でなくなる
時ってあるのでしょうか。
これって、トリビアになりませんか?』
1年椿組の『三十郎子』さんからでした。
……ペンネームから察するに、由乃さんファンなのかしら。奇特なことに。」
「つまりトリビアにするとこうなります。
『藤堂志摩子さんの言葉遣いが丁寧でなくなるのは、○○○』
検証VTRはこちら」
- 518 名前:名無し子猫:2006/12/24(日) 06:51:07 0
- ―――今回検証するにあたって、無作為に一日を選定し、更に公正を期するため藤堂志摩子さんから隠れて
検証VTRを撮影する。
「……あれ? 撮影役はいつもの武嶋蔦子さんじゃないの?」
「ええ。何でも『ビデオは専門外だから』とかで。
代わりに、志摩子さんと同じ藤組のKさん(仮名)にお願いしてます。
ミラコロ標準装備だとか何とか、よく分かりませんけど」
―――朝。小寓寺前。
「あ、出て来たわね」
「朝早いですね。外はまだ暗いですよ。
……でも、こんな時間から言葉遣いがどうこうって、関係あるんでしょうか」
「バス停で通りがかった近所の農家の人に挨拶しているわよ?」
「本当ですね……この時点では、まだ丁寧なままですけど」
―――登校中。
「……何だか、見てるだけで」
「疲れますね……。H市からリリアンまでって、別に早送りしてもよかったんじゃ?
会話らしい会話って、今のところないですし」
「――そういえばそうね」
―――午前中。
「……え? 授業中も撮影してたの?」
「えー、ここで番組をご覧の皆さまにお知らせです。
授業中は教室内に設置されたカメラで撮影しており、撮影者のKさん(仮名)もリリアン生として真面目に授業を受けている最中です。
くれぐれも誤解などありませんようお願いいたします」
「現部長としては責任問題でしょうから、色々と大変ねー」
「思いっ切り他人事みたいな言い方ですね、お姉さま……#」
―――昼休み。
「お昼は薔薇の館でお弁当、と」
「他の薔薇さま方は当然として、祐巳さんや由乃さん、妹の乃梨子さんと話してるときも変わりませんね」
―――放課後。
「……あら? 中庭の方に向かったみたいだけれど」
「銀杏拾いですね。話だと許可をもらって持って帰っているそうです」
「これはチャンスね。もしかすると深夜笑いながら庭に銀杏を埋めているところを近隣住人の通報により
駆けつけた警官によって逮捕とかそういうスクープが」
「ありません」(きっぱり
――下校中。
「帰りも特に……ちょっと待って、あれ誰?
あそこのほら、割烹着にサングラスの怪しげな男の姿が。
これは、久々のスクープね! 見出しはこう。
『白薔薇スキャンダル〜現白薔薇さま・藤堂志摩子さんにミステリアスな男の影が〜』」
「あのー、一人で盛り上がってるところ申し訳ないですけど、あの人、志摩子さんのお兄さんですよ」
「……え? いや、だって似てない」
「一応、撮影後に裏は取ってますから」
「つまんないわね……」
「『つまんないわね……』じゃありません。
それはそれとして、お兄さんでも言葉遣いに変化はなし、ですね」
「ここまで見てきたけど、全然言葉遣いが変わらないじゃない」
「さすがに家の中までは入り込めませんし、今回はここまでですかね?」
―――ここに、またリリアンの新たなトリビアが生まれた。
『藤堂志摩子さんの言葉遣いが丁寧でなくなるのは、おそらくよほどのことが起きた時』
- 519 名前:名無し子猫:2006/12/26(火) 22:51:18 0
- ――――最強のLegendを、喰い逃すな。
- 520 名前:◆AkihaiMnII :2006/12/27(水) 00:46:08 0
- てすと。
- 521 名前:◆aKoHakuqEQ :2006/12/27(水) 00:49:37 0
- てすとで失礼しますー。
- 522 名前:◆FwRhHisui. :2006/12/27(水) 00:51:13 0
- 連続失礼します。
- 523 名前:天京院・鼎 ◆mVOKem4Kv2 :2007/02/14(水) 00:03:020
- <ruby><rb>一刻館</rb><rp>(</rp><rt>いっこくかん</rt><rp>)</rp></ruby>
- 524 名前:天京院・鼎 ◆mVOKem4Kv2 :2007/02/14(水) 00:05:410
- <ruby><rb>現在</rb><rp>《</rp><rt>イマ</rt><rp>》</rp></ruby>
- 525 名前:名無し客:2007/03/08(木) 10:46:330
- 名前欄テスト
- 526 名前:名無し子猫:2007/04/05(木) 03:55:180
- >>174 <レーバテイン>について感想をどうぞ
まったく……アルの奴め、心配して損した。
奴が破壊されてからこちら、ずっと音沙汰がないと思っていたら、今度はまるで桁違いの機体になってくるとはな。
先刻、サックス中尉やレミング少尉たちに機体チェックを受けていたが――減らず口も、あの通りだ。
むしろ達者になったように思える。
しかもいちばん必要なタイミングを見計らったかのように、あそこで割り込んで来る知恵までつけて……
そのくせ、ECSやECCSが使用不能などと、不要なところで間が抜けている。
――まったくもってつくづく、どうしようもないほど、憎たらしい相棒だ。
諸君、またしばらく空けてすまなかったな。
前置きはこのへんにして――始めさせてもらおう。
>>160 自分のPCや携帯電話、自機AIがここのスレ主の如く自己主張し始めたらどうしますか?
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1069768272/
全力で拒否する。(ドきっぱり
アルだけでも会話していて疲労感を禁じえないのに、身の回りの電子機器が全てそうなってしまっては……
そうなってしまっては………………(ついつい想像)
しまっては………(想像中)
しま……(眉間にしわ寄せつつ想像中)
…………………すまない、想像しただけで目まいがしてきた。
次に行かせてくれ。
アル《――軍曹殿。
それは推測するに、私に対して幾分か失礼なニュアンスを含んだ表現ではないのでしょうか》
――次に行かせてもらうぞ。
アル《軍曹殿、私の質問に対する回答を願います》
次に行かせてくれ。
アル《ウルズ7・<ruby><rb>SGT</rb><rp>(</rp><rt>サージェント</rt><rp>)</rp></ruby>サガラ、速やかに応答願います》
ええい、うるさい! 黙って先に行かせろ!
大体アル、貴様いつメンテナンスから戻ってきた!?
アル《つい先刻です。脆弱化した電子戦ルーチンの最適化の試験として
広域集音・探知モードを実行した際、軍曹殿の発言を傍受しましたので。
軍曹殿、友軍機への応答は迅速に願います》
つくづく不要なところばかり人間くささを増しすぎだ、貴様は……!
これ以上はレスの邪魔だ、おまえは黙っていろ。
アル《了解、黙ります》
…………とりあえず、見ての通りだ。
こいつ一基だけでもここまで疲労するのにこれが身の回りに
溢れかえろうものなら、間違いなく俺の精神は破綻する。
だからもし、そんな状況が起きようものなら、全力で阻止させてもらう……!(ギロ
>知性・判断力などは文句のつけようもありませんが、
>場合によっては危ないことはあなたがやらされた挙げ句、手柄を全部横取りされたりします。
もしアルがそうなったら……むしろちょうどいい機会かもしれん。
そのときはその事実をもって奴を故障したと認定し、<レーバテイン>から取り外してECSとECCSを付け直そう。
いまどき<アマルガム>ほどの連中を相手取るのに、電子兵装がお粗末では心もとないのでな。
アル《アラート・メッセージ。私からは賛成できかねます。
私抜きではラムダ・ドライバは作動せず、したがって隠し腕もデモリッション・ガンも無用の長物です。
デッドウェイトだらけの欠陥M9になってしまいます。あなたの提案はナンセンスです》
だったら少しはそう思われないような言動を心がけろ!?
まったく……いなければいないで物足りん、いたらいたで鬱陶しい……!
とにかく、次に行くぞ。
>>167 なんか、相良義陽と名字が似ているな。
肯定だ。
そもそも似ていると言う以前に、まったく同じ漢字なのだが。
――ただ、その人物と俺の苗字が同じだと言うのも、ただの偶然でしかないだろう。
いまの俺がこうして名乗っている「相良宗介」と言う名前も、極論すると
物心つく前から覚えていた「サガラ・ソウスケ」と言う発音に合致する漢字を当てただけのものだからな。
俺の名前の漢字表記が似ていたからといって、特に意味のあるものだとは思えんな。残念ながら。
>>181 御飯は丼何杯食える?
詳しくは分からんが……少なくとも、以前ほど健啖な食生活はできないということらしいな。
俺自身、もとからあまり暴飲暴食をするほうではなかったが――
クラマに撃たれた傷の手術で、肝臓や腎臓ほか主要な消化器官がいくらか切除されたとレモンに聞いている。
まあ食事はともかく、酒に関してはもともと飲む気などないので、問題はない。
>>138 相良軍曹とヒイロ・ユイの黄金コンビ…惜しかったな…。ニアミスってヤツですね。
コンビ云々はよくは分からんが、先日出たWにおいては、彼らと戦場を同じくすることとなった。
大丈夫だ>>138、何も問題はない。
次回作に関しては――流石に今のところは、なにも思いつかないな。
ただ、もし縁があるのなら、かつてロボット乗りスレで縁のあった連中と
共闘する機会があれば、とは思う。
>>168 宗介の声は〜
……そういわれてもな。
そもそも俺の声は俺の声でしかないし、こちらに文句を言われても困る。
しかし、そちらの挙げている声優のメンツ……
件のスパロボWで聞いたことのある声と非常に似通った声の連中が多いのは、俺の気のせいか?
……それにしても、俺の声か。
そういえば、これはいつか小野寺や風間から聞いたことがあるのだが――
東京で売っていた『爆熱ゴッドカレーパン』というカレーパンを食べる際、
食べる者の脳内になぜか俺の声が響くらしい。
それから、もし俺の声質が違っていたら『たぶん普通のカレーパンの味しかしないかも』とも言っていた気がする。
なぜたかが俺の声などで、ここまでの話になるのだろう……理解に苦しむな。
- 527 名前:名無し子猫:2007/04/05(木) 03:58:360
- ウルズ7・<ruby><rb>SGT</rb><rp>(</rp><rt>サージェント</rt><rp>)</rp></ruby>サガラ
- 528 名前:名無し子猫:2007/04/05(木) 03:59:140
- <ruby><rb>SGT</rb><rp>(</rp><rt>サージェント</rt><rp>)</rp></ruby>
- 529 名前:名無し子猫:2007/04/05(木) 04:05:090
- >>174 <レーバテイン>について感想をどうぞ
まったく……アルの奴め、心配して損した。
奴が破壊されてからこちら、ずっと音沙汰がないと思っていたら、今度はまるで桁違いの機体になってくるとはな。
先刻、サックス中尉やレミング少尉たちに機体チェックを受けていたが――減らず口も、あの通りだ。
むしろ達者になったように思える。
しかもいちばん必要なタイミングを見計らったかのように、あそこで割り込んで来る知恵までつけて……
そのくせ、ECSやECCSが使用不能などと、不要なところで間が抜けている。
――まったくもってつくづく、どうしようもないほど、憎たらしい相棒だ。
諸君、またしばらく空けてすまなかったな。
前置きはこのへんにして――始めさせてもらおう。
>>160 自分のPCや携帯電話、自機AIがここのスレ主の如く自己主張し始めたらどうしますか?
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1069768272/
全力で拒否する。(ドきっぱり
アルだけでも会話していて疲労感を禁じえないのに、身の回りの電子機器が全てそうなってしまっては……
そうなってしまっては………………(ついつい想像)
しまっては………(想像中)
しま……(眉間にしわ寄せつつ想像中)
…………………すまない、想像しただけで目まいがしてきた。
次に行かせてくれ。
アル《――軍曹殿。
それは推測するに、私に対して幾分か失礼なニュアンスを含んだ表現ではないのでしょうか》
――次に行かせてもらうぞ。
アル《軍曹殿、私の質問に対する回答を願います》
次に行かせてくれ。
アル《ウルズ7・<ruby><rb>S G T</rb><rp>(</rp><rt>サージェント</rt><rp>)</rp></ruby>サガラ、速やかに応答願います》
(外部スピーカーの音量を大にしつつ)
ええい、うるさい! 黙って先に行かせろ!
大体アル、貴様いつメンテナンスから戻ってきた!?
アル《つい先刻です。脆弱化した電子戦ルーチンの最適化の試験として
広域集音・探知モードを実行した際、軍曹殿の発言を傍受しましたので。
軍曹殿、友軍機への応答は迅速に願います》
つくづく不要なところばかり人間くささを増しすぎだ、貴様は……!
これ以上はレスの邪魔だ、おまえは黙っていろ。
アル《了解、黙ります》
…………とりあえず、見ての通りだ。
こいつ一基だけでもここまで疲労するのにこれが身の回りに
溢れかえろうものなら、間違いなく俺の精神は破綻する。
だからもし、そんな状況が起きようものなら、全力で阻止させてもらう……!(ギロ
>知性・判断力などは文句のつけようもありませんが、
>場合によっては危ないことはあなたがやらされた挙げ句、手柄を全部横取りされたりします。
もしアルがそうなったら……むしろちょうどいい機会かもしれん。
そのときはその事実をもって奴を故障したと認定し、<レーバテイン>から取り外してECSとECCSを付け直そう。
いまどき<アマルガム>ほどの連中を相手取るのに、電子兵装がお粗末では心もとないのでな。
アル《アラート・メッセージ。私からは賛成できかねます。
私抜きではラムダ・ドライバは作動せず、したがって隠し腕もデモリッション・ガンも無用の長物です。
デッドウェイトだらけの欠陥M9になってしまいます。あなたの提案はナンセンスです》
だったら少しはそう思われないような言動を心がけろ!?
まったく……いなければいないで物足りん、いたらいたで鬱陶しい……!
とにかく、次に行くぞ。
>>167 なんか、相良義陽と名字が似ているな。
肯定だ。
そもそも似ていると言う以前に、まったく同じ漢字なのだが。
――ただ、その人物と俺の苗字が同じだと言うのも、ただの偶然でしかないだろう。
いまの俺がこうして名乗っている「相良宗介」と言う名前も、極論すると
物心つく前から覚えていた「サガラ・ソウスケ」と言う発音に合致する漢字を当てただけのものだからな。
俺の名前の漢字表記が似ていたからといって、特に意味のあるものだとは思えんな。残念ながら。
>>181 御飯は丼何杯食える?
詳しくは分からんが……少なくとも、以前ほど健啖な食生活はできないということらしいな。
俺自身、もとからあまり暴飲暴食をするほうではなかったが――
クラマに撃たれた傷の手術で、肝臓や腎臓ほか主要な消化器官がいくらか切除されたとレモンに聞いている。
まあ食事はともかく、酒に関してはもともと飲む気などないので、問題はない。
>>138 相良軍曹とヒイロ・ユイの黄金コンビ…惜しかったな…。ニアミスってヤツですね。
コンビ云々はよくは分からんが、先日出たWにおいては、彼らと戦場を同じくすることとなった。
大丈夫だ>>138、何も問題はない。
次回作に関しては――流石に今のところは、なにも思いつかないな。
ただ、もし縁があるのなら、かつてロボット乗りスレで縁のあった連中と
共闘する機会があれば、とは思う。
>>168 宗介の声は〜
……そういわれてもな。
そもそも俺の声は俺の声でしかないし、こちらに文句を言われても困る。
しかし、そちらの挙げている声優のメンツ……
件のスパロボWで聞いたことのある声と非常に似通った声の連中が多いのは、俺の気のせいか?
……それにしても、俺の声か。
そういえば、これはいつか小野寺や風間から聞いたことがあるのだが――
東京で売っていた『爆熱ゴッドカレーパン』というカレーパンを食べる際、
食べる者の脳内になぜか俺の声が響くらしい。
それから、もし俺の声質が違っていたら『たぶん普通のカレーパンの味しかしないかも』とも言っていた気がする。
なぜたかが俺の声などで、ここまでの話になるのだろう……理解に苦しむな。
- 530 名前:名無し子猫:2007/04/05(木) 04:10:520
- >>174 <レーバテイン>について感想をどうぞ
まったく……アルの奴め、心配して損した。
奴が破壊されてからこちら、ずっと音沙汰がないと思っていたら、今度はまるで桁違いの機体になってくるとはな。
先刻、サックス中尉やレミング少尉たちに機体チェックを受けていたが――減らず口も、あの通りだ。
むしろ達者になったように思える。
しかもいちばん必要なタイミングを見計らったかのように、あそこで割り込んで来る知恵までつけて……
そのくせ、ECSやECCSが使用不能などと、不要なところで間が抜けている。
――まったくもってつくづく、どうしようもないほど、憎たらしい相棒だ。
諸君、またしばらく空けてすまなかったな。
前置きはこのへんにして――始めさせてもらおう。
>>160 自分のPCや携帯電話、自機AIがここのスレ主の如く自己主張し始めたらどうしますか?
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1069768272/
全力で拒否する。(ドきっぱり
アルだけでも会話していて疲労感を禁じえないのに、身の回りの電子機器が全てそうなってしまっては……
そうなってしまっては………………(ついつい想像)
しまっては………(想像中)
しま……(眉間にしわ寄せつつ想像中)
…………………すまない、想像しただけで目まいがしてきた。
次に行かせてくれ。
アル《――軍曹殿。
それは推測するに、私に対して幾分か失礼なニュアンスを含んだ表現ではないのでしょうか》
――次に行かせてもらうぞ。
アル《軍曹殿、私の質問に対する回答を願います》
次に行かせてくれ。
アル《ウルズ7・<ruby><rb>S G T</rb><rp>(</rp><rt>サージェント</rt><rp>)</rp></ruby>サガラ、速やかに応答願います》
(外部スピーカーの音量を大にしつつ)
――ええい、うるさい! 黙って先に行かせろ!
大体アル、貴様いつメンテナンスから戻ってきた!?
アル《つい先刻です。脆弱化した電子戦ルーチンの最適化の試験として
広域集音・探知モードを実行した際、軍曹殿の発言を傍受しましたので。
軍曹殿、友軍機への応答は迅速に願います》
つくづく不要なところばかり人間くささを増しすぎだ、貴様は……!
これ以上はレスの邪魔だ、おまえは黙っていろ。
アル《了解、黙ります》
…………とりあえず、見ての通りだ。
こいつ一基だけでもここまで疲労するのにこれが身の回りに
溢れかえろうものなら、間違いなく俺の精神は破綻する。
だからもし、そんな状況が起きようものなら、全力で阻止させてもらう……!(ギロ
>知性・判断力などは文句のつけようもありませんが、
>場合によっては危ないことはあなたがやらされた挙げ句、手柄を全部横取りされたりします。
もしアルがそうなったら……むしろちょうどいい機会かもしれん。
そのときはその事実をもって奴を故障したと認定し、<レーバテイン>から取り外して
代わりにECSとECCSを取り付けよう。
いまどき<アマルガム>ほどの連中を相手取るのに、電子兵装がお粗末では心もとないのでな。
アル《アラート・メッセージ。私からは賛成できかねます。
私抜きではラムダ・ドライバは作動せず、したがって隠し腕もデモリッション・ガンも無用の長物です。
デッドウェイトだらけの欠陥M9になってしまいます。あなたの提案はナンセンスです》
――だったら、少しはそう思われないような言動を心がけろ!
まったく……いなければいないで物足りん、いたらいたで鬱陶しい……!
とにかく、次に行くぞ。
>>167 なんか、相良義陽と名字が似ているな。
肯定だ。
そもそも似ていると言う以前に、まったく同じ漢字なのだが。
――ただ、その人物と俺の苗字が同じだと言うのも、ただの偶然でしかないだろう。
いまの俺がこうして名乗っている「相良宗介」と言う名前も、極論すると
物心つく前から覚えていた「サガラ・ソウスケ」と言う発音に合致する漢字を当てただけのものだからな。
俺の名前の漢字表記が似ていたからといって、特に意味のあるものだとは思えんな。残念ながら。
>>181 御飯は丼何杯食える?
詳しくは分からんが……少なくとも、以前ほど健啖な食生活はできないということらしいな。
俺自身、もとからあまり暴飲暴食をするほうではなかったが――
クラマに撃たれた傷の手術で、肝臓や腎臓ほか主要な消化器官がいくらか切除されたとレモンに聞いている。
まあ食事はともかく、酒に関してはもともと飲む気などないので、問題はない。
>>138 相良軍曹とヒイロ・ユイの黄金コンビ…惜しかったな…。ニアミスってヤツですね。
コンビ云々はよくは分からんが、先日出たWにおいては、彼らと戦場を同じくすることとなった。
大丈夫だ>>138、何も問題はない。
次回作に関しては――流石に今のところは、なにも思いつかないな。
ただ、もし縁があるのなら、かつてロボット乗りスレで縁のあった連中と
共闘する機会があれば、とは思う。
>>168 宗介の声は〜
……そういわれてもな。
そもそも俺の声は俺の声でしかないし、こちらに文句を言われても困る。
仮に関氏に言われても困るだろう。
しかし、そちらの挙げている声優のメンツ……
件のスパロボWで聞いたことのある声と非常に似通った声の連中が多いのは、俺の気のせいか?
……それにしても、俺の声か。
そういえば、これはいつか小野寺や風間から聞いたことがあるのだが――
東京で売っていた『爆熱ゴッドカレーパン』というカレーパンを食べる際、
食べる者の脳内に、なぜか俺の声が響くらしい。
それから、もし俺の声質が違っていたら『たぶん普通のカレーパンの味しかしないかも』とも言っていた気がする。
なぜたかが俺の声などで、ここまでの話になるのだろう……理解に苦しむな。
- 531 名前:名無し子猫:2007/04/05(木) 04:13:510
- >>174 <レーバテイン>について感想をどうぞ
まったく……アルの奴め、心配して損した。
奴が破壊されてからこちら、ずっと音沙汰がないと思っていたら、今度はまるで桁違いの機体になってくるとはな。
先刻、サックス中尉やレミング少尉たちに機体チェックを受けていたが――減らず口も、あの通りだ。
むしろ達者になったように思える。
しかもいちばん必要なタイミングを見計らったかのように、あそこで割り込んで来る知恵までつけて……
そのくせ、ECSやECCSが使用不能などと、不要なところで間が抜けている。
――まったくもってつくづく、どうしようもないほど、憎たらしい相棒だ。
諸君、またしばらく空けてすまなかったな。
前置きはこのへんにして――始めさせてもらおう。
>>160 自分のPCや携帯電話、自機AIがここのスレ主の如く自己主張し始めたらどうしますか?
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1069768272/
全力で拒否する。(ドきっぱり
アルだけでも会話していて疲労感を禁じえないのに、身の回りの電子機器が全てそうなってしまっては……
そうなってしまっては………………(ついつい想像)
しまっては………(想像中)
しま……(眉間にしわ寄せつつ想像中)
…………………すまない、想像しただけで目まいがしてきた。
次に行かせてくれ。
アル《――軍曹殿。
それは推測するに、私に対して幾分か失礼なニュアンスを含んだ表現ではないのでしょうか》
――次に行かせてもらうぞ。
アル《軍曹殿、私の質問に対する回答を願います》
次に行かせてもらおう。
アル《ウルズ7・<ruby><rb>S G T</rb><rp>(</rp><rt>サージェント</rt><rp>)</rp></ruby>サガラ、速やかに応答願います》
(外部スピーカーの音量を大にしつつ)
――ええい、うるさい! 黙って先に行かせろ!
大体アル、貴様いつメンテナンスから戻ってきた!?
アル《つい先刻です。脆弱化した電子戦ルーチン・プログラムの最適化の試験として
広域集音・探知モードを実行した際、軍曹殿の発言を傍受しましたので。
軍曹殿、友軍機への応答は迅速に願います》
つくづく不要なところばかり人間くささを増しすぎだ、貴様は……!
これ以上はレスの邪魔だ、おまえは黙っていろ。
アル《了解、黙ります》
…………とりあえず、見ての通りだ。
こいつ一基だけでもここまで疲労するのにこれが身の回りに
溢れかえろうものなら、間違いなく俺の精神は破綻する。
だからもし、そんな状況が起きようものなら、全力で阻止させてもらう……!(ギロ
>知性・判断力などは文句のつけようもありませんが、
>場合によっては危ないことはあなたがやらされた挙げ句、手柄を全部横取りされたりします。
もしアルがそうなったら……ふむ、むしろちょうどいい機会かもしれん。
そのときはその事実をもって奴を故障したと認定し、<レーバテイン>から取り外して
代わりにECSとECCSを取り付けよう。
いまどき<アマルガム>ほどの連中を相手取るのに、電子兵装がお粗末では心もとないのでな。
アル《アラート・メッセージ。私からは賛成できかねます。
私抜きではラムダ・ドライバは作動せず、したがって隠し腕もデモリッション・ガンも無用の長物です。
デッドウェイトだらけの欠陥M9になってしまいます。あなたの提案はナンセンスです》
――だったら、少しはそう思われないような言動を心がけようとは思わんのか!?
まったく……いなければいないで物足りん、いたらいたで鬱陶しい……!
とにかく、次に行くぞ。
>>167 なんか、相良義陽と名字が似ているな。
肯定だ。
そもそも似ていると言う以前に、まったく同じ漢字なのだが。
――ただ、その人物と俺の苗字が同じだと言うのも、ただの偶然でしかないだろう。
いまの俺がこうして名乗っている「相良宗介」と言う名前も、極論すると
物心つく前から覚えていた「サガラ・ソウスケ」と言う発音に合致する漢字を当てただけのものだからな。
俺の名前の漢字表記が似ていたからといって、特に意味のあるものだとは思えんな。残念ながら。
>>181 御飯は丼何杯食える?
詳しくは分からんが……少なくとも、以前ほど健啖な食生活はできないということらしいな。
俺自身、もとからあまり暴飲暴食をするほうではなかったが――
クラマに撃たれた傷の手術で、肝臓や腎臓ほか主要な消化器官がいくらか切除されたとレモンに聞いている。
まあ食事はともかく、酒に関してはもともと飲む気などないので、問題はない。
>>138 相良軍曹とヒイロ・ユイの黄金コンビ…惜しかったな…。ニアミスってヤツですね。
コンビ云々はよくは分からんが、先日出たWにおいては、彼らと戦場を同じくすることとなった。
大丈夫だ>>138、何も問題はない。
次回作に関しては――流石に今のところは、なにも思いつかないな。
ただ、もし縁があるのなら、かつてロボット乗りスレで縁のあった連中と
共闘する機会があれば、とは思う。
>>168 宗介の声は〜
……そういわれてもな。
そもそも俺の声は俺の声でしかないし、こちらに文句を言われても困る。
仮に関氏に言われても困るだろう。
しかし、そちらの挙げている声優のメンツ……
件のスパロボWで聞いたことのある声と非常に似通った声の連中が多いのは、俺の気のせいか?
……それにしても、俺の声か。
そういえば、これはいつか小野寺や風間から聞いたことがあるのだが――
東京で売っていた『爆熱ゴッドカレーパン』というカレーパンを食べる際、
食べる者の脳内に、なぜか俺の声が響くらしい。
それから、もし俺の声質が違っていたら『たぶん普通のカレーパンの味しかしないかも』とも言っていた気がする。
なぜたかが俺の声などで、ここまでの話になるのだろう……理解に苦しむな。
- 532 名前:名無し子猫:2007/04/25(水) 22:07:510
- <<Panzergeist>>
- 533 名前:名無し子猫:2007/04/25(水) 22:08:240
- <<panzergeist>>
- 534 名前:名無し子猫:2007/04/25(水) 22:15:100
- レヴ: Panzergeist.(Panzer 甲冑 「パンツァー」 + Geist 精神 「ガイスト」) 「パンツァーガイスト」
レヴ: Jawohl. 了解 「ヤヴォール」
レヴ: Nachladen. (装填) 「ナッハラーデン」
レヴ: Sieg. (勝利) 「ズィーク」
レヴ: Wahlen Sie Aktion! 行動の選択を 「ヴェーレン・ズィー・アクツィオーン」
レヴ: Nein. 否 「ナイン」
レヴ: Stellungwinde.(Stellung (陣営) 「シュテルング」 + Wind (風) 「ヴィント」) 「シュテルングヴィンデ」 (陣風)
レヴ: Schlangeform. (Schlange (蛇) 「シュランゲ」 + Form (形態) 「フォルム」) 「シュランゲフォルム」
レヴ: Schwertform. (Schwert (剣) 「シュヴェールト」 + Form (形態) 「フォルム」) 「シュヴェールトフォルム」
レヴ: Danke. (感謝) 「ダンケ」
レヴ: Bogenform. (Bogen (弓) 「ボーゲン」 + Form (形態) 「フォルム」) 「ボーゲンフォルム」
レヴ: Sturmfalken. (Sturm (嵐) 「シュトゥルム」 + Falke (隼) 「ファルケ」) 「シュトゥルムファルケン」
- 535 名前:名無し子猫:2007/04/26(木) 00:15:310
- テスト
- 536 名前:王 大人 ★:2007/04/26(木) 00:17:520
- test
- 537 名前:gptlcm wkpv:2007/04/26(木) 22:26:060
- ukgxrompe islardfpq hsfqcrjed kajiqr mbunsh hmtc ojmdc
- 538 名前:『時の旅人』サン・ジェルマン ◆BLOODlbo6s :2007/04/27(金) 22:48:480
時計の針はちくたくと。
回る歯車せわしなく。
ここは奈落に落ちた魔城とは異なるどこか。
時の狭間に彼はいる。
時の旅人の彼がいる。
仰向けに浮かんで眠る、死に際の騎士と彼はいる。
「さて――――本来ならばこれは赦されざることです。
全ての万象は予め決まっており、それを変える事は誰にも許される行為では
ありません。
それは変える力を持つような、そう。私のようなものであれば尚更のこと。
万能とは同じく無能。
全てを知るものは、その全てに干渉してはならないのですから。
それが世の不変たる理、いわば絶対の摂理といえます」
詠うように言葉をつむぎ。時計の針はカチコチと。
彼の名前はサンジェルマン。世界の全てを知る男。
時の旅人サンジェルマン。世界のどこにも干渉できない。
「本来ならば、旅人はただ過ぎ行くのみ。
観察者は観察を行う、それだけをするべきでしょう。
ですが、あなたの運命は決まってしまわれた。
そう、あの騎士王と打ち合った瞬間、相打ちとなった時から。
私は私すら知りえない歴史の中で唯一、その事を知ってしまいました。
ゆえに―――――」
とくちくとは針の時計。
くなしわせ車歯る回。
とチコチカは針の時計。
――――時が逆巻く。文字通りにそれは時計の逆回し。
再生でも治癒でもないそれは「復元」。
死の際にあった騎士の体は、損傷した騎士の武具は。
まるで最初から何事もなかったかのように往時のカタチを取り戻す。
ただし、弾薬の数と記憶だけは『決められた通り』そのままに。
戦場へ送り出すためだけの、それは局所的な時間逆行。
「お行きなさい、剣の騎士。
今の貴女が辿るべき未来、本道ならぬ苦難の道へ。
それこそが貴女の運命であるが故に」
時計の針はちくたくと。
回る歯車せわしなく。
サンジェルマンは送り出す。一人の騎士を送り出す。
時の旅人送り出す。空を開いて送り出す。
あるべき所へ送り出す。
- 539 名前:名無し子猫:2007/04/27(金) 22:51:020
- <ruby><rb>Demonic horrors that lurk in the darkness</rb><rp>(</rp><rt>闇に潜むホラー</rt><rp>)</rp></ruby>
<ruby><rb>Demons that hate, that feed upon mankind</rb><rp>(</rp><rt>人を喰らい、人を憎悪する魔獣</rt><rp>)</rp></ruby>
<ruby><rb>There was a time when humans lived in fear of these fiends from the shadows</rb><rp>(</rp><rt>かつて人はその魔獣の影に怯えていた</rt><rp>)</rp></ruby>
<ruby><rb>But mankind received a ray of hope</rb><rp>(</rp><rt>しかし人は希望の光を手に入れた</rt><rp>)</rp></ruby>
<ruby><rb>The light of hope that was the "Makai-Knights"</rb><rp>(</rp><rt>魔戒騎士という名の希望の光を</rt><rp>)</rp></ruby>
<ruby><rb>The demon hunters, the pritectors of mankind</rb><rp>(</rp><rt>『魔獣を狩りし者』、『人を守りし者』……</rt><rp>)</rp></ruby>
<ruby><rb>Thus, they were exalted by humanity.</rb><rp>(</rp><rt>人は彼らをそう讃えた</rt><rp>)</rp></ruby>
- 540 名前:名無し子猫:2007/04/27(金) 22:55:340
Demonic horrors that lurk in the darkness
闇に潜むホラー
Demons that hate, that feed upon mankind
人を喰らい、人を憎悪する魔獣
There was a time when humans lived in fear of these fiends from the shadows
かつて人はその魔獣の影に怯えていた
But mankind received a ray of hope
しかし人は希望の光を手に入れた
The light of hope that was the "Makai-Knights"
魔戒騎士という名の希望の光を
The demon hunters, the pritectors of mankind
『魔獣を狩りし者』、『人を守りし者』……
Thus, they were exalted by humanity.
人は彼らをそう讃えた―――
- 541 名前:名無し子猫:2007/04/27(金) 23:22:190
- 魔戒騎士・冴島鋼牙はその日の仕事を終え、邸宅へと帰還した。
日の落ちた夜にしか存在できないホラーを相手にする魔戒騎士とて、昼も動く。
ホラーの気配がない昼間は、この現世に這い出るためにホラーが利用する『ゲート』に
溜まった闇のエレメントを浄化するのが魔戒騎士の仕事だ。
「お帰りなさいませ、鋼牙さま」
帰宅した鋼牙を出迎えたのは、鋼牙の家に仕える執事・倉橋ゴンザだった。
初老とは思えぬほどにバイタリティを備えたゴンザは、
鋼牙の日常を守りし者であると同時に鋼牙のかけがえのない家族でもある。
「ただいま」
鋼牙は軽く笑顔を見せると、纏っていた白いロングコートをゴンザに渡しリビングに向かう。
闇のエレメントの浄化は、体力を消耗する。鋼牙は少しでも休んでから夜の仕事へ向かうつもりだった。
魔戒騎士の本領は、ホラーが活動する夜にあるのだ。
「鋼牙さま……番犬所より、指令書が届いております」
コートを片付けてきたゴンザが、冷えた水とともに封印がなされた手紙を持ってくる。
鋼牙は怪訝そうな顔で手紙を受け取ると、ライター型の魔導具「魔導火」を取り出し手紙を燃やす。
魔戒騎士への指令書はこのように魔導火で燃やして初めて読むことが出来る。
《吸血鬼の王ドラキュラ、北欧の地に再臨せり 必ずやドラキュラを打ち倒し
闇に覆われし彼の地に光を取り戻すべし》
「吸血鬼? ありゃ確か魔戒騎士の管轄じゃあなかったろう?」
鋼牙の左中指に収まる指輪――魔導輪ザルバ――が鋼牙に問いかける。
吸血鬼とホラーは極めて近く、限りなく遠い存在であるとされている。
共に人や動物の血肉を、果ては魂までも喰らう。夜の闇の中でしか活動できぬ存在。
しかし、吸血鬼とホラーには明確な違いが有る。
ホラーは「ソウルメタル」と呼ばれる金属で作られた武器でしか倒せない。
それは、幾千年もの長い間に人類が掴んだ答えだ。
だが、吸血鬼を倒すにはソウルメタルの武器は必ずしも必要ではないのだ。
それゆえに、ホラーは魔戒騎士が。吸血鬼はヴァンパイアハンターがという暗黙の了解の下に管轄を分けられてきたのだった。
「……つまり、魔戒騎士を必要とする程の事態ということだろう」
鋼牙はザルバの問いに対して、正確な答えを持っているわけではない。
だが、この予感は外れているわけではないだろう。ヴァンパイアハンターは魔戒騎士と違い
縄張り争いをし合うほどに自分の面子にこだわっている連中なのだ。
そんな連中が、恥も外面もなく魔戒騎士の支援を許可したということはよっぽどのことなのだ。
「ドラキュラでしたら……確か先代の大河様にも関係のあることだと聞いております」
二人の会話を聞いていたゴンザが、ふと思い出したように話に割り込む。
「本当か、ゴンザ!?」
「は、はい……たしか、1999年七の月と予言された復活の日に合わせた戦いへ参加されると……」
だが、その約束は果たされなかった。かつての弟子であり友であった男、
そして力を渇望した果てに闇に落ちた魔戒騎士、バラゴとの戦いで先代のガロである冴島大河は命を落としてる。
- 542 名前:名無し子猫:2007/04/27(金) 23:27:420
「父さんが……」
鋼牙は、宿命を感じた。
父が志半ばで倒れ、果たせなかった約束を、今自分が果たす時が来たのだ。
決意の表情を見て取ったゴンザは、止めようとはしなかった。
「鋼牙さま、どうかお気をつけて……」
鋼牙の答えはただ一つだった。
「心配するな、必ず戻ってくる―――」
目線はゴンザから飾られている絵に移る。
その目線の先には鋼牙が守りし者が描いた絵がある。
この絵をもう一度見るためにも、自分が人として生きる場所を守りってくれる者たちを守りぬくためにも。
その目には、もはや迷いも憂いも残っていなかった。
- 543 名前:魔王オディオ ◆OdIoUsLjVw :2007/04/28(土) 03:02:480
- ―――――ルクレチア 魔王山 頂上
禍々しい石像の前に佇む男が一人。
かつてルクレチアで信じるものの為に剣を振るい、
その人生全てを裏切りという形で否定された勇者、オルステッド。
「……運命は捻じ曲げられ、存在してはいけない筈の魔王が誕生する」
いや、もう彼を「勇者」と呼ぶものは誰もいない。
親友の姦計に陥り、王殺しの罪を着せられた巨大な力を持つもの、
人々は彼を「魔王」と呼んだ。
「……奴が生まれれば世界は滅びる。
私が滅ぼすはずの世界、全てがな……」
愛する人にさえ裏切られ、信じるものは全て死に絶え、
彼自身も勇者でいられなくなっってしまった。
だからオルステッドは「魔王オディオ」を自ら名乗った。
自らを追いやった人間達にその愚かさを教えるために、
自らを魔王と呼ぶものすら滅するために……。
「真祖『ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ』の転生……
私にとっての……厄介事」
その魔王になった意味すらなくそうというのは
彼には許せないことであった。
人間は、自らの憎しみで滅びなければならない。
それを導くのが「魔王オディオ」の役割である。
「我が憎しみの力よ……私を導け……」
魔王の石像に語りかけるように呪詛を呟く。
すると太陽のない王国が更なる暗黒に包まれた。
これが彼に与えられた「魔王」としての世界を滅ぼす力である。
「来須蒼真……ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ……
遥かなる時も、遥かなる場所も越え、私はお前の前に現れよう……」
雷鳴が響く、大地が揺れる、空が悲鳴を上げる。
彼の周りに集まるのは闇、暗黒、漆黒。
越えられぬ筈のものを越えて、魔王は自らの復讐を遂げるために
強大な憎しみの力を操った。
「私の邪魔はさせない……何者であろうとな!」
魔王を模った石造の目が光る。
「先に滅するのは貴様だ、真祖ドラキュラ!!」
瞬間、魔王はルクレチアから消失し、
混沌を通じて彼の求める場へと移動した。
―――――混乱の世の20XX年5の月、悪魔城、御前試合へと。
- 544 名前:橘朔也 ◆X5lDK8LQyw :2007/04/28(土) 10:22:220
- ―「わかった…俺の体を動かすのは、義務とか使命なんかじゃない。そこにいる人を守りたいという、思い。そうだ、人を愛しているから俺は戦っているんだ」―
友の声を想う。俺は、愛した女の眠る墓に花束を置くと黒く覆う雲を睨んだ。
―魔王が来る―
俺は、試合をする趣味は無い。
だが、世界が誰かの手によって滅ぼされるのを黙ってみていることも出来ない。
俺の友が命を賭けて救った世界を、友が信じた人々を……絶望に染めたくは無い。
かつての俺は、力に溺れていた。他人を信じれなくなり、他人を憎んだ。
「力を。…俺は俺の力を証明するために」
―「そんな生き方じゃなくていい。私は…、 道端の花みたいにひっそりとでいい、そんな風に生きていきたいの、あなたと」―
俺は、結局何も守れなかった。
信じる正義も、愛するものも……なに一つ守れなかった。
だが、そんな俺にも守れるものがある。
―「橘さんは頼りにならないし…」―
広瀬。
―「でも、橘さんは…僕、信じてる。きっと来てくれるよ」―
虎太郎。
―「強いですね、橘さんは…」 ―
睦月。
―「本当に強いのは…人の思いだ!!」―
相川始。
- 545 名前:橘朔也 ◆X5lDK8LQyw :2007/04/28(土) 10:24:260
- 信じれる仲間だけは、そしてその仲間がいる世界だけは…失いたくない。
――――ハカランダ
久しぶりに相川始と会う。奴と会うのはあまり好きじゃないが、仕方ない。
この世界を覆う、邪悪な闇の力について奴に聞きに来た。
「どうしても、行くのか?」
俺は、無言で頷くとコーヒーカップを置いた。
奴も、この世界を覆う闇の力に感付いているらしい。
「俺が、行く。お前はここにいろ……お前を必要とする人がいる。
それだけで、今は充分だろう?」
相川始の目を見る。もう奴は、人間だ。
アンデッドなんかじゃない……俺は、口に出す事を恥ずかしく思い心の中でそう呟いた。
―「お前は、人間として生きろ」―
そう、あの時の剣崎の言葉と同じ思いを俺は抱いていた。
店を出ると、黒い雨が地面を叩き始める。戦いは、もう始まるようだ。
「人間を愛している、か。俺にも出来るか……いや、出来るさ。
俺はギャレン。仮面ライダーだ。」
心に 剣 輝く 勇気 確かに 閉じ込めて奇跡 切り札は自分だけ
- 546 名前:◆BLOODlbo6s :2007/04/28(土) 21:23:460
――――1944年、悪魔城に異変あり。
二度にわたる世界大戦によって現界した魔王の城は、一人のヴァンパイアによって
かりそめの支配を受けた。
城主の名は真祖ブローネル。生前よりの才覚と執念によって吸血鬼へと成った魂ある不死者、
「非精霊の真祖」と類されるもの。
元来画家であった彼は絵によって魔力を行使し、その絵によって城の力を制御し、支配していた。
ブローネルの「絵画秘術」。
彼の絵は拘束の術式であると同時に、もう一つの現実であり、小さき世界であった。
これを逆手に取り、絵の世界に入り解呪することで異変を解決したモリス・オーリン両家のハンターによって、
この怪奇にして無双の魔技は闇の世界に知られる事となったのである。
――――そして、現在。
悪魔城最上階。
偽りでありながらも復活を遂げた悪魔城城主の御前に、一枚の絵画がある。
これぞブローネルの遺した作品の一つ。
東洋の逸話から着想を得、生前より筆を走らせて完成させた『月下の舟島』。
本来ならば当時、悪魔城制御の一つに割り当てられる筈だった失われた絵。
それが、城主の命により仕合場の役割を発揮せんとしていた。
他でもない、古今並ぶものなき剣士二人の為。
描き手に着想を与えた、かの「巌流島」の逸話を再現するために。
絵画をもう一つの現実とさせ、そこに至る空間を繋げる。
互いの詰め所より仕合場へと繋げる“道”は、魔王の力により完成している。
後は、この来たるべき死合の開始を待つのみであった。
- 547 名前:名無し子猫:2007/04/28(土) 21:41:200
墨絵のごとき海面には、大きなる円形が白々と映えていた。
――闇天に輝く月だ。いささか大きすぎるようである。仰いでいる内に、生理的な圧迫感す
らおぼえるほどだ。
黒々とした海面はある時は凪ぎ、ふとした瞬間にうねりをどよもす。
どこも現実離れなどしていないのに、どこか現実離れしている光景であった。そう、まるで
何らかの絵画のように。
その超現実的な波を切って、滑るように小島へ近づいて来る小舟こそ、異次元の産物と
いえたろう。
艫(とも)で舟を操っているのは人間ではない。虚ろな眼窩を舳先へ向け、ぐいと櫓を漕ぐ
度に欠けた歯列がカタカタと鳴る。
襤褸をまとった骸骨であった。
舟の客となっているのは一人の牢人風の男だ。
色褪せた黒門付に袴もはかず、白髪まじりの蓬髪を無造作に結っている。
一メートル八十を越す長身であるが、既に老人といえる年頃であるのは、高い頬骨の辺り
までを覆うまばらな髭にも白いものが多い事からも判る。
石仏じみた無言無表情ながら、その双眸だけは尋常ではない。金茶色の虹彩は、万象を
飲み込まんとする底も知れない洞(うろ)を思わせた。
男は最前より行っていた作業を中断し、作成した品を月に翳した。
木剣である。
ただし常の大きさではない。どうやら舟の櫂でも削ったものらしく、舟底に木屑が散乱
している。
出来栄えに満足したか、少し頷くと、男はこれも先ほどより合わせておいたこよりでたすき
をかけ始めた。
- 548 名前:◆KOJI2a34Bo :2007/04/28(土) 22:09:040
- よせてはかえす波の音。
月影が射すその砂浜に潮騒のみが静かに響き渡っていた。
眼前に広がるその景色は、かつて見た光景だった。
それは人であった彼の世界の終わりの光景。
あの日。慶長壱拾七年の春卯月。
豊前(ぶぜん)の海峡に浮かぶ孤島で見た光景と寸分たがわぬものだった。
白砂を朱に染めて、彼が斃れ付したあの場所そのものであった。
あえて差異を挙げるとすれば、この船島には己のみしか存在せず、そしていまが夜であることか。
しかし夜とはいえど、宵闇からは程遠い。見上げれば天を埋め尽くすほどの巨大な月が。
虚ろな月は禍々しい光を放ってあたりを照らし、虚空に唯我独尊の王者のごとく、唯一つ空に浮かんでいた。
一人の男がそこにはいた。
猩々緋の袖無し羽織に革染めの袴を纏った男だ。
六尺二寸に余る長身ながら、その線の細さと、何より女人と見紛うばかりのかんばせにより不思議と威圧感はない。
彼はかつて四百年余の昔、西国一と謳われた白皙の天才剣士だった。
たとえ顔を知らねども、その背に担いだ刀を見れば、思い当たるものも多くあろう。
長い朱鞘の刀だ。それは長い長い刀だった。
異様なまでに長い刀だった。全長六尺に余る大太刀だった。
決闘に用いるには非現実にこの長い刀は、講談の花とするのもけれんみが強く、
後の世では、腰にたばさんだ三尺余寸の太刀の方が彼の愛刀として知れ渡っていた。
その銘おば備前長船長光なり。その仇名おば『物干竿』なり。
そしてその魔剣の持ち主は、いかに歴史を紐解こうと、ただの一人しか存在せぬ。
そう彼の名をば――――――。
- 549 名前:◆KOJI2a34Bo :2007/04/28(土) 22:09:580
- >
沖合いより近付いてくる小舟を眼にとめ、彼は将几(しょうぎ)より立ち上がる。
彼は人ではなかった。いまの彼は木偶であった。或るからくり師の傀儡(くぐつ)に過ぎなかった。
そは死にぞこないし亡霊。そは兵どもの夢の欠片。在りし日の蜃気楼のようなもの。
死してなお、剣という名の修羅に憑かれ、魂魄の安息を得ることは叶わず、
再び映し世に迷い出でる代償として、からくり師の狗と成り果てた、愚かしくも悲しい傀儡だった。
だが、いまこの瞬間だけは。この場所に立ち、あの男を迎え討たんとするいまこの瞬間だけは。
彼は再び『人』として、ただ一人の武芸者として、その場所にあることができた。
- 550 名前:宮本武蔵:2007/04/28(土) 22:20:470
- >> 続き
牢人が懐から出した手ぬぐいを裂いて額に巻いた時、舟が大きく揺れた。
この辺り一帯は遠浅らしい。舟底が岩にでも当たったのだろう。
男は無言で立ち上がった。脇の大小を腰に差すと、舟の伴べりを蹴った。
二間は確かに飛んで、水しぶきも上げずに海中に降り立ったのは、まさに水際立った動き
であった。
膝まで海水に浸しながら牢人は進む。着物の裾や提げた木剣が濡れるのを意に介せぬ風
で、潮を掻き分け浜辺へ歩いてゆく。
波が足首を洗う水際で男は歩を止めた。かっと両眼が見開かれる。
砂浜の人影――夜目にも鮮やかな猩々緋の袖無し羽織に向かい、
「――小次郎」
そう呼びかけ、一拍置いて男――正保二年、熊本は岩殿山にて死したはずの大剣士・宮本
武蔵は、
「小次郎っ!」
二度いった。
- 551 名前:名無し子猫:2007/04/28(土) 22:21:540
波濤(なみ)は運び来たり
波濤は運び去る
剣(つるぎ)の歌……
.
- 552 名前:メタルアルカイザー ◆8/KAIZERps :2007/04/30(月) 12:38:570
完全なる直撃/三重の防御を破壊する感触/攻撃成就の確信。
警告/オーバーヒート/限界を超えて稼動する出力機関の悲鳴/破損した箇所を黒炎が
苛む―――エラーメッセージを全て無視して、勝利のビジョンを視る。
勝つ。勝てるはずだった。この一撃で。
例え相手を葬れずとも、確実に戦闘不能を強いる切り札=必殺技。
その瞬間、ノイズ混じりの視覚センサが奇跡を目にした。
闇を弾く/白の輝き/最後のカートリッジ。
存在するはずのなかった第四の盾―――虚無の拳を束の間受け止めた。
そして第五の盾が、完全に弾き飛ばす/閃きの現象を確認。新たに生まれる技。
爆発。慣性の法則によって放たれた炎は、打撃を与えながらも必至にはならず。
彼我の状態を再計測―――シグナム/ダメージ大。しかし戦闘能力の低下を確認出来ず。
メタルアルカイザー/ダメージ大。機関冷却中/ダークフェニックスの使用不能―――
更に驚愕/陰術機関のオーバーロードによる機能停止/さらに再使用まで時間がかかる。
シグナムの行動―――守護神たる最後のカートリッジを装填。
「私一人を敵に回していると思うな。
私は、ここに一人でいるのではない。
今まで戦った者、轡を並べた者、多くの者と共にいるのだ。
これが、お前と私の違いだ、メタルアルカイザー。
私は、お前のように一人で立っているのではない。
だから、私の強さが正しいというのなら、それは私の多くの友が正しいということだ!」
シグナムの強さ/源流を確信する―――その背に負ったものが全て強さとなる。
孤高の武人と対極を成す姿=決して得られぬ、しかし厳然たる答え。
死の予感/正しくそれを受け入れる/彼女にならば殺されても構わないと言う涼やかな
覚悟。“正しき強さ”の、一つの究極形を見た感慨と満足が思考を占める。
だが、ここで何もせずただ斬られるのは完全な非礼。
故に―――この鋼の命を込めて、限界を超える。
ビジョン/三度目の死の光景が蘇る。
アルカイザーの声―――“間違った強さだった”。
それを教えられたことに対する感謝の念=まだ終われないと言う意志が生まれる。
「―――確かに間違っていただろう。だが、だからこそ終われん。まだ私は、起点にすら
立っていないのだから!!」
抑制装置ヲ解除……コレニヨリ、全武装の使用不能。
自らを護るための枷を外す―――オーバーヒート警告/臨界まで数秒/内部機関損傷の
危険……最悪の場合は自壊する。鋼の内の魂が、農耕に死を感じ取る。常に傍にいた死神
の息遣い/思考に忍び寄る恐怖のイメージを偉大な精神で弾き飛ばす。
ドクター・クラインの機能説明を思い返す/リミッター解除――“一度しか使えない”
という意味。それは確実な致命傷を自身に跳ね返す諸刃の剣。
だからこそ、あらゆる不可能性を超えられる。
「<ruby><rb>炎王結界</rb><rp>(</rp><rt>インビジブル・フレア</rt><rp>)</rp></ruby>!」
放たれる新生の一撃。鮮やかな白の流星。
迎え撃つ―――あと一度だけ、命=稼働時間を代償に許された攻撃。
陰術機関使用不能/ジェネレータから直結/属性持たぬエネルギーの放出―――装甲の
急速な消耗。さらに全身のバイパスが断末魔/想定されていない量の出力によりいくつか
破損。内部で小爆発を起こす=装甲が弾け飛んで行く。
文字通り命を燃やした一撃。
吹き上がった炎は―――黒ではなかった。
陰術機関を通さない、心術ジェネレータによる、精神と命の輝きたる黄金の炎。
その炸裂―――偉大なる閃光。
おお、<ruby><rb>炸裂よ</rb><rp>(</rp><rt>エクスプロード</rt><rp>)</rp></ruby>―――!!
己から生まれた輝きの炸裂―――感動/歓喜を覚える。
奇しくもアルカイザーの放つ不死鳥と同じ輝き。
これほどふさわしい、美しい技はない。
スラスター全開/爆発的な加速。
纏う炎が翼を生む/流星を迎え撃つために。
黒き装甲は白きフェニックスに転じた。
視覚センサがターゲットをロック/例え死んでも外すことはない/真向からの直撃。
それはもはや闇の不死鳥にあらず。
だからこそ私は叫んだ。
「真アル・フェニックス―――!!」
それは、本来絶無。
機械の閃き。込められた偉大な魂と精神が起こした一つの奇跡。
英雄のみが使える技、その発現。
内部機関への恐るべきダメージ/火の粉のように散っていく装甲/壮麗な輝き。
その全てを乗り越えての一撃。
システムダウン寸前の朦朧とした意識の中―――ゼロに到達する。
爆心地。互いの激突する地点。
私は炸裂した。
システムダウン―――全ての機能を停止しながら。
- 553 名前:橘朔也 ◆X5lDK8LQyw :2007/04/30(月) 18:41:540
- 【 魔王 vs ギャレン エピローグ 】
―ハカランダ
未だに帰らぬ友を待つ者。
広瀬、虎太郎、睦月、そして相川始。
外を打つ雨音が一層激しくなるにつれ、その思いは暗雲へと変わっていく。
「橘さん……遅いですね。」
「せっかく私が腕によりをかけて作ったケーキとパスタなのに……橘さん。」
相川始が空を見て首を横に振る。
その目は、ただ広がる暗雲を見つめていた。
「橘が、あいつがそう簡単に死ぬなんて……俺は信じない。
また笑って、帰ってくる。……剣崎なら、そう言うはずだ。」
―紛争地帯 遠くない何処かの国
戦乱が続く国。子供の顔に笑顔はなく、そこには無益な争いと悲しみだけが渦のように
回っていた。
「大丈夫、俺がついてる。だから、泣いちゃダメだ。男の子だろう?」
戦火を逃れて彷徨う少年に、手を貸す一人の男。
その男はかつて、「仮面ライダー」として世界を絶望から救った戦士。
― 仮面ライダーブレイド 剣崎一真 ―
今日も、雨が降る。まるでこの争いの絶えぬ世界を悲しむかのように。
だが、剣崎は少年の手を引き歩き出す。たとえ今が土砂降りの雨でも。
それでも、歩く。運命に、負けたくない。
その思いが、彼を動かす。たとえ、自分の身が他者から忌み嫌われる存在
不死者―アンデッド―に変わってしまっても。
少年を勇気付けるように、剣崎が微笑みながら言う。
「こんな俺にもさ、友達がいるんだ。今は理由があってあえないけど……
でも、いつか会える日が来る。お互いが争う必要がなくなって、みんなが
笑顔で会える日が……」
雨が、上がった。
空は青く、太陽が輝き始める。
探した答えは 変わり続けてく生まれ変わるほど 強くなれる Got to be Strong
- 554 名前:名無し子猫:2007/04/30(月) 19:05:240
- 「これだけの数を相手にねぇ……正気か?」
「正気でやってられるかよ、こんな事」
雲霞のように群がる悪鬼、凶鬼どもを二人の男が眺めている。
一人は継ぎ接ぎのコートを纏い、マスクで両目を覆っていた。
恐らくは盲目(めしい)なのだろうが、その立ち居振る舞いには一切の隙が無い。
もう一人は真紅のツナギに派手に立てた髪、手にはエレキ・ギター。
場違いとか言う他無い男の姿は、いっそ悪い冗談のように見えた。
生ある者であれば、満ちる瘴気で肉体は侵され、非現実的な光景に精神は破壊され死に至るだろう。
だが此処に立つ男達は、そんな物を全く意に介さない。
それもその筈。この二人は既に命を失っているのだ。
継ぎ接ぎコートの男は『屍十二(かばね・じゅうじ)』。
死体を超人として蘇らせる技術によって蘇った死人兵士。
そして、ギターの男は『ロケットビリー・レッドキャデラック』。
魂をエレキ・ギターに宿らせた幽霊。
「今じゃ世界中がイカレてやがるんだ。マトモを装ってても仕方ねェだろうが」
「そりゃ、ごもっとも」
ロケットビリーが、ややオーバーに肩を竦めて応じる。
「それより――分かってんだろうな、RB?」
返答の代わりにギターを爪弾くと、エレキ・ギターのサウンドと共に青白い火花が弾けた。
エレキ・ギターの演奏に伴って発生する静電気を束ね、電撃として放つ。
物理的な破壊力を持つに至ったロックンロール、それが彼の武器だ。
「任せとけって。お前の道は開いてやるよ、ジュージ」
彼の言葉を確認して、屍十二は満足気に微笑んだ。
そして、腰から自らの獲物を抜き放つ。
一見して『それ』は二振りの日本刀に見えるが、『それ』はそんな真っ当な物ではない。
鍔であるべき部分は銃身。柄であるべき部分は銃把。それは見紛う事なく二丁の拳銃。
一振りは銃身から刃を伸ばし、もう一振りは銃把から刃を伸ばしている。
拳銃と日本刀を一体化させるという狂人の発想。
『それ』は正しく異形の武器(フリークス・ウェポン)――“ガンブレード”であった。
「そんじゃ、クソ野郎を棺桶に蹴り返しに行くとするか」
「ああ、派手なGIGにしてやろうぜ! Rock 'n' Roll!!」
二人の死人は示し合わせると、目の前の敵に――その奥の“悪魔城”に向かって駆け出した。
彼等は別段依頼を受けた訳でも、悪魔城に対して因縁がある訳でもない。
だが、どうしても城主である“神祖”を許してはおけなかった。
死人には死人の身の程というものがある。
それも弁えず、生者の世界を掻き乱す行いは二人を激怒させるには十二分。
理由は単純明快。『ムカついたからブッ潰す』。ただそれだけだ。
- 555 名前:デスマスク ◆xmpp2OfICI :2007/04/30(月) 19:14:560
- (ナレーション/田中秀幸)
女神―アテナ―を守り、地上の正義と平和を守るべき存在。
それが聖闘士―セイント―。神話の時代より受け継がれしその聖衣―クロス―を纏い常に
世界を邪悪から守ってきた者達。
ギリシャ、聖域―サンクチュアリ―にその拠点は在る。
黄 道 1 2 宮
聖闘士の頂点に立つ、12の存在。最強無敵の存在として語り継がれてきた戦士達の名を
黄金聖闘士―ゴールドセイント―を呼んだ。
その力、地上のあらゆる現象を操り宇宙の力さえも使いこなすとまで言われた。
そして、今。地上にその姿を現した悪魔城の主、ドラキュラの野望を阻止せんとする為
アテナの聖闘士が向かう。
地上の正義、そして平和の為……
のはずであった。
――ギリシャ・聖域 教皇の間
「デスマスク……このような命を受けてくれるのはお前だけであろう。」
聖域の中でも、最も深い場所に存在する教皇の間。
そこへ招かれるは黄金聖闘士、蟹座―キャンサー―のデスマスク。
おおよそ正義の聖闘士とは最も縁遠いこの男が呼ばれた理由とは如何に。
「この俺をわざわざお呼びとは……」
粛々としながらも、邪気を放つこの男。
他者を排除するには、こういった危険な存在が必要な場合もある。
「デスマスクよ……私が、お前に教えた”真実”。そして、その野望。
そしてその真実を知った今でも私に忠誠を誓うという事実。
その思いに、私は応えようと思う。」
デスマスクは、笑う。教皇の正体など、この男にとってはどうでもいい事。
ただ「今と同じように力で全てを征服する」ことが叶えば他はどうとでもなる。
それがデスマスクの考えであった。
「貴方の真実など……俺にはどうでもいいことですよ。
私はただ、力による正義の執行が叶えばいい。ただ、それだけの事。」
教皇は思う。このような男が、聖なる存在とは神も気まぐれなものだと。
しかし、自分の手駒としてここまで都合の良い存在もあろうか。
「その言葉を待っていた。私が目指すのは”人が神を、魔を操る世界。
流血と死が溢れる慟哭の世界”。それ以上でも、それ以下でもない。
そして……悪魔城の主。魔王もその例外ではない。」
神を操り、更には魔王さえも蹂躙する。
それが教皇……いや、この男の野望だ。
デスマスクはゆっくりと踵を返すと手を振りつつ間を後にする。
答えは1つ。YESだ。
悪魔を殺し、魔族さえも平伏す。これこそが自らの求めていた世界。
殺して、殺して、殺しまくればいい。
―幻 朧 魔 皇 拳―
……!?
一瞬でデスマスクの目から光が消えた。
意識を失う寸前にデスマスクが聞いた声……幻聴?
いや、違う……チガウチガウチガウチガウ
「デスマスク……許せ。貴様の力を信じていないわけではないが、
念には念を、な。」
- 556 名前:名無し子猫:2007/04/30(月) 19:16:380
- 「――チッ、とはいえキリがねェな」
ガンブレードを振り、纏わり付いた血と脂を振り落とす。
この程度で切れ味が落ちるような鈍らではないが、余り続くようだと面倒な事になる。
既に弾倉も幾つ取り替えたのか、覚えてもいない。
分かっているのは、饐えた腐臭を発するクソどもには手当たり次第に弾丸を叩き込んだ事だけだ。
「クソムカつくぜ……数だけは多いと来やがる」
ガンブレードの弾倉を交換し、屍は更に歩を進める。
この狂った城の中では足場すら覚束ない場所もあったが、彼が進む上での問題にはならない。
何も知覚を行うのは目だけではない。嗅覚、聴覚、触覚、味覚、そして“気”を感じ取る第六感。
視覚を失った分、他の感覚がそれを補うように発達した屍は、むしろより正確に空間を把握する事が出来るようになっていた。
「ったく、この城は一体どうなってやがる? 昇ってんだか下ってんだか分かりゃしねぇ。
イカレ野郎は城ン中までイカレてやがんのか」
だが、屍の知覚能力をもってしても首魁の元へ一直線、という訳には行かなかった。
常識が通用しない“悪魔城”内は迷路も同然。あちこちへ振られ、手間取るのも無理は無い。
「……まぁいい。何処行こうがやる事は決まってんだ。
臭ェ奴等を撃って刻んでバラす。そうしてりゃ何時かはブチ当たるだろ」
屍が進んだ先――其処で彼を出迎えたのは割れるような歓声と罵声だった。
「……ああン? 何だこりゃあ?」
まず鋭い嗅覚が、もう嗅ぎ慣れてしまった低級な妖魔どもの臭いを察知する。
ぐるりと取り囲まれているのは別に問題ではない。
次に感じた風の流れは、何故か目の前に開けた空間がある事を示している。
一斉に襲い掛かればいいものを遠巻きに囲んでいる、という不可解な状況が其処にはあった。
しかし、屍の真正面。そこから感じる妖魔のものとは異なる気配を捉えて理解に至る。
「……成る程な、俺を見せ物にしようってハラか。何処までもムカつく連中だ」
屍は銃口を相手に向け、互い違いの刃が天地を指す形で、ガンブレードを構える。
尋常の剣術では考えられない構えだが、間合いを選ばないガンブレードに剣の術理は相応しくない。
「――見物料は安かねェぞ、ドサンピンどもが」
言い終わるが早いか、屍の背から鬼の貌(かお)が現れた。
鬼は錯覚ではなく、実体ある炎だ。
燃え立つ炎は、コートを焦がす事も無く赤々と燃え上がる。
超人兵士であると同時に、屍は朽葉流忍術を修めた忍者でもある。
炎は“気”を用いた忍術の前触れ、いわば導火線に火を点けたような状態。
それは即ち――全力を持って、この場に居る存在を殲滅するという意思の表明だった。
- 557 名前:名無し子猫:2007/05/01(火) 00:11:360
- テスト。
- 558 名前:名無し子猫:2007/05/01(火) 03:18:030
- 【ヴィゼータvs斎月雪那/狂乱の庭園】
>>230
全超越最終必殺奥義、それを放つ直前で私の前に殺到する無数の斬撃斬撃斬撃。
ヴィゼータさんの放つ、斬撃という名の弾幕。
いくら私の奥義が強くとも、あの斬撃の弾幕を破れるのか。
一瞬、弱気が心を過ぎる。
『セツナ・・・』
その私の心を、華麟が後押ししてくれる。
信じろと。
自分を、そして華麟を、信じろと・・・!
そうだ、信じるんだ。
自分を、華麟を・・・私たち自身を・・・!
天命石『リア・フェイル』と華麟の魔力、そして私の魔力全てを解放する。
膨大な魔力が私の回りに収束し、周囲の空間物質存在因果律を書き換える。
そして、アストラルをマテリアライズ。
そう、これで――――『私』をあと二人産み出す。
「絶華・玲雪斬!!」
力尽くで・・・打ち抜く!
- 559 名前:名無し子猫:2007/05/01(火) 23:50:440
- 【ヴィゼータvs斎月雪那/狂乱の庭園】
>>278
血色に染まったクラウ・ソラス。
一振りして血を払う。それだけで聖別された刃は白銀の輝きを取り戻す。
けれど、それを振るった私の手は・・・
『セツナ、ごめんなさい・・・またあなたに重い咎を背負わせてしまった・・・』
私の背で悲嘆に暮れる華麟。
その華麟に、笑顔を見せる。
弱々しいかもしれないけれど、それでも。
「大丈夫よ、華麟。私が、私自身が選んだんだから」
そう、ヴィゼータさんと戦うことも。
彼女を・・・殺すことも、全ては私の選択、私の意志。
だから、嘆いたりはしない。
少なくとも、今は。
夜気が、冷たさを増す。
私の行く道を照らすものは何もない。
でも、私は、私が選んだ道を過たず歩いていく。
・・・それが、最後に微笑んで見せてくれた、彼女への最大の返礼だと思うから。
「行こう、華麟! この戦いを・・・無駄にしないために!」
私は駆けだした。
夜の、中へと。
- 560 名前:屍十二:2007/05/03(木) 22:52:250
- 【屍 十二 vs イグニス】
導入
闇の中、苛立った足音を響かせながら屍は歩を進めていた。
マスクを失った為、今は懐に仕舞っておいたサングラスでその両目を隠している。
闇夜にサングラスを付ける人間なんて物は存在しないだろうが、どうせ見えないなら同じだ。
「……クソムカつくぜ。腐った臭いがする城で、余計胸糞悪くなるなんざ」
城内で人間と――生者と戦う事になるとは思っていなかった。
ましてや、それを見殺しにするような真似をする事も。
自分への後悔、望んだ誰かの趣向への怒り、全てがない交ぜになった憤りが胸を焦がす。
そして暫く進んだ後、鼻をつく臭いが変わる。
先程までこの城に立ち込めていたのは、思わず顔を顰めたくなる腐臭だった。
今、その鼻腔に飛び込んで来たのは――夥しいまでの、人間の血臭。
つい先刻流されたような物から、染み付いて取れなくなったような物まで。
其処で流された血から、一体何人の人間が殺されたのか想像も付かない程だ。
血臭の中、僅かに混じる金属の臭い。
空気の流れが示す形は、明らかに人を苛み、殺す為の形状をしていた。
ここは、人間を切り刻み、モノのように扱う空間だ。
「――クソ野郎が、」
臭いから、過去の映像が蘇る。
神経を一本ずつ切断し、その反応を確認された。
骨を粉々に砕き、再生するまでの過程を記録された。
時には自分から取り出した内臓を、目の前に突き付けられた事もあった。
そして、その全てには無邪気な笑いが伴っていた。
実験を行ったのは、たった一人の少年――
「何処まで俺を虚仮にすりゃ気が済むんだ! えぇ!?」
皹が入る程の力で壁を殴りつけ、叫ぶ。
出来る事ならば、忌まわしい記憶を思い出させる、この部屋全てを叩き壊してやりたかった。
「チッ……こんな時に」
怒り狂う屍が、また新しい呼吸音と人間の臭いを察知する。
またしても、この城へ飛び込んだ命知らずの侵入者だろう。
自ら進んで死にに来るような人間に、気遣いをしてやるような余裕は今の屍には無かった。
「……今、機嫌が最高に悪ィ。ふざけた真似するようなら叩ッ殺すぞ」
叩き付けるのは剥き出しの殺意。これで退くようであれば、少しは楽なのだが――
- 561 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2007/05/03(木) 23:20:260
――ひゅん。
音にすれば、その程度のものだ。
その音とともに奔った銀閃は、その音に合わせたようにあっさりと――そう、至極あっさりと、
場に立ちふさがる巨躯を通り抜けた。
「――え?」
それは、いったい誰の言葉だったのか。
声を発した当人さえ自覚してはいないだろう。
だが、本来ならば、この御前試合を首尾良く――悪くかもしれないが――勝ち進んだ勝者
に立ちふさがる、その筈だった夜族は、突如として眼前に現れた焔に、何が起こったのかわ
からない、という表情を浮かべ……
そして、浮かべたまま凍り付いた表情は、ころん、という音が似合うそんな具合に首の上か
ら転がり落ち、床に叩きつけられ、そのまま灰と散った。
その瞬間、己が斬られたのだ、という事実に行き着いた胴は、盛大に天井に向けて鮮血の
噴水を吹き上げるとぐらり、と重心を崩し、首と同じように灰となって周囲へとまき散らされた。
照明を受けて鈍く光を返す漆黒の刀身を一振りし、血と灰を払う。
周囲へと詰めかけていた愚か者どもに視線を移す。恐らくは観戦と洒落込むつもりだったの
だろう、低級の化け物たち。
ぽかん、と間の抜けた面を覗かせるそれらに、彼女はにぃ、と微笑を浮かべ、
「ああ。せっかくのお楽しみのところ、非常に申し訳ないが」
それ自体が刃であるかのような、確定された運命を口にする。
「――皆殺しだ」
処刑場に焔が奔る。
”人類の守護者”による、殺戮が始まった――――
- 562 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2007/05/03(木) 23:22:540
- ――最後の銃弾が、逃げまどう死人の頭蓋を打ち砕いた。
血と腐りきった脳髄がぶちまけられて、石床を濡らす前に灰と化して消え去る。
そして、処刑は完了した。
空にまったマガジンをイジェクトし、新たなそれを叩き込む。スライドが音を
立てて元の位置へと戻り、起きあがったままの撃鉄が即座に射撃可能であること
を主へと告げていた。
食い残しがいないことを確かめて、すぐさま場を後にしようとした――その時
だった。奥から、明確な戦意を持った”なにか”が近づいてくる……
>>
戦闘の痕跡から、”参加者”の類だと談じた。
だが、人間かどうかの判断がつかない。妙な気配だ。生きているような、それ
でいて死んでいるような……
「ひとつだけ訊いてやる」
右手に剣。左手に銃。武器は手に。構えは無形。
「貴様は人か、それとも化け物か?」
――どちらであろうとも、斬る。
そう決めて、イグニスは問うた。
わずかでも敵となる可能性があるのなら、それだけで十分だった。
- 563 名前:名無し子猫:2007/05/04(金) 21:41:110
- 【宮本武蔵 対 マリア・バルゼリート 妖魔迎賓館】
>>373
背中合わせになった相手を、姿勢を変えずに斬る事は出来ない。こんな状態から発揮で
きる剣法はない。
反転して斬らざるを得ず、その瞬間こそ致命を分ける隙となるであろう。武蔵にとっても、
少女にとってもだ。
「初めてだぞ」
『六十余度まで勝負すといえど、一度もその利を失わ』なかった武蔵の、どこか酔ったよう
な答えである。
事実、この大剣士は酔い痴れているのだ。妖しい少女の囁きにではなく、剣もて命の遣り
取りをするという魔天の美酒――戦いと死の血つむじに。
侮ってはいない、とはいったものの、心のどこかで女人の剣という認識があったのは否め
ない。その驕慢を少女の烈剣はまんまと打ち砕いた。
この大武蔵に! という憤怒は、しかし即座に随喜へと化学変化した。魔人に堕ちても、
否、だからこそいよいよ盛んな剣への愛がそうさせたのである。
「見事。――まりあとやら、お主、その若さで相当斬った喃」
問いではなく、単なる事実の確認として武蔵はいい、相手の返事も待たず小刀を上空へ
放り投げた。
唸りを上げて回転しつつ、高い天井すれすれまで達した刀は、操り糸が切れでもしたよう
に落下してくる。――煌く切っ先を、ぴたと少女の脳天へと定めつつ。
まるで故事にいう「ダモクレスの剣」だ。頭上から降り落ちる「危機の象徴」を避けるにしろ、
受けるにしろ、それは武蔵に対して晒す大いなる隙に他ならない。
そして反転した武蔵が鷹徴の一撃を放つ「拍子」に他ならない。――
- 564 名前:名無し子猫:2007/05/04(金) 21:42:350
- 【宮本武蔵 対 マリア・バルゼリート 妖魔迎賓館】
>>373
背中合わせになった相手を、姿勢を変えずに斬る事は出来ない。こんな状態から発揮で
きる剣法はない。
反転して斬らざるを得ず、その瞬間こそ致命を分ける隙となるであろう。武蔵にとっても、
少女にとってもだ。
「初めてだぞ」
『六十余度まで勝負すといえど、一度もその利を失わ』なかった武蔵の、どこか酔ったよう
な答えである。
事実、この大剣士は酔い痴れているのだ。妖しい少女の囁きにではなく、剣もて命の遣り
取りをするという魔天の美酒――戦いと死の血つむじに。
侮ってはいない、とはいったものの、心のどこかで女人の剣という認識があったのは否め
ない。その驕慢を少女の烈剣はまんまと打ち砕いた。
この大武蔵に! という憤怒は、しかし即座に随喜へと化学変化した。魔人に堕ちても、
否、だからこそいよいよ盛んな剣への愛がそうさせたのである。
「見事。――まりあとやら、お主、その若さで相当斬った喃」
問いではなく、単なる事実の確認として武蔵はいい、相手の返事も待たず、六尺余の巨体
は一陣の風となった。
横へ走り出したのだ。それも正面を向いたまま。
蟹みたいな不自由さは微塵も感じさせぬ動きで左右に疾り、或いは前後に跳ぶ。頭上から
俯瞰すれば、得体の知れぬ幾何学上の罫線をえがくようにも見えたかもしれない。
――この魔的な走行の間中、武蔵はおのれの背に、ぴたりと貼りついたような馥郁たる体
温を感じていた。
- 565 名前:名無し子猫:2007/05/04(金) 22:43:300
- >>382
【宮本武蔵 VS マリア・バルゼリート 妖魔迎賓館】
「そっか」
武蔵の返答に、マリアも短く応える。
彼の答えは、取りも直さずマリアの思惑が成功していることを意味していた。
型の無い、我流ゆえにこそ可能な動きで、相手を翻弄し、勝機を見出す。
今やマリアの戦法は、その一点に特化している―――いや、せざるを得ない。
「実はね、私も初めてなんだ、アミーゴ」
そう、大事なのは<ruby><rb>ここからだ<rt>、、、、、</ruby>。
如何にして相手の裏を掻き、思考を読み、その上を行くか。
そして、彼女の<ruby><rb>相棒<rp>(<rt>コンパニエーロ<rp>)</ruby>が、彼の魔人の肉を斬り裂く
イメージを、明確に持てるか。
その為には、信じなければならない。
これまで幾多の修羅場を潜り抜け、幾人もの人間を斬って来た自身を。
全ての闘いで、自身と共にあった相棒を。
しかし、そんな思惑とは裏腹に。
刀と刀との打ち合いとしては余りに異様なこの状況から、
いち早く適応し先に手を打ったのは、武蔵のほうだった。
最小限の動きで、武蔵は小刀を高く放り上げる。
狙いは、マリアの頭頂部―――言うまでもなく、致命の一刀だ。
しかして受ければ、避ければ、マリアは自ら大きな隙を作ってしまう。
その瞬間に、彼女は武蔵の一撃によって斬り捨てられる。
ならば―――
マリアの腰が、沈み込んだ。
そのまま振り向くことなく、両足を後方―――
すなわち、武蔵の<ruby><rb>股下<rt>、、</ruby>へと、繰り出す。
そして、両の爪先が接地したと同時に、マリアは全身のバネを利用して
上半身を両足の存在する方に引き戻す。
そうして、まるで蛇のように、マリアは武蔵の股下を<ruby><rb>くぐり抜けた<rt>、、、、、、</ruby>。
かくして再び、マリアは武蔵の正面へと舞い戻る。
相手は一刀を手放した状態、自らは、二刀を保持したままに。
「これが本当の、『裏をかく』―――ってヤツかな?」
左下段。そして、右上段。
上下から挟み込むような二つの銀光が、迸る。
- 566 名前:名無し子猫:2007/05/26(土) 01:05:470
「人形」とは何かしら。
「人形」とは何なのかしら。
それは《玩物》。
めでるもの、もてあそぶもの。
それは《呪物》。
まじなうもの、のろうもの。
無邪気な子供たちのための、無邪気な玩具。
暗い呪詛の、昏い欲望のための呪具。
人を模したもの。
腕を模した、腕の代わりが義手なら。
眼を模した、眼の代わりが義眼なら。
人を模した「人形」は、何のために作られたのかしら。
人の代わりに?
人の身代わりに?
其処に人形たちの紡ぐ《物語》は在るのかしら?
人形たちと人形遣い、両者が紡ぐ《残酷劇》は在るのかしら?
『僕が生まれるに至る《物語》はあるのだろうか』
『<ruby><rb>青の紫陽花姫</rb><rp>(</rp><rt>オルタンス</rt><rp>)</rp></ruby>』
Bonjour.
『<ruby><rb>紫の菫姫</rb><rp>(</rp><rt>ヴィオレッタ</rt><rp>)</rp></ruby>』
Bonjour,monsieur.
『さあ、行っておいで』
Oui,monsieur.
- 567 名前:名無し子猫:2007/06/08(金) 12:34:420
ある晴れた昼さがり
ttp://charaneta.just-size.net/bbs/test/read.cgi/ikkokuRH/1179256727/
- 568 名前:名無し子猫:2007/07/01(日) 23:41:120
- ttp://charaneta.just-size.net/bbs/fupbbs/obj/obj6_1.txt
805KB
新着レスの表示
掲示板に戻る
全部
前100
次100
最新50
read.htmlに切り替える
ファイル管理