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■ 吸血大殲 夜族達の総合闘争会議室 其の五
- 1 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2005/09/14(水) 04:32:37
- ここは吸血大殲の闘争会議を行う場所だよ。
基本的に、第三者の口出しは厳禁。
闘争とは、その当事者によって進められるモノだからね。
文句、感想、突っ込みも、本スレで脚光が浴びるときを待ってるように。
長引きそうな闘争は、各自専用のスレを立てることをお薦めするね。
そっちのほうが、やりやすいはずだから。
- 39 名前:紫擾津那美:2006/02/19(日) 01:47:57
- >>37
何はさて置き、お詫びを云わなきゃいけないね。……済まない、本当に。
半年近く止めておいて何なのだけれど。未だ付き合ってくれるのならば、そうして貰えたら
嬉しい。
もし「モチベーションが下がったのでちょっと……」という事で中止なら、それも止む無しと、
そう思っているよ。
- 40 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/02/19(日) 02:07:16
久しいな。
近日中に……いや、暫らく掛かるかもしれんが続きは上げさせて貰おう。
またと無い機会となる可能性もあるのでな。
まあ、気長に待っていてくれ。
- 41 名前:紫擾津那美:2006/02/19(日) 02:23:25
- >>40
やあ、これはまた素早い。
付き合って貰えるみたいで、ありがとう。
待つよ、何時まででも。
- 42 名前:◆4ypZOMBIEQ :2006/02/28(火) 03:10:17
- ちょっと場を借りるよ。
>>
「うん、そうだったね」
涙に濡れた切っ先を一振りして弾き飛ばし、
自身は彼女の視線と同じ高さに来るように膝を折って。
他人事の様に、肯き返す。
「ずっと走り続けてきた。
. 走って、走って、転んでも、這いずってでも。
. だから、今だって止まれないんだ。
. 先に何があるかなんて知らない。
. 大丈夫だよ、セラス。私の中に諦めは存在しない」
―――だからこそ、救い様が無いのだけれど。
「心を砕かれようと、魂を砕かれようと、私は私として此処に在る。
. 私は私の意志で前へと進む。
. 操り人形には絶対にならない。だから―――」
閉じた瞳の向こうにいる、彼女はどんな表情をしているのだろう?
「選ぶんだ、セラス。
. 敵対の方法を。
. 私は世界を憎悪する。私は私の意志で、世界を終わらせる。
. あんたのマスターは世界の狗として在る事を選び、結果そこに斃れた。
. あんたは、どうしたい?
. 私の瞳には炎しか宿らない。木漏れ日のごとき慈愛は神の棲み家たるこの場所で灰燼と帰した。
. 救いは既に此処にない。それでも私を救おうと願うなら、私の世界を終わらせるしかない。
. さあ、覚悟を決めろセラス・ヴィクトリア。忘れたのか?」
瞳を開き、かつての後輩をしっかりと見据え、私は彼女に決断を迫る。
「あんたの中にある、銃爪を引かせるその力は、誰の為のものなんだ?」
- 43 名前:◆4ypZOMBIEQ :2006/02/28(火) 03:25:58
- も一回。
>>
頬を打ち抜く一撃。
本当なら眼から火花が飛び出るほど痛いんだろうけど。
痛みはない。
でも、そんな事はどうでもいい。
今、大切なのは――
「私が歳? あははっ、そう言うセラスは――」
――後方へ押し流される身体をぐっと踏ん張って堪え、
――腹筋と背筋を駆使して体勢を立て直し、
――反動をつけてお返しのパンチ。
「いつになったら保護者なしで出歩けるようになるのかな!?」
生意気な後輩を張り倒すこと。
- 44 名前:御坂美琴 ◆MISAKAR6VE :2006/03/06(月) 02:45:10
- 「―――不満かね?」
珍しい―――本当に珍しい事に、その沈黙を破ったのは、この不気味な部屋の主人であるアレイスターからだった。
「当たり前だ。今回ばかりは、オレは本気でお前のしょうきを疑っている」
闇の中から姿を見せたのは、長身にツンツン金髪、サングラスと丸っきり不良のような体裁をした少年。
彼の名は、土御門元春。
学園都市とイギリス清教(の間を行き交う二重スパイである。
「あんな組織(なんぞに妹達(の一体を提供する、だと!?
冗談にしても笑えないぞ、アレイスター!!」
ドガン! と。
全くの手加減抜きで振り抜かれた土御門の拳が、強化ガラスの円筒に撃ち付けられる。
「……今更憤った所で、君には分かっているのだろう?
私の行動動機が何であるか、そしてその詳細を君に話す事を私がするか否か、などというのは」
自らの納められた容器に対する攻撃を歯牙にかける様子も無く、アレイスターは呟いた。
「ああ、判っているとも。こいつも『手順』の短縮の一環だと言うのだろう。
お前はあの燦月製薬という会社が何によって成り立っているか、
燦月の研究所(に送られた御坂美琴の妹達(が
どういう目に合うのか、当然知っていて取引を行った。そうだろう。
そんな事は判り切ってるんだ。だがそれでも、オレにはお前の行動が解せんのだ」
そこまでを一気に捲し立てた後、土御門は一旦言葉を切る。
「……お前の予定では、あの妹達(を世界中に拡散させる事こそが目的だったはずだろう?
その手駒の一つをむざむざ台無しにせんとすることに、何の意味がある、アレイスター」
「君はこれで何度、私に同じ問いをしたかね? そして私がその問いに、常にどんな回答を示してきたか、
忘れるほどに呆けたかね? 土御門元春」
全く変わらない、そう、腹が立つほどに調子の変わらないアレイスターの声に舌打ちし苦虫を噛み潰すような顔をして、土御門は応える。
「……、いずれ、わかる、か。それも聞き飽きた」
そう吐き捨てる様に呟き、円筒に背を向ける。
「なら、オレがこれからどう動くかも当然分かっているだろう。さっさと空間移動能力者を呼び戻せ。結標以外のな。
アイツは此処の所危なっかしくて仕方がない」
「ああ、何時もの様に踊ると良い。君の機嫌からして、今回は特別派手になりそうだな」
アレイスターの言葉と同時に、空間移動能力者が建物内に音もなく転移してきた。
―――かくて、歯車は回り始める。
『学園都市』を離れて遥か遠く、山陰の小さな町の中で。
二人と一人の少女の、とても数奇でとても残酷な運命の歯車が。
- 45 名前:なめんなよ、この名無し:2006/03/06(月) 22:51:56
名無しクドラクvs名無しモロイ
>>
――死を忘れた夜族()達にとって、退屈こそが全てに勝る敵である。
眷属である六匹の狼に牽かせた戦車()の上で、生ける死者()の令嬢はそんな益体もない事を考える。
今宵は年に一度の人狩りの夜。父である邪な不死者()と共に此度の祭りに参列した彼女は、
獲物のあまりの不甲斐なさに退屈を隠し切れず、無言のまま手にした握りをつけただけの有刺鉄線で周囲の石を
抉り、全身で不機嫌さを表現していた。
お気に入りである黒のイヴニングドレスに似合う様な素敵なダンスパートナーも、持ち出したヴァイオリンの
音を引き立ててくれる様な絶叫()の持ち主も現れない。
引き揚げるか否かを思案し始めたその時、
歌が聞こえた。
伸びやかなテノールが奏でるのは唾棄すべき聖歌。
とても、不愉快な。
あれは()、黙らせなくてはならない()。
歌声を頼りに街の中央へ向かって戦車を走らせる。
行き着いた先にある公園の中央で、不愉快な聖歌の歌い手は紫煙を棚引かせながら静かに佇んでいた。
その男は乾いた瞳でこちらを睨め上げると、淡々と侮蔑の文句を投げつけて来る。
――この、男は。
「貴方、不愉快だわ」
最早機嫌は最高に最悪だ。
この不快感を堪えるなど、誰が出来よう。
生まれてまだ百年と経たぬ生ける死者()の令嬢は、頭に血を上らせたまま戦車から降りると、
手にした有刺鉄線を振り上げ、男の足元へと振り下ろす。
「死んで頂戴」
- 46 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/06(月) 23:04:17
名無しクドラクvs名無しモロイ
>>
――死を忘れた夜族()達にとって、退屈こそが全てに勝る敵である。
眷属である六匹の狼に牽かせた戦車()の上で、生ける死者()の令嬢はそんな益体もない事を考える。
今宵は年に一度の人狩りの夜。父である邪な不死者()と共に此度の祭りに参列した彼女は、
獲物のあまりの不甲斐なさに退屈を隠し切れず、無言のまま手にした握りをつけただけの有刺鉄線で周囲の石を
抉り、全身で不機嫌さを表現していた。
お気に入りである黒のイヴニングドレスに似合う様な素敵なダンスパートナーも、持ち出したヴァイオリンの
音を引き立ててくれる様な絶叫()の持ち主も現れない。
引き揚げるか否かを思案し始めたその時、
歌が聞こえた。
伸びやかなテノールが奏でるのは唾棄すべき聖歌。
とても、不愉快な。
あれは()、黙らせなくてはならない()。
歌声を頼りに街の中央へ向かって戦車を走らせる。
行き着いた先にある公園の中央で、不愉快な聖歌の歌い手は紫煙を棚引かせながら静かに佇んでいた。
その男は乾いた瞳でこちらを睨め上げると、淡々と侮蔑の文句を投げつけて来る。
――この、男は。
「貴方、不愉快だわ」
最早機嫌は最高に最悪だ。
この不快感を堪えるなど、誰が出来よう。
生まれてまだ百年と経たぬ生ける死者()の令嬢は、頭に血を上らせたまま戦車から降りると、
手にした有刺鉄線を振り上げ、男の足元へと振り下ろす。
「死んで頂戴」
- 47 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/07(火) 02:07:58
時間に直せば日付が変わる頃、既に幕は開いていた。
轟音が轟音を呼び、客席からはその轟音にも勝る声がする。
半狂乱の聴衆達。その様は一種の地獄の様で、個を喪失した聴衆は一体化した蟲にし
か見えない。
危機感の無い奴等だと、ステージに立った瞬間に思った。一夜の宴の為に命をベットす
る事が出来るのだから。
現在の情勢は非常に不安定だ。連日連夜テレビではテロ組織による犯行と見られる最
悪の暴力が映し出されていた。死傷者の数は覚えてはいない。が、その暴力の傷跡は酷
く痛々しい物だった。
その凶行は無能な警察や国家権力では止められる筈も無く、今でも続いている。一応、
意味の無い検問や夜間の外出を控えるようにとの通達が出ている。それはその程度の事
で止められると願っているからか、それともこの国が如何なろうと知った事ではないのかは、
定かではない。
それにしても、詰まらないステージだ。
個々の演奏はとても息が合っているとは言えず、それに気付きもしない愚かな観客。煽動
者である俺達は寄せ集めに過ぎず、一夜限りの為に結成された道化と言っても過言ではな
く、その一員である事に吐き気がする。
そのお陰か人間味が薄れていくような感覚が止らない。ベースを奏でている筈の腕は既に
自分の物ではなくなってしまったようだ。ただメロディーを追うだけの壊れた機械。苛立ちを覚
えるが自分の意思で制御出来ないのだから、仕方が無い。
次第に思考まで虚ろになり、聴こえる音は自身の鼓動だけ。
最近では感じる事が出来ないほど小さな波だった血の疼きが、はっきりと感じられる。
視界が暗くなる寸前に、壁際に立つ誰かを見た。
その誰かは興味が無いかの様に佇んでいる割に、不敵に微笑んでいた。
白い髪が、白い肌が強烈に目に焼き付き、脳髄に刻み込まれる。
目が合った様な気がするのは気の所為だと思う一方で、これから交わるであろう縁を感じて
いた―――
- 48 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/07(火) 02:08:54
>>
―――気付けばライブは終わり、控え室へと戻って来ている自分。
過去にもこんな事は多々あった為に今では気にも止めないが、最近では減って来てい
た筈だ。アレ以来―――オロチを封じて以来、記憶が飛ぶような事は無かった。それが今
になって起こると言う事は、昨年のアレが原因なのだろう。
心臓が震える。
まるで、オロチと言う言葉に反応したかのように。
「……ッ……」
ざわめく鼓動。
大きくなる血の疼き。
血への渇望もまた、鎌首を擡げる。
「……ハァ……ハァ……」
苦しい。
苦しい。
クル、シイ。
「……クッ……」
紅い血が、零れた。
黒い血も、零れた。
暫らく夜風にでも当たるとしよう。
夜空には星は無く、月だけが浮かんでいる。
今にも落ちてきそうな月は、何を示しているのだろう。
- 49 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/07(火) 02:10:11
>>
一人きりの静かだった空間に声が響く。
歌声は風に乗り、体を撫でるように通り過ぎて行く。
「悪くない歌声だ……」そう一人呟き、空に浮かぶ月を見上げる。
真紅の―――血染めの月だ。
胃の奥から沸き立つ血の香りに酔いながら、悠然と浮かぶ月を見る。
鮮血を溶かし込んだような紅い月。
その光を受ける手足は、血に染まったかのように錯覚してしまう。
ナニモカモガ、アカイ。
カラダガ、アツイ。
「帰らないのかい? つまらないライブも終わったのに」
自分の中の「異物」に取り込まれる寸前に、言葉が響く。
助かったなどとらしくも無い安堵を抱き、声が響いた方向へ目を向けると、そこには
類稀なる美貌の見本とでも言うべき彫像があった。何処かで見かけた記憶がある。が、
思考にノイズが掛かり、目にした事があるのか無いのかも解からない。
意識の底に落ちていく感覚。
飲み込まれる前に、「俺」を掴む。
細く細い、蜘蛛の糸の様なそれを。
「……何の用だ。態々興味のない物を見ていたくらいだ。何かあるのだろう?」
少しだけ落ち着いた様な気分になるが、所詮仮初の物。
今夜は早く独りになるべきだろう。
俺が「俺」で在る内に。
- 50 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/07(火) 02:11:23
>>
彫像のような造形美を誇る男も笑うのだな、などと下らない事を考えながら、ただ目
の前にあるものを凝視する。
月明かりの所為なのか。肌の下、肉の合間を流れる血液すら凝視出来る様な感覚。
離れていても体温まで感じ取れるほど、神経が暴走している。
それでも、神経は凍り付いていく。
この月の女神すら裸足で逃げ出すような微笑は、絶対零度の微笑とでも言うべきだ
ろう。全てを凍らせ、打ち砕いていく。そんな笑みだ。
しかし、芯には炎の息吹が感じられる。紅く、赤い、今夜の月のような炎が。
視点を変え、空を見上げれば未だ望む血染めの月。
眼前の氷の微笑とは正反対に、この月は―――アツイ。
まるで体の奥底に眠る、忌々しい「血」を目覚めさせるような波動を送り続けてくる。
凍りついた神経が熱に犯されていく。
一歩、また一歩と歩を進める。
相対する男も軽やかな足取りで進み、何時か軌跡は交わるだろう。
そのときに果たして
オレハオレデイラレルノカ?
その思いを掻き消すように、風に流れて声が響く。
「何せね。――ほら、こんな夜だもの。誰だって浮かれちゃうだろう?」
「ハッ……他者に期待しても意味など無かろう。
それとだ―――既に貴様は浮いている」
これ以上近付かない事を心の何処かで祈りながら、吐き棄て、月を仰ぐ。
変わらぬ色は心を惑わせ、昂ぶる血は神経を蝕む。
血が―――ミタイ。
- 51 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/07(火) 02:12:27
>>
本来穢れの無い白である筈の歯も、今の俺には紅く見えてしまうようだ。
髪も紅く、肌も紅く、着ている物も、何もかもが、紅い。
鮮血に彩られた彫像はまた一歩、一歩と近付き、手を伸ばせば触れられそうな距離。
「そう、例えば――血が蠱(まじ)ってる、なんてのはその最たるものだよ、ね」
紡がれる旋律すらも紅く聞こえている耳を落としたい。
―――紅い。
―――アカイ。
一歩踏み出し、更に一歩踏み出す。
男の横に並び、呟く。
「黙れ」
また一歩踏み出す。
漸く紅く染まった「人間」を見なくてすむ事に安堵し、
「屑どもに如何に見られようとも、俺や―――貴様の様な人種には関係あるまい」
そう呟いて空を仰ぐ。
双眸は閉じたまま、それでも浮かぶ―――アカイツキ。
「まあ、これは如何でも良い」
心臓の脈打つ音が、五月蝿い。
「貴様は、何を、何処まで知っている」
- 52 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/07(火) 02:17:26
およそ二週間か。待たせたな。以前書いた物が気に入らなかった為書き直しに時間が
掛かった。まあ、どちらかと言えば『暴走』に到るまでが弱いだろうとと思ったから書き直し
た、が正解なのだが。
大筋は変えていないのでそちらに干渉する事は無い筈だが、念の為貼り付けておいた。
>>47-50までがそれに当たる。
で、>>51が>>38に続く形となる。
時間のある時にでも考えておいてくれ。焦る必要は無いのでな。
- 53 名前:紫擾津那美:2006/03/12(日) 04:15:15
- >>52
ああ、修正については了解だよ。
僕の方は、特に直す必要はないみたいだね。
色々と考えたのだけれど、僕の次レスで何か挑発的な事を云って、そっちのターンで君がキッ
と僕の方を見るか、さもなければ思わずカッとなって攻撃をしかけるとあら不思議、僕の姿は
何処にもない。
みたいな形でこの導入部は締め、ってのはどうかな?
どうやって消えるのなんて訊かれても、僕だって判んないけどね(何
勿論君の方で、何かこうしたいっていう落とし所を考えているなら、それで構わないから却下
するよ。
という返答をするにも時間とっちゃって、全く申し訳ない。
- 54 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/12(日) 17:32:34
>>53
導入の締めはそれで良いだろう。
と言うか、何だ。俺もその流れに持ち込もうとしていたからな。
まったく問題は無い。
時間は……気にするな。
- 55 名前:紫擾津那美:2006/03/13(月) 01:59:42
- >>
「そっちの台所の事情まで押さえているんだぞ、って感じかな」
とぼけた口調で云い、青年は傍らの男と同じ場所を見上げた。
再びくすくすと笑う。
「嘘うそ。僕は何にも知らないよ。知っている事といったら、さっきから君が何かを我慢してい
るって事位さ。……トイレじゃないよね?」
からかう青年の声は、やや強くなってきた夜風の中に混じっていく。
もし見ている者がいたとしても、赤髪の男の危険さは判らなかったに違いない。
それは弾性に富む金属をたわめているような危うさだった。静物と見えながらも、いつ弾け
るかの判断などつかない。
白い青年もそれを知っていた。
知っていて猶、致死量には達しない程度に幽かな、しかし確かな毒物を声音に混ぜていた。
――嘲りという名の毒を。
「良くないね、我慢は良くない。フラストレーションを溜め込んで自爆しちゃうのは、現代人の
罹りがちな心の病だ」
視線を上に遣ったまま、囁くように云う。
満月の元にあって、光を纏ったその笑みは横倒しにした三日月の形をしている。
「好きに振舞ったらどうだい? したい様に、思う様に世界を造り替えてしまったら?
君が触れて、視て、感じている“色”のままに」
微笑はそのまま、月を臨む青年は何一つ感情の篭らぬ声で呟いた。
降り注ぐ光が音声に変わったようであった。
「君にはその権利がある。そう、君は『全ての蛇の王』の――血の裔なのだから」
- 56 名前:紫擾津那美:2006/03/13(月) 02:01:48
- >>54
あ、それは好都合でよかった。
では、そちらのリアクションをお願いするよ。
- 57 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/17(金) 01:49:50
>>
背中からは飄々とした声が響き、夜風はそれを掻き消すように流れ行く。
―――セキズイニヤケタテツガササル。
その声には少量の毒と多量の嘲りが含まれ、着々と苛立ちが募るが聞き流す。
未だ必要とする情報は聞き出せていない。
三味線を引かれた真実などは不要でしかない。ただ必要となるのは、明確な境界線。
敵か、それ以外の何かなのか。
それだけでしかない。
―――ドクムシガハイマワルヨウニ。
この場でこの男を殺してしまいたい衝動。
しかしそれは最も忌むべき暴力でしかなく、必要以上に振るう気は無い。
―――メニヤキツイタアカイツキ。
揺らめく自身の境界線は沸騰したかのような血液に溶かされ、天秤は壊れてしまった
かのように、本能の方へと傾いていく。
もしこの世に神と悪魔が居るのならば、この男は悪魔が作り出したのだろう。
それだけ体を、神経を、犯して行く―――嘲り。
―――モウヒトツヤキツク、
耳元で囁かれたかのように、鮮明に、脳に響いた、言葉。
「君にはその権利がある。そう、君は『全ての蛇の王』の――血の裔なのだから」
ユカリノホムラ―――
- 58 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/17(金) 01:50:33
>>
気付けばそこに居た誰かを殺める為に伸びる、紫炎と腕。
紅い月の光の中でも色を変える事の無い、八神一族に根付く―――血の楔。
それでも忌わしきこの色は、紅蓮の炎を纏うよりも遥かにマシではある。
また一人背負うだけだと、
諦めにも似た感情が、
湧いた。
が、そこに男は既に居ない。
どんな手品を使えばそのような現象が起きると言うのか。
行動に移すまでの時間に消えたと言うのならば、これは悪い夢なのだろう。
何故なら―――言葉を言い終える前に、既に俺は動いていたのだから。
「フン……まあ、良い」
誤魔化しだと、我ながら厭きれつつ見上げる月。
その色は―――蒼。
違和感に気付く事も無く、ただ帰路につこうと思った。
帰る道など、既に無かったと言うのに。
―――物語るは紫炎。燻り続けるそれは、手に残ったままだった。
- 59 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/17(金) 01:55:46
待たせてしまったな。
でだ、こんな所で良かったか?
適当に消えて貰った事にしたが、不満があれば聞く。遠慮無く言え。
で、次の展開だが……貴様の回想、だったか。
神楽を使うのに都合の良い理由が新作のお陰で出来た為、当初の予定通り進める事は
可能だが、その場合そちらのアクションを待ってからとするか如何かが問題か。
無論、俺から進めた所で問題は無いが、その場合どの様な展開が望ましいかだけは聞
いて置きたい所だ。
貴様の見せ場だからな。
それでは、今宵は消えさせて貰おう。
- 60 名前:紫擾津那美:2006/03/21(火) 02:49:11
- うん、君の方については文句のつけようはないよ。
で、回想シーンだね。
これは僕が君の抹殺を依頼される、という状況だから、神楽ちずるさんが僕の探偵事務所を訪れ
ている場面という感じで、取り合えず僕の方から進めて構わないかな?
君の暗殺を依頼されて、事情を薄々察しつつも「えー僕人殺しなんてできなーい」なんてゴネて
みたりする流れを考えてる。
そうすると、ちずるさんはその辺りを色々と説明してくれるんじゃないか、という話で。
っていうのが一案なんだけど、どうだろう?
- 61 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/21(火) 03:45:14
確認が遅れたが、その案で構わん。
此方は此方で構想を練っておくとしよう。
- 62 名前:紫擾津那美:2006/03/26(日) 03:37:51
- >>
――そしてもう一つの赤い炎は、別の手にもあった。
何処とも知れぬ闇の中で、それは灯っている。胸元に引き寄せた黒い手袋の上で。
紫紺のインバネスを纏った美青年である。
月光に充ち充ちたあの路地から、どうやってこんな所まで来たのか。――そんな問いなど無言
で焚き木にするかのように、炎は黒い人差し指の先端で燃えている。
火種は何も見当たらない。それでも火は赤々と揺らめき、美貌に宗教画を思わせる陰翳を刷
いていた。
青年はポケットから何かを取り出し、指先の火に近づけた。
一枚の写真だ。先程の赤髪の男が写っている。
遠距離からの撮影らしく、男は自分が被写体になっている事に気づいていない様子だ。
炎はすぐ写真に移った。独特の臭気を発して燃え始める。
どこか物憂げな表情で、青年は炎に侵食されていく男の顔を凝視している。
その写真は、ひと月ほど前に彼の手元へもたらされたのだった。
- 63 名前:紫擾津那美:2006/03/26(日) 03:39:42
- >> 続き
「僕の仕事は私立探偵だけど、本業は別にあるんだ。貴女もよくご存知の通りにね」
来客用の応接デスクにそれを置いた人物が、彼に欲する依頼を打ち明けた時、白い青年は
先ずこう答えたものだ。
此処は彼の事務所だ。新宿の片隅である。
電話も引いておらず、知る者も限られている。ついでに云えば久しく客もない。
尤も幾ら大々的に宣伝しようが、十数年前に起きた核テロで廃墟と化し、再開発が棚上げに
なったままの犯罪地区に訪れる依頼人など、そうそうありはしないだろう。
現にこの事務所があるビルも、見た目は周囲と同じ朽ちかけた廃屋なのだ。
しかし外観とは裏腹に、整った室内には光があった。緑があった。
明るいのは蛍光灯の所為で、緑は観葉植物だが、後者に関しては尋常の量ではない。
それなりに広いオフィスは大小様々の植物で埋め尽くされ、さながら森の深奥のようだ。鬱蒼
としている、と云っていい。
木々の息吹きの合間を縫うように少数のデスクや調度品が配され、美青年ともう一人はそこ
に座っていた。
「長らく休みにしてた本業が、突然忙しくなっちゃってさ。――これも貴女ならご承知の事と思うけ
ど。素行調査や迷子の猫探しなら、気晴らしに受けてみても良かったのにな」
からかうように青年は云い、紅茶のカップをソーサーごと取り上げた。
春摘みのダージリンだ。きりっとした香りを愉しみながら、紅茶と写真の脇に置かれた新聞に
少し眼を遣り、戻す。
一面の記事は『深夜の銃撃戦 またもマゴーラカ神教』とあった。
「それにどっち道、殺人代行業はしてないんだよ。ねえレイコさん、これ、服務規程違反じゃない
かなあ?」
「服務規程ではなく刑法違反ですわね」と、遠くのデスクでノートパソコンに向かっていた美女が
顔を上げ、にこやかに答えた。
かけている眼鏡のような、どことなく硬質な微笑を崩さぬまま続ける。
「刑法第百九十九条により、人を殺した者は死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処されま
す。また人を教唆して犯罪を実行させた者にも正犯の刑を科する、というのが同六十一条になり
ますわ」
「……だってさ」
青年は軽く肩をすくめ、カップをテーブルに戻す。持ち上げた時と同じ、優雅な所作である。
源氏の正統なる嫡流、“鬼”の天敵、そして『火閻魔人』。
幾多の異名を持ち、嘗て日本の鬼族退治の全権を担っていた青年――今は別の名を名乗る彼、
紫擾津那美(しじょう・つなみ)は悪戯っぽく笑った。
笑いを投じた目の前には、彼と同じ位美しい依頼人がいた。
「さあ困ったね。どうしよう、神楽ちずるさん?」
- 64 名前:紫擾津那美:2006/03/26(日) 03:40:54
- 毎度、お待たせだね。
僕の事務所に関しては、上記のレスで書いた通り。内装自体はごく普通だね。
マゴーラカ云々は、まあ夜刀の神復活みたいな話は、神楽さんのような人だと耳に挟んでいて
もおかしくないかな、というだけだから。特に大した話でもない。
何か不明だったり不味かったりする部分はあるかい?
問題があるようなら速やかに訂正するので、お気軽にどうぞ。
- 65 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/28(火) 00:48:28
返答が遅れた事を詫びよう。
で、これと言って不明な点も、拙い部分も無いな。
直ぐに取り掛かる―――と言いたい所だが、本業の方も片付けねばならん為遅れるだ
ろう。気長に待っていてくれると助かる。
- 66 名前:紫擾津那美:2006/03/29(水) 00:50:57
- >>65
ああ、何も問題ないのなら、それはよかった。
何、きっと僕の次のレスは、それに輪をかけて遅くなるだろうからね。
全く些細な事だと思うよ(大いに問題ありです
- 67 名前:神楽ちづる ◆FncB6Yata. :2006/08/03(木) 22:19:51
「この国では古くから『鬼』と呼ばれるものが数多く存在します」
神楽ちづると呼ばれた女性は、問い掛けなど無かったのかのように淡々と話を紡ぐ。
「遡れば『出雲風土記』に記された一つ目の鬼にまで遡る事が出来ますが―――この
国では邪な気もまた『鬼』と呼ばれ、人との生活に深く根付いていると言っても過言で
はありません」
ここで彼女はその美貌を少しだけ歪め―――
「―――古の昔にこの国の鬼退治を全てになっていた貴方には釈迦に説法でしょうが」
少しだけ自嘲を含めた声で語り、
「本題へと移りましょう」
その美貌を鋭利で怜悧な、真剣な表情へと変え、続ける。
そこに神楽ちづるは無く――――
「ヤマタノオロチ―――もちろんご存知でしょうが、かつてそう呼ばれたモノが居ました。
厳密に言えば鬼とは異なるのかもしれませんが……人の傲慢で語るとすれば、それは
邪な、『鬼』と呼ぶに相応しいモノでしょう」
『三種の神器』――『三種の神技』の末裔。
『八咫』ちづるが在った。
「そのヤマタノオロチ―――私達のように古くから続く、一握りの家系の者は『オロチ』と
呼んでいるのですが―――97年に一度復活し、様々な要因が重なり再び封じる事が出
来たのです。『草薙』、『八神』――いえ、『八尺瓊』の助力もありましたから」
彼女は再び表情を歪め―――そこにあるのは自嘲ではなく想像するに難い苦痛であっ
たが―――淡々と、しかし抑え切れはしない激情を滲ませながら紡ぐ。
「ですが再び―――『オロチ』の封は破られました。その頃を境に、貴方の本職も忙しく
なってしまったのではないでしょうか? 『マゴーラカ神教』、何かときな臭い匂いのする
『燦月製薬』、そして―――『ミレニアム』など、私の把握している限りでは、全ての『滅び
の意思』の切っ掛けとなっている気がしてならないのです。『オロチ』の復活は」
彼女はここで一旦話を止め、自分の前に用意されているティーカップを手に取る。
香りを楽しむように、少し口に含み、嚥下し、揺れる水面に目を落とす。
まるで結論を先延ばしにするかのように、ただただ呆然と。鏡を覗くかのように。
「―――――――――」
カップを戻し、何かを決心したかのように切り出す。
「……『彼』は、『オロチ』の因子を色濃く受け継いでしまった、運命の鬼子です。
その身に降りかかる命運は誰よりも悲惨で、陰惨で、壮絶に、救いが―――無い。
今の『彼』は、とても危うい状態で、この状況が加速度的に進行する事で、『彼』と
しての自我は消え去り、ただの『獣』―――『鬼』に身を窶す事でしょう。
私にはそれを止めるだけの力も無く、また『彼』も偶然が重ならなければ呪縛から逃れ
る事は出来はしない。
ですから―――――」
沈黙。
場を支配するのは静寂と、頬を撫でるように過ぎ行く微風。
「無理なお願いだとは承知していますが……『彼』を――――」
その決心は苦渋の末の選択か、それとも――――
「『八神庵』を――――」
ただの同情か。
「――――殺して下さい」
- 68 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/08/03(木) 22:23:17
一応、上げて置くか。
およそ五ヶ月―――随分待たせてしまったが、取り敢えず返した。
そちらに続ける意思があるのであれば、今暫らく付き合って貰おうか。
漸く俺の中での葛藤にも片が着いた。
続けるのであれば速い返答が可能だろう。
まあ、そちらの意向次第だがな。
- 69 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/02(木) 19:27:03
- ああ―――久しぶりだ。
ほんとうに久しぶりに、外に出た……。
世間からもアニメからも作者からも会社からも忘れ去られて、
いったい何年の時が経ったろう。
まあとにかく待とう。
- 70 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/02(木) 19:47:41
- >>69 シキ
初めまして、よろしくバケモノ。
>忘れ去られて
アニメが駄目ならコミックに出ればいいじゃない、とか
- 71 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/02(木) 19:49:38
- >>70
あん? ああ―――なんだ、バケモノか。
よろしくも握手もオレは言わないから、そっちで勝手に言え、バケモノ。
バタ臭いんだよバケモノ。
で、どうする。何か考えたか?
素晴らしいことにオレは何も考えてねーぞ。
どうだ? ステキだろう。けひひひ。
- 72 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/02(木) 19:54:02
- >>71
やべー。何こいつ、テンションたけー。どうしよー。
(スルーして)……で、闘争の話だ。
ぶっちゃけ、即興ならあんまり大層な理由はいらねえよな。
それこそ「見た目の色が似てて気にくわねえ」とかでもいいワケだ。
いや、流石に俺から突っ掛かっていくって事はないけど。
- 73 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/02(木) 20:00:48
- >>72
オレはオマエほどには白くないぞ。
具体的に言うと、ここらへんがおまえより白くない。
ほら……もっと近付いて見てみろ。
ここだ、ここ―――ひはー! 嘘に決まってんだろうが何にもねえよ!
オレもオマエも真っ白だよバーカ! ひはははは!
……と、まぁオレの勝利が決まったところで話を進めよう。
知っての通り、オレも三咲町からは離れられないワケがある。
外国なんかに高飛びしたら琥珀に何をされるか分かったものじゃないからな。
聖域の森での闘争は―――あれは「気付いたらなぜか森にいた」なんて
無茶苦茶な理由だったから、できれば使いたくはないんだ。
どうだ、バケモノ。何とかして三咲町に来られねーか。
理由なんてどうだって良いんだ。オマエは頭悪そうだからな。
「何代か前のロアに恨みがある」とか「バトーが拉致られた」とか「電波を受け
取った」とか「観光中♪」とか、それっぽい理由があんだろう? おお?
- 74 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/02(木) 20:06:17
- >>73
やべえ、ちょっと緊急で用事が出来たっぽい。
21時までに帰ってくるから、頸洗って待ってて。マジで。
- 75 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/02(木) 20:08:48
- な、なんだ? くびを洗っていれば良いのか?
ちっ、しようがないバケモノだ。
おい―――琥珀、さっさとオレのくびを洗え。
- 76 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/02(木) 21:04:12
- ただいま、っと。
いや、悪い悪い。ちょっと野暮用をカタしてた(硝煙の臭い
>>73
(冒頭スルーして)
あー、俺がそっちに行く理由か……
俺は最近、失踪した『前時代の遺児』達を見つける仕事を主にやってる。
だから「ミサキ町のヤクザに攫われた子供達の保護」辺りが妥当かと思う。
まぁ、俺がミサキ町に行く理由ってのはそんな感じでいいだろ。
頭悪そうとか言うな。ていうか>>75見た限り、お前にだけは言われたくねえ。
- 77 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/02(木) 21:11:11
- >>76
おうおう、それだ。それでいこう。それで問題ねーよ。
因みにオレはバカじゃないからな。少なくともおまえよりかは。
導入は決まった。次は―――舞台だ。
どこで接触する? どこで殺して殺される?
オレは殺人鬼だからな、夜の三咲町ならばどこにだっている。
地下鉄あたりで戦ってみるか?
それとも高速道路上とか?
どうせおまえ、死なねーんだろう?
- 78 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/02(木) 21:34:32
- >>77
フィールドかー。あー……何処にするかな……
まぁ、どうせなら屋内がいいよな。
地下鉄ってのは中々面白いかもしれない。
そこでいいと思うぜ。
高速道路は……俺がそこに行く理由がないし。
- 79 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/02(木) 21:50:52
- >>77
了解した。ならば、地下鉄を血で染めよう。
ヤクザの取り引きか何かを、終電後の車両内でやってみたらどうだ?
整備か何かのため―――という名目で電車を走らせて、そこで取り引きをするのだ。
そうすれば、わざわざ地下鉄まで誘き寄せる必要は無くなる。
オレは……殺人鬼だからな。
三咲町におまえがいれば、それだけで参上する理由にはなる。
- 80 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/02(木) 22:19:26
- >>79
判った。じゃあ、アンタのいう感じで導入部分を書いてみる。
確か23時でオチるとか言ってたよな?
それなら、今日はこっちの話はこれまでにしていいぜ。
俺は一人でシコシコ頭の部分を考えているからさ。
出来上がったら……ここ、に張ればいいのか?
- 81 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/02(木) 22:23:50
- そうだな。それで構わん。
悪いがオレは明日は一日中いないから、本格的に始まるのは土曜日からだ。
せいぜい愉しもうじゃないか。
- 82 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/04(土) 21:10:04
- さて、そろそろ張るか。
一々説明するより、とっとと見てもらった方が早いだろうし。
- 83 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/04(土) 21:10:52
- ハイネVS遠野四季
Deadly and Dogs(仮)
時計の針はその日の終わりを告げ、既に日付も変わっている、三咲町の駅。
その地下鉄ホームから発車する回送の電車に、乗り込もうとする複数の人影がある。
数日前、三咲町のとある暴力団事務所に、取引を持ち掛けてきた華僑達がいた。
――――某所で買い取った『前時代の遺児』を売り払いたい。
四季のない街の地下で生まれた、華やかなりし頃の遺伝子工学の産物。肉体の情報を著しく組み替えられた彼等彼女等の身体には、純粋な人間には存在しない動物の部位があった。
相対的に見て愛らしく美しい外見を持つ彼等は、特殊な趣味を持つ好事家達によって"収集"され、或いは慰み者となり、或いはその下衆な趣味の前に命を散らす。
当然この国の法律では人間として認められているので売買は禁じられているが、それを掻い潜る者もまた存在する。そして、この取引を持ち掛けられた方も、また持ち掛けられた方も、そういった非人道的な行為に関して、一切良心の呵責を感じない者達だった。
取引は終電後の地下鉄で行われる事になっていた。
具体的な方法はこうだ。
まず、『購入資金』を持ったヤクザ側が、三咲町に停車した電車の最後尾に乗る。
続いて『商品』を持っている華僑側が、隣の南社木市で最前車両に乗り込む。
二組は丁度真ん中の車両で品を交換して直進、ヤクザは最前車、華僑は最後尾に行く。そしてそれぞれ、次とその次の駅で降りて、取引は終了――――とこういう事だ。
当然、車掌や駅員は買収されており、互いの組の予備員がそれぞれの駅で部外者を入れないように見張っているので、回送電車に乗り込んでも不審がられる事はない。
本来ならば厳重に警戒されたホテルなどに行けばいいのだろうが……お互いそれほど大きな組織でもない。余計な邪魔が入らないようにするなら、この辺りが妥当だった。
そして結論からいえば……二つの組は、この車両に乗り込む事すら出来なかった。
何故なら両方とも――――
乗り込む前に全滅させられたからである。
- 84 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/04(土) 21:12:45
- >>83
「Deadly and Dogs(仮)」
俺達の街とは違う何処か無機質な地下鉄のホームで、連続した銃声が響いていた。
「……散れ」
俺はモーゼルのトリガーを引いて、最後に残った中華野郎の胴体に銃弾を叩き込み、悲鳴
を上げて倒れたそいつの顔面を蹴り付けて完全に黙らせる。
辺りには同じように銃弾を喰らって、死んだり死ななかったりして動けなくなっている連中が
山ほどおり、あまり心地良いとはいえない血の臭いが立ち上っている。
「……終わったか、ハイネ?」
銃の弾倉を交換していると、何処からか眼帯をつけた赤ロン毛の男が現れた。
「てめぇ、バドー! 何処隠れてやがった!?」
俺はそいつに掴み掛かって殴ろうとしたが、背後に控えていた子供を見て拳を引いた。
質素だが生地の薄いゴシックドレスに身を包んだ、淡い金髪の少女だ。華奢な身体と端整な
顔は人形じみていて、どちらかといえばあまり元気がない。
街に置いてきたアイツを思い出す。しかし、顔はあまり似ていないし、背中から白い羽が生え
た「翼種」じゃなくて、頭に角のある「羊属」だ。アイツじゃない。
唯、アイツに似ている奴が死ななくて済んだのだから、気分が悪くない……事もない。
「いや、その、目標の保護?」
「何で疑問形なんだよ」
「そんなカリカリすんなよ。怖がってるじゃねえか」
バドーの後ろに隠れていた「羊属」が、怖がるような目を向けた。そんなに険を込めた積もり
はなかったが、怯えるぐらいには怖かったかもしれないと思うと、何だかバツが悪い。
「まぁ、な……それより仕事も終わったし、とっとと帰ろうぜ」
「いや待て待て。情報では後少しでこいつらの取引先が来るハズだ」
そういえばそんな話になっていた事を思い出して、俺はその面倒臭さに吐きそうになった。
面倒な事この上ないが、こういう連中は面子を重んじる。自分達の取引が全く関係ない第三
者に潰されたと知ったら……しかも商品を持ち逃げされたと気付いたら。
「まず間違いなく追い掛けてくるだろうな」
「ゲッ、マジかよ……」
となると、どちらかが時間を稼いで、もう片方が「羊属」を連れて逃げるしかないが。
「……俺はイヤだ。たまにはお前がやれよ」
「そうしたいのはやまやまだけどな。お前、この子連れて逃げれんの?」
「う……」
確かに俺は全く戦えない奴を連れて、追手を気にしながら、痕跡を消して逃げる……なんて
芸当は出来ない。そして比較でいうなら、そういう真似はバドーの方が得意だし。認めたくない
が、戦うのだとしてもバドーよりは俺がやった方が幾らかマシなんだろう。
「あぁ、クソ……判ったよ。俺がやりゃあいいんだろ?」
結局俺が折れるしかなかった。流石にこんなところで仕事が失敗するとかは厭だし。
「頼むぜ、相棒」
「こんな時だけ相棒扱いすんな」
駅のホームから去っていく相棒に吐き捨てて、俺は電車がやって来るのを待った。
- 85 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/04(土) 21:17:18
- そして>>83の改行忘れた俺orz
とにかく、こんな感じでシキは三咲町駅で、俺は南社木で乗り込む、と。
それぞれ乗る車両が離れていれば、電車の乗る前から戦う事もないし。
まぁ、>>84だと俺が乗り込む理由が少し希薄かもしれないが……まあいい。
シキが運転手を死者にすれば、戦場がそのまま暴走列車に出来るだろ。
その辺りはアンタの方で上手くやってくれ。
- 86 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/04(土) 21:23:24
- 確認した。秀逸な導入だ。思わず、溜息が漏れるほどにな。
予想以上の出来映え―――これなら問題なく、戦闘に至れるんじゃないか?
つまり、オレは三咲町から乗り込んでヤクザを皆殺しにて南社木に到着する、と。
そういうことだろう? クカカ―――了解したぞ。
今から書く。なに、そう待たせはしない。
- 87 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/04(土) 21:53:45
- ハイネVS遠野四季
Deadly and Dogs(仮)
臭いに釣られるがまま。
風に誘われるがまま。
遠野シキは理由など欲しなかった。
一昨日、繁華街の路地裏で制服姿の少女を襲い、戯れに血を与えたのも。
昨日、苛立ちに任せて駐車場の監視員を肉片に変えたのも。
理由なんて無いのだ。意味なんて存在すらしないのだ。
シキ自身そう在ろうと心掛けていた。
己は狂っているのだ。狂気に理由は存在しない。言葉では顕せないからこそ、
狂気は常に人を脅かす。故に己は―――理由を必要としない。
今宵、ふと目に付いた階段から地下へと潜っていったのも―――彼の言葉を
用いれば、足がそちらを向いたから。それだけに過ぎない。
だが、始めて目にする地下鉄の駅舎は四季を戸惑わせた。人生の八割を土の
下で過ごしたシキだったが、彼は知らない。奈落には、このような広大かつ静
謐な空間が用意されていたなど―――シキは聞いたことすら無かった。
床は綺麗に磨き抜かれ、天井は高く、壁には退屈を紛らわせる掲示物が数多
く貼り付けられている。まるで息苦しさを覚えない。どころか、雑多で猥雑な
地上よりも澄んでいるかのようにすら感じられる。
これは夜の静寂と、人気の無さ故の錯覚か。昼に訪れれば、やはり地上同様
に鬱陶しい人足がこの広大な空間を満たすのか。
だが、どちらにせよ。
―――オレが長年虜にされ続けていた……あすこに比べれば、遙かに健全だ。
不公平な限りじゃないか。奥歯がぎしりと悲鳴をあげる。
自分には低い天井と、痛みきった畳みしか与えられなかった。
新鮮な空気も、広大な空間も――そんなもの――ありやしなかった。
だと言うのに、ここは……ここは……。
その時、遠く果てから音が聞こえた。
奈落より生ずる怨嗟のように、地を揺るがす音が。
遠い……遠いが、かなりのスピードで接近しつつある。
床を微かに揺らす振動が、シキの人外の聴力を補う。この揺れ方には覚えが
あった。そうだ。鉄道という奴だ。オレはかつて、幾度かそれに乗ったことが
あるはずだ。彼女と一緒に。あの最愛の人物と肩を並べて。
―――まさか、地面の下にも通っているとはな。
シキの口端が僅かに釣り上がった。
過去を偲ぶために、そして今は亡くしてしまったその過去を再び取り戻すため
に、白髪の青年はゲートを通過して、更なる地下を目指す。
藍染めの色無地和服を粋に着流した着物姿。
その裾が、三咲町駅のホームから流れる風に煽られ揺れた。
- 88 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/04(土) 21:55:29
- こんなところでどうだ?
ヤクザと遭遇描写は面倒だから割愛する。
次のレスでは既に皆殺しにしちまったことにするさ。
もしおまえが最後尾に辿り着いても、そこで目にするのは膨大な数の骸と血の池だ。
- 89 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/04(土) 22:23:29
- >>88
心理情景を描写出来る方が……えっと……強い(あry風
凄く癪だけど、やっぱり書き慣れている奴の文は違うって思ったぜ。
それで提案なんだが、遭遇は真ん中辺りの車両を使った方がいいんじゃないか?
俺は華僑と同じく最後尾から乗車するから、シキは最前列にいるっていう風に……
でもお前は最後尾から乗車して、俺より先に最前列に行くのがいいと思う。
それなら俺はヤクザの屍体を目撃出来るし、お前は運転手を下僕に出来る。
まぁ、俺は別にヤクザが全滅させられた事を知らなくてもいいんだけどな。
一つの案として考えただけだから、他にいいのがあったら言ってほしい。
- 90 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/04(土) 22:35:53
- ふん、素直に褒められたと受け止めておこう。
悪い気分はしないからな。
提案については了承した。
そっちの方が絵的にも栄えるだろうし、都合はいい。
最前列でぶっ殺すとしよう。
というか、お前が乗り付けた時点では運転席で遊んでいることにする。
運転手ごっこは子供の頃からの愉しみだったからな。
- 91 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/04(土) 23:30:43
- >>90
あー、判る判る。俺も列車の運転は割と上手い方なんだぜ?
……「電車でGo!」だけどな!(まさにゲーマー
ていうか>>89は何だか意味が判んねーな。流石に徹ゲー明けは眠い……
俺は華僑と同じじゃなくて、とっとと終わらすために最後尾で待ってるんだっての。
要するに三行で説明すると
・俺はとっとと戦うためにヤクザのいる最後尾で待っている
・アンタは最後尾のヤクザをブッ殺して最前列に行っている
・その後、俺がアンタを追って最前列に行く
とこうなるワケだ。
駅につく前にアンタが最前列にいれば、華僑と俺が戦った後を見て警戒出来る。
逆に駅ついた時はまだ真ん中ぐらいなら、俺は油断しているアンタの不意を打つ。
どっちにするかは……取り敢えず俺が最後尾に入るトコ書くんで、その後決めれ。
それと俺がアンタの後をつけるのは、「血の跡が続いていた」でいいか?
アンタがそういう痕跡を残すかどうかイマイチよく判らないんで、訊いとくんだけど。
- 92 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/04(土) 23:36:41
- ああ? 悪いが痕跡とか指紋は残しまくりだ。
おまえの都合のいいようにでっち上げてくれて構わん。
殺しはただ単純に、オレの裡側が勝手に命令してくるだけだからな。
オレがやりたくてやってんじゃねーよ。多分。
だから美学とかもねぇんだ。
他のことについては了解した。
期待して待ってるぜ。
- 93 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/05(日) 01:04:05
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs(仮)」
俺はホームの一番後端に当たる部分にある自販機の影で、列車が来るのを待っていた。
華僑の一人をボコして、相手のヤクザ共がそっち側に来るのを聞いていたからだ。
……確かに奴等の取引方法は悪くなかった。お互いに別の場所で乗り合わせて、絶対に邪
魔者の入らない車内でブツを交換、後は擦れ違ってまた別の場所で降りる。
これなら警察にガサ入れ喰らわない限りは大丈夫だし、駅員さえ買収しておけば掛かる費用
も殆どない。大きな組なら兎も角、中どころか小規模の組織には上手い手だ。
しかしこの場合は、乗り合わせる前に第三者の邪魔が入る事を考えると、どうしても上手くい
かなくなる。というか何事もそうなんだろうけど。特にこの場合、最後尾にいるのが判ってるな
ら待ち伏せられるし、華僑に成り済まして取引を潰す事だって出来た。
まぁ、流石にこの国では見ない顔の俺が、華僑に成り済ますってのは無理がある。他にも色
々手はあるんだろうが、車両が到着すると同時に不意打って終わりってのが一番っぽい。
そうして俺が待っていると、あの街ではあまり見掛けない……しかし全く見覚えがない訳でも
ない、箱を横に並べたみたいな形の列車がホームに入ってくる。
「やれやれ、やっと来たか……」
俺は寄り掛かっていた自販機から背を剥がして、思い切り横に飛び出す。
そしてホルスターから抜き出した二挺の銃を構えてトリガーを――――引かない。
「……あ?」
車両が到着した時から、何となく違和感はあった。
それは、それこそ襟から小さな羽虫が入ってきたかのような、微かな感覚だ。
しかしその中を覗き込んだ瞬間……それは確信になった。
- 94 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/05(日) 01:04:24
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs(仮)」
「なん、っだこれ……ブラッドバスかよ」
車両の中はべったりと紅い血が塗りたくられ、まるでケモノに食い千切られたみたいな肉塊
が散乱している。慣れていなければ吐いてしまいそうな、内蔵やら骨やら脳味噌やらの砕けた
「死の臭い」が充満し、有り触れた風景をとんでもない異世界にしている。
「何があったんだ一体……俺より先に誰か来たのか?」
にしては、あまりにも荒れ過ぎている。俺も殺しぐらいするが、ここまで徹底的に人体を破壊
する事はないしその必要もない。人一人殺すなら、頭を撃てばそれで済む。
こういう事をするのは、余程こいつらを恨んでいるか……常識の通用しない異常者か。どち
らにしても人一人解体するのも大変なのに、数が判らなくなるほど壊すのも変だ。
と、そんな事を考えていると、俺の背後でプシューッという空気の抜ける音がした。
「って、あああぁぁぁ――――!」
慌てて振り返った俺の視界に、無情にも閉まっていく自動ドア。手を挟んで止めようとするよ
り早く、両脇スライドのドアはぴったりと合わさっていた。
「クソッ、この……!」
両手の指を扉の隙間に強引に捩じ込む。俺も多少人とは違う身体だ。このぐらいなら腕力で
開けられる――――開けられる――――開けられる筈――――
「って開けよゴルァアアァァァァッ!」
とかやってたら爪割れたし。
俺はガラスを割って外に出ようと思い、窓に向けて銃を構えた。
しかし既に景色の流れる速度は、飛び出して無事で済む速度を超えていた。
「チッ……マジかよ、クソッ……」
銃を下ろして、どうすればいいのか考える。脱出は出来ないし、どうせヤクザ共も死んでいる
んだからこの電車に乗っている意味なんて欠片もない。
「あー、もう。しょうがねえなぁ」
俺は頭を掻きながら、戦闘車両に向かう事にした。
車掌や駅員が買収されてるなら、運転手を脅して止めさせてやろうと思ったんだ。
- 95 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/05(日) 01:05:59
- 長くなったんで二つに分けた。
つーか中々出会わねえな。
痕跡云々は後に回して、取り敢えず前に行ったから。
後はアンタが待ち伏せるのか油断してんのかで変わる、と。
- 96 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/05(日) 01:24:24
- 確認した。問題はないだろう。
オレは電車goしていて、そこにおまえが出くわすということで構うまい。
おまえに因縁をつける理由は、こじつけだが一応考えた。
レスにうつる。しばし待て。
- 97 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/05(日) 02:05:40
- 「ガタンゴトンガタンゴトンーガタンゴトンガタンゴトンー……ハ、ハハハ。
こいつは調子がいい。―――思い出したぞ。オレはな、ガキの頃からこいつが
好きだった。どれくらい好きかって言うとよ……毎日ヒマさえあれば踏切に行
って、こいつが通り過ぎる度に感嘆の声をあげちまうぐらいに好きだったんだ」
ガラス越しに映し出される風景。燦然と輝くライトに照らし出され、闇から
から生ずる景色をシキは夢中で見入った。接近しては過ぎ去り、追い付いては
追い越してゆく景色を眺めながらそれ≠ノ語りかける。
「ご存じの通りオレのところの家庭はそこそこ裕福でな。送迎の一切は自動車
で済ませていた。だから電車なんて見る機会も乗る機会も滅多に無かったんだ。
電車という乗り物が一体何なのか、すら深くは知らなかった。だからオレは
ただ単純にすごい乗り物≠チてことで、こいつに憧れていたんだ。いつかは
こいつの運転手になりたい、なんて一丁前に凡庸な夢まで持ったりしたっけな。
くひひ。その度に、遠野槙久のクソオヤジに『そんな卑賤な職には就くな』と
眉を寄せられたっけなぁ? ……ちっ、いま思えば失礼な話だぜ。おまえの
ように日夜、利用者のために身を削って働く『運転手様』をあのクソオヤジは
卑賤と言い切ったんだぜ? 許せるものじゃないよなぁ。少なくとも卑賤な家
系の家長なんざやっているクソオヤジに言われたくはないだろう? 遠野の
薄汚れた血に比べれば、あんたの職務は仏様みたいなもんだ。オレはおまえを
尊敬するぜ。だから、元気を出せ。……ああ、安心しろ。仇は討った。あいつ
はオレがぶっ殺してやった。もう誰もおまえを卑賤だなんて言わせない」
語りかけながらも、シキは窓から目を離すことをやめない。何せ、ここは
観覧者専用の特等席。今宵、彼のためだけに解放された運転室なのだから。
「おまえ、良い奴だな。こんな素晴らしい席にオレを通してくれるなんてよ。
オレ、人間にここまで優しくされたの始めてたぜ」
天井まで届く視界良好なフロントウィンドウ。そこから広がる景色を、
シキは如何にもご機嫌といった様子で受け入れていた。
「疾いよな。こんなに疾いのに、風がないなんて―――信じられないぜ。お陰
で景色がよく見える。残念なのは地下ってことか。もっと広い景色を目にして
みたかったぜ。……だけど、地下ってのも悪くない。この底の窺えない闇。実
にそそられるじゃないか。まるでオレの寝床へ送ってくれる直行便だ。くひひ。
―――あ? 良ければ運転してみないかって? やめろよ。この恰好を見れ
ば分かるだろう」そう言ってシキは両袖を持ち上げてみせた。「オレは古い
人間なんだ。過去に捨てられちまった人間なんだ。こんな最新の技術、扱える
はずがない。そりゃ、少しは運転してみたいが……壊しちまったら、おまえに
悪いかな。大人しく景色だけ見ているとするよ。ガタンゴトンガタンゴトンー
ガタンゴトンガタンゴトンー―――ひひひ。さいっこうに気持ちいいぞ。
なあ? おまえもそう思うだろう? なんか言えよ、おい」
シキはようやく窓から目を離すと、彼の隣に直立する運転手の肩を小突いた。
がくんと一度大きく揺れて、運転手は様々な計器やハンドルが並ぶ操縦盤に
突っ伏す。運転手は喉元から胸下まで鋭く切り裂かれており、本来紺色のはず
の制服が今ではどす黒く染まっていた。操縦盤やフロントウィンドウには、噴
き出した鮮血がこびり付いている。
「ああ―――」白髪の青年は、いま始めて気付いたかとでも言うように、頭に
手をおいた。「そう言えばおまえ、死んでいるんだったな。そいつは悪いこと
した。なんだよ、じゃあ人間に優しくされたわけじゃないのか。死人だもんな」
ぶつくさと呟きながら、シキは運転手の右手を肩からもぎ取った。
「運転だけなら左手だけで十分だろう? こっちはオレがもらうぜぇ」
歯を立てて二の腕にしゃぶり突く。
視線はすでに流れる風景へと戻っていた。シキの様子は、まるで映画鑑賞を
愉しみながらキャンディーを舐める子供のようだ。
「ああ、やっぱりあんたは良い奴だ。味わってみるとそれが分かる。男にしちゃ
なかなか美味いぜ。少なくとも、後ろにいた連中よりかはな」
- 98 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/05(日) 02:05:51
- オレも少し長くなったな……
- 99 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/05(日) 02:09:19
- 結局待ちだ。おまえの行動次第でアクションに出る。
- 100 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/05(日) 02:29:15
- 眠いっつーか眠いっつーか、眠い(何
悪いがこのままではまともなのが書けそうにない……
ので、今日はここまでにしてハイネはクールに寝るぜ。
また明日ヤろうぜ。じゃあな。
【盗んだバイクで走り出して退場】
- 101 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/05(日) 02:31:22
- ああ? 全然構わん。オレは他にもやることがあるしな。
気を付けて帰れよ。オレはここで待っている。
- 102 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/05(日) 23:11:37
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs(仮)」
「うへぇ。酷いな、血の臭い」
俺は車両の中を歩きながら、そんな台詞を呟いていた。
何しろ、最後尾から一体どれだけ暴れたのか、血の跡がずっと続いている。
屍体も一つの車両に最低二つはあるし、どれもこれも徹底的に破壊されていた。
これだけ死の臭いが濃いと――――あの時を思い出してしまう。
あの、地の底で自分と似たようなマヌケ面を延々と殺し続け、
狂った俺の両腕が、君を貫き、引き裂いた日のコトを――――
「……チッ」
舌打ちをして、俺はふと窓の外を見た。
……何だか先刻より、走る速度が上がっているような気がする。
「もしかして、かなりヤバイんじゃないか?」
面倒な事態は好転するどころかどんどん面倒になっている。
多分このままあっさり帰れる訳じゃない事も、いい加減に判っていた。
だってこんなにも――――首筋にビンビンキテる、危険な緊張感は。
「ここが最後か」
前から二番目の車両までは何事もなく進めた。
しかしそこから先頭、っていうか運転席を除いた時、俺は既に銃を構えていた。
運転席でこちらに背中を向けているのは、あまり見掛けない服を着た若い男だ。
そいつは運転席で死んでいる血塗れの車掌の腕をもぎ取り、嬉々として貪っている。
……人の趣味をとやかく云わないが、共食いなんてするのは異常者の証拠だろう。
それに――――見覚えがあり過ぎる、真っ白な髪の色――――
「ヘイ、ミスター」
俺は声を掛けると同時、両手に握った二挺拳銃のトリガーを、きっちり二回ずつ引いた。
7.62mm×25の重い音と9mm×19のやや軽い音と共に、銃弾が男の背中を食い破る。
「運転手殺したら――――電車が止まらなくなるだろうが!」
続いて叫びながら、俺はソイツのいる運転席目掛けて駆け出していた。
背中に四発も銃弾を喰らえば、普通は動けなくなるだろう。
しかし、俺には確信があった。
あんなに俺に似ている奴が――――この程度で死んだりするもんか。
- 103 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/05(日) 23:14:25
- 祭りの相談してる最中にこっそり投下。
もう恥も外聞もなく不意打って銃撃した。
尤も、こんな程度で吸血鬼が死ぬワケねえだろ?
さて。
来て早々悪いが、ちょっと席外すぜ。
すぐ戻るから待ってろ。
- 104 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/05(日) 23:30:20
- 吸血鬼と言ってもオレに再生能力は無いんだがな。
まあ代わりに不死≠フ能力はあるから、無茶はできるが。
不死性では
ハイネ>>オレ
身体能力では
オレ>>ハイネ
と言ったところか。
- 105 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/06(月) 00:20:57
- ただいまー
>>104
何だよ、そんなもんなのか?
もっと凄いと思ってたんだけど。
まぁ、この次気を付ければ大丈夫だよな?
このぐらいで勝負つくほどじゃないだろーし。
- 106 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/06(月) 00:55:38
- 鼻をくすぐる、甘い匂い。今まで嗅いだことの無いそそられる臭いだ。
そのあまりの甘美さに、「ガタンゴトンごっこ」に興じていたシキの注意が
一瞬逸れる。―――と同時に、背中が弾けた。
「おあぁ?!」
予期せぬ背後からの衝撃に、白髪の青年を為す術もなく倒れ込む。彼の胴部
を貫通した弾丸がフロントウィンドウを穿ち、縦横無尽に亀裂を走らせた。
「あぁー!」
口元から血を滴らせながらも、絶叫をあげる。
「ち、畜生……何にも見えん! どういうことだ!」
フロントウィンドウに拳を突き立て、視界を妨げるひび割れたガラスを薙ぎ
払う。視界が開け―――同時に突風が運転席を蹂躙した。
「あああ?!」
―――なんて、こと。
風がびょうびょうとシキの耳朶に飛び込む。空気を穿ち進む列車はそれ故に
風の抵抗を浴びて、運転席に突風を招き入れていた。
彼が憧れてやまなかった静寂の疾走は、いま完璧に破壊されたのだ。
己が銃撃されたこと。それは別にどうでもいい。
この程度の負傷なら、いくらでも換えはきく。己の不死は揺るがない。
だけど、もう―――あの静寂は無くなってしまった。
あれほど厳かだった疾走も、今では猥雑な風の音に駆逐されている。
―――なんて、こと。
「フツーに考えれば分かるだろう……次の駅まではオレの番だって言うこと
ぐらいが! キサマは順番待ちもできないのかぁ!」
怒りが血液に滾りを与える。視界が真っ白に染まった。
これはもはや理性による行動ではない。半ば憎悪に突き動かされる形で、
シキは懐から引き抜いた短刀を擲った―――振り向き様に、この奇跡を台無し
にしてくれた者に向けて。
- 107 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/06(月) 00:58:05
- >>105
オレの中の吸血鬼っていうのはロアだからな。
こっちのオレの場合は、それがあんまり強くは作用していないんだ。
だから吸血鬼としての能力は限られている。
再生能力もないんだな。
だが、代わりになかなか死ねない身体を持っているし、色々と便利な能力もある。
ふつーのバケモノ程度には力もスピードもあるしな。
- 108 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/06(月) 05:03:28
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs(仮)」
『フツーに考えれば分かるだろう……次の駅まではオレの番だって言うことぐらいが!』
そいつは全く意味の通らない事を喚きながら、こちらに振り向いた。
銃弾で思い切り背中を抉られたってのに、まるで何事もなかったみたいに、元気でいる。
整っているが狂気に歪んだ顔。
血のように紅い濁った瞳。
色を無くしてしまった髪。
ほら、こんなにも俺に似ている奴だから、死なないと思っていた――――
『キサマは順番待ちもできないのかぁ!』
「!!」
そいつは振り向き様、手にしたナイフを思い切り投げ付けてきた。
真っ赤に濡れた銀色の刀身は、この惨状を作り出した道具である事を語っている。
「……チッ」
そいつの外見に気を取られてしまって、一瞬反応が遅れた。
咄嗟に右手を振ってガードしたが、ナイフの刀身は手の甲に突き刺さる。
「ッ――――」
痛みに叫び出したくなる衝動を抑えてナイフを抜くと、ぶしゅっ、と血が噴き出した。
「ハァッ――――ク、……ハァ、ッ……ハ……」
掌を握り締めると、痛みが徐々に治まっていく――――そうだ、これでいい。
「ふゥ――――。ふー…………」
俺は固められた拳を眺めて、くっ、と自嘲するような笑みを零した。
「……チッ。カッコ悪りィの」
呟きながら落としたモーゼルを拾い上げ、改めてその男に向き直る。
こうしてみると、俺とは全然似ている気がしない。そもそも人種が違うし、こいつの目には理
性の光みたいなものはまるで伺えない。俺とは……違う。
ここにいるのは、狗でも持っている見境すら失くした――――唯の異常なバケモノだ。
「楽しんでるトコ、邪魔して悪いな。でも、こんな事するお前が悪いんだ」
線路だって無限に続いている訳ではないし、脱線する事だって在り得る。当然、俺にこの電
車を止める術はないが……運転手が死んだ以上、俺が止めるしかないだろう。
まぁ、やろうと思えば出来る。問題は、このどう見ても殺人鬼にしか見えない男の存在だ。
こういう奴は殺人における動機を持たない。動機があっても殺すが、全くなくても殺す。判り
易くいえば、そいつが「右を向いたか左を向いたか」って理由だけで殺せる。
真逆俺がこの暴走列車を止める作業をしている間、黙って見ててくれたりはしないだろう。
ここまで判っているんだから、わざわざコイツを捨て置いて他所にはいけない。
俺はまだ、こんなところで死んでしまう訳にはいかない――――
先に攻撃したのは俺だし、今更「ごめん」っつって赦してはくれないだろうけど。
「『電車ごっこ』は終わりにして――――危ない事して、遊ぼうぜ?」
俺は半身になり、ルガーを突き出した格好でそいつに狙いをつけた。
不意打ちや油断してるんでもない限りは、ナイフ投げなんてのが届くハズはない。
- 109 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/06(月) 05:06:28
- うん、寝てたんだ、すまない(´・ω・`)
という訳でこっちは適当にイチャモンつけて攻撃態勢整えた。
後はもう鉛玉と血刀飛び交う修羅場って奴でラストまで一直線さ。
そういう感じで今日はもう寝る。次はいつになるか、書いておいてくれ。
俺は月、水、金はちょっと深夜来れないから、多分無理だと思うけど。
それじゃーな。
【マンホールに飛び込んで退場】
- 110 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/06(月) 18:30:13
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs」
元々、陰湿な割には細かいことを気にしない性質の男だ。シキと同じ白髪の
青年の誘い≠ノ―――早速、彼は機嫌を良くして口元を歪めた。
数秒前に必殺狙いで短刀を擲ったことなどとっくに忘れている。
「バンバン、愛する人が私を撃つ、バンバン―――My Baby Shot Me Down……
ひ、ひ。電車ごっこの次は鉄砲ごっこか。実を言うと、そっちはまだ未経験なん
だよなぁ。よし、面白そうだから乗るぜ。盛り上がってきたな相棒? こいつ
はどちらかが泣くまで帰れそうにないぞ。……んで? オレの鉄砲はどこだ。
おまえ、二挺持っているんだから一挺貸せよ」
拳銃で撃たれたのも初経験だったりした。先程、邪魔だったから食い散らか
した男たちもそれらしいモノを持ってはいたが……銃爪を絞る暇をシキは与え
なかった。お陰で貴重な体験を逃してしまったと言える。
白髪の男は一向に拳銃を貸してくれる気配がない。ちっ、と短く舌打ち。
こんなことだったら、さっき散らかした連中のを貰っておけば良かった。
そうすれば撃ち合いができたって言うのに。
「ケチな野郎だな、キサマも……」
ならば仕方ない。そう呟いてシキは―――ずい、と前に一歩出た。
「自前のを使うなら、もういらん」
右腕を大振りに一閃した。青年との距離は遠すぎる。当然、右手は青年を
擦りもせず虚空に軌跡を残す。銃撃を受け自らの血で濡れた右手が弧を描く。
飛び散る鮮血の―――滴。
まるで散弾の如く青年に浴びせかけられた少量の血滴は―――その不定形
を血色の針に変え、二挺の拳銃を構えるカウボーイへと殺到した。
シキに正しい知識があれば、この血弾の様子をこう例えたことだろう。
鮮血のフレシェット弾、と。
- 111 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/06(月) 18:31:23
- 早速奥の手を使うオレ。
時間に関しては週末は一日中いない。
他はレスを書くぐらいは大丈夫だ。
と言っても、1日にそう何度も返せやしないがな。
- 112 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/07(火) 00:14:33
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs」
男は俺の提案した『危険な遊び』に乗るようだったが、その後にフザケた事を言ってる。
「……やるわきゃねえだろうが。俺とお前は別にオトモダチってんじゃないし」
そいつは矢張り頭のネジが二、三本イカレているのか、俺の銃を寄越せとぬかしやがった。
唯でさえ敵を助けるようなどこぞの騎士サマみたいな趣味はないってのに、この二つはそこ
らの使い捨ての道具じゃない。持たせる気も、引き金を引かせる気もなかった。
『ケチな野郎だな、キサマ……』
「悪かったな。大体お前、俺に撃たれるだけっていうテもあるんだけど?」
俺はごめんだけどな、と口の中だけで呟いて、俺は床を這うように駆け出した。
同時、何処かダルそうな様子で佇んでいた男も、一歩前に出る。
『自前のを使うなら、もういらん』
そう言うや否や、突然右腕を大きく振った。
俺の銃撃によって流れた血が、ぱっ、と霧のように散る。
当然、お互いの距離は車両一つ分空いている。そんな攻撃が届くハズなんて……
「って、何だァ?」
俺は素っ頓狂な声を上げ、自分の目を疑った。
飛び散った紅色の霧は突如、液体とは思えない速度でこちらに飛んで来た。
「チッ――――!」
腕を曲げて頭を庇うのと、紅い霧だったモノが俺の身体に『突き刺さる』のは同時だった。
針――――原理なんてクソ喰らえだが、奴の飛ばした血が細かい針になったらしい。
左側が確実に破壊されているのが判る。致命傷ではないが、動いていい傷じゃない。
やがて俺は自分の意思と関係なく、ゆっくりと仰向けに倒れ――――
「フ――――」
手摺にルガーのグリップを引っ掛けるように、仰け反った身体を強引に起き上がらせた。
「――――ッ、ザケんなアァッ!」
痛みを怒号で掻き消して、空いているモーゼルの銃口を跳ね上げる。
そのまま狙いも付けずにトリガー、
トリガ、トリガー、トリガー、トリガー、トリガー、トリガー――――
マガジンに入っていた全てを撃ち尽くしたが、構わず駆け寄り、回し蹴りを叩き込む。
どうして血が針になったのか、なんて事にまで考えは回っていない。
ただこのいけ好かないクソ野郎に先手を取られたのが、酷く癪に障るだけだ――――ッ!
- 113 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/07(火) 00:15:49
- ケガも気にせず銃弾ブチ込んでみた。
まぁ、見た通りだな。そっちの出方待ち、っと。
- 114 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/07(火) 01:08:25
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs」
血弾の返礼は本物の鉛弾。錐揉みしながら撃ち出されたそれは、貫通力も
速度もシキが変容させた模造品とは桁違いだ。
吸血種でありながら死徒に非ず。あくまで遠野の血により化生へと覚醒した
シキは、肉体を再生させる術をまだ£mらない。いくら不死の身体とは言え、
こんな破壊だけを目的として創造された兵器にそう何度も撃ち抜かれるのは、
面白くない展開だった。
銃創の味は、もう4度も味わっている。
これ以上付き合う義理も無いだろう。
「―――おいおい。ごっこ遊び≠ネんだろう? そう熱くなるなよ」
カキン。右手の五指から鋭く爪が伸びる。一つ一つが研ぎ澄まされたナイフ
の如く鋭利だ。しかも、それを更に束ねて一つ刃に見立てている。その様子は
まるで右腕と同化した一本の長剣。
今やシキの右手は彼が最も得意とする得物に姿を変えた。
「自分の身体にはない得物っていうのはどうにも扱いづらい。さっきキサマに
投げ付けてやった短刀もそうだ。アイツ≠ヘどうして、あんな不便な武器を
好むのか……理解できん」
虚空で火花が散った。右手の刃が立て続けに3発、銃弾を切り落としたのだ。
ふん、と鼻で嗤いながら迫り来る残りの銃弾も順々にかわしていく。
先の不意打ちでは素直に4発も受けてしまったが―――落ち着いて観察して
みれば、弾丸というのは真っ直ぐにしか進めないことが分かる。距離さえ空い
ていれば、シキの身体能力と動体視力で十分に避けることができた。
避けきれない弾は右手で弾けば良いまでのことだ。
「ひひひひ。容易いなぁ、白髪野郎」
嗤笑しながら銃弾の進路から逃れる。
裾が翻り、袖が舞った。その風流な出で立ちと涼しげな顔立ちのせいで、彼
の舞踏は迫る死≠ゥらの回避にはとても見えない。
「その甘い匂い、もしやと思ったが。やはり、そんなことは―――っうわあ?!」
視界に突然、風を切って蹴り足が飛び込んできた。
シキが銃弾の回避に神経を集中させている隙を縫っての攻撃だ。
再び不意を討たれた彼は、慌てて右手の刃でブーツを受け止める。
―――が、衝撃までは殺しきれない。
踵が浮き、背中から車両側部の窓に叩き付けられた。
窓ガラスが粉砕し、轟音が流れ込む。
「鉄砲ごっこはどうしたんだ、キサマ―――! 行動に一貫性が無いぞ!」
じゃきん。今度は左手の五爪が瞬時に伸びる。
間一髪で車外へと蹴り飛ばされるのを逃れたシキは、カウボーイの無防備な
脇腹に刃を埋め込まんと左手を突き出した。
- 115 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/07(火) 01:09:38
- 近接戦だな。
やばくなったら、オレは車外へと逃げ出すつもりだ。
せっかく列車に乗り込んでいるんだからな。
その利を活かしたい。
- 116 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/07(火) 01:51:32
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs」
「出鱈目な奴だな、クソッ」
男の手の爪が伸び、飛んで来た銃弾をサムライ宜しく叩き落とし、更に残りの弾も躱した。
確かに銃弾ってのは真っ直ぐにしか飛ばないから、軌道さえ判っていれば避ける事は出来
るだろう。しかし、言うのとやるのとじゃ全然違う……俺も"やったから"な。
身体の性能では俺よりも上らしいのは判った――――けど、それだけだ。
「ハッハァ――――!」
叩き込んだ蹴りは男の腕に止められたが、渾身の蹴りによる衝撃は男を吹き飛ばした。男の
身体が電車の窓ガラスにぶつかり、強化ガラスを散らして風穴を空ける。
電車が走っているのに相応しい強風が吹き込んだが、俺は気にせず突っ込んだ。
どれだけ優秀な身体を持っていても、オツムがカスなら効果も半減してしまう。
そして、俺はこのぐらいの身体能力の差だったら、経験で充分に補足出来るのだ。
『鉄砲ごっこはどうしたんだ、キサマ―――! 行動に一貫性が無いぞ!』
「オイオイ、人の話は聞いとけ。俺は『危険な遊び』としか言ってないぜ?」
詰まり必ずしも銃を使うとは限らない訳だ。まぁ、言葉の通りに行動する必要もないし、まさか
こんな油断をしてくれるなんて思ってもみなかったんだが。
「勘違いしたのはそっちなんだから、恨まれても困」
る、と言い掛けたところで、俺は右手のモーゼルを持ち上げた。
強く張られたウォレットチェーンの継ぎ目が、突き出された爪を受け止め、絡め取る。
「ざァんねん」
一瞬怯んだそいつの胸に、ルガーの銃口を押し付け、トリガー。
殆どゼロ距離から撃ち込まれる軍用の9mmパラベラムが六発だ。痛くないワケがない。
というかコイツは飛んで来た弾を「全部」躱していた。セミオートで撃ち込まれる拳銃弾程度、
俺なら頭さえ護っていれば何とかなってしまうっていうのに。
それは詰まり、急所だけ護っていればいいというモンじゃないって事だ。
コイツ、俺よりも死に易いんだ――――
「駄賃だッ!」
モーゼルから手放して、ポケットから取り出したナイフを展開、男の身体に振り下ろす。
- 117 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/07(火) 01:54:07
- ナイフっていっても、B&Cでジョヴァンニに使ったカランビットみたいな奴な。
肩口に食い込ませたら、そのまま抉り取るように引っ掻いていく感じで使う。
- 118 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/07(火) 04:55:01
- あー。実を言うとオレ、BULLETS CARNAGEのほうは読んでいないんだよな。
というか、存在すら知らなかった。
単行本一巻が出てるっぽいから、明日にでも買っておくか。
- 119 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/07(火) 04:55:59
- まぁカランビット自体は分かる。
- 120 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/08(水) 02:12:15
- ……結局、本屋に行く暇が無かったオレ。
明日こそは―――と願いつつ、レスに取りかかる。
- 121 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/08(水) 03:02:44
- 「かはァっ!」
口蓋から溢れ出た血塊が青白い肌を朱に染める。立て続けに撃ち込まれた
6発もの弾丸は、彼の体内を掻き回し内臓を肉片に変えた。
引きつる狂気の笑み。体内に刻まれた、先と合わせて合計10発の銃痕。常人
ならまず助からない負傷だ。さしもの殺人鬼もたまらず血反吐を吐き散らす。
―――が、対するカウボーイの攻撃はこれに留まらない。
肩から迸る激痛。一度殺した程度では物足りないというのか、二挺拳銃の青年
は素早く抜き出したナイフでシキの解体に取りかかった。
肩に突き立った刃は内側の弧を描いておりまるで鎌のようだ。
だが、禍々しい刃の輝きはとても農耕機具には見えない。人体を攻撃する
という単一目的のために製造された武器特有の、洗練された輝きを有している。
距離をゼロに縮めて、密着する二人。ともに白髪で、極端に青白い肌を持ち、
赤い双眸を持つ―――特徴だけを捉えたアルビノの模造品だ。差異と言えば、
服装と―――方や刃を肉に埋め、肉に刃を埋められ。その程度の違いしかない。
二人の間から、沈黙が流れた。
車輪がレールと噛み合う金属音。割れたガラスから流れ込む風音。車両が揺れ、
僅かに軋む音。そういったもので世界は満たされた。
一人の青年の死が空間を満たす、そう思われた瞬間
「―――ざァんねん」
ぎょろり、と血色の瞳がカウボーイを睨んだ。
同時に彼の全身から刃が生えた。
比喩ではない。文字通り青年の身体から無数の刃が飛び出したのだ。
血色の刃が。
体外に流れ出た自身の血液を、自在に形状変化した後に硬質化させるという、
遠野の魔性の血を色濃く受け継ぐシキだからこそ許された魔技―――《血刀》。
彼は自身の血を流せば流すほど、より多くの武器は纏うことになるのだ。
シキ特有の体質《拒死性肉体》――傷ついた箇所を再生するのではなく、そ
のままの状態でも生きていけるように肉体を組み替える体質――だからこそ可
能な自傷の技といえた。
遠野シキとカウボーイの不死性は、その根本的な性質が違うのだ。
二挺拳銃の青年の反撃は、シキに意識を遠ざけるほど膨大な出血を許した。
故に、硬化した血刀の数も同様に数多。
剣山の如く鋭く伸び上がった血色の刃は、容赦なく青年の全身を貫いた。
むろん、これで終わらせるつもりなどシキにはない。
「―――ひははははは、砕けろ!」
青年を刃で抱き締めた恰好のまま、背後へ振り回す。
力に任せて割れた窓から車外へ―――投げ付けた。
- 122 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/08(水) 03:03:27
- オレも相手が不死身だと思って好き勝手やっているな。
言葉通り砕ける必要はもちろんない。うまく回避しろ。
- 123 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/09(木) 03:56:53
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs」
男が動かなくなる。白目を剥いた男の口と、ナイフで袈裟に抉った胴体から、ドス黒い血反吐
が大量に噴き出して、俺の腕から胸までをべったりと染める。
ナイフを抜いて一歩下がる。男は動きを止めて、窓枠にぐったりと凭れ掛かっている。
これでもう確実に死んだだろう、と思った次の瞬間、
「――――ぁ?」
身体中に鋭い痛み。見れば、俺の全身を紅い刃が貫いている。
『―――ざァんねん』
気が付くと、血の色だか何だかよく判らない色の瞳が、俺の方を睨んでいた。
「そ、うだっ、た……」
こいつは先刻、投げ付けた血を針に変えた。原理は知らないが、奴はそういう事を出来る。
迂闊にもほどがある自分から離れていく血液ですら、固体に出来る能力を持つというのに、
これほど近くにいて、それと同じ事が出来ないなんて事がある訳ない――――
「ごぼ」
右肺、肝臓、左腎臓、胃と十二指腸、左上腕、右前腕と右手甲、それに心房と上大静脈だっ
たか、その間辺りを断ち切られて、俺まで血反吐噴くハメになった。
『ひははははは、砕けろ!』
奴は調子に乗って俺の身体を掴むと、ぐるりと位置を入れ替えた。
人間一人を軽々と投げるなんて、随分と力持ちだな、と何処か他人事のように思う。
そうして、俺は電車の外に放り出され、
- 124 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/09(木) 03:58:23
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs」
――――気が付くと闇の中にいた。
自分の手さえ確認出来ない真っ暗闇。
上か下か左か右か、動いているのか止まっているのかも判らない。
尤も俺には、自分が闇の中を堕ちているという、自覚があった。
「……何、これ」
呟いてみるが、答える者はなく、音の反響すらない。
余程広い空間なのか……それとも?
「なんだっけ」
前にもこんな事があった気がする。
一ヶ月前、一週間前?
或いは
――――横たわる***の骸の傍らに立って、黒い狗が笑う――――
『よぉ、飼イ主』
「……またか」
何時の間にか"ソイツ"はそこにいた。
俺の頸に巻いた包帯を、解こうとするヤツ。
"ソイツ"は自分によく似ていたが、勿論、「俺じゃない」と判っている。
「早えんだよ、お前。もうちょっと感慨とか抱かせろよ」
俺はまだ、彼女の名前すら呼んでいないっていうのに。
『オイオイ、あんな名前も知らねえジャリにボコられる奴の台詞じゃねえな』
…………。
『おら。ま、俺もちょっと混ざってやっからよ』
"ソイツ"はどう見ても俺とは似ていない笑みを浮かべ、首の包帯を全て解いた。
『ケケッ。どっちが本物だかも判らねえクセに』
――――暗転。
- 125 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/09(木) 03:59:10
- ハイネVS遠野四季
「Deadly and Dogs」
「黙れよ、クソ狗」
ハイネ――――或いはそれに類する何か――――は空いている手で窓枠を掴んだ。
銀髪がトンネルの壁に擦れて焦げ臭い臭いを発したが、気にせず身体を車内に戻す。
自分の状態を確認……ルガーは床に転がっている。モーゼルもホルスターにある。ナイフは
外に飛んでいってしまったが、それは別に大した問題じゃない。
身体の方も問題ない。男の放った血の刀に刺し穿たれた身体は既にほぼ修復され、体内に
潜り込んだ他者の血も「喰って」しまったから、また貫かれる事もない。
「あぁ。気に入ってたのによォ、この服は」
ボロボロの服を眺めたハイネは、可笑しそうに唇の端を歪め、顔についた血を舐める。
「コイツはメチャ赦せんよ――――なぁ!?」
吼えるように叫んだハイネは、先刻とは比べ物にならない――――それこそ、人外の知覚を
持つ筈の鬼ですら反応を赦さない速度で男の眼前に駆け寄った。
そのまま男の後頭部を鷲掴みにして、車両の床に思い切り叩き付ける。ごぉん、という重い
音と共に、尋常ならざる腕力で叩き付けられた金属の床がへこむ。
ハイネの背骨に埋め込まれた『ケルベロスの脊髄』は、彼の肉体限界を"後先考えず"最大
限まで引き出す――――例え己の力に肉体を破壊されようとも。
「アハハッ!」
狂った笑いを上げながら、ハイネは男の頭を座席横の鉄パイプに叩き付け、割れていないガ
ラスに叩き付ける。相手の如何なる抵抗も、最早彼を止める事は出来ない。
――――ケモノの強さとは、自身の死を厭わぬ愚か者の強さだ。
「お、か、え、し」
自動ドアを男の顔面で使い物にならなくしたハイネは、男の鳩尾目掛けて強烈な膝蹴りを放
った後、最後に男の身体を運転席に向かって投げ付けた。
濡れ雑巾のような音を立てて男の身体が運転席に消えたが、その身の内に黒い狗を宿した
少年は、そのぐらいの暴虐で獲物を取り逃してやる積もりはなかった。
落としたルガーを拾ってマガジンを交換し、腰のホルスターに差してあったモーゼルも取り出
す。空弾倉の代わりに突っ込んだのは、二十連発のロングマガジンだ。
モーゼルM712シュネルフォイアーのセレクターを、セミからフルに切り替える。
そして両手の銃を運転席に向け、トリガーを――――引かずに、ゆっくりと歩き出す。
「締めにしようぜ、ブラザー」
そう言って歩き出したハイネは、全ての銃弾を男の頭に叩き込む積もりでいる。
――――どんな生き物だって、頭が無くなれば生きていけない。
- 126 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/09(木) 04:03:21
- そろそろあk……げふんげふん……幕引こうと思って、滅茶苦茶やった。長え。
血を「喰う」辺りは自分でも暴走し過ぎたかなー、と思わないでもない。
狗と混じると身体能力が上がる、ってのもありがち、と思わないでもない。
っつーか、全体的にやり過ぎた感がフルチャージで……正直スマンカッタ
まぁ、やりすぎってんなら書き直せばいいよネー。ネー?(自信なさげ
- 127 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/09(木) 05:02:46
- 確認した。好き勝手は……まあ、お互い様だからな。
全然問題ねえが―――もう幕引きか?
いや、オレは構わないけどな。
頭無くなれば、さすがのオレでも死ぬし。多分。
レスは明日書く。適当に待っていてくれ。
- 128 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/10(金) 23:54:38
- ちっ。週末突撃しちまったか。
悪いがレスは日曜まで待ってくれ。
- 129 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/10(金) 23:57:53
- 判ったけど。
日曜、ってか日曜と月曜の間に当たる午前0時以降は俺いないからなー。
- 130 名前:遠野四季 ◆n1oSGIvcA6 :2006/11/10(金) 23:59:06
- ああ、分かった。できるだけ早く返せるよう努力する。
- 131 名前:弓塚さつき@代貼り ◆zusatinwSI :2006/11/29(水) 06:22:26 0
- 花が開く。
夜空の黒を花火の光が一瞬包み込み、そしてまた黒に戻る。
その様は、まさに一時しか咲かない花のようで、だからわたしは、
「――ああ、だから『花火』というのね」
という、よく分からない感想を漏らしていた。
今日は花火大会の日。
そう言って嬉しそうに新聞の挟み込みチラシを持ってきたのは幹也だった。
結局それからすったもんだの末、何故か事務所の面子総動員で出かけるハメになった。
案外お祭り好きの面子が揃っているのかもしれないと、なかば自嘲もこめて思う。
かくいうわたしも例外ではないと、着ていく服を選んでいる時に気づいてしまったから。
そしてわたしは今、幹也たちと別れて一人で歩いている。
幹也と式が二人揃っている姿を見たくなかったから。
けどそれはひょっとしたら――式の、夜の徘徊へのかすかな憧憬だったのかもしれない。
夜の街は、まったく別な貌。
そこはまるで、初めて来た、見知らぬ場所。
行き交う人を、わたしは誰も知らない。
行き交う人も、わたしが誰か知らない。
こんなにも大勢の人がいるのに。
こんなにも、人で埋まっているというのに。
わたしが黒桐鮮花(わたし)であることを知る人は、誰もいない。
それは、礼園という限られた空間では、決してありえないこと。
だからわたしは、少しだけ愉快な気分になった。
まるで子供の頃、こっそりと草むらに入っていった時のような高揚感を胸に抱き。
黒桐鮮花、ではなく、無色透明な誰か、として、
知らない街の知らない人の間を、ただ徘徊する。
あまりに不安定で、不安な。
だけれどあまりに自由な。
不安と期待の間を綱渡りしながら、わたしは歩く。
かすかにステップを踏んで。
――そう、わたしは今自由。
そして一人。
まわりにはこんなに人がいるのに。
けれど彼らはわたしを知らない、わたしは彼らを知らない。
知らないということは、いないということと同じ。
だからわたしはこの大勢に包まれて、孤独になれる。
それは一時の孤独。一時の幻想(ユメ)
前も同じようなことをしたことがあった。
けどその時はすぐに終わってしまった。見知った顔に出会ってしまったから。
でも今日は、この幻想(ユメ)はもう少し長く続いてくれるだろう。
今日はもう、誰にも会うことがないだろうから。
空を飛ぶことにあこがれた人のように、自由な夜空を見上げてみた。
また一つ、大輪の花がはじけて消えた。
- 132 名前:弓塚さつき@代貼り ◆zusatinwSI :2006/11/29(水) 06:22:59 0
- >>642 黒桐鮮花vs弓塚さつき 其の導入
今夜はやけに人が多い。週末だと考えても異常だ。夜になれば、真っ当な人間なんて
滅多に通らないこの路地裏にまで、幸せそうな顔をした男女が幾人も迷い込んでくる。
自分の世界に土足で入られた気がして、何人かは狩った。
でも、そんな憤りが虚しくなるくらいにヒトは続く。中には場違いな浴衣姿の子もいて、
末期に見たある男の服装から、わたしは逃げるようにその場を去った。
なんで、今日に限って―――
その理由を知ったのは、頭上で唐突に大輪の花が咲き誇ったときだ。
ビルとビルの間から広がる夜の空が光に侵されている。
わたしは未だ慣れることのできない明かりに目を細めながら、それを見上げた。
ああ、今日は、そうか―――
地域の花火大会。隅田川や東京湾なんかに比べると、とってもちっぽけな規模だけど。
毎年恒例となっているそれに風流を求める地元の人間は多い。
わたしも、かつてはその一人だった。
毎年欠かさず行っていたよね。
中学二年生までは両親と。それからは、決まった友達と。
確か、二年前―――高校に入り立ての夏。隣のクラスの男の子に誘われたっけ。
「一緒に行きませんか」って。
突然だったし、恥ずかしかったし、人の目も気になって。わたしはイヤだった。
でも、わたしとその男子の中を取り持としてくれた友達の手前もあったから。
渋々了承したんだよね。
あの時は、ほんとイヤだったな。結局、まともな会話なんて一つもなくて。ぎこちなく
気まずい空気のまま、花火大会を終わらせて。やっぱり友達や家族と行くのが一番だって、
改めて理解したんだ。
ああ。
そんな日々があった。
あったんだ。
次々と咲いては散っていく光の明暗。咲けば咲くほどに、わたしの眠らせた記憶が甦り、
散れば散るほどに現実を思い知らされる。
そのあまりの眩しさに―――わたしは目を背けた。
- 133 名前:弓塚さつき@代貼り ◆zusatinwSI :2006/11/29(水) 06:24:26 0
- どん、どん、と地面に轟く火薬音。
耳を塞いでも、壁の厚い廃ビルに逃げ込んでも途絶えてくれない。
耳からではなく、お腹から響いてくる。
いい加減にやかましく苛立たしい。でも、この音からは逃れられない。
ならば、別の方法で怒りを発散するべきだと、と言う答えにわたしは行き着く。
だから、路地裏に迷い込んできた兎が一匹、二匹。吸って散らかした。
わたしは遊びをこれしか知らない。
今夜はヒトが多い。更にもう一匹、吸ってみた。
その間も、頭上で咲いた花がわたしを照らす。
「……退屈」
お腹、減ってないのに食事をしても満たされるわけがない。
でも、わたしはこれしか遊びをしらない。
どうしようかと考えあぐねながら、わたしは繁華街の一角、雑居ビルの路地裏を歩いた。
普段なら、街灯の明かりばかりが頼りなく闇を照らす場所だ。
いまは光の花のせいで、唐突に昼に変わっては、夜に沈んでいる。
- 134 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/11/29(水) 06:32:39 0
- あ……わたし、一人称だ。
すっごく新鮮だよ……。
でも舞台が夏祭りって、もう12月になるのにね(汗
取りあえず、何かあったら書き込んで欲しいな。>鮮花ちゃん
- 135 名前:遠野シキ ◆74/8MAH2os :2006/11/29(水) 22:31:02 0
- >>125
ハイネvs遠野四季
「Deadly and Dogs」
「ひひひ」
笑いが勝手に溢れた。
「やった。確実に殺っちまったぜ。このオレが! ―――ひひひ、オレがオレ
がオレが殺っちまったんですよオレが!」
ひひ。ひははは。笑いが零れる。止まらない。
喉をかきむしった。爪が皮膚を裂き肉を削ぐ。
「ひはは」それでも止まらない。ごぽりごぽりと指の隙間から鮮血が漏れる。
たまらなく愉快だった。
こんなに自分とそっくりな、
自分自身とでも言うべき、
自分を、
殺してやったんだ!
確信に満ちた勝利。
分泌される興奮。
全身を犯す陶酔。
こぼれる笑み。
ひひひ。
―――その全てが、次の瞬間には否定された。
「あ?」
窓枠にかかる手。思わず右手を確認。よし健在。と言うことは、
「キサマ、まだ……!」
異能、血刀発動―――喉から溢れる血塊が針山を形作る。
何度でも蘇れば良かった。そのたびに滅ぼしてやる。
四季にはそれだけの覚悟があり、また時間もあった。
―――が。
暗転。
次に衝撃。次も衝撃。遅れて痛みがやってくる。「ひああああ!?」
抵抗の余地を一切見いだせない。
殺意すら感じる暇を与えられず、ただ衝撃と痛みが繰り返し交錯する。
怒涛の破壊。頭蓋骨が砕け粉塵と化してもまだ止まらない。
「ひああああ! やめて、やめて、やめてやめてやめてやめてやめてやめて!」
死が限界まで近接する。生死の境界線―――踏み越えぬよう必死で留まった。
時には激痛の海の中で反撃も試みた。
車両中にまき散らされた血が刃となって青年を貫いた。
確認の術は無かったが手応えはあった。
しかし青年は止まらなかった。
- 136 名前:遠野シキ ◆74/8MAH2os :2006/11/29(水) 22:32:47 0
- >>135
「ひああああ! バケモノめ、バケモノめ。あの女、オレをはめやがった。こん
なのは聞いていない。こんな奴がいるだなんてオレはまったく聞いていない!
ひははは! やめろ、やめてくれ、やめてやめて、ひはあはっはははぶ―――」
悲鳴/哄笑―――唐突に途絶えた。
錯乱による狂気で満たされていた車両が、硝煙に駆逐される。
声が途切れた理由は単純だった。シキの口が吹き飛ばされたのだ。
雨よと降り注ぐ拳銃弾によって。
40発近くの9ミリ弾を浴びせかけられて、シキの頭部は完全に消失する。
脳髄も牙も喉も呼吸器も全て肉片と化した。
さしもの《拒死性肉体》でも、思考を司る脳髄の代換えはきかない。
頭を無くした幽鬼は、前のめりにどうと崩れ落ちるとそのまま沈黙した。
首からは血が滾々と湧き出している。
シキが墜ちた地―――操縦室を朱で満たそうかと言うように。
ぴくり、と屍の中指が動いた。
この時、遠野シキの自我はもうここに存在していなかった。
どこか別の高次元へと旅立っている。
だが《拒死性肉体》は―――魂の死は許しても肉体の死は許さなかった。
不死の肉体が、頭を欠損しても生きられるよう自分の身体を作り替える。
絞り出された生命の残滓―――許された延命の時間は僅か数秒。
この時、シキだった者≠ヘ何を選択し、何を求めたか。
肉体に細胞レベルで遺された怒り、憎しみ、焦燥。
全てを殺し尽くせ。
それが遺伝子に刻み込んだ遠野シキのダイイング・メッセージだった。
シキだった者はそれを忠実に従う。彼に思考の余地はない。
この抜け殻は自身の中に残った全てを解放し尽くした。
約5リットル―――全血液の変質。
あらゆる朱が刃と化し、所構わず牙を突き立てた。
シキ自身も自らの血刀に貫かれ、それが更に出血を促し自分を刻む。
血池に変わった操縦室は原形を留めぬほど蹂躙され、操縦盤は全壊。
床を突き抜けた血刀は車両の前輪をも穿ち―――脱線を誘発させる。
世界が縦に揺れた。
シキだったものは自身の血刀によって体内器官の8割と決別を告げ、
脱線の衝撃に任されるがまま―――車外へと、闇へと踊り消えた。
【遠野四季→死亡】
- 137 名前:遠野シキ ◆74/8MAH2os :2006/11/29(水) 22:34:09 0
- よう、待たせちまったな。
こんな所だ。脱線自爆っていう置き土産を遺したが、まぁ好きに捌いてくれ。
で、テキトーにエピを書いて締め、だな。
まぁ元々練習闘争だ。
んな大層なエピを用意する必要はないと思うぜ?
- 138 名前:シュレディンガー准尉:2007/03/16(金) 01:50:050
- まあ、和風って言っても確かに難しいよねー。
実際、僕もあまり考えちゃいない。
キャラチョイスが和風ってのは割と前提条件だろうけどね。
のばらはその点吸血だし弱いし雰囲気重視だしで選んだよ。
イメージとしてあるのは何処かの武家屋敷? 廃村?
で全体として静な感じかなー。
マトリックス避け、MAPWの連発なんて無縁の世界みたいな?
妹紅お姉さんは何か抱いてるイメージある?
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